説明

導電性膜センサ及び導電性膜の検出方法

【課題】導電性膜の位置及び特性を特定可能な、導電性膜センサを提供する。
【解決手段】周波数が異なる第1及び第2の磁界を放射する磁界放射器1と、導電性膜に第1の磁界を照射した場合の、磁界放射器1の特性、導電性膜の位置及び特性の第1の関係と、第2の磁界を照射した場合の、磁界放射器1の特性、導電性膜の位置及び特性の第2の関係と、を保存する記憶装置401と、測定対象導電性膜2に第1の磁界を照射した場合の磁界放射器1の特性及び第1の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第3の関係を算出し、測定対象導電性膜2に第2の磁界を照射した場合の磁界放射器1の特性及び第2の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第4の関係を算出する算出部301と、第3及び第4の関係に共通する、導電性膜の位置及び特性の組み合わせを特定する特定部303と、を備える導電性膜センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出技術に係り、導電性膜センサ及び導電性膜の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルで磁界を励磁し、金属膜等の導電性膜に磁界を照射すると、導電性膜に渦電流が生じる。ここで、電磁誘導作用により、コイルと、導電性膜と、の距離を変化させると、コイルのQ値及びインピーダンス等の電気特性が変化する。また、導電性膜の厚さを変化させても、コイルの電気特性が変化する。
【0003】
したがって、厚さが一定の導電性膜を用いて、距離と、コイルの電気特性と、の関係を予め取得しておけば、厚さが一定の測定対象導電性膜に磁界を照射した際のコイルの電気特性の値から、測定対象導電性膜の位置を算出することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。また、コイルに対する導電性膜の位置を一定に保った場合の、導電性膜の厚さと、コイルの電気特性と、の関係を予め取得しておけば、コイルに対して一定の位置に配置された測定対象導電性膜に磁界を照射した際のコイルの電気特性の値から、測定対象導電性膜の厚さを算出することが可能である(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164472号公報
【特許文献2】特開2001−343205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の測定対象導電性膜の位置を算出する方法においては、測定対象導電性膜の厚さが一定であることを前提としているため、測定対象導電性膜の厚さが変動した場合、算出される位置に誤差が生じうる。また、上記の測定対象導電性膜の厚さを算出する方法においては、測定対象導電性膜の位置がコイルに対して一定であることを前提としているため、測定対象導電性膜の位置が変動した場合、算出される厚さに誤差が生じうる。さらに、測定対象導電性膜の位置及び厚さ等の特性の両方を特定可能な技術はない。そこで、本発明は、導電性膜の位置及び特性を特定可能な、導電性膜センサ及び導電性膜の検出方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、(a)周波数が異なる第1及び第2の磁界を放射する磁界放射器と、(b)導電性膜に第1の磁界を照射した場合の、磁界放射器の特性、導電性膜の位置及び特性の第1の関係と、導電性膜に第2の磁界を照射した場合の、磁界放射器の特性、導電性膜の位置及び特性の第2の関係と、を保存する関係記憶装置と、(c)測定対象導電性膜に第1の磁界を照射した場合の磁界放射器の特性及び第1の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第3の関係を算出し、測定対象導電性膜に第2の磁界を照射した場合の磁界放射器の特性及び第2の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第4の関係を算出する関係算出部と、(d)第3の関係及び第4の関係に共通する、導電性膜の位置及び特性の組み合わせを特定する特定部と、を備える、導電性膜センサが提供される。
【0007】
また、本発明の態様によれば、(a)導電性膜に磁界放射器を用いて第1の磁界を照射した場合の、磁界放射器の特性、導電性膜の位置及び特性の第1の関係を用意することと、(b)導電性膜に磁界放射器を用いて第1の磁界とは周波数が異なる第2の磁界を照射した場合の、磁界放射器の特性、導電性膜の位置及び特性の第2の関係を用意することと、(c)測定対象導電性膜に第1の磁界を照射したときの磁界放射器の特性及び第1の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第3の関係を算出することと、(d)測定対象導電性膜に第2の磁界を照射したときの磁界放射器の特性及び第2の関係に基づき、導電性膜の位置及び特性の第4の関係を算出することと、(e)第3の関係及び第4の関係に共通する、導電性膜の位置及び特性の組み合わせを特定することと、を含む、導電性膜の検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性膜の位置及び特性を特定可能な、導電性膜センサ及び導電性膜の検出方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る導電性膜センサの模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る第1の磁界を照射した場合の、第1のコイルのQ値、金属膜の位置、及び金属膜の厚さの第1の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る第2の磁界を照射した場合の、第2のコイルのQ値、金属膜の位置、及び金属膜の厚さの第2の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る測定対象金属膜に第1の磁界を照射した場合の第1のコイルのQ値及び第1の関係に基づく、金属膜の位置及び厚さの第3の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る測定対象金属膜に第2の磁界を照射した場合の第2のコイルのQ値及び第2の関係に基づく、金属膜の位置及び厚さの第4の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る第3の関係及び第4の関係を重ね合わせたグラフである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る第1の磁界を照射した場合の、第1のコイルのQ値、金属膜の位置、及び金属膜の抵抗率の第1の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る第2の磁界を照射した場合の、第2のコイルのQ値、金属膜の位置、及び金属膜の抵抗率の第2の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る測定対象金属膜に第1の磁界を照射した場合の第1のコイルのQ値及び第1の関係に基づく、金属膜の位置及び抵抗率の第3の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る測定対象金属膜に第2の磁界を照射した場合の第2のコイルのQ値及び第2の関係に基づく、金属膜の位置及び抵抗率の第4の関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る第3の関係及び第4の関係を重ね合わせたグラフである。
【図12】本発明のその他の実施の形態に係る導電性膜センサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る導電性膜センサは、図1に示すように、第1の周波数を有する第1の磁界を放射する第1のコイル11、及び第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2の磁界を放射する第2のコイル12を有する磁界放射器1と、磁界放射器1に接続された中央演算処理装置(CPU)300と、を備える。第1の実施の形態に係る導電性膜センサは、さらに、CPU300に接続された関係記憶装置401を備える。関係記憶装置401は、それぞれ特性が異なる複数の導電性膜に第1のコイル11から第1の磁界を照射して予め取得された、第1のコイル11の電気特性、導電性膜の位置、及び導電性膜の特性の第1の関係を保存する。また、関係記憶装置401は、それぞれ特性が異なる複数の導電性膜に第2のコイル12から第2の磁界を照射して予め取得された、第2のコイル12の電気特性、導電性膜の位置、及び導電性膜の特性の第2の関係も保存する。
【0012】
CPU300は、関係算出部301を備える。関係算出部301は、測定対象導電性膜2に第1のコイル11から第1の磁界を照射した場合の第1のコイル11の電気特性の測定値と、第1の関係と、に基づき、導電性膜の位置と、導電性膜の特性と、の第3の関係を算出する。また、関係算出部301は、測定対象導電性膜2に第2のコイル12から第2の磁界を照射した場合の第2のコイル12の電気特性の測定値と、第2の関係と、に基づき、導電性膜の位置と、導電性膜の特性と、の第4の関係も算出する。さらに、CPU300は、第3の関係と、第4の関係と、に共通する、導電性膜の位置と、導電性膜の特性と、の組み合わせを特定する特定部303を備える。特定された導電性膜の位置が、測定対象導電体2の位置となる。測定対象導電性膜2の位置とは、磁界放射器1に対する測定対象導電性膜2の相対位置であり、例えば磁界放射器1からの距離Dである。また、特定された導電性膜の特性が、測定対象導電性膜2の特性となる。
【0013】
第1のコイル11と、第2のコイル12と、は、測定対象導電性膜2との距離Dが同じになるよう、平行に配置される。また、第1のコイル11と、第2のコイル12と、は、第1の磁界と、第2の磁界と、の干渉が低減されるよう、離して配置されてもよい。また、第1の周波数と、第2の周波数と、の差を、干渉が低減されるように設定してもよい。あるいは、第1のコイル11と、第2のコイル12と、は、所定時間毎又は所定波数毎に、交互に磁界を発してもよい。さらに、測定対象導電性膜2の抵抗率の変動の影響を低減させたい場合は、測定対象導電性膜2の抵抗率の変動を抑制する周波数を設定してもよい。
【0014】
位置及び厚さ等の特性の測定対象となる測定対象導電性膜2は、第1のコイル11及び第2のコイル12に対向して配置される。測定対象導電性膜2は、例えば鉄等の磁性体、あるいはアルミニウム、銅、又はこれらを支配的に含む合金等の非磁性体からなる金属膜である。第1のコイル11は、LC発振回路の一部をなしている。LC発振回路は、発振振幅が第1のコイル11のクオリティファクタの値(以下、「Q値」という。)の単調関数となるよう、構成されている。第1のコイル11のQ値は、ωを共振角周波数、Lを第1のコイル11の自己インダクタンス、Rを第1のコイル11の高周波抵抗として、下記(1)式で与えられる。
Q = ωL / R ・・・(1)
【0015】
LC発振回路の発振に伴い、第1のコイル11から測定対象導電性膜2に向かって、高周波交流磁界が形成され、測定対象導電性膜2に渦電流が発生する。渦電流による電気エネルギの損失は、第1のコイル11の見かけ上の高周波抵抗Rを増大させ、Q値を低下させる。したがって、Q値の変化は、測定対象導電性膜2の位置及び厚さ等の特性に依存する。また、第1のコイル11の見かけ上の自己インダクタンス、高周波抵抗、又はインピーダンス等の特性の変化、あるいはそれらに相関するLC発振回路の発振の変化、LC発振回路を流れる電流の変化も、測定対象導電性膜2の位置及び厚さ等の特性に依存する。第2のコイル12についても同様である。
【0016】
ここでは、磁界放射器1は、例として、第1のコイル11から第1の周波数として50kHzの第1の磁界を測定対象導電性膜2に照射し、第1のコイル11のQ値の測定値を関係算出部301に送信する。また、磁界放射器1は、例として、第2のコイル12から第2の周波数として500kHzの第2の磁界を測定対象導電性膜2に照射し、第2のコイル12のQ値の測定値を関係算出部301に送信する。
【0017】
関係記憶装置401に保存されている図2に示すような第1の関係を取得する際には、例えば、それぞれ厚さが5μm、10μm、15μm、20μm、50μmの5つの金属膜等の導電性膜が用意される。5つの金属膜は、測定対象導電性膜2と同じ材料からなる。あるいは、5つの金属膜は、測定対象導電性膜2の材料と抵抗率がほぼ等しい材料からなる。5つの金属膜のそれぞれについて、図1に示す第1のコイル11と金属膜表面との間の距離を変えながら、第1のコイル11から50kHzの第1の磁界を放射して、第1のコイル11のQ値を測定する。これにより、図2に示すような、第1のコイル11のQ値、金属膜の位置、及び金属膜の厚さの第1の関係が得られる。
【0018】
図1に示す関係記憶装置401に保存されている図3に示すような第2の関係を取得する際にも、例えば、それぞれ厚さが5μm、10μm、15μm、20μm、50μmの5つの金属膜が用意される。5つの金属膜のそれぞれについて、図1に示す第2のコイル12と金属膜表面との間の距離を変えながら、第2のコイル12から500kHzの第2の磁界を放射して、第2のコイル12のQ値を測定する。これにより、図3に示すような、第2のコイル12のQ値、金属膜の位置、及び金属膜の厚さの第2の関係が得られる。なお、第1の関係と、第2の関係と、は、図1に示す入力装置312から関係記憶装置401に入力してもよい。
【0019】
関係算出部301は、磁界放射器1から第1のコイル11のQ値の測定値を受信する。また、関係算出部301は、関係記憶装置401から、図2に示す第1の関係を読み出す。50kHzの第1の磁界を測定対象導電性膜2に照射した場合の、第1のコイル11のQ値の測定値が26.7であった場合、関係算出部301は、Q値26.7における図2に示す第1の関係から、図4に示すような金属膜の位置と、金属膜の厚さと、の第3の関係を算出する。
【0020】
さらに関係算出部301は、磁界放射器1から第2のコイル12のQ値の測定値を受信する。また、関係算出部301は、関係記憶装置401から、図3に示す第2の関係を読み出す。500kHzの第2の磁界を図1に示す測定対象導電性膜2に照射した場合の、第2のコイル12のQ値の測定値が56.5であった場合、関係算出部301は、Q値56.5における図3に示す第2の関係から、図5に示すような金属膜の位置と、金属膜の厚さと、の第4の関係を算出する。
【0021】
図1に示す特定部303は、図6に示すように、第3の関係を与える関数と、第4の関係を与える関数と、の交点における金属膜の位置の値と、金属膜の厚さの値と、を特定する。特定された位置の値と、厚さの値と、が、図1に示す測定対象導電性膜2の位置と、厚さと、の測定値となる。特定部303は、測定対象導電性膜2の位置と、厚さと、の測定値を、例えば出力装置313に出力させる。
【0022】
なお、図4に示した第3の関係を与える関数の傾きと、図5に示した第4の関係を与える関数の傾きと、が近似すると、金属膜の位置の値と、金属膜の厚さの値と、を特定する際に誤差が生じうる。そのため、第3の関係を与える関数の傾きと、第4の関係を与える関数の傾きと、の正負が反対となるよう、第1の磁界の第1の周波数と、第2の磁界の第2の周波数と、を設定してもよい。
【0023】
以上示したように、第1の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、図1に示す測定対象導電性膜2の位置と、厚さと、を同時に測定することが可能となる。さらに、第1の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、渦電流の浸透深さよりも充分に薄い測定対象導電性膜2の厚さが変動しても、位置の測定に誤差が生じない。また、第1の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の位置が変動しても、厚さの測定に誤差が生じない。したがって、第1の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の位置と、厚さと、をリアルタイムかつ高精度に測定することが可能となる。
【0024】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、測定対象導電性膜2の位置と、測定対象導電性膜2の特性としての厚さと、を測定する例を説明した。第2の実施の形態では、測定対象導電性膜2の位置と、測定対象導電性膜2の特性としての抵抗率と、を測定する例を説明する。第2の実施の形態においては、関係記憶装置401に、図7に示すような、第1のコイル11から第1の磁界を放射した場合の、第1のコイル11のQ値、金属膜の位置、及び金属膜の抵抗率の第1の関係が保存される。このような第1の関係を取得する際には、例えば、それぞれ抵抗率が1×10―8Ωm、2×10―8Ωm、3×10―8Ωm、4×10―8Ωm、5×10―8Ωmの5つの金属膜が用意される。次に、5つの金属膜のそれぞれについて、図1に示す第1のコイル11と金属膜表面との間の距離を変えながら、第1のコイル11から第1の周波数として例えば50kHzの第1の磁界を放射して、第1のコイル11のQ値を測定する。これにより、図7に示すような、第1の関係が得られる。
【0025】
また、関係記憶装置401に、図8に示すような、第2のコイル12から第2の磁界を放射した場合の、第2のコイル12のQ値、金属膜の位置、及び金属膜の抵抗率の第2の関係が保存される。このような第2の関係を取得する際には、例えば、それぞれ抵抗率が1×10―8Ωm、2×10―8Ωm、3×10―8Ωm、4×10―8Ωm、5×10―8Ωmの5つの金属膜が用意される。次に、5つの金属膜のそれぞれについて、図1に示す第2のコイル12と金属膜表面との間の距離を変えながら、第2のコイル12から第2の周波数として例えば500kHzの第2の磁界を放射して、第2のコイル12のQ値を測定する。これにより、図8に示すような、第2の関係が得られる。
【0026】
50kHzの第1の磁界を測定対象導電性膜2に照射した場合の、第1のコイル11のQ値の測定値が27.0であった場合、図1に示す関係算出部301は、Q値27.0における図7に示した第1の関係から、図9に示すような金属膜の位置と、金属膜の抵抗率と、の第3の関係を算出する。
【0027】
500kHzの第2の磁界を図1に示す測定対象導電性膜2に照射した場合の、第2のコイル12のQ値の測定値が58.0であった場合、図1に示す関係算出部301は、Q値58.0における図8に示した第2の関係から、図10に示すような金属膜の位置と、金属膜の抵抗率と、の第4の関係を算出する。
【0028】
図1に示す特定部303は、図11に示すように、第3の関係を与える関数と、第4の関係を与える関数と、の交点における金属膜の位置の値と、金属膜の抵抗率の値と、を特定する。特定された位置の値と、抵抗率の値と、が、図1に示す測定対象導電性膜2の位置と、抵抗率と、の測定値となる。
【0029】
以上示したように、第2の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の位置と、抵抗率と、を同時に測定することが可能となる。さらに、第2の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の抵抗率が変動しても、位置の測定に誤差が生じない。また、第2の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の位置が変動しても、抵抗率の測定に誤差が生じない。したがって、第2の実施の形態に係る導電性膜センサによれば、測定対象導電性膜2の位置と、抵抗率と、をリアルタイムかつ高精度に測定することが可能となる。
【0030】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、測定対象導電性膜2の検出される特性は、厚さ、抵抗率に限らず、透磁率や材料であってもよい。
【0031】
また、第1及び第2の実施の形態では、磁界放射器1が第1のコイル11と、第2のコイル12と、を有する例を示したが、図12に示すように、磁界放射器1は、単一のコイル13のみを有していてもよい。この場合、単一のコイル13は、所定時間毎又は所定波数毎に、第1の磁界と、第2の磁界と、を交互に放射すればよい。あるいは、単一のコイル13は、第1の周波数を有する第1の磁界と、第2の周波数を有する第2の磁界と、を重ね合わせた磁界を放射してもよい。この場合、単一のコイル13のQ値又はインピーダンス等の特性は、第1の周波数に関する特性と、第2の周波数に関する特性と、に分割されて利用される。
【0032】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0033】
1 磁界放射器
2 測定対象導電性膜
11 第1のコイル
12 第2のコイル
13 コイル
301 関係算出部
303 特定部
312 入力装置
313 出力装置
401 関係記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が異なる第1及び第2の磁界を放射する磁界放射器と、
導電性膜に前記第1の磁界を照射した場合の、前記磁界放射器の特性、前記導電性膜の位置及び特性の第1の関係と、前記導電性膜に前記第2の磁界を照射した場合の、前記磁界放射器の特性、前記導電性膜の位置及び特性の第2の関係と、を保存する関係記憶装置と、
測定対象導電性膜に前記第1の磁界を照射した場合の前記磁界放射器の特性及び前記第1の関係に基づき、前記導電性膜の位置及び特性の第3の関係を算出し、前記測定対象導電性膜に前記第2の磁界を照射した場合の前記磁界放射器の特性及び前記第2の関係に基づき、前記導電性膜の位置及び特性の第4の関係を算出する関係算出部と、
前記第3の関係及び前記第4の関係に共通する、前記導電性膜の位置及び特性の組み合わせを特定する特定部と、
を備える、導電性膜センサ。
【請求項2】
前記導電性膜の特性が、前記導電性膜の厚さ、抵抗、透磁率、又は材料である、請求項1に記載の導電性膜センサ。
【請求項3】
前記磁界放射器が、前記第1の磁界を放射する第1のコイルと、前記第2の磁界を放射する第2のコイルと、を備える、請求項1又は2に記載の導電性膜センサ。
【請求項4】
前記磁界放射器が、異なる時間に、前記第1の磁界と、前記第2の磁界と、を放射するコイルを備える、請求項1又は2に記載の導電性膜センサ。
【請求項5】
前記磁界放射器が、前記第1の磁界と、前記第1の磁界に重ね合わされた前記第2の磁界と、を放射するコイルを備える、請求項1又は2に記載の導電性膜センサ。
【請求項6】
前記導電性膜の位置が、前記磁界放射器に対する前記導電性膜の相対位置である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電性膜センサ。
【請求項7】
前記磁界放射器がLC発振回路を構成するコイルを備え、前記磁界放射器の特性が、前記LC発振回路の発振振幅である、請求項1又は2に記載の導電性膜センサ。
【請求項8】
前記磁界放射器の特性が、インピーダンス、インダクタンス、抵抗又はクオリティファクタである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性膜センサ。
【請求項9】
導電性膜に磁界放射器を用いて第1の磁界を照射した場合の、前記磁界放射器の特性、導電性膜の位置及び特性の第1の関係を用意することと、
前記導電性膜に前記磁界放射器を用いて前記第1の磁界とは周波数が異なる第2の磁界を照射した場合の、前記磁界放射器の特性、前記導電性膜の位置及び特性の第2の関係を用意することと、
測定対象導電性膜に前記第1の磁界を照射したときの前記磁界放射器の特性及び前記第1の関係に基づき、前記導電性膜の位置及び特性の第3の関係を算出することと、
前記測定対象導電性膜に前記第2の磁界を照射したときの前記磁界放射器の特性及び前記第2の関係に基づき、前記導電性膜の位置及び特性の第4の関係を算出することと、
前記第3の関係及び前記第4の関係に共通する、前記導電性膜の位置及び特性の組み合わせを特定することと、
を含む、導電性膜の検出方法。
【請求項10】
前記特性が、前記導電性膜の厚さ、抵抗、透磁率、又は材料である、請求項9に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項11】
前記磁界放射器が、前記第1の磁界を放射する第1のコイルと、前記第2の磁界を放射する第2のコイルと、を備える、請求項9又は10に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項12】
前記磁界放射器が、異なる時間に、前記第1の磁界と、前記第2の磁界と、を放射するコイルを備える、請求項9又は10に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項13】
前記磁界放射器が、前記第1の磁界と、前記第1の磁界に重ね合わされた前記第2の磁界と、を放射するコイルを備える、請求項9又は10に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項14】
前記導電性膜の位置が、前記磁界放射器に対する前記導電性膜の相対位置である、請求項9乃至13のいずれか1項に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項15】
前記磁界放射器がLC発振回路を構成するコイルを備え、前記磁界放射器の特性が、前記LC発振回路の発振振幅である、請求項9又は10に記載の導電性膜の検出方法。
【請求項16】
前記磁界放射器の特性が、インピーダンス、インダクタンス、抵抗又はクオリティファクタである、請求項9乃至14のいずれか1項に記載の導電性膜の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−15355(P2013−15355A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147042(P2011−147042)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】