説明

導電性組成物及びその製造方法

【課題】 導電性及び安定性に優れた導電性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の導電性組成物は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む。本発明の導電性組成物の製造方法は、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを溶媒中に分散又は溶解し、化学酸化重合する重合工程と、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加する添加工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系導電材料として、π共役系導電性高分子が知られている。π共役系導電性高分子とは、一般的に、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子のことをいい、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類及びこれらの共重合体等が挙げられる。このようなπ共役系導電性高分子は、通常、電解重合法及び化学酸化重合法により合成される。
【0003】
電解重合法では、ド−パントとなる電解質とπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーとの混合溶液中に、予め形成した電極材料などの支持体を浸漬し、支持体上にπ共役系導電性高分子をフィルム状に形成する。そのため、大量に製造することが困難である。
一方、化学酸化重合法では、このような制約がなく、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーに酸化剤及び酸化重合触媒を添加し、溶液中で大量のπ共役系導電性高分子を製造できる。
しかし、化学酸化重合法では、π共役系導電性高分子主鎖の共役系の成長に伴い、溶媒に対する溶解性が乏しくなるため、不溶の固形粉体で得られるようになる。不溶性のものでは支持体表面上にπ共役系導電性高分子膜を均一に形成することが困難になる。また、π共役系導電性高分子は不定形のかたまりになりやすく、π共役系導電性高分子を含有する導電性組成物の導電性が低いという問題があった。
【0004】
そのため、π共役系導電性高分子に官能基を導入して可溶化する方法、バインダ樹脂に分散して可溶化する方法、アニオン基含有高分子酸(ポリアニオン)を添加して可溶化する方法が試みられている。
例えば、水への分散性を向上させるために、分子量が2000〜500000の範囲のポリアニオンであるポリスチレンスルホン酸の存在下で、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)水溶液を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリアクリル酸の存在下で化学酸化重合してπ共役系導電性高分子コロイド水溶液を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2636968号公報
【特許文献2】特開平7−165892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2記載の方法によれば、π共役系導電性高分子を含有する水分散溶液を容易に製造できる。しかし、これらの方法においては、π共役系導電性高分子の水への分散性を確保するため、ポリアニオンを多量に含ませる。したがって、得られる導電性組成物中には、導電性に寄与しない化合物が多く含まれ、高い導電性が得られにくいという問題点があった。
また、化学酸化重合法では、化学酸化重合時に酸化力の高い酸化剤による好ましくない副反応が高い確率で起こるため、共役性の低い高分子構造が生成したり、過度に酸化されたり、不純物イオン等が残留したりして、得られるπ共役系導電性高分子の導電性及び長期安定性が低かった。しかも、π共役系導電性高分子は高度な酸化状態にあるため、熱等の外部環境により一部が酸化劣化してラジカルが発生し、そのラジカルの連鎖によって劣化が進行していくといわれている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、導電性及び安定性に優れた導電性組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性組成物は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含むことを特徴とする。
本発明の導電性組成物においては、前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
また、本発明の導電性組成物においては、前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、スルホ基及び/又はカルボキシ基を有することが好ましい。
本発明の導電性組成物は、さらに、バインダ樹脂を含有することが好ましい。
本発明の導電性組成物の製造方法は、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを溶媒中に分散又は溶解し、化学酸化重合する重合工程と、
2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加する添加工程とを有することを特徴とする。
本発明の導電性組成物の製造方法は、さらに、限外ろ過法により遊離イオンの一部を除去するろ過工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性組成物は、導電性及び安定性に優れる。
本発明の導電性組成物においては、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物がスルホ基及び/又はカルボキシ基を有すれば、導電性がより高くなる。
本発明の導電性組成物が、さらにバインダ樹脂を含有すれば、導電性組成物の塗布膜の成膜性、膜強度を調整できる。
本発明の導電性組成物の製造方法によれば、導電性及び安定性に優れる導電性組成物を容易に得ることができる。
本発明の導電性組成物の製造方法が、限外ろ過法により遊離イオンの一部を除去するろ過工程を有すれば、アニオン酸塩からアニオン酸にする作業も簡便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の導電性組成物について説明する。
本発明の導電性組成物は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有する芳香族性化合物とを含むものである。
以下に、本発明の導電性組成物の各構成要素について説明する。
【0011】
(π共役系導電性高分子)
本発明の導電性組成物に含まれるπ共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及びバインダ樹脂への分散性又は溶解性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0012】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0013】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒の存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(前駆体モノマー)
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3、4−ジメチルピロール、3、4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3、4−ジメチルチオフェン、3、4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3、4−ジヒドロキシチオフェン、3、4−ジメトキシチオフェン、3、4−ジエトキシチオフェン、3、4−ジプロポキシチオフェン、3、4−ジブトキシチオフェン、3、4−ジヘキシルオキシチオフェン、3、4−ジヘプチルオキシチオフェン、3、4−ジオクチルオキシチオフェン、3、4−ジデシルオキシチオフェン、3、4−ジドデシルオキシチオフェン、3、4−エチレンジオキシチオフェン、3、4−プロピレンジオキシチオフェン、3、4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0014】
(溶媒)
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0015】
(酸化剤)
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0016】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能する。
【0017】
ポリアルキレンとは、メチレンの繰り返しで構成されている高分子である。置換若しくは未置換のポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ3,3,3−トリフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0018】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなる高分子である。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
【0019】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0020】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したエステル基、他の官能基を介在して結合したエステル基が挙げられる。
【0021】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。
すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0022】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。例えば、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0023】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等の一種類以上の官能基で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物。例えば、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類等が挙げられる。
【0024】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α―メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0025】
ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリメタリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0026】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0027】
導電性組成物中のポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子のモル単位1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、導電性組成物中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0028】
(ドーパント)
本発明の導電性組成物においては、電気伝導度(導電性)を調整するために、ポリアニオン以外に他のドーパントを添加してもよい。他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性の物であってもよい。
【0029】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0030】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0031】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0032】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0033】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸等が挙げられる。
【0034】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4-アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0035】
(ヒドロキシ基含有芳香族性化合物)
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシ基が2個以上置換されているものである。例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性組成物の導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシ基を有する化合物がより好ましい。
【0036】
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性及び安定性がより優れることから、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、t−へキシル基、sec−へキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基などが挙げられる。
【0037】
ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.3〜5モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、導電性組成物中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、導電性組成物の物性が変化することがある。
【0038】
本発明の導電性組成物においては、上述した3成分からなっていてもよいが、導電性組成物から形成される塗布膜の成膜性、膜強度等を調整するために、バインダ樹脂が含まれていてもよい。
バインダ樹脂としては、導電性組成物中の各成分と相溶又は混合分散可能であれば特に制限はなく、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0039】
また、前記バインダ樹脂ではなく、バインダ樹脂を形成する前駆体化合物あるいはモノマーが導電性組成物中に含まれていても構わない。前駆体化合物あるいはモノマーを重合することでバインダ樹脂を形成できるからである。
【0040】
また、本発明の導電性組成物には、バインダ樹脂と同様の理由から、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、導電性組成物の各成分と混合しうるものであれば使用でき、例えば、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、中和剤、酸化防止剤等が挙げられる。
さらに、界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤として、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物;1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類等の含窒素化合物等が挙げられる。
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
【0041】
以上説明した本発明の導電性組成物は、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含むため、導電性及び耐熱性が高い。これは以下の理由によると考えられる。導電性組成物中のπ共役系導電性高分子は、高度な酸化状態にあるため、熱等の外部環境により一部が酸化劣化してラジカルが発生し、そのラジカルの連鎖反応によって劣化が進行していくと推測されている。ところが、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、ヒドロキシ基と芳香族環との相互作用が強く、化合物中の水素が放出しやすいという性質を有する。そのため、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物から放出された水素によってπ共役系導電性高分子の酸化劣化により生じたラジカルを失活させることができる。これにより、ラジカルの連鎖反応を遮断することができ、劣化の進行を抑制できるため、耐熱性及び安定性が高くなると考えられる。この作用は、芳香族性化合物がヒドロキシ基を二つ以上有する際に発揮される。
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物はポリアニオン中のアニオン基と相互作用が起きやすく、この相互作用によって、ポリアニオン同士を接近させることができると考えられる。そのため、ドーピングによってポリアニオン上に吸着されているπ共役系導電性高分子同士も接近させることができる。その結果、π共役系導電性高分子同士間の電気伝導現象であるホッピングに必要なエネルギーが小さくなり、全体の電気抵抗が小さくなる(導電性が高くなる)と考えられる。
【0042】
次に、本発明の導電性組成物の製造方法の一例について説明する。
この例の導電性組成物の製造方法では、まず、重合工程にて、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを溶媒中に分散又は溶解し、化学酸化重合する。具体的には、ポリアニオン、前駆体モノマー、前駆体モノマーを化学酸化重合させるための酸化剤及び/又は酸化重合触媒をそれぞれ用意する。そして、一定温度に保ったポリアニオンに前駆体モノマー、酸化剤及び/又は酸化重合触媒を添加し、攪拌しながら所定時間反応させて前駆体モノマーを化学酸化重合する。重合工程における操作方法、操作順序、反応条件等は特に限定されない。
ポリアニオン、前駆体モノマー、酸化剤及び/又は酸化重合触媒にあらかじめ溶媒を添加して所定の濃度の混合液としても構わない。
【0043】
π共役系導電性高分子の化学酸化重合の際には、ポリアニオンの主鎖に沿ってπ共役系導電性高分子の主鎖が成長し、π共役系導電性高分子が高度な酸化状態下でバイポーラロン構造を形成する。これにより、ポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドーピングして、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子との塩を形成すると考えられる。特に、ポリアニオンがスルホ基である場合には、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子との結合が強い塩を形成することができる。したがって、π共役系導電性高分子がポリアニオンの主鎖に強く引き寄せられるため、ポリアニオンの主鎖に沿って成長して規則正しく配列したπ共役系導電性高分子を容易に得ることができる。
【0044】
この重合工程によって、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子とを含有する混合溶液を得ることができる。
重合工程の後、必要に応じて、重合反応を停止させるための反応停止剤を添加してもよい。また、重合工程終了後、過剰な酸化剤及び/又は酸化重合触媒、反応副生成物の除去及びイオン交換を行ってもよい。
【0045】
次いで、添加工程にて、重合工程にて得られた混合溶液に所定量のヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加し、均一に混合させる。
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の添加する方法としては、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物をそのままで直接添加する方法、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を溶媒に溶解又は分散させた溶液状態で添加する方法が挙げられる。前記混合溶液との混合性の点からは、溶媒に溶解又は分散させた溶液状態で添加する方法が好ましい。ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を溶解又は分散させる溶媒は特に制限されず、上述した溶媒を使用できる。また、溶媒は、混合溶液と異なる種類のものであってもよい。
【0046】
その後、ろ過工程にて、限外ろ過法により遊離イオンの一部を除去して導電性組成物を得る。なお、本発明の導電性組成物の製造方法においては、ろ過工程は任意の工程であり、省略されても構わない。
限外ろ過法では、多孔質材上に一定の口径で形成されている高分子膜(限外ろ過膜)を配置させ、溶液を循環させる。その際、限外ろ過膜を挟んで、循環溶液側と透過溶液側とに差圧が生じるため、循環溶液側の溶液の一部が透過溶液側に浸透して循環溶液側の圧力を緩和する。この現象によって循環溶液に含まれる限外ろ過膜口径より小さい粒子、溶解イオン等の一部を透過溶液側に移動させて除去する。この方法は希釈法であり、希釈回数を増やすことにより容易に不純物を取り除くことができる。
使用する限外ろ過膜は、除去する粒子径、イオン種によって適宜選択され、中でも、分画分子量1,000〜1,000,000のものが好ましい。
【0047】
このように得られたπ共役系導電性高分子では、主鎖に発達したπ共役系を有するため、不溶、不融の特性を示すものが多い。また、溶解又は分散されているπ共役系導電性高分子溶液においても、製膜時に溶媒の除去、加熱、ドーピング等によってπ共役系導電性高分子の自己配位が起こり、溶媒に不溶になることがある。そのため、溶媒は適切なものを選択することが好ましい。
【0048】
以上説明した導電性組成物の製造方法では、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを化学酸化重合する重合工程と、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加する添加工程とを有するため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む導電性組成物を得ることができる。この導電性組成物は、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含むため、導電性及び安定性に優れる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリメタクリル酸エチルスルホン酸(PMAS)の合成
1000mlのイオン交換水に216gのメタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリメタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリメタクリル酸エチルスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ過液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30,000
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0050】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られた濾液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0051】
(実施例1)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Aとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液A100gに1.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウムを添加し、均一に分散させて導電性組成物の溶液を得た。
その導電性組成物溶液をガラス上に塗布し、150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。得られた塗布膜の電気特性を下記の評価法で評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
(評価法)・電気伝導度(S/cm):
塗布膜の電気伝導度をローレスタ(三菱化学製)を用いて測定した。電気伝導度が高い程、導電性が高い。
・電気伝導度熱維持率(%):
温度25℃における塗布膜の電気伝導度R25Bをローレスタ(三菱化学製)を用いて測定し、測定後の塗布膜を温度125℃の環境下に300時間放置した後、該塗布膜を温度25℃に戻し、電気伝導度R25Aを測定し、それらの測定値を下記式に代入して電気伝導度熱維持率を算出した。なお、この電気伝導度熱維持率は熱に対する安定性の指標になる。
電気伝導度熱維持率(%)=100×R25A/R25B
・電気伝導度湿度変化率(%):
温度25℃、湿度60%RHの環境下における塗布膜の電気伝導度R25Bを測定し、測定後の塗布膜を温度80℃・湿度90%RHの環境下に200時間放置した後、該塗布膜を温度25℃、湿度60%RHの環境下に戻し、電気伝導度R25Aを測定し、それらの測定値を下記式に代入して電気伝導度湿度変化率を算出した。なお、この電気伝導度湿度変化率は湿度に対する安定性の指標になる。
電気伝導度湿度変化率(%)=100×(R25B−R25A)/R25B
【0054】
(実施例2)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに0.48gのヒドロキノンを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
(実施例3〜4)
実施例1において得られたπ共役系導電性高分子溶液Aを用い、実施例1のヒドロキノンスルホン酸カリウムの添加量を1.0gから2.0g(実施例3)又は6.0g(実施例4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例6)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、38.8gポリメタクリル酸エチルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌した。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリメタクリル酸エチルスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PMAS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Bとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液B100mlに予め5mlの水に溶解させた2.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を添加し、均一に分散させて導電性組成物の溶液を得た。
その導電性組成物溶液をガラス上に塗布し、150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。得られた塗布膜の電気特性を下記の評価法で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
実施例6において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Bに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は実施例6と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例8)
6.8gのピロールと、38.8gポリメタクリル酸エチルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを混合し、0℃に冷やした。
これにより得られた混合溶液を0℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌した。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリメタクリル酸エチルスルホン酸ドープポリピロール(PMAS−PPY)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Cとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液C100gに2.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウムを添加し、均一に分散させて導電性組成物の溶液を得た。
その導電性組成物溶液をガラス上に塗布し、150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。得られた塗布膜の電気特性を下記の評価法で評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例9)
実施例8において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Cに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は実施例8と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例10)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液に、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加した。さらに、この溶液に固形分が25質量%の水溶性ポリエステル(商品名:プラスコートZ−448D、互応化学工業社製)を9g添加し、均一に分散させて導電性組成物の溶液を得た。
その導電性組成物溶液をガラス上に塗布し、150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。得られた塗布膜の電気特性を下記の評価法で評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
6.8gのピロールと、10.8gポリアクリル酸を1000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを混合させ、0℃に冷やした。
これにより得られた混合溶液を0℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌した。
得られた反応液をアンモニア水(25質量%)でpH10に調整した後、イソプロピルアルコールで固形分を沈殿させ、ろ過し、ろ過物をイオン交換水で3回洗浄した。ろ過物を1000mlのイオン交換水で再分散して、ポリアクリル酸−ポリピロールコロイド水溶液を得た。
そして、得られたポリアクリル酸−ポリピロールコロイド水溶液をガラス上に塗布し、塗布膜を150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。その塗布膜の電気特性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2〜4)
実施例1で得られたπ共役系導電性高分子溶液A(比較例2)、実施例6で得られたπ共役系導電性高分子溶液B(比較例3)、実施例8で得られたπ共役系導電性高分子溶液C(比較例4)をそれぞれそのままガラス上に塗布し、塗布膜を150℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。その塗布膜の電気特性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含む実施例1〜10の導電性組成物は、導電性が高く、しかも、熱安定性及び湿度安定性に優れていた。
一方、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含まない比較例1〜4の導電性組成物は、導電性が低く、熱安定性及び湿度安定性にも劣っていた。
【0063】
(実施例11)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに表2に示す量の3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸メチルを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
(実施例12)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに表2に示す量の3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピルを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性組成物の塗布膜を得て、評価した。その結果を表2に示す。
【0066】
ヒドロキシ基含有芳香族化合物が式(1)で表される化合物である実施例11および実施例12の導電性組成物は、電気伝導度(導電性)がより高かった。
【0067】
(実施例13,14)
実施例11において3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸メチル0.3モル添加した塗布膜を150℃の乾燥機内に550時間放置した(実施例13)。また、実施例5の塗布膜を150℃の乾燥機内に550時間放置した(実施例14)。それら加熱後の塗布膜の電気伝導度、電気伝導度熱維持率を評価した。その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
ヒドロキシ基含有芳香族化合物を含む実施例13と実施例14の導電性組成物は、電気伝導度、電気伝導度熱維持率が高かった。また、これらの比較により、ヒドロキシ基含有芳香族化合物が式(1)で表される化合物である実施例13は、電気伝導度が優れる上に、電気伝導度熱維持率が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、導電性塗料、帯電防止剤、電磁波遮蔽材料、透明性を必要とする導電材料、電池材料、コンデンサ材料、導電性接着材料、センサ、電子デバイス材料、半導電材料、静電式複写部材、プリンタ等の感光部材、電子写真材料、導電性を必要とする各種分野への利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含むことを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【請求項3】
前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、スルホ基及び/又はカルボキシ基を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項4】
さらに、バインダ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを溶媒中に分散又は溶解し、化学酸化重合する重合工程と、
2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加する添加工程とを有することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項6】
さらに、限外ろ過法により遊離イオンの一部を除去するろ過工程を有することを特徴とする請求項5に記載の導電性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−131873(P2006−131873A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76972(P2005−76972)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】