説明

導電性要素、導電性要素形成用感光材料および電極

【課題】高い導電性を有する導電性要素およびその製造方法、並びに、その導電性要素を得るのに好適な導電性要素形成用感光材料を提供する。
【解決手段】支持体と、導電性金属で構成された金属パターン層と、平均軸長が長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20以上である針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性要素、導電性要素形成用感光材料および電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製造方法による導電性要素が検討されている。この中で、支持体上にハロゲン化銀乳剤層のような銀塩含有層を有する、導電性要素形成用感光材料を用いて製造された導電性要素がある。この感光材料をメッシュ状にパターン露光し、現像処理して、現像銀で構成されたメッシュの導電部と、透明性の確保のための開口部を有する導電性要素が製造される(例えば、特許文献1〜2参照)。また別の導電性要素としては、導電性繊維を用いたものも知られている(例えば、特許文献3〜4参照)。
しかし、この導電性要素を電磁波シールド膜、有機EL素子(ここで、「EL」は「エレクトロ ルミネッセンス」の略称である。)または無機EL素子の電極、エレクトロクロミック素子の電極等の各種の電極として使用しようとすると、導電性において不満足なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2007−95408号公報
【特許文献3】特開2009‐277466号公報
【特許文献4】特開2009‐116452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い導電性を有する導電性要素を提供することにある。
本発明の別の目的は、高い導電性を有する導電性要素を製造するのに好適な導電性要素形成用感光材料を提供することにある。
本発明の別の目的は、高い導電性を有する電極を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、高い導電性を有する導電性要素の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、導電性微粒子として粒状のものを使用すると、長時間の耐久性が不十分であることを見出した。また,針状形状の導電性微粒子を用いた導電性要素の場合には、凝集が発生しやすく、生産性が低下した。
そこで本発明者は、さらに針状導電性微粒子にショ糖脂肪酸エステルを併用することで、導電性微粒子の凝集を十分に抑制することができ、さらに長時間の使用に対する耐久性も向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第一の態様において、第一の支持体と、導電性金属で構成された金属パターン層と、平均軸長が長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20以上である針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素を提供する。
また、本発明は、第二の態様において、支持体と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素を提供する。
また、本発明は、第三の態様において、支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素形成用感光材料を提供する。
また、本発明は、第四の態様において、導電性金属で構成された金属パターン層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層と、該導電性微粒子含有層に隣接する被通電層とを有する電極を提供する。
更にまた、本発明は、第五の態様において、上記導電性要素形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して、金属銀で構成された金属パターン層と、前記導電性微粒子含有層とを有する導電性要素を調製する導電性要素の製造方法を提供する。
【0006】
本発明においては、上記の何れの態様においても、ショ糖脂肪酸エステル/針状導電性微粒子の含有比率が10〜50質量%であること、導電性微粒子含有層に含まれるショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5g/m以下であることが好ましい。また、導電性微粒子が、SnO、ZnO、TiO、Al、In、MgO、BaOおよびMoOからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、これらの複合金属酸化物またはこれらの金属酸化物に異種原子を含む金属酸化物を含むものであること、特に、金属酸化物がアンチモンがドープされたSnOであること、導電性微粒子含有層に含まれる導電性微粒子の含有量が、0.05g/m〜0.99g/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い導電性を有する導電性要素およびその製造方法、並びに、その導電性要素を得るのに好適な導電性要素形成用感光材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、支持体と、導電性金属で構成された金属パターン層と、平均軸長が長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20以上である針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素である。
また本発明は、支持体と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素、並びに、支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素形成用感光材料にもある。
【0009】
以下、本発明の導電性要素に使用される各素材について、説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて記載された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
[支持体]
本発明の導電性要素に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などが挙げられる。
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(融点:269℃)、ポリエチレン(PE)(融点:135℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やトリアセチルセルロース(TAC)(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルム、またはプラスチック板が好ましい。光透過性や加工性などの観点から、PETが特に好ましい。
支持体の厚みは、10μmから200μmの範囲から選ばれ、より好ましくは、70μmから180μmの範囲から選ばれる。
支持体の透明性は高いことが好ましい。支持体の全可視光透過率は70%以上が好ましく、85%以上がさらに好ましく、特に好ましくは90%以上である。
着色した支持体を用いることもできる。
【0010】
[金属パターン層]
本発明の導電性要素に使用される金属パターン層は、導電性金属で構成される。導電性金属としては、導電性を示す金属であれば使用することができる。導電性金属としては、銅、アルミニウム、銀などが導電性に優れるので好ましい。
導電性金属は、単一の金属で構成されても良いし、合金であってもよい。また、金属パターンを構成する金属は、導電性要素の平面に垂直な面の断面で見た場合に、2種以上の金属の積層構造となっていても良い。
金属パターン層は細線で構成されており、そのパターン形状はメッシュやストライプなどが含まれる。細線の線幅(即ち、細線が延びる方向に垂直な面の断面における導電性要素の平面に平行な方向の最大長さ)は30μm以下であることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。また、細線の線厚(即ち、上記線幅に垂直な方向の最大長さ)は、一般的には、0.1μmから5μmの範囲から選ばれ、より好ましくは、1μmから3μmの範囲から選ばれる。なお、導電性を向上させる観点からは、細線の線厚は大きい方が好ましい。
金属パターン層は、例えば以下の(1)〜(4)に記載の方法により形成される。
(1)支持体に感光性ハロゲン化銀を含有する乳剤層を有する感光材料をパターン露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ上記パターンに相当する金属銀部及び光透過性部を形成して金属パターン層を形成する方法。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させてもよい。
(2)支持体に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、金属パターン層を形成する方法。
(3)支持体上に金属微粒子を含むペースト(触媒を含有)をパターン印刷し、印刷されたペーストに金属めっきを行うことによって、金属パターン層を形成する方法。
(4)支持体上に、金属パターン層をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成する方法。印刷にて形成する場合、金属パターン層に対応する触媒層(触媒を含有)をまず形成し、その後、その触媒層に対して金属めっきを行うことで、金属パターン層を形成でき、導電性を向上させることができる。
【0011】
[導電性微粒子含有層]
導電性微粒子含有層に使用される導電性微粒子には、針状導電性微粒子が使用される。針状導電性微粒子は短軸長0.01μm〜0.02μmのもので、長軸長と短軸長とのアスペクト比は10以上のものが好ましい。より具体的には、針状導電性微粒子としては、平均軸長が、長軸0.2μm〜20μm、短軸0.01μm〜0.02μmのものが好ましい。また,長軸と短軸とのアスペクト比については20以上が好ましく、20〜2000がより好ましく、20〜50がさらに好ましい。その粉体抵抗は3Ωcm〜1000Ωcmが好ましく、100Ωcm〜600Ωcmがより好ましい。
針状導電性微粒子の平均長軸長、平均短軸長及びアスペクト比は、画像解析装置測定による体面平均径より算出される。
針状導電性微粒子を使用することで、EL素子などの電極構造を作製した場合に、耐久性が向上し、長時間一定の輝度で発光させることができる。針状導電性微粒子は、粒状のものに比べてネットワークを構成しやすく、それが耐久性向上に役立っていると本発明者らは考察する。
他方で、針状導電性微粒子を用いる場合には凝集が発生しやすく、生産性を低下させやすいが、ショ糖脂肪酸エステルを併用することで、凝集を十分に抑制することができ、生産性を向上させることができる。この効果は、導電性微粒子/バインダ体積比が大きい場合、すなわち、導電性微粒子の含有量が多い場合に、効果が大きくなる。
【0012】
導電性微粒子は、SnO、ZnO、TiO、Al、In、MgO、BaO、MoOなどの金属酸化物、これらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物にさらに異種原子を含む金属酸化物からなる群から選ばれた化合物を含むものを挙げることができる。異種原子としては、アンチモンがあげられる。このような導電性微粒子は、二種以上組み合わせて使用してもよい。
導電性微粒子は、SnO、ZnO、TiO、Al、InまたはMgOを含むものが導電性という点で好ましく、SnOを含むものがより好ましい。特に、アンチモンがドープされたSnOを含むものが導電性という点で更に好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnOを含むものが最も好ましい。
上記特性を有する導電性微粒子としては、石原産業社製FSシリーズや三菱マテリアル電子化成社製導電性材料が使用できる。特に、石原産業社製FS−10Dが好ましい。
【0013】
[ショ糖脂肪酸エステル]
導電性微粒子含有層は、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステルを含有する。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル/針状導電性微粒子の含有比率が10〜50質量%で含有することが好ましく、10〜30質量%で含有することがより好ましい。
上記含有比率が10質量%よりも低くなるにつれ、針状導電性微粒子の凝集が発生しやすくなり、EL素子の電極として使用した場合には表示部に欠陥が現れるようになる。
他方、上記含有比率が50質量%を超えるにつれ、導電性要素の表面抵抗が低下してくる。これは、針状導電性微粒子にショ糖脂肪酸エステルが付着する量が多くなりすぎるために、導電性を阻害するようになるためと推察される。
また導電性微粒子含有層に含まれるショ糖脂肪酸エステルの含有量は0.5g/m以下であることが好ましく、0.3g/m以下であることがより好ましい。上記含有量が0.5g/mを超えるにつれて、導電性要素の表面抵抗が低下してくるようになる。また導電性微粒子層の構成する成分を溶解または分散した溶剤溶液を塗布液として、支持体上に塗布し、そして当該溶剤を蒸発除去して導電性微粒子層を形成する場合には、上記塗布液中には、ショ糖脂肪酸エステルの濃度は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノ脂肪酸エステル、ショ糖ジ脂肪酸エステル、ショ糖トリ脂肪酸エステルが挙げられるが、ショ糖モノ脂肪酸エステルがより好ましく、脂肪酸部分としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。即ち、糖残基がショ糖であり、アルキル基又はアルケニル基は、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等のものが好ましい。具体的に好ましいショ糖モノ脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノラウレート、ショ糖モノステアレートが好ましく、ショ糖モノラウレートが特に好ましい。これらのショ糖脂肪酸エステルは和光純薬工業社から市販されている。
【0014】
[導電性微粒子含有層のバインダ]
本発明による導電性要素においては、導電性微粒子含有層のバインダ量は少ない方が好ましく、1g/m以下とすることが好ましい。導電性微粒子含有層のバインダ量は、0.5g/m以下が好ましく、0.1g/m以下がより好ましい。これにより、高い導電性を有する導電性要素が得られる。
【0015】
導電性微粒子含有層に含まれるバインダは、前記導電性微粒子を導電性微粒子含有層中に均一に分散させ、かつ導電層を前記支持体表面に固着させる機能を有するものから選ばれることが好ましい。このようなバインダとしては、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0016】
上記水溶性ポリマーの具体例には、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が含まれる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。ゼラチンとしては、化学修飾したゼラチンであっても良く、例えばアセチル化、脱アミノ化、ベンゾイル化、ジニトロフェニル化、トリニトロフェニル化、カルバミル化、フェニルカルバミル化、スクシニル化、コハク化、フタル化等を施したゼラチン等がある。この中でも好ましいのは、フタル化ゼラチンを用いた場合である。フタル化ゼラチンを用いた場合、導電性の向上と塗布面状の向上とを両立することができる。本発明においては、バインダとしては、ゼラチンが特に好ましい。
導電性微粒子含有層には、界面活性剤に加えて、ラテックスを含有させることもできる。このようなラテックスの好ましい例としては、ポリ乳酸エステル類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリアセタール類、SBR類、ポリ塩化ビニル類などのポリマーラテックスを挙げることができる。また、特開2009−79166に記載のポリマーラテックスを単独又は組合せて使用することができる。本実施形態では、ラテックスとしては、アクリル酸エステル−スチレン共重合体やスチレン−ブタジエン共重合体からなるポリマー粒子を含むポリマーラテックスが特に好ましい。
【0017】
(保護層/密着付与層)
本発明に係る導電性要素は、導電性微粒子含有層上に、さらに保護層/密着付与層を含んでいてもよい。この保護層/密着付与層は、導電性微粒子含有層に使用されるバインダを含有するのが含まれである。この層には、上記導電性微粒子含有層と同様にラテックスを含有させることもでき、アクリル酸エステル−スチレン共重合体やスチレン−ブタジエンからなるポリマー粒子を含むポリマーラテックスが特に好ましい。
【0018】
導電性微粒子含有層は、導電性微粒子の量が0.05g/m〜0.99g/mの範囲となるように設けることが、導電性、透明性という点から好ましい。上記下限値は、0.1g/mがより好ましく、0.2g/mがさらに好ましく、0.3g/mが特に好ましい。上記上限値は、0.5g/mが好ましい。
【0019】
金属パターン層と導電性微粒子含有層は、金属パターン構成する導電性金属と導電性微粒子との間を電子が流れるように、隣り合うように配置されていることが好ましい。その順序に制限はないが、好ましくは支持体に近い側から、金属パターン層および導電性微粒子含有層の順とされる。
【0020】
支持体と、金属パターン層または導電性微粒子含有層との間には、これら両者の接着力を十分なものとすること等を目的として下塗り層を有していても良い。また、金属パターン層および導電性微粒子含有層を有する側の導電性要素の表面には、導電性微粒子含有層の損傷を防ぐ等の目的で、保護層を有していても良い。
更に、支持体の金属パターン層が形成された側とは反対側の表面に、バック層を有していても良い。バック層は、導電性要素が湾曲またはカールすることを防止し、平面性の優れた導電性要素をもたらす。また、バック層は、本発明による導電性要素を例えば無機ELや有機EL等の電極として組み込む場合に、接着層としての機能を持たせたものであっても良い。
支持体とその上に隣接する層との間に下塗り層を有する場合、下塗り層としては、ポリマーバインダを構成成分とする層とされる。
また、支持体から最も離れた層として保護層を有する場合、保護層としては、ポリマーバインダを構成成分とする層とされる。
下塗り層または保護層に使用されるポリマーバインダとしては、前述の導電性微粒子含有層に使用されるバインダを挙げることができる。
【0021】
導電性要素が保護層を有する場合、保護層はシリカを含有することが好ましい。シリカの含有量は、0.16g/m以上がより好ましく、0.24g/m以上がさらに好ましい。シリカの含有量は、0.5g/m以下がより好ましく、0.4g/m以下がさらに好ましい。
シリカとしては、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)を用いることが好ましい。
コロイダルシリカとしては、平均粒径が1nm以上1μm以下の無水ケイ酸の微粒子のコロイド(膠質)を指し、特開昭53−112732号、特公昭57−009051号、同57−51653号等に記載されているものを参考にすることができる。これらのコロイド状シリカはゾル−ゲル法で調製して使用することもできるし、市販品を利用することもできる。
市販品を使用する場合は、日産化学(株)製のスノーテックス−XL(平均粒径40〜60nm)、スノーテックス−YL(平均粒径50〜80nm)、スノーテックス−ZL(平均粒径70〜100nm)、PST−2(平均粒径210nm)、MP−3020(平均粒径328nm)、スノーテックス20(平均粒径10〜20nm、SiO/NaO>57)、スノーテックス30(平均粒径10〜20nm、SiO/NaO>50)、スノーテックスC(平均粒径10〜20nm、SiO/NaO>100)、スノーテックスO(平均粒径10〜20nm、SiO/NaO>500)等を好ましく使用することができる(いずれも商品名。ここでSiO/NaOとは、二酸化ケイ素と水酸化ナトリウムとの含有質量比を、水酸化ナトリウムをNaOに換算して表したものであり、カタログに記載されている。)。市販品を利用する場合はスノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、PST−2、MP−3020、スノーテックスCが特に好ましい。
また、コロイダルシリカとしては、特開平10−268464号公報記載の、太さ1〜50nm、長さ10〜1000nmの細長い形状を有するコロイド状シリカ、特開平9−218488号公報あるいは特開平10−111544号公報記載のコロイド状シリカと有機ポリマーとの複合粒子も好ましく用いることができる。
【0022】
金属パターン層が正方形の開口部を有する場合、その開口部の幅(正方形の一辺)をX(単位:μm)とし、且つその開口部の表面抵抗をY(単位:Ω/□)としたときに、下式(a)及び(b)を満たすように形成されることが好ましい。
式(a) 50≦X≦7000
式(b) 10≦Y≦(5×1023)×X−4.02
上記Yは、より好ましくは下記(b1)、さらに好ましくは下記(b2)を満たすように形成される。
式(b1) 10≦Y≦1×1023×(X)−4.02
式(b2) 10≦Y≦3×1022×(X)−4.25
メッシュの線幅Dは、導電性要素を透明電極として使用する場合には、なるべく狭い方が高い透明性が確保されるので好ましい。一般的には30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。線幅は、0.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。例えば、直線格子パターンでは、線幅D/開口部の幅Xの比、すなわち、ライン/スペースが、5/995〜10/595であることが好ましい。
本発明において、金属メッシュの開口部の幅Xは50μm〜7,000μmであり、100μm〜5,000μmであることがより好ましく、200〜2,000μmであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明による導電性要素は、支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素形成用感光材料をパターン露光および現像処理する製造方法(a)、または支持体と、銀塩含有層とを有する導電性要素形成用感光材料をパターン露光および現像処理して、支持体と、現像により形成される金属銀で構成された金属パターンを含む金属パターン層を有する導電性要素前駆体を作製し、該金属パターン層上に、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層を形成する製造方法(b)によって製造することが好ましい。なお、製造方法(b)における導電性要素前駆体の代わりに、先に[金属パターン層]の項で記載した(2)〜(4)に記載の方法により形成された金属パターン層も使用できる。
以下、これらの製造方法について、説明する。
【0024】
上記の通り、上記製造方法(a)においては、支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素形成用感光材料(a)(以下、「感光材料(a)」とも言う。)が使用され、上記製造方法(b)においては、支持体と、銀塩含有層とを有する導電性要素形成用感光材料(b)(以下、「感光材料(b)」とも言う。)が使用される。
上記感光材料(a)および感光材料(b)の何れにおいても、その支持体としては、前述の導電性要素の支持体について説明したものが使用される。
【0025】
<銀塩含有層>
上記感光材料(a)および感光材料(b)に使用される銀塩含有層に含まれる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0026】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀は保護コロイドとしてのバインダ中に粒子として分散含有するハロゲン化銀乳剤として用いられる。ハロゲン化銀乳剤に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0027】
<バインダ>
ハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダの比率が多いことが好ましい。
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
好ましくはゼラチンが使用される。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他(アミノ基、カルボキシル基を修飾したフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができるが、銀塩調製工程において使用するゼラチンはアミノ基の正の電荷を無電荷あるいは負の電荷に変えたゼラチンを用いることが好ましいが、さらにフタル化ゼラチンを用いるのがより好ましい。
【0028】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、ハロゲン化銀の分散性と感光層の密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。導電性要素の観点からは、乳剤層中のバインダの含有量は少ない方が好ましい。これらの観点から、ハロゲン化銀を銀に換算した体積/バインダの体積の比(以下、「銀/バインダ体積比」という。)が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。また、銀/バインダ体積比率の上限は4/1が好ましく、3/1がより好ましい。
【0029】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30質量%〜90質量%の範囲であり、50質量%〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
上記乳剤層には、かぶり抑制剤を含有させておくことが好ましい。かぶり抑制剤としては、好ましくは窒素原子含有へテロ環化合物から選ばれ、中でもインダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類、トリアザインドリジン類である。これらの化合物は、導電性要素の開口部に黒色の斑点が発生することを抑制し、しかもかぶり抑制剤の添加に伴う導電性要素としての導電性を低下させることがない点で好ましい。かぶり抑制剤の量の好ましい範囲は黒色の斑点の発生量が少なく、しかも導電性要素の表面抵抗の上昇を抑制できるという点から3mg/m〜15mg/mであり、更に好ましい範囲は6mg/m〜13mg/mである。かぶり抑制剤のモル換算含有量では、0.02mmol/m〜0.13mmol/mであり、更に好ましい範囲は0.06mmol/m〜0.11mmol/mである。
【0031】
銀塩含有層には、その他に、従来より写真用ハロゲン化銀乳剤に添加される種々の添加剤、例えば染料、ポリマーラテックス、硬膜剤、硬調化剤、調色剤、導電化剤等、を含有させることができる。
【0032】
本発明の導電性要素形成用感光材料の上記感光層は、支持体上に銀塩の量が銀に換算して5g/m〜30g/mとなるように設けられることが好ましく、さらに7g/m〜15g/mの範囲がより好ましい。
また、感光層の厚みは1μm〜20μmの範囲が好ましく、更に1μmから10μmの範囲がより好ましい。
【0033】
本発明による導電性要素を前記の製造方法(b)により製造する場合には、支持体と銀塩含有層とを含む感光材料(b)が使用されるが、本発明による導電性要素を前記の製造方法(a)により製造する場合には、上記銀塩含有層の上に、更に針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層が設けられた感光材料(a)が使用される。この導電性微粒子含有層の組成、厚さについては、前述の導電性要素についての説明した内容がそのまま適用される。感光材料(a)および感光材料(b)において、支持体と感光層の間に下塗り層を有してもよい。感光材料(a)の場合には、導電性微粒子含有層の上に更に保護層を設けてもよい。また、感光材料(b)の場合には、銀塩含有層の上に、保護層を設けても良い。
【0034】
〈導電性要素の製造方法〉
上記の導電性要素形成用感光材料(a)を用いて、本発明による導電性要素を製造する製造方法(a)および上記導電性要素形成用感光材料(b)を用いて、本発明による導電性要素を製造する製造方法(b)について説明する。なお、以下の説明においては、金属パターンのバターンとして、メッシュ状のものについて説明するが、その他のパターンの場合についても同様に適用できる。
【0035】
〈導電性要素の製造方法(a)〉
導電性要素の製造方法(a)では、先ず、支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを含有する感光材料(a)をメッシュ状にパターン露光し、現像処理する。ここで、現像処理とは、露光により潜像核が形成されたハロゲン化銀粒子を銀に還元する現像工程と当該潜像核が形成されなかったハロゲン化銀粒子を溶解除去する定着工程を含むものである。
【0036】
〈露光〉
露光はメッシュなどのパターン状に行われる。メッシュの形状は、前述の通り、正方形、長方形、三角系、六角形など、所望の形状とされる。
パターン露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0037】
〈現像処理〉
メッシュ状にパターン露光された感光材料(a)は、現像処理される。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術が用いられる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。
【0038】
本発明の製造方法(a)における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着工程を含むことができる。本発明の製造方法において、定着工程は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術が用いられる。
【0039】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得やすいため好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部は、銀及び非導電性の高分子からなり、銀/非導電性高分子の体積比率が2/1以上であることが好ましく、3/1以上であることがさらに好ましい。
現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、ハロゲン化銀乳剤の調製時に、ハロゲン化銀粒子にロジウムイオンまたはイリジウムイオンをドープさせる硬調化手段が挙げられる。
【0040】
本発明では、現像温度、定着温度及び水洗温度は25℃以下で行うことが好ましい。なお、現像処理に続き、必要により平滑化処理、脱バインダ処理を行うことにより、さらに導電性の高いフイルムを得ることができる。
【0041】
本発明では、上記のパターン露光および現像処理を行うことにより露光部に現像銀で構成されたメッシュが形成されると共に、未露光部に開口部が形成される。そして、このようにして形成された金属銀メッシュ層の上には、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層を有しており、かくして本発明による導電性要素が得られる。
【0042】
〈導電性要素の製造方法(b)〉
製造方法(b)においては、先ず、支持体と、銀塩含有層とを含む感光材料(b)をメッシュ状にパターン露光し、現像処理して、支持体と、現像銀で構成されたメッシュを含む現像銀メッシュ層とを有する導電性要素前駆体が作製される。パターン露光は、前記の製造方法(a)の場合と同じパターン露光がそのまま適用できる。また現像処理は、定着処理および水洗を含めて、前記の製造方法(a)の場合と同じ現像処理がそのまま適用される。
このようにして得られた導電性要素前駆体は、透明支持体の一方の表面上に、現像銀で構成されたメッシュ層を有する。
【0043】
〈導電性微粒子含有層の形成〉
次に、導電性要素前駆体の銀メッシュ層上に、導電性微粒子含有層が形成される。
導電性微粒子含有層に使用される導電性微粒子およびバインダとしては、既に説明した本発明による導電性要素の導電性微粒子含有層に使用される導電性微粒子およびバインダと同じものが使用される。
【0044】
導電性微粒子含有層は、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する
以上により、透明支持体上に銀メッシュ層と導電性微粒子含有層とで構成された導電層を有する、本発明による導電性要素が製造される。
【0045】
〈その他の所望により施される工程〉
導電性要素の製造方法(b)においては、導電性要素前駆体を作製後、導電性微粒子含有層を形成する前に、導電性要素前駆体に対して、以下に説明する酸化処理、還元処理、平滑化処理、温水処理または蒸気処理、メッキ処理等を施してもよい。
【0046】
〈酸化処理〉
現像処理後の現像銀には、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に銀が僅かに沈着していた場合に、この銀を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、現像処理後に行なわれる。
【0047】
さらにパターン露光及び現像処理後の現像銀を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により現像銀の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0048】
なお、本発明の製造方法においては、線幅、開口率、銀含有量を特定した現像銀で構成されたメッシュを、露光・現像処理によって直接支持体上に形成するため、十分な表面抵抗率を有することから、メッシュを構成する現像銀に物理現象及び/又はメッキ処理を施して、あらためて導電性を付与する処理を行う必要がない。このため、簡易な工程で透光性の導電性要素を製造することができる。
【0049】
〈還元処理〉
現像処理により生じる不純物である酸化銀、硫化銀を除去するために、現像処理後に水洗処理を行い、還元水溶液に浸漬することが好ましい。これにより、一段と高い導電性を有する導電性要素が得られる。
還元水溶液としては、亜硫酸ナトリウム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液pHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0050】
〈平滑化処理〉
導電性要素前駆体には、平滑化処理を施すことが好ましい。これによって現像銀で構成されるメッシュの導電性が顕著に増大する。 平滑化処理は、第1カレンダーロールと第2カレンダーロールとを各々の回転軸が平行となるように互いに対向して配置した組合せで構成される少なくとも一対のロールのニップ間を2940N/cm以上の線圧力で前記導電性要素前駆体20を通すことにより行うことが好ましい。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理を「カレンダー処理」と記す。
上記第1カレンダーロールおよび第2カレンダーロールに使用されるロールとしては、少なくともその表面を形成する素材がエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の樹脂で構成されている樹脂製ロールおよび表面が金属で構成されている金属製ロールが含まれる。特に、支持体の一方の表面のみに感光層を有する導電性要素形成用感光材料から作製された導電性要素前駆体の場合には、しわの発生を抑制するために、以下の条件にてカレンダー処理することが好ましい。
【0051】
(1)現像処理を終えた導電性要素前駆体の支持体の厚みが95μm以上であること。
(2)カレンダー処理は互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて導電性要素前駆体を押圧すること。
(3)支持体に接触する第1カレンダーロールが樹脂製ロールであること。
【0052】
さらに好ましい条件としては、以下の通りである。少なくともいずれか1つを満足すればよい。
(a)導電性要素前駆体のメッシュに接触する第2カレンダーロールが金属製ロールであること。
(b)金属製ロールの表面が鏡面加工されていること。
(c)金属製ロールの表面がエンボス加工されていること。
(d)エンボス加工された金属製ロールの表面粗さは、最大高さRmaxで0.05s〜0.8sであること。
(e)メッシュは、銀/バインダ体積比が1/1以上であること。
(f)カレンダー処理は、導電性要素前駆体に対してニップ間の線圧が2940N/cm〜5880N/cmで行うこと。
(g)カレンダー処理は、導電性要素前駆体の搬送速度を10m/分〜50m/分で行うこと。
(h)導電性要素前駆体の表面抵抗をR1、導電性要素の表面抵抗をR2としたとき、
0.58≦R2/R1≦0.77
であること。
【0053】
カレンダー処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、メッシュパターンの形状やメッシュと開口部の面積比や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0054】
〈温水処理または蒸気処理〉
透明支持体上に現像銀で構成された銀メッシュ層を形成した後、導電性微粒子含有層を形成する前に、導電性要素前駆体を温水ないしはそれ以上の温度の加熱水に浸漬させる温水処理か、または水蒸気に接触させる蒸気処理を行うことが好ましい。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて現像銀(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
本プロセスは、現像処理後に実施できるが、平滑化処理後に行うことが望ましい。
温水処理で使用される温水の温度は好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは80℃〜100℃である。また、蒸気処理で使用される水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水処理または蒸気処理の処理時間は、使用する水溶性バインダの種類によって異なるが、支持体のサイズが60cm×1mの場合、約10秒間〜約5分間程度が好ましく、約1分間〜約5分間がさらに好ましい。
【0055】
〈めっき処理〉
上記平滑化処理の前段又は後段で、メッシュに対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。めっき処理は平滑化処理の後段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0056】
以上、本発明に係る第一の態様である、導電性金属で構成された金属パターン層と、平均軸長が長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20以上である針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する第一の態様に関する導電性要素について詳細に説明したが、第二の態様である、支持体と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素においても、第一の態様に関して説明した支持体及び導電性微粒子含有層を同様に使用することができる。
【0057】
本発明によれば、高い導電性を有する導電性要素、高い導電性を有する導電性要素が製造できる導電性要素形成用感光材料および高い導電性要素が得られる製造方法が提供される。このような導電性要素を用いて、導電性金属で構成された金属パターン層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層と、該導電性微粒子含有層に隣接する被通電層とを有する電極を作製することが好ましい。本発明による導電性要素は、高い導電性を有しているので、タッチパネル用、無機EL素子、有機EL素子又は太陽電池の電極構造として使用しても、画面の視認性または光線透過性を低下させることがない。また、本発明による導電性要素は電流を流すことで発熱する発熱シートとしても機能するので、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の電極構造として使用可能である。更にまた、本発明のよる導電性要素形成用感光材料は大面積のものを容易に製造することができるので、大面積の導電性要素が必要とされる応用分野、例えば入射光の照度の低減または入射光の遮断をする調光機能を有する窓を得るために使用されるエレクトロクロミック装置の電極へ適用することも可能となる。
【0058】
<EL素子>
以下に、本発明の電極構造をEL素子に適用する例について詳しく述べる。
本発明のEL素子は、対向する一対の電極で蛍光体層を挟持した構成をもち、少なくとも一方の電極に前記導電性要素を有する。EL素子としては、有機EL素子でも無機EL素子でもよい。
本発明の好ましい一実施態様の無機EL素子は、透明電極(前記導電性要素)、蛍光体層、反射絶縁層および背面電極をこの順で有し、前記導電性要素の導電性微粒子含有層側に蛍光体層を有する。透明電極と背面電極とは、電極を介して電気的に連結している。透明電極に接する電極には、補助電極として銀ペーストが付与され、蛍光体層側には絶縁ペーストが付与される。
【0059】
蛍光体層、反射絶縁層、背面電極を透明電極上に印刷して設けることもできるし、貼り合せて素子を形成することもできる。ここで、「印刷して設ける」とは、透明電極上に蛍光体層、反射絶縁層、背面電極を直接印刷して設けることをいう。「貼り合わせ」とは、透明電極と、蛍光体層、反射絶縁層及び背面電極が一体になったものとを熱圧着して形成するものをいう。
透明電極と背面電極とに電圧をかけることで、蛍光体層内の蛍光体に電位差が付与される。そして、その電位差が発光エネルギーとなり交流電源を使用して電位差を付与し続けることで発光状態が維持される。この例では、蛍光体層が被通電層となる。
【0060】
[透明電極]
本発明における透明電極としては、前記の導電性要素の導電性微粒子含有層が蛍光体層と接して用いられる。
[蛍光体層]
蛍光体層(蛍光体粒子層)は、蛍光体粒子をバインダに分散して形成する。バインダとしては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。蛍光体層の厚みは1μm以上50μm以下が好ましい。
蛍光体層に含有される蛍光体粒子は、その母体材料としては、具体的には第II族元素と第VI族元素とから成る群から選ばれる少なくとも一つの元素と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる少なくとも一つの元素とから成る半導体の微粒子であり、必要な発光波長領域により任意に選択される。例えば、ZnS,CdS,CaSなどを好ましく用いることができる。
蛍光体粒子は、平均球相当直径が、好ましくは0.1μm以上〜15μm以下である。球相当直径の変動係数は、35%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上25%以下である。これらの平均球相当直径は、レーザー光散乱方式を用いた堀場製作所製のLA−500(商品名)や、ベックマンコールター社のコールターカウンター等で測定することができる。
【0061】
[反射絶縁層]
本発明の無機EL素子は、蛍光体層と背面電極との間に反射絶縁層(以下、場合により誘電体層ともいう)を設けることが好ましい。
誘電体層は、誘電率および絶縁性が高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものを用いることができる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばBaTiO,BaTaなどが用いられる。誘電体物質を含む誘電体層は、蛍光体粒子層の片側に設けてもよく、また蛍光体粒子層の両側に設けることも好ましい。
蛍光体層および誘電体層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて塗布またはスクリーン印刷等で成膜することが好ましい。
【0062】
[背面電極]
光を取り出さない側の背面電極は、導電性を有する任意の材料が使用できる。導電性でさえあれば、例えば、ITO等の透明電極やアルミニウム/カーボン電極を用いてもよく、また上述した導電性要素を背面電極としても使用してもよい。
[封止・吸水]
本発明のEL素子は、適当な封止材料を透明導電膜の反対側に有することが好ましく、外部環境からの湿度や酸素の影響を排除するよう加工することが好ましい。素子の基板自体が十分な遮蔽性を有する場合には、作製した素子の上方に水分や酸素遮蔽性のシートを重ね、周囲をエポキシ等の硬化材料を用いて封止することができる。また、面状素子をカールさせないために両面に遮蔽性シート(防湿フィルム)を配しても良い。素子の基板が、水分透過性を有する場合は、両面に遮蔽性シートを配する必要がある。
[電圧と周波数]
通常、分散型EL素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hz〜400Hzの交流電源を用いて駆動される。
【0063】
なお、本発明は、以下に列挙する日本国公開番号及び国際公開番号の公報またはパンフレットに記載の技術と適宜組合わせて使用することができる。
特開2004-221564、特開2004-221565、特開2007-200922、特開2006-352073、国際公開2006/001461、特開2007-129205、特開2007-235115、特開2007-207987、特開2006-012935、特開2006-010795、特開2006-228469、特開2006-332459、特開2007-207987、特開2007-226215、国際公開2006/088059、特開2006-261315、特開2007-072171、特開2007-102200、特開2006-228473、特開2006-269795、特開2006-267635、国際公開2006/098333、特開2006-324203、特開2006-228478、特開2006-228836、国際公開2006/098336、国際公開2006/098338、特開2007-009326、特開2006-336090、特開2006-336099、特開2006-348351、特開2007-270321、特開2007-270322、国際公開2006/098335、特開2007-201378、特開2007-335729、国際公開2006/098334、特開2007-134439、特開2007-149760、特開2007-208133、特開2007-178915、特開2007-334325、特開2007-310091、特開2007-116137、特開2007-088219、特開2007-207883、特開2007-013130、国際公開2007/001008、特開2005-302508、特開2008-218784、特開2008-227350、特開2008-227351、特開2008-244067、特開2008-267814、特開2008-270405、特開2008-277675、特開2008-277676、特開2008-282840、特開2008-283029、特開2008-288305、特開2008-288419、特開2008-300720、特開2008-300721、特開2009-4213、特開2009-10001、特開2009-16526、特開2009-21334、特開2009-26933、特開2008-147507、特開2008-159770、特開2008-159771、特開2008-171568、特開2008-198388、特開2008-218096、特開2008-218264、特開2008-224916、特開2008-235224、特開2008-235467、特開2008-241987、特開2008-251274、特開2008-251275、特開2008-252046、特開2008-277428、特開2009-21153。
【実施例】
【0064】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「%」は、別に指定されていない限り「質量%」を意味する。
[実施例1]
《乳剤A(銀/バインダ体積比:1/1)の調製》
・1液:
水 750ml
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0065】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0066】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmのハロゲン化銀の核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまでハロゲン化銀粒子を成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成しハロゲン化銀の粒子形成を終了した。
【0067】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0068】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×10kg/m、粘度=20mPa・sとなった。
【0069】
《塗布液Aの作製》
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10−4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0070】
【化1】

【0071】
《乳剤B(銀/バインダ体積比:4/1)の調製》
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 8g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0072】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl 20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmのハロゲン化銀の核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまでハロゲン化銀粒子を成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成しハロゲン化銀の粒子形成を終了した。
【0073】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0074】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0075】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名,ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×10kg/m,粘度=60mPa・sとなった。
【0076】
《塗布液Bの調製》
上記乳剤Bに増感色素(SD−1)5.7×10−4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10−4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10−4モル/モルAgを加え、よく混合した。
次いで1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10−2モル/モルAg、クエン酸3.0×10−4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m、ゼラチンに対して15%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(質量比88:5:7)を100mg/m、コアシェル型ラテックスコア:スチレン/ブタジエン共重合体質量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(質量比84/16、コア/シェル比=50/50)を100mg/m、ゼラチンに対し4%の下記化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0077】
【化2】

【0078】
(ハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層))
乳剤Aを用いて、上記のように調製した乳剤層塗布液Aを銀/バインダ体積比(銀/GEL比(vol))が1.03/1、Ag8.0g/m、ゼラチン0.99g/mになるように層を設けた。
乳剤Bを用いて,の銀/バインダ体積比(銀/GEL比(vol))が4.0/1、Ag10.0g/m、ゼラチン0.32g/mになるように層を設けた。
(支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚さ100μm)を用いた。PETにはあらかじめ表面親水化処理したものを用いた。)
【0079】
(導電性微粒子含有層)
下記のようにして上記ハロゲン化銀乳剤層上部に下記導電性微粒子液1液を10cc/m塗布して導電性微粒子含有層を設けた。
・1液:
水 943ml
ゼラチン 10g
Sbドープ酸化スズ
(石原産業社製、商品名 FS10D,針状導電性微粒子)48.4g
ショ糖脂肪酸エステル(和光純薬工業社製ショ糖モノラウレート)9.6g
その他適宜、防腐剤、pH調節剤を添加した。ショ糖脂肪酸エステルは界面活性剤として機能し、導電性微粒子の凝集を抑制する。ここで、石原産業社製商品名FS10Dは、カタログによれば、平均軸長が長軸0.2〜2.0μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20〜30のものであった。
【0080】
ハロゲン化銀乳剤層に乳剤層塗布液Aを,導電性微粒子含有層に導電性微粒子液1液を用い、このようにして得られた塗布品を乾燥したものを感光材料5とする。
感光材料5は保護層に導電性微粒子が0.46g/mで、導電性微粒子/バインダ比は4.84/1(質量比)で導電性微粒子を塗布している。なお、導電性微粒子単独の抵抗(導電膜抵抗)を調べるために、この感光材料Aを露光・現像処理せず、定着処理のみ行いハロゲン化銀を抜いて表面抵抗を測定したところ、10Ω/□であった。表面抵抗(Ω/□)は、デジタル超高抵抗/微少電流計8340A(商品名、株式会社エーディーシー社製)により測定した。
<塗布方法>
下塗層を施した支持体上に、乳剤面側として支持体に近い側よりハロゲン化銀乳剤層、導電性微粒子含有層,の順に2層を、35℃に保ちながらスライドビードコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた後、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた。各々のセットゾーンを通過した時点では、塗布液は充分なセット性を示した。引き続き乾燥ゾーンにて両面を同時に乾燥した。
なお,導電性微粒子含有層上にシリカを含む保護層を設けることもできるし,塗布方法も公知の方法を用いて行うことができる.
【0081】
感光材料5の導電性微粒子含有層のショ糖脂肪酸エステルの量を変えたこと以外は感光材料5と同様にして、それぞれ感光材料1〜4,6〜8を得た。これらの感光材料は、導電性微粒子/バインダ比,導電性微粒子塗布量は変えず、ショ糖脂肪酸エステルの塗布量が、それぞれ、0、0.01、0.05、0.07、0.12、0.14、または0.19g/mとなるように添加量を変更した。また、比較例として、導電性微粒子含有層のショ糖脂肪酸エステルを表1に記載した界面活性剤に変更した感光材料10〜19を得た。各感光材料(試料)の変更点の詳細を、表1に示す。
【0082】
(評価)
各試料について、30cm×30cm面積あたりの針状導電性微粒子の凝集が発生している頻度を調べた。ショ糖脂肪酸エステルを添加していない試料は凝集の発生が顕著であり、ショ糖脂肪酸エステルを含有させることで、上記の凝集が抑えられることがわかった。また、ショ糖脂肪酸エステルの含有量がある一定の量を超えると、表面抵抗が低下してくることがわかった。これらの結果から、感光材料5が凝集の抑制と表面抵抗が最も両立できることがわかった。また、得られた試料を用いて無機EL素子を作製し、それを発光させることで発光部に凝集が発生した場合にはそれに対応する箇所が欠点となり発光しなくなることがわかった。非発光部分を数えて、欠点の個数として評価した。なお、感光材料の露光、現像処理や無機EL素子の作製は後述の実施例2と同じである。得られた結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
なお、上記界面活性剤のうち、
・α−ペルフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキシドはネオス株式会社製フタージェント215Mを使用し、
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは日本エマルジョン社製エマレックスNP−30を使用し、
・オレフィンスルホン酸ソーダはライオン株式会社製F−14を使用し、
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムは日本油脂社製ラピゾールB−90を使用した。
またそれ以外の界面活性剤は、社内で合成したものを使用した。
【0085】
上記試料の評価結果より,ショ糖脂肪酸エステルを含有しない試料1は凝集が発生してしまったために、EL素子では欠点が多く見られ、ショ糖脂肪酸エステルを含有させることで凝集が抑制されEL素子では欠点がほとんど見られなくなった。ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.07g/m以上,好ましくは0.09g/m以上の場合,凝集が発生しない。また試料5において、ショ糖モノラウレートの代わりにショ糖モノステアレートを用いた場合でも、試料5と同様の効果が確認できた。
【0086】
(実施例2)
感光材料5において導電性微粒子含有層を下記に変更して,耐久性の評価を行った。
(導電性微粒子含有層)
ハロゲン化銀乳剤層上部に下記導電性微粒子液2液を5cc/m塗布して導電性微粒子含有層を設けた。
・2液:
水 943ml
ゼラチン 10g
Sbドープ酸化スズ
(石原産業社製、商品名SN100P,粒状導電性微粒子)24.2g
ショ糖脂肪酸エステル(和光純薬工業社製ショ糖モノラウレート)9.6g
その他適宜、防腐剤、pH調節剤を添加した。ここで、石原産業社製商品名SN100Pは、カタログによれば、粒状であり、一次粒子径0.01〜0.03μmであり、アスペクト比が略1である。
【0087】
ハロゲン化銀乳剤層に乳剤層塗布液Aを,導電性微粒子含有層に導電性微粒子液2液を用い、このようにして得られた塗布品を乾燥したものを感光材料Aとする。
感光材料Aは保護層に導電性微粒子が0.23g/mで、導電性微粒子/バインダ比は4.84/1(質量比)で粒状形状の導電性微粒子を塗布している。なお、導電性微粒子単独の抵抗(導電膜抵抗)を調べるために、この感光材料Aを露光・現像処理せず、定着処理のみ行いハロゲン化銀を抜いて表面抵抗を測定したところ、10Ω/□であった。
実施例1で使用した針状導電性微粒子を用いた感光材料5を感光材料Bとして、粒状導電性微粒子(石原産業社製、商品名 SN100P)を用いた感光材料Aとの比較を行った.
【0088】
〈露光・現像処理〉
感光材料AおよびBに、ライン/スペース=5μm/595μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=595μm/5μm(ピッチ600μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、試料A〜Bを得た。
【0089】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0090】
(エレクトロルミネセンス素子の作製)
上記のように作製された試料A〜Bを分散型無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に組み込み、発光テストを行った。
平均粒子サイズが0.03μmの顔料を含む反射絶縁層と蛍光体粒子が50〜60μmの発光層を背面電極となるアルミニウムシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて110℃で1時間乾燥した。
その後、試料A〜Bを蛍光体層、背面電極の誘電体層面上に重ね、熱圧着してEL素子を形成した。素子を2枚のナイロン6からなる吸水性シートと2枚の防湿フィルムと挟んで熱圧着した。EL素子のサイズは、30cm×30cmであった。
発光させるために用いた電源は、定周波定電圧電源 CVFT−Dシリーズ(東京精電株式会社製、商品名)を用いた。また、輝度(cd/m)の測定には、輝度計 BM−9(株式会社トプコンテクノハウス製、商品名)を用いた。
【0091】
試料A〜Bを分散型無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を作製した。耐久性試験として、温度60℃湿度90%下で、無機EL素子を100V400Hzで連続発光させ、240h後の輝度の変化を調べた。結果を表に示す。粒状導電性微粒子を用いた試料Aは、連続発光させると非発光部が生じ、輝度の変化が大きいのに対し、針状導電性微粒子を用いた試料Bは非発光部が生じず、輝度変化が少なかった。これは、針状導電性微粒子は粒状のものに比べてネットワークを構成しやすく、それが耐久性向上に役立っているためと推察している。得られた結果を表2に示す。
【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、導電性金属で構成された金属パターン層と、平均軸長が長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmであり且つアスペクト比が20以上である針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステル/針状導電性微粒子の含有比率が10〜50質量%である請求項1に記載の導電性要素。
【請求項3】
前記導電性微粒子含有層に含まれるショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5g/m以下である請求項1に記載の導電性要素。
【請求項4】
前記導電性微粒子が、SnO、ZnO、TiO、Al、In、MgO、BaOまたはMoOからなる金属酸化物、これらの複合金属酸化物、または、これらの金属酸化物に異種原子を含む金属酸化物を含む請求項1に記載の導電性要素。
【請求項5】
前記導電性微粒子が、アンチモンがドープされたSnOを含む請求項1に記載の導電性要素。
【請求項6】
前記導電性微粒子含有層に含まれる導電性微粒子の含有量が、0.05g/m〜0.99g/mである請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の導電性要素。
【請求項7】
支持体と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素。
【請求項8】
支持体と、銀塩含有層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層とを有する導電性要素形成用感光材料。
【請求項9】
導電性金属で構成された金属パターン層と、針状導電性微粒子、バインダおよびショ糖脂肪酸エステルを含有する導電性微粒子含有層と、該導電性微粒子含有層に隣接する被通電層とを有する電極。

【公開番号】特開2011−171292(P2011−171292A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10216(P2011−10216)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】