説明

導電性組成物及び導電膜

【課題】焼成温度が十分に低く、焼成して得られる導電膜の抵抗値が十分に低い導電性組成物を提供する。
【解決手段】錫又は錫合金を主体とする金属粉と、有機酸と、アミンとを含む導電性組成物であって、前記金属粉に含まれる錫成分100重量部に対して、前記有機酸を1重量部以上15重量部以下、前記アミンを2重量部以上30重量部以下含む導電性組成物。 前記アミンと前記有機酸との重量比は、前記有機酸1重量部に対して前記アミン1重量部以上4重量部以下であることが好ましい。前記有機酸は、カルボン酸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子部品の導電膜の形成に用いることのできる導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品の導電回路を形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法などが知られている。アディティブ法においては、スクリーン印刷などを用いて基板上に導電性組成物を塗布してパターンを形成した後、この導電性組成物を所定の温度で焼成して導電膜からなる導電回路を形成する。
【0003】
特許文献1には、銅粉と、エチレングリコールやジエチレングリコールなどのOH基を2個以上有する多価アルコールからなる溶剤と、リンゴ酸やクエン酸などのCOOH基を2個以上及びOH基を1個以上有する化合物からなる添加剤と、を含む導電性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性組成物には、その特性として、焼成して得られる導電膜の抵抗値が低いことが求められる。また、例えばPETフィルム等の熱に弱い基板上に導電回路を形成する場合には、導電性組成物を焼成する際の焼成温度が低いことが求められる。
しかし、従来の導電性組成物は、焼成温度が十分に低いものではなく、また、焼成して得られる導電膜の抵抗値が十分に低いものではなかった。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、焼成温度が十分に低く、焼成して得られる導電膜の抵抗値が十分に低い導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導電性組成物は、錫又は錫合金を主体とする金属粉と、有機酸と、アミンとを含む導電性組成物であって、前記金属粉に含まれる錫成分100重量部に対して、前記有機酸を1重量部以上15重量部以下、前記アミンを2重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする導電性組成物である。
【0008】
前記アミンと前記有機酸との重量比が、前記有機酸1重量部に対して前記アミンが1重量部以上4重量部以下であることが好ましい。
【0009】
前記有機酸は、カルボン酸であることが好ましい。
【0010】
前記有機酸は、1分子中に複数個のカルボキシル基を有するカルボン酸であることが好ましい。
【0011】
前記有機酸は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であることが好ましい。
【0012】
前記有機酸は、下記式(1)で表されるカルボン酸であることが好ましい。
HOOC−R−COOH …(1)
(式中、Rは、水素原子の少なくとも1個が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上3個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0013】
前記有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、またはマロン酸であることが好ましい。
【0014】
前記有機酸は、OH基を有する脂肪族モノカルボン酸であることが好ましい。
【0015】
前記有機酸は、2つのカルボキシル基がオルト位に位置している環状ジカルボン酸であることが好ましい。
【0016】
前記有機酸は、アスコルビン酸であることが好ましい。
【0017】
前記アミンは、アミノアルコールであることが好ましい。
【0018】
前記アミンは、下記式(2)で表されるアミンであることが好ましい。
N−R−OH …(2)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0019】
前記アミンは、3−アミノ−1−プロパノールであることが好ましい。
【0020】
前記アミンは、アルコキシ基を有するアミンであることが好ましい。
【0021】
前記アミンは、下記式(3)で表されるアミンであることが好ましい。
N−R−O−R …(3)
(式中、R及びRは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0022】
前記アミンは、3−メトキシプロピルアミンであることが好ましい。
【0023】
前記アミンは、ジアミンであることが好ましい。
【0024】
前記アミンは、下記式(4)で表されるアミンであることが好ましい。
N−R−NH−R …(4)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上8個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。Rは、H原子もしくは炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0025】
前記アミンは、1,3−ジアミノプロパンもしくはN−メチル−1,3−ジアミノプロパンであることが好ましい。
【0026】
上記のうちいずれかの導電性組成物を基板上に塗布した後に、60℃以上230℃以下で加熱することにより本発明の導電膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、焼成温度が十分に低く、焼成して得られる導電膜の抵抗値が十分に低い導電性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の導電性組成物は、(A)錫又は錫合金を主体とする金属粉と、(B)有機酸と、(C)アミンとを含む導電性組成物であって、前記(A)金属粉に含まれる錫成分100重量部に対して、(B)有機酸を1重量部以上15重量部以下、(C)アミンを2重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする。
【0029】
上記(A)「錫又は錫合金を主体とする金属粉」とは、錫又は錫合金を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有する金属粉のことをいう。「錫合金」とは、錫(Sn)と他の金属との合金のことであり、ハンダがその例である。上記(A)「錫又は錫合金を主体とする金属粉」には、錫以外の金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、タングステン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、等が含まれてもよい。
【0030】
上記(A)「錫又は錫合金を主体とする金属粉」は、導電性組成物全体に対して、ペースト化できる範囲で多く含まれていることが好ましく、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含まれる。
【0031】
上記(A)「錫又は錫合金を主体とする金属粉」は、特に限定するものではないが、平均粒子径が1nm以上100μm以下であるものが好ましく、平均粒子径が100nm以上10μm以下であるものがより好ましい。平均粒子径がこの範囲であると、導電性組成物を回路パターン印刷用の導電ペーストとして好適に用いることができる。なお、本明細書における平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による、個数基準に基づく平均粒子径をいう。
【0032】
上記(A)「錫又は錫合金を主体とする金属粉」は、例えば、電解法、還元法、アトマイズ法などの公知の方法で製造することが可能である。
【0033】
上記(B)「有機酸」とは、有機化合物の酸の総称であり、例えばカルボン酸、スルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸等がこれに含まれる。
【0034】
上記(C)「アミン」とは、分子中に1個以上のアミノ基(−NH)を含む化合物のことであり、例えばモノアミン、ジアミン、トリアミンがこれに含まれる。
【0035】
本発明の導電性組成物において、上記(B)有機酸は、上記(A)金属粉に含まれる錫(Sn)成分100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下、好ましくは2重量部以上10重量部以下、より好ましくは3重量部以上5重量部以下含まれる。
上記(B)有機酸の含有量がこの範囲よりも少ない場合、金属粉の表面の酸化膜を除去する有機酸のフラックス効果が十分に得られないため、抵抗値の低い導電膜を得ることができない。
一方、上記(B)有機酸の含有量がこの範囲よりも多い場合、有機酸の量が過剰となり、導電性組成物中における金属(Sn)の含有率が相対的に低下するため、抵抗値の低い導電膜を得ることができない。また、有機酸が固体(粉状)である場合には、金属粉に有機酸、及びアミンを添加してペースト状の導電性組成物を調製することが困難になる。
【0036】
本発明の導電性組成物において、上記(C)アミンは、上記(A)金属粉に含まれる錫(Sn)成分100重量部に対して、2重量部以上30重量部以下、好ましくは4重量部以上20重量部以下、より好ましくは6重量部以上10重量部以下含まれる。
上記(C)アミンの含有量がこの範囲よりも少ない場合、アミンによる錯体化の効果が十分に得られないため、抵抗値の低い導電膜が得られない。また、アミンは有機酸の可溶化にも寄与しているため、ペースト状の導電性組成物を調製することが困難になる。
一方、上記(C)アミンの含有量がこの範囲よりも多い場合、アミンの量が過剰となり、導電性組成物中における金属(Sn)の含有率が相対的に低下するため、抵抗率の低い導電膜を得ることができない。
【0037】
本発明の導電性組成物に含まれる(C)アミンと(B)有機酸との重量比は、(B)有機酸1重量部に対して(C)アミン1重量部以上4重量部以下であることが好ましい。有機酸及びアミンの含有量がこの範囲であると、有機酸がアミンによって容易に可溶化するために、ペースト状の導電性組成物を調製することが容易になる。
【0038】
上記(B)有機酸は、カルボン酸であることが好ましく、1分子中に複数個のカルボキシル基を有するカルボン酸であることがより好ましく、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であることがさらに好ましい。
【0039】
特に、上記(B)有機酸は、下記式(1)で表されるカルボン酸であることが好ましい。
HOOC−R−COOH …(1)
(式中、Rは、水素原子の少なくとも1個が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上3個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0040】
上記式(1)で表されるカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、またはマロン酸が好ましい。
【0041】
上記(B)有機酸は、OH基を有する脂肪族モノカルボン酸であることが好ましい。OH基を有する脂肪族モノカルボン酸としては、グリコール酸または乳酸が好ましい。
【0042】
上記(B)有機酸は、2つのカルボキシル基がオルト位に位置している環状ジカルボン酸であってもよい。このような環状ジカルボン酸の例としては、オルトフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0043】
上記(B)有機酸は、アスコルビン酸であることが好ましい。
【0044】
上記(C)アミンは、OH基を有するアミン、すなわち、アミノアルコールであることが好ましい。
【0045】
特に、上記(C)アミンは、下記式(2)で表されるアミノアルコールであることが好ましい。
N−R−OH …(2)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0046】
上記式(2)で表されるアミノアルコールの例として、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを挙げることができる。この中では、3−アミノ−1−プロパノールが最も好ましい。
【0047】
上記(C)アミンは、分子中に1個以上のアルコキシ基(RO−)を有するアミンであることが好ましい。
【0048】
特に、上記(C)アミンは、下記式(3)で表されるアミンであることがより好ましい。
N−R−O−R …(3)
(式中、R及びRは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0049】
上記式(3)で表されるアミンの例として、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、4−メトキシブチルアミン、を挙げることができる。この中では、3−メトキシプロピルアミンが最も好ましい。
【0050】
上記(C)アミンは、ジアミンであってもよい。この場合、上記(C)アミンは、下記式(4)で表されるジアミンであることが好ましい。
N−R−NH−R …(4)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上8個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。Rは、H原子もしくは炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【0051】
上記式(4)で表されるジアミンの例として、1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、を挙げることができる。この中では、1,3−ジアミノプロパン、もしくは、N−メチル−1,3−ジアミノプロパンが好ましい。
【0052】
上記(A)金属粉、(B)有機酸、及び(C)アミンを加えて混合することによって、ペースト状の導電性組成物を調製することができる。
なお、(A)〜(C)成分を混合する順番は任意であり、例えば、(A)〜(C)成分を同時に混合してもよいし、(B)成分と(C)成分とを混合した後に、(A)成分を後から加えて混合してもよいが、(B)成分と(C)成分を混合すると発熱するので、予め(B)成分と(C)成分を混合しておき、そこに(A)成分を混合する方が調製しやすい。
【0053】
本発明の導電性組成物には、必要に応じて溶剤を添加することができる。溶剤の例としては、水、或いはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等のテルペン系化合物が挙げられる。
また、水、プロピレングリコール、メタノール、エタノール、1,3−プロパンジオール、及びヒドロキシ酢酸エチルから選ばれる少なくとも1種の溶剤を用いることが好ましい。このような溶剤を添加することによって、導電性組成物を基板への塗布に適した粘度に調整することができる。後述するように、より好ましいのは、水又はプロピレングリコールであり、最も好ましいのは、水である。
【0054】
ところで、カルボン酸が粉末(固体)である場合、アミンの種類によっては、カルボン酸が非常に溶けにくく、導電性組成物のペースト化が困難であるという問題がある。本発明者らは、カルボン酸に適当な溶剤を添加することによって、この問題を解決できることを見出した。
【0055】
例えば、「クエン酸」は、アミノアルコールにはある程度溶けるが、アルコキシ基を有するアミンやジアミンに対して非常に難溶であり、ペースト状の導電性組成物を調製することが困難である。しかし、クエン酸を溶剤で適当に可溶化してからアミンと混合し、この混合したものを錫又は錫合金を主体とする金属粉に添加することによって、導電性組成物を容易にペースト化できるだけでなく、粘度調整も容易になることを見出した。
【0056】
したがって、本発明の導電性組成物は、以下の方法によって製造することが好ましい。
上記(B)有機酸と溶剤を混合する第1工程と、
第1工程において得られた混合液と上記(C)アミンを混合する第2工程と、
第2工程において得られた混合液と、上記(A)錫又は錫合金を主体とする金属粉を混合する第3工程と、を有する導電性組成物の製造方法。
【0057】
上記の製造方法において、有機酸(カルボン酸)を可溶化するための溶剤は、水又はプロピレングリコールを用いることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。これらの溶剤は、有機酸(カルボン酸)に対する相溶性が特に優れているからである。
【0058】
次に、上記のようにして得られた導電性組成物を用いて基板上に導電膜を形成する方法について説明する。
上記(A)〜(C)成分、及び、必要に応じて他の成分を混合してペースト状の導電性組成物を得た後、この導電性組成物を基板上に塗布する。塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法などの公知の方法を用いることができる。
【0059】
基板上にペースト状の導電性組成物を塗布した後、この導電性組成物を60℃以上230℃以下の温度で加熱する。加熱温度がこの範囲よりも低い場合、導電性組成物中の有機物の揮散や熱分解が不十分となり、有機物残渣によって導電膜の導電性を阻害するおそれがある。反対に、加熱温度がこの範囲よりも高い場合、導電性組成物中の金属粉の融点を越えてしまうため、良好な形状の導電膜が得られなくなる可能性がある。加熱温度のより好ましい範囲は、100℃以上200℃以下である。
【0060】
また、導電性組成物に含まれる有機酸及びアミンの種類によっては、導電性組成物を加熱しなくとも、導電性組成物を室温付近(例えば20℃以上60℃以下)で乾燥させるだけで導電膜を形成できる可能性がある。
【0061】
本発明の導電性組成物を60℃以上230℃以下で加熱して得られた導電膜は、加熱温度が低いにもかかわらず、抵抗値が低い(つまり導電性が高い)という特徴を持つ。
本発明の導電性組成物によってこのような効果が得られる理由は、以下の通りであると考えられる。
【0062】
すなわち、金属粉の表面に形成された薄い酸化層が、有機酸のフラックス効果で除去される。
また、導電性組成物に含まれるアミンが、金属粉の表面においてある種の錯体を形成し、この錯体が加熱されることによって、金属粉同士を結合するための連続的な膜を形成する。
これにより、導電性組成物を60℃以上230℃以下という低い温度で加熱した場合であっても、高い導電性を示す導電膜を形成できると考えられる。
【0063】
なお、上記した本発明の効果が得られる理由は、現時点での本発明者らの推測であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0064】
本発明の導電性組成物、及び、これを加熱して得られる導電膜は、各種電子部品の導電回路の形成に用いることができる。例えば、プリント基板における回路パターンの形成に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例1〜13、及び、比較例1〜3について説明する。
まず、(A)錫粉、(B)有機酸、(C)アミン、及び溶剤を混合して、ペースト状の導電性組成物を調製した。各実施例及び各比較例に係る導電性組成物の組成、導電性組成物に含まれる各成分の混合比は、表1〜表3に示す通りである。なお、錫粉としては、平均粒径が5μmの球状粉を用いた。
【0066】
次に、上記のようにして得られた導電性組成物をスライドガラス上に塗布して、幅10mm、長さ50mm、厚さ約0.05mmのパターンを形成した。このパターンを、以下の4つの条件で焼成して導電膜を形成した。
1.60℃の加熱温度で120分間
2.100℃の加熱温度で60分間
3.150℃の加熱温度で30分間
4.200℃の加熱温度で15分間
【0067】
得られた各導電膜の抵抗値を、2001型デジタルマルチメーター(KEITHLEY製)を用いて、4端子法で測定した。また、表面粗さ・形状測定機(東京精密社製、SURFCOM 1500SD2−12)を用いて、各導電膜の平均膜厚を測定した。測定した抵抗値と平均膜厚から、各導電膜の比抵抗値(Ω・cm)を算出した。実施例及び比較例の比抵抗値の算出結果を、表4及び表5にそれぞれ示す。なお、表5において、「導通なし」と記入されている欄は、連続的な導電膜が形成されなかったために、導電膜に電気が通らなかったことを意味している。
【0068】
[実施例及び比較例の結果の考察]
表4に示す結果を見れば分かる通り、実施例1〜13に係る導電性組成物によれば、60℃以上200℃以下という低い温度で加熱した場合であっても、大部分の比抵抗値が10−5のオーダーであり、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0069】
一方、表5に示す結果を見れば分かる通り、比較例1〜3に係る導電性組成物によれば、比抵抗値の低い導電膜が得られないことが判明した。
【0070】
実施例1の結果を見れば分かる通り、錫粉、クエン酸、及び3−アミノ−1−プロパノールを混合して得られた導電性組成物は、比抵抗値が極めて低い導電膜が得られることが判明した。
また、錫粉、クエン酸、及び3−アミノ−1−プロパノールを混合して得られた導電性組成物は、60℃という室温に近い温度で加熱した場合であっても、10×10−5[Ω・cm]という低い抵抗値を持つ導電膜が得られることが判明した。
【0071】
実施例2、3の結果を見れば分かる通り、(B)有機酸としてジカルボン酸を添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0072】
実施例4、5の結果を見れば分かる通り、(B)有機酸として2つのカルボキシル基がオルト位に位置している環状ジカルボン酸を添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0073】
実施例6の結果を見れば分かる通り、(B)有機酸としてOH基を有する脂肪族モノカルボン酸を添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0074】
実施例7の結果を見れば分かる通り、(B)有機酸としてアスコルビン酸を添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0075】
実施例8の結果を見れば分かる通り、(C)アミンとしてアルコキシ基を有するアミンを添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0076】
実施例9の結果を見れば分かる通り、(C)アミンとしてジアミンを添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0077】
実施例10の結果を見れば分かる通り、(C)アミンとしてアミノ基の水素がアルキル基によって置換されているジアミンを添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0078】
実施例8、9、10、12、13の結果を見れば分かる通り、溶剤として水を添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0079】
実施例11の結果を見れば分かる通り、溶剤としてプロピレングリコールを添加した導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0080】
実施例12及び13の結果を見れば分かる通り、金属粉に含まれる錫成分100重量部に対して、有機酸を1重量部以上15重量部以下、アミンを2重量部以上30重量部以下含む導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られることが判明した。
【0081】
比較例1〜3の結果を見れば分かる通り、有機酸及びアミンのうちいずれか一方を含まない導電性組成物は、比抵抗値の低い導電膜が得られないことが判明した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫又は錫合金を主体とする金属粉と、有機酸と、アミンとを含む導電性組成物であって、前記金属粉に含まれる錫成分100重量部に対して、前記有機酸を1重量部以上15重量部以下、前記アミンを2重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記アミンと前記有機酸との重量比が、前記有機酸1重量部に対して前記アミンが1重量部以上4重量部以下である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記有機酸は、カルボン酸である請求項1又は請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記有機酸は、1分子中に複数個のカルボキシル基を有するカルボン酸である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記有機酸は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸である請求項4に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記有機酸は、下記式(1)で表されるカルボン酸である請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
HOOC−R−COOH …(1)
(式中、Rは、水素原子の少なくとも1個が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上3個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【請求項7】
前記有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、またはマロン酸である請求項3から請求項6のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記有機酸は、OH基を有する脂肪族モノカルボン酸である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項9】
前記有機酸は、2つのカルボキシル基がオルト位に位置している環状ジカルボン酸である請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項10】
前記有機酸は、アスコルビン酸である請求項1又は請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項11】
前記アミンは、アミノアルコールである請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項12】
前記アミンは、下記式(2)で表されるアミンである請求項11に記載の導電性組成物。
N−R−OH …(2)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【請求項13】
前記アミンは、3−アミノ−1−プロパノールである請求項12に記載の導電性組成物。
【請求項14】
前記アミンは、アルコキシ基を有するアミンである請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項15】
前記アミンは、下記式(3)で表されるアミンである請求項14に記載の導電性組成物。
N−R−O−R …(3)
(式中、R及びRは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【請求項16】
前記アミンは、3−メトキシプロピルアミンである請求項15に記載の導電性組成物。
【請求項17】
前記アミンは、ジアミンである請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項18】
前記アミンは、下記式(4)で表されるアミンである請求項17に記載の導電性組成物。
N−R−NH−R …(4)
(式中、Rは、少なくとも1個の水素原子が他の官能基によって置換されていてもよい炭素数1個以上8個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。Rは、H原子もしくは炭素数1個以上4個以下の直鎖状の飽和炭化水素基を表している。)
【請求項19】
前記アミンは、1,3−ジアミノプロパンもしくはN−メチル−1,3−ジアミノプロパンである請求項18に記載の導電性組成物。
【請求項20】
請求項1から請求項19のうちいずれか1項に記載の導電性組成物を基板上に塗布した後に、60℃以上230℃以下で加熱することにより得られる導電膜。

【公開番号】特開2013−62184(P2013−62184A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200889(P2011−200889)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】