説明

導電性透明ベルト

【課題】導電性および光透過性を有する導電性透明ベルトを提供することを課題とする。
【解決手段】透明樹脂または透明熱可塑性エラストマーからなるベルト本体の少なくとも一方の面または内部に透明導電膜を設けた導電性透明ベルトであり、前記透明導電膜がカーボンナノチューブまたは導電性ポリマーを含有するコーティング膜である。前記導電性透明ベルトは、光学検査用ベルト、チップ割りベルト10等の用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学検査等に使用される導電性透明ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明なベルトは光学検査用搬送ベルトとして有用であるが、帯電しやすいために、搬送物とベルト表面との間に接触帯電や摩擦帯電が働き、ベルト表面に搬送物が止着してしまうため搬送物をベルトから分離しにくくなるという問題がある。これが検査効率を下げる要因となりうる。またベルト表面にほこりやゴミが付着しやすいという問題もある。
【0003】
ベルトに帯電防止性能を発現させるものとして、特許文献1には、カーボンブラック、導電性金属酸化物部粒子、金属微粒子等の導電性材料を樹脂に配合した導電性ベルトが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の導電性ベルトは、カーボンブラック、導電性金属酸化物部粒子、金属微粒子等を導電性材料として使用するため、ベルト自体が有色の不透明となり、光を透過しないので、光学検査等の用途に用いることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−264763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電性および透光性を有する導電性透明ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、透明なベルト本体上に、カーボンナノチューブや導電性ポリマーなどを含む透明導電膜を設けることにより、優れた導電性(帯電防止性能)を持ちながら、光を透過する導電性透明ベルトを提供することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の導電性透明ベルトは以下の構成からなる。
(1)透明樹脂または透明熱可塑性エラストマーからなるベルト本体の少なくとも一方の面または内部に透明導電膜を設けたことを特徴とする導電性透明ベルト。
(2)前記透明導電膜がカーボンナノチューブまたは導電性高分子を含有するコーティング膜である前記(1)に記載の導電性透明ベルト。
(3)前記透明導電膜の厚さが5〜50μmである前記(1)または(2)に記載の導電性透明ベルト。
(4)前記コーティング膜が、カーボンナノチューブとバインダー樹脂とを含有し、カーボンナノチューブの含有量がコーティング膜総量に対して5〜30重量%である前記(2)または(3)に記載の導電性透明ベルト。
(5)前記導電性分子がポリチオフェン系導電性高分子である前記(2)または(3)に記載の導電性透明ベルト。
(6)光学検査用である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性透明ベルト。
(7)チップ割り用である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性透明ベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性透明ベルトは、透明樹脂または透明熱可塑性エラストマーからなるベルト本体の少なくとも一方の面または内部に透明導電膜を設けたものであるので、導電性(帯電防止性能)を有し、かつ光を透過することができる。そのため、光学検査用の搬送物が静電気でベルトに止着するのが防止され、搬送物をベルトから容易に分離でき、さらにベルト表面にほこりやゴミが付着しにくいという効果がある。従って、本発明の導電性透明ベルトは、透明性や視認性が要求される光学検査用ベルトやチップ割用ベルト等の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の導電性透明ベルトが用いられるチップ分割装置の概略図である。
【図2】図1のチップ分割装置によってチップボードを分割する方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性透明ベルトは、透明樹脂または透明熱可塑性エラストマーからなるベルト本体の少なくとも一方の面に透明導電膜を形成したものである。この導電性透明ベルトは、両端部を付き合わせ融着等により接合して無端状に形成される。
【0012】
上記ベルト本体としては、例えば透明な熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートが使用可能である。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0013】
上記ベルト本体は、硬度(JIS−A)が80以上、特に80〜98であるのがよく、硬度が80より小さい場合、ベルト本体にタック性が発現し取り扱いが困難となるおそれがある。硬度が上記範囲であれば、当該ベルト本体は、屈曲性が良好で、耐久性が高く、また加工性も良い。
また、ベルト本体の厚さはベルトの用途や特性などによって変わるため、特に制限されるものではない。例えば後述するチップ割りベルトに適用する場合は、厚さが0.2mm以下であるのがよく、検査用ベルトその他の搬送用ベルトに使用する場合は、厚さが0.2〜1.5mm程度、好ましくは0.5〜1.0mm程度であるのがよい。
【0014】
上記ベルト本体の表面に設けられる透明導電膜としては、例えば、カーボンナノチューブまたは導電性高分子を含有するコーティング膜が挙げられる。カーボンナノチューブを用いる場合、前記コーティング膜は、カーボンナノチューブとバインダー樹脂とを含有し、カーボンナノチューブの含有量がコーティング膜総量に対して0.1〜0.3重量%の希薄溶液であるのが光透過性を損なわないうえで好ましい。
【0015】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂などの透明樹脂が使用可能である。
【0016】
カーボンナノチューブは、コーティング液の形態で市販のものを使用することができ、例えば名城ナノカーボン社製のナノチューブ分散液などが使用可能である。
【0017】
上記導電性高分子としては、例えばポリチオフェン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン系導電性高分子、ポリパラフェニレンビニレン系導電性高分子などが挙げられる。上記ポリチオフェン系導電性高分子は、塗料等のコーティング液の形態で市販のものを使用することができ、例えば信越ポリマー社製の「セプルジータ」(登録商標)などが挙げられる。上記コーティング液における導電性高分子の含有量は、導電性および光透過性が損なわれない範囲であればよく、通常、コーティング膜総量に対して0.1〜5重量%の希薄溶液であるのが好ましい。なお、上記コーティング液には、分散剤などの添加剤を加えてもよい。コーティング液に使用する溶剤は、水、低級アルコールなどが挙げられる。
【0018】
上記コーティング液はベルト本体の両表面に塗布してもよく、片面のみに塗布してもよい。また、上記コーティング液を前記ベルトに塗布するのは、ベルトの両端部の接合前であっても、接合後であっても、特に制限はない。
【0019】
上記コーティング液をベルト本体に塗布する方法は特に制限はなく、例えば、スピンコーティング法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法などの公知の方法が採用可能であり、場合によっては、スプレー法、ディッピング法にて塗布してもよい。
【0020】
上記透明導電膜の厚みは5〜50μm、好ましくは10〜30μmであるのが好ましい。コーティング膜の厚みが5μm未満であると、ベルト表面に十分な帯電性を付与することができず、50μmより厚いと透明性が落ちる結果となる。上記範囲内であれば、ベルト全体が透明で光を透過させることができ、かつベルトの表面に帯電性を発現させることができる。
【0021】
このようにして得られる本発明の導電性透明ベルトは、表面抵抗率が1×104〜1×108Ω/□、好ましくは1×106Ω/□以下の範囲であるのがよい。また、この導電性透明ベルトは高い光透過性を有する。なお、本発明の導電性透明ベルトは、光が透過するのに充分な透明性を備えていればよく、必ずしも無色透明である必要はない。従って、光が透過しうる限り、導電性透明ベルトは半透明であってもよく、有色であってもよい。
【0022】
次に本発明の導電性透明ベルトは、両端部を突き合わせ、加熱加圧して融着等により接合して無端状に形成される。この無端ベルトは、シートの両端を突き合わせた状態で融着しているため、全体が均一な厚さを有している。
【0023】
本発明の導電性透明ベルトは、その光透過性を有し、視認性に優れるため、光学検査用ベルトやチップ割用ベルト等として利用することができる。以下、チップ割用として使用する場合の具体例を示す。
図1は、本発明の導電性透明ベルトを、セラミック製チップ抵抗器等の小型化チップをボードから所定寸法に分割するためのチップ割り用ベルトに使用した一例を示す概略説明図である。
【0024】
図1に示すように一対のベルトを使用したチップ分割装置40が使用されている。このチップ分割装置40には、本発明の導電性透明ベルト10、10が用いられる。これら一対の導電性透明ベルト10、10は、ボード30または列状体32を押圧するための小径の第1のプーリー42および第2プーリー44等のプーリーに掛け回されている。
【0025】
ボード30または列状体32は、一対の上記ベルト10、10の間の隙間Sに挿入される。そして、第1および第2のプーリー42、44によって屈曲された導電性透明ベルト10の屈曲部位12において、チップボード30、列状体32は上下方向に押圧され、列状体32またはチップ34に分割される。
【0026】
この方法では、図2に示すように、まず、ボード30を1方向に沿って分割し、多数の列状体32とし、次に各々の列状体32をさらにその長さ方向に垂直な方向に沿って分割し、チップ34とする。
【0027】
本発明の導電性透明ベルトは、導電性および光透過性を有するので、屈曲部位12を目視で確認することができ、さらにチップ34が摩擦帯電等によってベルトにひっつくことなくチップ割りをすることができる。
【0028】
本発明の導電性透明ベルトの厚さは、0.2mm以下であるので、例えばチップの小型化に対応するうえで好ましい。すなわち、ベルトによるチップ分割では、チップが小型化するとそれに対応してベルト厚みを薄くしなければチップの分割自体が困難になるからである。本発明では、導電性透明ベルトの厚さは、特に0.15〜0.20mmであるのが好ましい。上記厚さ範囲内であれば透明熱可塑性樹脂のベルトは、2層またはそれ以上を積層してもよい。
【0029】
また、導電性透明ベルト10、10は両端部を融着しているため、継ぎ目に起因する厚さの差をなくすことができ、全体にほぼ均一な厚さで、均一な硬度を有する導電性透明ベルトを製造することができる。それにより、チップボードを安定に分割することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良が可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態では、透明導電膜をベルト本体の片面または両面に設けたが、2枚またはそれ以上の複数の熱可塑性エラストマー等のフィルムまたはシートを透明導電膜を介して一体に接着もしくは融着させたものであってもよい。この場合は、ベルト本体の内部に透明導電膜が設けられた、いわばサンドイッチ構造または多層構造になる。
また、本発明の導電性透明ベルトは、前記した光学検査用ベルトやチップ割りベルト10の用途に限定されるものではなく、導電性および光透過性が要求される他の用途にも好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10:導電性透明ベルト
12:屈曲部位
30:ボード
32:列状体
34:チップ
40:チップ分割装置
42:第1のプーリー
44:第2プーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂または透明熱可塑性エラストマーからなるベルト本体の少なくとも一方の面または内部に透明導電膜を設けたことを特徴とする導電性透明ベルト。
【請求項2】
前記透明導電膜がカーボンナノチューブまたは導電性高分子を含有するコーティング膜である請求項1に記載の導電性透明ベルト。
【請求項3】
前記透明導電膜の厚さが5〜50μmである請求項1または2に記載の導電性透明ベルト。
【請求項4】
前記コーティング膜が、カーボンナノチューブとバインダー樹脂とを含有し、カーボンナノチューブの含有量がコーティング膜総量に対して5〜30重量%である請求項2または3に記載の導電性透明ベルト。
【請求項5】
前記導電性分子がポリチオフェン系導電性高分子である請求項2または3に記載の導電性透明ベルト。
【請求項6】
光学検査用である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性透明ベルト。
【請求項7】
チップ割り用である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性透明ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121688(P2011−121688A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280148(P2009−280148)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】