説明

導電性繊維素材及び繊維素材の表面処理方法

【課題】帯電防止、電磁波シールド、電気メッキ等に好適な繊維素材を提供する。
【解決手段】繊維素材に導電性皮膜を形成する方法であって、繊維素材を加水分解型タンニン酸を溶解した第1処理液に浸漬して繊維素材の表面にタンニン被覆層を形成した後、導電性高分子モノマーと酸化剤とを溶解した第2処理液に浸漬して導電性高分子モノマー重合被覆層を形成する。こうして製造される導電性繊維素材(導電性布帛、導電性糸、導電性フロック)は、表面に形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基に対して結合されつつ重合された導電性高分子モノマー重合被覆層を備え、高い導電性と、導電性に関する高い耐久性を示すものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロック、糸、布帛(織物、不織布等)などの繊維素材の表面に導電性皮膜を形成するための表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維やフィルム等の表面にピロールを重合させて皮膜を形成し、導電性を得る方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1(特許第2986857号)は、ボビンに巻きつけた繊維基材を、ピロール(導電性高分子形成モノマー)と塩化第二鉄(酸化剤)とを含む処理液中に浸漬し、処理液中のモノマーが消失するか酸化剤の能力が消失するまで、処理液を循環させる方法を提案している。
【0004】
特許文献2(特許第3284705号)は、短繊維を含む処理液中において、化学酸化重合剤(塩化第二鉄)を触媒として所望により添加されたドーパント,表面張力低下剤とともにピロールの重合反応を進行させる方法を提案している。
【0005】
特許文献3(特許第3682233号)は、樹脂フイルムの表面に、ピロールと樹脂バインダーとを含む塗料を塗布および乾燥して塗膜を形成し、さらに、この塗膜を有する樹脂フイルムを酸化性液体中に浸漬して酸化剤を作用させて塗膜中にポリピロールを生成させる導電性樹脂フイルム製造方法を提案している。
【0006】
また、特許文献2(特許第3284705号)の従来技術に記載される様に、タンニン化合物の保水性を利用して表面の通電性を保つ方法も知られている(特許文献4〜7)。
【0007】
特許文献4(特許第3171654号)の実施例には、ポリエステル繊維の短繊維(パイル)を植毛に使用するために、パイル重量に対し0.5%のタンニン酸(フロクタンII:オムニケム社製)と90%酢酸を、処理液1リットル当り1ミリリットルの割合で加えて作成した処理液を60〜70℃に保ち、この処理液中でパイルを約30分間浸漬処理することで、60メッシュの篩分選別機にかけたところ、通過率は95%であったことが報告されている。
【0008】
特許文献5(特開平11−229274)には、植毛密度が高く長期使用に耐える良質の導電性植毛製品を提供するために、ナイロン短繊維を染色した後、タンニン酸による電着処理(オムニケム社処方)を施して表面抵抗を1.0×10ないし1.0×10Ω/cmに調整し、植毛用短繊維に加工し、アルミニウム管の表面に接着剤をスプレイコートし、静電植毛した植毛ロールを、ピロールと塩化鉄(III)を溶解して調合した導電処理液に浸漬し、回転させながら導電処理し、乾燥して帯電防止植毛ロールを製作する方法が記載されている。
【0009】
特許文献6(特開2000−265367)は、第1段階:「硫酸塩の弱酸性水溶液処理」によって合成繊維表面を親水性雰囲気とし、第2段階:「タンニン処理」によって微細合成繊維の飛翔性を整え、第3段階:「硫酸塩処理」によってタンニン処理を安定化し、第4段階:「アニオン界面活性剤と硫酸アンモニウム塩の混合水溶液処理」により、微細合成繊維の飛翔を効果的に行うための条件を整えて得たフロックを用いて温かみのあるピーチ肌感触の布帛を得る方法が記載されている。
【0010】
特許文献7(特許第4027810号)は、従来技術として特許文献5,6に記載されているタンニンによる電着処理方法を示しつつ、これら従来技術で所望の植毛適性が得られる程度の条件でタンニン処理を施したフロックを静電植毛に供すると、フロックが直立しすぎることから、「タンニンに接触させた繊維を、ジルコニウム塩に接触させる方法」を提案し、用い得るタンニンとして「ピロガロールタンニン等の加水分解型タンニン、カテコールタンニン等の縮合型タンニンの他、それらの誘導体等、広義のタンニン(または広義のタンニン酸)として知られているもの」を挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2986857号
【特許文献2】特許第3284705号
【特許文献3】特許第3682233号
【特許文献4】特許第3171654号
【特許文献5】特開平11−229274
【特許文献6】特開2000−265367
【特許文献7】特許第4027810号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、ピロールモノマーの重合被覆層を形成する方法によって製造した導電性繊維素材には、ピロールと繊維等との親和性が不十分な場合があり、使用中に脱落して導電性が低下するという問題がある。
【0013】
また、タンニンで被覆を施す方法は、表面抵抗を1.0×10〜1.0×10Ω/cm程度に調整してフロックの植毛を好適に行うには足りるものの使用中の導電性布帛等として使用するには不十分という問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、フロック、糸、布帛(織物、不織布等)などの繊維素材の表面に導電性モノマーの重合皮膜を形成してなる製品のさらなる導電性の向上と堅牢性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明の繊維素材の表面処理方法は、繊維素材に導電性皮膜を形成する方法であって、前記繊維素材を加水分解型タンニン酸を溶解した第1処理液に浸漬して繊維素材の表面にタンニン被覆層を形成した後、導電性高分子モノマーと酸化剤とを溶解した第2処理液に浸漬して導電性高分子モノマー重合被覆層を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、最初に第1処理液により、繊維素材にタンニン酸を付与するので、繊維素材には多くのフェノール性水酸基を有するタンニン被覆層が形成される。
【0017】
第2処理液による工程では、導電性高分子モノマーの酸化重合によって、エピタキシャル生長が行われる。この際、繊維素材の表面には多くのフェノール性水酸基を備えるタンニン被覆層が形成されているので、導電性高分子モノマーと繊維素材との結合が強くなるものと推定される。ここで、導電性高分子モノマーとしては、アニリン、チオフェン、ピロール或いは、これら誘導体を用いることができる。
【0018】
この結果、本発明により製造される導電性繊維素材(導電性布帛、導電性糸、導電性フロック)は、表面に形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基に対して結合されつつ重合された導電性高分子モノマー重合被覆層を備え、高い導電性と、導電性に関する高い耐久性を示すものとなったと推定される。
【0019】
ここで、特許文献5は、タンニン処理したフロックをアルミ管の表面に植毛した後にロール全体をピロール処理して表面抵抗を0.1×10 Ω/cmとしているが、フロックの段階はタンニン処理されただけであるから、本発明の導電性フロックとは異なる。また、帯電防止ロールは素材がアルミ管であり、植毛部以外はピロール重合被覆層のみを有するだけであるから、本発明の新規な導電性布帛、導電性糸にも該当しない。加えて、表面抵抗の値も、アルミ管を主体とした製品における値であるから、加水分解型タンニン酸による処理に引き続いて導電性高分子モノマーによる処理を施した繊維素材がどの様な性質のものになるかを示唆するものともなっていない。
【0020】
これに対し、本発明者は、後述実験例に示す通り加水分解型タンニン酸を溶解した第1処理液を用いた処理を行うことにより、かかる処理を行わないで導電性高分子モノマーによる処理を行った場合に比べて大幅に導電性が高まり、かつ、耐久性も高まることを実証して初めて、本発明を完成したものである。
【0021】
また、特許文献7が、タンニン処理には、加水分解型、縮合型等の種々のものを用いればよいとの認識であるのに対し、後述実験例に示す通り、縮合型タンニンでは本発明の効果が得られないことは、本発明が、従来のタンニン処理の延長上にそのまま乗った技術ではないことを示すものであり、かつ、本発明は、課題解決手段としてタンニン処理において加水分解型タンニン酸を用い、その後に導電性高分子モノマーによる処理を施すことにこそ技術的意義があるのだということを実証して初めて確立されたものである。
【0022】
この様に、本発明は、従来のタンニン処理と導電性高分子モノマーによる処理を単に組み合わせたものではなく、従来の常識だけでは完成することのできない有意義なる発明であって、後述の実験例に示す実験を繰り返して初めてなされたものなのである。
【0023】
ここで、本発明においては、前記繊維素材がタンニン酸に対して親和性を有する素材であることを特徴とする。
【0024】
本発明では、タンニン処理によって形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基が導電性高分子モノマーのエピタキシャル生長において結合力を高める等の作用を果たしているものと推定されるからである。なお、繊維素材自体がタンニン酸に対する親和性を有しない場合も、後述実験例の様に、第1処理液をowf3%以上のタンニン濃度とすれば、多少の効果が見られる。
【0025】
即ち、タンニン被覆層との結合及び繊維素材自体との結合という現象が本発明の表面処理において進行する結果、タンニン処理なしに導電性高分子モノマーによる処理をした場合に比べて大幅に導電性が向上し、導電性についての耐久性が向上するものと推定されるのである。
【0026】
なお、本発明の繊維素材の表面処理方法において、耐久性向上の観点からは、前記第1処理液は、タンニン酸をowf3%以上の割合となる様に溶解した溶液であることがより望ましい。
【0027】
なお、owfとは、「on weight of fiber」の略で、布(繊維)に対する洗剤や染料等の濃度をあらわす単位として用いられるものである。本願においても、タンニン酸の繊維素材に対する重量%を示す。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表面処理方法によれば、高い導電性と導電性に関する高い耐久性を示す導電性繊維素材を提供することができる。また、本発明の導電性布帛、導電性糸、導電性フロックは、帯電防止、電磁波シールド等に好適な繊維素材となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を具体的な実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0030】
[実験例1]
東レ ナイロン6 ジャージー((株)色染社 テスト用品番 9060)を10g取り、タンニン酸(オムニケム社 フロクタンI)をowfで1%,3%,5%の割合となる様に溶解した第1処理液に浸漬し、この第1処理液をpH3.2、温度60±3℃に維持して30分間のタンニン被覆層形成処理を実行し、水洗した。その後、ピロール3%(owf),塩化第二鉄12%(owf)の水溶液を水に対して1:30の液量となる様に溶解した第2処理液に浸漬し、18±3℃で180分処理した後、水洗、ソーピング、乾燥を施した。
ソーピングの条件は、液量1:30、ソーダ灰1g/l、センカノールDM(センカ(株))1cc/l、温度90℃〜95℃30分である。
こうして処理したナイロン6ジャージーの導電度を測定した。測定機は、「TOA electronics. SUPER MEGOHMMETER SM8203」で、65%RH24℃の環境下で測定した。
また、試料の明度をコニカミノルタ社のB:color Eye 3000 で測定した。その結果を表1に示す。なお、表1には、第2処理液による処理のみとした場合をタンニン酸処理0%として併記している。
【0031】
【表1】

タンニン酸処理のowfが高くなるにつれて導電性は低くなっている。また、明度が暗い方向になっていることから、ポリピロール濃度が濃くなっていることが分かる。
【0032】
[実験例2]
ナイロン66ジャージー((株)色染社 品番 50000)を10g取り、次の処理を施した。
タンニン酸処理、ピロール処理、ソーピング等は実験例1と同様。また、測定機も同じである。
導電度・明度は次の通りである。
【0033】
【表2】

ナイロン66についてもナイロン6と同じ傾向で、タンニン酸処理のowfが高くなるにつれてポリピロール濃度が濃くなっている。なお、owf3%以上で効果はほぼサチュレートしている。
【0034】
[実験例3]
ローディア社製 ナイロン66のトウを切断し、3.3dTex 0.8mm のカットファイバーを10g取り、実験例1と同じようにタンニン酸処理をpH3.0で行い、次にピロール処理を20±3度で180分行い、同一の測定機で測定した。
導電度・明度は次の通りである。
【0035】
【表3】

カットした短繊維でも、実験例2と同じ傾向が示された。
また、この短繊維についてフロックモーションテスター(Erich Schenk社)で、飛翔性を測ると(4万KV×10cm2g)が飛散するまでの時間は、表4の通りであった。
【0036】
【表4】

【0037】
[実験例4]
東レ・デュポン(株)の ケブラー織物#297 を用いて同様のテストを行った。
#297の織物の使用原糸は、3300dtex、平織り密度17.5×16.5本/インチ、厚さ0.7≠0.1mm、絶乾目付449±9g/m である。
この織物10gを取り、実験例1と同じようにタンニン酸処理とピロール処理を行った。
導電度・明度は次の通りである。
【0038】
【表5】

タンニン酸の処理により、きわめて大きな効果があることが認められた。この場合も、タンニン酸処理のowfが高いほど効果は大きく、owf3%以上でほぼサチュレートしている。
【0039】
[実験例5]
三菱レイヨン(株) アクリルモスリン((株)色染社 品番7573)を10g取り、実験例1と同様のテストを行った。
導電度・明度は次の通りである。
【0040】
【表6】

導電性の絶対値は低いが、他の繊維と同様の傾向が出ている。
ピロール処理のowf濃度を高める等の対応によって導電性は向上できるものと考える。
【0041】
[実験例6]
(株)クラレ ビニロンブロード((株)色染社 品番8375)を10g取り、実験例1と同様のテストを行った。
導電度・明度は次の通りである。
【0042】
【表7】

導電性の絶対値は低いが、他の繊維と同様の傾向が出ている。
この場合も、ピロール処理のowf濃度を高める等の対応によって導電性は向上できるものと考える。
【0043】
[実験例7]
帝人(株)ポリエステルタフタ((株)色染社 品番T3550)を10g取り、実験例1と同様のテストを行った。
タンニン酸の親和性のないポリエステルは、タンニン酸が付着しないので、ピロールの被膜形成もほとんど見られなかった。
【0044】
【表8】

なお、タンニン酸3%では多少の効果が見られた。
【0045】
[実験例8]
タンニンには、大別して縮合型と加水分解型とがあり、その効果は大きな差がある。縮合型の没食子酸は、効果が小さい。
縮合型としてキシダ化学の没食子酸試薬1級を、加水分解型としてオムニケム社製のフロクタンIを加工して実験を行った。
タンニン酸・没食子酸の処理は、実験例1と同様、次にピロール処理を同一条件で行った。ピロールの重合温度が20℃〜25℃180分と高めであった。
【0046】
【表9】

効果は大きく異なり、縮合型はピロールが殆ど付着していない。
【0047】
[実験例9]
導電度の耐摩耗性を評価してみると、次のような結果になった。
東レ ナイロン プロミラン 215デニール 36f の糸を使用。
縦170本/インチ、横60本/インチの織物を20g取り、タンニン酸(オムニケム社 フロクタンI)3%を液量1:30pH3.2温度60±3℃で30分処理し水洗後、実験例1と同じ条件でピロール処理を行い、ポリピロールの皮膜を形成した。このものを常温で乾燥後、耐摩擦テストを行った。すなわち、染色堅牢度測定する 学振型摩擦テストのA−1エッヂ法の45R法で測定した。摩擦布は綿布6号を用い、荷重500gで500回往復運動後の摩擦前後の導電率を測定した。
【0048】
【表10】

タンニン酸の処理によって、導電率の低下は少なくない。すなわち、ピロール被膜と親和性が良い。
この時の導電率の測定は、TOA electronics. SUPER MEGOHMMETER SM8203で、65%RH18℃の環境下で測定した。
【0049】
[比較例1]
<タンニン酸処理のみによる導電度の測定>
試験布として実験例1と同じナイロン6ジャージー((株)色染社 テスト用品番 9060)を10g取り、次のテストを行った。
液量1:30、pH3.12、60±5度、30分処理後、水洗、乾燥後、導電度を測定。測定器は同一。温度32度60%RHである。
【0050】
【表11】

タンニン酸処理だけでは、布帛に対して殆ど導電性は付与されていない。
【0051】
[実験例及び比較例に基づく考察]
各実験例において、「タンニン酸処理」の欄が「0%」となっているものは、タンニン酸処理をしなかったものを示している。
【0052】
実験例1〜6及び実験例9から分かる様に、タンニン酸処理をしなかったものに比べ、タンニン酸処理を行ったものの方が導電性において1オーダー以上の改善が見られることが分かる。特に、ケブラーを繊維素材として採用した実験例4は、3オーダー以上の改善を示し、導電性高分子モノマーによる処理を行う前にタンニン酸処理を行うことによる導電性付与の効果が格段に高くなることを示している。
【0053】
また、実験例7は、タンニン酸に対する親和性のないポリエステルであっても、タンニン酸をowf3%以上となる様に溶解した第1処理液を用いることによって、それなりに効果が発揮されることが分かる。このことは、繊維素材はタンニン酸に対する親和性を有するものが望ましいことと共に、仮にタンニン酸に対する親和性がない繊維素材であっても、タンニン酸処理における第1処理液中のタンニンのowf%を3%以上とすれば、一応の効果を発揮するという見方もできる。
【0054】
一方、実験例8から、タンニン酸処理を施すとしても、縮合型タンニンの場合は効果が発現せず、加水分解型タンニンを用いるべきことを理解することができる。なお、実験例8以外の実験例1〜7及び実験例9は、全て加水分解型タンニンを用いたものである。
【0055】
実験例9は、タンニン処理を施さない場合には耐摩耗性試験を行った結果、2オーダーの導電性低下が見られるのに対し、タンニン処理を施した場合は、1オーダー程度の導電性低下で済んでいることが分かる。この結果、タンニン処理を事前に行った後に導電性高分子モノマーによる処理を施した場合には、導電性を長く保ち続けられることが判明した。
【0056】
そして、比較例から分かる様に、タンニン処理のみを施してその後の導電性高分子モノマーによる処理を施さない場合には、導電性はほとんど付与されていないことが分かる。
【0057】
この比較例は、実験例1と同じ繊維素材によるものである。そこで、実験例1のタンニン酸処理0%、即ち、タンニン酸処理を施さない場合と共に考察すると、表12の事実が判明する。
【0058】
【表12】

【0059】
即ち、ナイロン6ジャージーに対してタンニン酸処理をowf5%で実施したとしても、それのみでは、表面電気抵抗は、0.3×1011Ω/cmである。また、ナイロン6ジャージーに対してタンニン酸処理を施すことなくピロール処理を施したものの表面電気抵抗は0.13×10Ω/cmである。これに対し、タンニン酸処理をowf1%で施した上でピロール処理を施した場合には0.14×10Ω/cmとなっている。
【0060】
このことは、本発明は単なる足し算以上の導電性向上効果を発揮する画期的な表面処理方法であることを示しているといえる。
【0061】
以上、発明を実施するための形態として実施例にて多数の実験例を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の態様での実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、帯電防止、電磁波シールド、電気メッキ等に好適な繊維素材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維素材に導電性皮膜を形成する方法であって、前記繊維素材を加水分解型タンニン酸を溶解した第1処理液に浸漬して繊維素材の表面にタンニン被覆層を形成した後、導電性高分子モノマーと酸化剤とを溶解した第2処理液に浸漬して導電性高分子モノマー重合被覆層を形成することを特徴とする繊維素材の表面処理方法。
【請求項2】
前記繊維素材としてタンニンに対する親和性を有する素材を用いることを特徴とする繊維素材の表面処理方法。
【請求項3】
表面に形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基に対して結合されつつ重合された導電性高分子モノマー重合被覆層を備えてなる導電性布帛。
【請求項4】
表面に形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基に対して結合されつつ重合された導電性高分子モノマー重合被覆層を備えてなる導電性糸。
【請求項5】
表面に形成されたタンニン被覆層のフェノール性水酸基に対して結合されつつ重合された導電性高分子モノマー重合被覆層を備えてなる導電性フロック。

【公開番号】特開2013−67908(P2013−67908A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207137(P2011−207137)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591077405)株式会社中部パイル工業所 (3)
【Fターム(参考)】