説明

導電性組成物、帯電防止塗料およびそれを使用した保護フィルム

【課題】本発明は、PETフィルムに対する接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い被膜を形成することができる導電性組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有し、前記重合体(A)と前記導電性ポリマー(B)との質量比が、85/15〜20/80である導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、帯電防止塗料およびそれを使用した保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板や位相差板の製造工程においては、その表面の汚れや傷付きを防止するために表面保護フィルムを貼着した後、反対面を粘着加工して積層体とし、さらに目的の大きさに断裁する。断裁品は、後の工程に供されるまで、積み重ねた状態で取り扱われる。断裁品は静電気をおびやすく、ゴミを引き寄せたり、各枚葉ごと付着してしまうという問題がある。また、表面保護フィルムを剥がす時、静電気が発生し光学フィルム表面にゴミが付着したり、光学フィルムを使用した液晶部材の液晶に異常をきたしたり、フラットパネルディスプレイのパネルに使用されている半導体を破損したりすることがある。このため、発生した静電気を素早く放出する必要がある。
【0003】
表面保護フィルムとしては、基材の一方の表面に帯電防止層とその上に設けられた防汚層とを有し、基材の他方の表面には粘着層を有するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2には、「基材と、この基材の一側面に設けた粘着層と、前記基材の他側面に設けた高分子層とを備え、前記高分子層は、平均分子量10000以上のポリエステル樹脂やアクリル樹脂、平均分子量5000以上で塗膜として、100kgf/cm2以上の引張強さを持つウレタン樹脂からなる一種若しくは二種以上の高分子化合物と、シリコーン系やフッ素系などからなる一種若しくは二種以上の離型剤、ITO(すずをドープした酸化インジウム化合物)、ATO(アンチモンをドープした酸化錫)、AZO(アルミをドープした酸化亜鉛)、酸化錫などからなる一種若しくは二種以上の金属酸化物系導電剤とを主成分とする層であることを特徴とする表面保護フィルム。」が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−320631号公報
【特許文献2】特開2006−326961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の保護フィルムは、特許文献1に記載されているような帯電防止層を基材の上に形成し、さらに防汚層を2工程で形成する方法に比べて、安価に生産することは可能であるが、ポリエステル樹脂等のポリマーとシリコーン系やフッ素系等のポリマーとは相溶し難く、Hazeが高くなってしまう(即ち、透明度が低くなる)という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、PETフィルムに対する接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い被膜を形成することができる導電性組成物および帯電防止塗料を提供することを目的とする。
また、本発明は、一般的に用いられる保護フィルムに比べて簡便かつ安価に製造することができ、基材と導電性組成物を積層して得られる層との接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有し、重合体(A)と導電性ポリマー(B)との質量比が、85/15〜20/80である導電性組成物が、PETフィルムに対する接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い被膜を形成することができることを見出した。更に、少なくとも、基材と、上記基材の一方の表面に上記導電性組成物を積層して得られる層とを有する保護フィルムが、一般的に用いられる保護フィルムに比べて簡便かつ安価に製造することができ、基材と導電性組成物を積層して得られる層との接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高くなることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
(1)ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有し、前記重合体(A)と前記導電性ポリマー(B)との質量比が、85/15〜20/80である導電性組成物。
【0009】
(2)前記重合体(A)が下記式(1)で表される繰り返し単位を10モル%以上含み、かつ、前記導電性ポリマー(B)がスルホコハク酸を含むドーパントによってドープ接合されている、上記(1)に記載の導電性組成物。
【0010】
【化2】

【0011】
(3)前記重合体(A)が、少なくとも、ポリエステルポリオールと、シロキサン含有ポリオール化合物および/またはフッ素含有ポリオール化合物と、ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物とを反応させて得られる重合体である上記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
【0012】
(4)前記ポリエステルポリオールと、前記シロキサン含有ポリオール化合物および/または前記フッ素含有ポリオール化合物との質量比が、30/70〜80/20である上記(3)に記載の導電性組成物。
【0013】
(5)前記シロキサン含有ポリオール化合物が、片方の端部にヒドロキシ基を2個有するシロキサン含有ジオール化合物である上記(3)または(4)に記載の導電性組成物。
【0014】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性組成物からなる帯電防止塗料。
【0015】
(7)少なくとも、基材と、前記基材の一方の表面に上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性組成物を積層して得られる層とを有する保護フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性組成物および帯電防止塗料は、PETフィルムに対する接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い被膜を形成することができる。
また、本発明の保護フィルムは、一般的に用いられる保護フィルムに比べて簡便かつ安価に製造することができ、基材と導電性組成物を積層して得られる層との接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の導電性組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)は、ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有し、重合体(A)と導電性ポリマー(B)との質量比[重合体(A)/導電性ポリマー(B)]が、85/15〜20/80である。
【0018】
重合体(A)について以下に説明する。
重合体(A)は、ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体である。
ポリエステル骨格は主鎖にエステル結合を有する構造であり、ポリシロキサン骨格は主鎖にシロキサン結合を有する構造である。また、フッ素樹脂骨格は下記式で表される繰返し単位を有する構造である。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式中、Rはフッ素原子、水素原子またはアルキル基であり、複数のRのうち少なくとも1つはフッ素原子である。
【0021】
重合体(A)は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含んでいることが好ましく、下記式(1)で表される繰り返し単位を10モル%以上含むのがより好ましい。これらの重合体(A)は、スルホコハク酸を含むドーパントによってドープ接合されている導電性ポリマー(B)と組合わせて用いることにより、混合性に優れ、均一に分散でき、接着性や透明度が高くなる。更に、乾燥後の表面抵抗を低くできる点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を20モル%以上含むものがより好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオールと、シロキサン含有ポリオール化合物および/またはフッ素含有ポリオール化合物と、ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物とを反応させる方法が好ましい。
【0024】
重合体(A)の製造に用いるポリエステルポリオールについて以下に説明する。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコールを含むポリオール成分と、カルボン酸成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールが、PETフィルムに対する接着性に優れる点から好適に挙げられる。
なお、上記式(1)で表される繰返し単位は、ネオペンチルグリコールを含むポリオール成分を用いることにより重合体(A)に導入することができる。
【0025】
上記ポリオール成分は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であり、ネオペンチルグリコール以外に、エチレングリコール、プロピレングリコールのようなグリコール等を含んでもよい。
上記ポリオール成分中のネオペンチルグリコールの量は、30モル%以上であるのが好ましい。この範囲であると、導電性ポリマー(B)との混合性に優れ、均一に分散できる。更に、乾燥後の表面抵抗を低くできる点から、50モル%以上であるのがより好ましい。
【0026】
上記カルボン酸成分は、カルボキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。一般のポリエステル用としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが用いられるが、特に、テレフタル酸とイソフタル酸とを併用するのが透明性、耐水性、耐薬品性に優れ、低コストであるという点から好ましい。
【0027】
上記ポリエステルポリオールの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
【0028】
上記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、導電性ポリマー(B)との混ざりやすさ、導電性組成物の物性という点から、10,000〜500,000が好ましく、20,000〜200,000がより好ましい。
【0029】
重合体(A)の製造に用いるシロキサン含有ポリオール化合物について以下に説明する。
上記シロキサン含有ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上とジメチルシロキサン[−Si(−CH32−O−]とを有する化合物であれば特に制限されない。
【0030】
1分子のシロキサン含有ポリオール化合物が有するヒドロキシ基は、2個以上であり、2〜3個であるのが好ましく、2個であるのがより好ましい。
1分子のシロキサン含有ポリオール化合物が有するジメチルシロキサンは、10〜132個であるのが好ましく、63〜132個であるのがより好ましい。
【0031】
シロキサン含有ポリオール化合物において、ヒドロキシ基2個以上およびジメチルシロキサン以外の構造は、特に制限されない。ヒドロキシ基2個以上およびジメチルシロキサン以外の構造としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は分岐することができる。
【0032】
シロキサン含有ポリオール化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物や下記式(3)で表される化合物が好適に挙げられる。
シロキサン含有ポリオール化合物として下記式(3)で表される化合物のような片方の端部にヒドロキシ基を2個有するシロキサン含有ジオール化合物を用いると、接触角が大きくなり防汚性により優れる点から好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
上記式(2)中、nは9〜250の整数である。
上記式(3)中、R1は炭化水素基を表し、mは9〜131の整数である。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0035】
シロキサン含有ポリオール化合物の数平均分子量は、導電性組成物の膜強度の必要性から、1,000〜15,000であるのが好ましく、5,000〜10,000であるのがより好ましい。
【0036】
シロキサン含有ポリオール化合物は市販品を使用することができる。シロキサン含有ポリオール化合物の市販品としては、例えば、サイラプレーン FM−DA11、サイラプレーン FM−DA21、サイラプレーン FM−DA26(いずれもチッソ社製)が挙げられる。
シロキサン含有ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
重合体(A)の製造に用いるフッ素含有ポリオール化合物について以下に説明する。
上記フッ素含有ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上とフルオロエチレンとを有するものであれば特に制限されない。
本発明において、フルオロエチレン中の2個の炭素原子は、フッ素含有ポリオール化合物の主鎖を構成するものである。
フルオロエチレンとしては、−CFH−CH2−、−CF2−CH2−、−CF2−CFH−、−CF2−CF2−がある。
フッ素含有ポリオール化合物1分子中のフルオロエチレンは、−CFH−CH2−、−CF2−CH2−、−CF2−CFH−および−CF2−CF2−からなる群から選ばれる少なくとも1種が選択される。
1分子のフッ素含有ポリオール化合物が有するヒドロキシ基は、2個以上であり、重合体(A)を製造する際に生成物がゲル化しにくいという観点から、2〜4個であるのが好ましく、2〜3個であるのがより好ましい。
1分子のフッ素含有ポリオール化合物が有するフルオロエチレンは、230〜270個であるのが好ましく、270個であるのがより好ましい。
【0038】
フッ素含有ポリオール化合物において、ヒドロキシ基が2個以上でありフルオロエチレンを有する以外の構造は、特に制限されない。ヒドロキシ基が2個以上でありフルオロエチレンを有する以外の構造としては、例えば、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、カルボキシ基、塩素原子、臭素原子およびフッ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する炭化水素基が挙げられる。
【0039】
フッ素含有ポリオール化合物としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
式中、Aはヒドロキシ基またはR6−NH−COO−を表し、R6は炭化水素基であり、Xはフッ素原子または塩素原子を表し、R2、R3はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R4、R5はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、pは40〜52の整数である。
2、R3としてのアルキル基、R4、R5としてのアルキレン基、R6としての炭化水素基は特に制限されない。
【0042】
フッ素含有ポリオール化合物の数平均分子量は、導電性組成物の膜強度の必要性から、25,000〜32,000であるのが好ましく、28,000〜30,000であるのがより好ましい。
【0043】
フッ素含有ポリオール化合物の製造方法は特に制限されない。
フッ素含有ポリオール化合物がヒドロキシ基を2個有する場合、例えば、原料としてのヒドロキシ基を3個以上有するフッ素含有ポリオール化合物と、モノイソシアネート化合物とを80℃、12時間の条件下で反応させる方法が挙げられる。
フッ素含有ポリオール化合物の調製の際に使用されるヒドロキシ基を3個以上有するフッ素含有ポリオール化合物は特に制限されない。
ヒドロキシ基を3個以上有するフッ素含有ポリオール化合物の市販品として、例えば、ルミフロン(旭ガラス社製)が挙げられる。
フッ素含有ポリオール化合物の調製の際に使用されるモノイソシアネート化合物はイソシアネート基を1個有する化合物であれば、特に制限されない。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、イソプロピルアルコール(IPA)、2−エチルヘキサノール(2−EH)およびブチルアルコール(BA)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールとを、等モル用いて、80℃付近の温度下で約12時間反応させることによって得られるものが挙げられる。
モノイソシアネート化合物を調製する際に使用するアルコールは、沸点が80℃以上のものであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
フッ素含有ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
重合体(A)の製造に用いるヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物について以下に説明する。
ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリイソシアネート化合物が、重合体作製の反応が速く簡便なこと、重合体(A)の強度が高くなることから好ましい。上記ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物は、1分子中に異なる種類のヒドロキシ基と反応する官能基を合計で2個以上有していてもよい。
【0045】
上記ポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタンの製造に用いられる種々のものを用いることができる。具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記ポリカルボン酸は、カルボキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0047】
上記重合体(A)の製造時におけるポリオールと上記ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物とを混合する割合は、ポリオールのヒドロキシ基の数に対する上記ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物のヒドロキシ基と反応する官能基の数の比(ヒドロキシ基と反応する官能基/ヒドロキシ基)が、0.5/1〜1.2/1であるのが好ましく、0.8/1〜2/1であるのがより好ましい。
【0048】
上記重合体(A)の製造は、例えば、通常のウレタンプレポリマーと同様に行うことができ、所定量比の上述した各ポリオールおよびポリイソシアネート化合物を混合し、常圧下、常温〜100℃で、加熱撹拌することによって行うことができる。
【0049】
重合体(A)を製造する際における、上記ポリエステルポリオールと、上記シロキサン含有ポリオール化合物および/または上記フッ素含有ポリオール化合物との質量比は、PETフィルムに対する密着性および防汚性に優れる点から、30/70〜80/20であるのが好ましく、40/60〜70/30であるのがより好ましい。
【0050】
重合体(A)の重量平均分子量は、導電性ポリマー(B)との混合性および導電性組成物の膜強度という点から10,000〜200,000であるのが好ましく、30,000〜100,000であるのがより好ましい。
【0051】
次に、導電性ポリマー(B)について説明する。
導電性ポリマー(B)は特に限定されない。具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの導電性ポリマーの中でも、ポリアニリン類が、汎用性、経済性という点から好ましい。
【0052】
上記ポリアニリン類は、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体およびこれらの混合物であり、具体的には、下記式(5)で表される化合物の重合体が好適に挙げられる。
【0053】
【化7】

【0054】
上記式(5)中、qは0〜5の整数を表す。
は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルチオアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、カルボキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ハロアルキル基、ニトロアルキル基またはシアノアルキル基であり、水素原子、アルキル基であるのが好ましい。複数のRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
上記式(5)で表される化合物としては、具体的には、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、o−シアノアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン、3−フェノキシアニリン等が挙げられる。
上記ポリアニリン類は、これらのモノマーの1種を用いた重合体であってもよく、2種以上を用いた共重合体であってもよい。また、上記ポリアニリン類には、上記モノマーの他に、更に他のモノマーを本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0056】
上記ポリアニリン類としては、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリ(メチルアニリン)、ポリ(ジメチルアニリン)、ポリ(エチルアニリン)、ポリ(アニリンスルホン酸)が好適に挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記ポリアニリン類は、その合成時にドーパントによってドープ接合されたポリアニリン類であるのが好ましい。このようなポリアニリン類は、合成後にドープ接合されたものと比較して重合体(A)との混合性に優れる。
【0058】
上記導電性ポリマー(B)のドープ接合されていないときの重量平均分子量は、電気抵抗を低くできる点から、10,000超であるのが好ましい。
上記導電性ポリマー(B)のドープ接合されていないときの重量平均分子量は、電気抵抗を低くでき、かつ、重合体(A)との混合性に優れる点から、10,000〜1,000,000であるのが好ましく、導電性および混合性のバランスに優れる点から50,000〜300,000であるのがより好ましい。
【0059】
上記導電性ポリマー(B)の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。ポリアニリン類を製造する場合、一般的には、非常に低温(−10℃以下)の状態で長時間(48時間程度)に渡って重合を行うことが良いとされている。また、0℃〜常温の比較的高い温度においてもアニオン系の界面活性剤を含んだ系中で重合するとアニリンが高分子化し、2万〜100万の分子量を有するポリアニリンが合成できる。さらには、低温・長時間の重合とアニオン系界面活性剤の併用で合成を行う方法を使用してもよい。
【0060】
また、上記導電性ポリマー(B)は、ドーパントの存在下で上記モノマーの重合を行うのが、得られる導電性ポリマーの導電性を向上しうる点から好ましい。また、ドープされていない導電性ポリマーにドーパントを添加してドープすることもできる。
【0061】
本発明においては、上記ドーパントとしてスルホコハク酸を含むものを用いるのが、重合体(A)との相溶性が高くなり、PETフィルムに対する接着性および透明度が高くなる点から好ましい。上記スルホコハク酸は、下記式(6)で表される化合物である。
【0062】
【化8】

【0063】
上記式(6)中、RおよびRは、それぞれ、アルキル基であり、炭素数は4〜20のアルキル基が好ましく、入手容易性から炭素数6〜12のアルキル基がより好ましい。
【0064】
上記スルホコハク酸としては、スルホコハク酸塩(例えば、ナトリウム塩)の形で市販されているものも用いることができる。
【0065】
スルホコハク酸以外のドーパントとしては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン等のルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸等の有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノール等のフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物等の有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸等の高分子酸;プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステル等の硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性ポリマー(B)と重合体(A)との混合性に優れる点から、上記ドーパントはスルホコハク酸を100モル%含むのが好ましい態様の1つである。
【0066】
また、導電性ポリマー(B)と重合体(A)との混合性に優れ、電気抵抗をより低くできる点から、上記ドーパントは、スルホコハク酸と、アルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とを含むのが好ましい態様の1つである。ドーパントの添加時におけるスルホコハク酸とアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフタレンスルホン酸とのモル比(スルホコハク酸/アルキルベンゼンスルホン酸とアルキルナフタレンスルホン酸の合計)は、導電性ポリマー(B)と重合体(A)との混合性および電気抵抗のバランスに優れる点から、10/90〜90/10であるのが好ましく、20/80〜80/20であるのがより好ましく、30/70〜50/50であるのが更に好ましい。
【0067】
上記アルキルベンゼンスルホン酸は下記式(7)で表される化合物であり、上記アルキルナフタレンスルホン酸は下記式(8)で表される化合物である。
【0068】
【化9】

【0069】
上記式(7)中、R10は、炭素数1〜20のアルキル基であり、一般的には炭素数10〜14のアルキル基を持つアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩が市販されている。価格面等から最も一般的なドデシル基がより好ましい。ドデシルベンゼンスルホン酸には、直鎖型と分岐型があるがどちらでも同じように用いることができる。
上記式(8)中、R11は、炭素数1〜20のアルキル基であり、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、入手が容易であることから炭素数4〜12のアルキル基がより好ましい。通常市販では、塩の形で扱われており、同様に使用可能である。
【0070】
上記ドーパントの含有量は、上記導電性ポリマー(B)の構成単位と、ドーパントとのモル比(導電性ポリマー(B)の構成単位/ドーパント)が、100/20〜100/200となる量であるのが好ましく、100/40〜100/100となる量であるのがより好ましい。ドーパントの含有量がこの範囲であると導電性に優れ(抵抗値小)、重合体(A)との混合性に優れる。
【0071】
本発明の組成物における重合体(A)と導電性ポリマー(B)との質量比は、85/15〜20/80である。この範囲であると、帯電防止性と、PETフィルムに対する接着性、防汚性および透明度とをバランス良く満たすことができる。これらの特性により優れる点から、重合体(A)と導電性ポリマー(B)との質量比は、80/20〜50/50であるのが好ましく、75/25〜60/40であるのがより好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、低粘度化でき、作業性を向上できる点から、更に、溶媒を含有するのが好ましい。溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、他の成分との混合性および揮発性に優れる点からトルエンが好ましい。
【0073】
溶媒量は、塗料を塗布する際の作業性および塗膜の性能(抵抗値、強度等)によって最適な膜厚にするために、自由に設定することができる。
溶媒の含有量は、重合体(A)100質量部に対して100〜100,000質量部であるのが好ましい。
【0074】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0075】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0076】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0077】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0078】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0079】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0080】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0081】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のように行うことができる。
まず、反応容器に、アニリンモノマー、上記ドーパント、水および塩酸を加え、約0℃に冷却した後、適当な化学酸化重合触媒を加え、数時間保持して、ドーパントによりドープ接合されたポリアニリン(ドープポリアニリン)を合成する。これにメタノールを加え、ろ過した残渣を適当な混合ミキサー中で、上記重合体(A)および溶媒と十分に混合して、本発明の組成物を得ることができる。
【0082】
本発明の組成物から得られる塗膜の表面抵抗は、特に限定されないが、1×104〜9.9×1011Ω/□であるのが好ましく、1×107〜9×109Ω/□であるのがより好ましい。
上記表面抵抗は、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用いて測定した表面抵抗を意味する。
【0083】
上述した本発明の組成物は、重合体(A)中にポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有するため、ポリエステルと、ポリシロキサンおよび/またはフッ素樹脂とが相分離せず、得られる被膜のHazeを小さくすることができる。また、その被膜はPETフィルムに対する接着性、帯電防止性および防汚性にも優れる。
本発明の導電性組成物は、接着剤、コーディング剤等の種々の用途に用いることができるが、特に帯電防止塗料として有用である。
【0084】
以下、本発明の保護フィルムの好適な一例について詳細に説明する。
本発明の保護フィルムは、基材と、基材の一方の表面に本発明の組成物を積層して得られる層と、基材の他方の表面に形成された粘着層とを有する保護フィルムである。
【0085】
上記基材は、特に限定されないが、透明なフィルムがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル;ナイロン;ポリオレフィン等のフィルムが挙げられる。これらの中でも、帯電防止層との接着性に優れる点からポリエステル系フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)がより好ましい。
【0086】
基材の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0087】
本発明の組成物を積層する方法は、特に限定されず、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等で塗布した後、乾燥して、積層する方法が挙げられる。また、基材との2層押出方法、射出成形によるサンドイッチ方法、2枚のフィルムの熱融着等を採用することもできる。
【0088】
上記基材の一方の表面に本発明の組成物を積層して得られる層(以下「防汚・帯電防止層」という。)の厚さは、特に限定されないが、0.01μm〜2mmであるのが好ましく、0.05μm〜0.5μmであるのが価格、製造スピードの点からより好ましい。
【0089】
防汚・帯電防止層は、防汚性の観点から接触角が80度以上であるのが好ましい。また、帯電防止性の観点から表面抵抗が1011Ω/□以下であるのが好ましい。また、透明度の観点から全光透過率は80%以上であることが好ましく、Hazeは5以下であることが好ましい。ただし、各特性の測定条件および方法は、後述する実施例の評価方法と同様である。
【0090】
粘着層は、公知の保護フィルムの粘着層と同様であり、防汚・帯電防止層が形成されている基材の表面とは反対の面、即ち、被保護部材と接触させる面側に設けられる。
粘着層には、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができるが、耐熱性や経済性の点からアクリル系粘着剤が好ましい。
粘着層は、例えば、上記のような粘着剤を有機溶剤へ溶解させた後、上述した塗布方法により形成することができる。
【0091】
上述した本発明の保護フィルムは、基材上に防汚性と帯電防止性を兼ね備えた層を有することにより、基材上に帯電防止層と防汚層とを有する従来の保護フィルムに比べて層数を少なくすることができる。そのため、簡便かつ安価に製造することができる。
また、本発明の保護フィルムは、本発明の導電性組成物を用いるため、基材と防汚・帯電防止層の接着性、帯電防止性および防汚性に優れ、透明度が高い。
【0092】
本発明の保護フィルムは、上述した実施形態に限定されず、種々の改良を加えることができる。例えば、上記粘着層の表面に剥離フィルムを貼り付けることにより、保護フィルムへの埃やゴミの付着を防止でき、保管が容易になる点から好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<重合体(A)の合成>
(合成例1〜8)
撹拌機、コンデンサー、温度計を備えた反応容器に下記第1表に示す各成分を第1表に示す割合(質量部)で入れ、80℃で6時間かけて反応を行って各重合体を作製した。
【0094】
【表1】

【0095】
第1表中の各成分は下記のとおりである。
・ポリエステルジオール1:アデカニューエースY9−10、アデカ社製、ポリオール成分 ネオペンチルグリコール、酸成分 アジピン酸、数平均分子量1000
・ポリエステルジオール2:アデカニューエースF9−30、アデカ社製、ポリオール成分 1,4−ブタンジオール、酸成分 アジピン酸、数平均分子量2000
・シロキサン含有ポリオール化合物1:サイラプレーンFM4411、チッソ社製、上記式(2)で表される化合物、数平均分子量1000
・シロキサン含有ポリオール化合物2:サイラプレーンDA21、チッソ社製、上記式(3)で表される化合物、数平均分子量5000
・フッ素含有ポリオール化合物:ルミフロンLF200、旭硝子社製、数平均分子量10000
・トリレンジイソシアネート:TDI80、三井武田ケミカル社製
・オクチル酸ビスマス:プキャット25、日本化学産業社製、固形分25質量%
【0096】
<ポリアニリンの合成>
(合成例9)
アニリン1質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(リパール870P、ライオンアクゾ社製、固形分70質量%)2.4質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(試薬、関東化学社製)1.7質量部および蒸留水50質量部を混合した。次に、この混合液に6N塩酸1.8質量部を加えた。
この混合液を0℃に冷却した後、酸化剤として過硫酸アンモニウム2.7質量部を加えて、10時間酸化重合させた。
その後、メタノールを加えてポリアニリンを析出させ、ろ過して得られた固体を多量の蒸留水により洗浄して、余剰のスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸、過硫酸アンモニウムの残分を除去して、60℃で真空乾燥し、ポリアニリンを得た。得られたポリアニリンをトルエンに分散させて、スルホコハク酸とドデシルベンゼンスルホン酸でドープされたポリアニリンを5質量%含むトルエン分散液とした。これを合成例9のポリアニリン分散液とする。このポリアニリン分散液中の固形分は5質量%であり、スルホコハク酸とドデシルベンゼンスルホン酸の質量比は1/1である。
なお、ろ過終了時にポリアニリンの一部をとり、アンモニア水で脱ドープした後、NMPに溶解させ、GPCにより重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は70,000であった。
【0097】
(合成例10)
ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸(試薬、関東化学社製)3.3質量部のみ用いた以外は、合成例9と同様の方法でポリアニリンを合成した。
合成例9と同様の方法でポリアニリンの重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は180,000であった。
【0098】
<導電性組成物の調製および評価>
(実施例1〜11および比較例1〜2)
下記第2表に示す各成分を、第2表に示す割合(質量部)で、ホモジナイザーを用いて5分間混合し、第2表に示される各組成物を得た。
【0099】
次に、得られた組成物をPETフィルム(厚さ25μm)の上にスピンコータを用いて塗布した後、オーブン内で100℃で1分間乾燥して、厚さ0.5μmの防汚・帯電防止層を形成して保護フィルムを得た。
得られた各保護フィルムについて、下記の方法により、表面抵抗、PETフィルムに対する接着性、接触角、全光透過率、Hazeを評価した。結果を第2表に示す。
【0100】
(表面抵抗)
得られた保護フィルムについて、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用い、25℃、50%RHの条件下において100Vにおける防汚・帯電防止層の表面抵抗を求めた。
【0101】
(接着性)
保護フィルムの防汚・帯電防止層に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。
【0102】
(接触角)
得られた保護フィルムの上に、接触角計(エキシマ社製)にて、1μm3の水滴を滴下し、水の接触角を測定した。
【0103】
(全光透過率/ヘーズ)
得られた保護フィルムについて、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)により、全光透過率およびヘーズを求めた。
【0104】
(比較例3)
メタクリロキシ基を有するシロキサン含有ポリオール(サイラプレーンFM−0711、チッソ社製、数平均分子量1000)100gと、メタクリル酸メチル(試薬、アルドリッチ社製)100gを混合し、固形分が10質量%になるようにトルエンで希釈した。この混合物に、過硫酸アンモニウムを0.1g加えて、80℃で4時間反応させ、アクリル骨格にシリコーンがグラフトしたポリマーを得た。更に、得られたポリマー溶液50gとポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡社製)をMEKに固形分10%で溶解したもの50gを混合した。この混合物100gに対して、合成例9のポリアニリン分散液を85.7g加えて、帯電防止塗料を作製した。
得られた帯電防止塗料をPETフィルム(厚さ25μm)の上にスピンコータを用いて塗布した後、オーブン内で100℃で1分間乾燥して、厚さ0.5μmの層を形成して保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムについて、上記の方法により物性を測定したところ、表面抵抗が2.5E+08Ω/□、PETフィルムに対する接着性が100/100、接触角が89度、全光透過率が75%、Hazeが10.5であった。
【0105】
【表2】

【0106】
上記第2表に示す結果から明らかなように、重合体(A)の割合が多い比較例1は、表面抵抗が大きいため、帯電防止性が低かった。また、重合体(A)の割合が少ない比較例2は、PETフィルムに対する接着性が低かった。また、比較例3では、シリコーン含有アクリル樹脂とポリエステル樹脂との相溶性が良くないため、塗料の透明性が低下し、Hazeが大きくなってしまった。一方、実施例1〜11は、表面抵抗が低く、PETフィルムに対する接着性に優れ、接触角が高く、全光透過率が高く、Hazeが小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル骨格と、ポリシロキサン骨格および/またはフッ素樹脂骨格とを有する重合体(A)と、導電性ポリマー(B)とを含有し、
前記重合体(A)と前記導電性ポリマー(B)との質量比が、85/15〜20/80である導電性組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が下記式(1)で表される繰り返し単位を10モル%以上含み、かつ、前記導電性ポリマー(B)がスルホコハク酸を含むドーパントによってドープ接合されている、請求項1に記載の導電性組成物。
【化1】

【請求項3】
前記重合体(A)が、少なくとも、ポリエステルポリオールと、シロキサン含有ポリオール化合物および/またはフッ素含有ポリオール化合物と、ヒドロキシ基と反応する官能基を2個以上有する化合物とを反応させて得られる重合体である請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールと、前記シロキサン含有ポリオール化合物および/または前記フッ素含有ポリオール化合物との質量比が、30/70〜80/20である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記シロキサン含有ポリオール化合物が、片方の端部にヒドロキシ基を2個有するシロキサン含有ジオール化合物である請求項3または4に記載の導電性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物からなる帯電防止塗料。
【請求項7】
少なくとも、基材と、前記基材の一方の表面に請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物を積層して得られる層とを有する保護フィルム。

【公開番号】特開2009−270047(P2009−270047A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123250(P2008−123250)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】