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導電性組成物及び導電膜形成方法
説明

導電性組成物及び導電膜形成方法

【課題】 不活性雰囲気中だけでなく大気雰囲気中においても低温で焼成することができ、銅粒子の酸化を防ぐことが可能であって、良好な導電性を示し且つ安価な導電性組成物、並びにその導電性組成物を用いた不活性雰囲気中又は大気雰囲気中での導電膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 銅をフィラーとする導電性組成物であって、平均粒径0.3〜20μmの銅粉と平均粒径1〜50nmの微細銅粉の混合物からなる金属粉と、エチレングリコールやジエチレングリコールのようなOH基を2個以上有する多価アルコールからなる溶剤と、リンゴ酸やクエン酸のようなCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物からなる添加剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品等の導電膜の形成に用いられる導電性組成物、及びその導電性組成物を用いた導電膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品等においては、スクリーン印刷法などの技術を用いて導電性組成物でパターンを形成し、低温で焼成することによって低抵抗の厚膜導電回路を形成することが行われている。厚膜導電回路を形成する一般的な方法は、サブトラクティブ法とアディティブ法に大別され、このうちアディティブ法は工程の簡潔さやコスト、廃棄物による環境負荷などの面でサブトラクティブ法に対して利点を有する。
【0003】
一般にアディティブ法に用いる導電性組成物に求められる特性としては、導電回路の形成が容易であること、得られる導電膜の抵抗率が低いこと、導電膜と基板の密着性が良好であることなどが挙げられる。このような導電性組成物には、導電フィラーとして金、銀、銅、パラジウム、白金などの金属粒子が使用され、特に銀を導電フィラーとする導電性組成物が多く用いられている。しかし、銀フィラーを用いた導電性組成物は、マイグレーションが発生しやすいという欠点を有している。
【0004】
上記マイグレーションの抑制に関しては、銅をフィラーとして用いることが有効であり、導電特性やコストの面でも優れている。銅をフィラーとして用いた導電膜の形成法として、平均粒径100nm以下の銅粒子を用いて低温焼成を実現する技術が最近特に注目されている。例えば、特開2004−256757号公報や特開2004−327229号公報には、粒径30nm以下の銅粉を含有した導電性インクを用いて、インクジェット方式により導電パターンを描画し、窒素雰囲気中において200℃以下の温度で加熱して導電回路を形成する方法が開示されている。
【0005】
しかし、インクジェット方式で膜厚数μmレベルの回路を形成するためには、描画と焼成を繰り返す必要があり、工程が煩雑になるという欠点を有している。また、上記の方法では、クエン酸アンモニウム等のクエン酸塩あるいは第3級アミン型モノマーのような分散剤の添加により、銅の微細粒子を用いることを可能とし、低温焼成で導電性が得られるとしているが、得られる導電膜の抵抗率はバルク銅の20〜50倍であって十分満足できるレベルには至っていない。
【0006】
これらの欠点を改善する手段として、特開平7−320535号公報には、スクリーン印刷方式やディスペンサー方式を用いて、膜厚数μm以上の厚膜導電回路を形成する方法が開示されている。この方法によれば、有機金属塩を前駆体として平均粒径100nm以下の微細金属粒子を生成させ、平均粒径0.2μm以上の銅系粒子との混合物とすることで、描画と焼成を繰り返すといった工程の煩雑さを解消すると共に、バルク銅の2倍以下の低抵抗率が得られるとしている。
【0007】
しかし、この方法においては、カルボン酸塩等の有機金属塩を前駆体として使用し、一旦加熱して平均粒径100nm以下の微細粒子を形成する必要がある。また、導電性組成物の焼成条件は、窒素雰囲気中において900℃程度と極めて高温であり、焼結開始温度も約400℃と高くいため、例えばポリマー基板には適用できず、セラミックス基板のように高い耐熱温度を有する基板に回路を形成するなどの用途に限定されるという欠点を有している。
【0008】
また、焼成温度の低温化技術として特表2004−534362号公報には、平均粒径0.3μm未満の微細銅粒子と平均粒径0.3μm以上の銅粒子、更に加熱分解により金属銅を析出する有機分解性銅化合物、若しくは有機分解性銅化合物を生成させうるカルボン酸等の反応性化合物からなる組成物により、厚膜導電回路を形成する方法が開示されている。また、平均粒径0.3μm以上の粒子を、異なった平均粒径を持つ粒子の混合物とすることも開示されている。この方法によれば、加熱中に有機分解性銅化合物が分解して銅粒子を生成し、330℃での焼成によりバルク銅の約3倍の低抵抗が実現できるとしている。
【0009】
しかしながら、上記方法においては、焼成雰囲気として窒素−水蒸気−水素という特殊な混合ガスが必要であり、安全性や経済性に問題がある。また、焼成温度も330℃程度と高いため、耐熱温度が例えば300℃以下といったポリイミド基板などのポリマー基板への適用は難しく、ポリマー基板への適用を容易にするためには更に低い温度で焼成できることが必要であった。
【0010】
このように、銅をフィラーとする導電性組成物は、銅が本質的に酸化による劣化という問題を内包していること、焼成に高温が必要であること等の理由から、現在まで導電性組成物の主流となるには至っていない。そのため、導電回路の形成が容易であり、得られる導電膜の抵抗率がバルク銅の約3倍である5μΩ・cm程度以下と低く、基板に制限がなく且つ基板との密着性が良好で、コスト的にも安価な導電性組成物が求められている。
【0011】
ところで、以上のように銅をフィラーとする導電性組成物を用いて低抵抗な導電回路を得るという要求がある一方で、工業上容易な大気雰囲気下において焼成することができ、電子部品として許される範囲の抵抗値、例えばバルク銅の約60倍の抵抗率である100μΩ・cm程度の導電膜が得られる導電性組成物に対する要求も存在する。
【0012】
即ち、銅は酸化による性能の劣化が激しいため、焼成を不活性雰囲気中あるいは還元雰囲気中で行うことが不可欠であり、そのため現状では適用範囲が限られている。そこで、大気雰囲気下での焼成によっても、ある程度の許容される範囲の抵抗率を有する導電膜の形成が可能な導電性組成物が提供されるならば、その抵抗値に関して問題のない範囲の多くの用途において、従来の不活性雰囲気又は還元雰囲気での焼成が必要な導電性組成物を代替することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−256757号公報
【特許文献2】特開2004−327229号公報
【特許文献3】特開平7−320535号公報
【特許文献4】特表2004−534362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、煩雑な工程を経ることなく、不活性雰囲気中だけでなく大気雰囲気中においても低温で焼成することができ、フィラーである銅粒子の酸化を防ぐことが可能であって、良好な導電性を示し、且つコスト的にも安価な導電性組成物、並びにその導電性組成物を用いた不活性雰囲気中又は大気雰囲気中での導電膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、平均粒径が異なる銅粒子を組み合わせ、且つ溶剤と添加剤を調整することによって、導電性組成物が大気雰囲気中での200℃以下の焼成で高い抗酸化効果を示し、更には不活性雰囲気中での300℃以下の焼成によりバルク銅に匹敵する良好な導電性を示すことを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0015】
即ち、本発明が提供する導電性組成物は、金属粉と、溶剤と、添加剤を含む導電性組成物であって、前記金属粉は平均粒径0.3〜20μmの銅粉と平均粒径1〜50nmの微細銅粉の混合物であり、前記溶剤はOH基を2個以上有する多価アルコールであり、前記添加剤はCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物であることを特徴とするものである。
【0016】
上記本発明の導電性組成物において、前記金属粉は、銅粉100重量部に対して微細銅粉が1〜100重量部の割合の混合物であることが好ましい。また、前記溶剤は、金属粉100重量部に対して5〜35重量部の割合で混合されることが好ましい。更に、前記添加剤は、金属粉100重量部に対して1〜15重量部の割合で混合されることが好ましい。
【0017】
上記本発明の導電性組成物においては、前記溶剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリンから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。また、前記添加剤が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
【0018】
本発明は、また、上記した本発明の導電性組成物のいずれかを用い、その導電性組成物を基板上に塗布して、熱処理することを特徴とする導電膜の形成方法を提供する。具体的には、不活性雰囲気中にて200〜300℃の温度で加熱焼成することを特徴とする導電膜の形成方法、あるいは大気雰囲気中にて150〜200℃の温度で加熱焼成することを特徴とする導電膜の形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導電フィラーとして銅粒子を用いた安価な導電性組成物であって、煩雑な工程を経ることなく、不活性雰囲気中だけでなく大気雰囲気中においても低温で焼成することができ、銅粒子の酸化を防止して良好な導電性を有する導電膜を形成することが可能な導電性組成物を提供することができる。
【0020】
従って、この導電性組成物を用いることにより、危険性の伴う水素ガスなどの還元性ガスを使用することなく、不活性雰囲気中における300℃以下の焼成により、バルク銅の約6倍の抵抗率である10μΩ・cm以下の導電膜、また条件を好適に設計すればバルク銅の約3倍の抵抗率である5μΩ・cm以下の導電膜を形成することができる。更に、大気雰囲気中における200℃以下の焼成によって、バルク銅の約60倍の抵抗率である100μΩ・cm程度の導電膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の導電性組成物においては、導電フィラーである金属粉として、平均粒径0.3〜20μmの銅粉と、平均粒径1〜50nmの微細銅粉とを併用する。銅粉の平均粒径が0.3μm未満であると、焼成後の空隙が多くなるため低抵抗率の導電膜が得られず、逆に20μmを超えると微細なパターンの形成が困難となる。また、微細銅粉の平均粒径が1nm未満であると、粒子の凝集が激しいため組成物中での分散が困難となり、逆に50nmを超えると上記銅粉との接触効果が十分でなくなると共に、低温焼結の効果も得られなくなる。
【0022】
上記平均粒径0.3〜20μmの銅粉と、平均粒径1〜50nmの微細銅粉との混合割合は、銅粉100重量部に対し、微細銅粉1〜100重量部の範囲が好ましい。銅粉100重量部に対する微細銅粉の混合割合が1重量部未満では、銅粉との接触効果が十分でなくなり、また100重量部を超えると大気雰囲気中では酸化による劣化が激しくなり、焼成後の導電膜の抵抗率が高くなるため好ましくない。
【0023】
本発明の導電性組成物では、上記銅粉と微細銅粉からなる金属粉を分散する溶剤としてOH基を2個以上有する多価アルコールを用いると共に、添加剤としてCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物を用いる。この添加剤は、OH基によって金属粉の表面に吸着性を示すと同時に、それ以上に含まれるCOOH基の作用により銅粉表面に形成された酸化物が溶解され、良好な導電性を示す表面状態となる。また、この時形成される一部のカルボン酸銅は、金属粉表面に吸着して、良好な導電性を示す状態を維持する。
【0024】
尚、上記添加剤について、COOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物は、アンモニウム塩など塩の状態で添加されると、金属粉表面に吸着する効果はあるが、その表面の酸化物を溶解する効果が劣るため、十分な導電性が得られない。従って、上記化合物は塩としてではなく、COOH基を2個以上有する酸として添加することが重要である。
【0025】
また、上記添加剤は、加熱により組成物を硬化させる作用を有する。即ち、COOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物は、導電膜形成の際の比較的低温での加熱焼成により、その一部が溶剤として添加されたOH基を2個以上有する多価アルコールと重合し、ポリマーを形成して組成物を硬化させる。
【0026】
このポリマー形成により、十分な強度を持つと共に、基板との密着性が良好な導電膜が形成される。また、得られた導電膜中ではポリマーの接着効果により金属粉同士の接触が十分行われると共に、前記した良好な表面状態と相俟って、抵抗率を大幅に低下させる効果が発現される。更に、形成されたポリマーは酸素の侵入を抑制するため、導電膜内における金属粉の酸化が抑制される。これらの効果は、特に表面活性の高い平均粒径50nm以下の微細銅粉に対して極めて有効であり、酸化物層のない表面を持った微細銅粉が大きな銅粉同士の強固な接触を促進し、優れた導電特性を発現する。
【0027】
一方、加熱焼成時の温度が更に高い場合、例えば不活性雰囲気中にて200℃以上で焼成する場合には、前記の酸化抑制効果が維持された状態で、微細銅粉同士の焼結あるいは微細銅粉と銅粉の焼結が進行して、より優れた導電特性が発現される。即ち、このような温度上昇の過程では、低温で形成されたポリマーの一部が分解すると共に、金属粉の表面及びその接触部にカルボン酸銅の分解による金属銅の析出が同時に起こり、強固な金属粉同士の焼結が実現して優れた導電性を示す。また、ポリマーの一部は基板面に残留して、基板と導電膜との間で強固なバインダーとして働き、極めて高い基板密着性が維持される。
【0028】
本発明で用いる添加剤は、COOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物であれば、制限なく使用することができる。しかしながら、添加剤は溶剤への溶解度が高いことが望ましいため、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸が好ましく、リンゴ酸、クエン酸が更に好ましい。また、添加剤としては、これらの化合物のいずれか1種又は2種以上を選択し、導電性組成物に添加混合すればよい。
【0029】
導電性組成物中における添加剤の組成比率は、金属粉100重量部に対して、1〜15重量部が好ましく、5〜10重量部が更に好ましい。添加剤の組成比率が1重量部より少ないと、溶剤との重合によるポリマーの形成が十分に行われないばかりか、銅粉表面の酸化物除去の効果も十分得られなくなる。また、添加剤の組成比率が15重量部を超えると、組成物の粘性が著しく高くなるため、取り扱いが困難になる。
【0030】
本発明で用いる溶剤は、2つ以上のOH基を有する多価アルコールであればよく、加熱により上記添加剤と重合してポリマーを形成することができる。しかしながら、導電膜が良好な導電性を示すためには、過剰の溶剤は低温で蒸発することが望ましい。これらの点を考慮すると、溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリンのうちの1種ないし2種以上を用いることが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0031】
上記溶剤の導電性組成物中における組成比率は、金属粉100重量部に対して、5〜35重量部が好ましく、10〜25重量部が更に好ましい。溶剤の組成比率が5重量部未満であると、ポリマーの形成が十分に行われなくなるうえ、組成物の粘性が著しく上昇して取り扱いが困難になる。また、溶剤の組成比率が35重量部を超えると、焼成後の導電膜中に溶剤が過剰に残留するため、抵抗率が高くなるばかりか、導電膜の強度が低下してパターンを維持できなくなる。
【0032】
本発明の導電性組成物には、その用途などに応じて、極性溶媒を混合することができる。その場合の極性溶媒としては、水、メタノールやエタノールのようなアルコール、カルビトールが好ましく、これらの1種ないし2種以上を用いることができる。また、本発明の導電性組成物では、目的とする導電膜の膜厚や導電率、焼成条件などに応じて、その組成や構成物を選択することができる。
【0033】
例えば、大気雰囲気中にて200℃以下での焼成により導電膜を形成したい場合には、酸化による劣化を最小限に抑えるために微細銅粉の比率を抑え、且つ銅粉の粒径を大きくすること好ましい。一方、不活性雰囲気中での焼成により低抵抗率の導電膜を得ようとする場合には、その導電膜の膜厚に応じて、銅粉の粒径を大きなものにすると共に、微細銅粉の粒径を細かくすることが好ましい。このとき、導電膜内の銅粒子の充填率を高める目的で、0.3μm以上の銅粉についても異なる平均粒径をもつ粒子を混合して使用することが有効である。
【0034】
上記した本発明の導電性組成物は、基板上に塗布した後、不活性雰囲気中又は大気雰囲気中で熱処理することにより、導電膜を形成することができる。不活性雰囲気中における加熱焼成では、焼成温度は200〜300℃が好ましく、250〜300℃が更に好ましい。不活性雰囲気中にて300℃を超える温度で焼成した場合、導電膜については特に問題ないが、基板としてとして耐熱性に劣るポリマー基板を用いることはできない。また、焼成温度が200℃未満では、焼成後の導電膜の抵抗率が十分に低下しないため好ましくない。
【0035】
また、本発明の導電性組成物は、大気雰囲気中においては、150〜200℃の温度で加熱焼成することが好ましい。大気雰囲気中において200℃を超える温度で加熱焼成すると、金属粉の酸化による劣化が激しくなり、得られる導電膜の抵抗率が上昇してしまう。また、大気雰囲気中での焼成温度が150℃未満では、導電膜の抵抗率が十分低下しないばかりか、導電膜の強度が低下してしまうため好ましくない。
【0036】
上記した不活性雰囲気中200〜300℃での焼成により得られる導電膜は、バルク銅の約6倍である10μΩ・cm以下の抵抗率が得られ、また条件を好適に設計すればバルク銅の約3倍である5μΩ・cm以下の更に低い抵抗率を得ることができる。また、大気雰囲気中における200℃以下での焼成による場合には、バルク銅の約60倍である100μΩ・cm程度の抵抗率を有する導電膜を形成することができる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
平均粒径0.4μmの銅粉(住友金属鉱山(株)製、UCP030)80重量部に対し、湿式還元法により作製した平均粒径50nmの微細銅粉20重量部を混合して、混合銅粉とした。この混合銅粉100重量部に対して、溶剤としてエチレングリコールを19重量部、添加剤としてクエン酸を6重量部加えた後、高速遊星運動式脱泡混練装置(日本精機製作所製、NBK−1)にて混合することにより、試料1の導電性組成物を調整した。
【0038】
得られた試料1の導電性組成物を、スライドガラス基板上に膜厚約20μmとなるように金属スキージを用いて塗布して12×40mmのパターンを形成し、窒素雰囲気炉にて300℃で1時間焼成して導電膜を形成した。
【0039】
得られた試料1の導電膜について、低抵抗率計(三菱化学(株)製、Loresta−GP MCP−T600)を用いた四端針法によりシート抵抗値を測定すると共に、表面粗さ形状測定器(東京精密(株)製、SURFCOM 130A)により膜厚を測定して、体積抵抗率を算出した。その結果、試料1の導電膜の体積抵抗率は3.44μΩ・cmであった。
【0040】
また、試料1の導電膜に対して、JIS K5400に規定されるXカットテープ法により、導電膜の基板への密着強度を調べた。その結果、導電膜はテープによって引き剥がされることがなく(JIS評価点数10点に相当)、ガラス基板に強固に密着していることが確認された。
【0041】
[実施例2]
上記実施例1において、平均粒径0.4μmの銅粉90重量部と平均粒径50nmの微細銅粉10重量部を混合し、この混合銅粉100重量部に対して、溶剤としてエチレングリコールを15重量部、添加剤としてクエン酸を10重量部混合した以外は同様にして、試料2の導電膜を形成した。
【0042】
得られた試料2の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は3.71μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0043】
[実施例3]
上記実施例2において、添加剤としてリンゴ酸を使用したが分子量の違いを考慮して6重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅粉100重量部に対してエチレングリコール19重量部とした以外は同様にして、試料3の導電膜を形成した。
【0044】
得られた試料3の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は4.55μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0045】
[実施例4]
上記実施例2において、添加剤として酒石酸(L−酒石酸)を使用したが分子量の違いを考慮して7重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅粉100重量部に対してエチレングリコール18重量部とした以外は同様にして、試料4の導電膜を形成した。
【0046】
得られた試料4の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は9.05μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0047】
[比較例1]
上記実施例2において、添加剤として乳酸を使用したが分子量の違いを考慮して4重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅粉100重量部に対してエチレングリコール21重量部とした以外は同様にして、試料5の導電膜を形成した。
【0048】
得られた試料5の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は42.2μΩ・cmであり、密着性についてはテープによって導電膜の一部がガラス基板から剥離した(JIS評価点数2点に相当)。
【0049】
[比較例2]
上記実施例2において、添加剤としてコハク酸を使用したが分子量の違いを考慮して5重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅粉100重量部に対してエチレングリコール20重量部とした以外は同様にして、試料6の導電膜を形成した。
【0050】
得られた試料6の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は181μΩ・cmであり、密着性は上記実施例2の試料2と同様にJIS評価点数10点であった。
【0051】
[比較例3]
上記実施例2において、添加剤として酢酸を使用したが分子量の違いを考慮して3重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅金粉100重量部に対してエチレングリコール22重量部とした以外は同様にして、試料7の導電膜を形成した。
【0052】
得られた試料7の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は110μΩ・cmであり、密着性についてはテープによって導電膜全体がガラス基板から剥離した(JIS評価点数0点に相当)。
【0053】
[比較例4]
上記実施例2において、添加剤としてギ酸を使用したが分子量の違いを考慮して2重量部(実施例2のクエン酸と等しいモル量)に変更し、組成物中の金属粉との割合を合わせるために溶剤を混合銅粉100重量部に対してエチレングリコール23重量部とした以外は同様にして、試料8の導電膜を形成した。
【0054】
得られた試料8の導電膜について、上記実施例1と同様に評価した結果、体積抵抗率は490μΩ・cmであり、密着性についてはテープによって導電膜全体が基板から剥離した(評価点数0点に相当)。
【0055】
上記した実施例の試料1〜4及び比較例の試料5〜8について、各導電性組成物の配合を下記表1に、並びに各導電性組成物の焼成条件と得られた導電膜の評価結果を下記表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
上記の結果から分るように、実施例である試料1〜3は窒素の不活性雰囲気中にて300℃で60分間の加熱焼成を行うことにより、バルク銅の約3倍である5μΩ・cm以下の極めて低い抵抗率を有すると共に、ガラス基板との密着性も良好な導電膜が得られた。また、試料4は試料1〜3と比較すると抵抗率は若干高いが、十分に低い抵抗率と言え、基板との密着性も良好であった。
【0059】
一方、比較例の試料5〜8は、上記実施例の試料1〜4と同じ焼成条件でありながら、添加剤としてCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物を用いていないため、得られた導電膜は抵抗率が高く、且つ基板との密着性も試料6を除き悪かった。
【0060】
[実施例5]
平均粒径2.8μmの銅粉(日本アトマイズ(株)製、HXR−Cu)90重量部に対して、湿式還元法により作製した平均粒径50nmの微細銅粉10重量部を混合して、混合銅粉とした。この混合銅粉100重量部に対して、溶剤としてエチレングリコール13重量部、添加剤としてクエン酸7重量部を加え、上記実施例1と同様の方法で試料9の導電性組成物を調整した。
【0061】
この導電性組成物を、上記実施例1と同様の方法により、スライドガラス基板上に塗布し、リフロー炉にて大気雰囲気中において180℃で30分間加熱焼成した。得られた試料9の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価を行った結果、体積抵抗率は27.0μΩ・cmであり、また密着性はJIS評価点数10点であった。
【0062】
また、上記試料9の導電性組成物を、上記実施例1と同様の方法により、スライドガラス基板上に塗布し、リフロー炉にて大気雰囲気中において190℃で20分間加熱焼成した。得られた試料10の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価を行った結果、体積抵抗率は29.7μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0063】
[実施例6]
上記実施例5において、銅粉を平均粒径6.2μmの偏平粉(福田金属箔粉工業(株)製、Cu−HWF−6)に変更した以外は同様にして、試料11の導電性組成物を調整した。この導電性組成物を、上記実施例5と同様にして、スライドガラス基板に塗布し、リフロー炉にて大気雰囲気中において180℃で30分間加熱焼成し、導電膜を形成した。得られた試料11の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価を行った結果、体積抵抗率は30.6μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0064】
また、上記試料11の導電性組成物を塗布したガラス基板を、リフロー炉にて大気雰囲気中において190℃で20分間加熱焼成し、試料12の導電膜を形成した。得られた試料12の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価を行った結果、体積抵抗率は32.6μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0065】
上記した実施例5〜6においては、大気雰囲気中における200℃以下での焼成でありながら、得られた試料9〜12の導電膜はバルク銅の約60倍である100μΩ・cmよりも更に低い抵抗率を有すると共に、ガラス基板との密着性も良好であることが分る。
【0066】
[実施例7]
平均粒径2.8μmの銅粉(日本アトマイズ(株)製、HXR−Cu)17重量部と、平均粒径0.4μmの銅粉(住友金属鉱山(株)製、UCP030)59重量部と、平均粒径6.2μmの偏平銅粉(福田金属箔粉工業(株)製、Cu−HWF−6)9重量部を、湿式還元法により合成した平均粒径50nmの微細銅粉15重量部と混合した。
【0067】
得られた金属粉100重量部に対して、溶剤としてエチレングリコール17重量部と、添加剤としてクエン酸7重量部とを加え、混合して試料13の導電性組成物を調整した。この導電性組成物を、上記実施例1と同様の方法でスライドガラス基板上に塗布し、リフロー炉にて窒素雰囲気中において300℃で10分間加熱焼成した。
【0068】
得られた試料13の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価を行った結果、体積抵抗率は5.21μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。尚、この実施例7では加熱焼成が10分間と短時間であるため、試料13の導電膜の抵抗率は若干高くなったが良好な範囲であり、ガラス基板との密着性も優れていることが分る。
【0069】
[実施例8]
上記実施例2において、溶剤をジエチレングリコール15重量部に変更した以外は同様にして、試料14の導電性組成物を調整し、スライドガラス基板上に導電膜を形成した。得られた試料14の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価した結果、体積抵抗率は5.00μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0070】
また、上記実施例2において、溶剤をグリセリン15重量部に変更した以外は同様にして、試料15の導電性組成物を調整し、スライドガラス基板上に導電膜を形成した。得られた試料15の導電膜について、上記実施例1と同様の方法で評価した結果、体積抵抗率は3.53μΩ・cmであり、密着性はJIS評価点数10点であった。
【0071】
上記した実施例8によれば、得られた試料14〜15の導電膜は、窒素の不活性雰囲気中において300℃で60分間の加熱焼成により、バルク銅の約3倍の抵抗率である5μΩ・cm以下の極めて低い抵抗率を有すると共に、ガラス基板との密着性も良好であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉と、溶剤と、添加剤を含む導電性組成物であって、前記金属粉は平均粒径0.3〜20μmの銅粉と平均粒径1〜50nmの微細銅粉の混合物であり、前記溶剤はOH基を2個以上有する多価アルコールであり、前記添加剤はCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有し且つCOOH基の数がOH基の数と同数又はそれ以上の化合物であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記金属粉は、銅粉100重量部に対して微細銅粉が1〜100重量部の割合の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記溶剤は、金属粉100重量部に対して5〜35重量部の割合で混合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記添加剤は、金属粉100重量部に対して1〜15重量部の割合で混合されることを特徴とする、請求項1〜3にいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記溶剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリンから選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記添加剤が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記金属粉、溶剤、添加剤と共に、極性溶媒を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の導電性組成物を基板上に塗布して、熱処理することを特徴とする導電膜の形成方法。
【請求項9】
不活性雰囲気中にて200〜300℃の温度で加熱焼成することを特徴とする、請求項8に記載の導電膜の形成方法。
【請求項10】
大気雰囲気中にて150〜200℃の温度で加熱焼成することを特徴とする、請求項8に記載の導電膜の形成方法。



【公開番号】特開2007−258123(P2007−258123A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84427(P2006−84427)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】