説明

導電性組成物、導電性部材およびその製造方法、タッチパネル並びに太陽電池

【課題】高温、高湿度、またはオゾン存在下の過酷な条件に晒されても、導電性および透明性に優れる、金属導電性繊維を含有する導電性組成物、その導電性組成物を含む導電性層を有する導電性部材、その製造方法および当該導電性部材を用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】少なくとも、a)平均短軸長が1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、およびb)前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上1000質量%以下の特定構造を有する化合物、を含有する導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電性部材およびその製造方法、タッチパネル並びに太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入力デバイスとして液晶パネル、電子ペーパー等の表示デバイスにタッチパネルが搭載されている。タッチパネルの構成としては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、静電容量方式など様々なものが知られているが、多点タッチが可能で大面積化が行いやすい方式として、静電容量方式が知られており、例えば、透明導電材料としてITO(酸化インジウムすず)を使用した静電容量方式タッチパネルが開示されている(非特許文献1参照)。
しかし、ITOの原料であるインジウムは高価であり安定供給に限界があること、薄膜作製に真空過程を必要とするために製造コストが高くなること、また、ITO膜は脆く、曲げ耐性に劣るといった課題があることから、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、PEDOT、ポリアニリンといった代替物質も提案されている。
【0003】
金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、および、カーボンナノチューブと金属の複合体のような導電性繊維を含む導電性層を有する導電性部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この導電性部材は、基材上に複数の金属ナノワイヤーを含む導電性層を備えるものであり、導電性層中にマトリックスとしての光硬化性組成物を含有させておくことにより、パターン露光およびそれに引き続く現像によって、所望の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層を有する導電性部材に容易に加工することができる。
【0004】
上述の導電性繊維を含む導電性部材の別の方式として、導電性層中にマトリックスとしての非光硬化性組成物を含有させ、乾燥および/または、必要により縮合反応や重合反応による架橋を行うことにより導電性層を形成した後、更に、エッチングレジスト等により導電性層の上層にレジスト層をイメージワイズに形成させてからエッチング処理を行う方法や、一様に形成された透明導電性層内の導電性ネットワークをレーザー光照射により一部断線させる方法などにより、所望の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層を有する導電性部材に容易に加工することもできる(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
また、上述の導電性繊維を含む導電性部材の更に別の方式として、仮支持体上に導電性繊維を含む導電性層を形成し、ガラス基板等に転写した後に、必要によりフォトリソグラフィ等の方法によりパターニングを行う、導電性層転写型の導電性部材も提案されている
(例えば、特許文献4、5参照)。
【0006】
上記のような導電性部材に好ましく用いられる導電性繊維としては、銀、金、銅などの金属ナノワイヤーおよびナノロッド、カーボンナノチューブ、カーボンナノロッド、および、カーボンナノチューブと金属との複合体など様々な材料が知られている。なかでも、銀、金、銅などの金属からなる金属導電性繊維が、低抵抗かつ光透明性の高い優れた導電性部材をより好ましく与えることが知られており、低抵抗性・耐久性・価格のバランスの点で優れる銀ナノワイヤーが特に好ましく用いられる。
しかしながら、これらの金属導電性繊維を用いた導電性部材は、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった過酷な条件に長時間暴露された場合には、金属の酸化や形態変化に起因すると推定される抵抗率の上昇が起こる場合があり、用途によっては耐候性の改良が求められる場合があった。
【0007】
金属導電性繊維を含有する透明導電材料の耐候性を向上させる方法としては、特定構造の金属吸着性化合物を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献6、7参照)。この方法は特定の保存条件によっては有効性を示すものの、金属吸着性化合物が金属導電性繊維に強い吸着性を示すことに起因して、透明導電材料の製造時に金属導電性繊維が凝集して導電性層の均質性が低下することにより、導電性層の導電性や透明性の低下が発生したり、金属導電性繊維同士の接触抵抗が増加して、導電性層の導電性が低下するなどの問題が発生する場合があった。
【0008】
金属ナノワイヤーを含む水性分散物の製造方法として、ハロゲン化合物及び還元剤を含む水溶媒中に、金属錯体溶液または金属イオン溶液を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献8参照)。この製造方法においては、金属ナノワイヤーの純度を向上させる目的から脱塩処理が好ましく実施され、実施例に開示されている脱塩(洗浄)処理を行った場合には、金属ナノワイヤーの形成に寄与しなかった還元剤の大部分は除去されていると推定される。該特許文献には、金属錯体を還元する際に添加した還元剤を意図的に残存させること、および、その効果については何ら記載されていない。
【0009】
上述のように、金属導電性繊維を含有する透明導電材料の導電性を、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった過酷な条件においても安定に保つことは従来の技術では十分とは言えず、耐候性の改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2009−505358号公報
【特許文献2】特表2010−507199号公報
【特許文献3】特開2010−44968号公報
【特許文献4】特開2006−35771号公報
【特許文献5】特開2009−251186号公報
【特許文献4】特開2006−35771号公報
【特許文献5】特開2010−251186号公報
【特許文献6】特表2009−505358号公報
【特許文献7】特開2009−146678号公報
【特許文献8】特開2010−84173号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Information DISPLAY、Vol.26、No.3、pp.16−21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった過酷な条件に晒されても、導電性および透明性に優れる、金属導電性繊維を含有する導電性組成物、その導電性組成物を含む導電性層を有する導電性部材、その製造方法、並びに、当該導電性部材を用いたタッチパネルおよび太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
<1> 少なくとも、a)平均短軸長が1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、およびb)前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上1000質量%以下の下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物、を含有する導電性組成物。
P−(CR=Y)−Q 一般式(1)
(一般式(1)において、PおよびQは、それぞれ独立に、OH、NRまたはCHRで表される基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは、CRまたは窒素原子を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R、R、R、R、R、または、Rで表される基は、そのうちの少なくとも二つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQは、OHおよびCHRで表される基であることはない。nが2以上の数を表すとき、(CR=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。)
−C(=O)−H 一般式(2)
(一般式(2)において、Rは、水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
<2> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記の一般式(3)〜一般式(17)のいずれかで表される化合物である<1>に記載の導電性組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
上記一般式(3)において、Vは、水素原子または置換基を表す。
上記一般式(4)において、Vは、水素原子または置換基を表す。
上記一般式(5)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R51およびR52は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
上記一般式(6)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R61およびR62は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
上記一般式(7)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R71およびR72は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記一般式(8)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R81およびR82は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
【0016】
上記一般式(9)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R91、R92、R93およびR94は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(10)において、V10は、水素原子または置換基を表し、R101、R102、R103およびR104は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(11)において、V11は、水素原子または置換基を表す。
一般式(12)において、V12は、水素原子または置換基を表し、R121およびR122は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(13)において、V13は、水素原子または置換基を表し、R131およびR132は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
【0017】
一般式(14)において、V14は、水素原子、または置換基を表す。R141、R142およびR143は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(15)において、V15は、水素原子または置換基を表し、R151は、水素原子または置換基を表す。
一般式(16)において、V16は、水素原子または置換基を表し、R161は、水素原子または置換基を表す。
一般式(17)において、R171、R172、R173、R174は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(3)〜(16)におけるV〜V16で表される基の結合形態は、一般式(3)〜(16)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1個ないし置換可能な任意の個数、結合していることを表す。)
【0018】
<3> 前記一般式(1)で表される化合物が、前記の一般式(3)、一般式(4)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(11)、一般式(12)、一般式(13)および一般式(14)のいずれかで表される化合物である<2>に記載の導電性組成物。
<4> 前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が、前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上100質量%以下含まれる<1>〜<3>のいずれか一項に記載の導電性組成物。
<5> 前記金属導電性繊維が、銀を50モル%以上100モル%以下含む<1>〜<4>のいずれか一項に記載の導電性組成物。
<6> 前記金属導電性繊維の平均短軸長が1nm以上30nm以下である<1>〜<5>のいずれか一項に記載の導電性組成物。
<7> 更に、c)金属に吸着可能な化合物および金属イオンに配位可能な化合物より選ばれた少なくとも一つの化合物を含有する<1>〜<6>のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【0019】
<8> 基材上に、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の導電性組成物を含む導電性層を有する導電性部材。
<9> 前記導電性層における表面抵抗が、1Ω/□以上1000Ω/□以下である<8>に記載の導電性部材。
<10> 前記導電性層が、導電性領域および非導電性領域を含む<8>または<9>に記載の導電性部材。
<11> 前記基材と前記導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する<8>〜<10>のいずれか一項に記載の導電性部材。
<12> 基材上に、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の導電性組成物と溶剤とを含む導電性組成物の塗布液を塗布する工程を含む導電性部材の製造方法。
<13> <8>〜<11>のいずれか一項に記載の導電性部材を含むタッチパネル。
<14> <8>〜<11>のいずれか一項に記載の導電性部材を含む太陽電池。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった過酷な条件に晒されても、導電性および透明性に優れる、金属導電性繊維を含有する導電性組成物、その導電性組成物を含む導電性層を有する導電性部材、その製造方法並びに当該導電性部材を用いたタッチパネルおよび太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の導電性組成物について詳細に説明する。
以下、本発明の代表的な実施形態に基づいて記載されるが、本発明の主旨を超えない限りにおいて、本発明は記載された実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
本明細書において「光」という語は、可視光線のみならず、紫外線、エックス線、ガンマ線などの高エネルギー線、電子線のような粒子線等を含む概念として用いる。
本明細書中、アクリル酸、メタクリル酸のいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリル酸」と、アクリレート、メタクリレートのいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリレート」と、それぞれ表記することがある。
また、含有量は特に断りのない限り、質量換算で示し、特に断りのない限り、質量%は、組成物の総量に対する割合を表し、「固形分」とは、組成物中の溶剤を除く成分を表す。
【0024】
本発明に係る導電性組成物は、少なくとも、a)平均短軸長が1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、およびb)前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上1000質量%以下の下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物、を含有する。
P−(CR=Y)−Q 一般式(1)
(一般式(1)において、PおよびQは、それぞれ独立に、OH、NRまたはCHRで表される基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは、CRまたは窒素原子を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R、R、R、R、R、または、Rで表される基は、そのうちの少なくとも二つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQは、OHおよびCHRで表される基であることはない。nが2以上の数を表すとき、(CR=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0025】
−C(=O)−H 一般式(2)
(一般式(2)において、Rは、水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【0026】
(金属導電性繊維)
本発明に係る導電性組成物には、平均短軸長が1nm以上150nm以下の金属導電性繊維を含有する。金属導電性繊維は、中実構造、多孔質構造及び中空構造のいずれの態様をとるものであってもよいが、中実構造及び中空構造のいずれかであることが好ましい。本発明においては、中実構造の繊維をワイヤー、中空構造の繊維をチューブと、それぞれ称することがある。
前記繊維を形成する金属導電性材料としては、例えば、ITOや酸化亜鉛、酸化スズのような金属酸化物、金属性カーボン、金属元素単体、金属複数金属元素からなる複合構造、複数金属からなる合金などが挙げられる。また、繊維状とした後、表面処理されていてもよく、例えば、鍍金された金属繊維なども用いることができる。
【0027】
(金属ナノワイヤー)
透明導電膜を形成しやすいという観点からは、金属導電性繊維として、金属ナノワイヤーを用いることが好ましい。本発明における金属ナノワイヤーは、平均短軸長さが1nm〜150nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmのものが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)は、1nm〜50nmであることが好ましく、5nm〜30nmであることがより好ましく、5nm〜25nmであることが特に好ましい。平均短軸長さが1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがある。平均短軸長さが150nmを超えると、光散乱等によるヘイズの増加など光学特性の悪化が生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0028】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmが更に好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。金属ナノワイヤーの平均長軸長さが40μmより長いと、金属ナノワイヤー製造時に凝集物が生じる懸念があり、平均長軸長さが1μmより短いと、十分な導電性を得ることができないことがある。
ここで、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値を金属ナノワイヤーの平均軸長さとした。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸方向断面が円形でない場合の平均短軸長さは、短軸方向の測定で最も長い箇所の長さを平均短軸長さとした。また。金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を平均長軸長さとした。
【0029】
本発明に係る導電性層に用いられる金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下が更に好ましく、30%以下が特に好ましい。
前記変動係数を40%以下とすることにより、耐久性の優れた導電性を確保することが容易となる。
金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個のナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより、求めることができる。
【0030】
金属ナノワイヤーの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。
金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
【0031】
前記金属ナノワイヤーにおける金属としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。
前記金属としては、長周期表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0032】
前記金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金が更に好ましく、特に、銀を50モル%以上100モル%以下(より更に好ましくは銀を90モル%以上100モル%以下)含有する、銀又は銀を含有する合金が好ましい。
【0033】
(金属ナノワイヤーの製造方法)
前記金属ナノワイヤーは、特に制限はなく、いかなる方法で作製してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。また、金属ナノワイヤーを形成した後は、常法により脱塩処理を行うことが、分散性、感光性層の経時安定性の観点から好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0034】
金属ナノワイヤーの製造に用いられる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
金属ナノワイヤーの製造時に加熱する場合、その温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。上記温度を20℃以上とすることで、形成される金属ナノワイヤーの長さが分散安定性を確保しうる好ましい範囲となり、且つ、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤーの断面外周が鋭角を有しない、なめらかな形状となるため、透明性の観点から好適である。
なお、必要に応じて、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
【0035】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
還元剤としては、特に制限はなく、金属イオンを還元できるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、複素環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸塩、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが更に好ましく、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。前記還元剤によっては、機能として分散剤や溶媒としても機能する化合物があり、同様に好ましく用いることができる。
金属ナノワイヤーの形成に用いる還元剤は、金属ナノワイヤー形成後に、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により、残量が銀に対して0.1質量%未満まで除去することが好ましい。
【0036】
前記金属ナノワイヤー製造の際には分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよいナノワイヤーを得るためには、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0037】
分散剤は、粒子調製する前から反応溶液に添加しても、粒子調製後に添加してもよい。分散剤の添加は1段階でも、2段階以上に分割してもよい。
分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、メルカプト基含有化合物、スルフィド含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。
【0038】
分散剤として好適に用いられる高分子化合物としては、例えば保護コロイド性のあるポリマーであるゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリ(メタ)アクリル酸、その塩、またはその部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン構造を含む共重合体、アミノ基やメルカプト基を有するポリ(メタ)アクリル酸誘導体、等の親水性ポリマーが好ましく挙げられる。
分散剤として用いるポリマーはゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量(Mw)が、3000以上300000以下であることが好ましく、5000以上100000以下であることがより好ましい。
分散剤として使用可能な化合物の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤーの形状を制御することができる。
【0039】
ハロゲン化合物としては、臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオンを含有する化合物が好ましい。例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等の金属ハロゲン化物や、下記に挙げる分散剤としても機能するオニウム塩のハロゲン化物イオン塩が好ましい。
ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよく、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0040】
また、分散剤とハロゲン化合物とは双方の機能を有する単一の物質を用いてもよい。即ち、1つの化合物で、分散剤とハロゲン化合物の双方の機能を発現する。
分散剤としての機能を有するハロゲン化合物としては、オニウム(好ましくは、アンモニウムまたはホスホニウム)のハロゲン化物イオン塩を好ましく挙げることができる。
例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
なお、これらの化合物は、金属ナノワイヤー形成後に、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により必要により除去してもよい。
【0041】
金属ナノワイヤーは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの20℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0042】
金属ナノワイヤー以外の、好ましい金属導電性繊維としては、中空繊維である金属ナノチューブが挙げられる。
(金属ナノチューブ)
金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0043】
金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。厚みが、3nm以上であることで、十分な耐酸化性が得られ、80nm以下であることで、金属ナノチューブに起因する光散乱の発生が抑制される。
本発明において、金属ナノチューブの平均短軸長さは、金属ナノワイヤーと同様に150nm以下である。好ましい平均短軸長さは金属ナノワイヤーと同様である。また、平均長軸長さは、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の方法などを用いることができる。
【0044】
(金属導電性繊維のアスペクト比)
本発明に用いる金属導電性繊維のアスペクト比は、50以上であることが好ましい。アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記金属導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記金属導電性繊維のアスペクト比が50以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記金属導電性繊維の平均長軸長さと平均短軸長さとを各々別に測定することによって、前記金属導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記金属導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0045】
前記金属導電性繊維のアスペクト比としては、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比を50以上とすることにより、前記金属導電性繊維によるネットワークの形成が容易となり、十分な導電性の確保が容易となる。また、前記アスペクト比を1,000,000以下とすることにより、金属導電性繊維の形成時やその後の取り扱いにおいて、金属導電性繊維が絡まることなく、安定かつ製造適性に優れた液が容易に得られる。
【0046】
(一般式(1)または一般式(2)で表される化合物)
本発明に係る導電性組成物は、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を含有する。
P−(CR=Y)−Q 一般式(1)
一般式(1)において、PおよびQは、それぞれ独立に、OH、NRまたはCHRで表される基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは、CRまたは窒素原子を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R、R、R、R、R、または、Rで表される基は、そのうちの少なくとも二つの基、特に、RとR、RとR、またはRとRは互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQは、OHおよびCHRで表される基であることはない。
nが2以上の数を表すとき、(CR=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。
−C(=O)−H 一般式(2)
一般式(2)において、Rは、水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0047】
上記一般式(1)におけるR、Rで表される窒素原子に置換可能な基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基などが例として挙げられる。
更に詳しくは、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリニル)、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)を好ましい例として挙げることができる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に置換されていても良い。
【0048】
上記一般式(1)におけるR、Rで表されるアルキル基は、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表し、好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20である。好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、トリアコンチルなどを挙げることができる。更に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルであり、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
【0049】
、Rで表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0050】
更に詳しくは、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、
【0051】
アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0052】
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5員もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリニル)、
【0053】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0054】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
【0055】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0056】
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
【0057】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及び複素環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0058】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0059】
、Rで表されるアルケニル基は、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表し、好ましくは炭素数2〜50、更に好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20である。好ましい例としては、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)などを挙げることができる。更に好ましくは、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、であり、特に好ましくは、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、である。
、Rで表されるアルケニル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0060】
、Rで表されるアルキニル基は、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキニル基を表し、好ましくは炭素数2〜50、更に好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20である。好ましい例としては、エチニル、プロパルギル、などを挙げることができる。
、Rで表されるアルキニル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0061】
、Rで表されるアリール基は、置換もしくは無置換のアリール基を表し、好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20である。好ましい例としては、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニル、2−メチルカルボニルフェニル、4−メチルカルボニルフェニルなどを挙げることができる。
更に好ましくは、フェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニルなどを挙げることができ、特に好ましくは、フェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニルなどを挙げることができる。
、Rで表されるアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0062】
、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基を表す。R、Rで表される基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
、Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基を表すとき、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
、Rで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0063】
一般式(1)におけるRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R、Rは互いに結合して環を形成していてもよい。
、Rで表される置換基としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
、Rで表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0064】
nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、P、Qは、OH、CHRで表される基であることはない。nが2以上の数を表すとき、(CR=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
一般式(1)で表される化合物は、鎖状であっても環状であってもよく、環状である場合は、R、R、R、R、R、または、Rで表される基が互いに結合することで表現される。
【0066】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
本発明において一般式(2)で表される化合物には、アルデヒド体とヘミアセタール体との間に平衡が存在することにより還元性を示す化合物(アルドースなど)や、ロブリー・ドブリュイン−ファン エッケンシュタイン転位反応によるアルドース−ケトース間の異性化によりアルデヒド体を形成しうる化合物(フルクトースなど)も含有する。
【0067】
一般式(2)において、Rは水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、複素環基を表す。Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基を表すとき、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。Rが複素環基を表すとき、好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族または、非芳香族の複素環基である。好ましい例としては、2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、チアジアゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニルなどを挙げることができる。
として更に好ましくは水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基である。
で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0068】
一般式(2)で表される化合物の特に好ましい例は、アルドースで総称される還元糖およびその誘導体であり、好ましい例としては、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースなどおよび、これらの水酸基の一部または全部をアシル化(アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイルなど)、またはエーテル化(メチル、エチル、ヒドロキシエチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシメチルなど)した化合物を挙げることができる。
以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【化2】

【0070】
一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(3)から一般式(17)で表される化合物であることが好ましい。
【0071】
【化3】

【0072】
上記一般式(3)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCRであり、nが2である場合の化合物である。
一般式(3)において、Vは、水素原子、または置換基を表す。一般式(3)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(3)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(3)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(3)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化4】

【0074】
上記一般式(4)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(4)において、Vは、水素原子、または置換基を表す。一般式(4)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(4)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(4)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(4)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化5】

【0076】
上記一般式(5)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNRであり、YがCRであり、nが2である場合の一例である。
一般式(5)においてVは、水素原子、または置換基を表す。
一般式(5)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(5)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(5)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0077】
51およびR52は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0078】
以下に、一般式(5)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化6】

【0080】
前記一般式(6)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNRであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(6)においてVは、水素原子、または置換基を表す。
一般式(6)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(6)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(6)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0081】
61およびR62は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0082】
以下に、一般式(6)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【化7】

【0084】
前記一般式(7)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがCHRであり、YがCRであり、nが2である場合の一例である。
一般式(7)において、Vは、水素原子、または、置換基を表す。
一般式(7)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(7)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(7)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0085】
71およびR72は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を表す。
71およびR72で表される置換基としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
71またはR72が置換基を表す場合、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0086】
以下に、一般式(7)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化8】

【0088】
前記一般式(8)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがCHRであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(8)において、Vは、水素原子、または、置換基を表す。
一般式(8)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(8)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(8)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0089】
81およびR82は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を表す。
81およびR82で表される置換基としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
81またはR82が置換基を表す場合、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0090】
以下に、一般式(8)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化9】

【0092】
前記一般式(9)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNRであり、YがCRであり、nが2である場合の一例である。
一般式(9)において、Vは、水素原子、または置換基を表す。
一般式(9)におけるVで表される基の結合形態は、一般式(9)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。Vが置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(9)に複数のVで表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0093】
91、R92、R93およびR94は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0094】
以下に、一般式(9)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
【化10】

【0096】
一般式(10)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNRであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(10)において、V10は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(10)におけるV10で表される基の結合形態は、一般式(10)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V10が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(10)に複数のV10で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0097】
101、R102、R103およびR104は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0098】
以下に、一般式(10)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
【化11】

【0100】
一般式(11)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(11)において、V11は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(11)におけるV10で表される基の結合形態は、一般式(11)に含まれる環状構造の置換可能な位置に、1〜2個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V11が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(11)に複数のV11で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0101】
以下に、一般式(11)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【化12】

【0103】
一般式(12)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNRであり、YがCRであり、nが1である場合の一例である。
一般式(12)において、V12は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(12)におけるV12で表される基の結合形態は、一般式(12)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V12が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(12)に複数のV12で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0104】
121、R122は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0105】
以下に、一般式(12)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
【化13】

【0107】
一般式(13)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNRであり、nが0である場合の一例である。
一般式(13)において、V13は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(13)におけるV13で表される基の結合形態は、一般式(13)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V13が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(13)に複数のV13で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0108】
131およびR132は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0109】
以下に、一般式(13)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
【化14】

【0111】
一般式(14)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNRであり、nが0である場合の一例である。
一般式(14)において、V14は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(14)におけるV14で表される基の結合形態は、一般式(14)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜2個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V14が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(14)に複数のV13で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0112】
141、R142およびR143は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0113】
以下に、一般式(14)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
【化15】

【0115】
一般式(15)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCRおよび窒素原子であり、nが3である場合の一例である。
一般式(15)において、V15は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(15)におけるV15で表される基の結合形態は、一般式(15)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V15が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(15)に複数のV15で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0116】
151は、水素原子、または、置換基を表す。
151で表される置換基としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
151が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0117】
以下に、一般式(15)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
【化16】

【0119】
一般式(16)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCRおよび窒素原子であり、nが2である場合の一例である。
一般式(16)において、V16は、水素原子、または置換基を表す。
一般式(16)におけるV16で表される基の結合形態は、一般式(16)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1〜4個の範囲で任意の個数が結合していることを表す。V16が置換基を表すとき、好ましい基としては、前述の一般式(1)においてR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(16)に複数のV16で表される基が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0120】
161は、水素原子、または、置換基を表す。
161で表される置換基としては、前述のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR、Rの例を挙げることができる。
161が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR、Rで表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0121】
以下に、一般式(16)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
【化17】

【0123】
一般式(17)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNRであり、nが0である場合の一例である。
一般式(17)において、R171、R172、R173およびR174は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。
窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR、Rに例示した基を好ましく挙げることができる。
【0124】
以下に、一般式(17)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
【化18】

【0126】
一般式(1)および一般式(2)で表される化合物において、好ましくは、一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)で表される化合物において、好ましくは、一般式(3)〜一般式(17)で表される化合物であり、更に好ましくは、一般式(3)、一般式(4)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(11)、一般式(12)、一般式(13)、または、一般式(14)で表される化合物であり、特に好ましくは、一般式(11)、または、一般式(12)で表される化合物である。
【0127】
一般式(1)または(2)で表される化合物の製造法は公知の任意の方法を用いることができる。これらの化合物を製造する際の温度、溶媒の選択、反応試薬の種類及びその量、等々の条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に定めることができ、当業者であれば、容易に製造することができる。
【0128】
一般式(1)および(2)で表される化合物の添加量は、金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上1000質量%以下である。このような範囲とすることで、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった条件下で保存されても、高い導電性と透明性を有する導電性層が得られる導電性組成物とすることができる。即ち、0.1%未満の場合は、本発明の効果を十分には発現せず、1000%を超える場合は、導電性阻害が生じたり、塗布液への溶解性が問題となって透明性が低下してしまう場合があることから好ましくない。上記添加量は、透明導電材料に求められる導電性および透明性の基本特性と、高温、高湿環境における耐性の両立という点から、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以上30質量%以下である。
【0129】
一般式(1)および(2)で表される化合物の導電性層への添加法は、実施可能な任意の方法から選択することができる。好ましい例として、導電性組成物に一般式(1)および(2)で表される化合物を添加する方法、基材上に予め金属導電性繊維を含む層を形成し、この層を一般式(1)および(2)で表される化合物を含有する溶液に浸漬する方法、または、導電性層以外の別層にあらかじめ添加し、導電性層を塗布・乾燥する際に、別層から導電性層に拡散させて導入する方法などを挙げることができる。
更に好ましくは、導電性組成物に一般式(1)および(2)で表される化合物を添加する方法、または、基材上に予め金属導電性繊維を含む層を形成し、この層を一般式(1)および(2)で表される化合物を含有する溶液に浸漬する方法であり、特に好ましくは、導電性組成物に一般式(1)および(2)で表される化合物を添加する方法である。
一般式(1)および(2)で表される化合物を、金属導電性繊維の製造時にあらかじめ添加しておくことは、金属導電性繊維の形態制御に悪影響を及ぼす場合があり、また、金属導電性繊維形成後の洗浄工程において、その大部分が除去されて、本発明による効果を発現するのに必要な量よりも少ない量となってしまい、その不足分を再度補充する必要があることから、効率的ではない。
【0130】
本発明に係る導電性組成物は、基材上に設けられて導電性層とされる。この導電性層は、前述の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を含有することにより、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった過酷な条件に長時間暴露された場合に発生する、導電性の低下を抑制するという特異的かつ予想外の効果を奏する。
上記の効果の詳細な機構については十分には解明されていないが、一般式(1)で現される化合物は、Kendal−Pelz則として知られている還元性を示す有機化合物、あるいは、熱現像写真感光材料の現像主薬として公知の還元性有機化合物であり、その一般的な構造式は、例えば、T.H.James著、“The Theory of the Photographic Process”,4th ed.,Macmillan Publishing Co.,Inc.の299頁、および、米国特許第4845019号公報の12カラム22〜34行目、などに例示されており、代表的な化合物としては、T.H.James著、“The Theory of the Photographic Process”,4th ed.,Macmillan Publishing Co.,Inc.の298−327頁、特登2788831号公報の6頁、特登2890055号公報の1−4頁、特登4727637号公報の12−15頁などに例示されている。また、一般式(2)で表される化合物は、アルデヒド化合物またはその前駆体であり、還元性を示す化合物である。
これら、一般式(1)および一般式(2)で表される還元性を示す化合物が、金属導電性繊維の近傍に一定量以上存在すると、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下といった条件で金属導電性繊維の酸化を引き起こす酸素、オゾン、過酸化物などの化学種に対して、金属導電性繊維に優先して反応して自らが酸化されることにより、金属導電性繊維の酸化による分解を抑制し、結果として導電性の低下を抑制しているものと推定される。
このような機構から、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物は、金属導電性繊維に対して0.1質量%以上含有されることで、上記のような本発明による効果が発現するものと推定される。
【0131】
また、本発明においては、本発明の効果である、高温条件、高湿度条件またはオゾン存在下での金属導電性繊維の耐久性向上の観点から、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物において、好ましくは、一般式(1)で表される化合物が選択される。また、一般式(1)で表される化合物において、好ましくは、一般式(3)〜一般式(17)で表される化合物が選択され、更に好ましくは、一般式(3)、一般式(4)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(11)、一般式(12)、一般式(13)、または、一般式(14)で表される化合物が選択され、特に好ましくは、一般式(11)、または、一般式(12)で表される化合物が選択される。一般式(1)〜一般式(17)の化合物はいずれも還元性を示すことにより本発明の効果を示すが、還元性に加えて、化合物の安定性、金属導電性繊維との親和性や吸着性、バインダーとの相溶性、溶媒への溶解性、導電性組成物の乾燥時の耐泣き出し性などの要因によっても効果発現の程度に影響を受け、好ましい化合物においては、これらの要因が複合して好ましく発現しているものと推定される。
【0132】
(金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物)
本発明に係る導電性組成物には、更に、c)金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物を含有することが好ましい。このような金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばアゾール化合物(ベンゾトリアゾール、4‐メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、4−エチルベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ベンジルトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、チアジアゾール、テトラゾールなど)、トリアジン化合物、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、メルカプト化合物(2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトピリミジン、または、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジチオチアジアゾール、アルキルジチオチアジアゾール、および、アルキルチオールなど)、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物などが好適である。
【0133】
これらの金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物は、金属表面に吸着または、錯体形成して被膜を形成することにより、腐食防止、あるいは、防錆の効果を発揮し、本発明の効果を更に向上することができる。
金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物の添加方法は任意の方法から選択できるが、例えば、導電性層形成用組成物中に、化合物単独、あるいは適切な溶媒で溶解または分散した溶液として添加してもよく、作製後の導電性層を金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物の溶液に浸漬してもよい。
金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物の好ましい添加量は、金属導電性繊維の質量あたり、好ましくは0.1%以上100%以下であり、更に好ましくは1%以上50%以下であり、特に好ましくは2%以上25%以下である。0.1%以上100%以下とすることにより、金属導電性繊維の腐蝕または錆びの発生を効果的に防止しつつ、高い導電性が維持される。
【0134】
本発明に係る導電性組成物は、溶剤を含有する塗布液とし、これを基材の表面に塗布して導電性層を形成することにより、導電性部材を得ることができる。
(導電性組成物の塗布液)
本発明に係る導電性組成物は、所望の基材上に塗布により形成するために、溶剤を含有させることが好ましい。金属導電性繊維の製造において、溶媒として水を使用して、水性媒体中に金属導電性繊維を分散させた水性分散液として製造した場合には、その水性分散液に、前述の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を、金属導電性繊維に対して0.1質量%以上1000質量%以下の範囲で添加して含有させればよい。
他方、導電性組成物の塗布液の溶剤として、金属導電性繊維の製造において使用した溶媒(例えば、水)とは異なる溶媒、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤が望まれる場合には、金属導電性繊維の製造において使用した溶媒(例えば、水)を、所望の溶媒(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に一部または全部を置換する溶媒置換を行った上で、前述の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を、金属導電性繊維に対して0.1質量%以上1000質量%以下の範囲で添加して含有させればよい。
このようにして、本発明に係る導電性組成物の塗布液を調製することができる。このような塗布液の溶媒としては、上記に挙げたものの他に、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、γ‐ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル系溶媒、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチル−2−ピロリジノン等のアミド系溶媒、トルエン、キシレン等のベンゼン系溶媒、および、これらの混合溶媒などが挙げられる。
上記の塗布液における金属導電性繊維の濃度は、0.001質量%以上50質量%以下の範囲から、所望とする導電性層の厚さに応じて適宜選択される。
【0135】
(導電性部材)
本発明の導電性部材は、基材上に、少なくとも、a)平均短軸長さが1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、b)下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物、を含有する導電性層を有することを特徴とする。
導電性層は、基材上に直接設けられても、基材上に設けた、下塗り層、中間層、クッション層など、単数または複数の他の層の上に設けられていてもよい。また、導電性層上には、表面保護層、ハードコート層、酸素遮断層、帯電防止層、などの他の層を更に設けてもよい。
【0136】
(基材)
上記基材としては、導電性層を担うことができるものである限り、形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、板状、膜状、および、シート状などが挙げられる。構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。基材は、透明であっても、不透明であってもよい。
基材の材料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、半導体基板に使用されるシリコンウエハーなどを挙げることができる。
透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。また近年開発された厚みが10μm〜数百μmの薄層ガラス基材でもよい。
合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシート、トリアセチルセルロース(TAC)シート、ポリエーテルスルホンシート、ポリエステルシート、アクリル樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、芳香族ポリアミド樹脂シート、ポリアミドイミドシート、ポリイミドシートなどが挙げられる。
金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
前記基材には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
基材の平均厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。一般的には、1μm〜500μmの範囲から選択されることが好ましく、3μm〜400μmが更に好ましく、5μm〜300μmが特に好ましい。基材の平均厚みを1μm以上とすることにより、導電性部材のハンドリングが容易となり、500μm以下とすることにより、基材の可撓性が適度なものとなり、取扱い性が容易であり、転写型の導電性部材として用いる場合にも、転写均一性の確保が容易となる。
導電性部材に透明性が要求される場合には、基材の全可視光透過率が70%以上のものが好ましく、85%以上のものが更に好ましく、90%以上のものが特に好ましい。
なお、本発明では、前記基材として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0137】
(導電性層)
本発明に係る導電性層は、a)平均短軸長さが1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、b)下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物、を含有することを特徴とする。
【0138】
本発明の導電性層の平均厚みは、0.01μm〜2μmが好ましく、0.02μm〜1μmがより好ましく、0.03μm〜0.8μmが更に好ましく、0.05μm〜0.5μmが特に好ましい。前記導電性層の平均厚みが、0.01μm以上であることにより、耐久性や膜強度の十分なものとすることが容易となり、導電性の面内分布が均一となる。また、前記導電性層の平均厚みを2μm以下とすることにより、透過率および透明性の高いものが容易に得られる。
【0139】
導電性層を基材上に形成する方法としては、前述の導電性組成物の塗布液を用いて、一般的な塗布方法で行うことができ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0140】
本発明に係る導電性層には、金属導電性繊維に加え、他の導電性材料、例えば、導電性微粒子などを本発明の効果を損なわない限りにおいて併用しうるが、効果の観点からは、前記した金属導電性繊維の比率は、導電性層中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。これらの金属導電性繊維の割合を、以下、「金属導電性繊維の比率」と呼ぶことがある。
前記金属導電性繊維の比率を50%以上とすることにより、十分な導電性の確保が容易となり、耐久性も良好なものとすることが容易である。また、金属導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0141】
ここで、前記金属導電性繊維の比率は、例えば、金属導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した導電性材料の量とを各々測定することで、金属導電性繊維の比率を求めることができる。ろ紙に残っている金属導電性繊維をTEMで観察し、300個の金属導電性繊維の平均短軸長さを観察し、その分布を調べることにより検知される。
金属導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さの測定方法は既述の通りである。
【0142】
(マトリックス)
導電性部材の導電性層は、さらにマトリックスを含んでいてもよい。ここで、「マトリックス」とは、金属導電性繊維を含んで層を形成する物質の総称であり、金属導電性繊維の分散を安定に維持させる機能を有する。マトリックスは、非感光性のものであっても、感光性のものであってもよい。
導電性層が金属導電性繊維と一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とのみ含む組成物で構成される場合、基材上に予め接着層を設けておき、この接着層上に、上記の組成物で構成される導電性層を設けた態様が好ましい。マトリックスを含むことにより、導電性層における金属導電性繊維の分散が安定に維持される上、基材表面に導電性層を接着層を介することなく形成した場合においても基材と導電性層との強固な接着が確保されるため、より好ましい。
【0143】
導電性層がマトリックスを含む場合、マトリックス/金属導電性繊維の含有比率は、質量比で0.001/1〜100/1の範囲が適当である。このような範囲に選定することにより、基材への導電性層の接着力、及び表面抵抗の適切なものが得られる。マトリックス/金属導電性繊維の含有比率は、質量比で0.01/1〜20/1の範囲がより好ましく、1/1〜15/1の範囲が更に好ましく、2/1〜8/1の範囲が特に好ましい。
【0144】
(非感光性マトリックス)
非感光性マトリックスについて説明する。好適な非感光性マトリックスとしては、有機高分子または、無機高分子を含むものが挙げられる。
【0145】
有機高分子としては、ポリメタクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エステルを含む共重合体)、ポリアクリレート(例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステルを含む共重合体)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート)、フェノールまたはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、およびポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース誘導体、シリコーン、シリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、含フッ素重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン)、および炭化水素オレフィン(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)またはデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)などが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0146】
無機高分子としては、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれた元素のアルコキシド化合物(以下、「特定アルコキシド化合物」ともいう。)を加水分解及び重縮合し、更に所望により加熱、乾燥して得られるゾルゲル硬化物を挙げることができる。
上記ゾルゲル硬化物は、キズおよび磨耗に対して高い耐性を有するものが容易に製造できるという点から好ましい。
【0147】
(特定アルコキシド化合物)
本発明の特定アルコキシド化合物は、下記一般式(18)で示される化合物であることが好ましい。
M(OR4−a (18)
(一般式(18)中、MはSi、Ti、AlおよびZrから選択される元素を示し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、aは2〜4の整数を示す。)
【0148】
一般式(18)におけるRおよびRで表される各炭化水素基としては、好ましくはアルキル基又はアリール基が挙げられる。
アルキル基を示す場合の炭素数は好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8であり、さらにより好ましくは1〜4である。また、アリール基を示す場合は、フェニル基が好ましい。 アルキル基又はアリール基は置換基を更に有していてもよく、導入可能な置換基としては、前述の一般式(1)の化合物の置換基の例を挙げることができる。この化合物は分子量1000以下であることが好ましい。
【0149】
以下に、一般式(18)で示される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0150】
(アルコキシシラン)
MがSiでaが2の場合、すなわち、ジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、アセトキシメチルメチルジエトキシシラン、アセトキシメチルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、イソプロペニルメチルジメトキシシラン、イソプロペニルメチルジエトキシシラン、イソプロペニルメチルジブトキシシラン、などを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、入手容易な観点と親水性層との密着性の観点から、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0151】
MがSiでaが3の場合、すなわち、トリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソプロペニルトリメトキシシラン、イソプロペニルトリエトキシシラン、などを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、入手容易な観点と親水性層との密着性の観点から、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0152】
MがSiでaが4の場合、すなわち、テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシラン、メトキシトリエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、プロポキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を挙げることができる。
【0153】
(アルコキシチタネート)
MがTiでaが2の場合、すなわち、ジアルコキシチタネートとしては、例えば、ジメチルジメトキシチタネート、ジエチルジメトキシチタネート、プロピルメチルジメトキシチタネート、ジメチルジエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、ジプロピルジエトキシチタネート、フェニルエチルジエトキシチタネート、フェニルメチルジプロポキシチタネート、ジメチルジプロポキシチタネート等を挙げることができる。
MがTiでaが3の場合、すなわち、トリアルコキシチタネートとしては、例えば、メチルトリメトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、プロピルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、プロピルトリエトキシチタネート、クロロメチルトリエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート、フェニルトリプロポキシチタネート等を挙げることができる。
MがTiでaが2の場合、すなわち、テトラアルコキシチタネートとしては、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等を挙げることができる。
【0154】
(ジルコニウムまたはアルミニウムのアルコキシド)
MがZrの場合、すなわち、ジルコニウムのアルコキシドとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
MがAlの場合、即ち、アルミニウムのアルコキシドとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
【0155】
これらの特定アルコキシドは市販品として容易に入手できるほか、公知の合成方法、例えば各金属塩化物と任意のアルコールとの反応によって製造してもよい。
上記アルコキシドは、一種類の化合物を単独で用いても、二種類以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0156】
ゾルゲル硬化膜をマトリックスとする導電性層は、金属導電性繊維と特定アルコキシド化合物を含む含水溶液を塗布液(以下、「ゾルゲル塗布液」ともいう。)として、基材上に塗布して塗布液膜を形成し、この塗布液膜中で特定アルコキシド化合物の加水分解と重縮合の反応(以下、この加水分解と重縮合の反応を「ゾルゲル反応」ともいう。)を起こさせ、更に必要に応じて加熱して水を蒸発、乾燥することにより、形成することが好ましい。ゾルゲル塗布液の調製に際しては、金属導電性繊維の分散液を別に調製しておき、これと特定アルコキシド化合物とを混合してもよい。更に、特定アルコキシド化合物を含む溶液を調製したのち、この溶液を加熱して特定アルコキシド化合物の少なくとも一部を加水分解および重縮合させてゾル状態とし、このゾル状態にある溶液と金属導電性繊維の分散液とを混合したものをゾルゲル塗布液としてもよい。
【0157】
(触媒)
ゾルゲル反応を促進させるため、酸性触媒または塩基性触媒を添加することが好ましい。以下、この触媒について、説明する。
触媒としては、アルコキシド化合物の加水分解および重縮合の反応を促進させるものであれば、任意のものを使用することができる。
このような触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物が含まれ、そのまま用いるか、又は、水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)が使用される。
酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高過ぎる塩基性触媒を用いると、沈殿物が生成して導電性層に欠陥となって現れる場合があるので、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが好ましい。
【0158】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、乾燥後の導電性層中にほとんど残留しない化合物が好ましい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、ギ酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで示される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0159】
金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期表の第2族,第13族,第4族、及び、第5族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの第2族元素、Al,Gaなどの第13族元素,Ti,Zrなどの第4族元素及びV,Nb及びTaなどの第5族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0160】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0161】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0162】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0163】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0164】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以
下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液の経時安定性、並びに導電性層の皮膜面質および高耐久性に優れるものを得られる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0165】
本発明に係る触媒は、前記ゾルゲル塗布液中に、その不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。触媒は、単独で用いても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0166】
(溶剤)
上記のゾルゲル塗布液には、基板上に均一な塗布液膜の形成性を確保するために、所望により、溶剤を含有させてもよい。
このような溶剤としては、例えば、水、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなど)、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノールなど)、塩素系溶剤(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)、芳香族系溶剤(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、エステル系溶剤(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなど)、エーテル系溶剤(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、グリコールエーテル系溶剤(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなど)等が挙げられる。
【0167】
基板上に形成されたゾルゲル塗布液の塗布液膜中においては、特定アルコキシド化合物の加水分解及び縮合の反応が起こるが、その反応を促進させるために、上記塗布液膜を加熱、乾燥することが好ましい。ゾルゲル反応を促進させるための加熱温度は、30℃〜200℃の範囲が適しており、50℃〜180℃の範囲がより好ましい。加熱、乾燥時間は10秒間〜300分間が好ましく、1分間〜120分間がより好ましい。
【0168】
非感光性マトリックスとしては、上述のゾルゲル硬化物が、膜強度の高い導電性層が得られる点で好ましい。
【0169】
(感光性マトリックス)
次に、感光性マトリックスについて説明する。
感光性マトリックスの好ましい例としては、リソグラフィック・プロセスに好適なフォトレジスト組成物が挙げられる。マトリックスとしてフォトレジスト組成物を含む場合には、導電性領域と非導電性領域とをパターン状に有する導電性層を、リソグラフィック・プロセスにより形成することが可能となる点で好ましい。このようなフォトレジスト組成物のうち、特に好ましいものとして、透明性および柔軟性に優れ、かつ基材との接着性に優れた導電性層が得られるという点から、光重合性組成物が挙げられる。以下、この光重合性組成物について説明する。
【0170】
(光重合性組成物)
光重合性組成物は、(a)付加重合性不飽和化合物と、(b)光に照射されるとラジカルを発生する光重合開始剤とを基本成分として含み、更に所望により(c)バインダー、(d)その他、上記成分(a)〜(c)以外の添加剤を含むものである。
以下、これらの成分について、説明する。
【0171】
[(a)付加重合性不飽和化合物]
成分(a)の付加重合性不飽和化合物(以下、「重合性化合物」ともいう。)は、ラジカルの存在下で付加重合反応を生じて高分子化される化合物であり、通常、分子末端に少なくとも一つの、より好ましくは二つ以上の、更に好ましくは四つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が使用される。
これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
このような重合性化合物としては、種々のものが知られており、それらは成分(a)として使用することができる。
このうち、特に好ましい重合性化合物としては、膜強度の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0172】
成分(a)の含有量は、前述の金属導電性繊維を含む組成物の固形分の総質量を基準として、2.6質量%以上37.5質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0173】
[(b)光重合開始剤]
成分(b)の光重合開始剤は、光に照射されるとラジカルを発生する化合物である。このような光重合開始剤には、光照射により、最終的には酸となる酸ラジカルを発生する化合物及びその他のラジカルを発生する化合物などが挙げられる。以下、前者を「光酸発生剤」と呼び、後者を「光ラジカル発生剤」と呼ぶ。
−光酸発生剤−
光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸ラジカルを発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0174】
このような光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジ−又はトリ−ハロメチル基を少なくとも一つ有するトリアジン又は1,3,4−オキサジアゾール、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルハライド、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
また、活性光線又は放射線の照射により酸ラジカルを発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の化合物も、酸ラジカル発生剤として使用することができる。
【0175】
−光ラジカル発生剤−
光ラジカル発生剤は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、ラジカルを発生する機能を有する化合物である。光ラジカル発生剤としては、波長200nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
このような光ラジカル発生剤としては、多数の化合物が知られており、例えば特開2008−268884号公報に記載されているようなカルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物、が挙げられる。これらは目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシムエステル化合物、及びアシルホスフィン(オキシド)化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0176】
前記ベンゾフェノン化合物としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0177】
前記アセトフェノン化合物としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。市販品の具体例としては、BASF社製のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907などが好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0178】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、米国特許第4,311,783号、米国特許第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0179】
前記オキシムエステル化合物としては、例えばJ.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。具体例としては、BASF社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02等が好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0180】
前記アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、例えばBASF社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0181】
光ラジカル発生剤としては、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]が特に好ましい。
【0182】
成分(b)の光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その含有量は、金属導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。このような数値範囲において、後述の導電性領域と非導電性領域とを含むパターンを導電性層に形成する場合に、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0183】
[(c)バインダー]
バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶でアルカリ水溶液に可溶なものが好ましく、また、解離性基を有し、塩基の作用により解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。ここで、解離性基とは、塩基の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0184】
前記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0185】
前記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0186】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0187】
前記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0188】
前記アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
【0189】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0190】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0191】
前記バインダーの重量平均分子量は、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0192】
成分(c)のバインダーの含有量は、前述の金属導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜85質量%がより好ましく、20質量%〜80質量%が更に好ましい。前記好ましい含有量範囲であると、現像性と金属導電性繊維の導電性の両立が図れる。
【0193】
[(d)その他、上記成分(a)〜(c)以外の添加剤]
上記成分(a)〜(c)以外のその他の添加剤としては、例えば、増感剤、連鎖移動剤、架橋剤、分散剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種の添加剤などが挙げられる。
(d−1)連鎖移動剤
連鎖移動剤は、光重合性組成物の露光感度向上のために使用されるものである。このような連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0194】
連鎖移動剤の含有量は、前述の金属導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0195】
(d−2)架橋剤
架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、導電性層を硬化させる化合物で、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
また、前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
なお、架橋剤としてエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を用いる場合、当該架橋剤も、また、前記(c)重合性化合物に包含され、その含有量は、本発明における(c)重合性化合物の含有量に含まれることを考慮すべきである。
架橋剤の含有量は、前述の金属導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0196】
(d−3)分散剤
分散剤は、光重合性組成物中における前述の金属導電性繊維が凝集することを防止しつつ分散させるために用いられる。分散剤としては、前記金属導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができる。例えば、顔料分散剤として市販されている分散剤を利用でき、特に金属導電性繊維に吸着する性質を持つ高分子分散剤が好ましい。このような高分子分散剤としては、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
なお、分散剤として高分子分散剤を、前記金属導電性繊維の製造に用いたもの以外をさらに別に添加する場合、当該高分子分散剤も、また、前記成分(c)のバインダーに包含され、その含有量は、前述の成分(c)の含有量に含まれることを考慮すべきである。
分散剤の含有量としては、成分(c)のバインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
分散剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、分散液中での金属導電性繊維の凝集が効果的に抑制され、50質量部以下とすることで、塗布工程において安定な液膜が形成され、塗布ムラの発生が抑制されるため好ましい。
【0197】
(d−4)溶媒
溶媒は、前述の金属導電性繊維を含む光重合性組成物を基材表面に膜状に形成するための塗布液とするために使用される成分であり、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、γ‐ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチル−2−ピロリジノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような溶媒を含む塗布液の固形分濃度は、0.1質量%〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0198】
その他、マトリックスとしては、前述の金属導電性繊維の製造の際に使用された分散剤としての高分子化合物を、マトリックスを構成する成分の少なくとも一部として使用することが可能である。
【0199】
本発明に係る導電性部材は、表面抵抗が1Ω/□以上1000Ω/□以下となるように調整されることが好ましい。本発明に係る導電性部材の表面抵抗は、1Ω/□〜500Ω/□の範囲とすることが更に好ましく、1Ω/□〜200Ω/□の範囲とすることが特に好ましい。
上記表面抵抗は、本発明に係る導電性部材における導電性層の基材側とは反対側の表面を四探針法)により測定された値である。四探針法による表面抵抗の測定方法は、例えばJIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、市販の表面抵抗率計を用いて、簡便に測定することができる。表面抵抗を制御するには、導電性層に含まれる金属導電性繊維の種類および含有比率の少なくとも一つを調整すればよい。より具体的には、例えば、前記マトリックスと金属導電性繊維の含有比率を調製することにより、所望の範囲の表面抵抗を有する導電性層を形成することができる。
【0200】
本発明に係る導電性部材は、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、85%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
本発明に係る導電性部材は、ヘイズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、2%以下であることが特に好ましい。
【0201】
(本発明の好ましい態様)
本発明の導電性部材の好ましい態様として、下記の3つの態様を挙げることができる。
【0202】
本発明の第一の好ましい態様は、基材上に金属導電性繊維を含む導電性層を設けた導電性部材であって、基材表面に垂直な方向から観察した場合に、導電性層の全領域が導電性領域である態様(以下、この導電性層を「非パターン化導電性層」ともいう。)である。第一の態様に係る導電性部材は、例えば、太陽電池の透明電極、電磁波シールド材、帯電防止材などに好ましく使用することができる。
【0203】
本発明の第二の好ましい態様は、基材上に金属導電性繊維を含む導電性層を設けた導電性部材であって、導電性層が導電性領域と非導電性領域とを含む(以下、この導電性層を「パターン化導電性層」ともいう。)態様である。非導電性領域には金属導電性繊維が含まれていても含まれていなくても良い。非導電性領域に金属導電性繊維が含まれている場合、非導電性領域に含まれる金属導電性繊維が断線されているか、金属導電性繊維間の接触抵抗が極めて高いことにより、実質的に非導電性となる。第二の態様に係る導電性部材は、例えばタッチパネルや配線材料を作製する場合に使用される。この場合、所望の形状を有する導電性領域と非導電性領域が形成され、例えば、既存のITO透明導電膜で施されている電極形状が挙げられる。具体的には、WO2005/114369号パンフレット、国際公開第2004/061808号パンフレット、特開2010−33478号公報、特開2010−44453号公報に開示されているストライプ形状のパターン、ダイヤモンドパターンと呼ばれているものなどが挙げられる。
【0204】
本発明の第三の好ましい態様は、第一の基材上に、少なくともクッション層と、金属導電性繊維を含む導電性層をこの順に設けた導電性部材であって、本導電性層を第二の基材上に転写して使用に供することを特徴とする導電性部材である。本態様において、基材は導電性部材を被転写体に転写した後に剥離され、クッション層及び導電性層が被転写体に転写される。
第三の態様においては、導電性層の全領域が導電性(非パターン化導電性層)であっても、導電性領域と非導電性領域を有するパターン化導電性層であってもよい。非パターン化導電性層である場合の好ましい用途は、前述の本発明の第一の好ましい態様と同一であり、パターン化導電性層である場合の好ましい用途および形状は、前述の本発明の第二の好ましい態様と同一である。
【0205】
本発明の第一の好ましい態様、および、第二の好ましい態様について詳しく説明する。
本発明の第一の好ましい態様、および、第二の好ましい態様は、基材上に金属導電性繊維を含む導電性層を設けた導電性部材であり、前述の基材及び、導電性層から、その目的に応じて任意の組合せを選択することができる。
本発明においては、導電性層のマトリックスとして、前述のゾルゲル硬化膜を使用することが好ましい。
【0206】
本発明の好ましい第二の態様に係るパターン化導電性層は、例えば下記パターニング方法により製造される。
(1)予め非パターン化導電性層を形成しておき、この非パターン化導電性層の所望の領域に含まれる金属導電性繊維に炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等の高エネルギーのレーザー光線を照射して、金属導電性繊維の一部を断線または消失させて当該所望の領域を非導電性領域とするパターニング方法。この方法は、例えば、特開2010−4496号公報に記載されている。
(2)予め形成した非パターン化導電性層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層に所望のパターン露光および現像を行って、当該パターン状のレジストを形成したのちに、金属導電性繊維をエッチング可能なエッチング液で処理するウェットプロセスか、または反応性イオンエッチングのようなドライプロセスにより、レジストで保護されていない領域の導電性層中の金属導電性繊維をエッチング除去するパターニング方法。この方法は、例えば特表2010−507199号公報(特に、段落0212〜0217)に記載されている。
(3)予め感光性の非パターン化導電性層を形成しておき、例えば、フォトマスクを利用した面露光、あるいは、レーザービームによる走査露光等によりパターン状に露光した後に現像するパターニング方法であり、露光工程と、現像工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。この方法は、例えば、前述の特許文献5に記載されている。
【0207】
上記のうち、(1)および(2)の方法は、導電性層が金属導電性繊維単独で構成されている場合、及び金属導電性繊維と非感光性のマトリックスとを含む場合に好都合なパターンニング方法である。
また、(2)および(3)に記載の露光に用いる光源は、フォトレジスト組成物の感光波長域との関連で選定されるが、一般的にはg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましく用いられる。また、青色LEDを用いてもよい。
パターン露光の方法にも特に制限はなく、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービーム等による走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0208】
上述の(2)に記載のパターニング方法において、前記金属導電性繊維を溶解する溶解液としては、金属導電性繊維に応じて適宜選択することができる。例えば金属導電性繊維が銀ナノワイヤーの場合には、所謂写真科学業界において、主にハロゲン化銀カラー感光材料の印画紙の漂白定着工程に使用される漂白定着液、強酸、酸化剤、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でも漂白定着液、希硝酸、過酸化水素が更に好ましく、漂白定着液、希硝酸が特に好ましい。なお、前記金属導電性繊維を溶解する溶解液による銀ナノワイヤーの溶解は、溶解液を付与した部分の銀ナノワイヤーを完全に溶解しなくてもよく、導電性が消失していれば一部が残存していてもよい。
前記希硝酸の濃度は、1質量%〜20質量%であることが好ましい。
前記過酸化水素の濃度は、3質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0209】
前記漂白定着液としては、例えば特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。
漂白定着時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましく、90秒間以下5秒間以上が更に好ましい。また、水洗又は安定化時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましい。
前記漂白定着液としては、写真用漂白定着液であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、富士フイルム株式会社製CP−48S、CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)、コダック社製エクタカラーRA漂白定着液、大日本印刷株式会社製漂白定着液D−J2P−02−P2、D−30P2R−01、D−22P2R−01などが挙げられる。これらの中でも、CP−48S、CP−49Eが特に好ましい。
【0210】
前記金属導電性繊維を溶解する溶解液の粘度は、25℃で、5mPa・s〜300,000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜150,000mPa・sであることがより好ましい。前記粘度を、5mPa・sとすることで、溶解液の拡散を所望の範囲に制御することが容易となって、導電性領域と非導電性領域との境界が明瞭なパターニングが確保され、他方、300,000mPa・s以下とすることで、溶解液の印刷を負荷なく行うことが確保されると共に、金属導電性繊維の溶解に要する処理時間を所望の時間内で完了させることができる。
【0211】
前記金属導電性繊維を溶解する溶解液のパターン状の付与としては、溶解液をパターン状に付与できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、予めレジスト剤などによりエッチングマスクを形成しておきその上に溶解液をコーター塗布、ローラー塗布、ディッピング塗布、スプレー塗布する方法、などが挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷、インクジェット印刷、コーター塗布、ディップ(浸漬)塗布が特に好ましい。
前記インクジェット印刷としては、例えばピエゾ方式及びサーマル方式のいずれも使用可能である。
【0212】
前記パターンの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、文字、記号、模様、図形、配線パターン、などが挙げられる。
前記パターンの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナノサイズからミリサイズのいずれの大きさであっても構わない。
【0213】
(中間層)
本発明の第一の好ましい態様、および、第二の好ましい態様については、基材と導電性層との間に少なくとも一層の中間層を有することが好ましい。基材と導電性層との間に中間層を設けることにより、基材と導電性層との密着性、導電性層の全光透過率、導電性層のヘイズ、及び導電性層の膜強度のうちの少なくとも一つの向上を図ることが可能となる。
中間層としては、基材と導電性層との接着力を向上させるための接着剤層、導電性層に含まれる成分との相互作用により機能性を向上させる機能性層などが挙げられ、目的に応じて適宜設けられる。
【0214】
中間層に使用される素材は特に限定されず、上記の特性のいずれか少なくとも一つを向上させるものであればよい。
例えば、中間層として接着層を備える場合、接着剤に使用されるポリマー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルコキシシラン化合物を加水分解および重縮合させて得られるゾルゲル膜などから選ばれる素材が含まれる。
また、導電性層と接する中間層(即ち、中間層が単層の場合には、当該中間層が、そして中間層が複数の層を含む場合には、そのうちの導電性層と接する中間層)が、当該導電性層に含まれる金属導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む機能性層であることが、全光透過率、ヘイズ、及び膜強度に優れた導電性層が得られることから好ましい。このような中間層を有する場合においては、導電性層が金属導電性繊維とマトリックスとを含むものであっても、膜強度に優れた導電性層が得られる。
【0215】
この作用は明確ではないが、導電性層に含まれる金属導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む中間層を設けることで、導電性層に含まれる金属導電性繊維と中間層に含まれる上記の官能基を有する化合物との相互作用により、導電性層における導電性材料の凝集が抑制され、均一分散性が向上し、導電性層中における導電性材料の凝集に起因する透明性やヘイズの低下が抑制されるとともに、密着性に起因して膜強度の向上が達成されるものと考えられる。このような相互作用性を発現しうる中間層を、以下、機能性層と称することがある。
【0216】
上記の金属導電性繊維と相互作用可能な官能基としては、例えば金属導電性繊維が銀ナノワイヤーの場合には、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。さらに好ましくは、アミノ基、メルカプト基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩であることが好ましく、最も好ましくはアミノ基である。
上記のような官能基を有する化合物としては、例えばウレイドプロピルトリエトキシシラン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−メチルアクリルアミド)などのようなアミド基を有する化合物、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ポリ(2−アミノエチルアクリルアミド)などのようなアミノ基を有する化合物、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシランなどのようなメルカプト基を有する化合物、例えばポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)などのようなスルホン酸またはその塩の基を有する化合物、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸部分ナトリウム塩などのようなカルボン酸基を有する化合物、例えば例えばポリ(2−ホスホノキシエチルメタクリラート)などのようなリン酸基を有する化合物、例えばポリビニルホスホン酸などのようなホスホン酸基を有する化合物が挙げられる。
これらの官能基を選択することで、導電性層形成用の塗布液を塗布後、金属導電性繊維と中間層に含まれる官能基とが相互作用を生じて、乾燥する際に金属導電性繊維が凝集するのを抑制し、金属導電性繊維が均一に分散された導電性層を形成することができる。
【0217】
中間層は、中間層を構成する化合物が溶解した、もしくは分散、乳化した液を基板上に塗布し、乾燥することで形成することができ、塗布方法は一般的な方法を用いることができる。その方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0218】
図1および図2は、本発明の第一の好ましい実施形態、および、第二の好ましい実施形態に係る導電性部材1および2をそれぞれ示す概略断面図である。図1において、基材10と導電性層20との間に、基材10との親和性に優れた第1の接着層31と、導電性層20との親和性に優れた第2の接着層32とを含む中間層30を備える。
図2において、基材10と導電性層20との間に、前記第1の実施形態と同様の第1の接着層31及び第2の接着層32に加え、導電性層20に隣接して機能性層33を備えて構成される中間層30を有する。本明細書における中間層30は、前記第1の接着層31、第2の接着層32、及び、機能性層33から選択される少なくとも1層を含んで構成される層をさす。
【0219】
図3および図4は、本発明の第三の好ましい実施形態、および、第四の好ましい実施形態に係る導電性部材3および4を示す概略断面図である。ここで、図3の導電性部材3は、基材1と、該基材1の一の面にクッション層2及び導電性層3をこの順に有している。また、図4の導電性部材4は、図3の導電性部材3において、導電性層3の上に密着層4を設けたものである。
【0220】
本発明の第三の好ましい実施形態に係る導電性部材3について詳しく説明する。
上記導電性部材3は、該基材1上に、クッション層2と、金属導電性繊維を含有する導電性層3とをこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0221】
前記クッション層2の平均厚みは、1μm〜50μmであり、5μm〜20μmが好ましい。前記クッション層2の平均厚みが、1μm未満であると、転写均一性及び凹凸追従性が損なわれることがあり、50μmを超えると、導電性部材3のカールバランスが低下してしまうことがある。
【0222】
本発明の導電性部材は、上記構成を備えていればその形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記導電性部材は、可撓性を有し、透明であることが好ましく、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
【0223】
(クッション層)
前記クッション層を有することで、導電性層が基板側の凹凸を跨いでも断線せず、凹凸追従性が向上する。
前記クッション層の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記クッション層は、被転写体との転写性を向上させる役割を果たす層であり、少なくともポリマーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0224】
(クッション層に含有するポリマー)
クッション層に含有するポリマーとしては、加熱時に軟化するポリマーであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニルゼラチン;セルロースナイトレート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アルキル(炭素数1〜4)アクリレート、ビニルピロリドン等を含むホモポリマー又は共重合体、可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ポリアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0225】
前記クッション層のガラス転移温度は、40℃〜150℃が好ましく、90℃〜120℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃未満であると、室温で軟らかすぎてハンドリング性に劣ることがあり、150℃を超えると、熱ラミネート方式でクッション層が軟化せず導電性層の転写性が劣ることがある。なお、可塑剤等の添加により、ガラス転移温度を調整してもよい。
【0226】
前記その他の成分として、特開平5−72724号公報の段落[0007]以降に記載されている有機高分子物質、前記基材との接着力を調節するための各種可塑剤、過冷却物質、密着改良剤、フィラー、酸化防止剤、界面活性剤、離型剤、熱重合禁止剤、粘度調整剤、溶剤などが挙げられる。
【0227】
前記クッション層は、前記ポリマー、及び必要に応じて前記その他の成分を含有するクッション層用途布液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0228】
本発明に係る導電性部材は、高温や高湿度の過酷な条件に晒されても導電性および透明性にに優れ、併せて表面抵抗が低いので、例えばタッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、液晶表示装置、タッチパネル機能付表示装置、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネルへの適用が特に好ましい。
【0229】
(タッチパネル)
本発明に係る導電性部材は、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投射型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどに適用される。ここで、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
前記表面型静電容量方式タッチパネルについては、例えば特表2007−533044号公報に記載されている。
【0230】
(太陽電池)
本発明に係る導電性部材は、集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)における透明電極としても有用である。
集積型太陽電池としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0231】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0232】
本発明に係る導電性部材は、前記全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。導電性部材は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接して導電性層が配置されていることがいることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電性層の位置関係が分かる範囲の記載としている。ここで、[ ]で括られた構成が、本発明に係る導電性部材に相当する。
(A)[基材−導電性層]−光電変換層
(B)[基材−導電性層]−光電変換層−[導電性層−基材]
(C)基板−電極−光電変換層−[導電性層−基材]
(D)裏面電極−光電変換層−[導電性層−基材]
このような太陽電池の詳細については、例えば特開2010−87105号公報に記載されている。
【実施例】
【0233】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の含有率としての「%」、及び、「部」は、いずれも質量基準に基づくものである。
以下の例において、金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ、平均短軸長さの変動係数、並びに、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの比率は、以下のようにして測定した。
【0234】
<金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて拡大観察される金属ナノワイヤーから、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤーの直径(平均短軸長さ)と長軸長を測定し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ求めた。
<金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)の変動係数>
上記電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個のナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)を測定し、その300個についての標準偏差と平均値を計算することにより、求めた。
<アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの比率>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、銀ナノワイヤーの平均短軸長さを300個観察し、ろ紙を透過した銀の量を各々測定し、平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である銀ナノワイヤーをアスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの比率(%)として求めた。
なお、銀ナノワイヤーの比率を求める際の銀ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0235】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー分散液の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0236】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温73℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5.5時間加熱した。
得られた水分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー分散液(水分散液)をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、0.78%銀ナノワイヤー水分散液を得た。
得られた調製例1の銀ナノワイヤーについて、前述のようにして平均短軸長さ、平均長軸長さ、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの比率、及び銀ナノワイヤー平均短軸長さの変動係数を測定した。
【0237】
その結果、平均短軸長さ17.2nm、平均長軸長さ34.2μm、変動係数が17.8%の銀ナノワイヤーを得た。得られた銀ナノワイヤーのうち、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの占める比率は82.5%であった。以後、「銀ナノワイヤー水分散液」と表記する場合は、上記方法で得られた銀ナノワイヤー水分散液を示す。
【0238】
(銀ナノワイヤー分散液中のグルコースの定量)
調製例1にて得た銀ナノワイヤー分散液に1Mol/L硝酸を加え、銀ナノワイヤーを溶解させた。さらに、0.1Mol/Lアンモニア水を加えてpHを7に調整した。本溶液を減圧濃縮した後、得られた溶液中のグルコースの残留量を、酵素法グルコース分析キット(ロシュ・ダイアグノスティック社製 TC Sucrose/D−Glucose/D−Fructose)にて定量したところ、金属導電性繊維あたり0.002%であった。
【0239】
(調製例2)
−ガラス基板の前処理−
厚み0.7μmの無アルカリガラス板を、水酸化ナトリウム 1%水溶液に浸漬して超音波洗浄機によって30分超音波照射し、ついでイオン交換水で60秒間水洗した後、200℃で60分間加熱処理を行った。その後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.3%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、更に、純水にてシャワー洗浄した。以後、「ガラス基板」と表記する場合は、上記前処理で得られた無アルカリガラス基板を示す。
【0240】
(調製例3)
−図1に示す構成を有するPET基板101の作製−
下記の配合で接着用溶液1を調製した。
[接着用溶液1]
・タケラックWS−4000 5.0部
(コーティング用ポリウレタン、固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 94.4部
【0241】
厚さ125μmのPETフィルム10の一方の表面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理を施した表面に、上記の接着用溶液1を塗布し120℃で2分間乾燥させて、厚さが0.11μmの第1の接着層31を形成した。
【0242】
以下の配合で、接着用溶液2を調製した。
[接着用溶液2]
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3.2部
(KBM−403、信越化学工業(株)製)
・2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 1.8部
(KBM−303、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=0.05%、pH=5.2) 10.0部
・硬化剤 0.8部
(ホウ酸、和光純薬工業(株)製)
・コロイダルシリカ 60.0部
(スノーテックスO、平均粒子径10nm〜20nm、固形分濃度20%、
pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
【0243】
接着用溶液2は、以下の方法で調製した。酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。次に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを酢酸水溶液中に強く攪拌しながら3分間かけて添加した。次に、テトラメトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後2時間攪拌を続けた。次に、コロイダルシリカと、硬化剤と、界面活性剤とを順次添加し、接着用溶液2を調製した。
【0244】
前述の第1の接着層31の表面をコロナ放電処理したのち、その表面に、上記の接着用溶液2をバーコート法により塗布し、170℃で1分間加熱して乾燥し、厚さ0.5μmの第2の接着層32を形成して、図1に示す構成を有するPET基板101を得た。
【0245】
(実施例1および比較例1)
(導電性部材1−1の作製)
下記組成のアルコキシシラン化合物を含有する溶液(以下、ゾルゲル溶液ともいう)を60℃で1時間撹拌して、均一になったことを確認した。
得られたゾルゲル溶液3.44部と、前記調製例1で得られた銀ナノワイヤー水分散液16.56部に、化合物2−10の水溶液を、化合物2−10が銀ナノワイヤーに対して9%となるように混合した。
さらに、蒸留水および1−プロパノールで希釈し、銀濃度0.25%、1−プロパノール濃度30%の導電層塗布液1−1を調製した。上記のPET基板101の第2の接着層32の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.012g/m、全固形分塗布量が0.096g/mとなるように上記導電層塗布液1−1を塗布したのち、140℃で1分間乾燥してゾルゲル反応を進行させ、導電性層20を形成した。かくして、図1の断面図で示される構成を有する導電性部材1−1を得た。導電性層における化合物(II)/金属導電性繊維の質量比は7.0/1となった。
<アルコキシシラン化合物の溶液>
・テトラエトキシシラン(化合物(II)) 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・1%酢酸水溶液 10.0部
・蒸留水 4.2部
【0246】
(導電性部材1−2〜1−73の作製)
導電性部材1−1の作製方法に対し、導電層塗布液調製時に化合物2−10を添加しなかったことのみ異なる方法によって本発明外の導電性部材1−2を作製した。
また、導電性部材1−1の作製方法に対し、添加する本発明の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の種類および添加量(銀ナノワイヤーに対する質量%で表示)を、表1又は表2に記載の通りとしたことのみ異なる方法によって、本発明の導電性部材1−3〜1−52を作製した。
更に、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物に加えて、本発明に係る金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物として、下記化合物A−1〜A−4を添加(表1に種類と添加量を記載)した、本発明の導電性部材1−53〜1−62を作製した。
更に、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の代わりに、下記のC−1、C−2、C−3又はC−4を表1に記載した添加量で使用して、導電性部材1−63〜1−67を作製した。また、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を添加せず、金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物として、下記のA−1、A−2、A−3またはA−4を表1に記載した添加量で使用して、導電性部材1−68〜1−72を得た。
【0247】
【化19】

【0248】
【化20】

【0249】
(導電性部材1−73の作製)
特開2010−84173号公報の実施例1記載の方法によって、銀ナノワイヤー水分散液を作製した。残存するグルコースを、本発明の調製例1にて得た銀ナノワイヤー分散液中のグルコースの定量方法と同様にして、定量したところ、金属導電性繊維あたり0.003%であった。
上記の分散液を用いて、本発明の導電性部材1−2と同様にして、比較例としての導電性部材1−73を作製した。
【0250】
<評価>
得られた各導電性部材に対し、以下の評価を行った。結果を表1〜表2に示す。
【0251】
<導電性(表面抵抗)>
各導電性部材の表面抵抗値を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定し、下記のランク付けを行った。
5:表面抵抗値 150Ω/□以上、165Ω/□未満で、極めて優秀なレベル
4:表面抵抗値 165Ω/□以上、180Ω/□未満で、極めて優秀なレベル
3:表面抵抗値 180Ω/□以上、200Ω/□未満で、許容レベル
2:表面抵抗値 200Ω/□以上、250Ω/□未満で、問題なレベル。
1:表面抵抗値 300Ω/□以上で、極めて問題なレベル。
【0252】
<光学特性(全光透過率)>
各導電性部材の全光透過率(%)をガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定した。測定はC光源下のCIE視感度関数yについて、測定角0°で行い、下記のランク付けを行った。
A:透過率90%以上で、良好なレベル
B:透過率85%以上90%未満で、やや問題なレベル
【0253】
<光学特性(ヘイズ)>
各導電性部材のヘイズ値をガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定した。
【0254】
(耐候性評価)
各導電性部材に対し耐候性の評価として、耐熱性、耐湿熱性および、耐オゾン性を下記測定方法にて実施した。
<耐熱性>
各導電性部材に対し、アズワン(株)製ドライオーブンOFW−600を用いて170℃90分間、オーブンにて強制加熱処理を行った。加熱処理後の各導電性部材の表面抵抗値(RDT)を前述の方法によって測定し、加熱処理前の表面抵抗値(R0)に対する表面抵抗値の変化率(RDT/R0)を求めることにより、各導電性部材の耐熱性を評価し、下記のランク付けを行った。
ランク5: 表面抵抗値の変化率 10%未満 非常に好ましいレベル
ランク4: 表面抵抗値の変化率 10%以上、20%未満 好ましいレベル
ランク3: 表面抵抗値の変化率 20%以上、35%未満 許容レベル
ランク2: 表面抵抗値の変化率 35%以上、50%未満 やや問題なレベル
ランク1: 表面抵抗値の変化率 50%以上 問題なレベル
【0255】
<耐湿熱性>
各導電性部材に対し、エスペック(株)製小型環境試験機SH−241を用いて85℃85%RHの環境下で240時間放置することにより、強制湿熱処理を行った。強制湿熱処理前後の各導電性部材の表面抵抗値(RWT)を前述の方法によって測定し、強制湿熱処理前の表面抵抗値(R0)に対する変化率(RWT/R0)を求めることにより、各導電性部材の耐湿熱性を評価し、下記のランク付けを行った。
ランク5: 表面抵抗値の変化率 10%未満 非常に好ましいレベル
ランク4: 表面抵抗値の変化率 10%以上、20%未満 好ましいレベル
ランク3: 表面抵抗値の変化率 20%以上、35%未満 許容レベル
ランク2: 表面抵抗値の変化率 35%以上、50%未満 やや問題なレベル
ランク1: 表面抵抗値の変化率 50%以上 問題なレベル
【0256】
<耐オゾン性>
各導電性部材に対し、オゾン量10ppm、25℃の環境下に4時間暴露し、処理前後の各導電性部材の表面抵抗値(ROT)を前述の方法によって測定し、オゾン暴露前の表面抵抗値(R0)に対する変化率(ROT/R0)を求めることにより、各導電性部材の耐オゾン性を評価し、下記のランク付けを行った。
ランク5: 表面抵抗値の変化率 100%以上、150%未満 非常に好ましいレベル
ランク4: 表面抵抗値の変化率 150%以上、200%未満 好ましいレベル
ランク3: 表面抵抗値の変化率 200%以上、350%未満 許容レベル
ランク2: 表面抵抗値の変化率 350%以上、500%未満 やや問題なレベル ランク1: 表面抵抗値の変化率 500%以上 問題なレベル
【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
表1及び表2より、次のことが分かる。本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物を含有する導電性部材1−1、1−3〜1−21、1−23〜1−28、1−30〜52は、高温保存時および、高温高湿保存時の抵抗率の変化が少なく、耐オゾン性も良好であり、耐候性に優れる。そのうち、本発明の一般式(1)で表される化合物がより優れた効果を示し、本発明の一般式(3)、(4)、(7)、(8)、(11)、(12)、(13)、(14)が更に優れた効果を示している。なかでも、本発明の一般式(11)、(12)を好ましい量添加した場合、特に優れた効果を示すことが分かる。また、本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物に加えて、本発明の金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物を含む導電性部材1−53〜1−62は、本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物だけを添加した場合に比べて、光学特性、耐熱性および耐湿熱性、耐オゾン性の点から、導電性部材の総合性能として最も優れている。
【0260】
本発明の化合物の添加量が金属導電繊維に対して、0.1質量%未満(導電性部材1−22)あるいは、1000質量%を超える(導電性部材1−30)と耐候性の改良効果は不十分となることが分かる。
一方、本発明に係る化合物を添加しない(金属導電性繊維の製造工程から、0.1%未満の極めて少量のグルコースを持ち込んでいる)本発明外の導電性部材1−2、1−73、本発明外の比較用化合物を含有する導電性部材1−63〜1−67については、耐候性の改良効果が不十分である。
更に、本発明に係る一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は含まず、本発明の金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物を含む導電性部材1−68〜1−72では、一定の耐候性改良効果は示すものの、本発明による導電性部材に比べてその効果は不十分であることが分かる。
【0261】
(実施例2および比較例2) −短軸長さ依存性の評価−
調製例1に記載の銀ナノワイヤー分散液の調製方法に対し、一段目の混合液の初期温度20℃を24℃に変更したことのみ異なる方法によって銀ナノワイヤー水分散液を作製し、得られた銀ナノワイヤー水分散液をAg−2とした。また、調製例1の銀ナノワイヤー分散液の調製方法に対し、一段目の混合液の初期温度20℃を28℃に変更したことのみ異なる方法によって銀ナノワイヤー水分散液を作製し、得られた銀ナノワイヤー水分散液をAg−3とした。
Ag−2およびAg−3に含まれる銀ナノワイヤーについて、前述のようにして平均短軸長さ、平均長軸長さ、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの比率、及び銀ナノワイヤー短軸長さの変動係数を測定した。その結果、Ag−2に含まれる銀ナノワイヤーは、平均短軸長さ27.6nm、平均長軸長さ31.8μm、短軸長さの変動係数が25.2%であり、得られた銀ナノワイヤーのうち、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの占める比率は79.2%であった。また、Ag−3に含まれる銀ナノワイヤーは、平均短軸長さ33.6nm、平均長軸長さ28.8μm、短軸長さの変動係数が27.5%であり、得られた銀ナノワイヤーのうち、アスペクト比が50以上の銀ナノワイヤーの占める比率は78.3%であった。
【0262】
実施例1の導電性部材1−25、1−2、および、1−35の作製方法に対し、銀ナノワイヤー水分散液としてAg−1に代えてAg−2を用いたことのみ異なる方法によって導電性部材2−1〜2−3を作製した。また、同様にして、銀ナノワイヤー水分散液としてAg−3を用いた導電性部材2−4〜2−6を作製した。
得られた各導電性部材2−1〜2−6に対して、実施例1と同様の評価を行い、得られた評価結果を表3に示した。また参考として、実施例1で得られた導電性部材1−25、1−2、および、1−35の評価結果を併せて表3に示した。
【0263】
【表3】

【0264】
表3から、本発明の効果は、銀ナノワイヤーの平均短軸長を増加した、より太い銀ナノワイヤーにおいても有効なことがわかる。銀ナノワイヤーの平均短軸長さが増加するに従って、本発明の化合物を含まない導電性部材でも耐熱性、耐湿熱性および、耐オゾン性は良化していくが、不十分であることが分かる。一方、銀ナノワイヤーの平均短軸長が増加するとヘイズ値は増加しており、平均短軸長が小さい方が、透明導電膜としてより好ましい光学特性を示すことが分かる。
すなわち、透明導電膜としてより好ましい光学特性を実現するためには、平均短軸長の短い(すなわち細い)銀ナノワイヤーを用いることが有効であり、その際に顕在化する耐熱性、耐湿熱性および耐オゾン性の改良手段として、本発明は特に有効であることがわかる。
【0265】
(実施例3および比較例3) −パターニング後の導電性部材の評価−
実施例1で得た導電性部材1−1に対し、以下の方法でパターニングを行った。まず、導電性部材1−1に、下記組成からなるポジレジスト(光可溶性組成物)を乾燥膜厚が2μmとなるようワイヤーバーコーターを用いて塗設した。90℃120秒間ホットプレート上でプリベイクを行った後、ストライプパターン(ライン/スペース=50μm/50μm)を有する光学マスクを介して、高圧水銀灯を用いて密着露光を施した。露光後の試料に対して後述の現像処理を施し、導電層上にライン/スペース=50μm/50μmからなるマスクレジストを形成した後、後述のエッチング処理工程を施すことによりマスクレジスト残存部以外の銀ナノワイヤーを溶解し、銀ナノワイヤーのストライプパターンを形成した。さらに、後述のポスト露光および剥離現像処理を施すことにより、マスクレジストを完全に溶解した。
【0266】
上記パターニング工程の各工程条件は以下の通りであった。
(露光)
高圧水銀灯i線(365nm)にて150mJ/cm(照度20mW/cm)の条件で露光を行った。
(現像処理)
0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液(23℃)にてパドル現像を90秒間行い、露光部を除去した。次いで純水(23℃)にて90秒間水洗を行い、水洗後、室温にて試料を乾燥した。
(エッチング処理)
下記エッチングAを用いて23℃90秒間エッチングを行い、さらに純水(23℃)にて90秒間水洗を行った。次いで純水(23℃)にて90秒間水洗を行い、水洗後、室温にて試料を乾燥した。
−エッチング液A−
・エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム・・・・2.71g
・エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物・・・0.17g
・チオ硫酸アンモニウム(70質量%)・・・3.61g
・亜硫酸ナトリウム・・・0.84g
・氷酢酸・・・0.43g
・水を加えて全量1,000mL
【0267】
(ポスト露光)
高圧水銀灯i線(365nm)にて300mJ/cm(照度20mW/cm)の条件で露光を行った。
(剥離現像処理)
0.4質量%のTMAH水溶液(23℃)にてパドル現像を90秒間行い、露光部を除去した。次いで純水(23℃)にて90秒間水洗を行い、水洗後、室温にて試料を乾燥した。
【0268】
このようにして、ライン/スペース=50μm/50μmからなるストライプパターンを有する銀ナノワイヤー導電パターンを形成した。得られたパターニング済みの導電性部材を導電性部材1−1Pとした。
【0269】
(ポジレジスト組成)
・アクリル系バインダー(A−1) 固形分として 11.0質量部
・感光剤(東洋合成工業(株)製TAS−200) 6.2質量部
・EHPA−3150(ダイセル化学工業株式会社製) 5.2質量部
・密着促進剤(信越化学工業(株)製KBM−403) 0.1質量部
・溶剤 PGMEA 45.0質量部
・溶剤 MFG 32.5質量部
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MFG:1−メトキシ−2−プロパノール
TAS−200:
【0270】
【化21】

【0271】
<バインダー(A−1)の合成>
共重合体を構成するモノマー成分としてメタクリル酸(MAA)7.79g、ベンジルメタクリレート(BzMA)37.21gを使用し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを使用し、これらを溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55.00g中において重合反応させることにより、下記式で表されるバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃ないし100℃に調整した。
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.21であった。
【0272】
【化22】

【0273】
導電性部材1−1Pの作製方法と同様の方法で、導電性部材1−2〜1−71にパターニングを施した導電性部材1−2P〜1−71Pを作製した。
パターニングを施したこれらの導電性部材は、いずれも光学顕微鏡の観察の結果、ライン/スペース=50μm/50μm前後の良好な導電性パターンが形成されていることが確認された。
【0274】
各導電性部材について、下記方法によって耐候性(耐熱性、耐湿熱性および耐オゾン性)の評価を行った。ここで、抵抗値の測定はおよびテスターに接続したプローバーを用い、それぞれの導電性部材に対し導電性ラインの抵抗値を5本ずつ測定し、平均値として求めた。評価結果を表4及び表5に示した。
【0275】
(耐熱性評価)
各試料に対し、実施例1の耐熱性評価と同様にして強制加熱処理(170℃90分間)を施し、強制加熱前後の抵抗値の比を抵抗上昇率として求め、実施例1と同様にランク付けを行った。
【0276】
(耐湿熱性評価)
各試料に対し、実施例1の耐湿熱性評価と同様の強制湿熱処理(85℃85%RH、240時間)を施し、強制湿熱処理前後の表面抵抗値の変化率を求め、実施例1と同様にランク付けを行った。
【0277】
(耐オゾン性評価)
各試料に対し、実施例1の耐オゾン性評価と同様の処理を施し、処理前後の表面抵抗値の変化率を求め、実施例1と同様にランク付けを行った。
【0278】
【表4】

【0279】
【表5】

【0280】
表4及び表5の結果から、パターニングを施した導電性部材においても、本発明の耐候性(耐熱性、耐湿熱性および耐オゾン性)の改良効果が得られることが明らかである。
【0281】
(実施例4および比較例4)
実施例1の導電性部材1−1〜1−62の作製方法に対し、PET基板101を調製例2で作製したガラス基板に変更した以外は実施例1と同様にして導電性部材4−1〜4−62を作製した。これらの導電性部材に対し実施例1と同様の評価を行った結果、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物を有さない導電性部材4−2に比べて、本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物を有する本発明による導電性部材4−1、4−3〜4−21、4−23〜4−29、4−31〜62はいずれも良好な耐候性(耐熱性、耐湿熱性および、耐オゾン性)を示した。
【0282】
(実施例5および比較例5)
実施例1の導電性部材1−2を、化合物2−10または化合物11−4の水溶液に5分間浸漬した後に流水で洗浄して、送風乾燥することにより、一般式(1)または式(2)で表される化合物を導電性層に含有させた導電性部材5−1および導電性部材5−2を作製した。また、化合物12−7のエタノール溶液に5分間浸漬後に流水で洗浄し、送風乾燥させることにより、導電性部材5−3を作製した。これらの各導電性部材5−1から5−3の導電性層における一般式(1)または式(2)で表される化合物の含有量を、各導電性部材をフリーザーミルで粉砕した後に溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフィーを用いた分析により、測定した。これらの導電性部材に対し実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
なお、表6には、化合物2−10、11−4、または、12−7を導電性組成物の塗布液にあらかじめ添加してから塗布した、導電性材料1−1、1−25、および、1−35の評価結果も併記した。
表6から、本発明の一般式(1)または式(2)で表される化合物を、浸漬により導電性層に添加した導電性部材においても本発明の効果が発現すること、また、その効果は導電性層塗布液にあらかじめ添加してから塗布する方が、より好ましいことが分かる。
【0283】
【表6】

【0284】
(実施例6)
−タッチパネルの作製−
実施例1の導電性部材1−53を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、光透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。
【0285】
(実施例7)
−転写型導電性部材の作製−
<転写性を有する基材Aの作製>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に
、下記処方A1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させた後さらに120℃で1分間乾燥させ、乾燥層厚16.5μmの熱可塑性樹脂層から成るクッション層を形成した。なお、本実施例における乾燥条件の温度は、いずれも基板表面の温度である。
【0286】
<熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A1>
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、重量平均分子量90,000) 58.4部
・スチレン/アクリル酸共重合体(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000) 136部
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
90.7部
・界面活性剤 メガファックF−780−F (DIC株式会社製) 5.4部
・メタノール 111部
・1−メトキシ−2−プロパノール 63.4部
・メチルエチルケトン 534部
【0287】
次に、形成したクッション層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、さらに120℃で1分間乾燥させて、乾燥層厚1.6μmの中間層を積層した。
【0288】
<中間層用塗布液の処方B>
・ポリビニルアルコール(PVA−205、鹸化率88%、(株)クラレ製)
3.22部
・ポリビニルピロリドン(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
1.49部
・メタノール 42.9部
・蒸留水 52.4部
【0289】
<<導電層の作製>>
(銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(Ag−4)の調製)
調製例1で調製した(a)銀ナノワイヤー水分散液(Ag−1)100部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1部と、1−プロパノール100部を添加し、セラミックフィルターを用いたクロスフローろ過機(株)日本ガイシ製)にて質量が10部となるまで濃縮した。次いで1−プロパノール100部およびイオン交換水100部を加え、再度クロスフローろ過機にて質量が10部となるまで濃縮する操作を3回繰り返した。さらに前記バインダー(A−1)を1部および1−プロパノールを10部加え、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの溶媒を除去しPGMEAを添加し、再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にPGMEAを加え、銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(Ag−4)を得た。最後のPGMEAの添加量は銀の含有量が、2%となるように調節した。分散剤として用いたバインダー(A−1)の含有量は0.05%であった。
【0290】
<感光性層形成用組成物の作製>
以下の組成を有する光硬化組成物を調製し、得られた光硬化性組成物Aとした。
〔光硬化性組成物A〕
(b)ポリマー:(前記合成例で得られたバインダー(A−1)、45%PGMEA溶液) 37.55部
(c)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15.02部
(d)光重合開始剤:2,4−ビス−(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン
1.481部
(e)重合禁止剤:フェノチアジン 0.116部
(f)界面活性剤:メガファックF784F(DIC株式会社製) 0.152部
(g)界面活性剤:ソルスパース20000(日本ルーブリゾール株式会社製)
1.88部
(h)溶媒(PGMEA) 283.2部
【0291】
光硬化性組成物Aは、(c)光重合性化合物の質量Mと、(b)バインダーの質量Pとの比率M/Pの値が0.2であった。また、全質量に占める溶媒PGMEAを除いた成分の占める質量の割合は20%であった。
【0292】
前記光硬化組成物A、前記銀ナノワイヤーの分散液(Ag−4)、溶媒PGMEA、溶媒MEKを攪拌、混合することによって、感光性層形成用組成物(1)を得た。
ここで各成分の混合比は、銀以外の成分である分散媒の質量Bと導電性繊維である銀の質量Cの比B/Cの値が5.0、感光性層形成用組成物中の銀濃度が0.635%になるように行った。また、溶媒の添加は、PGMEAおよびMFGの質量の合計とMEKの質量の比が1:1になるように添加した
【0293】
上記の感光性層形成用組成物(1)を、前述の転写性を有する基材Aに塗布、乾燥することによって、導電膜形成用積層体(1)(感光性転写材料)を作製した。ここで平均塗布銀量は0.015g/m、平均膜厚は0.05μmであった。得られた導電膜形成用積層体(感光性転写材料)を積層体(1−A)とした。
【0294】
<評価用試料作製>
積層体(1−A)を用いて、下記の転写工程、露光工程、現像工程、ポストベイク工程を経る事によってガラス基材上に導電膜を有する導電材料を作製し、得られた導電性部材を導電性部材6−1とした。
【0295】
(転写工程)
前述の調製例2で作製したガラス基板表面と、積層体(1−A)の感光性層の表面とが接するように重ね合わせてラミネートし、PET仮支持体/クッション層/中間層/感光性層/ガラス基板の積層構造を有する積層体を形成した。
次に、上記積層体から仮支持体を剥離した。
【0296】
(露光工程)
仮支持体剥離後の試料に対し、超高圧水銀灯i線(365nm)を用いて、露光量40mJ/cmで露光した。ここで感光性層の露光はクッション層側から、マスクを介して行い、マスクは導電性、光学特性評価用の均一露光部および耐熱性、耐湿熱性評価用のストライプパターン(ライン/スペース=50μm/50μm)を有していた。
【0297】
(現像工程)
露光後の試料に、1% トリエタノールアミン水溶液を付与して熱可塑性樹脂層(クッション層)および中間層を溶解除去した。これらの層を完全に除去できる最短除去時間は30秒であった。
次に、炭酸ナトリウム系現像液(0.06モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士フイルム(株)製)を用い、20℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像し、室温乾燥させた。次いで、100℃、15分熱処理を施した。このようにして、導電性部材である導電性部材6−1Pを得た。
【0298】
導電性部材6−1Pの作製方法に対して、感光性層形成用組成物(1)中に、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物および、本発明の金属に吸着可能な化合物、または金属イオンに配位可能な化合物を表7に示すごとく添加したことのみ異なる方法によって導電性部材を作製し、導電性部材6−2P〜6−10Pを得た。得られた各試料に対し、導電性および光学特性を、各試料の均一露光部の導電層を用いて実施例1と同様の方法によって評価した。また、耐候性(耐熱性、耐湿熱性および耐オゾン性)を、各試料のストライプパターン露光部を用いて実施例3と同様の方法によって評価した。結果を表7に示す。
表7から、本発明は転写型の感光性導電性部材に対しても有効なことが明らかである。
【0299】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0300】
本発明の導電性材料、ならびに導電性層用の組成物は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、液晶表示装置、タッチパネル機能付表示装置、その他の各種デバイスなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0301】
1 導電性部材
10 基材
20 導電性層
30 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、a)平均短軸長が1nm以上150nm以下の金属導電性繊維、およびb)前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上1000質量%以下の下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物、を含有する導電性組成物。
P−(CR=Y)−Q 一般式(1)
(一般式(1)において、PおよびQは、それぞれ独立に、OH、NRまたはCHRで表される基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Yは、CRまたは窒素原子を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R、R、R、R、R、または、Rで表される基は、そのうちの少なくとも二つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQは、OHおよびCHRで表される基であることはない。nが2以上の数を表すとき、(CR=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。)
−C(=O)−H 一般式(2)
(一般式(2)において、Rは、水素原子、OH基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記の一般式(3)〜一般式(17)のいずれかで表される化合物である請求項1記載の導電性組成物。
【化1】


(一般式(3)において、Vは、水素原子または置換基を表す。
一般式(4)において、Vは、水素原子または置換基を表す。
一般式(5)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R51およびR52は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(6)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R61およびR62は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
上記一般式(7)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R71およびR72は、それぞれ独立に、水素原子または置換基基を表す。
上記一般式(8)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R81およびR82は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(9)において、Vは、水素原子または置換基を表し、R91、R92、R93およびR94は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(10)において、V10は、水素原子または置換基を表し、R101、R102、R103およびR104は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(11)において、V11は、水素原子または置換基を表す。
一般式(12)において、V12は、水素原子または置換基を表し、R121およびR122は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(13)において、V13は、水素原子または置換基を表し、R131およびR132は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(14)において、V14は、水素原子、または置換基を表す。R141、R142およびR143は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(15)において、V15は、水素原子または置換基を表し、R151は、水素原子または置換基を表す。
一般式(16)において、V16は、水素原子または置換基を表し、R161は、水素原子または置換基を表す。
一般式(17)において、R171、R172、R173、R174は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
一般式(3)〜(16)におけるV〜V16で表される基の結合形態は、一般式(3)〜(16)に含まれる環状構造の置換可能な任意の位置に、1個ないし置換可能な任意の個数、結合していることを表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、前記の一般式(3)、一般式(4)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(11)、一般式(12)、一般式(13)および一般式(14)のいずれかで表される化合物である請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が、前記金属導電性繊維に対して、0.1質量%以上100質量%以下含まれる請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記金属導電性繊維が、銀を50モル%以上100モル%以下含む請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記金属導電性繊維の平均短軸長が1nm以上30nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項7】
更に、c)金属に吸着可能な化合物および金属イオンに配位可能な化合物より選ばれた少なくとも一つの化合物を含有する請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の導電性組成物を含む導電性層を有する導電性部材。
【請求項9】
前記導電性層における表面抵抗が、1Ω/□以上1000Ω/□以下である請求項8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記導電性層が、導電性領域および非導電性領域を含む請求項8または請求項9に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記基材と前記導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する請求項8〜請求項10のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項12】
基材上に、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の導電性組成物と溶剤とを含む導電性組成物の塗布液を塗布する工程を含む導電性部材の製造方法。
【請求項13】
請求項8〜請求項11のいずれか一項に記載の導電性部材を含むタッチパネル。
【請求項14】
請求項8〜請求項11のいずれか一項に記載の導電性部材を含む太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84543(P2013−84543A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289796(P2011−289796)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】