説明

導電性膜の製造方法及びその製造装置並びに透光性電磁波シールド膜及びプラズマディスプレーパネル

【課題】 ハロゲン化銀写真感光材料にパターン露光と現像を行い、さらに電解めっきする際に電解めっき工程で生じるめっきむらを低減できる方法を提示すること。それによって、均一で高い導電性と高い透光性とを有する透光性導電性膜、とくに電磁波シールド膜、並びにそれらを装備した画像表示装置を提供すること。
【解決手段】 支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に現像処理を施して金属銀部を形成し、続いて該金属銀部に電解めっきを施す導電性膜の製造方法において、該現像処理済み感光材料がメッキ液に浸漬される際に液面の変動を抑制することを特徴とする透光性導電性膜の製造方法及び装置。これを用いた透光性導電性膜、透光性電磁波シールド膜及びそれらを装備した画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質で高導電性の透光性導電性膜の製造方法に関する。また、得られた透光性導電性膜を利用した透明性と電磁波シールド能を有する電磁波シールド膜に関する。さらに該電磁波シールド膜を装備したCRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などのディスプレイ、電子レンジ、電子機器、プリント配線板などにも関する。
また、透光性導電性膜はこれらの画像表示素子のほかに撮像用半導体素子などにも用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子・電気機器の電磁波放出の強さを規格内又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策のために電磁波をシールドする方法が種々提案され、用いられているが、CRT、PDPなどに適用する場合には、電磁波シールド能に加えて画面に表示される画像や文字等を視認する必要があるため、透明性も要求される。
【0004】
特に、PDPは、CRT等と比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められており、CRT用の透光性電磁波シールド材料に必要な表面抵抗値は凡そ300Ω/sq以下であるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では、2.5Ω/sq以下であることが必要で、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、1.5Ω/sq以下とすることが求められ、より望ましくは0.1Ω/sq以下という極めて高い導電性が要求されている。
透明性に関しても、CRT用として凡そ70%以上の透過率が要求されているのに対して、PDP用として80%以上の透過率が望まれている。
【0005】
上記の問題を解決するための開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と透明性とを両立させる材料・方法として、例えば導電性繊維をメッシュにしたシールド材、無電解めっき触媒を印刷法で格子状パターンとして印刷してそのパターンに無電解めっきを行う方法、無電解めっき触媒含有フォトレジストをメッシュ状にパターン形成させてその上に無電解めっきする方法、フォトリソグラフィー法でエッチング加工して金属薄膜のメッシュを形成する方法、など多様な方法がこれまで提案されている。しかしながら、これらの方法は、製造工程は煩雑かつ複雑で生産コストが高価になる、格子模様の交点部等で線幅が不均一になる、モアレが生じる、あるいは透光性と導電性の一方又は両方が不足する、などの問題があって改善が要望されていた。
【0006】
その改善手段として、銀塩を用いた導電性金属銀パターンを形成する方法が提案されている。
銀塩感光材料は、カラーネガフィルム、黒白ネガフィルム、映画用フィルム、カラーリバーサルフィルム等の写真フィルム、カラーペーパー、黒白印画紙などの写真用印画紙等として従来から広く用いられているが、この材料を利用すればパターン露光と現像による写真的方法によって簡易なプロセスでパターン状の金属銀を得ることができ、この金属銀は、感光材料の構成や現像方法次第では導電性を利用することが可能である。1960年代に物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法によって導電性金属銀薄膜パターンを形成する方法が、特許文献1に開示されている。また同様の銀塩拡散転写法を利用して得た光透過性のない均一な銀薄膜がマイクロ波減衰機能を有することが特許文献2に開示されている。この原理をインスタント黒白スライドフィルムに適用して簡便に露光・現像を行って導電性パターンを形成する方法が、非特許文献1及び特許文献3に記載されている。また、銀塩拡散転写法の原理によって、プラズマディスプレイ用の表示電極に利用可能な導電性の銀膜を形成する方法が特許文献4に記載されている。
【0007】
しかしながら、このような方法で得た導電性金属銀膜は、画像表示や画像形成素子用としては透光性が不十分であり、またCRTやPDPなどのディスプレイの画像表示面から放射される電磁波を、画像表示を妨害せずに、シールドする能力も不十分であった。
また、高い導電性を得ることも困難で、導電性を高めるために厚い銀膜を得ようとすると、透明性が損なわれる問題があった。したがって、上記銀塩拡散転写法をそのまま用いても、電子ディスプレイ機器の画像表示面からの電磁波をシールドするのに好適な、光透過性と導電性の優れた透光性電磁波シールド材料は得ることができなかった。
また、銀塩拡散転写法を用いないで、通常の市販のネガフィルムとネガ型現像処理を利用したのでは、導電性と透明性を両立させる点において一層不利であり、CRTやPDPの透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。
【0008】
このようなことから、特許文献5には、銀塩感光材料を用いて現像によりパターン形成した後、現像銀にさらにめっき又は物理現像処理を加える透光性電磁波シールド材料の製造方法が提案されるに至った。この方法は、上記問題に対して改善効果は見られ、電子ディスプレイ機器の発する電磁波をシールドする方策として進歩した方法ではあるが、現像銀上にさらに金属を沈積させる工程の制御が困難であって沈積速度の局部的変動によって導電性や透光性の均一性が損われて支障が生じることが判った。特に感光材料を連続搬送しながら電解めっきを行うとめっきむら及び感材汚れの発生が著しくなる。現像銀は一般的に10Ω/□以上の高抵抗であって、それがめっきむら及び感材汚れの生成を助長している。特許文献6は、現像銀を利用する方法ではないが、被メッキ面を粗面化すると電着傷がつきにくく平滑面が形成できることが開示されている。しかしながら、一般にフィラメント状を呈する現像銀に対しては適用できない。
さらにめっき浴の構成成分の消費が増大してめっき液の疲労が進むので交換速度を早くする必要も生じることも判明し、依然として透明性と導電性の両立させる手段が求められている。
【0009】
【特許文献1】特公昭42−23746号公報
【特許文献2】特公昭43−12862号公報
【特許文献3】国際公開WO 01/51276号公報
【特許文献4】特開2000−149773号公報
【特許文献5】特開2004−221564号公報
【特許文献6】特開2004−18949号公報
【非特許文献1】アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、2000年発刊、第72巻、645項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑てなされたものであり、本発明の目的は、ハロゲン化銀写真感光材料にパターン露光と現像処理を施して得たパターン状現像銀上にさらに電解めっきする導電性膜形成方法において電解めっき工程で生じるめっきむら及び感材汚れを低減することである。
また、めっきむら及び感材汚れを解決して、高い導電性を有する導電性膜、とりわけ高い導電性と高い透光性とを同時に有する透光性導電性膜、中でも高い電磁波シールド性と高い透明性とを同時に有する電磁波シールド膜を提供すること、並びにそれらの膜の安価で大量生産可能で、かつ大量製造しても電磁波シールド能が劣化しない製造方法を提供することである。
さらに、PDPをはじめとするディスプレー装置などに装備させる高透光性と高導電性を具備する電磁波シールド膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、微細な現像銀表面への電着過程を詳細に検討した結果、電着ムラは、メッキ過程の初期に顕著に生じること、メッキ液の流動、攪拌度に影響されることを突き止めると共に、めっき浴の疲労が進むと電着量の割に透光性の低下が増大することが判った。さらに現像済み感光材料がメッキ液に浸漬される際に液面が乱されなければ電着ムラは抑止されることも判明した。これらの知見に基づいて導電性の透光性が確保され、かつ導電性と透光性とがする現像・定着・めっきの一連の処理工程を案出して本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、以下の導電性膜の製造方法及び得られた導電性膜とそれを装備した画像表示装置により達成される。
(1)支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に現像処理を施して金属銀部を形成したのち該金属銀部に電解めっきを施す導電性膜の製造方法において、めっき浴中に搬送される現像処理済みの該感光材料とめっき浴液面との接触部の液面変動が制御されていることを特徴とする導電性膜の製造方法。
(2)液面変動が静止時液面の±10mm以下に制御されていることを特徴とする上記(1)に記載の導電性膜の製造方法。
(3)現像処理済みの該感光材料が通過させる開口部を有する液面変動抑止部材をめっき浴液面に配することによって液面変動の制御がなされることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の導電性膜の製造方法。
(4)前記開口部が、幅が感光材料の厚み+10mm以下で、長さが感光材料の搬送方向に直角方向の幅+10mm以下のスリット状であることを特徴とする上記(3)に記載の導電性膜の製造方法。
(5)めっき浴の液面に設けた1対のブレード部材の間を現像処理済み該感光材料を通過させることによって液面変動の制御が行われることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
(6)攪拌用ノズルの吐出口のすべてをめっき浴の液面よりも50mm以上深部に配してなるめっき浴槽を用いて電解めっきされたことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
(7)めっき浴中へ感光材料が搬送移動されている期間は、吐出口をめっき浴の液面から50mm以内に有する攪拌用ノズルの循環を停止して電解めっきされたことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
【0013】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法に使用することを特徴とする導電性膜形成用装置。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする電磁波シールド膜。
(10)該電磁波シールド膜の表面抵抗が2.5Ω/sq以下であり、又は導電性金属部は開口率が85%以上であることを特徴とする上記(9)に記載の電磁波シールド膜。
(11)表面抵抗が1.5Ω/sq以下であることを特徴とする上記(10)に記載の電磁波シールド膜。
(12)支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に現像処理を施して金属銀部を形成し、続いて該金属銀部にめっき処理を施す透光性導電性膜の製造方法において、該めっき処理が上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性膜の製造方法によって行われることを特徴とする透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(13)露光部に前記金属銀部を形成し、未露光部に光透過性部を形成することを特徴とする上記(12)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(14)前記光透過性部が実質的に物理現像核を有しないことを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
(15)Ag/バインダー体積比が1/4以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【0014】
(16)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有するプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
(17)上記(10)又は(11)に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
(18)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の製造方法により得られた透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
(19)上記(17)又は(18)に記載の光学フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
(20)上記(12)〜(15)のいずれかに記載の製造方法により得られた透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマテレビ。
【発明の効果】
【0015】
現像済み感光材料をメッキ液に浸漬させる際に液面の変動を抑制することを特徴とする本発明の導電性膜の製造方法によれば、電解めっき工程で生じるめっきむら及び感材汚れを低減することができる。したがって、均質かつ高い導電性と高い透光性とを同時に有する透光性導電性膜を形成することが可能であり、EMIシールド性に優れた細線のパターンの電磁波シールド膜も得られる。上記透光性導電性膜は、ディスプレー機器の画像素子ユニットや画像記録素子の撮像用半導体素子用の透明電極として、シールド膜は、上記画像素子ユニットの電磁波障害防止用部材として用いられる。また、本発明の製造方法では、メッキ液の疲労が少なく、電磁波シールド能を劣化させることなく膜を安価に大量生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の透光性導電性膜の製造方法および透光性導電膜の中でも特に透光性電磁波シールド膜について詳細に説明するが、半導体素子などの透明電極に用いる現像銀由来の導電性膜もこれに準拠して製造することができる。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0017】
<本発明の特徴>
本発明は、支持体上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する黒白感光材料を露光し、現像処理と好ましくは定着処理を施すことによって露光部および未露光部に、それぞれ金属銀部および光透過性部を形成し、次いで金属銀部に電解めっき処理を施して金属銀部に金属を電解沈積させて現像銀を強化して導電性を増大させる特開2004−221564号公報によって開示された方法において、現像銀を担持した感光材料をメッキ液に浸漬させる際に液面の変動を抑制することを特徴としている。
パターン露光したハロゲン化銀者感光材料を単に現像処理しただけでは、現像によって生じたメッシュ状の銀は細いフィラメント状銀(又は超微粒子で離散的な球状銀)であって導電性が極めて乏しい。本発明者は、導電性を増大させるには無電解メッキ又は電解メッキによって金属をパターン状現像銀上に沈積させることが効果的であることを見出したが、中でも電解メッキが金属沈積速度を増大させて経済速度で効果的にメッシュ状金属膜を形成させるのに効果が大きい。しかしながら、このようにして得た金属膜は沈積の不均一性に由来する電解ムラ(めっきむらとも記す)があって導電性膜の均一性に欠ける。また感材汚れも発生する。本発明では、現像銀を担持した感光材料をメッキ液に浸漬させる際に液面の変動を抑制する手段を採用してこれらの欠点を解決している。
【0018】
金属の沈積ムラは、感光材料がメッキ液に浸漬される初期段階であるほど、またメッキ液の攪拌度の抑止が強力であるほど顕著となるので、本発明では浸漬段階の液面変動を抑止し、あるいは攪拌効果が感光材料の浸漬初期には及ばないようにすることによって発明の効果を具現させている。液面変動が少ないほどめっきむらは軽減されるが、静止時液面の±10mm以下に制御されていれば、むらの軽減効果が認められる。めっきむらを抑制すると感材汚れも減少する。
【0019】
液面変動の抑止手段としては、(1)現像処理済みの該感光材料を通過させる開口部を有する液面変動抑止部材をめっき浴液面に配する(例えば開口部を有する浮き板上部材)、(2)現像処理済み該感光材料が通過可能の間隙をもつめっき浴の液面に設けられた1対のブレード部材をめっき浴液面に配する、(3)攪拌用ノズルの吐出口のすべてをめっき浴の液面よりも50mm以上深部に配置させためっき浴槽を用いる、(4)めっき浴中へ感光材料が搬送移動されている期間は、めっき浴の液面から50mm以内に吐出口を有する液循環用ノズルの循環を停止する、(5)液面変動が規定範囲になるように槽内循環(攪拌)の循環量を制御する、などが挙げられる。また、これら(1)〜(5)の各手段は併用(組合せ使用)してもよい。これらの詳細は後述する。
現像処理と好ましくは定着処理に続く電解めっき処理は、公知の電解めっき処理を用いることができ、これによってバインダーに覆われて通常不均一形状と不均一太さのために導電性が不十分なフィラメント状銀の導電性が強化され、さらに現像済み試料がメッキ液に浸漬される際の液面の変動を抑制することによって未露光部の透光性と露光部の導電性とがともに優れた導電性膜を形成することができる。
以下、本発明を構成する要素について順次詳細に説明する。
【0020】
《透光性導電性膜とその製造法》
[感光材料]
<支持体>
本発明の製造方法に用いられる感光材料の支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを用いることができる。
上記プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム及び/又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0021】
ディスプレイ用の電磁波シールド材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルムおよびプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0022】
本発明における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0023】
<保護層>
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けても良い。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層はめっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
尚、本発明の製造方法に用いられる感光材料は、染色等の目的で乳剤層に公知の染料を含んでいてもよい。
【0024】
<乳剤層>
本発明の製造方法に用いられる感光材料は、支持体上に、光センサーとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有するのが好ましい。本発明における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダー、溶媒等を含有することができる。
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれてもよい。染料は、フィルター染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。また、特開平7−152112号公報記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号公報記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号公報記載の(IV−2)〜(IV−7)等も好ましく用いられる。
【0025】
このほか、本発明に使用することができる染料としては、現像または定着の処理時に脱色させる固体微粒子分散状の染料としては、特開平3−138640号公報記載のシアニン染料、ピリリウム染料およびアミニウム染料が挙げられる。また、処理時に脱色しない染料として、特開平9−96891号公報記載のカルボキシル基を有するシアニン染料、特開平8−245902号公報記載の酸性基を含まないシアニン染料および同8−333519号公報記載のレーキ型シアニン染料、特開平1−266536号公報記載のシアニン染料、特開平3−136038号公報記載のホロポーラ型シアニン染料、特開昭62−299959号公報記載のピリリウム染料、特開平7−253639号公報記載のポリマー型シアニン染料、特開平2−282244号公報記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開昭63−131135号公報記載の光散乱粒子、特開平9−5913号公報記載のYb3+化合物および特開平7−113072号公報記載のITO粉末等が挙げられる。また、特開平9−179243号公報記載の一般式(F1)、一般式(F2)で表される染料で、具体的には同公報記載の化合物F35〜F112も用いることができる。
【0026】
また、上記染料としては、水溶性染料を含有することができる。このような水溶性染料としては、オキソノール染料、ベンジリデン染料、メロシアニン染料、シアニン染料およびアゾ染料が挙げられる。中でも本発明においては、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料およびベンジリデン染料が有用である。本発明に用い得る水溶性染料の具体例としては、英国特許584,609号明細書、同1,177,429号明細書、特開昭48−85130号公報、同49−99620号公報、同49−114420号公報、同52−20822号公報、同59−154439号公報、同59−208548号公報、米国特許2,274,782号明細書、同2,533,472号明細書、同2,956,879号明細書、同3,148,187号明細書、同3,177,078号明細書、同3,247,127号明細書、同3,540,887号明細書、同3,575,704号明細書、同3,653,905号明細書、同3,718,427号明細書に記載されたものが挙げられる。
【0027】
上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止などの効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0028】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0029】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明では、光センサーとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0030】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0031】
尚、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0032】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。
尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0033】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また粒子内部或いは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
【0034】
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P. Glafkides 著 Chimie etPhysique Photographique (Paul Montel 社刊、1967年)、G. F. Dufin 著Photographic Emulsion Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V. L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion (The ForcalPress 刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0035】
すなわち、上記ハロゲン化銀乳剤の調製方法としては、酸性法、中性法等のいずれでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩とを反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせなどのいずれを用いてもよい。
また、銀粒子の形成方法としては、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。さらに、同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
またアンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることも好ましい。係る方法としてより好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号各公報に記載されている。
好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが挙げられる。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類および目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0036】
上記コントロールド・ダブルジェット法およびハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に好ましく用いることができる。
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号明細書、特公昭48−36890号広報、同52−16364号公報に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号明細書、特開昭55−158124号公報に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く銀を成長させることが好ましい。本発明における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{(粒子サイズの標準偏差)/(平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0038】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラストおよび低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物、レニウム化合物などを含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどや、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類(メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物(イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾールなど)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0039】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
【0040】
上記イリジウム化合物としては、K2IrCl6、K3IrCl6等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
上記ルテニウム化合物としては、ヘキサクロロルテニウム、ペンタクロロニトロシルルテニウム、K4〔Ru(CN)6〕等が挙げられる。
上記鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0041】
上記ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号公報、特開平1−285941号公報、同2−20852号公報、同2−20855号公報等に記載された水溶性錯塩が挙げられる。
【0042】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgで
あることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0043】
その他、本発明では、Pd(II)イオンおよび/またはPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0044】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオンおよび/またはPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0045】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等カルコゲン増感、金増感などの貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独または組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法などの組み合わせが好ましい。
【0046】
上記硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化し、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0047】
上記セレン増感に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。上記不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号公報、同43−13489号公報、特開平4−109240号公報、同4−324855号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0048】
上記テルル増感剤に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。具体的には、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635(1980)、 ibid 1102(1979)、 ibid 645(1979)などに記載の化合物を用いることができる。特に特開平5−313284号公報中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0049】
本発明で用いることのできるセレン増感剤およびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0050】
また、上記貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられ、特に金増感が好ましい。金増感に用いられる金増感剤としては、具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、チオグルコース金(I)、チオマンノース金(I)などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
【0051】
また、本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物などを用いることができる。上記ハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)293917に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。本発明に用いられる感光材料の作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、1種だけでもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)の併用であってもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426号公報に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0052】
[露光]
本発明では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光、X線などの放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0053】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0054】
また本発明では、露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0055】
レーザー光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザー(2001年3月の第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0056】
銀塩含有層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0057】
[現像処理]
本発明では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョン塗層等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
現像処理は、ネガ型現像処理および反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる。また、化学現像、物理現像(本発明の態様では正確には溶解物理現像)のいずれで行ってもよい。
ここでいう化学現像及び溶解物理現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」373−377頁(Mcmillan社、1977刊行)に解説されている。
化学現像液については現像銀が得られる限り、黒白現像液であってもカラー現像液(発色しなくてもよい)であってもよく、特に限定はしないが、黒白現像液が好ましく、黒白現像液としてはPQ現像液、MQ現像液、MAA現像液(メトール・アスコルビン酸現像液)等を用いることもでき、例えば、富士フィルム社指定処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社指定処方のC−41、E−6、RA−4、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−19、D−85、D−8などの処方名で知られるリス現像液や硬調ポジ現像液を用いることもできる。 溶解物理現像の態様においては、上記の各現像液にハロゲン化銀溶解剤としてチオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩など)やチオシアン酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩など)を添加すればよく、D−19、D−85、D−8、D−72などの高活性型現像液に添加することが好ましい。
本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、後述する光透過性部が形成される。
【0058】
<現像液組成及び現像処理工程>
本発明においては、前記した現像液のいずれをも用いることができるが、好ましくは黒白現像液である。現像主薬としてはカラー現像主薬や黒白系現像主薬が好ましく、とくに好ましくはアスコルビン酸系現像主薬やジヒドロキシベンゼン系現像主薬を用いることができる。アスコルビン酸系現像主薬としてはアスコルビン酸、イソアスコルビン酸やエリソルビン酸やその塩(Na塩等)などがあげられるがコストの点からエリソルビン酸Naが好ましい。ジヒドロキシベンゼン系現像主薬としてはハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルホン酸塩などが挙げられるが、特にハイドロキノンが好ましい。アスコルビン酸系現像主薬やジヒドロキシベンゼン系現像主薬は特に超加成性を示す補助現像主薬と併用してもよいがしなくても良い。上記アスコルビン酸系現像主薬やジヒドロキシベンゼン系現像主薬と超加成性を示す補助現像主薬としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン類やp−アミノフェノール類が挙げられる。
【0059】
補助現像主薬として用いられる1−フェニル−3−ピラゾリドンまたはその誘導体としては、具体的に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンなどがある。
上記p−アミノフェノール系補助現像主薬としては、N−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン等があるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。
ジヒドロキシベンゼン系現像主薬は、通常0.05〜0.8モル/リットルの量で用いられるのが好ましいが、本発明においては、0.23モル/リットル以上で使用するのが特に好ましい。さらに好ましくは、0.23〜0.6モル/リットルの範囲である。またジヒドロキシベンゼン類と1−フェニル−3−ピラゾリドン類若しくはp−アミノフェノール類との組合せを用いる場合には、前者を0.23〜0.6モル/リットル、さらに好ましくは0.23〜0.5モル/リットル、後者を0.06モル/リットル以下、さらに好ましくは0.03モル/リットル〜0.003モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
現像液の浸浴電位すなわち酸化還元電位は、現像液の構成成分の酸化還元性の総合されたものであるが、主として現像主薬とpHによって定まる。好ましい酸化還元電位は、290mVvsSCEよりも卑であり、より好ましくはー320mVvsSCEよりも卑であり、さらに好ましくは、ー340mVvsSCEよりも卑である。
現像液の酸化還元電位を本発明に好ましい290mVvsSCEよりも卑とするには、上記の好ましい現像主薬として挙げた主薬を用い、選択した現像主薬の種類に応じてpHを調整することによって行われる。好ましいpH値は現像主薬のpK値よりも0〜2、好ましくは0.5〜1.5高い側であり、現像主薬の種類に応じて適宜選択される。
【0060】
本発明においては、現像開始液(すなわち現像槽に新液として充填される母液)および現像補充液の双方が、それぞれ液1リットルに0.1モルの水酸化ナトリウムを加えたときのpH上昇が0.5以下であるpH緩衝能を有することが好ましい。使用する現像開始液ないし現像補充液(以下両者を併せて現像液と呼ぶこともある)がこのpH緩衝能を有することを確かめる方法としては、試験対象の現像開始液ないし現像補充液のpHを10.5に合わせ、ついでこの液1リットルに水酸化ナトリウムを0.1モル添加し、この際の液のpH値を測定し、pH値の上昇が0.5以下であれば上記に規定したpH緩衝能を有すると判定する。本発明の製造方法では、特に、上記試験を行った時のpH値の上昇が0.4以下である現像開始液および現像補充液を用いることが好ましい。
【0061】
現像開始液および現像補充液に上記の性質を与える方法としては、緩衝剤を使用することが好ましい。上記緩衝剤としては、炭酸塩、特開昭62−186259号公報に記載のホウ酸、特開昭60−93433号公報に記載の糖類(例えばサッカロース)、オキシム類(例えばアセトオキシム)、フェノール類(例えば5−スルホサリチル酸)、第3リン酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)などを用いることができ、好ましくは炭酸塩、ホウ酸が用いられる。上記緩衝剤(特に炭酸塩)の使用量は、好ましくは、0.25モル/リットル以上であり、0.25〜1.5モル/リットルが特に好ましい。
【0062】
本発明においては、上記現像開始液のpHが9.0〜11.0であることが好ましく、9.5〜10.7の範囲であることが特に好ましい。上記現像補充液のpHおよび連続処理時の現像タンク内の現像液のpHもこの範囲である。pH設定のために用いるアルカリ剤には通常の水溶性無機アルカリ金属塩(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)を用いることができる。
【0063】
本発明の光透過性導電膜や電磁波シールド膜の製造方法において、感光材料1平方メートルを処理する際に、現像液中の現像補充液の添加量(補充量)は645ミリリットル以下、好ましくは484〜30ミリリットル、特に484〜100ミリリットルである。現像補充液は、現像開始液と同一の組成を有していてもよいが、現像で消費される成分について消費量を補償するに見合う量だけ開始液よりも高い濃度を有していることが好ましい。
【0064】
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液(以下、現像開始液および現像補充液の双方をまとめて単に「現像液」という場合がある)には、通常用いられる添加剤(例えば、保恒剤、キレート剤)を含有することができる。上記保恒剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩が挙げられる。該亜硫酸塩は、0.20モル/リットル以上用いられることが好ましく、さらに好ましくは0.3モル/リットル以上用いられるが、多量添加すると現像液中の銀汚れの原因になることがあるので、その上限は1.2モル/リットルとするのが望ましい。特に好ましくは、0.35〜0.7モル/リットルである。また、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬の保恒剤として、亜硫酸塩と併用してアスコルビン酸誘導体を少量使用してもよい。ここでアスコルビン酸誘導体とは、前記した現像主薬としてのアスコルビン酸と同じであり、アスコルビン酸、および、その立体異性体であるエリソルビン酸やそのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム塩)などを包含する。上記アスコルビン酸誘導体としては、エリソルビン酸ナトリウムを用いることが素材コストの点で好ましい。上記アスコルビン酸誘導体の添加量はジヒドロキシベンゼン系現像主薬に対して、モル比で0.03〜0.12の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.10の範囲である。上記保恒剤としてアスコルビン酸誘導体を使用する場合には現像液中にホウ素化合物を含まないことが好ましい。
【0065】
上記以外に現像剤に用いることのできる添加剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムの如き現像抑制剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミドの如き有機溶剤;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、イミダゾールまたはその誘導体等の現像促進剤や、メルカプト系化合物、インダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物をカブリ防止剤または黒ポツ(black pepper)防止剤として含んでもよい。上記ベンゾイミダゾール系化合物としては、具体的に、5−ニトロインダゾール、5−p−ニトロベンゾイルアミノインダゾール、1−メチル−5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、3−メチル−5−ニトロインダゾール、5−ニトロベンズイミダゾール、2−イソプロピル−5−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロベンズトリアゾール、4−〔(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)チオ〕ブタンスルホン酸ナトリウム、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、2−メルカプトベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。これらベンゾイミダゾール系化合物の含有量は、通常、現像液1リットル当り0.01〜10mmolであり、より好ましくは、0.1〜2mmolである。
【0066】
さらに上記現像液中には、各種の有機・無機のキレート剤を併用することができる。上記無機キレート剤としては、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を用いることができる。一方、上記有機キレート剤としては、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸および有機ホスホノカルボン酸を用いることができる。
上記有機カルボン酸としては、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0067】
上記アミノポリカルボン酸としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他特開昭52−25632号、同55−67747号、同57−102624号の各公報、および特公昭53−40900号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0068】
これらキレート剤の添加量としては、現像液1リットル当り好ましくは、1×10-4〜1×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルである。
【0069】
さらに、現像液中に溶解助剤として特開昭61−267759号公報記載の化合物を用いることができる。さらに現像液には、必要に応じて色調剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤等を含んでもよい。現像処理温度および時間は相互に関係し、全処理時間との関係において決定されるが、一般に現像温度は約20℃〜約50℃が好ましく、25〜45℃がさらに好ましい。また、現像時間は5秒〜2分が好ましく、7秒〜1分30秒がさらに好ましい。
【0070】
現像液の搬送コスト節減、包装材料コスト節減、省スペース等の目的から、現像液を濃縮化し、使用時に希釈して用いるようにする態様、すなわち液体濃縮現像剤として供給する態様も好ましい。現像液の濃縮化のためには、現像液に含まれる塩成分をカリウム塩化することが有効である。なお、ここでいう「現像液の濃縮化」とは当業界の慣用表現であって、「濃厚化」を意味するものであって、減圧蒸発などによる「濃縮」を意味するものではない。
【0071】
[定着処理]
現像処理に続いて好ましくは未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で定着処理が行われるが、本発明においては定着処理を省略することもできる。とくに現像処理が溶解物理現像によって行われる場合には、未露光部のハロゲン化銀は現像過程でかなり溶解され、消滅しているのが一般的である。しかしながら、現像が化学現像型の現像処方で行われる場合には、定着処理によって未露光部すなわち透光性部の透明度を増大させることが好ましい。
定着処理は、必ずしも現像処理に続いて行う必要はなく、後述する電解メッキ工程の後に行ってもよい。
本発明における定着処理は、カラー写真用や黒白銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、X線写真フイルム用、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の定着処理の技術を用いることができる。
【0072】
上記定着工程で使用する定着液の好ましい成分としては、以下が挙げられる。
すなわち、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオシアン酸カリウムなどの定着剤、必要により酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ホウ酸、イミノジ酢酸、5−スルホサリチル酸、グルコヘプタン酸、タイロン及びこれらの塩などのpH緩衝剤や保恒剤、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩などの硬水軟化剤等を含むことが好ましい。ただし、近年の環境保護の観点からは、ホウ酸は含まれない方が好ましい。本発明に用いられる定着液の定着剤としてはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどが挙げられ、定着速度の点からはチオ硫酸アンモニウムが好ましいが、近年の自然環境保全の観点から全窒素量の水質規制に鑑みてチオ硫酸ナトリウムが使われてもよい。これら既知の定着剤の使用量は適宜変えることができ、一般には約0.1〜約2モル/リットルである。特に好ましくは、0.2〜1.5モル/リットルである。定着液には所望により、硬膜剤(例えば水溶性アルミニウム化合物)、保恒剤(例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)、pH緩衝剤(例えば、酢酸)、pH調整剤(例えば、アンモニア、硫酸)、キレート剤、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤を含むことができる。
【0073】
上記界面活性剤としては、例えば硫酸化物、スルホン化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレン系界面活性剤、特開昭57−6740号公報記載の両性界面活性剤などが挙げられる。また、上記定着液には、公知の消泡剤を添加してもよい。
上記湿潤剤としては、例えば、アルカノールアミン、アルキレングリコールなどが挙げられる。また、上記定着促進剤としては、例えば特公昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号の各公報に記載のチオ尿素誘導体;分子内に3重結合を持つアルコール;米国特許US第4126459号明細書記載のチオエーテル化合物;特開平4−229860号公報記載のメソイオン化合物などが挙げられ、特開平2−44355号公報記載の化合物を用いてもよい。また、上記pH緩衝剤としては、例えば酢酸、リンゴ酸、こはく酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、グリコール酸、アジピン酸などの有機酸や、ホウ酸、リン酸塩、亜硫酸塩などの無機緩衝剤が使用できる。上記pH緩衝剤として好ましくは、酢酸、酒石酸、亜硫酸塩が用いられる。ここでpH緩衝剤は、現像液の持ち込みによる定着剤のpH上昇を防ぐ目的で使用され、好ましくは0.01〜1.0モル/リットル、より好ましくは0.02〜0.6モル/リットル程度用いる。定着液のpHは4.0〜8.0が好ましく、特に好ましくは4.5〜7.5の範囲である。
本発明では、迅速定着が可能なように定着液を高活性にするために水溶性ハライドを添加することが好ましい。好ましい水溶性ハライドは、アルカリ金属の臭化物及びよう化物ならびに臭化アンモニウム及びよう化アンモニウムであり、好ましいアルカリ金属塩は、ナトリウム塩及びカリウム塩である。水溶性ハライドの全添加量は、0.035〜0.5モル/Lであり、より好ましくは0.05〜0.4モル/Lである。水溶性ハライドの中には、よう化カリウム、よう化ナトリウム、よう化アンモニウムなどの水溶性よう化物が含まれていることが特に好ましく、その場合の水溶性よう化物の添加量は0.005〜0.05モル/Lである。
水溶性ハライドは、pAgを高く調整することに加えて定着工程に続くめっき工程において金属析出速度を高める作用を有しており、特によう素イオンの効果が大きい。
【0074】
本発明の定着液中の硬膜剤としては、水溶性アルミニウム塩、クロム塩が挙げられる。上記硬膜剤として好ましい化合物は、水溶性アルミニウム塩であり、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明バンなどが挙げられる。上記硬膜剤の好ましい添加量は0.01モル〜0.2モル/リットルであり、さらに好ましくは0.03〜0.08モル/リットルである。
【0075】
上記定着工程における定着温度は、定着処理温度および時間は相互に関係し、全処理時間との関係において決定されるが、本発明の高活性の迅速定着液では、30〜60℃で5〜40秒で未露光部のハロゲン化銀粒子の定着を完了させる活性を有する。好ましい定着温度は30℃〜60℃であり、35〜55℃がさらに好ましい。また、定着時間は5秒〜40秒が好ましく、7秒〜30秒がさらに好ましい。
定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して10600ml/m2以下が好ましく、700ml/m2以下がさらに好ましい。補充液の濃度は、定められた補充量のもとで処理中の消費を補償するに見合う濃度に設定される。
【0076】
[水洗処理、安定化処理など]
現像、定着処理を施した感光材料は、続いて、又は次に述べるめっき処理の後に、あるいは、現像、定着処理後とめっき処理後の両方で、水洗処理や安定化処理(水洗代替安定化処理とも言う)を施されるのが好ましい。上記水洗処理または安定化処理においては、水洗水量(又は安定化液補充量)は通常感光材料1m2当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。このため、節水処理が可能となるのみならず、自動現像機設置の配管を不要とすることができる。水洗水の補充量を少なくする方法としては、古くから多段向流方式(例えば2段、3段など)が知られている。この多段向流方式を本発明の製造方法に適用した場合、定着後の感光材料は徐々に正常な方向、即ち定着液で汚れていない処理液の方向に順次接触して処理されていくので、さらに効率のよい水洗がなされる。また、水洗を少量の水で行う場合は、特開昭63−18350号、同62−287252号各公報などに記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることがより好ましい。また、少量水洗時に問題となる廃水汚濁に係る環境負荷低減のためには、種々の酸化剤添加やフィルター濾過を組み合わせてもよい。さらに、上記方法においては、水洗浴または安定化浴に防黴手段を施した水を、処理に応じて補充することによって生じた水洗浴または安定化浴からのオーバーフロー液の一部または全部を、特開昭60−235133号公報に記載されているようにその前の処理工程である定着能を有する処理液に利用することもできる。また、少量水洗時に発生し易い水泡ムラ防止および/またはスクイズローラーに付着する処理剤成分が処理されたフィルムに転写することを防止するために、水溶性界面活性剤や消泡剤を添加してもよい。
【0077】
また、上記水洗処理または安定化処理においては、感光材料から溶出した染料による汚染防止に、特開昭63−163456号公報に記載の色素吸着剤を水洗槽に設置してもよい。また、水洗処理に続いて安定化処理においては、特開平2−201357号、同2−132435号、同1−102553号、特開昭46−44446号の各公報に記載の化合物を含有した浴を、感光材料の最終浴として使用してもよい。この際、必要に応じてアンモニウム化合物、Bi、Alなどの金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防かび剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えることもできる。水洗工程または安定化工程に用いられる水としては水道水のほか脱イオン処理した水やハロゲン、紫外線殺菌灯や各種酸化剤(オゾン、過酸化水素、塩素酸塩など)等によって殺菌された水を使用することが好ましい。また、特開平4−39652号、特開平5−241309号公報記載の化合物を含む水洗水を使用してもよい。水洗処理または安定化温度における浴温度および時間は0〜50℃、5秒〜2分であることが好ましい。
【0078】
本発明に用いられる現像液や定着液等の処理液の保存には、特開昭61−73147号公報に記載された酸素透過性の低い包材で保存することが好ましい。また、補充量を低減する場合には処理槽の空気との接触面積を小さくすることによって液の蒸発、空気酸化を防止することが好ましい。ローラー搬送型の自動現像機については米国特許US第3025779号明細書、同第3545971号明細書などに記載されており、本明細書においては単にローラー搬送型プロセッサーとして言及する。また、ローラー搬送型プロセッサーは現像、定着、水洗および乾燥の四工程からなることが好ましく、本発明においても、他の工程(例えば、停止工程)を除外しないが、この四工程を踏襲するのが最も好ましい。また、水洗工程の代わりに安定化工程による四工程でも構わない。
【0079】
本発明に適用される前記ハロゲン化銀感光材料である限り、現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0080】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0081】
本発明における現像処理剤および定着処理剤は固形にしても液剤同様の結果が得られるが、保存安定性等の観点からは、固形処理剤が好ましい。以下に固形処理剤に関する記述を行う。
本発明における固形剤は、公知の形態(粉状、粒状、顆粒状、塊状、錠剤、コンパクター、ブリケット、板状、棒状、ペースト状など)が使用できる。これらの固形剤は、接触して互いに反応する成分を分離するために、水溶性のコーティング剤やフィルムで被覆してもよいし、複数の層構成にして互いに反応する成分を分離してもよく、これらを併用してもよい。
【0082】
被覆剤、造粒助剤には公知のものが使用できるが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ビニル系化合物が好ましい。この他、特開平5−45805号公報カラム2の48行〜カラム3の13行目が参考にできる。
【0083】
複数の層構成にする場合は、接触しても反応しない成分を互いに反応する成分の間にはさんだ構成にして錠剤やブリケット等に加工してもよいし、公知の形態の成分を同様の層構成にして包装してもよい。これらの方法は、たとえば特開昭61−259921号公報、同4−16841号公報、同4−78848号公報、同5−93991号公報等に示されている。
【0084】
固形処理剤の嵩密度は、0.5〜6.0g/cm3が好ましく、特に錠剤は1.0〜5.0g/cm3が好ましく、顆粒は0.5〜1.5g/cm3が好ましい。
【0085】
本発明における固形処理剤の製法は、公知のいずれの方法を用いることができる。たとえば、特開昭61−259921号公報、特開平4−15641号公報、特開平4−16841号公報、同4−32837号公報、同4−78848号公報、同5−93991号公報、特開平4−85533号公報、同4−85534号公報、同4−85535号公報、同5−134362号公報、同5−197070号公報、同5−204098号公報、同5−224361号公報、同6−138604号公報、同6−138605号公報、同8−286329号公報等を参考にすることができる。
【0086】
より具体的には転動造粒法、押し出し造粒法、圧縮造粒法、解砕造粒法、撹拌造粒法、スプレードライ法、溶解凝固法、ブリケッティング法、ローラーコンパクティング法等を用いることができる。
【0087】
本発明における固形剤は、表面状態(平滑、多孔質等)や部分的に厚みを変えたり、中空状のドーナツ型にしたりして溶解性を調節することもできる。さらに、複数の造粒物に異なった溶解性を与えたり、溶解性の異なる素材の溶解度を合わせるために、複数の形状をとることも可能である。また、表面と内部で組成の異なる多層の造粒物でもよい。
【0088】
固形剤の包材は、酸素および水分透過性の低い材質が好ましく、包材の形状は袋状、筒状、箱状などの公知のものが使用できる。また、特開平6−242585号公報〜同6−242588号公報、同6−247432号公報、同6−247448号公報、同6−301189号公報、同7−5664号公報、同7−5666号公報〜同7−5669号公報に開示されているような折り畳み可能な形状にすることも、廃包材の保管スペース削減のためには好ましい。これらの包材は、処理剤の取り出し口にスクリューキャップや、プルトップ、アルミシールをつけたり、包材をヒートシールしてもよいが、このほかの公知のものを使用してもよく、特に限定はしない。さらに環境保全上、廃包材をリサイクルまたはリユースすることが好ましい。
【0089】
本発明の固形処理剤の溶解および補充の方法としては特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。これらの方法としてはたとえば、撹拌機能を有する溶解装置で一定量を溶解し補充する方法、特開平9−80718号公報に記載されているような溶解部分と完成液をストックする部分とを有する溶解装置で溶解し、ストック部から補充する方法、特開平5−119454号公報、同6−19102号公報、同7−261357号公報に記載されているような自動現像機の循環系に処理剤を投入して溶解・補充する方法、溶解槽を内蔵する自動現像機で感光材料の処理に応じて処理剤を投入し溶解する方法などがあるが、このほかの公知のいずれの方法を用いることもできる。また処理剤の投入は、人手で行ってもよいし、特開平9−138495号公報に記載されているような開封機構を有する溶解装置や自動現像機で自動開封、自動投入してもよく、作業環境の点からは後者が好ましい。具体的には取り出し口を突き破る方法、はがす方法、切り取る方法、押し切る方法や、特開平6−19102号公報、同6−95331号公報に記載の方法などがある。
【0090】
[電解めっき処理]
本発明では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための電解めっき処理を行う。
本発明において、電解めっき処理は、現像処理に続いて、又は現像処理後定着処理を行ったのち、あるいは現像処理後又は現像処理後の水洗や水洗代替リンスの後に行われる。いずれの段階で電解めっきを行うかは適宜選択できる。
【0091】
(電解めっき)
本発明において電解めっきは、未露光部に金属沈積が生じない緩やかな電解液条件(安定性が高い)で行うことができる点で無電解めっきよりも好ましく、さらに5μm/hr以上の高速めっきも可能である。めっき処理において、めっき液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTAなどの配位子など種々の添加剤を用いることができる。
電解めっきに用いられてめっきされる金属種は、無電解めっきの項で述べた金属種と同じであり、好ましい金属種も同じである。特に銅及び銀めっきが好ましい。
【0092】
電解液は、めっきされる金属の金属化合物を必要濃度に溶解できて、電解に適した十分に低い液抵抗(電極である現像銀との接触抵抗、電解液の通電抵抗の合計)が確保できる限り、いずれでも用いることができる。したがって、用いられる金属化合物に応じて適宜選択されるが、一般にめっき対象金属が銅、銀などであるので、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸の水溶液が好ましい。また、銀、銅がアンミン錯体やヒドロキシアミノ錯体を形成し易いことから水酸化アンモニウム(アンモニア水)、アルカノールアミン水溶液、好ましくはエタノールアミン、ジェエタノールアミンあるいはトリエタノールアミン水溶液も好ましい。
これらの電解液の酸、水酸化アンモニウム、アルカノールアミン類の使用濃度は、0.1モル/L〜10モル/L、好ましくは0.2モル/L〜8モル/L〜、特に好ましくは0.25モル/L〜5モル/Lである。また、めっき金属の金属化合物0.05モル/L〜10モル/L、好ましくは0.07モル/L〜5モル/L、特に好ましくは0.1モル/L〜3モル/Lである。
電解めっきにおけるめっき液の温度は10℃〜60℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましく、25℃〜45℃であるのが特に好ましい。電荷時間は、目的の金属被覆厚みが得られるように適宜調節できるが、10秒〜600秒、好ましくは20秒〜450秒、特に好ましくは30秒〜300秒となるように印加電圧(許容範囲内で)、液組成や温度を調整する。
好ましい金属化合物とめっき液組成の例としては、例えば銅めっきの場合は、硫酸銅五水塩を30〜300g/L、硫酸を30〜300g/Lを含むものを用いることができる。銀めっきの場合は、硝酸銀を30〜300g/L含む中性乃至酸性水溶液やアンモニア性アルカリ水溶液を用いることができる。なお、ニッケルめっきの場合は、硫酸ニッケル、塩酸ニッケル、銀めっきの場合はシアン化銀などを含むものを用いることができる。また、めっき液には、界面活性剤、硫黄化合物、窒素化合物等の添加剤を添加しても良い。
【0093】
本発明における電解めっきの態様の典型例を以下によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るめっき処理を好適に実施するためのめっき装置は、公知の装置と同様に、フィルムが巻き付けられた繰り出し用リール(図示せず)から順次繰り出されたフィルムを電解めっき槽に送り込み、めっき後のフィルムを巻取り用リール(図示せず)に順次巻き取る構成となっている。
【0094】
図1に本発明に係るめっき処理に好適に用いられる電解めっき槽の一例を示す。この図1に示す電解めっき装置10は、長尺のフィルム16に連続してめっき処理を施すことができるものである。矢印はフィルム16の搬送方向を示している。電解めっき装置10は、めっき液15を貯留する電解槽11を備えている。電解槽11内には、一対のアノード板13が平行に配設され、アノード板13の内側には、一対のガイドローラ14がアノード板13と平行に回動可能に配設されている。ガイドローラ14は垂直方向に移動可能で、これによりフィルム16のめっき処理時間を調整できる。
【0095】
電解槽11の上方には、フィルム16を電解槽11に案内するとともにフィルム16に電流を供給する給電ローラ(カソード)12a,12bがそれぞれ一対回転自在に配設されている。また、電解槽11の上方には、出口側の給電ローラ12bの下方に液切りローラ17が回動可能に配設されている。
アノード板13は、電線(図示せず)を介して電源装置(図示せず)のプラス端子に接続され、給電ローラ12a,12bは、電源装置(図示せず)のマイナス端子に接続されている。
【0096】
フィルム16を繰り出しリール(図示せず)に巻かれた状態でセットして、フィルム16のめっきを形成すべき側の面が給電ローラ12a,12bと接触するように、フィルム16を搬送ローラ(図示せず)に巻き掛ける。
アノード板13および給電ローラ12a,12bに電圧を印加し、フィルム16を給電ローラ12a,12bに接触させながら搬送する。フィルム16を電解槽11に導入し、めっき液15に浸せきして銅めっきを形成する。液切りローラ17間を通過する際に、フィルム16に付着しためっき液15拭い取り、電解槽11に回収する。これを複数の電解めっき槽で繰り返し、最後に水洗した後、巻取りリール(図示せず)に巻き取る。
フィルム16の搬送速度は、1〜30m/分の範囲で設定される。フィルム16の搬送速度は、好ましくは、1〜10m/分の範囲であり、より好ましくは、2〜5m/分の範囲である。
【0097】
電解めっき槽の数は、特に限定されないが、2〜10槽が好ましく、3〜6槽がより好ましい。
印加電圧は、0.5〜100Vの範囲であることが好ましく、1 〜60Vの範囲であることがより好ましい。
給電ローラ12a,12bはフィルム全面(接触している面積のうちの実質的に電気的に接触している部分が80%以上)と接触していることが好ましい。
【0098】
上記めっき処理によりめっきされる導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、めっきされた導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0099】
<めっき浴液面制御手段>
本発明では、現像処理済み感光材料がめっき浴に搬送される際の感光材料と液面との接触部の液面変動を抑えることによってめっきむらを軽減させる。液面変動は、主にめっき浴内のめっき液の攪拌(循環の際の攪拌も含む)によって生じる。液面変動は少ないほどめっきむらが軽減されて好ましい。好ましくは、液面変動は、静止時のめっき浴の液面に対して±10mm以下に制御されていることがよい。より好ましくは±8mm以内である。
【0100】
液面変動の抑止手段としては、液面変動に抑止効果がある実施可能な手段であればいずれでもよいが、以下の手段があげられる。
(1)現像処理済みの該感光材料を通過させる開口部を有する液面変動抑止部材をめっき浴液面に配する(例えば開口部を有する浮き板部材)。
開口部はスリット状で短辺が感光材料の厚みに10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下を加えた辺長で、長辺は感光材料の幅(機械方向に対して直角方向の長さ)に10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下を加えた辺長である。この開口サイズであれば液面変動を抑止できる。開口部を有する浮き板を用いる場合は、浮き板は、めっき槽の液面全体を覆うものであってもよいが、現像処理済み感光材料と液面との接触部分の周辺を波立ちが抑えられる程度に覆うものであれば大きさはいずれでもよい。
液面変動抑止部材の典型例を図2に示す。
図2a)は、液面変動抑止部材20の斜視図であり、板21はめっき槽に固定部材によって固定されていてもよく、浮き板となって液面に浮いていてもよい。板21には、感光材料浸入用の開口部22を有している。図2b)は、めっき槽の断面図であり、めっき槽23の液面24には液面変動抑止部材21が設けられており、図2b)の例は、該部材がめっき槽23の槽壁に固定されている例を示す。現像済み感光材料の搬送方向は、矢印付き実線25で染まされる。
【0101】
(2)現像処理済み該感光材料が通過可能の間隙をもつめっき浴の液面に設けられた1対のブレード部材。
現像処理済み感光材料がめっき槽に入る個所に設けるブレードについて説明する。ブレードは、感光材料の非通過時にはその先端部同士が接触して密着するようにして通路に取り付けられることが好ましいが、液面変動が抑止できる範囲内の若干の隙間があっても構わない。感光材料の通過時には、感光材料の進入によって先端部が押し広げられるような構成となっていることが好ましい。このブレードは、通路に取り付けられる基部と先端に向かって厚さが漸減する自由端(先端部ということもある)を有するものが好ましいが、基部から先端部へ向けてその厚さがほぼ同一のものであってもよい。感光材料の表面に対するブレードの平均傾斜角度は一般に10〜70°程度とするのがよく、特に20〜45°程度とするのが好ましい。また、ブレードの基部から先端へ至る長さは、10〜50mmとするのが好ましく、特に好ましくは15〜25mmとするのがよい。対向して設置した1対のブレードにおける感材の非通過時でのブレードの先端部同士の重なり部分の長さは、1〜10mm程度、特に2〜5mm程度とするのがよい。
【0102】
図3及び図4は、この目的に適用されるブレードの諸態様を示したものである。便宜上、いずれも左側がめっき槽上側空間で右側がめっき浴であり現像処理済み感光材料の進行方向を左から右に、液面を上下方向に示してある。
図3は、処理槽の壁面に1対のシングルブレード31を設けて感光材料の液中への浸入通路を形成した状態を示す液中浸入通路断面図である。固定部材32は、めっき槽の槽壁、槽壁に取り付けたブレード固定用部材、前記(1)に述べた浮き板、などのいずれかを表す。
【0103】
図4の態様では、図3同様にシングルブレード31を用いているが、ブレードは対を形成してなく、現像済み感光材料通路の片側では、感光材料の一方の面は槽壁32に接しており、他の面がブレード31の自由端と接しており、この構造によってシール手段が形成されている。
図3、図4のいずれにおいても、ブレードの自由端は、必ずしも感光材料と接している必要はなく、液面変動が抑止できるのであれば、ブレード間に隙間があってもよい。
【0104】
ブレードの材質は、各処理液に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム等の各種ゴム、ポリウレタン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の軟質樹脂等の弾性材料が挙げられる。特に耐久性、液もれの点からポリウレタンが好ましい。
【0105】
ブレード同士の密着力は、ブレードの弾性力により与えられているが、ブレードの先端部内に磁性材料を配合し(例えば、ゴム磁石のようなもの)、先端部同士を吸引させて密着力を与え、または高めることも可能である。また、感光材料がブレードと摺動しても、乳剤面のキズ付き等の悪影響はほとんど生じないが、これが無視できない場合、または、摺動抵抗の減少を図る場合には、ブレードの内側面に平滑化処理を施し、または内側面にシリコーン、テフロン等の潤滑剤をコーティングする等の表面処理を施すことで対応すればよい。
また、ブレードが感光材料と接触しない構造であれば、ブレードがめっきされる面に傷をつけるリスクが避けられるので、上記以外の部材を適宜選択することができる。
【0106】
(3)槽内循環用(攪拌用)ノズルの吐出口のすべてをめっき浴の液面よりも50mm以上深部に配置させためっき浴槽。
めっきむらは、液面付近のめっき液の攪拌によって引き起こされ、浴槽の深部では液が攪拌されてもむらは生じにくいので、液面近くのみ攪拌用ノズルを置かなければむらが抑止される。攪拌用ノズルの吐出口の位置は、液面から50mm以上離すことが好ましい。
槽内循環用(攪拌用)ノズルの吐出口を液面変動抑止可能に配しためっき槽の典型例を図4に示す。図4において、めっき槽40の循環パイプ43には循環液の吐出口44a,44b,44c,44dが設けられいるが、いずれもめっき槽の中間から底部に配置されていて、液面42に近い上面には設けられていない。
【0107】
(4)めっき浴中へ感光材料が搬送移動されている期間は、めっき浴の液面から50mm以内に吐出口を有する液循環用ノズルの循環停止などが挙げられる。
【0108】
(5)また、上記(4)に代えて液面変動が±10mm以下になるように槽内循環(攪拌)の循環量を制御する方法も簡易で実際的である。
【0109】
現像処理と好ましくは定着処理に続く電解めっき処理は、公知の電解めっき処理を用いることができ、これによってバインダーに覆われて通常不均一形状と不均一太さのために導電性が不十分なフィラメント状銀の導電性が強化され、さらに現像済み試料がメッキ液に浸漬される際の液面の変動を抑制することによって未露光部の透光性と露光部の導電性とがともに優れた導電性膜を形成することができる。
【0110】
[酸化処理]
本発明では、現像処理後の金属銀部、並びにめっき処理後に形成される導電性金属部には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後、あるいはめっき処理後に行うことができ、さらに現像処理後とめっき処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0111】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解めっき速度を促進させることができる。
【0112】
[導電性金属部]
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
本発明では、導電性金属部は、前述した露光及び現像処理により形成された金属銀部をめっき処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
金属銀は、露光部に形成させる場合と、感光材料としてオートポジ材料を用いたり、現像処理に反転現像を用いるなどによって未露光部に形成させると場合がある。本発明においては、透明性を高めるために露光部に金属銀を形成させることが好ましい。
前記金属部に担持させる導電性金属としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、又はこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属は、銅、アルミニウム又はニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属として常磁性金属を用いることが好ましい。
【0113】
上記導電性金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、導電性金属部に含まれる導電性金属は銅であることが好ましく、少なくともその表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0114】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上100質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。銀を20質量%以上含有すれば、めっき処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。
【0115】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、103Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましい。
【0116】
本発明の導電性金属部は、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記導電性金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
【0117】
透光性電磁波シールド材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は40μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は40μm未満であることが好ましく、35μm未満であることがより好ましく、30μm未満であることがさらに好ましく、25μm未満であることが最も好ましい。
【0118】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。
【0119】
[光透過性部]
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波シールド膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0120】
光透過性部は、透過性を向上させる観点から実質的に物理現像核を有しないことが好ましい。本発明は、従来の銀錯塩拡散転写法とは異なり、未露光のハロゲン化銀を溶解し、可溶性銀錯化合物に変換させた後、拡散させる必要がないため、光透過性部には物理現像核を実質的に有しないことが好ましい。
ここに、「実質的に物理現像核を有しない」とは、光透過性部における物理現像核の存在率が0〜5%の範囲であることをいう。
【0121】
本発明における光透過性部は、前記銀塩含有層を露光及び現像処理することにより、金属銀部と共に形成される。光透過性部は、透過性を向上させる観点から、前記現像処理後、さらには物理処理又はめっき処理後に酸化処理を行うことが好ましい。
【0122】
[透光性電磁波シールド膜の層構成]
本発明の透光性電磁波シールド膜における支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
【0123】
めっき処理前の支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、かつ2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。このようにして形成された多層構造のパターン状金属銀部を含む透光性電磁波シールド膜は、高密度なプリント配線板として利用することができる。
【0124】
導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
本発明では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらにめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する透光性電磁波シールド膜であっても容易に形成することができる。
【0125】
なお、従来のエッチングを用いた方法では、金属薄膜の大部分をエッチングで除去、廃棄する必要があったが、本発明では必要な量だけの導電性金属を含むパターンを支持体上に設けることができるため、必要最低限の金属量だけを用いればよく、製造コストの削減及び金属廃棄物の量の削減という両面から利点がある。
【0126】
[電磁波シールド膜以外の機能性膜]
本発明の電磁波シールド膜は、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層と組合わせて用いられる。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板などの透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼ぶ。
【0127】
反射防止機能を付与した反射防止層は、外光の反射を抑えてコントラストの低下を抑えるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。また必要であればノングレアー層またはアンチグレアー層を設けることもできる。ノングレアー層やアンチグレアー層は、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は熱硬化あるいは光硬化等を用いることができる。また、ノングレア処理またはアンチグレア処理をしたフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。更に必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0128】
近赤外線吸収層は、金属錯体化合物等の近赤外線吸収色素を含有する層、または、銀スパッタ層等である。ここで銀スパッタ層とは、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。
【0129】
特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層は、PDPが青色を発光する蛍光体が青色以外に僅かであるが赤色を発光する特性を有しているため、青色に表示されるべき部分が紫がかった色で表示されるという問題があり、この対策として発色光の補正を行う層であり、595nm付近の光を吸収する色素を含有する。
【0130】
本発明の製造方法で得られる透光性電磁波シールド膜は、良好な電磁波シールド性及び透過性を有するため、透過性電磁波シールド材料として用いることができる。さらに、回路配線などの各種の導電性配線材料として用いることができる。特に本発明の透光性電磁波シールド膜は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板など、特にプラズマディスプレイパネルで用いられる透光性電磁波シールド膜として好適に用いることができる。
【0131】
[その他の透光性導電性膜の構成要素]
透光性電磁波シールド膜や透光性導電性膜で代表される本発明の透光性導電性膜について、さらに上記した以外の付帯構成要素について述べる。
(1)接着剤層
透光性電磁波シールド膜や透光性導電性膜(例えば透明電極)が、光学フィルターや、液晶表示板、プラズマディスプレーパネル、その他の画像表示グラットパネル、あるいはCCDに代表される撮像用半導体集積回路などに組み込まれる際には、接着層を介して接合される。
【0132】
本発明で用いる接着剤の屈折率は1.40〜1.70のものを使用することが好ましい。これは本発明で使用するプラスチックフィルム等の透明基材と接着剤の屈折率との関係で、その差を小さくして、可視光透過率が低下するのを防ぐためであり、屈折率が1.40〜1.70であると可視光透過率の低下が少なく良好である。
【0133】
本発明で用いられる接着剤は、また、加熱または加圧により流動する接着剤であることが好ましく、特に、200℃以下の加熱または1Kgf/cm2以上の加圧により流動性を示す接着剤であることが好ましい。このような接着剤を用いることにより、この接着剤の層に導電層が埋設されている本発明おける電磁波シールド性接着フィルムを被着体であるディスプレイやプラスチック板に接着剤層を流動させて接着することができる。流動できるので電磁波シールド性接着フィルムを被着体にラミネートや加圧成形、特に加圧成形により、また曲面、複雑形状を有する被着体にも容易に接着することができる。このためには、接着剤の軟化温度が200℃以下であると好ましい。電磁波シールド性接着フィルムの用途から、使用される環境が通常80℃未満であるので接着剤層の軟化温度は、80℃以上が好ましく、加工性から80〜120℃が最も好ましい。軟化温度は、粘度が1012ポイズ以下になる温度のことで、通常その温度では1〜10秒程度の時間のうちに流動が認められる。
【0134】
上記のような加熱または加圧により流動する接着剤としては、主に以下に示す熱可塑性樹脂が代表的なものとしてあげられる。たとえば天然ゴム(屈折率n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメチレン(n=1.465)、ホ゜リメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0135】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。これらの接着剤となるポリマーの軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好適で、150℃以下がさらに好ましい。電磁波シールド性接着フィルムの用途から、使用される環境が通常80℃以下であるので接着剤層の軟化温度は、加工性から80〜120℃が最も好ましい。一方、ポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの、以下同様)は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500以下では接着剤組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下するおそれがある。本発明で使用する接着剤には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。接着剤の層の厚さは、 10〜80μmであることが好ましく、導電層の厚さ以上で20〜50μmとすることが特に好ましい。
【0136】
また、幾何学図形を被覆する接着剤は、透明プラスチック基材との屈折率の差が0.14以下とされる。また透明プラスチック基材が接着層を介して導電性材料と積層されている場合においては、接着層と幾何学図形を被覆する接着剤との屈折率の差が0.14以下とされる。これは、透明プラスチック基材と接着剤の屈折率、または接着剤と接着層の屈折率が異なると可視光透過率が低下するためであり、屈折率の差が0.14以下であると可視光透過率の低下が少なく良好となる。そのような要件を満たす接着剤の材料としては、透明プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート(n=1.575;屈折率)の場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリアルコール・ポリグリコール型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式やハロゲン化ビスフェノールなどのエポキシ樹脂(いずれも屈折率が1.55〜1.60)を使うことができる。エポキシ樹脂以外では天然ゴム(n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.5125)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.4563)、ポリオキシプロピレン(n=1.4495)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.4591)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.4563)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.4665)、ポリビニルプロピオネート(n=1.4665)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)などを挙げることができる。これらは、好適な可視光透過率を発現する。
【0137】
一方、透明プラスチック基材がアクリル樹脂の場合、上記の樹脂以外に、ポリエチルアクリレート(n=1.4685)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t-ブチルアクリレート(n=1.4638)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.4728)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.4746)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.4868)、ポリテトラカルバニルメタクリレート(n=1.4889)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.4889)、ポリメチルメタクリレート(n=1.4893)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使うこともできる。
【0138】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートなども使うこともできる。特に接着性の点から、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートは分子内に水酸基を有するため接着性向上に有効であり、これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。接着剤の主成分となるポリマーの重量平均分子量は、1,000以上のものが使われる。分子量が1,000以下だと組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下する。
【0139】
接着剤の硬化剤としてはトリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどのアミン類、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの酸無水物、ジアミノジフェニルスルホン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、エチルメチルイミダゾールなどを使うことができる。 これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらの架橋剤の添加量は上記ポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の範囲で選択するのがよい。この添加量が、0.1重量部未満であると硬化が不十分となり、50重量部を越えると過剰架橋となり、接着性に悪影響を与える場合がある。本発明で使用する接着剤の樹脂組成物には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。そして、この接着剤の樹脂組成物は、透明プラスチック基材の表面に導電性材料で描かれた幾何学図形を設けた構成材料の基材の一部または全面を被覆するために、塗布され、溶媒乾燥、加熱硬化工程をへたのち、本発明に係る接着フィルムにする。上記で得られた電磁波シ−ルド性と透明性を有する接着フィルムは、該接着フィルムの接着剤によりCRT、PDP、液晶、ELなどのディスプレイに直接貼り付け使用したり、アクリル板、ガラス板等の板やシートに貼り付けてディスプレイに使用する。また、この接着フィルムは、電磁波を発生する測定装置、測定機器や製造装置の内部をのぞくための窓や筐体に上記と同様にして使用する。さらに、電波塔や高圧線等により電磁波障害を受ける恐れのある建造物の窓や自動車の窓等に設ける。そして、導電性材料で描かれた幾何学図形にはアース線を設けることが好ましい。
【0140】
透明プラスチック基材上の導電性材料が除去された部分は密着性向上のために意図的に凹凸を有していたり、導電性材料の背面形状を転写したりするためにその表面で光が散乱され、透明性が損なわれるが、その凹凸面に透明プラスチック基材と屈折率が近い樹脂が平滑に塗布されると乱反射が最小限に押さえられ、透明性が発現するようになる。さらに透明プラスチック基材上の導電性材料で描写された幾何学図形は、ライン幅が非常に小さいため肉眼で視認されない。またピッチも十分に大きいため見掛け上透明性を発現すると考えられる。一方、遮蔽すべき電磁波の波長に比べて、幾何学図形のピッチは十分に小さいため、優れたシールド性を発現すると考えられる。
【0141】
特開2003−188576号公報に示すように、本発明の電磁波シールド膜と他の基材とを貼り合わせるときは、透明基材フィルムと金属箔との積層は、透明基材フィルムとして、熱融着性の高いエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはアイオノマー樹脂等の熱融着性樹脂のフィルムを単独、または他の樹脂フィルムと積層して使用するときは、接着剤層を設けずに行なうことも可能であるが、通常は、接着剤層を用いたドライラミネート法等によって積層を行なう。接着剤層を構成する接着剤としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の接着剤を挙げることができ、これらの他、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等)を用いることもできる。
なお、上記公報の電磁波遮蔽用シートとは、本発明において「電磁波シールド膜」と記述している機能層を指す。
【0142】
一般的には、ディスプレイの表面はガラス製であるので、粘着剤を用いて貼り合わせるのは透明プラスチックフィルムとガラス板となり、その接着面に気泡が生じたり剥離が生じたりすると画像が歪む、表示色がディスプレイ本来のものと異なって見える等の問題が発生する。また、気泡および剥離の問題はいずれの場合でも粘着剤がプラスチックフィルムまたはガラス板より剥離することにより発生する。この現象は、プラスチックフィルム側、ガラス板側ともに発生する可能性が有り、より密着力の弱い側で剥離が発生する。従って、高温での粘着剤とプラスチックフィルム、ガラス板との密着力が高いことが必要となる。具体的には、透明プラスチックフィルム及びガラス板と粘着剤層との密着力は80℃において10g/cm以上であることが好ましい。30g/cm以上であることが更に好ましい。ただし、2000g/cmを超えるような粘着剤は貼り合わせ作業が困難と成るために好ましくない場合がある。ただし、かかる問題点が発生しない場合は問題なく使用できる。さらに、この粘着剤の透明プラスチックフィルムと面していない部分に不必要に他の部分に接触しないように合い紙(セパレーター)を設けることも可能である。
【0143】
粘着剤は透明であるものが好ましい。具体的には全光線透過率が70%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、85〜92%が最も好ましい。さらに、霞度が低いことが好ましい。具体的には、0〜3%が好ましく、0〜1.5%が更に好ましい。本発明で用いる粘着剤は、ディスプレイ本来の表示色を変化させないために無色であることが好ましい。ただし、樹脂自体が有色であっても粘着剤の厚みが薄い場合には実質的には無色とみなすことが可能である。また、後述のように意図的に着色を行なう場合も同様にこの範囲ではない。
【0144】
上記の特性を有する粘着剤としては例えば、アクリル系樹脂、α−オレフィン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル共重合物系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアセテート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの内、アクリル系樹脂が好ましい。同じ樹脂を用いる場合でも、粘着剤を重合法により合成する際に架橋剤の添加量を下げる、粘着性付与材を加える、分子の末端基を変化させるなどの方法によって、粘着性を向上させることも可能である。また、同じ粘着剤を用いても、粘着剤を貼り合わせる面、すなわち、透明プラスチックフィルムまたはガラス板の表面改質を行なうことにより密着性を向上させることも可能である。このような表面の改質方法としては、コロナ放電処理、プラズマグロー処理等の物理的手法、密着性を向上させるための下地層を形成するなどの方法が挙げられる。
【0145】
透明性、無色性、ハンドリング性の観点から、粘着剤層の厚みは、5〜50μm程度であることが好ましい。粘着剤層を接着剤で形成する場合は、その厚みは上記範囲内で薄くするとよい。具体的には1〜20μm程度である。ただし、上記のようにディスプレイ自体の表示色を変化させず、透明性も上記の範囲に入っている場合には、厚みが上記範囲を超えてもよい。
【0146】
(2)剥離可能な保護フィルム
保護フィルムは、必ずしも、電磁波遮蔽用シート1の両面に有していなくてもよく、問い2003−188576号公報の図2(a)に示すように、積層体10のメッシュ状の金属箔11’上に保護フィルム20を有するのみで、透明基材フィルム14側に有していなくてもよい。また、上記公報の図2(b)に示すように、積層体10の透明基材フィルム14側に保護フィルム30を有するのみで、金属箔11’上に有していなくてもよい。なお、上記公報の図1および図2において共通な符号を付した部分は同じものを示すものである。
【0147】
本発明の電磁波遮蔽用シート1における透明基材フィルム14、および開孔部が密に配列したメッシュ状の金属箔11’からなる透明性を有する電磁波遮蔽層とが少なくとも積層されて構成された積層体の層構成、および積層体の製造プロセスについて、次に上記公報の図3(a)〜(f)を引用しながら説明する。なお、保護フィルム20または/および保護フィルム30の積層については、積層体の製造プロセスの説明の後に、改めて説明する。
【0148】
まず、上記公報の図3(a)に示すように、透明基材フィルム14および金属箔11が接着剤層13を介して積層された積層体を準備する。透明基材フィルム14としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリサルホン樹脂、もしくはポリ塩化ビニル樹脂等のフィルムを用いることができる。通常は、機械的強度が優れ、透明性が高いポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂のフィルムを好ましく用いる。透明基材フィルム14の厚みは、特に限定されないが、機械的強度があり、折り曲げに対する抵抗性を大きくする点から、50μm〜200μm程度であることが好ましく、さらに厚みが増してもよいが、電磁波遮蔽用シート1を他の透明基板に積層して使用する場合には、必ずしも、この範囲以上の厚みでなくてもよい。必要に応じ、透明基材フィルム14の片面もしくは両面にコロナ放電処理を施したり、あるいは易接着層を設けるとよい。
【0149】
電磁波遮蔽用シート1は、後に上記公報の図4を引用して説明するように、上記の積層体を赤外線カットフィルター層を介する等して基板上に積層したものの表裏に、さらに、最表面の強化、反射防止性の付与、防汚性の付与等の効果を有するシートを積層して使うものであるので、上記の保護フィルムは、このようなさらなる積層の際には剥離する必要があり、このため、保護フィルムの金属箔側への積層は、いわゆる剥離可能に行なうことが望ましい。
【0150】
保護フィルムは金属箔上に積層した際の剥離強度は5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要する上、剥離の際に、メッシュ状の金属箔が透明基材フィルム(もしくは接着剤層から)剥離する恐れがあり、やはり好ましくない。
【0151】
本発明の電磁波遮蔽用シート1において、透明基材フィルム14上に接着剤層13を介してメッシュ状の金属箔が積層された積層体(黒化層を伴なってもよい。)の下面側、即ち、透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、透明基材フィルムの下面が、取扱い中や不用意な接触により損傷しないよう、また、金属箔上にレジスト層を設けてエッチングする各工程において、特にエッチングの際に透明基材フィルムの露出面が汚染もしくは侵食を受けないよう、保護するためのものである。
【0152】
前述した保護フィルムの場合と同様、この保護フィルムも、積層体のさらなる積層の際には剥離する必要があるので、保護フィルムの透明基材フィルム側への積層も、剥離可能に行なうことが望ましく、剥離強度としては、保護フィルムと同様、5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要するからである。
【0153】
透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、エッチング条件に耐える、例えば、50℃程度のエッチング液、特にそのアルカリ成分によって数分間の浸漬中、侵食されないものであることが好ましく、あるいは、ドライエッチングの場合には100℃程度の温度条件に耐えるものであることが望ましい。また、感光性樹脂層を積層する際に、積層体をディップコーティング(浸漬コーティング)するときは、コーティング液が積層体の反対面にも付着するので、エッチング等の工程の際に、感光性樹脂が剥離してエッチング液の中を漂うことがないよう、感光性樹脂の密着力が得られるものであることが好ましいし、エッチング液を用いるときは、塩化鉄や塩化銅等を含むエッチング液による汚染に耐える耐久性、もしくは、アルカリ液等のレジスト除去液による侵食もしくは汚染等に耐える耐久性を有するものであることが好ましい。
【0154】
上記の各点を満足させるために、保護フィルムを構成するフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、もしくはアクリル樹脂等の樹脂フィルムを用いることが好ましく、また、上記した観点により、少なくとも、保護フィルムの、積層体に適用した際に最表面となる側の面にコロナ放電処理を施しておくか、易接着層を積層しておくことが好ましい。
【0155】
また、保護フィルムを構成する粘着剤としては、アクリル酸エステル系、ゴム系、もしくはシリコーン系のものを使用することができる。
【0156】
上記した保護フィルム用のフィルムの素材、および粘着剤の素材は、金属箔側に適用する保護フィルムについても、そのまま適用できるので、両保護フィルムとしては、異なるものを使用してもよいが、同じ物を、両保護フィルムとすることができる。
【0157】
(3)黒化処理
特開2003−188576に示す構成図を例にして述べると、金属箔は、透明基材フィルム側に、黒化処理による黒化層(を有したものであってよく、防錆効果に加え、反射防止性を付与することができる。黒化層は、例えば、Co−Cu合金めっきによって形成され得るものであり、金属箔11の表面の反射を防止することができる。さらにその上に防錆処理としてクロメート処理をしてもよい。クロメート処理は、クロム酸もしくは重クロム酸塩を主成分とする溶液中に浸漬し、乾燥させて防錆被膜を形成するもので、必要に応じ、金属箔の片面もしくは両面に行なうことができるが、市販のクロメート処理された銅箔等を利用してもよい。なお、予め黒化処理された金属箔を用いないときは、後の適宜な工程において、黒化処理してもよい。なお、黒化層の形成は、後述する、レジスト層となり得る感光性樹脂層を、黒色に着色した組成物を用いて形成し、エッチングが終了した後に、レジスト層を除去せずに残留させることによっても形成できるし、黒色系の被膜を与えるめっき法によってもよい。
【0158】
また、黒化層を含む構成の例としては、特開平11−266095に示した構成であってもよい。上記の電磁波遮蔽板において、例えば、横方向のラインxと縦方向のラインyとが交叉して構成するメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等を構成する黒化層としては、次に述べる考え方に基づいて適宜に選択して利用することにより形成することができる。本発明においては、主目的であるメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する方法として二つの方法があり、その一つの方法は、金属めっき法であり、他の方法は、エッチング法である。本発明においては、上記のいずれかの方法を採用することにより、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の形成法、使用する材料等が異なる。すなわち、本発明において、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の上に、導電性パタ−ンPを金属めっき法等で形成するためには、金属めっきが可能な導電性黒化層が必要であり、また、エッチング法または電着法等により最終工程において黒化する場合には、非導電性材料等を使用して非導電性黒化層を形成することができる。上記の導電性黒化層は、一般に、導電性金属化合物、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の化合物を使用して形成することができ、また、非導電性黒化層は、ペ−スト状黒色高分子材料、例えば、黒色インキ等、あるいは、黒化化成材料、例えば、金属めっき表面を化成処理してなる黒色化合物を形成したもの、更には、電着性イオン性高分子材料、例えば、電着塗装材料等を使用して形成することができる。本発明においては、上記のような黒化層形成方法を利用し、電磁波遮蔽板の製造法における製造工程等に応じた適宜の方法を選択し、それを採用して黒化層を形成することができる。
【0159】
次に、本発明における黒化層を設ける方法としては、特開平11−266095公報の
図5に示すように、上記で作製した金属板等の導電性基板11の上に電着を阻害する絶縁性膜で構成するメッシュ状のレジストパタ−ン12を有する電着基板14を、まず、例えば、黒化銅、黒化ニッケル等の電解液中に浸漬し、電気化学的な公知のめっき法でめっきして、黒化銅層、あるいは、黒化ニッケル層等からなるメッシュ状の第2の黒化層3bを形成する。なお、本発明において、上記の黒色めっき浴は、硫酸ニッケル塩を主成分とする黒色めっき浴を使用することができ、更に、市販の黒色めっき浴も同様に使用することができ、具体的には、例えば、株式会社シミズ製の黒色めっき浴(商品名、ノ−ブロイSNC、Sn−Ni合金系)、日本化学産業株式会社製の黒色めっき浴(商品名、ニッカブラック、Sn−Ni合金系)、株式会社金属化学工業製の黒色めっき浴(商品名、エボニ−クロム85シリ−ズ、Cr系)等を使用することができる。また、本発明においては、上記の黒色めっき浴としては、Zn系、Cu系、その他等の種々の黒色めっき浴を使用することができる。次に、本発明においては、同じく、上記公報図5に示すように、上記で第2の黒化層3bを設けた電着基板14を、電磁波遮蔽用の金属の電解液中に浸漬して、該電着基板14の第2の黒化層3bに相当する箇所に、所望の厚さにメッシュ状の導電性パタ−ン4を積層、電着する。上記において、メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する材料としては、前述の良導電性物質としての金属が最も有利な材料として使用することがでる。而して、上記の金属電着層を形成する場合には、汎用金属の電解液を使用することができるので、多種類の、安価な金属電解液が存在し、目的に適った選択を自由に行うことができるという利点がある。一般に、安価な良導電性金属としては、Cuが多用されており、本発明においても、Cuを使用することが、その目的にも合致して有用なものであり、勿論、その他の金属も同様に用いることができるものである。次にまた、本発明において、メッシュ状の導電性パタ−ン4は、単一金属層のみで構成する必要はなく、例えば、図示しないが、上記の例のCuからなるメッシュ状の導電性パタ−ンPは、比較的に柔らかく傷がつき易いので、その保護層として、NiやCr等の汎用の硬質金属を用いて2層からなる金属電着層とすることもできる。次に、本発明においては、同じく、図5に示すように、上記でメッシュ状の導電性パタ−ン4を形成した後、例えば、該メッシュ状の導電性パタ−ン4の表面を化成処理して、具体的には、例えば、導電性パタ−ンPが銅(Cu)からなるものであれば、硫化水素(H2 S)液処理して、銅の表面を硫化銅(CuS)として黒化して、該メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する金属電着層の表面を黒化処理して第1の黒化層3aを形成し、上記の第2の黒化層3b、導電性パタ−ン層4、および、第1の黒化層3aの順で順次に重層して構成したメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成するものである。なお、本発明において、上記の銅表面の黒化処理剤としては、硫化物系や硫化物系化合物を用いて容易に製造でき、更にまた、市販品も多種類の処理剤があり、例えば、商品名・コパ−ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ−ブラックNo.65等(アイソレ−ト化学研究所製)、商品名・エボノ−ルCスペシャル(メルテックス株式会社製)等を使用することができる。
【0160】
上記の本発明に係わる電磁波遮蔽板において、エッチングレジストパタ−ン35は、除去してもよく、また、残留させてもよく、更に、エッチングレジストパタ−ン35を除去する場合には、エッチングレジストパタ−ン35を除去後、残留する導電性金属層33の表面を黒化処理することができる。而して、上記の黒化処理には、例えば、ブラック銅(Cu)、ブラックニッケル(Ni)等のめっき法や化学的な黒化処理法等の公知の黒化処理方法を利用して行うことができる。
(4)複合機能層
次に機能性フィルムの機能について説明する。
ディスプレイは、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうので、機能性フィルム(C)は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、または、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能を有していることが必要である。ディスプレイ用フィルタ表面の可視光線反射率が低いと、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。
【0161】
反射防止性を有する機能性フィルムは、反射防止膜を有し、具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものがあるが、これらに限定されるものではない。反射防止性を有する機能性フィルム(C)の表面の可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0162】
防眩性を有する機能性フィルムは、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光線に対して透明な防眩膜を有している。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、基体上に塗布、硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、上記の熱硬化型または光硬化型樹脂を基体に塗布し、所望のグロス値または表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても防眩性を得ることができるが、必ずしもこれら方法に限定されるものではない。防眩性を有する機能性フィルムのヘイズは0.5%以上20%以下であり、好ましくは1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると透過像鮮明度が低くなる傾向がある。
【0163】
ディスプレイ用フィルタに耐擦傷性を付加させるために、機能性フィルムがハードコート性を有していることも好適である。ハードコート膜としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。これら膜の厚さは、1〜50μm程度である。ハードコート性を有する機能性フィルムの表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともH、好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。ハードコート膜上に反射防止膜および/または防眩膜を形成すると、耐擦傷性・反射防止性および/または防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。
【0164】
ディスプレイ用フィルタには、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理が必要とされる場合がある。従って、静電気防止能を付与するために、機能性フィルムが導電性を有していても良い。この場合に必要とされる導電性は面抵抗で1011Ω/□程度以下であれば良い。導電性を付与する方法としてはフィルムに帯電防止剤を含有させる方法や導電層を形成する方法が挙げられる。帯電防止剤として具体的には、商品名ペレスタット(三洋化成社製)、商品名エレクトロスリッパー(花王社製)等が挙げられる。導電層としてはITOをはじめとする公知の透明導電膜やITO超微粒子や酸化スズ超微粒子をはじめとする導電性超微粒子を分散させた導電膜が挙げられる。ハードコート膜や反射防止膜、防眩膜が、導電膜を有していたり導電性微粒子を含有していると好適である。
【0165】
機能性フィルム(C)表面が防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。防汚性を有するものとしては、水および/または油脂に対して非濡性を有するものであって、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素系防汚剤として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。反射防止膜に、これら防汚性のある層を用いると、防汚性を有する反射防止膜が得られて好適である。
【0166】
機能性フィルムは、後述する色素や高分子フィルムの劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を有していることが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、後述する上記の高分子フィルムに紫外線吸収剤を含有させることや紫外線吸収膜を付与する方法が挙げられる。
【0167】
ディスプレイ用フィルタは、常温常湿よりも高い温度・湿度環境化で使用されると、フィルムを透過した水分により後述する色素が劣化したり、貼り合せに用いる粘着材中や貼り合せ界面に水分が凝集して曇ったり、水分による影響で粘着材中の粘着付与剤等が相分離して析出して曇ったりすることがあるので、機能性フィルムがガスバリア性を有していると好ましい。このような色素劣化や曇りを防ぐ為には、色素を含有する層や粘着材層への水分の侵入を防ぐことが肝要であり、機能性フィルムの水蒸気透過度が10g/m・day以下、好ましくは5g/m・day以下であることが好適である。
【0168】
高分子フィルム、導電メッシュ層、機能性フィルムおよび必要に応じて後述する透明成型物は、可視光線に対して透明な任意の粘着材または接着剤を介して貼り合わされる。粘着材または接着剤として具体的にはアクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等が挙げられ、実用上の接着強度があればシート状のものでも液状のものでもよい。粘着材は感圧型接着剤でシート状のものが好適に使用できる。シート状粘着材貼り付け後または接着材塗布後に各部材をラミネートすることによって貼り合わせを行う。液状のものは塗布、貼り合わせ後に室温放置または加熱により硬化する接着剤である。塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等が挙げられるが、接着剤の種類、粘度、塗布量等から考慮、選定される。層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。粘着材層を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。本発明においては、前述の可視光線に対して透明な粘着材または接着剤を透光性粘着材と呼ぶ。
【0169】
本発明においては、導電性メッシュ層上に機能性フィルムを貼り合わせる際、特に透光性粘着材層を用いる。透光性粘着材層に用いる透光性粘着材の具体例としては前記と同じだが、その厚さが導電性メッシュ層の凹部を十分埋め込むことができることが肝要である。導電性メッシュ層の厚さより薄すぎると、埋め込み不十分で間隙が出来て凹部に気泡を噛み込み、濁りのある、透光性の不足したディスプレイ用フィルタとなってしまう。又、厚すぎると粘着材を作製するコストがアップしたり部材のハンドリングが悪くなる等の問題が生じる。導電性メッシュ層の厚さがdμmの時、透光性粘着材の厚さは(d−2)〜(d+30)μmであることが好ましい。
【0170】
ディスプレイ用フィルタの可視光線透過率は、30〜85%が好ましい。更に好ましくは35〜70%である。30%未満であると輝度が下がりすぎ視認性が悪くなる。また、ディスプレイ用フィルタの可視光線透過率が高すぎると、ディスプレイのコントラストを改善できない。尚、本発明における可視光線透過率は、可視光線領域における透過率の波長依存性からJIS(R−3106)に従って計算されるものである。
【0171】
また、機能性フィルムを透光性粘着材層を介して導電性メッシュ層上に貼り合せると、凹部に気泡を噛み込み、濁って透光性が不十分になることがあるが、この場合、例えば加圧処理すると、貼り合わせ時に部材間に入り込んだ気体を脱泡または、粘着材に固溶させ、濁りを無くして透光性を向上させることができる。加圧処理は、上記の構成の状態で行っても、本発明のディスプレイ用フィルタの状態で行っても良い。
【0172】
加圧方法としては、平板間に積層体を挟み込みプレスする方法、ニップロール間を加圧しながら通す方法、加圧容器内に入れて加圧する方法が挙げられるが、特に限定はされない。加圧容器内で加圧する方法は、積層体全体に一様に圧力がかかり加圧のムラが無く、また、一度に複数枚の積層体を処理できるので好適である。加圧容器としてはオートクレーブ装置を用いることが出来る。
【0173】
加圧条件としては、圧力が高い程、噛み込んだ気泡を無くすことが出来、且つ、処理時間を短くすることが出来るが、積層体の耐圧性、加圧方法の装置上の制限から、0.2MPa〜2MPa程度、好ましくは0.4〜1.3MPaである。また、加圧時間は、加圧条件によって変わり特に限定されないが、長くなりすぎると処理時間がかかりコストアップとなるので、適当な加圧条件において保持時間が6時間以下であることが好ましい。特に加圧容器の場合は、設定圧力に到達後、10分〜3時間程度保持することが好適である。
【0174】
また、加圧時に同時に加温すると好ましい場合がある。加温することによって、透光性粘着材の流動性が一時的に上がり噛み込んだ気泡を脱泡しやすくなったり、気泡が粘着材中に固溶しやすくなる。加温条件としてはディスプレイ用フィルタを構成する各部材の耐熱性により、室温以上80℃以下程度であるが、特に限定を受けない。
【0175】
さらにまた、加圧処理、または、加圧加温処理は、ディスプレイ用フィルタを構成する各部材間の貼り合わせ後の密着力を向上させることが出来、好適である。
【0176】
本発明のディスプレイ用フィルタは、高分子フィルムの導電性メッシュ層が形成されていない他方の主面に透光性粘着材層を設ける。透光性粘着材層に用いる透光性粘着材の具体例は前述の通りであり、特に限定はされない。厚みも、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。透光性粘着材層を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。
【0177】
透光性粘着材層上に離型フィルムが形成されていても良い。すなわち、少なくとも機能性フィルム/透光性粘着材層/導電性メッシュ層/高分子フィルム/透光性粘着材層)/離型フィルムである。離型フィルムは、粘着材層と接する高分子フィルムの主面上にシリコーン等をコーティングしたものである。本発明のディスプレイ用フィルタを後述の透明成形物の主面に貼り合せる際、または、ディスプレイ表面、例えばプラズマディスプレイパネルの前面ガラス上に貼り合せる際には、離型フィルムを剥離して透光性粘着材層を露出せしめた後に貼り合わせる。
【0178】
本発明のディスプレイ用フィルタは、主として各種ディスプレイから発生する電磁波を遮断する目的で用いられる。好ましい例として、プラズマディスプレイ用フィルターが挙げられる。
【0179】
前述した様にプラズマディスプレイは強度の近赤外線を発生する為、本発明のディスプレイ用フィルタは、実用上問題無いレベルまで電磁波だけでなく近赤外線もカットする必要がある。波長領域800〜1000nmにおける透過率を25%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下とすることが必要である。また、プラズマディスプレイに用いるディスプレイ用フィルタはその透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求される。これは、プラズマディスプレイの発光特性およびコントラストを維持または向上させる必要があったり、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。さらにまた、カラープラズマディスプレイはその色再現性が不十分と言われており、その原因である蛍光体または放電ガスからの不要発光を選択的に低減することが好ましい。特に赤色表示の発光スペクトルは、波長580nmから700nm程度までにわたる数本の発光ピークを示しており、比較的強い短波長側の発光ピークにより赤色発光がオレンジに近い色純度の良くないものとなってしまう問題がある。これら光学特性は、色素を用いることによって制御できる。つまり、近赤外線カットには近赤外線吸収剤を用い、また、不要発光の低減には不要発光を選択的に吸収する色素を用いて、所望の光学特性とすることが出来、また、ディスプレイ用フィルタの色調も可視領域に適当な吸収のある色素を用いて好適なものとすることができる。
【0180】
色素を含有させる方法としては、(1)色素を少なくとも1種類以上、透明な樹脂に混錬させた高分子フィルムまたは樹脂板、(2)色素を少なくとも1種類以上、樹脂または樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルムまたは樹脂板、(3)色素を少なくとも1種類以上を、樹脂バインダーと有機系溶媒に加え、塗料とし、高分子フィルムまたは樹脂板上にコーティングしたもの、(4)色素を少なくとも1種類以上を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上選択できるが、これらに限定されない。本発明でいう含有とは、基材または塗膜等の層または粘着材の内部に含有されることは勿論、基材または層の表面に塗布した状態を意味する。
【0181】
上記の色素は可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料、または、近赤外線吸収剤であって、その種類は特に限定されるものではないが、例えばアントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、イモニウム系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系、ジチオール系化合物、ジイミニウム系化合物等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、ディスプレイ用フィルタに要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。
【0182】
プラズマディスプレイパネルはパネル表面の温度が高く、環境の温度が高いときは特にディスプレイ用フィルタの温度も上がるため、色素は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。また、耐熱性に加えて色素によっては耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。劣化するとディスプレイ用フィルタの透過特性が変わってしまい、色調が変化したり近赤外線カット能が低下してしまう。さらには、媒体または塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。また、本発明においては異なる吸収波長を有する色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させても良いし、色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していても良い。
【0183】
上記の色素を含有する方法(1)〜(4)は、本発明においては、色素を含有する高分子フィルム(A)、色素を含有する機能性フィルム(C)、色素を含有する透光性粘着材(D1)、(D2)、その他貼り合わせに用いられる色素を含有する透光性の粘着材または接着剤のいずれか1つ以上の形態をもって、本発明のディスプレイ用フィルタに使用できる。
【0184】
一般に色素は紫外線で劣化しやすい。ディスプレイ用フィルタが通常使用条件下で受ける紫外線は、太陽光等の外光に含まれるものである。従って、色素の紫外線による劣化を防止する為には、色素を含有する層自身および該層より外光を受ける人側の層から選ばれる少なくとも1層に、紫外線カット能を有する層を有していることが好適である。例えば、高分子フィルム(A)が色素を含有する場合、透光性粘着材層および/または機能性フィルムが、紫外線吸収剤を含有したり、紫外線カット能を有する機能膜を有していれば、外光が含む紫外線から、色素を保護できる。色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット能を有する機能膜は、紫外線吸収剤を含有する塗膜であっても、紫外線を反射または吸収する無機膜であっても良い。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。尚、紫外線カット能を有する層またはフィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。色素を含有する機能性フィルムにおいては、色素を含有する層が形成されている場合はその層よりも人側のフィルムまたは機能膜が紫外線カット能を有すれば良く、高分子フィルムが色素を含有する場合はフィルムより人側に紫外線カット能を有する機能膜や機能層を有していれば良い。
【0185】
色素は、金属との接触によっても劣化する場合がある。このような色素を用いる場合、色素は導電メッシュ層と出来るだけ接触しない様に配置することが更に好ましい。具体的には色素含有層が機能性フィルム、高分子フィルム、透光性粘着材層であることが好ましく、特には透光性粘着材層であることが好ましい。
【0186】
本発明のディスプレイ用フィルタは、高分子フィルム(A)、導電性メッシュ層(B)、機能性フィルム(C)、透光性粘着材層(D1)および透光性粘着材層(D2)が、(C)/(D1)/(B)/(A)/(D2)の順に構成され、好ましくは導電性メッシュ層(B)と高分子フィルム(A)とからなる導電性メッシュフィルムと機能性フィルムとが透光性粘着剤層(D1)で貼合され、高分子フィルム(A)の導電性メッシュ層(B)とは反対側の主面に透光性粘着剤層(D2)が付されている。
【0187】
本発明のディスプレイ用フィルタをディスプレイに装着する際には機能性フィルム(C)を人側に、透光性粘着剤層(D2)がディスプレイ側となるように装着する。
【0188】
本発明のディスプレイ用フィルタを、ディスプレイの前面に設けて使用する方法としては、後述の透明成形物(E)を支持体とした前面フィルタ板として使用する方法、ディスプレイ表面に透光性粘着材層(D2)を介して貼り合せて使用する方法がある。前者の場合、ディスプレイ用フィルタの設置が比較的容易であり、支持体により機械的強度が向上し、ディスプレイの保護に適している。後者の場合は、支持体が無くなることにより軽量化・薄化が可能であり、また、ディスプレイ表面の反射を防止することが出来、好適である。
【0189】
透明成形物としては、ガラス板、透光性のプラスチック板があげられる。機械的強度や、軽さ、割れにくさからは、プラスチック板が好ましいが、熱による変形等の少ない熱的安定性からガラス板も好適に使用できる。プラスチック板の具体例を挙げると、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をはじめとするアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、透明ABS樹脂等が使用できるが、これらの樹脂に限定されるものではない。特にPMMAはその広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用できる。プラスチック板の厚みは十分な機械的強度と、たわまずに平面性を維持する剛性が得られればよく、特に限定されるものではないが、通常1mm〜10mm程度である。ガラスは、機械的強度を付加するために化学強化加工または風冷強化加工を行った半強化ガラス板または強化ガラス板が好ましい。重量を考慮すると、その厚みは1〜4mm程度である事が好ましいが、特に限定されない。透明成形物はフィルムを貼り合せる前に必要な各種公知の前処理を行うことが出来るし、ディスプレイ用フィルタ周縁部となる部分に黒色等の有色の額縁印刷を施しても良い。
【0190】
透明成形物を用いる場合のディスプレイ用フィルタの構成は、少なくとも機能性フィルム(C)/透光性粘着材層(D1)/導電性メッシュ層(B)/高分子フィルム(A)/透光性粘着材層(D2)/透明成形物(E)である。また、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、機能性フィルム(C)が透光性粘着材層を介して設けられても良い。この場合、人側に設けられる機能性フィルム(C)と同じ機能・構成を有する必要は無く、例えば、反射防止能を有している場合は、支持体を有するディスプレイ用フィルタの裏面反射を低減することができる。同じく、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、反射防止膜等の機能膜(C2)を形成しても良い。この場合は、機能性膜(C2)を人側にしてディスプレイに設置することもできるが、前述の通り、紫外線カット能を有する層を色素含有層および色素含有層より人側の層に設けることが好ましい。
【0191】
電磁波シールドを必要とする機器には、機器のケース内部に金属層を設けたり、ケースに導電性材料を使用して電磁波を遮断する必要があるが、ディスプレイの如く表示部に透明性が必要である場合には、本発明のディスプレイ用フィルタの如く透光性の導電層を有した窓状の電磁波シールドフィルタを設置する。ここで、電磁波は導電層において吸収されたのち電荷を誘起するため、アースをとることによって電荷を逃がさないと、再びディスプレイ用フィルタがアンテナとなって電磁波を発振し電磁波シールド能が低下する。従って、ディスプレイ用フィルタとディスプレイ本体のアース部が電気的に接触している必要がある。そのため、前述の透光性粘着材層(D1)および機能性フィルム(C)は、外部から導通を取ることが出来る導通部を残して導電性メッシュ層(B)上に形成されている必要がある。導通部の形状は特に限定しないが、ディスプレイ用フィルタとディスプレイ本体の間に、電磁波の漏洩する隙間が存在しないことが肝要である。従って、導通部は、導電性メッシュ層(B)の周縁部且つ連続的に設けられている事が好適である。すなわち、ディスプレイの表示部である中心部分を除いて、枠状に、導通部が設けられている事が好ましい。
【0192】
導通部はメッシュパターン層であっても、パターニングされていない、例えば金属箔ベタの層であっても良いが、ディスプレイ本体のアース部との電気的接触を良好とする為には、金属箔ベタ層のようにパターニングされていない導通部であることが好ましい。
【0193】
導通部が、例えば金属箔ベタのようにパターニングされていない場合、および/または、導通部の機械的強度が十分強い場合は、導通部そのままを電極として使用できて好適である。
【0194】
導通部の保護のため、および/または、導通部がメッシュパターン層である場合にアース部との電気的接触を良好とするために、導通部に電極を形成することが好ましい場合がある。電極形状は特に限定しないが、導通部をすべて覆うように形成されている事が好適である。
電極に用いる材料は、導電性、耐触性および透明導電膜との密着性等の点から、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、亜鉛、カーボン等の単体もしくは2種以上からなる合金や、合成樹脂とこれら単体または合金の混合物、もしくは、ホウケイ酸ガラスとこれら単体または合金の混合物からなるペーストを使用できる。ペーストの印刷、塗工には従来公知の方法を採用できる。また市販の導電性テープも好適に使用できる。導電性テープは両面ともに導電性を有するものであって、カーボン分散の導電性接着剤を用いた片面接着タイプ、両面接着タイプが好適に使用できる。電極の厚さは、これもまた特に限定されるものではないが、数μm〜数mm程度である。
【0195】
本発明によれば、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その画質を維持または向上させることができる、光学特性に優れたディスプレイ用フィルタを得ることが出来る。また、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなす可能性があることを指摘されている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイから放射される800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができるディスプレイ用フィルタを得ることができる。さらにまた、耐候性にも優れたディスプレイ用フィルタを低コストで提供することが出来る。
【実施例1】
【0196】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0197】
<ハロゲン化銀感光材料>
【0198】
<試料の作製>
ポリエチレンテレフタレート(PET)支持体上に、支持体側から順次、下引層、アンチハレーション層、乳剤層、および、保護層の順に塗布形成した。また、支持体の乳剤層と反対側には、バック層を塗布形成して試料を作製した。以下に各層における塗布液の調製法および塗布量を示す。
【0199】
(下引層の形成)
上記下引層は、ゼラチン50mg/m2、リチウムシリケイトを150mg/m2を含む塗布液を塗布して形成した。
【0200】
(アンチハレーション層の形成)
上記アンチハレーション層は、ゼラチン1g/m2、下記化合物AH−1を150mg/m2を含む塗布液を塗布して形成した。
【0201】
【化1】

【0202】
(乳剤層)
−乳剤の調製−
以下の様にして、塩化銀を70モル%含む、平均粒子サイズ0.23μmの塩沃臭化銀立方体乳剤Cを得た。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/0.6とし、ゼラチン種としては平均分子量20,000の低分子量ゼラチンと平均分子量100,000の高分子量ゼラチンと平均分子量100,000の酸化処理ゼラチンとを混合して用いた。
【0203】
下記各々の組成を混合して1〜5液を調製した。
(1液の組成)
・水 1リットル
・ゼラチン 10g
・塩化ナトリウム 2.0g
・1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
・ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 8mg
【0204】
(2液の組成)
・水 400ml
・硝酸銀 100g
【0205】
(3液の組成)
・水 400ml
・塩化ナトリウム 27.1g
・臭化カリウム 21.0g
・ヘキサクロロイリジウム(III)酸アンモニウム
(0.001%水溶液) 20ml
・ヘキサクロロジウム(III)酸カリウム(0.001%水溶液)
7ml
【0206】
(4液の調製)
・水 400ml
・硝酸銀 100g
【0207】
(5液の組成)
・水 400ml
・塩化ナトリウム 27.1g
・臭化カリウム 21.0g
【0208】
40℃、pH4.5に保たれた上記1液に、上記2液と上記3液とを攪拌しながら同時に15分間にわたって添加し、核粒子を形成した。続いて上記4液および上記5液を15分間にわたって添加した。添加後、さらにヨウ化カリウム0.15gを加え粒子形成を終了した。
【0209】
次いで、常法にしたがってフロキュレーション法によって、得られた粒子を水洗し、ゼラチンを加えた。その後、pHを5.7、pAgを7.5に調整し、チオ硫酸ナトリウム1.0mgと塩化金酸4.0mgとトリフェニルホスフィンセレニド1.5mgとベンゼンチオスルホン酸ナトリウム8mgとベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム2mgとを加え、55℃で最適感度になるように化学増感を行った。さらに、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン100mgと、防腐剤としてフェノキシエタノールとを加え、最終的に塩化銀を70モル%含む、平均粒子サイズ0.23μmの塩沃臭化銀立方体乳剤Cを得た。
【0210】
上記乳剤に、下記増感色素C(i)を2.0×10-4モル/モルAg、増感色素C(ii)を7.0×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらに、KBrを3.4×10-4モル/モルAg、下記化合物C−1を5.0×10-4モル/モルAg、下記化合物C−2を8.0×10-4モル/モルAg、ハイドロキノンを1.2×10-2モル/モルAg、下記化合物C−3を1.8×10-4モル/モルAg、下記化合物C−4を3.5×10-4モル/モルAg、さらにゼラチンに対して30質量%のポリエチルアクリレートラテックスと、ゼラチンに対して15質量%の粒子サイズ10mμのコロイダルシリカと、ゼラチンに対して4質量%の下記化合物C−5と、を添加して、支持体上にAg5g/m2になるように塗布した。
【0211】
【化2】

【0212】
(保護層)
乳剤層の上に下記のようにして保護層を設けた。
ゼラチン0.3mg/m2、ジメチルポリシロキサン0.6mg/m2、1,5−ジヒドロキシ−2−ベンズアルドキシムを7mg/m2、平均粒子サイズ約3.5μmの不定形シリカマット剤を70mg/m2、下記化合物PC−1で示されるフッ素系界面活性剤5mg/m2、下記化合物PC−2を40mg/m2に塗布されるように添加し塗布した。
【0213】
【化3】

【0214】
(バック層)
下記組成のバッキング液を調製し、支持体の乳剤層と反対側に塗布量が15ml/m2になるように塗布した。
〔組成〕
・バインダー(下記化合物BC−1) 30g
・染料(下記化合物BC−2) 5g
・染料(下記化合物BC−3) 5g
・染料(下記化合物BC−4) 6g
・染料(下記化合物BC−5) 1.2g
・エタノール 420ml
・メタノール 550ml
【0215】
【化4】

【0216】
このようにして試料101を作成した。
【0217】
2.試料への露光及び処理条件
乾燥させた試料(101)の塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスク(ライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスク)を介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光を施し、以下に示す処理工程及び処理液を行った。以下に示す処理工程及び処理液でランニング処理(現像液の累積補充量が、そのタンク容量の3倍になるまで)を行った。各処理槽(処理タンク)内の処理液は5L/minの循環量で循環させて浴槽内の攪拌を行った。ただし、電解めっき槽の循環量は表1に記載のように変化させた。
【0218】
処理工程 温 度 時 間
黒白現像 30℃ 40秒
定着 30℃ 40秒
リンス1* 30℃ 10秒
リンス2* 30℃ 10秒
酸洗浄 30℃ 30秒
電解めっき1 30℃ 30秒 電圧 70V
リンス3* 30℃ 10秒
電解めっき2 30℃ 30秒 電圧 20V
リンス4* 30℃ 10秒
電解めっき3 30℃ 30秒 電圧 10V
リンス5* 30℃ 10秒
電解めっき4 30℃ 30秒 電圧 5V
リンス6* 30℃ 10秒
防錆 30℃ 30秒
リンス7* 30℃ 60秒
リンス8* 30℃ 60秒
乾 燥 50℃ 60秒
* 水洗過程は、リンス2から1、リンス8から7への2タンク向流方式及びリンス6から3へのめっき浴を挟む4タンク向流方式とした。
【0219】
各処理液の組成は以下の通りである。
〔黒白現像液 1L処方〕
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
【0220】
〔定着液 1L処方〕
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0221】
〔酸洗浄液 1L処方〕
硫酸 190g
塩酸(35%) 0.06mL
カパーグリームPCM 5mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
純水を加えて 1L
【0222】
〔電解めっき液 1L処方〕
・電解銅めっき液組成(補充液も同組成)
硫酸銅五水塩 75g
硫酸 190g
塩酸(35%) 0.06mL
カパーグリームPCM 5mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
純水を加えて 1L
【0223】
〔防錆液 1L処方〕
硝酸ナトリウム 0.2モル/L水溶液
【0224】
〔リンス液 1L処方(リンス1〜6は共通)〕
脱イオン水(導電率5μS/cm以下) 1000mL
pH 6.5
【0225】
3.液面変動の制御試験
ランニング処理後、液面変動を制御しながら、65cm幅、100mの上記サンプルをそれぞれ処理した。液面変動の制御は、めっき処理を行う直前に表1に記載のように循環量を変更して制御した。
4.めっきむらの評価方法
各条件で処理したサンプルを、以下の4段階による目視評価を行った。
××・・・ムラが非常に多く、全く許容できない。
×・・・ムラが多く許容できない。
△・・・ムラがあるが、ギリギリ許容できる。
○・・・ムラが目視では確認できず、許容できる。
結果を下記表1に示す。
【0226】
5.感材汚れの評価方法
上記3.で処理したサンプルを、以下の5段階による目視評価を行った。
5・・・感材汚れが目視では確認できず、許容できる。
4・・・感材汚れが、100m中10箇所未満で観察されるが、
ギリギリ許容できる。
3・・・感材汚れが、100m中10〜50箇所で観察され、許容できない。
2・・・感材汚れが、100m中51〜99箇所で観察され、許容できない。
1・・・感材汚れが、100m中100箇所以上で観察され、許容できない。
結果を下記表1に示す。
【0227】
【表1】

【0228】
表1において、液面変動が10mm以下に制御されるとめっきむら及び感材汚れともに許容レベルとなることが示されている。
【実施例2】
【0229】
前記の実施例1のNo.2)条件(循環量10L/min)において、電解めっき槽に図2の概略図に示した形態の開口部を設けた浮き板を設けて、液面の開口部サイズを変更した以外は、実施例1と全く同じ試験を繰り返した。表2において開口部サイズとはスリット状の開口の短辺の長さ(感材面に直角方向)である。
結果を下記表2に示す。
【0230】
【表2】

【0231】
開口部サイズを変更し、開口スリット幅を10mm以下として液面を制御することによって、実施例1と同様な効果が得られた。
【実施例3】
【0232】
前記の実施例1のNo.1)条件(循環量20L/min)において、液面の開口部にブレードを形成した以外は、実施例1と全く同じ試験を繰り返した。
結果は、実施例1のNo.4)、5)と同様な良好な結果が得られた。これは、ブレードを設けたことで、液面変動が±5mm以内に制御できた効果である。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明のめっき処理方法に好適に用いられる電解めっき槽の一例を示す模式図である。
【図2】電解めっき槽の液面制御用の開口部つき浮き板の一例を示す模式図である。
【図3】電解めっき槽の液面制御用のブレードの一例を示す模式図である。
【図4】電解めっき槽の液面制御用のブレードの別の一例を示す模式図である。
【図5】電解めっき槽の循環部の吐出部を液面制御用に配した模式図である。
【符号の説明】
【0234】
10 電解めっき装置
11 電解槽
12a,12b 給電ローラ
14 ガイドローラ
13 アノード板
16 フィルム
17 液きりローラ
20 液面変動抑止部材
21 板
22 開口部
23 めっき槽
24 液面
25 現像処理済み感光材料の搬送方向
30 感光材料浸入部
31 ブレード
32 槽壁などのブレード支持部材
33 スリット(浸入通路)
40 めっき槽
42 液面
43 循環パイプ
44a,44b,44c,44d 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に現像処理を施して金属銀部を形成したのち該金属銀部に電解めっきを施す導電性膜の製造方法において、めっき浴中に搬送される現像処理済みの該感光材料とめっき浴液面との接触部の液面変動が制御されていることを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項2】
液面変動が静止時液面の±10mm以下に制御されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項3】
現像処理済みの該感光材料が通過させる開口部を有する液面変動抑止部材をめっき浴液面に配することによって液面変動の制御がなされることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項4】
前記開口部が、幅が感光材料の厚み+10mm以下で、長さが感光材料の搬送方向に直角方向の幅+10mm以下のスリット状であることを特徴とする請求項3に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項5】
めっき浴の液面に設けた1対のブレード部材の間を現像処理済み該感光材料を通過させることによって液面変動の制御が行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
【請求項6】
攪拌用ノズルの吐出口のすべてをめっき浴の液面よりも50mm以上深部に配してなるめっき浴槽を用いて電解めっきされたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
【請求項7】
めっき浴中へ感光材料が搬送移動されている期間は、吐出口をめっき浴の液面から50mm以内に有する攪拌用ノズルの循環を停止して電解めっきされたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の導電性膜の製造方法に使用することを特徴とする導電性膜形成用装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の導電性膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする電磁波シールド膜。
【請求項10】
該電磁波シールド膜の表面抵抗が2.5Ω/sq以下であり、又は導電性金属部は開口率が85%以上であることを特徴とする請求項9に記載の電磁波シールド膜。
【請求項11】
表面抵抗が1.5Ω/sq以下であることを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド膜。
【請求項12】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を含む少なくとも1層の親水性コロイド層を有する黒白ハロゲン化銀写真感光材料に現像処理を施して金属銀部を形成し、続いて該金属銀部にめっき処理を施す透光性導電性膜の製造方法において、該めっき処理が請求項1〜7のいずれかに記載の導電性膜の製造方法によって行われることを特徴とする透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項13】
露光部に前記金属銀部を形成し、未露光部に光透過性部を形成することを特徴とする請求項12に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項14】
前記光透過性部が実質的に物理現像核を有しないことを特徴とする請求項12又は13に記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項15】
Ag/バインダー体積比が1/4以上の銀塩含有層を用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする、導電性金属部及び光透過性部を有するプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
【請求項17】
請求項10又は11に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
【請求項18】
請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法により得られた透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルター。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の光学フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項20】
請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法により得られた透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマテレビ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−336057(P2006−336057A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160161(P2005−160161)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】