説明

導電性被膜の製造方法

【課題】本発明は、下地との密着に優れ、かつ低温・短時間の加熱により良好な導電性を発現することができる導電性被膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】下地上に、導電性微粒子を含む導電層(A)と、
三級アミノ基および/または四級アンモニウム基を含有するモノマー(B)と、前記モノマー(B)と共重合し得るモノマー(C)とを共重合してなる共重合物(D)を含むイオン交換層(E)、とを積層することを特徴とする導電性被膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インキを用いた導電性被膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性被膜は、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル等の電磁波遮蔽、建材または自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止被膜、ガラスの曇り止め用熱線、回路基板等の配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング等の広い範囲の用途を有する。これらの導電性被膜を形成する方法としては、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等による方法あるが、前記方法は真空処理が必要なため生産コストが高く、また導電性も低いという問題があった。
そこで安価な製造方法として銀ペースト(銀粒子の粒子径が1μm以上)を用いる方法が提案されているが、前記方法はスクリーン印刷により配線等の導電回路を作成することが必要とされ、実用上必要な導電性を得るためには、印刷後高温で加熱する必要があり、その体積抵抗値は、10-5Ω・cmオーダーが限界であり満足できる物ではなかった(非特許文献1、2参照)。
【0003】
そこで銀ナノ粒子(粒子径が1〜100nm)を用いた銀ナノ分散体を用いることによって、導電性被膜が0.1〜5μm程度の膜厚であっても10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値が得られることが知られている(非特許文献1、2参照)。しかし、この体積抵抗値を発現させるためには、銀ナノ分散体を200℃程度の高温で数十分間加熱して焼結させる必要があり、銀ナノ分散体をコート紙などの通常の紙基材や、ポリエステル等のプラスチックフィルム基材に使用することは困難である。また、この方法は、さらに銀ナノ分散体を用いて形成した導電回路や導電性被膜は基材との密着性が劣り、クラックが入りやすい欠点があった。(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−273205号公報
【特許文献2】特開2005−81501号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、Vol.5、No.6(2002年)、523〜528頁
【非特許文献2】日経ナノビジネス、Vol.22(2005.9.26)、2〜7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、下地との密着に優れ、かつ低温・短時間の加熱により良好な導電性を発現することができる導電性被膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下地上に、導電性微粒子を含む導電層(A)と、
三級アミノ基および/または四級アンモニウム基を含有するモノマー(B)と、前記モノマー(B)と共重合し得るモノマー(C)とを共重合してなる共重合物(D)を含むイオン交換層(E)、とを積層することを特徴とする導電性被膜の製造方法に関する。
【0008】
また本発明は、モノマー(C)が、炭素数6〜20の鎖状もしくは環構造を有するアルキル基およびフェニル基からなる群より選択された1種以上の有機基を含有するモノマーであることを特徴とする上記発明の導電性被膜の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、モノマー(B)とモノマー(C)との合計100重量%中、モノマー(B)の割合が25〜75重量%、モノマー(C)の割合が25〜75重量%であることを特徴とする上記いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、共重合物(D)が、重合溶媒として、水および炭素数1〜3のアルコールを用いてなることを特徴とする上記いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
【0011】
また本発明は、導電層(A)が、インクジェット法により形成されることを特徴とする上記いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、上記いずれかの発明の製造方法により得られる導電性被膜に関する。
【0013】
また本発明は、上記発明の導電性被膜を、導電性回路として有するプリント配線板に関する。
【0014】
また本発明は、上記発明のプリント配線板を用いてなるタッチパネルに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、下地との密着に優れ、かつ低温・短時間の加熱により良好な導電性を発現することができる導電性被膜を提供することができた。
【0016】
そのため本発明によって得られる導電性被膜は、非接触型ICメディアのアンテナ回路や、プリント基板の導電回路、印刷エレクトロニクス用導電材料、各種電極材、電磁波シールド用メッシュ形成、電磁波シールド用導電性薄膜、静電気帯電防止膜、非導電性物への導電性付与膜に使用できる。さらに本発明によって得られる導電性被膜は、膜の平滑性や色の均一性といった外観面および被膜強度の面でも優れており、ディスプレイの反射板等、鏡面性を必要とする用途にも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明する。しかし、本発明は、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、以下の説明あるいは実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の導電性微粒子を含む導電層(A)(以下、「導電層(A)」とも表記する)について説明する。導電層(A)は導電性インキにより形成されることが好ましい。
【0019】
導電性インキは、導電性微粒子と樹脂と、液状媒体と、を含むことが好ましい。
前記導電性微粒子は、得られる導電性被膜に導電性を付与するためのものである。このような導電性微粒子としては、導電性の金属物質が挙げられる。具体的には、例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、タングステン、チタン、インジウム、イリジウム、ロジウム、アモルファス銅等の金属。これら金属の合金、例えば銀−銅合金など。これら金属の金属複合体、例えば銀−銅複合体など。金属を更に他の導電性金属で被覆したもの、例えば、銀めっき銅などが挙げられる。そのなかでも、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄が好ましく、金、銀、銅、ニッケルがより好ましく、導電性、コストの点から銀が更に好ましい。その他の導電性微粒子としては、例えば、上記金属物質で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、カーボンブラック、グラファイト、金属錯体、有機導電性微粒子等を用いることもできる。導電性微粒子は、1種または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の導電性物質を組み合わせて用いる場合、これら複数の物質は、混合物、混融物、分散物、被覆物など任意の形態であってよい。
【0020】
導電性微粒子を得る方法として、例えば、湿式法、アトマイズ法、電解法等の製造方法が挙げられる。その結果、フレーク状、鱗片状、板状、球状、略球状、凝集球状、樹枝状、箔状等種々の形状の導電性微粒子が得られる。本発明ではいずれの形状のものも使用することができる。
【0021】
また導電性微粒子の他の製造方法としては、例えば、ガス中蒸発法等の気相法、液相中で超音波、紫外線または還元剤を用いて金属化合物を還元する液相法(特開平11−80647号公報および特開昭61−276907号公報を参照)、あるいは溶融法、電解法等が挙げられる。本発明においては、製造コストが安く、製造工程が少ない、金属化合物を液相中で超音波、紫外線または還元剤を用いて還元する液相法を用いて製造することが好ましい。
得られた導電性微粒子は、平均粒子径0.001〜10μmが好ましく、0.001〜0.05μmがより好ましい。この範囲の導電性微粒子を用いることにより、低温かつ短時間の加熱により優れた導電性を有する導電性被膜の形成が可能となる。
【0022】
なお、本発明における導電性微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を利用した粒子径分布測定装置により測定を行い、おおむね1μm未満の粒子はナノトラック(日機装株式会社製)により、1μm以上の粒子はマイクロトラック(日機装株式会社製)により測定される。
【0023】
また、本発明の導電性微粒子は、保護物質によって被覆されていることが好ましい。前記保護物質は、導電性微粒子を含む導電性インキなどへ調製した際に、導電性微粒子の凝集を防ぎ、導電性インキ中での導電性微粒子の分散安定性を向上させるため用いられる。このような保護物質として、例えば導電性微粒子に対する親和性基を化合物中に1個または複数個有する化合物が挙げられる。導電性微粒子に対する親和性基としては、導電性微粒子の種類によっても異なるが、一般的には、アミノ基、4級アンモニウム基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等の極性基が挙げられる。さらに極性基が、アニオン性のカルボキシル基であることが好ましい。
【0024】
本発明において、導電性微粒子は、保護物質としてさらに分散剤を含むことが好ましく、前記分散剤としては脂肪酸が好ましい。これは、脂肪酸を含んだ保護物質によって被覆された導電性微粒子が用いられると、より低温かつ短時間での導電性被膜の製造が可能となるからである。保護物質としては、顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤、脂肪酸等の分散剤を用いることができる。
【0025】
これら保護物質を導電性微粒子に被覆する方法としては、予め製造された導電性微粒子と保護物質とを乾式、または湿式で混合するなどして導電性微粒子を保護物質により被覆する方法、導電性微粒子を製造する際、保護物質の存在下に導電性微粒子を形成して、保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法、脂肪酸金属塩など保護物質として機能する物質の金属塩を還元剤などを用いて還元することにより保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法などが知られている。これら方法はいずれも公知の方法であり、適宜の方法が用いられればよい。
【0026】
本発明では、保護物質は、導電性微粒子100重量部に対して1〜2000重量部を用いることが好ましく、10〜100重量部がより好ましい。保護物質の使用量が1重量部未満の場合、分散安定性が得られず、導電性微粒子が凝集する恐れがある。また、2000重量部を超えると、分散安定性に寄与しない余剰の保護物質が、導電性被膜の導電性や、その他の物性に悪影響を与える恐れがある。
前記導電性インキは、導電性微粒子の他に、樹脂と、液状媒体と、を含むことが好ましい。
【0027】
前記導電性インキに含まれる前記樹脂は、下地への密着性や、イオン交換層(E)との密着性、さらに導電層(A)の形成しやすさも考慮して選択される。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0028】
また前記樹脂の代わりに、または樹脂と併用してエチレン性不飽和基含有化合物を用いることも好ましい。エチレン性不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等の化合物が挙げられる。これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、単官能であっても、多官能であってもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」という場合、アクリル酸およびメタクリル酸を含む意味で使用される。また「(メタ)アクリレート」という場合にも、同様に、アクリレートとメタクリレートを含む意味で用いられる。その他(メタ)アクリロイルなどでも、同様である。
【0029】
これら樹脂やエチレン性不飽和基含有化合物は、導電性インキ100重量%のうち、0.01〜99重量%が好ましく、0.1〜95重量%がより好ましく用いることができる。上記範囲内で用いることで導電性被膜の導電性を阻害せず使用することができる。
【0030】
前記導電性インキに含まれる液状媒体としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、水等が挙げられる。以下、これら各溶剤について、更に詳細に説明する。
【0031】
上記エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec‐ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3‐メトキシブチル、酢酸sec‐ヘキシル、酢酸2‐エチルブチル、酢酸2‐エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ‐ブチロラクトン、ジヒドロターピネオールアセテート等が挙げられる。
【0032】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn‐ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2‐(1‐シクロヘキセニル)シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0033】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、ジブチルエーテル、メチル‐t‐ブチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、環状エーテル系溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0034】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルの酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0035】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤として、n‐ヘキサン、n‐ヘプタン、n‐オクタン、n‐ノナン、n‐デカン、n‐ドデカン、イソパラフィン系溶剤としては、イソヘキサン、2,2,3‐トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5‐トリメチルヘキサン、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサ、芳香族混合炭化水素等が挙げられる。
【0036】
また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、フルフラールが挙げられる。上記液状媒体は、単独または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
また上記液状媒体は、導電性インキ100重量%中、0.01〜99重量%用いることが好ましく、0.1〜95重量%用いることがより好ましい。
【0038】
前記導電性インキは、液状媒体として1〜4個の水酸基を有する炭素数10〜18の化合物(F)(以下、単に「化合物(F)」とも表記する)をもちいることも好ましい。
導電性インキが化合物(F)を含むことによって、導電性被膜の導電性が大きく向上する。具体的には、従来の導電性被膜の体積抵抗値は10-5Ω・cm台かそれ以上であるのに対して、本発明の導電性被膜は、化合物(F)を含むことにより体積抵抗値10-6Ω・cm台といった低い抵抗値を達成することができる。抵抗値が低いということは高い導電性を有していることを示している。本発明の導電性被膜は、さらに下地との密着性が大きく向上している。これは従来に無い顕著な効果である。なお体積抵抗値と、下地との密着性の測定方法は、実施例で説明する。
【0039】
化合物(F)は、具体的には、例えば炭素数10〜18の一価アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0040】
炭素数10〜18の一価アルコールとして、例えば
直鎖状の飽和アルキル基を有する一価アルコールとしては、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール等が挙げられる。
【0041】
また、分岐状の飽和アルキル基を有する一価アルコールとしては、3,7−ジメチル−1−オクタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−ヘプチルウンデカノール、イソミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールなどが挙げられる。また、ジシクロヘキシルメタノール、トリシクロデカンモノメチロール、水添加ロジンアルコール、ジヒドロターピネオールなどの環状アルコールも用いられる。
【0042】
また、不飽和二重結合を分子内に有する1価アルコールとしては、不飽和二重結合を1つ有するアルケン基、不飽和二重結合を2つ有するアルカジエン基、不飽和二重結合を3つ有するアルカトリエン基、さらに不飽和二重結合を4つ以上有するアルカポリエン基を有する1価アルコールであり、オレイルアルコール、リノリルアルコール、11−ヘキサデセン−1−オール、7−テトラデセン−1−オール、9−テトラデセン−1−オール、11−テトラデセン−1−オール、7−ドデセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、9−デセン−1−オール、シトロネロール、ドデカジエン−1−オール、フィトール、ゲラニオール、ロジノール、リナノール、ターピネオールC、α−ターピネオール、L−α−ターピネオールなどの直鎖状、分岐状または環状の不飽和基含有1価アルコールを挙げることが出来る。これら1価アルコールは単独または複数を任意の量比で組み合わせて使用することが可能である。
【0043】
炭素数10〜18の多価アルコールとして、
例えば、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、等のアルキレン二価アルコール、トリメチロールオクタン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールセルロース等の多価アルコール等が挙げられる。
【0044】
炭素数10〜18のグリコールエーテルとして、例えば、
ジプロピレングリコールn‐ブチルエーテル、トリエチレングリコール モノn‐ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。
【0045】
本発明においては、導電性被膜の導電性および下地との密着性の点から、炭素数10〜18の一価アルコールまたは多価アルコールを用いることが好ましく、分岐状の飽和アルキル基を有する一価アルコール、環状アルコールを用いることがより好ましい。また本発明では、化合物(F)を1種または2種以上もちいることもできる。
これら、1〜4個の水酸基を有する炭素数10〜18の化合物(F)は、導電性インキ100重量部中、通常0.01〜99重量部用いることが好ましく、0.1〜95重量部用いる事がより好ましい。
【0046】
前記導電性インキを製造するには、導電性微粒子とその他の原料とを混合し、従来公知の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合すればよい。
【0047】
得られた導電性インキは、下地上またはイオン交換層(E)へ印刷することで導電層(A)を形成することができる。前記印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。
次にイオン交換層(E)について説明する。
イオン交換層(E)は、下地上に導電層(A)と接して存在している。そして加熱をトリガーとして導電性微粒子を被覆している保護物質が、イオン交換層(E)に含まれている陰イオン交換物質により奪われるか、保護物質が他のイオンに交換されることによって活性エネルギーの高い導電性微粒子の表面が露出する。これにより導電性微粒子は、分散安定性を失い凝集して、密着することにより被膜化が速やかに進行する。この被膜化により被膜の体積抵抗値が低くて、高い導電性の実現が可能になる。
イオン交換層(E)は、共重合物(D)と、樹脂と、液状媒体と、を含む塗液(G)により形成される。
【0048】
共重合物(D)は、三級アミノ基および/または四級アンモニウム基を含有するモノマー(B)と、前記モノマー(B)と共重合し得るモノマー(C)とを共重合することで製造される。合成方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合などで行うことができる。前記重合はアニオン重合またはカチオン重合といったイオン重合法や、ラジカル重合法などによりできる。さらに共重合物(D)溶液の形態は、水系分散体またはエマルジョンであることも好ましい。
【0049】
まず三級アミノ基および/または四級アンモニウム基を含有するモノマー(B)(以下モノマー(B)と表記する。)について説明する。
モノマー(B)の三級アミノ基または四級アンモニウム基は、イオン交換層(E)の形成後に導電層(A)とイオン交換反応をする目的で用いられるが、イオン交換効率の点で四級アンモニウム基が好ましい。そのため、三級アミノ基含有モノマーを用いるときは、共重合前のモノマーの状態で、カチオン化剤により四級アンモニウム塩とすることや、共重合後にカチオン化剤により四級アンモニウム塩とすることもできる。
【0050】
三級アミノ基含有モノマー(B−1)としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
前記カチオン化剤としては、メチルクロライドやエチルクロライド、ベンジルクロライド、モノクロロ酢酸エチル、ジクロロ酢酸エチル、メチルサルフェート、エチルサルフェート、p−トルエンスルフォネートなどを用いることが出来る。
【0051】
四級アンモニウム基含有モノマー(B−2)は、モノマー全体としては四級アンモニウム塩化合物である。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジエチルアンモニウムメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジエチルアンモニウムベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸トリメチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸トリエチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムエチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸トリメチルアミノエチルp−トルエンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート塩などが挙げられる。
【0052】
共重合物(D)に用いるモノマー(C)は、モノマー(B)以外のモノマーでありモノマー(B)と共重合可能なエチレン性不飽和基含有モノマーを示している。
前記エチレン性不飽和基含有モノマーの中でも、イオン交換層(E)の耐水性を向上させるため疎水性モノマーを用いることが好ましい。具体的には、炭素数6〜20の鎖状もしくは環構造を有するアルキル基およびフェニル基からなる群より選択された1種以上の有機基を含有するモノマー(C−1)を用いることが好ましい。モノマー(B)は三級アミノ基や四級アンモニウム基を有するため親水性が強く、有機溶媒中より水系溶媒中で重合することが好ましいことから、導電性被膜に水分を呼び込みやすく、配線回路として用いられた場合に、水分の影響により回路に腐食が生じる恐れがあり、またイオンマイグレーションにより導通不良が発生する恐れがあるからである。
【0053】
モノマー(C−1)のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、さらには環構造を有していても良い。
モノマー(C−1)のうち直鎖または分岐鎖を有するアルキル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。
【0054】
モノマー(C−1)のうち環構造を有するアルキル基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられる。
【0055】
モノマー(C−1)のうちフェニル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ノニルフェノールEO付加物、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルなどが挙げられる。
【0056】
上記モノマー(C−1)のなかでも、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルは、モノマー(B)との共重合のし易さ、入手のし易さや、低コストなどの点から好ましい。
【0057】
上記モノマー(C)のうちモノマー(C−1)以外のモノマー(C−2)は、例えば、
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、テトラメチルピペジリルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
【0059】
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
さらに、上記化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、2−メタリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート等が挙げられる。
【0061】
共重合物(D)の重合時に、モノマー(B)として親水性の四級アンモニウム基含有モノマー(B−2)を用い、さらにモノマー(C)に疎水性モノマーを用いた場合、反応溶媒に有機溶媒を用いると両者が分離する可能性が高く、モノマー(B)とモノマー(C)のそれぞれがホモポリマーとなり共重合物が得られない恐れがある。そのため溶媒は水系溶媒を用いることが好ましい。具体的には水と炭素数1〜3のアルコールを用いることが好ましい。炭素数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2プロパノールなどが挙げられる。
【0062】
モノマーの使用量については、モノマー(B)とモノマー(C)の合計100重量%中、モノマー(B)は25〜75重量%、モノマー(C)は25〜75%含有することが好ましい。モノマー(B)が25重量%未満のときは、イオン交換性が不足する恐れがあり、75重量%を超えるとイオン交換層(E)の被膜強度が不足する恐れがある。モノマー(C)が25重量%未満のときは、イオン交換層(E)の親水性が高く耐水性が低下する恐れがあり、75重量%を超えるとイオン交換層(E)中の三級アミノ基や四級アンモニウム基が少なく、イオン交換性が不足する恐れがある。
【0063】
塗液(G)には、共重合物(D)の他に、樹脂と、微粒子と、液状媒体と、を含むことができる。樹脂、液状媒体は、前記導電性インキと同様のものを用いることができる。
前記微粒子は、イオン交換層(F)が微粒子を含むことによって、(1)イオン交換能を有する共重合物(D)をイオン交換層(F)中に均一に分散させることが可能になること、(2)導電層(A)とイオン交換層(F)との接触面積が増大し、ひいてはそれぞれに含まれる導電性微粒子と共重合物(D)とのイオン交換の効率が向上すること、があるため好ましい。
【0064】
前記微粒子の平均粒子径は、0.001〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が20μmを超える微粒子を用いると、導電性が低下する恐れが生じる。前記微粒子は、塗液(G)100重量%中、1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%用いることができる。
【0065】
前記微粒子は、有機微粒子やイオン交換能を有さない無機微粒子を用いることが好ましい。
【0066】
有機微粒子としては、例えば、デンプン等の天然物、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン系、スチレン/アクリル系、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12等のナイロン系、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン等のオレフィン系、ポリエステル系、フェノール系、ベンゾグアナミン系が挙げられる。
【0067】
イオン交換能を有さない無機微粒子としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉛、リン酸マグネシウム、塩化アルミニウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、等が挙げられる。これらの無機微粒子のなかでも、非晶質シリカ、コロイダルシリカが好ましい。さらに無機微粒子は使用の目的に応じて、有機物による処理(例えばシランカップリング剤処理)などを行うことも好ましい。
これらの微粒子は、1種または2種以上を用いることができる。
【0068】
塗液(G)の原料の混合は、上述した導電性インキと同様の方法で行うことができる。
【0069】
本発明の導電性被膜の製造方法は、導電層(A)と、イオン交換層(E)を接触させることを特徴としているため、導電性被膜を形成する方法や基材、導電性被膜の膜形状等は、特に限定されるものではない。導電層(A)と、イオン交換層(E)とを接触させる態様として、
(1)下地上に、イオン交換層(E)と、導電層(A)と、を順次形成し導電性被膜とする方法。
(2)下地上に、導電層(A)と、イオン交換層(E)と、を順次形成し導電性被膜とする方法。
を挙げることができる。なお導電層(A)とイオン交換層(E)とは、例えば導電層(A)用の導電性インキと、イオン交換層(E)用の塗液(G)と、をウエットオンウエットで塗工したのち、加熱し層が形成され導電性被膜とすることも好ましい。
【0070】
導電層(A)は、イオン交換層(E)とのイオン交換により導電性被膜へと変化する。
本発明においては、上記(1)〜(2)いずれの方法を用いても、低温かつ短時間の加熱で導電性被膜の所望の導電性を得ることができる。
また導電性被膜の保護を目的として、導電性被膜上にオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらワニスやコーティング剤は通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。
【0071】
本発明の導電性被膜には、その用途により各種機能層を積層することもできる。例えば導電性被膜の上に、保護層を形成する場合、下地の反対面に接着剤層を形成する場合等をあげることができる。
【0072】
導電性被膜の保護する方法として、導電性被膜上に接着剤を介して紙やプラスチックフィルムを接着する方法や、導電性被膜の上にプラスチックの溶融押出し等によりラミネートする方法が挙げられる。さらに導電性被膜上にレジスト層を設けることで、保護することもできる。
【0073】
導電性被膜がより高い導電性を得るためには、加熱のみならず加熱加圧を行うことが好ましい。加熱加圧は、プレスロール機、プレス機、ラミネーター等で行うことができる。加熱や加熱加圧の条件は、下地に悪影響のない範囲で行えばよいが、加熱温度は50〜150℃、加圧条件は、0.5〜2.0MPa、加圧時間は10秒〜10分間の範囲で行うことが好ましい。例えばプレスロール機を用いる場合、ロールの線圧は1〜25kg/cmの範囲が好ましい。また、プレス時の搬送速度は0.1〜30m/分の範囲で行うことが好ましい。
【0074】
前記下地としては、紙、プラスチック、ガラス、繊維等を使用することができる。下地はフィルム状、シート状または板材であってもよい。また、下地上に予め他の層が形成されたものを下地として使用してもよい。紙系としては、例えば、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できる。これらの中では、導電性被膜として安定した導電性を得る観点からは、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど導電性被膜の体積抵抗値が安定して発現するため好ましい。
【0075】
プラスチック系としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックを使用することができる。プラスチックフィルムの表面には、形成される導電性被膜の密着性を高めたり、塗布、印刷される導電性回路等の印刷再現性等を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、ポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等の樹脂コーティング剤を塗布したりすることができる。
【0076】
ガラス系としては、一般に基板用ガラスとして使用されているものは、いずれも使用することができる。例えば、ソーダライムガラス、マイクロシートガラス、無アルカリガラス、耐熱ガラス、バイコールガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0077】
繊維系としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、絹、羊毛等の動物繊維、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等の化学繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維が挙げられる。また、繊維の構造体としては、例えば、織物、ニット、不織布等いずれのものも用いることができる。
【0078】
上記下地は、導電性被膜との密着性を高めるため、例えばプリント配線回路の導電回路を印刷により形成するときに、微細な回路幅での印刷を可能とするために、コロナ放電処理やプラズマ処理などの乾式処理や、ポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等の樹脂コーティング剤を塗布する湿式処理によるアンカー処理をすることも好ましい。
【0079】
本発明の導電性被膜の製造方法において形成される導電層(A)とイオン交換層(E)の形成は、印刷もしくは塗工により行うことが好ましい。例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷などの各種印刷方式や、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等の各種塗工方式を用いることができる。また印刷形態もべた塗りであってもよいし、配線回路などのパターン印刷であってもよい。
【0080】
導電性被膜の厚さは、0.01〜30μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましい。例えば、導電性被膜が電磁波シールド層として用いられる場合には、0.05〜10μmが好ましく、また、導電回路として用いられる場合には、0.5〜30μmが好ましい。導電性被膜の厚さが0.01μm未満のときは導電性が不足する恐れがあり、30μmを越えると低コスト化が難しくなる恐れがある。
【0081】
本発明の導電性被膜は、プリント配線板の導電性回路として好ましく用いることができる。前記のプリント配線板の導電性回路は、タッチパネルの電極用途、メンブレンスイッチの電極用途、非接触型ICメディアのアンテナ回路や、電磁波シールド用メッシュ非導電性物への導電性付与膜、例えば導電布等、FPCの配線回路などに用いることもできる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0083】
[導電性インキ製造例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびオレイン酸銀38.9部を仕込み、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2molの割合)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2molの割合)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。反応終了後、溶液を静置すると、上層と下層に分離した。下層の水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去した。そこで油層に蒸留水を加え、洗浄・分離を数回繰り返し導電性インキを得た。得られた導電性インキの、銀微粒子の平均粒子径は0.007μmであり、銀濃度は73%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0084】
[導電性インキ製造例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびプロピオン酸銀18.1部を仕込み、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2molの割合)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1molの割合)を添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を添加すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。反応終了後、溶液を静置すると、上層と下層に分離した。下層の水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去した。そこで油層に蒸留水を加え、洗浄・分離を数回繰り返し導電性インキを得た。得られた導電性インキの、銀微粒子の平均粒子径は0.005μmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0085】
[導電性インキ製造例3]
原料の金属塩をヘキサン酸銀22.3部に変更した以外は、合成例2と同様にして導電性インキを得た。得られた導電性インキの、銀微粒子の平均粒子径は0.005μmであり、銀濃度は80%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0086】
[導電性インキ製造例4]
原料の金属塩をステアリン酸銀39.1部に変更した以外は、合成例2と同様にして導電性インキを得た。得られた導電性インキの銀微粒子の平均粒子径は0.008μmあり、銀濃度は65%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0087】
[導電性インキ製造例5]
導電性インキ製造例3で得られたインキ100部に対して、1〜4個の水酸基を有する炭素数10〜18の化合物(F)としてジヒドロターピネオール20部を加えて攪拌し導電性インキを得た。銀微粒子の平均粒子径は0.005μm、銀濃度は66.7%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化は無く安定であった。
【0088】
[導電性インキ製造例6]
導電性インキ製造例3で得られたインキ100部に対して、1〜4個の水酸基を有する炭素数10〜18の化合物(F)としてイソテトラデカノール20部を加えて攪拌し導電性インキを得た。銀微粒子の平均粒子径は0.005μm、銀濃度は66.7%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化は無く安定であった。
【0089】
[共重合物溶液製造例1]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)25.0部、イオン交換水226.7部、メタノール340.0部、ベンジルクロライド20.1部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、n−ブチルメタクリレート(n−BMA)75.0部を加えて60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて、後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、メタノールと水の混合液370部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体(D)の溶液を得た。
【0090】
[共重合物溶液製造例2]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)35.0部、イオン交換水226.7部、エタノール340.0部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)65.0部を加えて60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行い、ベンジルクロライド28.2部を加えて30分攪拌を続けた。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、エタノールと水の混合液350部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体(D)の溶液を得た。
【0091】
[共重合物溶液製造例3]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩(DMC)50.0部、イオン交換水226.7部、メタノール340.0部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)50.0部を加えて60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、メタノールと水の混合液350部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体(D)の溶液を得た。
【0092】
[共重合物溶液製造例4〜8]
製造例3と同様の方法で、表1の組成に従って合成を行い、共重合体(D)の溶液を得た。
【0093】
[共重合物溶液製造例9]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)100.0部、イオン交換水510.0部、メタノール56.7部、ベンジルクロライド80.5部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、メタノールと水の混合液363.7部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体の溶液を得た。
【0094】
[共重合物溶液製造例10]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩(DMC)100.0部、イオン交換水510.0部、メタノール56.7部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、60℃に昇温した。60℃になったら水溶性アゾ系重合開始剤V−50(和光純薬工業社製)を10.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、メタノールと水の混合液359.0部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体の溶液を得た。
【0095】
[共重合物溶液製造例11]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)60.0部、メタクリル酸(MAA)20.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)20.0部、イオン交換水283.4部、エタノール283.3部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、メタノールと水の混合液360.0部を溜去したのち、水で希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体の溶液を得た。
【0096】
[共重合物溶液製造例12]
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けたセパラブル4口フラスコに、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)40.0部、メチルメタクリレート(MMA)20.0部、n−ブチルメタクリレート(n−BMA)40.0部、エタノール566.7部を量り採り、室温で30分間攪拌した後、60℃に昇温した。60℃になったら和光純薬工業社製水溶性アゾ系重合開始剤V−50を5.0部加えて3時間反応した。反応終了1時間と2時間後にV−50を0.5部づつ加えて後反応を行った。その後、フラスコに真空ポンプを取り付けて、600torrの減圧度で脱溶剤を行い、エタノール347.2部を溜去したのち、エタノールで希釈して不揮発分が20%となるように調整して共重合体の溶液を得た。
共重合体の性状について表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表中の記号の意味を以下に示す。
DM:メタクリル酸ジメチルアミノエチル、DMC:メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル、2−EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル、イソデシルMA:メタクリル酸イソデシル、ラウリルMA:メタクリル酸ラウリル、ステアリルMA:メタクリル酸ステアリル、BZMA:メタクリル酸ベンジル、PhEMA:メタクリル酸フェノキシエチル、MMA:メタクリル酸メチル、EA:アクリル酸エチル、n−BMA:メタクリル酸n−ブチル、MAA:メタクリル酸、2−HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、V−50:2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、MeOH:メタノール、EtOH:エタノール、IPA:イソプロピルアルコール。
【0099】
「実施例1」
共重合物溶液製造例1で得られた共重合体(D)の溶液75部と水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶液25部とを混合し、ディソルバーを用いて20分間攪拌して塗液(G)を得た。次いで、ポリエステルフィルム(東洋紡社製「エステルE5100」厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工し、75℃で5分間乾燥して、乾燥後の塗膜厚さ6μmのイオン交換膜を得た。
次に、導電性インキ製造例1で得られた導電性インキを用いて、上記イオン交換膜の上に、インクジェット法によって幅3mmの導電層の回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中で150℃30分間乾燥させて導電性被膜を得た。
【0100】
「実施例2〜8」
実施例1と同様の方法で、表2に従って導電性被膜を得た。
【0101】
「実施例9」
共重合物溶液製造例1で得られた共重合体(D)の溶液を用いて、実施例1と同様の方法で、バーコーターによる塗工の替わりにインクジェット法で印刷してイオン交換層を得た。実施例1と同様の方法で、表2に従って導電性被膜を得た。
【0102】
「実施例10〜16」
実施例9と同様の方法で、表2に従って導電性被膜を得た。
【0103】
「実施例17」
ポリエステルフィルム(厚さ100μm)上に、導電性インキ製造例1で得られた導電性インキを用いて、インクジェット法によって幅3mmの回路パターンを印刷し、75℃で3分間乾燥させて導電層を形成した。次いで、導電層の回路パターン上に、共重合物溶液製造例1で得られた共重合物の溶液87.5部と、水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶液12.5部とを混合し、ディソルバーを用いて20分間攪拌して塗液を得た。この塗液を上記導電層の上にバーコーターを用いて塗工し、熱風乾燥オーブン中で150℃30分間乾燥させてイオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
【0104】
「実施例18〜24」
実施例17と同様の方法で、表3に従って導電性被膜を得た。
【0105】
「実施例25」
実施例17と同様の方法で導電層を形成した後に、幅3mmの回路パターンの上に、塗液をバーコーターの替わりにインクジェット法を用いて幅5mmに印刷し、熱風乾燥オーブン中で150℃30分間乾燥させてイオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
【0106】
「実施例26〜32」
実施例25と同様の方法で、表3に従って導電性被膜を得た。
【0107】
「比較例1」
共重合物溶液製造例9で得られた共重合体の溶液50部と水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶液50部とを混合し、ディソルバーを用いて20分間攪拌して塗液を得た。次いで、ポリエステルフィルム(厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工し、75℃で5分間乾燥して、乾燥後の塗膜厚さ6μmのイオン交換層を得た。
次に、導電性インキ製造例1で得られた導電性インキを用いて、上記イオン交換層の上に、インクジェット法によって幅3mmの導電層の回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中で150℃30分間乾燥させて導電性被膜を得た。
【0108】
「比較例2〜4」
比較例1と同様の方法で、表4に従って導電性被膜を得た。
【0109】
「比較例5」
ポリエステルフィルム(厚さ100μm)上に、導電性インキ製造例5で得られた導電性インキを用いて、インクジェット法によって幅3mmの導電層の回路パターンを印刷し、75℃で3分間乾燥させた。次いで、共重合物溶液製造例9で得られた共重合体の溶液50部と水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶液50部とを混合し、ディソルバーを用いて20分間攪拌して塗液を得た。
次いで、導電層の回路パターン上に、上記塗液をバーコーターを用いて塗工し、熱風乾燥オーブン中で150℃30分間乾燥させてイオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
【0110】
「比較例6〜8」
比較例5と同様の方法で、表4に従って導電性被膜を得た。
【0111】
「比較例9」
ポリエステルフィルム(厚さ100μm)上に、導電性インキ製造例3で得られた導電性インキを用いて、インクジェット法によって幅3mmの導電層の回路パターンを印刷し、75℃で3分間乾燥させた。次いで、共重合物溶液製造例9で得られた共重合体の溶液50部と水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶液50部とを混合し、ディソルバーを用いて20分間攪拌して塗液を得た。
次いで、導電層の回路パターン上に、上記塗液をインクジェット法で印刷したがノズルが詰まって印刷できなかった。
【0112】
「比較例10〜12」
共重合物溶液製造例10〜12の共重合物溶液を用いて、比較例9と同様の方法でインクジェット法で印刷を試みたが、ノズルが詰まって印刷できなかった。
【0113】
なお実施例、比較例で得られた導電性被膜の層構成は、以下の2パターンである。
(1)下地/イオン交換層/導電性被膜
(2)下地/導電性被膜/イオン交換層
【0114】
実施例および比較例で得られた導電性被膜について、下記の項目を評価した。
【0115】
〔膜厚〕
導電性皮膜およびイオン交換層の膜厚を仙台ニコン社製膜厚計「MH−15M型」で測定した。
【0116】
〔下地密着性〕
下地上もしくはイオン交換層上に形成した導電性被膜に、セロハンテープを貼り付け、セロハンテープを急激に引き剥がした。その時の導電性被膜の剥離の程度を、下記評価基準により評価した。また層構成(2)の場合はイオン交換層上からセロハンテープを貼り付け評価を行った。
○:殆ど剥離しない。(剥離面積10%未満)
△:部分的に剥離した。(剥離面積10%以上50%未満)
×:殆ど剥離した。(剥離面積50%以上)
【0117】
〔体積抵抗値〕
得られた幅3mmの導電回路パターンを30mm間隔で4箇所はさみ、その回路の抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器社製「DR−1000CU型」で測定した。得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。
なお、導電性被膜の製造で下地、導電性被膜(導電層)、イオン交換層の順に積層した〔層構成(2)に相当〕導電性被膜は、一部分イオン交換層を剥離し、導電性被膜を露出させて抵抗値、膜厚を測定して体積抵抗値を算出した。さらに導電層の上にオーバーコートしたものについては、オーバーコート層の一部を剥離して導電性被膜を露出させて抵抗値を測定した。
【0118】
〔耐折曲げ性〕
得られた導電性被膜の体積抵抗値を測定した後、導電性被膜側を内側にして180度折り曲げ、今度は導電性被膜側を外側にして180度折り曲げて、再び体積抵抗値を測定して、折り曲げ前後の抵抗値の変化を評価した。
○:体積抵抗値の変化が20%未満
△:体積抵抗値の変化が20%以上30%未満
×:体積抵抗値の変化が30%以上
【0119】
〔耐水性〕
導電性被膜の表面を、水を含ませた脱脂綿で擦り、導電性被膜が剥離するまでの擦った回数を評価した。また層構成(2)の場合はイオン交換層上からセロハンテープを貼り付け評価を行った。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に、導電性微粒子を含む導電層(A)と、
三級アミノ基および/または四級アンモニウム基を含有するモノマー(B)と、前記モノマー(B)と共重合し得るモノマー(C)とを共重合してなる共重合物(D)を含むイオン交換層(E)、とを積層することを特徴とする導電性被膜の製造方法。
【請求項2】
モノマー(C)が、炭素数6〜20の鎖状もしくは環構造を有するアルキル基およびフェニル基からなる群より選択された1種以上の有機基を含有するモノマーであることを特徴とする請求項1記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項3】
モノマー(B)とモノマー(C)との合計100重量%中、モノマー(B)の割合が25〜75重量%、モノマー(C)の割合が25〜75重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項4】
共重合物(D)が、重合溶媒として、水および炭素数1〜3のアルコールを用いてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項5】
導電層(A)が、インクジェット法により形成されることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の製造方法により得られる導電性被膜。
【請求項7】
請求項6記載の導電性被膜を、導電性回路として有するプリント配線板。
【請求項8】
請求項7記載のプリント配線板を用いてなるタッチパネル。

【公開番号】特開2010−160989(P2010−160989A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3025(P2009−3025)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】