説明

導電性組成物およびそれを用いた成形体

【課題】本発明は、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することを課題とした。その具体的な課題として、広範に使用可能な導電性組成物を実現することを課題とした。
【解決手段】 導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子が該フッ素アルコールに分散及び/又は溶解している部分を含む事を特徴とする、組成物、によって、解決する。導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子の少なくとも一部が該フッ素化アルコールに溶解している事を特徴とする、組成物が、さらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に不溶・不融である事で知られる導電性高分子に皮膜形成性や加工性などの性質を付与するために成されたものである。本発明により導電性高分子の膜形成性が著しく向上し、プラスチックの導電性化、固体コンデンサ用電解質や二次電池の電解質用の電気化学素子、その化学反応を利用した防錆び、汚染防止塗料、ドープ脱ドープを利用した表示素子、アクチュエーターなどの電気/機械変換素子、太陽電池や高分子LEDなどの電気/光変換素子、有機FETなどの半導体素子、などの幅広い応用展開が可能となる。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーは、1977年にポリアセチレンに対してよう素ドーピングする事により高伝導性が発現する事が見出された事に始まる。(非特許文献1)しかしながら、ポリアセチレンは不溶・不融であり、その実用的な用途は実現されなかった。溶媒溶解性や溶融性を有する導電性高分子が開発されれば、プラスチックの導電性化、固体コンデンサ用電解質や二次電池の電解質用の電気化学素子、その化学反応を利用した防錆び、汚染防止塗料、ドープ脱ドープを利用した表示素子、アクチュエーターなどの電気/機械変換素子、太陽電池や高分子LEDなどの電気/光変換素子、FETなどの半導体素子などの幅広い応用展開が期待される。そのため溶媒溶解性を有する導電性高分子を作ると言う多くの試みが成されてきた。
【0003】
溶媒溶解性を有する高分子としては1986年に開発されたポリ3アルキルチオフェンがあるがこれは脱ドープ状態で溶媒溶解性を有する高分子であって、導電性の発現には別のプロセスでドーピング処理をする必要がある。この様なポリアルキルチオフェンの応用例は例えば(特許文献1)に記載されている。ドーピングされた状態で溶媒溶解性を有する高分子としては、1992年に開発されたポリアニリンが最初の例である。これはドデシルベンゼンスルホン酸をドーパントとして溶媒溶解性を持たせたものである。(非特許文献2)この様なポリアニリンの応用例は例えば(特許文献2)(特許文献3)に記載されている。水に分散された導電性高分子としては1993年に開発された3,4−エチレンジオキシチオフェンの例がある。これは水に1.3重量%で分散された溶液である。(非特許文献3)この様なポリチオフェンの応用例は例えば(特許文献4)に記載されている。しかしながら現在でも溶媒溶解性を有する導電性高分子の例は、以上の例に限られており、例えば導電性高分子の代表であるポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどは不溶・不融であると考えられている。そのため導電性高分子は多くの応用展開の可能性を持ちながらその範囲は限られたものであった。
【特許文献1】特開平5−290618
【特許文献2】特開平5−41338
【特許文献3】特開平10−279798
【特許文献4】特開平11−312626
【非特許文献1】Phys. Rev. Lett.39(1977)1098
【非特許文献2】Synthetic Metal 48(1992)91
【非特許文献3】Advanced Materials 12(7)(2000)489
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の状況を鑑みて、本発明は、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することを課題とした。その具体的な課題として、広範に使用可能な導電性組成物を実現することを課題とした。特に、従来溶媒不溶であると考えられてきたポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子を溶解した形の導電性組成物を開発する事を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決する為に、鋭意検討の結果、我々はフッ素化アルコールに着目し、フッ素化アルコールの導電性高分子溶解性について検討した。その結果、ある種のフッ素化アルコール、およびフッ素化アルコールと塩素化アルカンからなる混合溶媒がポリピロール、ポリチオフェンなど、従来溶媒不溶と考えられて来た導電性高分子を溶解する事ができる事を発見し、本発明を成すに至った。したがって、
【0006】
(1)本発明の第1は、
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子が該フッ素化アルコールに分散及び/又は溶解している部分を含む事を特徴とする、組成物、である。
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0007】
(2)本発明の第2は、
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子の少なくとも一部が該フッ素化アルコールに溶解している事を特徴とする、(1)記載の組成物、
である。
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0008】
(3)本発明の第3は、
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、フッ素化アルコールに対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子を含むことを特徴とする、組成物、
である。
【0009】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。導電性高分子のフッ素化アルコール溶液を例えば塗布して使用する場合、1回の塗布による導電性高分子の塗布量が多くなるという観点において、導電性高分子の濃度は、高い方が、好ましい。好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0010】
(4)本発明の第4は、
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、該導電性高分子が該フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に分散及び/又は溶解している部分を含む事を特徴とする、組成物、
である。
フッ素化アルコールに加えて塩素化炭化水素を加えることにより、導電性高分子の溶解性をさらに高めることができる。
【0011】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0012】
(5)本発明の第5は、
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、該導電性高分子の少なくとも一部が該フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に溶解している事を特徴とする、(4)記載の組成物、
である。
【0013】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0014】
(6)本発明の第6は、
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子を含むことを特徴とする、組成物、
である。
【0015】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。導電性高分子のフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の溶液を例えば塗布して使用する場合、1回の塗布による導電性高分子の塗布量が多くなるという観点において、導電性高分子の濃度は、高い方が、好ましい。好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0016】
(7)本発明の第7は、
(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性高分子が、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリパラフェ二レンビニレンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリキノンおよびその誘導体から選択された少なくとも一種類以上である、(1)〜(6)のいずれかに記載の、組成物、
である。
【0017】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である上記の導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0018】
(8)本発明の第8は、
(1)〜(6)のいずれかに記載のフッ素化アルコールをR−OHと記載した時、Rが炭素数2〜6のアルカンであってフッ素の原子が水素原子数よりも多い事を特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の、組成物、
である。
【0019】
この構成であることにより、上記フッ素化アルコールに特徴が有る新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0020】
(9)本発明の第9は、
少なくとも(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物を含む事を特徴とする、組成物、
である。
【0021】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0022】
(10)本発明の第10は、
フッ素化アルコール及び/又は塩素化炭化水素に導電性高分子を溶解させる工程を経てつくられた事を特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物、
である。
【0023】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができる。
【0024】
(11)本発明の第11は、
(1)〜(10)のいずれかに記載の組成物から、少なくともフッ素化アルコール及び/又は塩素化炭化水素の一部または全部が取り除かれていることを特徴とする、組成物、
である。
【0025】
この構成であることにより、新たな導電性組成物を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子の皮膜形成性や加工性を著しく改善することができ、新たな組成物を提供できる。
【0026】
(12)本発明の第12は、
少なくとも(1)〜(11)記載のいずれかの組成物を含む事を特徴とする、成形体、
である。
【0027】
この構成であることにより、新たな導電性が有る部分を含む成形体を実現でき、一般的に不溶・不融である導電性高分子を含む、導電性が有る部分を含む成形体を提供できる。
【0028】
(13)本発明の第13は、
少なくともその製造工程において(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物から選ばれる1以上を用いて作製された事を特徴とする、成形体、
である。
【0029】
この構成であることにより、新たな導電性が有る部分を含む成形体を実現でき、一般的に不溶・不融である上記の導電性高分子を含む、導電性が有る部分を含む成形体を提供できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によって溶液状の導電性高分子を得る事ができる。
【0031】
この溶液を用いる事によって、本発明の溶液を高分子や金属などからなる基板上に塗布・乾燥、必要に応じて剥離、する事により導電性高分子膜を作製する事、導電性高分子を再結晶化する事ができる。さらに導電性高分子を高分子フィルムと複合してプラスチックを導電化する事、あるいは布や紙などに含浸する事によってそれらを導電化する事、など多様な展開が可能となり、導電性高分子の著しい加工性の向上を実現できる。
【0032】
本発明の導電性組成物を利用した用途については、非常に広く、例えば、1)導電性高分子膜を作製し、有機EL、有機FET、などとして用いる、2)高分子と複合化したり、その表面に塗布することによりフィルムや成形体を作製し、導電性シート、帯電防止シート、タッチパネル、半導体素子のキャリヤ、などとして用いる、3)浸漬・乾燥する事により金属基板上に導電性高分子層を形成し、アルミ固体電解コンデンサ作製、タンタル固体電解コンデンサ作製、金属の防錆、などの目的に用いる、4)導電性インクとして用い、例えばインクジェット技術などを利用して電子回路などを印刷する、5)繊維に染み込ませて導電性繊維を作る、等の用途が考えられうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<フッ素化アルコール>
本発明に用いられるフッ素化アルコールとしては、一価アルコールおよび多価アルコールを挙げることができる。一価アルコールの場合、本発明のフッ素化アルコールを化学構造式でR−OHと記載した時、Rは、特に制約を受けるものでは無いが、例えば溶解性の観点からはRが炭素数2〜6のアルカン、アルケン、または単環式炭化水素であってフッ素の原子が水素原子数よりも多い事が望ましい。具体的には、アルカンの場合、例えばRがエチル基である場合には−C223以上のフッ素原子が存在すること事が望ましく、他には、−C214、−C25などが望ましい、ということを意味する。同様にRがプロピル基である場合には、−C334以上のフッ素原子が存在する事が望ましく、例えば、他には、−C325、−C316、−C37などが望ましい、という事を意味する。例えば最も好ましいアルコールの例としてヘキサフルオロイソプロパノールを挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明のフッ素化アルコール溶媒は他の溶媒との混合溶媒として用いる事ができる。フッ素化アルコールおよび他の溶媒とは、導電性高分子を分散及び/又は溶解している部分を含む限りにおいては、特に制約を受けるものではない。
【0035】
<フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒>
フッ素化アルコールとの混合溶媒の相手として特に塩素化炭化水素溶媒は本発明の溶媒として好ましく用いる事ができる。このような目的に用いられる溶媒としてクロロホルム、ジクロルメタン、四塩化炭素、などの溶媒を挙げる事ができる。例えば最も好ましい溶媒としてクロロホルムを挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。これらの塩素化炭化水素溶媒は上記フッ素化アルコールと混合して用いられる。例えば、クロロホルムはヘキサフルオロイソプロパノールとの混合溶媒として用いられ、その比率がクロロホルム1重量に対してヘキサフルオロイソプロパノール4重量である場合もっとも好ましい溶解性をしめすが、これらに限定されるものではない。
【0036】
例えば、塩化炭化水素1重量に対してフッ素化アルコールが0.5重量〜100重量などの範囲が、好ましい。また、塩化炭化水素1重量に対してフッ素化アルコールが1重量〜50重量などの範囲が、さらに好ましい。また、塩化炭化水素1重量に対してフッ素化アルコールが2重量〜6重量などの範囲が、よりさらに好ましい。
【0037】
<導電性高分子>
次に本発明に用いられる導電性高分子について述べる。
【0038】
本発明に用いられる導電性高分子は、本発明の溶媒に分散及び/又は溶解している部分を含む限りにおいては特に限定されるものではないが、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリキノン、及びこれらの誘導体が好ましく用いられる。例えば該誘導体の代表的例として、ポリ3−4ジオキシチオフェン、ポリ3‐アルキルチオフェン(アルキル基としてはブチル基、へキシル基、オクチル基、ドデシル基、等)、ポリフルオロフェニルチオフェン、ポリ1,5ジアミノアントラキノン、等を挙げることができる。これらの導電性高分子の合成法としては、化学重合法、電解重合法が好ましく用いられる。
【0039】
本発明に好ましく用いられる導電性高分子のドーパントとしては、特に制限はないが、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルフォン酸イオン、アントラキノン−2−スルホン酸イオン、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、n−プロピルリン酸イオン、過塩素酸イオン、4−フッ化ホウ酸イオン、等を例示する事ができる。
【0040】
電解重合は、例えば、ピロールモノマーを支持電解質と共に溶媒に溶解し、陽極酸化する事により脱水素重合する方法で、陽極上に導電性高分子であるポリピロールを析出させることができる。一般的に、ポリマーの酸化還元電位はモノマーに比べて低いため、重合過程でさらにポリマー骨格の酸化が進み、それに伴って支持電解質である。アニオンがドーパントとしてポリマー中に取り込まれる。
【0041】
一方、化学重合は、適当な酸化剤の存在下でピロールなどの原料モノマーを酸化脱水することで重合し合成する方法である。酸化剤としては、過硫酸塩、過酸化水素、あるいは鉄、銅、マンガン等の遷移金属塩が使用できる。化学重合により合成された導電性高分子も、酸化剤のアニオンがドーパントとして重合過程でポリマー中に取り込まれるため、一段階の反応で導電性を有するポリマーを得る事ができる。
【0042】
<溶解操作>
導電性高分子の本発明の溶媒への溶解は通常の手法によって行われる。例えば、導電性高分子の一つであるポリピロールをヘキサフルオロイソプロパノールに溶かす工程は還流冷却器を取り付た容器の中で、30℃以上、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上でポリピロールを溶解させる事が好ましい。
【0043】
上記のような導電性高分子の溶解は他の導電性高分子においても同様で、例えばポリチオフェンをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させる工程においても、30℃以上、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上で溶解させる事が好ましい。
【0044】
なお、高分子がフッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に溶解したかどうかの確認は以下の4つの方法で行った。すなわち、(1)ろ紙によるろ過で残渣のない事、(2)遠心分離により分離されない事、(3)可視・赤外スペクトルで導電性高分子による吸収強度が、導電性高分子の添加量と比例する事、(4)溶媒の蒸発操作で導電性高分子の結晶・あるいは粉体が析出すること、である。(3)は可視・赤外吸収は基本的に分子吸収によるものであり、もしも導電性高分子の溶解度が飽和に達し、ろ過や遠心分離による分離ができないほどの微粒子として存在しているとしても、その吸収強度は分子状に溶解した場合に比較して小さくなると言う原理によっている。
【0045】
<成形体>
本発明で言うところの成形体は、本発明の導電性樹脂組成物だけからなるものでも良いし、導電性高分子そのものであっても良く、さらに本発明の組成物または導電性高分子とを別の素材と組み合わせたものであっても良い。すなわち、本発明の成形体とは、上記の1以上の化学組成を有するものである限りにおいては、単一の組成であってもよいし、複合の組成であっても良い。
【0046】
また、本発明の成形体とは、紙状、布状、フィルム状、ペレット状、発泡体状、ブロック状等に成形したものを言い、特にその形状が制約を受ける物では無い。成形の方法は、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、射出成形、ダイ押し出し、キャスト、浸漬、等を含む。
【0047】
以下にこの様な成形体の具体例についてのべる。
【0048】
本発明による導電性高分子を溶解した溶液は幅広い分野への応用が可能である。例えば基板上に塗布、溶媒蒸発をさせて導電性高分子膜を作製することができる。
【0049】
基板の例としては、天然高分子(例えば紙や、綿・麻・絹などから選ばれる1以上の天然有機高分子からなる布)や、有機化合物からなる媒体(高分子フィルム)、炭素からなる媒体(グラファイトシート)、金属または金属を含む媒体、シリコン基板、無機セラミック基板、などが挙げられる。この様な導電性高分子膜は、例えば薄膜シリコントランジスタ(TFT)上に形成する事により有機ELとなりうる。また、有機FETの半導体素子にもなりうる。 溶媒に別の高分子を溶解させておいて、本発明による導電性高分子溶液と混合し、キャスト・乾燥すれば容易に新たな導電性高分子・導電性プラスチックを得ることができる。このような手法で高分子と複合化したり、その表面に本発明の組成物を塗布することにより作製された成形体は導電性シート、帯電防止シート、タッチパネル、半導体素子運搬用のキャリヤ、などとして広範囲な利用が可能となる。
【0050】
本発明のフッ素化アルコールや、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素の混合溶媒に可溶な高分子としては、ポリエステル系高分子(PET,PBT,PEN,液晶ポリエステル等)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、を例示する事ができる。
【0051】
さらに本発明の組成物に各種の金属を浸漬・乾燥する事により金属基板上に導電性高分子層を形成する事ができ、このような手法は以下に記載する各種の用途に用いることが出来る。例えば、表面にエッチングを施し、酸化アルミニウムが形成されたアルミ電極上に導電性高分子層を形成することでアルミ固体電解コンデンサの作製ができる。おなじ方法をタンタル粉末の焼結電極を用いて行えばタンタル固体電解コンデンサ作製ができる。さらに、銅、アルミ、鉄などの金属防錆用の塗料としても用いる事が出来る。
【0052】
同様の手法は繊維や紙に染み込ませて導電性繊維や導電性紙を作る事にも用いられる。
具体例として、有機繊維としては、植物繊維、動物繊維、再生繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれる繊維を単独あるいは混合したものが使用されうる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびウイスカーから選ばれる繊維を単独あるいは混合したものが使用されうる。さらに、植物繊維としては、綿(コットン)、麻(亜麻、ラミー)が、例示される。 動物繊維としては、絹、羊毛(カシミヤ、ウール、モヘア、キャメル)などの繊維が挙げられる。再生繊維としては、レーヨン、キュプラが、例示される。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、例示される。 合成繊維としては、ナイロン、アラミド、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系、ポリウレタンなどの繊維が、例示される。
【0053】
上記の繊維の他に、植物繊維として、広葉樹パルプ針葉樹パルプ、などの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維も含まれる。
【0054】
上記の各種繊維の定義は、繊維ハンドブック(日本化学繊維協会1993年度版)などを用いた。
【0055】
以上述べたように、本発明により導電性高分子の膜形成性が著しく向上し、プラスチックの導電性化、固体コンデンサ用電解質や二次電池の電解質用の電気化学素子、化学反応を利用した金属の防錆び、汚染防止塗料、ドープ脱ドープを利用した表示素子、アクチュエーターなどの電気/機械変換素子、太陽電池や高分子LEDなどの電気/光変換素子、FETなどの半導体素子などの幅広い応用展開が可能となる。
【0056】
例えば、プリント配線配の分野だけに限っても、導電性組成物を部分的に被覆したリジッドプリント配線板、導電性組成物を部分的に被覆したフレキシブルプリント配線板、導電性組成物を部分的に被覆したリジッドフレキプリント配線板等の材料としての応用例を挙げる事ができる。
【0057】
また、以下に、請求項および本明細書中における言葉の定義を記載する。
【0058】
<分散及び/又は溶解している部分を含む>
「分散及び/又は溶解している部分を含む」とは、
(A)「分散している部分を含む」場合であってもよいし、
(B)「分散している部分を含む、および、溶解している部分を含む」場合であってもよいし、
(C)「溶解している部分を含む」場合であってもよい。
また、
分散及び/又は溶解している部分の他に、
(D)分散も溶解もしていない部分が含まれていても良い。
【0059】
なお、本発明において、「分散している」ことは、以下のようにして、確認することができる。
【0060】
例えば、よく乾燥した100cm3の二口フラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、0.50gの導電性高分子を10mlのフッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に加え、150℃で攪拌し、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に導電性高分子を分散・あるいは溶解させる。150℃で30分間加熱後室温に冷却し、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒をろ過する。ろ紙(東洋濾紙製、No.2)上に炉別された、分散または溶解しきれていない導電性高分子を、水とメタノールで洗浄し乾燥後、重量を測定したところXgである場合を考える。
【0061】
この場合、「0.50−X」gの導電性高分子は、上記のフッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に、分散していると考えられる。もちろん、分散しているものの中には、溶解しているものが含まれていると、推定される。
【0062】
なお、上記の「ろ紙」は、同メーカーのホームページ(下記のURL)
(http://www.advantec.co.jp/ japanese/hinran/seihin_index.html)によると、
保留粒子径のカタログ値は5μm(ただし、JISP3801で規定された硫酸バリウムなどを自然濾過したときの漏洩粒子径より求めたもの)である。
【0063】
<フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度>
本明細書でいう「フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度」とは、上記のような、分散・溶解・濾過「作業」の後に、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒中に存在している導電性高分子の「飽和濃度」のことを言う。すなわち、
「濾紙の残渣として残らなかった・分散及び/又は溶解している導電性高分子重量」を「フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の容量」で割った値を「フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度」と定義して、この明細書中では呼ぶことにする。
【0064】
具体的には、前項で記載した0.5gの導電性高分子の実験の場合には、下記の通り。
【0065】
この実験条件では、「0.50−X」gの導電性高分子を、
フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の容量(10ml)で割った濃度、すなわち、「0.50−X」g/10mlの値を、「フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度」とする。
【0066】
なお、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の種類、導電性高分子の種類によって、この実験条件では十分に溶解する結果Xが0gとなり、どのような値でも、0.5g/10mlになる可能性が有る。そのような場合には、作業飽和濃度を測定する実験作業の導電性高分子の重量と、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の容量を変えて、同様の指標を設定するものとする。
【0067】
<フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子>
「フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子」は、フッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度に達していないため、ほぼ全量溶解しているものと推定される。
【0068】
例えば下記の実施例23に示すように、作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子とは、本発明において、「溶解している」ことを示す一形態である。
【0069】
導電性高分子のフッ素化アルコールまたは、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒溶液を例えば塗布して使用する場合、1回の塗布による導電性高分子の塗布量が多くなるという観点において、導電性高分子の濃度は、高い方が、好ましい。好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0070】
<少なくとも一部が該フッ素化アルコールに溶解している>
<少なくとも一部がフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素に溶解している>
「溶解している」ことは、
後述のとおり、フッ素化アルコールまたはフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒の中に添加して分散液・溶解液を調製した後、その分散液を濾紙やグラスフィルターなどで濾過し、濾紙やグラスフィルターに残らない状態であって、ある濃度まで、溶液の紫外・可視吸収スペクトルの極大吸収波長における吸光度が比例する範囲である状態のことを言う。
【0071】
10mlのフッ素化アルコールまたはフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に0.05g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25gの導電性高分子を溶解し、その赤外・可視吸収スペクトルを測定する。測定波長は、その溶液の極大吸収波長が好ましい。赤外・可視吸収スペクトルの吸収強度と濃度とをグラフ下し、吸収強度が飽和するまでの濃度においては、溶解していると考える。
【0072】
以下、実施例を下記に示すが、本発明は下記の実施例だけに制約を受けるものではない。
【実施例】
【0073】
(合成例1)
(ポリピロールの重合方法)
重合方法はSynthetic Metals 79 (1996)17−22に記載されている方法を参考とした。
【0074】
3.3重量%の界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)100mlに2.2gの硫酸第二鉄を溶解した酸化剤水溶液に、3.3重量%の界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)100mlに20.1gのピロールを溶解した水溶液を加え、80℃で、24時間良く攪拌した。それを濾紙(東洋濾紙製、No.2)にて濾過、洗浄し、乾燥させてポリピロールを得た。
【0075】
(合成例2)
(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合方法)
重合方法は、特開平1−313521号公報の実施例1に記載されている方法を参考とした。
【0076】
8.11gの塩化第二鉄を100mlのアセトニトリルを溶解させたアセトニトリル溶液に2.84gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え、0℃で、24時間良く攪拌した。それを濾紙(東洋濾紙製、No.2)にて濾過、洗浄し、乾燥させてポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0077】
(実施例1)
ポリピロールのヘキサフルオロイソプロパノール(正式名:1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロ2−プロパノール)への溶解
よく乾燥した100cm3の二口フラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、0.50gのポリピロールを10mlのヘキサフルオロイソプロパノールに加え、150℃で攪拌し、ヘキサフルオロイソプロパノールにポリピロールを溶解させた。液は直ちに黒紫色となった。150℃で30分間加熱後室温に冷却し、ヘキサフルオロイソプロパノールをろ過した。ろ紙上にろ別されたポリピロールを水とメタノールで洗浄し乾燥後、重量を測定したところ0.39gであった。
【0078】
次にろ液を遠心分離器にかけたが分離されるものはなかった。この事からヘキサフルオロイソプロパノール10ml対して約0.11gのポリピロールが溶解したものと推定された。
【0079】
このような濾過作業の結果、濾紙に残らなかった、分散及び/又は溶解している導電性高分子の重量を用いて「フッ素化アルコール(ここではヘキサフルオロイソプロパノール)に対する作業飽和濃度」と、この明細書中では呼ぶことにする。この実施例1においては、0.11g/10mlが、「フッ素化アルコール(ここではヘキサフルオロイソプロパノール)に対する作業飽和濃度」である。
【0080】
溶解したものと推定される事実を確認するために10mlのヘキサフルオロイソプロパノールに0.05g、0.1g、0.15g、0.2gのポリピロールを溶解し、その赤外・可視スペクトルを測定した。ポリピロールが0.1gまでは吸収強度とポリピロール溶質の濃度が比例した。しかし、0.15g、0.2gでは吸収強度が溶質の濃度と比例しなくなった。この事から、ヘキサフルオロイソプロパノールに対するポリピロールの溶解度は、約11g/L(1000ml)程度であると判断した。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様の実験を、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1)を用いて行った。ポリピロールの、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1)に対する作業飽和濃度は、0.16g/10mlだった。
【0082】
(実施例3)
実施例1と同様の実験を、2,2,3,3,テトラフルオロ1−プロパノールを用いて行った。ポリピロールの、2,2,3,3,テトラフルオロ1−プロパノールに対する作業飽和濃度は、0.08g/10mlだった。
【0083】
(実施例4)
実施例1と同様の実験を、2,2,3,4,4,4,ヘキサフルオロ1−ブタノールを用いて行った。ポリピロールの、2,2,3,3,テトラフルオロ1−プロパノールに対する作業飽和濃度は、0.06g/10mlだった。
【0084】
(実施例5)
ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンのヘキサフルオロイソプロパノール(正式名:1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロ2−プロパノール)への溶解
よく乾燥した100cm3の二口フラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、0.50gのポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを10mlのヘキサフルオロイソプロパノールに加え溶解させた。液は直ちに黒紫色となった。50℃で30分間加熱後室温に冷却しろ過した。ろ紙上にろ別されたポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンリピロールを水とメタノールで洗浄し乾燥後、重量を測定したところ0.40gであった。
【0085】
次にろ液を遠心分離器にかけたが分離されるものはなかった。この事からヘキサフルオロイソプロパノール10ml対して約0.10gのポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンが溶解したものと推定された。
【0086】
このような濾過作業の結果、濾紙に残らなかった、分散及び/又は溶解している導電性高分子の重量を用いて「フッ素化アルコール(ここではヘキサフルオロイソプロパノール)に対する作業飽和濃度」と、この明細書中では呼ぶことにする。この実施例5においては、0.10g/10mlが、「フッ素化アルコール(ここではヘキサフルオロイソプロパノール)に対する作業飽和濃度」である。
【0087】
溶解したものと推定される事実を確認するために10mlのヘキサフルオロイソプロパノールに0.05g、0.1g、0.15g、0.2g、のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンを溶解し、その赤外・可視スペクトルを測定した。ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンが0.1gまでは吸収強度とポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン溶質の濃度がほぼ比例した。しかし、0.15gでは吸収強度が溶質の濃度と比例しなくなった。この事から、ヘキサフルオロイソプロパノールに対するポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの溶解度は約10g/L(1000ml)であると判断した。
【0088】
(実施例6)
実施例5と同様の実験を、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1)を用いて行った。ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの、ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1)に対する作業飽和濃度は、0.12g/10mlだった。
【0089】
(実施例7)
実施例5と同様の実験を、2,2,3,3,テトラフルオロ1−プロパノールを用いて行った。ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの、2,2,3,3,テトラフルオロ1−プロパノールに対する作業飽和濃度は、0.06g/10mlだった。
【0090】
(実施例8)
実施例5と同様の実験を、2,2,3,4,4,4,ヘキサフルオロ1−ブタノールを用いて行った。ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンの、2,2,3,4,4,4,ヘキサフルオロ1−ブタノールに対する作業飽和濃度は、0.04g/10mlだった。
【0091】
(実施例9)
実施例2と同じ溶媒(ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1))10mlを用いて、ポリアニリン(アルドリッチ社製ポリアニリン、商品番号47670−6、平均分子量10000)の溶解実験を行った。その結果、ポリアニリンの、(ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの混合溶媒(重量比4:1))に対する作業飽和濃度は、0.10g/10mlだった。
【0092】
(実施例10)
実施例1で得られた、ポリピロールを溶解したヘキサフルオロイソプロパノールにろ紙を浸漬し、次にそのろ紙を乾燥した。その結果、ろ紙とポリピロールからなる導電性の紙が得られた。
【0093】
(実施例11)
実施例1で得られた、ポリピロールを溶解したヘキサフルオロイソプロパノールに木綿の布を浸漬し、次にその布を乾燥した。その結果、布とポリピロールからなる導電性のコンポジットが得られた。
【0094】
(実施例12)
実験1で得られた、ポリピロールを溶解したヘキサフルオロイソプロパノール10mlにポリエステル0.5gを溶解し、キャストして導電性高分子とプラスチックの複合フィルムを得た。得られたフィルムの電気伝導度は103Ωcmであった。
【0095】
一方、同量(0.15g)の粉体状ポリピロールをポリエステルに分散させた場合には得られたフィルムの電気伝導度は108Ωcm以上であり、本発明の方法で得られた複合フィルムが優れた電気伝導性を示すことが分かった。
【0096】
(比較例)
(比較例1)
ポリピロールのアセトニトリルへの溶解
よく乾燥した100cm3の二口フラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、指定量のポリピロール0.03gを6mlのアセトニトリルに加え、150℃で攪拌したが、ポリピロールはアセトニトリルに溶解しなかった。
【0097】
(比較例2)
ポリ1.4ジオキシチオフェンのアセトニトリルへの溶解
よく乾燥した100cm3の二口フラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、指定量のポリチオフェン0.03gを6mlのアセトニトリルに加え、150℃で攪拌したが、ポリチオフェンはアセトニトリルに溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子が該フッ素化アルコールに分散及び/又は溶解している部分を含む事を特徴とする、組成物。
【請求項2】
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、該導電性高分子の少なくとも一部が該フッ素化アルコールに溶解している事を特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
導電性高分子とフッ素化アルコールを必須成分とする組成物であって、フッ素化アルコールに対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項4】
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、該導電性高分子が該フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に分散及び/又は溶解している部分を含む事を特徴とする、組成物。
【請求項5】
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、該導電性高分子の少なくとも一部が該フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に溶解している事を特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
導電性高分子とフッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素を必須成分とする組成物であって、フッ素化アルコールおよび塩素化炭化水素からなる混合溶媒に対する作業飽和濃度に対して60%以上の濃度の導電性高分子を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性高分子が、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリパラフェ二レンビニレンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリキノンおよびその誘導体から選択された少なくとも一種類以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の、組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素化アルコールをR−OHと記載した時、Rが炭素数2〜6のアルカンであってフッ素の原子が水素原子数よりも多い事を特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の、組成物。
【請求項9】
少なくとも請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を含む事を特徴とする、組成物。
【請求項10】
フッ素化アルコール及び/又は塩素化炭化水素に導電性高分子を溶解させる工程を経てつくられた事を特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物から、少なくともフッ素化アルコール及び/又は塩素化炭化水素の一部または全部が取り除かれていることを特徴とする、組成物。
【請求項12】
少なくとも請求項1〜11記載のいずれかの組成物を含む事を特徴とする、成形体。
【請求項13】
少なくともその製造工程において請求項1〜11のいずれかに記載の組成物から選ばれる1以上を用いて作製された事を特徴とする、成形体。

【公開番号】特開2006−152167(P2006−152167A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346810(P2004−346810)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】