説明

導電性繊維およびそれを用いてなる繊維製品

【課題】従来にない高い導電性を有する繊維およびそれからなる繊維製品を提供する。
【解決手段】繊維表層の少なくとも一部分に導電層を有する平均抵抗率が1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]、抵抗率の標準偏差の大きさが0.2以下の導電性繊維であって、該導電層が少なくともポリエステル成分とカーボンナノチューブとからなる導電性繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性に優れた繊維およびそれを用いてなる繊維製品に関するものである。さらに詳しくは、耐熱性に優れ、かつ湿度変化時の導電性変化が小さい点と繊維長手方向の導電性変化が小さい点の両方で非常に優れた導電性繊維と、該繊維を用いてなる織物、編物あるいは短繊維あるいはそれからなるブラシローラーなどの繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、そしてこれからも、合成繊維の機能性付与においては、「導電性」は重要な機能の一つである。例えば、クリーンルーム用の衣料用繊維として、あるいはカーペットへの混繊用繊維として静電気を除去するものであったり、またあるいは、装置の中で電荷を付与するものであったりと、衣料用、産業用など幅広い分野において大きな需要が存在する。近年では、電子情報機器、特に携帯電話などの無線端末の普及により日常的な環境においても電磁波の暴露量が増加しており、健康への影響が懸念されていることから、導電性以外にも、電磁波遮蔽素材として利用する事例も増えている。
【0003】
前記問題点を解決するため、繊維内部にある程度の導電性物質を混入して繊維自体に導電性能を付与する技術が数多く提案されていて、例えば、導電性物質としてカーボンブラックを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術において、十分な導電性を確保するためには多量のカーボンブラックを配合する必要があり、合成繊維の場合は製糸性の悪化を招くことが常に懸念され、同時に導電性の鍵を握るカーボンブラックの配置に関しては、紡糸後の延伸工程において延伸倍率を大きくすると粒子間の電気的接合が破壊され、導電性が低下する傾向がある、つまり些細な製法の変化で大きく変化しやすいことから、製造する製品の導電性が安定しないという潜在的な危険性を常に孕んでいる。
【0004】
この導電性粒子を用いた導電性付与の技術を改善するものとして、近年、極微小な直径と高いアスペクト比を有する、一般的に“カーボンナノチューブ”と呼ばれる物質を用いた技術が提案されている。例えば、このカーボンナノチューブ(以下「CNT」と記載することがある)を用いた樹脂組成物の技術が提案されている。これらの技術の提案においては、CNT固有の高強度、高弾性率といった高い力学物性を生かし(例えば、特許文献2、3参照)、さらに、CNT自身が導電性に優れることから、CNTを含有した導電性ポリマ組成物から得られる繊維の優れた導電性を予見している(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これら技術提案においては、ただ単に導電性の優れた繊維を得ることのみに言及していて、繊維の導電性を一定レベルに制御しなければ実用性に乏しいとされる用途、特に電磁波遮蔽素材や発熱体、高電圧印可して用いる導電性ブラシなどのエレクトロニクス用途に用いるための導電性繊維の設計指針、例えばポリマ混合物の組成、組成の処方、あるいは繊維の製造方法などについては何ら提案されておらず、実用性は限られたものであった。
【0005】
ところで本出願人らは、これまでにCNTを少量含有した衣料用途の導電性繊維についての技術を既に提案している(例えば、特許文献5参照)。この技術においては、直径の小さい2〜5層の構造を持つCNTを高々3重量%添加してなる導電性繊維となすことで、導電性を維持しつつも衣料用途として十分な風合いと色調を有する繊維の製造を達成し、さらには該繊維が導電性ブラシなどのエレクトロニクス材料としても用いられる可能性を示している。しかしながら、衣料用途に固執するあまり、エレクトロニクス材料として展開しようとした場合に、従来の導電性の評価方法では感知し得なかった大きな問題が発生した。すなわち、繊維の長手方向には大きな導電性の変化(斑)が見られ、導電性の制御を高度に達成しうるものではなかったし、またCNTの繊維材料への分散方法も、特にポリエステルを繊維材料とした場合に、分散性の向上しない樹脂の重合時にCNTを添加するという不適切な手法を採っていた。つまり、繊維の構成およびその製法が、衣料用途に偏重していたことがわかった。
【特許文献1】特開昭50−109351号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−27279号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特表2002−544356号公報(特許請求の範囲、段落[0002],[0004])
【特許文献4】特開平9−111135号公報(特許請求の範囲、段落[0001])
【特許文献5】特開2005−54277号公報(特許請求の範囲、実施例4〜6,比較例4〜6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、耐熱性に優れ、かつ該導電性の湿度依存性がなく、繊維長手方向の導電性変化も小さい導電性繊維、また該導電性繊維を用いてなる織物、編物、不織布、短繊維、衣料、アクチュエーターなどの繊維関連製品、さらにはこれら繊維関連製品を用いてなる各種製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、優れた導電性を有する繊維を得るために鋭意検討を重ね、その中で特定の材料からなる、特定の物性となすことにより従来技術の欠点を解消でき、かつ従来技術では達成しえなかったさらなるメリットをも付与しうることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、上記の課題を達成するため、本発明は、以下の構成を採用するものである。
【0009】
(1)繊維表層の少なくとも一部分に導電層を有する平均抵抗率が1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]、抵抗率の標準偏差の大きさが0.2以下の導電性繊維であって、該導電層が少なくともポリエステル成分とカーボンナノチューブとからなることを特徴とする導電性繊維。
【0010】
(2)ポリエステルがトリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し構造単位とするポリマであることを特徴とする前記(1)記載の導電性繊維。
【0011】
(3)導電性繊維の、温度23℃湿度55%での平均抵抗率X[Ω/cm]と、温度10℃湿度15%での平均抵抗率Y[Ω/cm]との比Y/Xが,1≦Y/X≦5の範囲にあることを特徴とする前記(1)または(2)のいずれか1項記載の導電性繊維。
【0012】
(4)繊維表層が全て導電層で覆われた複合繊維であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の導電性繊維。
【0013】
(5)繊維が導電層のみからなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の導電性繊維。
【0014】
(6)導電層におけるカーボンナノチューブの含有量が0.3重量%以上5重量%以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項記載の導電性繊維。
【0015】
(7)繊維長が0.05〜150mmの導電性短繊維であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の導電性繊維。
【0016】
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする織物。
【0017】
(9)パイル織りであることを特徴とする前記(1)〜(3)請求項8記載の織物。
【0018】
(10)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする編物。
【0019】
(11)裏毛編からなる編物および/または起毛処理によりパイル状繊維が編物表面にある編物であることを特徴とする前記(10)記載の編物。
【0020】
(12)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする不織布。
【0021】
(13)前記(7)記載の導電性短繊維を少なくとも一部に用い、基盤に接着して植設されてなることを特徴とする植毛体。
【0022】
(14)前記(8)〜(12)のいずれか1項記載の織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、基盤に接着してなることを特徴とする布帛複合体。
【0023】
(15)前記(1)〜(11)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とするアクチュエーター。
【0024】
(16)前記(1)〜(11)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる衣料。
【0025】
(17)前記(8)〜(12)のいずれか1項記載の織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなることを特徴とするブラシローラー。
【0026】
(18)前記(7)記載の導電性短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなることを特徴とするブラシローラー。
【0027】
(19)前記(17)または(18)のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする清掃装置。
【0028】
(20)前記(17)または(18)のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする帯電装置。
【0029】
(21)前記(17)または(18)のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする現像装置。
【0030】
(22)前記(17)または(18)のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする除電装置。
【0031】
(23)前記(19)記載の清掃装置、前記(20)記載の帯電装置、前記(21)記載の現像装置、および前記(22)記載の除電装置から選ばれる少なくとも1種の装置を用いてなることを特徴とする電子写真装置。
【0032】
(24)前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする発熱体。
【発明の効果】
【0033】
本発明の導電性繊維は、高い導電性を有するためのカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube;以下CNTと略記することがある)を含有する導電層が、ポリエステル成分から構成される。ポリエステル成分は吸水性あるいは吸湿性がほとんどないことから、導電性の湿度依存性が非常に小さく、使用環境の湿度変化に左右されず非常に安定した導電性を有する。したがって、高い導電性および環境変化における導電性の安定性が必要とされる用途、例えば後述するような常時あるいは頻繁に電圧を印可して用いられる発熱体や電子写真装置中の各種ブラシローラーなどに好適に採用することができる。
【0034】
また、本発明の導電性繊維は、前述のCNTを採用して導電層を担わせることができる。CNTは導電層中で分散されかつ繊維の長手方向に略配向しており、直径と長さの比(アスペクト比)が非常に大きく、導電層中でCNT同士が非常に近接あるいは接触し易い配列となる。したがって、導電層においては、常に繊維の長手方向の導電性斑が小さいものとなる。
【0035】
さらに、本発明の導電性繊維は、前記導電層が、繊維表層をすべて覆う、あるいは繊維自体がすべて導電層のみからなる構成とすることによって、抵抗率の標準偏差の大きさ、すなわち導電性の斑として非常に小さくすることが可能であって、あるいは温度23℃湿度55%の中温中湿度と、温度10℃湿度15%の低温低湿度のそれぞれの温湿度条件における平均抵抗率との比を非常に小さくすることが可能であって、これにより環境変化に対する導電性の安定性がさらに高まり優れることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明における繊維とは細く長い形状を指し、その長さは、一般的に言われる長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であっても良い。短繊維の場合は用途に応じて所望の長さにすればよいが、精紡あるいは後述するような電気植毛加工などに用いられることを考慮すると、長さ0.05〜150mmであることが好ましく、特に電気植毛加工に用いられる場合は0.1〜10mmの長さであることがより好ましく、0.2〜5mmであることがさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の導電性繊維の太さ、すなわち単繊維直径に関しては特に制限されるものではないが、後述するような様々な用途に採用が可能であるという点で単繊維直径は1000μm以下であることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましく、0.5〜50μmであることがさらにより好ましく、後述するブラシローラーに用いる場合で清掃装置に組み込む場合には清掃性能が優れるという点で0.5〜25μmであることが特に好ましい。ここで単繊維直径については、光学顕微鏡で概ね100倍〜1000倍の範囲において、透過光を用いて測定することができる。
【0038】
また、繊維の断面形状についても特に制限されるものではなく、丸形であれば均一な繊維物性を有するため好ましく、また繊維をブラシローラーにて短繊維あるいは織物あるいは編物あるいは不織布の形状で組み込み、使用する用途あるいは目的に応じて、例えば繊維の曲がる方向に異方性を持たせる、あるいは後述する電子写真装置においてはトナーとの良好な接触性を得てより優れた清掃性能を発現させるといった場合には、偏平型、多角形、多葉型、中空型、あるいは不定形型などが好ましい。
【0039】
本発明の導電性繊維は、繊維表層の少なくとも一部分に、ポリエステル成分とカーボンナノチューブとからなる導電層を有するものである。繊維表層の少なくとも一部分に該導電層を有することから、繊維自体の導電性はこの導電層の性状によって制御でき、所望の導電性能を付与しうるため大変優れた導電性繊維となる。
【0040】
繊維表層の少なくとも一部分に導電層を有するためには、該導電層は、導電層以外の成分とブレンド紡糸、あるいは溶融したポリマを異なる流路から同一口金内において導電層が繊維表層に配列されるように押し出される複合紡糸により形成することができる。この中で安定した導電性を発現しうるという点では複合紡糸されてなる複合繊維が好ましい。ここで該複合繊維における導電層の割合は、導電層が5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、高い導電性を発現させるためには、20体積%以上であることが特に好ましい。該体積%は、後述する繊維表層が全て導電層で覆われた繊維においても適用されるものである。
【0041】
そして、本発明の導電性繊維の導電性は、繊維表面における導電層の面積が大きいほど導電性の安定性に優れることから、繊維表層が全て導電層で覆われた繊維であることが好ましい。この繊維表層が全て導電層で覆われている場合、繊維の内層部は繊維表層と同じ導電層である、すなわち、繊維が導電層のみからなる場合には、繊維自身の繊維断面における導電性の斑がなく、均質な導電性能を有するためさらにより好ましい。あるいは、該内層部が本発明でいう導電層以外の成分からなる場合、すなわち、導電層と該内層部との複合成分からなる複合繊維である場合には、例えば、該内層部は導電剤を含まないことで本発明の導電性繊維の繊維物性、例えば、強度や伸度を担う成分として配置してもよく、あるいは本発明の趣旨を損ねない範囲においてカーボンナノチューブ以外の導電剤を含有した別の機能を担う層であっても良く、あるいは機能性成分を含有したものであっても良い。
【0042】
本発明の導電性繊維の導電層は、その1成分としてポリエステル成分であることが重要である。ポリエステルであることで、前述のとおり、吸水性あるいは吸湿性がほとんどないことから、導電層の1成分として導電性繊維に用いた場合に、導電性の湿度依存性が非常に小さく、使用環境の湿度変化に左右されず、非常に安定した導電性を有するため非常に好ましい。
【0043】
また、本発明の導電性繊維が、導電層と導電層以外の層、すなわち複数の成分からなる場合には、導電層以外の層が繊維形成能を有するものであれば、導電層は繊維形成能を有するものであっても、有しないものであっても良いが、製糸性が向上することを考慮し、あるいは本発明の導電性繊維全体が、導電層のみからなるような場合には、該ポリエステル成分としては、繊維形成能を有するものであることが好ましい。
【0044】
本発明の導電層を構成するポリエステル成分としては、カルボン酸とアルコールのエステル化反応により形成されるポリエステルを用いることができる。具体的には、例えばジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成されるポリエステルを挙げることができ、かかるポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート(ポリトリメチレンテレフタレートとも言う)、ポリブチレンテレフタレート(ポリテトラメチレンテレフタレートとも言う)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、あるいは芳香族ヒドロキシカルボン酸を主成分とする溶融液晶性を有する液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0045】
そして、これらジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成されるポリエステルには、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても良く、例えばジカルボン酸化合物を共重合せしめることができる。該ジカルボン酸化合物として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0046】
また共重合成分としては、ジオール化合物を共重合せしめることができ、該ジオール化合物として例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジオール化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0047】
また共重合成分としては、1つの化合物に水酸基とカルボン酸を具有する化合物、すなわちヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、該ヒドロキシカルボン酸としては、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらヒドロキシカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
本発明の導電層を構成するポリエステル成分には、芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸と水酸基を両方有したヒドロキシカルボン酸化合物を主たる繰り返し単位とするポリエステルでも良い。該ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルとしては、例えばポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレートバリレート)、といったポリ(ヒドロキシカルボン酸)を挙げることができ、その他にも、これらポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、本発明の趣旨を損ねない範囲で芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族ジオール成分が用いられていてもよく、あるいは複数種のヒドロキシカルボン酸が共重合されていても良い。
【0049】
該ポリエステルの中でも、カーボンナノチューブの分散性がより優れるという点で、ポリエステル成分としては、主たる繰り返し構造単位がトリメチレンテレフタレートから構成されるポリエステル(以下「PTT系ポリエステル」と略記することがある)からなることが好ましい。該PTT系ポリエステルは、カルボン酸であるテレフタル酸とアルコールであるトリメチレングリコールのエステル化反応により形成されるポリマである。該PTT系ポリエステル成分は、カーボンナノチューブを多量に含有させた場合であっても、溶融粘度が大きく変化することがなく、繊維を形成させるためのプロセス、例えば溶融紡糸においても通常のPTT系ポリエステルのみを溶融紡糸するのと何ら変わりなく同じように溶融紡糸が達成できる。
【0050】
そして本発明の導電層においては上記の中から選ばれるポリエステルを1種類単独で用いても良く、また発明の趣旨を損ねない範囲において複数種のポリマを併用しても良い。
【0051】
本発明の導電性繊維は、その用途の1つとして後述するように、装置中に組み込まれて高温中で用いられることもある。したがって、高温での形状変化が小さい、すなわち耐熱性に優れることが好ましいことから、本発明の導電層に用いられるポリエステル成分は、その融点が150℃以上であるものが好ましく、融点が200℃以上であるものがより好ましい。ただし、該融点が過度に高い場合は本発明で用いられるポリエステルの分解を促進する可能性があり、後述する溶融紡糸において劣化する場合があるため、該融点は400℃以下のものが好ましく、350℃以下のものがより好ましい。特に本発明におけるポリエステルがより好ましいとされる前述のPTT系ポリエステルである場合には、該融点は300℃以下であることが特に好ましい。ここで融点とは、下記実施例のH.項記載の方法にて測定されるピーク温度を指す。
【0052】
また、本発明の導電性繊維においては、繊維が導電層のみからなる場合を除いて、導電層以外の層が配置されてなる場合、該導電層以外の層は主たる成分として繊維形成能を有するポリマからなることが好ましい。該繊維形成能を有するポリマとしては、例えば、ポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリイミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマやその他ビニル基の付加重合により合成される例えばポリアクリロニトリル系ポリマなどのビニル系ポリマ、フッ素系ポリマ、セルロース系ポリマ、シリコーン系ポリマ、芳香族あるいは脂肪族ケトン系ポリマ、天然ゴムや合成ゴムなどのエラストマー、その他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
【0053】
より具体的には、該繊維形成能を有するポリマとしては、例えば、前述導電層において用いられうる、各種ポリエステルを挙げることができる。
【0054】
また該繊維形成能を有するポリマの具体例としては、例えば、ビニル基を有したモノマーが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの付加重合反応によりポリマが生成する機構により合成されるポリオレフィン系ポリマやその他のビニル系ポリマとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、などが挙げられるが、これらは例えばポリエチレンのみ、あるいはポリプロピレンのみのように単独重合によるポリマであっても良いし、あるいは複数のモノマー共存下に重合反応を行うことで形成される共重合ポリマであっても良く、例えばスチレンとメチルメタクリレート存在下での重合を行うとポリ(スチレン−メタクリレート)という共重合したポリマが生成するが、発明の趣旨を損ねない範囲において、このような共重合体であるポリマであっても良い。
【0055】
あるいは該繊維形成能を有するポリマの具体例としては、例えば、カルボン酸あるいはカルボン酸クロリドと、アミンの反応により形成されるポリアミド系ポリマを挙げることができ、具体的にはナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,9、ナイロン6,12、ナイロン5,7およびナイロン5,6などが挙げられるほか、本発明の趣旨を損ねない範囲で他の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸と芳香族、脂肪族、脂環族ジアミン成分が、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸とアミノ基を両方有したアミノカルボン酸化合物が単独で用いられていてもよく、あるいは第3、第4の共重合成分が共重合されているポリアミド系ポリマであっても良い。
【0056】
その他に該繊維形成能を有するポリマとしては、アルコールと炭酸誘導体のエステル交換反応により形成されるポリカーボネート系ポリマ、カルボン酸無水物とジアミンの環化重縮合により形成されるポリイミド系ポリマ、ジカルボン酸エステルとジアミンの反応により形成されるポリベンゾイミダゾール系ポリマや、そのほかにもポリスルホン系ポリマ、ポリエーテル系ポリマ、ポリフェニレンスルフィド系ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマ、ポリエーテルケトンケトン系ポリマ、脂肪族ポリケトンなどのポリマの他、セルロース系ポリマや、キチン、キトサンおよびそれらの誘導体など、天然高分子由来のポリマなども挙げられる。
【0057】
これら繊維形成能を有するポリマとして、導電層との界面接着性が良好で剥離が生じがたいという点でポリエステルが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられ、より好ましい例としては、導電層と同じポリエステルを用いることである。
【0058】
そして本発明の導電性繊維の導電層以外の層においては、前述多種多様のポリマの中から選ばれるポリマを1種類単独で用いても良く、また発明の趣旨を損ねない範囲において複数種のポリマを併用しても良い。
【0059】
本発明における導電層に含有されるカーボンナノチューブ(CNT)は、導電性を有するものであれば特に制限されるものではないが、好ましいものとして、例えば該CNTの導電性は比抵抗値として5000[Ω・cm]以下のものが好ましく、1000[Ω・cm]以下であることがより好ましい。また該CNTの導電性は比抵抗値として低いことが好ましいものの、CNTの導電特性として、1.0×10−8[Ω・cm]以上のものが好適なものとして用いられる。ここで該比抵抗値は、下記実施例E.項の方法にて測定できる。
【0060】
また、本発明の導電性繊維の導電層に含有せしめた場合に繊維物性を損ねないことが好ましく、また凝集しないことが好ましいことから、該CNTの直径は、平均で0.1〜100nmの範囲のものが好ましく、0.5〜50nmの範囲のものがより好ましい。また、CNTの直径Dと長さLの比(アスペクト比)L/Dについては、適度な大きさをもつことで導電層中でCNT同士が凝集せず、あるいは導電性繊維を形成させた場合には繊維の長手方向に略配向して繊維長手方向の導電性が均質になる好ましい特性を有することから、該L/Dは10〜10000であることが好ましく、15〜5000であることがより好ましく、20〜3000であることが特に好ましい。ここで該L/Dは下記実施例J.の方法にて測定される。
【0061】
そして該CNTの導電層における含有量は、繊維が高い導電性を有すること、および導電性繊維の強度や伸度などの物性が安定していることなどから、0.3重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
本発明において導電層にカーボンナノチューブを含有せしめる方法、すなわちポリエステルにCNTを含有せしめる方法としては、具体的に例示すると、不活性気体の雰囲気下、ポリエステルを溶融し、CNTを添加し、エクストルーダやスタティックミキサーのような混練機あるいは混練子により常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法が挙げられる。該方法では、ポリエステルを溶融する以前の任意の段階で、あらかじめポリエステルとCNTとを所望の比率で混和させておくこと(「乾式ブレンド」と呼ぶことがある)が好ましく、このときCNTは通常粉体で得られることから、ポリエステルを粉体状として、混和せしめることがより好ましい。またポリエステルを溶融した以後にCNTを添加する場合には、エクストルーダに配設したサイドフィーダーにCNTを運ばせてエクストルーダ中にて混合しても良い。
【0063】
特にエクストルーダに関しては1軸あるいは2軸以上の複数軸エクストルーダを好適に用いることができるものの、CNTがポリエステル中で可能な限り凝集せずに均一に混練するという点で、2軸以上の多軸エクストルーダを採用することが好ましい。このときエクストルーダのスクリューの混練にかかる部分の長さ(l)およびスクリューの太さ(w)の比l/wについては、混練性向上の点でl/wは20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、40以上であることが特に好ましい。またこのとき、エクストルーダでの溶融混練にかかる剪断速度は、過度に小さい場合には、CNTがポリエステル中に均一に分散しない場合があるし、過度に大きい場合には溶融混練中のポリエステルの剪断発熱によりポリエステルが劣化してしまう場合があるので、適度に決定した方がよく、150〜6000[sec−1]であることが好ましく、300〜5000[sec−1]がより好ましく、500〜4000[sec−1]が特に好ましい。ここで該剪断速度については、エクストルーダの軸の太さ(w[mm])、エクストルーダのスクリューとスクリューが収められているバレル部との隙間(一般的に「クリアランス」と呼ばれる)(h[mm])、スクリューの1分間あたりの回転数(n[回転数/min])を用いて、(剪断速度[sec−1])=2πwn/60h、で算出される。
【0064】
また特に前述スタティックミキサーに関しては、例えば溶融したポリエステルとCNTの混合物が通る流路を2つあるいはそれ以上の複数に分割して再度合一するという作業(この分割から合一までの作業1回を1段とする)がなされる静置型の混練子であればよく、混練性が優れるという点で該スタティックミキサーの段数は5段以上であることが好ましく、10段以上であることがさらにより好ましい。また流路の必要長さにも依るものの50段以下であることが好ましい。
【0065】
本発明の導電性繊維で好ましいとする導電層のポリエステル、あるいは前述した導電層以外の層の繊維形成能を有するポリマは、通常合成繊維に供する粘度のポリマを使用することができる。例えば、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートであれば、固有粘度(IV)が0.4〜1.5であることが好ましく、0.5〜1.3であることがより好ましい。また、ポリトリメチレンテレフタレートであれば、IV0.7〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。あるいは、ポリブチレンテレフタレートであれば、IV0.6〜1.5であることが好ましく、0.7〜1.4であることがより好ましい。またポリアミド系ポリマは、例えばナイロン6であれば極限粘度[η]が1.9〜3.0であることが好ましく、2.1〜2.8であることがより好ましい。
【0066】
また本発明の導電層で用いられるポリエステルの溶融粘度は、添加するCNTの添加量や繊維の構成により適宜設定すれば良く、用いるポリマの溶融紡糸温度で、剪断速度が10[sec−1]の剪断粘度が10〜10,000[Pa・秒]のポリマが通常用いられ、好ましくは50〜5,000[Pa・秒]である。ここで該溶融粘度は、下記実施例F.項の方法にて測定したものを採用する。
【0067】
本発明の導電性繊維の単糸繊度は、目的とする用途に応じて適宜決定して作製されればよいものの、後述するような、例えば衣服の裏地やあるいはその他各種衣類に用いられる場合には0.01〜5.0dtexの範囲の繊度が好ましく、均質な糸が得られるということを考えると0.1〜3.0dtexの範囲の繊度がより好ましい。また例えば後述するような電子写真装置などに組み込まれる繊維ブラシに用いられる場合には、0.2〜25.0dtexの範囲の繊度が好ましく、0.5〜7.0dtexの範囲の繊度がより好ましい。特に、近年増加傾向にあるカラーの電子写真装置においては、用いられる着色剤(トナーと呼ばれることもある)に適応するために単糸繊度は小さくなることが好ましい場合があり、その場合の単糸繊度は0.5〜2.5dtexの範囲が特に好ましい。ここで該単糸繊度は、下記実施例A.項の方法にて測定したものを採用する。
【0068】
本発明の導電性繊維は、使用時の環境によっては高温に曝される場合もあることから、耐熱性に優れるという点で、160℃大気中で15分間保持した際の収縮率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることが特に好ましい。低いほど好ましく0%までのものが好適に用いられる。ここで該収縮率は、下記実施例G.項の方法にて測定したものを採用する。
【0069】
本発明の導電性繊維は、衣料用途や後述するブラシローラー用など様々な用途での使用時の変形が小さいという点で、残留伸度が5〜100%であることが好ましく、5〜50%であることが特に好ましい。ここで該残留伸度は、下記実施例B.項の方法にて測定したものを採用する。
【0070】
本発明の導電性繊維は、様々な用途での瞬時の大きな応力に抵抗しうる、あるいは後述する電子写真装置に組み込まれるブラシローラー用に用いて着色剤を掻き落とす際に、掻き落とし性が良好であるという点で、初期引張弾性率が10cN/dtex以上であることが好ましく、15cN/dtex以上であることが特に好ましい。そして高いほど好ましくCNTが導電層に含有されていることから、高々1000cN/dtex以下のものが好適に製造される。ここで該初期引張弾性率は、下記実施例B.項の方法にて測定したものを採用する。
【0071】
本発明の導電性繊維は、衣料用途や後述するブラシローラー用など様々な用途で形状あるいは特性を安定して満足するために、破断強度が1.0cN/dtex以上であることが好ましく、1.5cN/dtex以上であることがより好ましく、2.0cN/dtex以上であることがさらにより好ましい。通常、導電性の高い導電性繊維を作製するべくカーボンブラックを高濃度で含有せしめたポリエステルは、繊維を形成した場合には破断強度が非常に低く(1.0cN/dtex未満)どのような手段を採っても破断強度を高めることは困難であった。しかし本出願人らは、ポリエステルにカーボンナノチューブが高濃度で含有されていても、該CNTが導電層中に均一に分散されていて、繊維形成時に繊維の長手方向に略配向化される場合にはむしろ特異的に破断強度を高めることができることを見出したものである。そして該破断強度に関しては高いほど好ましいものの、生産性を考慮すると15.0cN/dtex以下のものが好適に製造される。ここで該破断強度は、下記実施例B.項の方法にて測定したものを採用する。
【0072】
本発明の導電性繊維は、平均抵抗率が1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]であることが重要である。該平均抵抗率の範囲は、後述するような多様な用途、例えば衣料、アクチュエーター、ブラシローラー、発熱体、あるいはこれらを組み込んでなる様々な製品などに必要とされる所望の導電性であって、非常に好適に採用される。平均抵抗率は、小さければ小さいほど導電性が高い、すなわち電気を流しやすいため、用途によっては低い平均抵抗率を持つ必要があるものの、導電層に最大限含有せしめることが可能なCNTの量と、得られた導電性繊維が用いられる用途を鑑み、平均抵抗率の下限は1.0×10[Ω/cm]としている。特に、後述するような電子写真装置に組み込むブラシローラーに本発明の導電性繊維を用いる際には1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]の範囲の平均抵抗率であることが好ましく、ブラシローラーの用いられる部材や装置の特性に応じて後述するような範囲の平均抵抗率の導電性繊維が採用される。また発熱体においても、織物や編み物となした後に所望の大きさとするが、目的とする発熱量に応じて適宜設定すれば良いものの、1.0×10〜1.0×10[Ω/cm]の範囲の平均抵抗率であることが好ましい。ここで該平均抵抗率は下記実施例C.項の方法にて測定したものを採用する。
【0073】
また本発明の導電性繊維は、後述するような様々な用途で安定した導電性が確保されるべきであることから、抵抗率の標準偏差の大きさが0.2以下である。そして小さい値ほど安定した導電性が確保され、0.1以下であることが特に好ましい。最も好ましいものとして、該標準偏差は0とはならないが0に限りなく近づく値である。従来、導電性繊維の平均抵抗率が1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]の範囲である場合には、該抵抗率の標準偏差の大きさが0.2以下とすることは従来用いられてきた導電性カーボンブラックあるいはその他の導電剤では非常に困難であった。しかしながら本発明者らは、一定の処方のもとで調製された、CNTが均一に分散されたポリエステルであれば、これを達成しうることを初めて見出したものである。ここで該抵抗率の標準偏差は下記実施例C.項の方法にて測定したものを採用する。
【0074】
さらに本発明の導電性繊維は、温湿度変化、具体的には例えば梅雨の時期のように湿った気候の場合であっても、冬季のように低温で乾燥した気候であっても導電性繊維の性能は何ら変わらないことが好ましい。したがって、該導電性繊維の、中温中湿度(温度23℃湿度55%)で平均抵抗率X(=Ω/cm)と、低温低湿度(温度10℃湿度15%)での平均抵抗率Y(=Ω/cm)との比Y/Xが,1≦Y/X≦5の範囲にあることが好ましく、1≦Y/X≦4の範囲にあることがより好ましく、1≦Y/X≦2の範囲にあることが特に好ましい。ここで該平均抵抗率の比は下記実施例D.項の方法にて測定したものを採用する。
【0075】
本発明の導電性繊維は、特に短繊維となして電気植毛加工を行う際に、より効率的に加工が行えるという点で、短繊維として比抵抗値が10〜10[Ω・cm]であることが好ましく、10〜10[Ω・cm]であることがより好ましい。そしてこれら好ましいとされる比抵抗値を有する短繊維とせしめるために導電調製剤等で処理することが好ましい。該導電調製剤としては例えばシリカ系粒子が混合された水系溶剤あるいは有機系溶剤を挙げることができ、その際のシリカ系粒子の粒径としては通常1nm〜200μmの大きさの粒子が用いられ、3nm〜100μmの大きさの粒径が好ましい。ここで該比抵抗値は下記実施例E.項の方法にて測定したものを採用する。
【0076】
本発明の導電性繊維は、発明の趣旨を損ねない範囲で艶消剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤等の添加剤を少量保持しても良い。またこれら添加剤は、本発明の導電性繊維が前述の通り複合繊維となす場合には導電層および/または導電層以外の層のいずれに保持されていても良い。さらに本発明において、本発明の趣旨及び他の必要とされる繊維物性を損ねない範囲において、他の導電剤を含有してもよい。ここで他の導電性材料としては比抵抗値が10000Ω・cm以下0.01nΩ・cm以上の金属、導電性カーボンブラック(導電性のケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、など)あるいは金属酸化物の粒子等を採用できる。
【0077】
以下、本発明の導電性繊維の好ましい製造方法を例示する。
【0078】
本発明の導電性繊維は、溶融紡糸のほか、乾式紡糸や湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸などの溶液紡糸など、種々の合成繊維の紡糸方法を採用して製造できるものの、繊維中に配設された導電層のカーボンナノチューブを高濃度かつ均一に分散された状態で含有せしめることが容易かつ可能であり、また繊維形状を精密に制御可能であることから溶融紡糸により好適に製造される。そして導電層を導電層以外の成分とブレンドして溶融紡糸するか、繊維表層の少なくとも一部分に導電層を有するように複合紡糸するか、あるいはカーボンナノチューブを含有する導電層を単独で溶融紡糸することで繊維を得る。
【0079】
溶融吐出された繊維はガラス転移温度(Tg)以下に冷却され、処理しないかもしくは処理剤を付着せしめた後、100〜10000m/分の引取速度で、好ましくは4000m/分以下、より好ましくは3000m/分以下、さらにより好ましくは2500m/分以下、特に好ましくは2000m/分以下の引取速度で引き取る。また生産性を考慮すると100m/分以上、好ましくは500m/分以上の引取速度で引き取る。ここで口金孔から吐出される繊維一束の本数(糸条の繊維本数)は目的とする使用方法あるいは用途に応じて適宜選択すればよく、1本のモノフィラメントの状態であっても、3000本以下の複数糸条からなるマルチフィラメントでも良いものの、諸物性の安定した繊維が得られ、各種用途に好適に採用されるという点で、4〜500本が好ましく、10〜150本が特に好ましい。また付着せしめる処理剤は繊維の用途に応じて適宜用いることができ、含水系あるいは非含水系の処理剤がここに採用されうるものの、本発明の導電性繊維を用いてなる電子写真装置の感光体が劣化することを防止するために感光体を劣化せしめるような化合物が含有されていないことが好ましい。
【0080】
引き取った後、巻き取ることなくもしくは一旦巻き取った後、繊維を構成するポリマのガラス転移温度(Tg)+100℃以下の温度に加熱して、より好ましくはガラス転移温度Tg−20℃〜Tg+80℃の温度範囲に加熱して、延伸糸の残留伸度が5〜60%となる倍率で、好ましくは延伸糸の残留伸度が5〜50%となる倍率で延伸する。ここで一旦延伸したのち(すなわち1段目の延伸を終えた後)、さらに1倍以上2倍以下の倍率で、2段目の延伸を施してもよい。
【0081】
延伸したのち、繊維は最終延伸温度以上融点(Tm)以下の温度で熱処理することが好ましい。延伸後に高温で熱処理を施すことで、より耐熱性に優れた繊維となすことができるのである。ここで該Tg,Tmは下記実施例H.項の方法にて測定したものを採用する。また熱処理されたのち、製品として巻き取るまでの工程の間に、繊維は、15%以内のリラックス処理されることが好ましい。リラックス処理を施すことで、得られる繊維の繊維長手方向の導電性がより優れたものとなりうる。
【0082】
上記延伸方法あるいは延伸後の熱処理方法としては特に制限されるものではなく、加熱されたピン状物、ローラ状物、プレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バス、あるいは加熱気体、加熱蒸気、電磁波などを用いた非接触式加熱媒体などを採用することが可能であるものの、加熱されたピン状物、ローラ状物、プレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バスなどは装置が簡便で加熱効率が高いことから好ましく、加熱されたローラ状物が特に好ましい。
【0083】
本発明の導電性繊維は、織物あるいは編物、さらには様々な衣料用途に用いる場合には仮撚り加工を施しても良い。仮撚り加工において繊維は、延伸糸あるいは未延伸糸を加熱することなくもしくは加熱されたピン状物、ローラー状物、プレート状物、あるいは非接触型のヒーターなどにより加熱した後、ディスク状物あるいはベルト状物によって仮撚り加工される。延伸仮撚り加工された繊維は、そのままもしくは特に制限されるものではないものの熱セットされた後に巻き取られることが好ましい。また本発明の導電性繊維は、前述仮撚り加工の代わりに、撚糸加工を施しても良い。
【0084】
本発明の導電性繊維は、用いられうる用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた織物となすことができる。ここで例えば一重織物としてはブロード、ボイル、ローン、ギンガム、トロピカル、タフタ、シャンタン、デシンなどの平織、デニム、サージ、ギャバジンなどの綾織、サテン、ドスキンなどの朱子織、バスケット、パナマ、マット、ホップサック、オックスフォードなどのななこ織、グログラン、オットマン、ヘアコードなどの畝織、フランス綾、ヘリンボーン、ブロークンツイルなどの急斜文、緩斜文、山形斜文、破れ斜文、飛び斜文、曲り斜文、飾斜文や、不規則朱子、重ね朱子、拡げ朱子、昼夜朱子や、蜂巣織、ハック織、梨地織、ナイアガラなどが挙げられ、また2枚の織物を合わせて1枚の織物となした二重織物としては、ピケ、フクレ織などの経二重織、ベッドフォードコードなどの緯二重織、風通織、袋織などの経緯二重織などが挙げられ、またパイル織物としては別珍やコールテンなどの緯パイル織や、タオル、ビロード、ベルベットなどの経パイル織などが挙げられ、その他に紗織や絽織などのからみ織物、ドビー織やジャガード織などの紋織物などを挙げることができ、特に後述のブラシローラー用織物に用いられるものとしてはパイル織物が好ましい。そして該織物を作成するために用いられる本発明の導電性繊維は、生糸、撚糸、仮撚り加工糸など、また長繊維(フィラメント)、あるいは短繊維(ステープル)など、繊維の形態については特に制限はない。
【0085】
また本発明の導電性繊維は、用いられうる用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた編物となすことができる。ここで編物としては天竺やシングルなどの平編、ゴム編やフライスなどのリブ編、リンクスなどのパール編の他、鹿の子、梨地、アコーディオン編、スモールパターン、レース編、裏毛編、片畦編、両畦編、リップル、ミラノリブ、ダブルピケ、等の緯編、あるいはトリコット、ラッセル、ミラニーズなどの経編などを挙げることができ、特に後述のブラシローラー用編物に用いられるものとしては、裏毛編やあるいはパイル状繊維を編物表面に突出させるための起毛処理を施した編物が好ましい。そして該編物を作成するために用いられる本発明の導電性繊維は生糸、撚糸、仮撚り加工糸など、また長繊維(フィラメント)、あるいは短繊維(ステープル)など、繊維の形態については特に制限はない。
【0086】
また本発明の導電性繊維は、用いられうる用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた不織布となすことができる。ここで不織布としてはケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ(スパンレース)法、スティッチボンド法、フェルト法などの接合あるいは接着方法により形成されたものを挙げることができ、不織布を作成するために用いられる本発明の導電性繊維は生糸、撚糸、仮撚り加工糸など、また長繊維(フィラメント)、あるいは短繊維(ステープル)など繊維の形態等については特に制限はない。
【0087】
本発明の導電性繊維が少なくとも一部に用いられてなる前述の織物あるいは編物は、常法の精練、染色、熱セット等の加工を受けてもよく、あるいは前述の不織布であれば、艶付けプレス、エンボスプレス、コンパクト加工、柔軟加工、ヒートセッティングなどの物理的処理加工や、ボンディング加工、ラミネート加工、コーティング加工、防汚加工、撥水加工、帯電防止加工、防炎加工、防虫加工、衛生加工、泡樹脂加工などの化学的処理加工や、その他にマイクロ波応用や、超音波応用、遠赤外線応用、紫外線応用、低温プラズマ応用などの応用処理がなされていても良い。
【0088】
また本発明の導電性繊維が少なくとも一部に用いられてなる前述の織物、編物、あるいは不織布としては、本発明の導電性繊維と、本発明とは異なる合成繊維、半合成繊維、天然繊維など、例えばセルロース繊維、ウール、絹、ストレッチ繊維、アセテート繊維から選ばれた少なくとも1種類の繊維とを用いたものであっても良い。具体的に例を挙げると、セルロース繊維としては、綿、麻等の天然繊維、あるいは銅アンモニアレーヨン、レーヨン、ポリノジック等が挙げられ、これらセルロース繊維と混用する本発明の導電性繊維の含有率については特に制限はないが、セルロース繊維の風合い、吸湿性、吸水性、制電性などを生かし、かつ本発明の繊維の導電性を生かすために、0.1〜50重量%が好ましい。また該混用に用いられるウール、絹は既存のものがそのまま使用でき、これらウール、あるいは絹と混用する本発明の導電性繊維の含有率については、ウールの風合い、暖かみ、かさ高さ、また、絹の風合い、きしみ音を生かし、かつ本発明の繊維の導電性を生かすために、0.1〜50重量%が好ましい。また混用に用いられるストレッチ繊維は、特に限定されるものではなく、乾式紡糸または溶融紡糸されたポリウレタン繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維やポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル系弾性糸等が挙げられ、ストレッチ繊維を用いる混用布帛において、本発明の導電性繊維の含有率は0.1〜50重量%程度が好ましい。また混用に用いられるアセテート繊維は特に制限されるものではなく、ジアセテート繊維でもトリアセテート繊維でもよく、これらアセテート繊維と混用する本発明の導電性繊維の含有率については、アセテート繊維の風合い、鮮明性、光沢を生かし、かつ本発明の繊維の導電性を生かすために、0.1〜50重量%が好ましい。
【0089】
これら各種の混用した織物、編物、あるいは不織布について、本発明の導電性繊維の形態、混用方法については特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、混用方法としては経糸または緯糸に用いる交織織物、リバーシブル織物等の織物、トリコット、ラッセル等の編物などが挙げられ、その他交撚、合糸、交絡を施してもよい。
【0090】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部にあるいは全部に用いた織物、編物あるいは不織布は、前述の混用したものも含め、染色されていてもよく、例えば製編、製織後あるいは不織布の場合はウェブを形成し前述の接合あるいは接着方法により形成されたあと、常法により精練、プレセット、染色、ファイナルセットの過程をとることが好ましい。また、本発明の導電性繊維が導電層はもとより導電層以外の成分もポリエステル系ポリマであってかつ繊維表層の一部を形成している場合は必要に応じて、精練後、染色前に常法によりアルカリ減量処理されていても良い。なお精練は40〜98℃の温度範囲で行うことが好ましい。特にストレッチ繊維との混用の場合には、布帛をリラックスさせながら精練することが弾性を向上させるのでより好ましい。染色前後の熱セットは一方あるいは両方共省略することも可能であるが、織物、編物あるいは不織布の形態安定性、染色性を向上させるためには両方行うことが好ましい。熱セットの温度としては、120〜190℃、好ましくは140〜180℃であり、熱セット時間としては10秒〜5分、好ましくは、20秒〜3分である。
【0091】
本発明の導電性繊維は導電性に優れることから繊維そのものとしても非常に有用で、繊維をそのまま使用することができるが、繊維の一形態として前述のとおり、0.05〜150mmの長さの短繊維として用いられる。該短繊維はフィラメントを1つの糸条単独であるいは複数の糸条を束ねたトウになして切断されてなるものであり、特に0.1〜10mmの長さの短繊維としたものは、例えば電気植毛加工や吹きつけ加工などの多種多様な方法によって、基盤に接着して植設されてなる植毛体とすることができる。
【0092】
電気植毛加工により植設された繊維は、その50%以上が基盤に対し10度から垂直(すなわち90度)の概ね直立状態に接着される。ここで、発明の趣旨を損ねない範囲で、該植毛体となす場合に用いる短繊維には、本発明の導電性繊維からなる短繊維以外に、本発明の導電性繊維ではない他の繊維からなる短繊維を混用して植設しても良い。また該植毛体は、基盤に短繊維を接着して植設してなるものであるが、接着する場合には例えばアクリル系、ウレタン系、またはエステル系の接着剤を用いて接着されることが好ましい。ここで接着剤の層の厚さは1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いても良い。また植設される基盤としては特に制限されるものではなく、前記植毛体を組み込む装置や用いる接着剤に応じて適宜採用すればよいが、合成樹脂、天然樹脂、合成繊維、天然繊維、木材、鉱物あるいは金属からなるフィルム、シート、紙、板、布帛などが好適に採用でき、あるいは各種用途の部材そのものである金属加工体、合成もしくは天然樹脂加工体もしくは成形体の基盤に直接植毛しても良い。ここで特に前記接着剤との親和性を高めるために、親水化処理してなる合成もしくは天然樹脂あるいは金属からなるシートが好ましい。そして該基盤が前記フィルム、シート、紙、板、布帛など表裏を形成している素材であれば用途あるいは目的に応じてその表面および裏面の両面に植設することができる。該植毛体は、その使用方法あるいは用途として、例えば導電性を有するため導電性のブラシローラーとして用いることができる。
【0093】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる前述の織物、編物あるいは不織布は、基盤に接着してなる布帛複合体とすることができる。この場合、織物であればパイル織りあるいは処理により織物表面に起毛や糸端があるもの、また編物であればパイル状の繊維起毛があるものもしくは起毛処理してパイルあるいは糸端が編物表面にあるものが後述するブラシローラーにおいてより機能が高められる場合があり好ましい。接着する場合には例えばアクリル系、ウレタン系、またはエステル系の接着剤を用いて接着されることが好ましい。ここで接着剤の層の厚さは1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いても良い。また接着される基盤としては特に制限されるものではなく、該布帛複合体を組み込む装置や用いる接着剤に応じて適宜採用すればよいが、合成樹脂、天然樹脂、合成繊維、天然繊維、木材、鉱物あるいは金属からなるフィルム、シート、紙、板、布帛などが好適に採用でき、あるいは各種用途の部材そのものである金属加工体、合成もしくは天然樹脂加工体もしくは成形体の基盤に直接接着しても良い。ここで特に前記接着剤との親和性を高めるために、親水化処理してなる合成もしくは天然樹脂あるいは金属からなるシートが好ましい。そして該基盤が前記フィルム、シート、紙、板、布帛など表裏を形成している素材であれば用途あるいは目的に応じてその表面および裏面の両面に前述の織物、編物あるいは不織布を接着して布帛複合体となすことができる。該布帛複合体は、その使用方法あるいは用途として、例えば導電性を有するため導電性のブラシローラーとして用いることができる。
【0094】
本発明の導電性繊維は、安定した導電性を有しかつ所望の抵抗率に制御することが可能であることから、一定の電圧を印可した際に微弱な電流を流すことが可能である。これを利用して、微弱な電流で信号を送られて制御・駆動されるアクチュエーターを形成することができる。該アクチュエーターは具体的に、例えば人間の筋肉と同じで微弱な電流を信号として伝達することができるため、アクチュエーターの回路に用いることができる。
【0095】
本発明の導電性繊維は、少なくとも一部あるいは全部に用いることにより衣料となすことができる。衣料となした場合に例えば導電性に優れることで冬季あるいは乾燥時の静電気発生を抑制することができるなど、より快適な着心地となるし、あるいは埃を寄せ付けにくいことから手術衣あるいは半導体製造時の作業衣など防塵衣料を形成しうる。その際には、本発明の導電性繊維を数本ごとにタテ糸および/またはヨコ糸として用いることが好ましい。また副次的な効果として導電層にカーボンナノチューブが含有されていることで繊維の熱伝導性が向上し、着衣時に瞬時に熱を奪う接触冷感素材やあるいは冬季に寒い外部から暖かい室内に入った時すぐに体が温まる温感素材などとして利用できる。
【0096】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛は、少なくとも一部に用いるかあるいは全部に用いることにより棒状物体に接着して、ブラシローラーを形成できる。
【0097】
ここで用いられる織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛は、棒状物体に接着する際に、棒状物体の機能的に必要とされる長さ(すなわち巻き幅)分だけカットしたものを一周で巻き付け接着しても良く、あるいは棒状物体の長さの数分の一〜数十分の一の長さの幅にスリット状にカットしたものを棒状物体にスパイラル状に巻き付けて接着しても良い。ここで用いられる接着剤は、用いられる用途あるいは目的に応じて適宜採用すれば良く、アクリル系、エステル系あるいはウレタン系など種々のものを採用でき、また必要に応じて導電性カーボンブラックや金属などの導電性制御剤あるいは鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンなどの金属あるいはこれら金属の酸化物あるいはこれらの混合物などの磁性制御剤などが添加されていても良い。ここで接着剤の層の厚さは1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いても良い。さらに前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛は接着される以前の段階で接着面に10〜1010[Ω・cm]の比抵抗を有する導電処理剤もしくは導電性シートあるいは導電性膜などの素材を張り合わせてもよい。
【0098】
本発明の前記短繊維は、少なくとも一部に用いるかあるいは全部に用いることにより棒状物体に接着して植設されてブラシローラーを形成できる。ここで用いられる短繊維は、棒状物体に接着して植設される際に、気体により短繊維を吹き付けても良くあるいは電気植毛加工を行っても良いが、棒状物体の表面に概ね直立したものが効率よく得られることから電気植毛加工により得られることが好ましい。このとき短繊維は、その50%以上が棒状物体の表面において10度から垂直(すなわち90度)の概ね直立状態に接着される。ここで、発明の趣旨を損ねない範囲で、用いる短繊維には本発明の導電性繊維からなる短繊維以外に、本発明の導電性繊維ではない他の繊維からなる短繊維を混用して植設しても良い。また接着して植設する際の接着剤は特に制限されるものではなく、例えばアクリル系、ウレタン系、またはエステル系の接着剤が用途あるいは目的に応じて種々選択されて用いられ、ここで接着剤の層の厚さは1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いても良い。また本発明の短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設してなる前記ブラシローラーのブラシローラー自体の比抵抗値は10〜1011[Ω・cm]であることが好ましい。
【0099】
前述の棒状物体の芯となる主たる材質は、用いられる用途あるいは目的に応じて適切なものを採用すれば良く、金属、合成樹脂、天然樹脂、木材、鉱物などから単独で、もしくは複数種を組み合わせて選ばれるが、後述する電子写真装置に組み込む部材として用いる場合には、主として金属からなることが好ましい。さらに該棒状物体が金属である場合には、該金属の少なくとも一部もしくは必要とする部分の全面を中間層が覆い、その上に前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛が接着されるか、あるいは短繊維が接着して植設されることが好ましい。この中間層として用いられる素材は主としてクッション性を棒状物体に付与する、あるいはブラシ状の繊維の弾性・剛性のみでは達成し得ない場合に補助的に弾性・剛性を担うものであり、後述される例えば清掃装置におけるトナー除去性能、あるいは現像装置におけるトナー付与性能を格段に向上せしめる。そして特に制限されるものではないものの、該中間層には例えばウレタン系素材、エラストマー素材、ゴム素材あるいはエチレン−ビニルアルコール系素材などが好適に用いられる。そして該中間層の厚みは0.05〜10mmであることが好ましく、さらに必要に応じて前述の導電性制御剤あるいは磁性制御剤が添加されていても良い。
【0100】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなるブラシローラー、あるいは前記短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなるブラシローラーは、用いている本発明の繊維の導電性に由来して、例えば電子写真装置の中に組み込まれている清掃装置の部材として好適に用いられる。ここで該清掃装置に用いられるブラシローラーの導電性繊維の平均抵抗率は、1.0×1010[Ω/cm]以上1.0×1012[Ω/cm]以下の範囲のものが好適に、かつ清掃装置の機構に応じて用いられる。清掃装置の中で該ブラシローラーは回転しながら、必要であれば電気を印可されながら、不要物(例えば電子写真装置の中であれば転写されなかった残存着色剤や、紙から脱離した繊維など)を捕捉して除去するのであるが、本発明の導電性繊維を用いた場合には前述の通り温度および湿度変化がある場合にも安定した導電性能を有する繊維であることから、この除去性能が格段に優れるのである。また該ブラシローラーの清掃装置内での用いられ方としては前述のとおり、感光体にブラシローラーが直接接触して清掃する以外に、感光体を清掃する部材(前記のとおり、ブラシローラーの場合もあれば、あるいは従来技術であればブレード状の部材)を清掃するためのブラシローラーとして、すなわち清掃装置自体を清掃するもの、もしくは回収した不要トナーを別の場所に移送するためのブラシローラーとしても用いられる。また本発明の清掃装置にはブラシローラーを目的効果、清掃の機構に応じて1本用いてもあるいは2本以上の複数本用いても良い。
【0101】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなるブラシローラー、あるいは前記短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなるブラシローラーは、用いている本発明の繊維の導電性に由来して、後述する電子写真装置に用いられうる帯電装置に好適に組み込まれて用いられる。該帯電装置に組み込まれるブラシローラーの導電性繊維の平均抵抗率は、1.0×10[Ω/cm]以上1.0×1010[Ω/cm]以下の範囲のものが好適に用いられる。該ブラシローラーを用いてなる帯電装置の性能は、ブラシローラーの導電性能、すなわち導電性繊維の性能に依存するが、本来の目的である感光体を均一に帯電できることはもとより電子写真装置内の環境変化、すなわち電子写真装置が稼働中徐々に変化する温度や湿度の変化、あるいは季節による温度、湿度変化に対してブラシローラーの導電性は全く変化しないことが求められる。それに対して本発明の導電性繊維は、前述の環境変化に対して導電性は全く変化することがないため感光体の帯電斑が起こりにくく、非常に優れた帯電装置となる。加えて該電子写真装置の感光体表面に、清掃が不十分なために残存したトナーがあった場合にも該ブラシローラーはブラシ状であって清掃ローラーを兼ねることができるため、現像あるいは印刷時の汚染が無いもしくは殆ど無いという点でも優れており、さらには電子写真装置を小型化する場合には前記清掃装置および帯電装置を個別に設置することなく清掃装置兼帯電装置として省スペース化を図ることも可能であるため、その点でも格段に優れている。また本発明の帯電装置中には、目的、機構に応じて前記ブラシローラーを1本あるいは2本以上の複数本用いても良い。
【0102】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなるブラシローラー、あるいは前記短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなるブラシローラーは、用いている本発明の繊維の導電性に由来して、現像装置に好適に組み込まれて用いられる。現像装置は後述の電子写真装置においては、前記帯電装置により一様に帯電された感光体表面にレーザーによって描かれた潜像を顕像化するものであるが、前述のような電子写真装置内の環境変化に対してもブラシローラーの抵抗率変化が無いことから、顕像化するためのトナーが均一に感光体に供給され顕像化し、得られた現像物あるいは印刷物は汚染あるいは印刷斑のないもしくは殆どない非常に美しいものとなるため格段に優れている。
【0103】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなるブラシローラーあるいは前記短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなるブラシローラーは、用いている本発明の繊維の導電性に由来して、後述する電子写真装置に用いられうる除電装置に好適に組み込まれて用いられる。該除電装置に組み込まれる、本発明の導電性繊維からなるブラシローラーの導電性繊維の平均抵抗率は1.0×10[Ω/cm]以上1.0×10[Ω/cm]以下の範囲のものが好適に用いられる。特に後述する電子写真装置に用いる際には、ブラシローラーの導電性繊維が安定かつ斑のない除電効果を発現し、通常、除電装置のあとに配設される前記清掃装置での清掃効果をより高めることが可能であるほか、該電子写真装置を小型化する場合には該ブラシローラーを用いることで除電装置兼清掃装置として組み込むことができ格段に優れている。
【0104】
本発明の前記清掃装置、帯電装置、現像装置、および除電装置から選ばれる少なくとも1種の装置を用いてなる電子写真装置、具体的にはレーザービームモノクロプリンター、レーザービームカラープリンター、モノクロ複写機、カラー複写機、モノクロまたはカラーファクシミリあるいは多機能型複合機、ワードプロセッサーなどを挙げることができるが、帯電した感光体にレーザーで潜像を描きトナーを用いて顕像化するメカニズムにより現像あるいは印刷を行う装置は、前述の通り本発明の導電性繊維を用いていることから、電子写真装置内の環境変化、特に温度や湿度変化によらず安定した清掃・帯電・現像・除電性能を有し、得られた印刷あるいは現像物はモノクロの場合はもとより、複数種のトナーをかつ多量に用いるカラーの場合は特に非常に美しいものとなるし、さらには電子写真装置の駆動速度をより高める、すなわち単位時間あたりの印刷あるいは現像速度(枚数)を高めることが可能となる。また本発明の導電性繊維を用いてなる本発明の電子写真装置は、前述のとおり、さらなる小型化、省スペース化、省電力化を図ることができ、非常に好ましい。
【0105】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる織物は、前述のとおり、非常に優れた導電性を有する繊維を用いることから、織物全体に該繊維を用いる場合はもとより、織物の一部に該繊維を用いた場合であっても優れた導電性能あるいは電気を逃がすことのできる性能(換言すれば静電性能)を有する織物となるため、各種資材用途、例えば幕やカーテン、人体の静電気が発生しやすい自動車、鉄道、航空機など乗り物のシート、壁材や敷物、布団、毛布、敷布などの寝具などに用いることができ優れている。
【0106】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる編物は、前述の織物と同様に導電性能あるいは静電性能を有する編物となるため各種資材用途、例えば建物の壁材や絨毯などの敷物、自動車、鉄道航空機などの乗り物のシート、壁材、敷物乗り物用シートあるいはその敷物、布団、毛布、敷布などの寝具などに用いることができ優れている。
【0107】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、前述の織物や編物と同様に導電性あるいは静電性能を有する不織布となるため、前述の織物や編物の用途と同様の資材として用いることができるほかに、厚みが必要な、例えば隔壁材や梱包物、クッションなど静電気の発生を嫌う装置、部屋の周辺部材用資材として広く用いることができ優れている。
【0108】
そして本発明の導電性繊維からなる短繊維や、織物、特にパイル織物や編物あるいは不織布のさらに別の用途としては、これらを用い、基盤に植設することで、植毛体あるいは布帛複合体となす事ができる。これら植毛体あるいは布帛複合体は、導電性あるいは制電性に優れることから手触りの優れるものとして様々な内装材となりうる。
【0109】
そして本発明の導電性繊維あるいは該導電性繊維からなる短繊維は導電性に優れることから、各種動作をする例えば微弱な電気で反応しうる人工筋肉のようなアクチュエーターの回路の一部として利用が可能である。高い導電性を有することの他にも本発明の導電性繊維は繊維長手方向の導電性斑が非常に小さいことから、これら回路の一部として用いた場合に非常に性能の優れたものとなる。
【0110】
本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる衣料は、導電性に優れた繊維を用いることから、着衣時の静電気発生を抑制し、体外に逃がすことができるため、特に静電気の発生を嫌う半導体産業の作業着やあるいは静電気が発生しがたいことから埃を寄せ付けないため防塵衣として用いた場合に有用であるほか、カーボンナノチューブが熱伝導性に優れるため、体外に熱を放散することができる接触冷感衣類や、あるいは逆に冷えた身体にすぐに体外からの熱を取り込みうる接触温感衣類などとして、例えばこれらの機能を必要とされるスポーツ衣料(ゴルフウェア、ゲートボール、野球、テニス、サッカー卓球、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、ホッケー、陸上競技、トライアスロン、スピードスケート、アイスホッケーなどのユニフォーム)や幼児、婦人、年輩者の衣料、その他にもアウトドア衣料(靴、カバン、サポーター、靴下、登山着)などに好適に用いることができる。
【0111】
本発明の導電性繊維からなる発熱体は、導電性に優れかつ導電性斑の非常に小さな導電性繊維を用いていることから、所望の導電性能に制御したものを用いるだけで、発熱効率の良い発熱体が得られ、優れている。また該発熱体を使用するであろう主に冬季においては低温低湿度であるが、本発明の繊維は、温湿度依存性がないもしくは非常に小さいことから、冬季においても安定した導電性能を発揮し、非常に優れた発熱体となる。
【0112】
本発明の前記織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用いて接着してなるブラシローラーは、導電性を有する繊維を少なくとも一部に用いることから電気的作用を利用することで効率的に不要物を除去あるいは必要とされる物質を付与する機能を有するため優れている。
【0113】
本発明の前記短繊維を用いてなるブラシローラーは、導電性を有する繊維を少なくとも一部に用いることから、前述と同様に電気的作用を利用することで効率的に不要物を除去あるいは必要とされる物質を付与する機能を有するほかに、短繊維の繊維長を制御することでブラシローラーの繊維植設密度あるいはブラシローラーの前記除去性能あるいは付与性能を目的に応じて容易に制御できるため優れている。特に植設される棒状物体が主として金属からなる場合は、本発明の導電性繊維の導電性を制御することでブラシローラー自体の導電性(比抵抗値)を制御可能であるし、さらには棒状物体が金属および金属の少なくとも一部を覆う中間層とからなる場合には中間層の材質や厚さなどを制御することでクッション性を付与しうるため、ブラシローラー自体の前記除去性能あるいは付与性能を格段に向上せしめることができ優れている。
【0114】
本発明の前記ブラシローラーを用いてなる清掃装置は、ブラシローラー自体が回転することで不要物を除去し清掃する場合には非常に除去性能に優れる。例えば後述の電子写真装置などではトナーなどを電気的に除去しうる際に電子写真装置内の環境変化、特に湿度変化などがあった場合にもブラシローラーの導電性能が変動することがないため、常に安定した除去性能を有しており優れている。また本発明の前記ブラシローラーは該清掃装置に於いて、対象となる物質、例えば後述の電子写真装置に於いては感光体に直接接触して清掃を行うほかにも、清掃活動を行う部材自身から不要物を除去して清掃装置自体を清掃するための部材としても有用であり、結果的に高性能な清掃装置となる。
【0115】
本発明の前記ブラシローラーを用いてなる帯電装置は、ブラシローラー自体の導電性(比抵抗値)を制御することで用いられるもので、例えば後述の電子写真装置などで感光体を一様に帯電させるブラシローラーとして用いられる際に感光体を均一に帯電できることはもとより電子写真装置内の環境変化例えば電子写真装置の稼働中あるいは季節変化による湿度変化に対してもブラシローラー自体の比抵抗値は変化しないもしくは非常に変化が小さいため、感光体の帯電斑が発現しにくいため非常に優れている。加えて該電子写真装置の前記感光体に清掃が不十分なために残存したトナーがあった場合にも該ブラシローラーは清掃ローラーとしての機能を兼ねることができるため、現像あるいは印刷時の汚染がないもしくは殆どなく優れているほか、電子写真装置を小型化する場合には前記清掃装置および該帯電装置を個別に設置せずに、兼用すなわち清掃装置兼帯電装置として該ブラシローラーのみで適用しうるため非常に優れている。
【0116】
本発明の前記ブラシローラーを用いてなる現像装置は、前述の帯電装置での効果と同様にブラシローラー自体の導電性を駆使して用いられるもので、例えば後述の電子写真装置等で感光体に描かれた静電潜像にトナーを付着させる際に、前述のような湿度変化などの環境変化の際のブラシローラー自体の比抵抗値斑がないもしくは殆どないことから、トナーが均一に感光体に供給され顕像化し、得られた現像物あるいは印刷物は汚染のないもしくは殆どない非常に美しいものとなり優れている。
【0117】
本発明の前記ブラシローラーを用いてなる除電装置は、繊維中に含有されるカーボンナノチューブの含有量を制御してブラシローラーの導電性(比抵抗値)を小さくすることで、非常に優れた除電性能を有するブラシローラーとなるため有用である。特に後述の電子写真装置に用いる際には、無数の毛(繊維)からなるブラシローラーが安定かつ均一な除電効果を有していることから除電装置のあとに配設される前記清掃装置での清掃効果をより高めることが可能であるほか、該電子写真装置を小型化する場合には該ブラシローラーを用いることで除電装置兼清掃装置として組み込むことができ非常に優れている。
【0118】
本発明の前記清掃装置、帯電装置、現像装置、および除電装置から選ばれる少なくとも1種の装置を用いてなる電子写真装置、具体的にはレーザービームプリンター、複写機、ファクシミリ、多機能型複合機、あるいはワードプロセッサーなど帯電した感光体にレーザーで潜像を描きトナーを用いて顕像化するメカニズムにより現像あるいは印刷を行う装置は、前述の通り電子写真装置内の環境変化によらず安定した清掃・帯電・現像・除電性能を有していることから、得られた印刷あるいは現像物は非常に美しいものとなる。また前記ブラシローラーの繊維長あるいは含有するカーボンナノチューブの含有量などを最適化することで、より安定した清掃・耐電・現像・除電性能を有するため、電子写真装置の駆動速度をより高める、すなわち単位時間あたりの印刷あるいは現像速度(枚数)を高めることが可能となり非常に好ましい。
【実施例】
【0119】
以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。なお実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
【0120】
A.繊度[dtex]および単糸繊度[dtex]の測定
繊維(マルチフィラメント)を長さ100m分カセ取りし、そのカセ取りした繊維の重量(g)を測定して得た値に100を掛ける。同様に測定して得た3回の平均値をその繊維の繊度とした。単糸繊度については、前述の繊度をフィラメントを構成する単繊維の本数で割った値を単糸繊度[dtex]とした。
【0121】
B.繊維の初期引張弾性率、残留伸度、破断強度の測定
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSIRON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、延伸糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分でそれぞれ強度および残留伸度を測定し、5回測定した平均値をそれぞれの測定値とした。
【0122】
C.平均抵抗率[Ω/cm]および抵抗率の標準偏差の大きさの算出
中温中湿度(温度23℃湿度55%)で測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。送糸ローラーと巻取ローラーからなる1対の鏡面ローラーで糸を走行させる際に、ローラー間に、東亜DKK製絶縁抵抗計SM8220に接続された2本の棒端子からなるプローブに走行糸が接するように設置した装置で、棒の太さφ5mm、棒端子間で接する糸の距離2.0cm、印可電圧100V、送糸速度100cm/分、ローラー間の糸張力0.5g/dtex、絶縁抵抗系でのサンプリングレート0.2秒で200cmの長さ分、抵抗値を測定して、得られた値の平均抵抗値[Ω]を棒端子間で接する糸の距離(2cm)で割った値を平均抵抗率[Ω/cm]とした。また同時に算出される標準偏差そのものの値を平均抵抗率で割った値を、本発明における標準偏差の大きさとした。
【0123】
D.中温中湿度と低温低湿度(温度10℃湿度15%)との平均抵抗率の比
中温中湿度についてはC.項の測定方法を採用し、また低温低湿度においてもC.項と同様に測定して平均抵抗率を求め、それぞれ得た平均抵抗率X,Yの比(Y/X)を求めた。
【0124】
E.比抵抗値の測定方法
測定は前記中温中湿度で測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。測定物が長さ100mm以上の繊維状のものである場合には、繊維束を1000dtexの束にして50mmの長さに切断し、端面に電極を取り付けて測定した。また測定物が長さ100mm未満の繊維状物あるいは粉体状のものである場合は、長さ10cm、幅2cm、深さ1cmの、両端面に電極を有する絶縁体の箱形容器に、50kg/cmの圧力で充填して密封したのち測定して、単位体積当たりの比抵抗値[Ω・cm]に換算して求めた。ガット状のものについては、1回の測定において、直径D(0.2〜0.3cmの範囲の直径のもの)で長さ12cmのガットについて、テスターを用いてテスターの2本の端子を任意の10cmの間隔でガットに押しつけ、その抵抗値R[Ω]を測定し、(比抵抗値)=R×(D/2)×π/10の式から該ガットの比抵抗値を求めた。そして5本の異なるガットについて各々1回ずつ比抵抗値を測定し、5回の平均値をそのガットの比抵抗値とした。
【0125】
F.溶融粘度の測定
(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下、バレル径9.55mm、ノズル長10mm,ノズル内径1mmで、剪断速度10sec−1で測定した。測定温度は各々のポリマの溶融紡糸温度(特に断り書きのない限り、PETであれば290℃、PTTであれば260℃)で測定した。そして5回測定した値の平均値を溶融粘度の測定値とした。なお測定時間については、試料の劣化を防ぐため5回の測定を30分以内で完了した。高剪断速度については前述の剪断速度を1000sec−1として測定した。
【0126】
G.160℃大気中で15分間の収縮率(乾熱収縮率)の算出
延伸糸1mの輪を5本枷取りした束にクリップを1つ留め、束の長さL1を測る(この時、約500mmの長さ)。次に160℃の大気中にゆっくりと下ろして15分間静置し、15分後に取り出して1時間以上風乾する。風乾したのち再度束の長さL2を測定する。収縮率(%)を下式で算出する。
【0127】
収縮率(%)=(L1−L2)÷L1×100
H.ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)の測定
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用いて試料10mgで、昇温速度16℃/分で測定した。Tm、Tgの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、約(Tm+20)℃の温度で5分間保持した後、室温まで急冷し、(急冷時間および室温保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をTgとし、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
【0128】
I.短繊維の繊維長の測定
長さ20mm以上の短繊維は0.1g/dtexの荷重をかけてノギスを用いて、また20mm未満の短繊維はNIPPON KOGAKU K.K製SHADOW GRAPH Model6を用いて20倍で、短繊維50本の長さを測定し、その平均値を繊維長とした。
【0129】
J.カーボンナノチューブの直径D、及び該Dと長さLの比(アスペクト比)L/Dの測定
CNTをそのまま繊維エポキシ樹脂中に包埋したブロック(以下CNTブロック)、あるいは繊維中に存在するCNTであればその繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロック(以下繊維ブロック)を、酸化ルテニウム溶液を用いて染色を施し、ウルトラミクロトームにて、CNTブロックであれば任意の場所をそのまま切削してCNTの超薄切片を、繊維ブロックであれば繊維軸方向と平行方向に繊維中心付近を切削して単繊維縦断面の超薄切片を、各々作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察装置(日立製作所製 H−7100FA型)にて、加速電圧75kVで、倍率10万〜50万倍の任意の倍率で観察を行った。観察においてデジタル化した写真として得て、該写真上で任意のCNTを100本選び、CNTの直径D及び長さLを三谷商事株式会社製WinROOFにおいて画像解析することによって測定し、各々のCNTのD,およびL/Dを算出して100本の平均値を求め、その平均値で、CNTの平均直径D、およびアスペクト比L/Dとした。
【0130】
参考例1(ポリエチレンテレフタレートの合成及びペレット作製)
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部からの通常のエステル化反応によって得た低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06重量部、調色剤として酢酸コバルト4水塩を0.06重量部添加して重縮合反応を行い、通常用いられるIV0.66、溶融粘度131[Pa・秒](測定温度290℃、10sec−1)のポリエチレンテレフタレート(以下PET)のペレットを得た。
【0131】
参考例2(ポリトリメチレンテレフタレートの合成及びペレット作製)
テレフタル酸ジメチル130部(6.7モル部)、1,3−プロパンジオール114部(15モル部)、酢酸カルシウム1水和塩0.24部(0.014モル部)、酢酸リチウム2水和塩0.1部(0.01モル部)を仕込んでメタノールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得た低重合体に、トリメチルホスフェート0.065部とチタンテトラブトキシド0.134部を添加して、1,3−プロパンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、さらに220℃、窒素気流下で固相重合を行い、IV1.15、溶融粘度393[Pa・秒](測定温度260℃、10sec−1)のポリトリメチレンテレフタレート(以下PTT)ペレットを得た。
【0132】
実施例1(カーボンナノチューブ(CNT)を添加した導電層成分の調製、導電性繊維の製造)
参考例1で得たPETペレットをいったん1mm程度の粉状体として、150℃10時間真空乾燥した後、平均直径20nmでL/D=131の気相成長法にて合成したカーボンナノチューブを混練終了後に得られるPETとCNTとの樹脂組成物においてCNTが2重量%となるように乾式ブレンドして、2軸エクストルーダ(スクリュー直径37mm、スクリューL/D=45、スクリュー回転数300rpm、クリアランス0.5mm)を用いて、280℃で溶融混練してPETとCNTの樹脂組成物(PET−CNT)を得た。
このPET−CNTを用いて2軸エクストルーダ(スクリュー直径20mm、スクリューL/D=50、スクリュー回転数150rpm、クリアランス0.5mm)を備えたエクストルーダ型溶融紡糸機で、紡糸温度290℃で孔径が0.3mm、孔数が24個の丸形の孔形状の口金および濾層の目の細かさが20μのフィルタを設置して溶融紡糸を行い、実効成分として1重量%の付着量となるよう水系処理剤(実効成分20重量%濃度)を付着せしめた後、1000m/分の引取速度で全く問題なく総繊度350dtex、フィラメント数24本の未延伸糸を得た。紡糸性に全く問題はなく5時間の連続紡糸においても全く断糸は見られなかった。
そして得られたマルチフィラメントについて延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度100m/分、第1ローラーは85℃で送糸速度100m/分、第2ローラーは140℃で送糸速度250m/分、第3ローラーは室温で送糸速度245m/分として繊維に延伸および熱処理を施した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下に冷却した後に巻き取った。延伸中にローラーへの単糸巻き付き等の問題は全く発生せず延伸性は優れていた。糸物性について表1に示す。
【0133】
比較例1(カーボンブラックを用いた導電性繊維の製造)
実施例1において、CNTの代わりに、平均直径が25nmの導電性ファーネスカーボンブラック(以下FCB)を混練終了後に得られるPETとFCBとの樹脂組成物においてFCBが15重量%となるように乾式ブレンドして調製した以外は実施例1と同様の方法によりPETとFCBの樹脂組成物(PET−FCB)を得た。
このPET−FCBを用いて実施例1と同様の方法により溶融紡糸を行ったところ、断糸が頻発して連続して5分以上の溶融紡糸は困難であった。そして何とか得られた未延伸糸を用いて、実施例1と同様の延伸方法により延伸を行ったところ、やはりローラー上への単糸巻き付きが頻発した。そして何とか得られた延伸糸について導電性を測定したところ、繊維の長手方向の導電性(標準偏差)は1.15と非常に大きな斑を有していた。
【0134】
実施例2〜5および比較例2,3
実施例1において、導電層のカーボンナノチューブの含有量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の製糸条件にて、紡糸工程においては同一吐出量(単位時間あたりに同一の容積量[cc/分])となるようにして、その他の製糸条件は実施例1と同様にして導電性繊維を得た。カーボンナノチューブの含有量が0.1重量%の場合(比較例2)は必要とする導電性(抵抗率)が高くなり、また導電性斑(標準偏差)が大きくなった。また該含有量は増大するにつれ、得られる繊維の物性は、導電性は向上するものの、その他の物性は低下する傾向にあり、過度の高濃度(7重量%、比較例3)では溶融紡糸で引き取りができなくなった。糸物性について表1に示す。
【0135】
実施例6
参考例2で得たPTTペレットをいったん1mm程度の粉状体として、150℃10時間真空乾燥した後、実施例1と同じCNTを混練終了後に得られるPTTとCNTとの樹脂組成物においてCNTが2重量%となるように乾式ブレンドして、実施例1と同じ2軸エクストルーダを用いて、255℃で溶融混練してPTTとCNTの樹脂組成物(PTT−CNT)を得た。
このPTT−CNTを用いて実施例1と同じエクストルーダ型溶融紡糸機で、紡糸温度260℃で実施例1と同様の口金、フィルタ、処理剤を用いた溶融紡糸を行い、1000m/分の引取速度で全く問題なく総繊度295dtex、フィラメント数24本の未延伸糸を得た。紡糸性に全く問題はなく5時間の連続紡糸においても全く断糸は見られなかった。
そして得られたマルチフィラメントについて延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度100m/分、第1ローラーは70℃で送糸速度100m/分、第2ローラーは120℃で送糸速度250m/分、第3ローラーは室温で送糸速度245m/分として繊維に延伸および熱処理を施した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下に冷却した後に巻き取った。延伸中にローラーへの単糸巻き付き等の問題は全く発生せず延伸性は優れていた。糸物性について表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
実施例7〜9
2軸エクストルーダ(スクリュー直径20mm、スクリューL/D=50、スクリュー回転数150rpm、クリアランス0.5mm)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機で、鞘成分が導電層、芯成分が通常のPTTとなる芯鞘型の複合繊維を得る複合紡糸を、紡糸温度260℃で溶融紡糸を行った以外は、参考例2,実施例6と同様の方法でPTTの重合、導電層を形成するポリエステル組成物の溶融混練、および製糸を行い、表2に示す導電性繊維を得た。糸物性の結果を表2に示す。実施例6と同様に、導電性および糸物性の優れた導電性繊維が得られた。
【0138】
比較例4
実施例7と同様の複合紡糸を行う際に、比較例4では実施例8での導電層を芯成分に、導電層以外の層を鞘成分にして、導電層と導電層以外の成分の比率は変更せずに製糸を行い延伸糸を得た。製糸性は良好であったものの導電層が繊維表層に無いことから導電性の劣るものとなった。
【0139】
実施例10
実施例7と同様の複合紡糸を行う際に、図1に示す導電層を繊維表層に4箇所持つように配設する複合紡糸を行った以外は実施例7と同様の溶融紡糸を行い、表2に記載の物性を有する導電性繊維を得た。得られた繊維の導電性斑(標準偏差)は実施例7と比較して若干大きくなるものの良好な導電性繊維を得た。
【0140】
実施例11
実施例7と同様の複合紡糸を行う際に、芯成分に参考例1で得たPETを配設し、紡糸温度275℃で溶融紡糸を行った以外は実施例7と同様の製糸を行い表2に記載の物性を有する導電性繊維を得た。得られた繊維は良好な導電性を有していた。
【0141】
【表2】

【0142】
実施例12
実施例1,6,7において得られた繊維を用いて、それぞれ0.5,1.0,2.0,4.0mmの長さの短繊維に切断したのち、日産化学工業株式会社製コロイダルシリカ「スノーテックスOS(登録商標)」で処理したのち、東レ株式会社製ポリエステルフィルム「ルミラー(登録商標)QT33(厚さ100μm)」に大日本インキ化学工業株式会社製アクリル酸エステル系接着剤DICNAL K−1500(K−1500の100重量%に対し、増粘剤としてDICNAL VS−20を2重量%使用;以下「接着剤A」と称することがある)を約100μmの厚さでフィルムの片面に塗布し、接着剤を塗布したフィルムの片面に電気植毛加工を施し、植毛体(A1〜A12;表3)を作成した。
【0143】
【表3】

【0144】
植毛性(植毛の成功の度合い)については、ほぼ直立している(2重丸)、寝ている繊維が少し見られる(○)、半数程度繊維が寝ている(△)、直立しているものが少ない(×)と視覚的に判断して評価したところ、いずれも2重丸と優れていた。
また実施例1,6,7において得られた繊維それぞれを用いてパイル織物、シングルトリコット編物を各々作成した後起毛処理したものをそれぞれ作成し、前記同様接着剤Aを用いて前述のポリエステルフィルムに接着して、それぞれ布帛複合体B1〜B3およびC1〜C3を作製した。前述同様B1〜B3およびC1〜C3ともに全て起毛性は良好であった(表4参照)。
【0145】
【表4】

【0146】
実施例13
実施例5,9で作製した導電性繊維を経糸および緯糸に用いて織り密度150本/インチで織物を作製し、長さ20cm、幅5cmとなるように両端に電極を設けた長さ20cmの布帛物体の両電極に100Vの電圧をかけたところ5℃/分の昇温速度で温度が上昇する発熱体を得た。
【0147】
実施例14
実施例12において得られた実施例1,6,7由来の短繊維12種(繊維長が各々0.5,1.0,2.0,4.0mm)を用いて、実施例12の接着剤Aを用いて、棒状物体M(金属棒のみ)および棒状物体N(金属棒に、導電性カーボンブラックを5%添加したウレタン製中間層(厚さ1.5mm)で金属棒端部2cmを残して覆った物)にそれぞれ電気植毛加工を施して(棒状物体Nには中間層部分のみに施して)、未接着短繊維を棒状物体から掃きとった後、ブラシローラーを得た(棒状物体MでブラシローラーM1〜M12(表5参照)、同様に棒状物体NについてもN1〜N12とする(表6参照))。また実施例12のパイル織物を棒状物体Mに接着、植設してブラシローラーMM1〜MM3を得た(表7参照)。ブラシローラーM2,ブラシローラーN2の通常条件での比抵抗値は、それぞれ109.3Ω・cm、108.6Ω・cmであった。そしてブラシローラーN2の湿度変化における比抵抗値変化を測定したところ、108.5Ω・cm(通常条件)−108.7Ω・cm(低温低湿度)であった。すなわち本発明の導電性繊維を用いたブラシローラーは導電性の斑が湿度変化においても小さく優れていた。ブラシローラーMM2についても同様に比抵抗値変化を測定したところ、107.5Ω・cm(通常条件)−107.7Ω・cm(低温低湿度)と、ブラシローラーM2と同様に導電性斑が湿度変化においても小さく優れていた。
【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
【表7】

【0151】
実施例15
実施例14において得られたブラシローラーM1〜M12,N1〜N12,MM1〜MM3を清掃装置にそれぞれ組み込んで配設したモノクロレーザープリンターを長時間連続印刷(1分間あたり10枚印刷・排出)を行い、プリンター中の湿度変化と共に印刷性を確認したところ、印刷開始1000枚程度でプリンター中の湿度は初期の65%から31%まで低下し、更に10000枚程度印刷した時点では25%まで低下したものの、印刷枚数が20000枚を越えた時点であっても印刷の鮮明性、トナー清掃性などは優れていた。
【0152】
実施例16
実施例1,5,6,7,9において得られたそれぞれの導電性繊維を用いて、1つは、経糸に通常のPTT繊維を配置し、緯糸のみに該導電性繊維を用いて平織りした物からYシャツを作成した(衣料P1〜P5を得た)。もう1つは経糸および緯糸全てに実施例1,5,6,7,9において得られた繊維を用いてYシャツを作成した(衣料Q1〜Q5)。無作為に選んだ男性10名のモニター着衣テストを行ったところ衣料P1〜P5,Q1〜Q5全てについて全員が「着衣すると冷たく感じる(接触冷感がある)」と回答した(表8参照)。
【0153】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】実施例10で用いた複合繊維の断面形状図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表層の少なくとも一部分に導電層を有する平均抵抗率が1.0×10〜1.0×1012[Ω/cm]、抵抗率の標準偏差の大きさが0.2以下の導電性繊維であって、該導電層が少なくともポリエステル成分とカーボンナノチューブとからなることを特徴とする導電性繊維。
【請求項2】
ポリエステルがトリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し構造単位とするポリマであることを特徴とする請求項1記載の導電性繊維。
【請求項3】
導電性繊維の、温度23℃湿度55%での平均抵抗率X[Ω/cm]と、温度10℃湿度15%での平均抵抗率Y[Ω/cm]との比Y/Xが,1≦Y/X≦5の範囲にあることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の導電性繊維。
【請求項4】
繊維表層が全て導電層で覆われた複合繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性繊維。
【請求項5】
繊維が導電層のみからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の導電性繊維。
【請求項6】
導電層におけるカーボンナノチューブの含有量が0.3重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の導電性繊維。
【請求項7】
繊維長が0.05〜150mmの導電性短繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の導電性繊維。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする織物。
【請求項9】
パイル織りであることを特徴とする請求項8記載の織物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする編物。
【請求項11】
裏毛編からなる編物および/または起毛処理によりパイル状繊維が編物表面にある編物であることを特徴とする請求項10記載の編物。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする不織布。
【請求項13】
請求項7記載の導電性短繊維を少なくとも一部に用い、基盤に接着して植設されてなることを特徴とする植毛体。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1項記載の織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、基盤に接着してなることを特徴とする布帛複合体。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなる衣料。
【請求項17】
請求項8〜12のいずれか1項記載の織物、編物、および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着してなることを特徴とするブラシローラー。
【請求項18】
請求項7記載の導電性短繊維を少なくとも一部に用い、棒状物体に接着して植設されてなることを特徴とするブラシローラー。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする清掃装置。
【請求項20】
請求項17または18のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする帯電装置。
【請求項21】
請求項17または18のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする現像装置。
【請求項22】
請求項17または18のいずれか1項記載のブラシローラーを用いてなることを特徴とする除電装置。
【請求項23】
請求項19記載の清掃装置、請求項20記載の帯電装置、請求項21記載の現像装置、および請求項22記載の除電装置から選ばれる少なくとも1種の装置を用いてなることを特徴とする電子写真装置。
【請求項24】
請求項1〜7のいずれか1項記載の導電性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする発熱体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−92234(P2007−92234A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283962(P2005−283962)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】