導電性部材、この導電性部材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置
【課題】 導電性部材の空隙保持部に対する切削加工時の切粉処理を容易にして、生産性および歩留まりを向上させる。
【解決手段】 軸部材をなす長尺状の導電性支持体10と、導電性支持体10の外周面10aに形成された電気抵抗調整層11と、電気抵抗調整層11とは異なる材質からなり、導電性支持体10の外周面10a側であって電気抵抗調整層11の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層11の外周面11aよりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層11に対向配置される感光体ドラム4(像担持体)に当接する外周面12aを有する一対の空隙保持部材12とを備えた帯電ローラ2(導電性部材)において、空隙保持部材12を2つの部材12a,12bが接合して形成されたものとし、その外周面12dの切削加工の際に発生する切粉Gを、両部材12a,12bの接合面において分断させる。
【解決手段】 軸部材をなす長尺状の導電性支持体10と、導電性支持体10の外周面10aに形成された電気抵抗調整層11と、電気抵抗調整層11とは異なる材質からなり、導電性支持体10の外周面10a側であって電気抵抗調整層11の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層11の外周面11aよりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層11に対向配置される感光体ドラム4(像担持体)に当接する外周面12aを有する一対の空隙保持部材12とを備えた帯電ローラ2(導電性部材)において、空隙保持部材12を2つの部材12a,12bが接合して形成されたものとし、その外周面12dの切削加工の際に発生する切粉Gを、両部材12a,12bの接合面において分断させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接帯電方式の導電性部材、この導電性材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関し、詳細には、導電性部材の電気抵抗調整層の端部に設けられた空隙保持部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、感光体ドラム(像担持体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材等が、導電性部材として用いられている。
【0003】
図9は、帯電部材が導電性部材として用いられた一例である画像形成装置1を示すものであり、画像形成装置1における帯電ローラ2が帯電部材すなわち導電性部材として用いられている。
【0004】
この画像形成装置1は、静電潜像が形成される感光体ドラム4と、感光体ドラム4に対して一様の帯電処理を行う帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するパワーパック(電圧印加電源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、レーザ光Lによって形成された感光体ドラム4上の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ6と、このトナーの付着によって形成されたトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4をクリーニングするためのクリーニング装置8とを備えている。
【0005】
なお、感光体ドラム4、帯電ローラ2、表面電位計5、現像ローラ6、およびクリーニング装置8が、図10に示すように、プロセスカートリッジ9として一体化された画像形成装置1もある。
【0006】
ここで、感光体ドラム4は、図示しない駆動機構からの駆動力を得て、図示奥行き方向に延びる軸を中心として矢印A方向に回転し、帯電ローラ2は、パワーパック3から電力の供給を受けて帯電する。
【0007】
そして、この帯電ローラ2は、帯電ローラ2に対向する感光体ドラム4の表面4aを、所望の電位で一様に帯電させる。このとき、感光体ドラム4は、矢印A方向に回転するため、感光体ドラム4の表面4aのうち、帯電ローラ2に対向している部分よりも回転方向下流側となる表面部分が、回転にしたがって順次一様に帯電することとなる。
【0008】
続いて、この感光体ドラム4の一様帯電表面に、原稿から読み取って得られた画像や文字等の画像情報あるいは予め記憶された画像情報に応じた出射光量に制御されたレーザ光(あるいは原稿からの反射光や透過光)Lが照射される。
【0009】
このとき、感光体ドラム4の表面4aの電位(負の電位)は、レーザ光Lの照射によって低下(絶対的な電位は、0「ゼロ」に近付く方向に上昇)する。そして、この低下する電位の幅は、レーザ光Lによる照射光量が大きくなるにしたがって大きくなる。したがって、上述した画像情報等を担持したレーザ光Lの照射によって、感光体ドラム4の表面4aには、その画像情報等に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0010】
そして、表面電位計5が、感光体ドラム4の表面4aに形成された静電潜像の電位(電位分布)を検出し、この電位の検出結果は、パワーパック3による帯電ローラ2の帯電制御やレーザ光Lの露光制御に用いられる。
【0011】
感光体ドラム4の静電潜像が形成された表面4aの部分が現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが付着し、感光体ドラム4の表面4aには、静電潜像に対応した濃度分布のトナー像が可視的に現出(顕像)される。
【0012】
このトナー像は、感光体ドラム4に向かって所定のタイミングで給送された記録紙Sが、感光体ドラム4と転写ローラ7とに挟まれつつ通過することにより、記録紙Sに圧着されて転写される。そして、トナー像が転写された記録紙Sは、図示を略す定着ユニットに向けて矢印B方向に搬送される。
【0013】
一方、トナー像を記録紙Sに転写した後の感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されて清浄化されるとともに、図示しないクエンチングランプにより残留電荷が除去されて帯電処理前の状態に戻り、次回の帯電処理待ちの状態となる。
【0014】
ところで、上述した画像形成装置における一般的な帯電方式としては、帯電ローラを感光体ドラムに接触させる接触帯電方式が知られている(特許文献1)。
【0015】
しかしながら、接触帯電方式からなる帯電ローラ2を用いた場合には、以下に掲げるような問題があった。
(1)帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して感光体ドラムの表面に付着し、この付着が進行すると感光体ドラム表面に帯電ローラの跡が残る。
(2)帯電ローラに交流電圧を印加した際に、感光体ドラムに接触している帯電ローラが振動して帯電音が生じる。
(3)感光体ドラム表面のトナーが帯電ローラに付着して帯電性能が低下する。特に帯電ローラにおいて(1)の染出しが生じると、トナーが一層付着し易くなる。
(4)帯電ローラを構成している物質が感光体に付着し易い。
(5)感光体ドラムを長期間駆動しないと帯電ローラに永久ひずみが生じる。
【0016】
このような問題に対処するために、帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触させるのではなく、両者を非接触で近接させる近接帯電方式が考案されている(特許文献2)。
【0017】
この近接帯電方式は、帯電ローラ2と感光体ドラム4との最近接距離(以下、空隙という)が50μm〜300μmとなるように両者を非接触で対向させ、帯電ローラ2に電圧を印加して感光体ドラム4の帯電を行うものである。近接帯電方式においては、帯電ローラ2と感光体ドラム4とが接触しないため、接触帯電方式において問題となる、帯電ローラの構成物質の感光体ドラムへの付着、および長期間の不使用により生じる帯電ローラの永久ひずみ、については問題とならない。
【0018】
また、トナー付着による帯電ローラの帯電性能の低下、に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式の方が接触帯電方式よりも優れている。
【0019】
近接帯電方式を実現するものとして、帯電ローラの両端部に、所定の厚さを有するテープ状の空隙保持手段を巻き付けて帯電ローラと感光体ドラムとの間に一定間隔の空隙を確保する方法(特許文献3)、帯電ローラの両端部にスペーサリングを設けて、帯電ローラと感光体ドラムとの間に一定間隔の空隙を確保する方法(特許文献2,4)などが提案されている。
【特許文献1】特開昭63―149668号公報
【特許文献2】特開平3−240076号公報
【特許文献3】特開2002−139893号公報
【特許文献4】特開平4−358175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献3に開示された技術は、帯電ローラとテープ状空隙保持部材との間にトナーが侵入し、このトナーが固着等することによって、あるいはテープ状空隙保持部材の経時的摩耗によって、感光体ドラムと帯電ローラとの間の空隙を、経時的に、一定間隔に維持し続けることが困難である。
【0021】
また、テープ状空隙保持部材の摩耗等を防止するために、テープ状の部材に代えて、金属製のリングを使用する技術も考えられるが、このような金属製のリングは、当接する相手方である感光体ドラムの摩耗を促進させることとなり、感光体ドラムの表面層が摩耗して基層金属が表出すると、この基層金属と金属製リングとの間でショート電流が生じて、電源であるパワーパックを損傷させる虞がある。
【0022】
また、そのようなリングをスペーサリングとした特許文献2,4に開示された技術は、帯電ローラ(導電性部材)と感光体ドラム(像担持体)との間の空隙を、精度よく一定に保つための具体的な技術が何ら開示されていないため、帯電ローラおよびスペーサリングの寸法精度がばらついて、空隙幅(帯電ローラと感光体ドラムとの間の距離)が変動し、結果として、帯電体ドラムの帯電電位を一定に維持させることができないという問題がある。
【0023】
そこで、本願発明者らは、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、導電性支持体の外周面側であって電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材とを備えた導電性部材であって、空隙保持部材と導電支持体および電気抵抗調整層とが一体的に組み合わされた状態で、少なくとも空隙保持部材の外周面を除去加工することにより、電気抵抗調整層の外周面に対する空隙保持部材の外周面の半径方向への突出量を、所望とする規定量に形成した導電性部材を提案している(特願2003−306026号;未公開)。
【0024】
この提案技術によれば、空隙保持部材の外周面が感光体に接触する幅を狭くすることができる。そして、空隙保持部材と感光体との接触面積が少なくなって、接触箇所の変動に伴う空隙間隔の変動が少なくなるため、空隙間隔を、精度よく、かつ長期間に亘って、一定に維持させることが容易となる。
【0025】
しかし、上述した提案の後においても、長期間に亘る上記空隙のさらなる精度維持が求められている。
【0026】
すなわち、導電性部材としての帯電ローラ2の空隙保持部材12(および電気抵抗調整層11)を切削加工によって加工する際、切削工具Tによって切削する際に発生する切粉Gの除去性が悪いと、空隙保持部材12や電気抵抗調整層11、あるいはその他軸心への切粉Gの巻付き(絡みつき)が発生し(図11)、生産性を低下させるとともに、電気抵抗調整層に切粉が巻き付いた場合、ローラ表面にスジ状のキズを付けるなど、製品の品質低下が発生する場合がある。
【0027】
具体的に説明すると、切削加工において、連続的に切削加工を行う場合、切削時に発生する切粉Gは連続的となり、特に、樹脂の空隙保持部材では、発生した切粉Gに、いわゆる腰がなく、切粉除去を行わないまま切削を続けると、切粉Gが導電性部材の各部分に絡まり、また、電気抵抗調整層11に絡まると、この電気抵抗調整層11にスジ状のキズをつけて製品品質の低下を招くため、生産の歩留りを低下させる要因となる。
【0028】
連続する長い切粉Gを発生させないために、加工を断続的に行うことも考えられるが、そのような方法によれば、加工速度の変動(加工、停止の繰返し)によって、スジ状のキズが発生しやすくなるという問題を生じる。
【0029】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、空隙保持部に対する切削加工時の切粉処理を容易にして、生産性および歩留まりを向上させ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および耐久性の高い(長寿命)導電性部材を提供することを目的とする。
【0030】
また、本発明は、そのような導電性部材を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係る導電性部材、この導電性部材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置は、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられた空隙保持部材を2以上の部材の接合により形成して、その外周面の切削加工の際に、部材の接合部で、切粉の成長を分断させるようにしたものである。
【0032】
すなわち、本発明に係る導電性部材は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、前記導電性支持体の外周面側であって前記電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、前記電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、前記電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材と、を備えた導電性部材において、前記空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈していることを特徴とする。
【0033】
ここで、「外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈している」とは、外周面が、部材の接合面に対して交差している結果、この接合面の、外周面による断面線(接合境界線)が外周面上に現れていることを意味する。
【0034】
2以上の部材は、同一材質のであってもよいし、異なる材質のものであってもよく、これらの物理的に別体の部材が、接合されて単一の部材をなしていればよい。
【0035】
空隙保持部材の外周面を、切削工具による切削加工によって形成し、あるいはこの外周面を切削加工によって仕上げる場合、切削工具が空隙保持部材の外周面を切削加工するが、このとき、切削工具との接点からは切粉が発生し、この切粉は切削加工が進むのに伴って枝状に延々と伸びて、加工対象の部材自体や切削工具に絡みついて、切削対象面の加工精度の低下を招くなど、好ましくない自体を引き起こす虞がある。
【0036】
これに対して、本発明の導電性部材は、空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているが、これら2以上の部材間に作用する接合力は、単一部材の内部に作用する形状保持力に比して極めて小さい。
【0037】
そして、切削加工によって伸びた枝状の切粉における上述の接合面は、切粉の長手方向に対して略直交する方向に所在することとなり、接合面の面積が長さに対して極めて小さい割合となり、切粉の長手方向に直交する方向に僅かな荷重が作用しただけで、接合面には大きな剪断力が発生することとなる。
【0038】
この結果、枝状に伸びた切粉は、接合面において極めて容易に分断されて短い切粉となる。すなわち、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0039】
また、本発明の請求項2に係る導電性部材は、請求項1に係る導電性部材において、前記空隙保持部材のうち前記外周面と該外周面に隣接する端面とは鈍角で交差するように形成され、または該外周面と該端面とが交差する角部が予め面取りされていることを特徴とする。
【0040】
ここで、外周面に隣接する端面とは、少なくとも、外周面を切削加工し始める側の端面を意味し、必ずしも切削加工終了側の端面までも含むものではないが、この終了側の端面も含むものであってもよい。
【0041】
なお、鈍角は、90度を超える角度であるが、180度未満の角度であることはいうまでもない。
【0042】
切削時にバイト等の切削工具が切り込み始める空隙保持部材の端部は、その外周面と端面とが90度以下で交差した形状であるときは、バリが発生しやすいこことが判明したが、このバリは、空隙保持部材の外周面と像担持体との間に挟み込まれると、空隙量の変動を招き、空隙量が、導電性部材の長手方向の両端で差異を生じうる。
【0043】
しかし、外周面と端面とが鈍角(90度を超える角度)で交差した本発明の構成では、外周面に沿って切削を行った場合に、その交差部分において、バリ(カエリ)が発生しにくくなり、製品品質や製品精度を向上させることができる。
【0044】
また、本発明の請求項3に係る導電性部材は、請求項1または2に係る導電性部材において、前記空隙保持部材の外周面のうち、少なくとも前記像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有することを特徴とする。
【0045】
このように構成された導電性部材によれば、空隙保持部材の外周面のうち像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有するため、導電性部材に高電圧を印加した際に、空隙保持部材から像担持体の感光体基体(導電性部)に電流がリークすることがなく、像担持体(あるいは像担持体の感光体基体(導電性部)や基層金属)において形成される潜像に、電流リークによる悪影響を与えることがない。
【0046】
また、本発明の請求項4に係る導電性部材は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の導電性部材において、空隙保持部材の表面にトナーが付着しにくい材料によって形成されていることを特徴とする。
【0047】
このように構成された導電性部材によれば、空隙保持部材の表面は、トナーが付着しにくい材料によって形成されているため、トナーが付着しにくい。したがって、空隙保持部材の表面にトナーが付着することによる電気抵抗調整層と像担持体との間の間隔の変動を防止することができ、この間隔を厳密に維持することができる。これにより、像担持体に潜像を精度良く形成することができる。
【0048】
また、本発明の請求項5に係る導電性部材は、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の導電性部材において、前記空隙保持部材のうち、前記電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分(外周面が像担持体と当接する部分)よりも半径方向への突出量が小さいことを特徴とする。
【0049】
空隙保持部材は、電気抵抗調整層の両端部に形成されているため、これら両端の空隙保持部材間の最短間隔は、各空隙保持部材と電気抵抗調整層との各境界部分間の距離と略等しいということができる。
【0050】
ところで、空隙保持部材は、その外周面が像担持体に接するように形成されているものの、像担持体の外表面のうち像形成領域(例えば感光体層が形成されている領域)に接するものであってはならない。
【0051】
このため、像形成領域の幅は、各空隙保持部材と電気抵抗調整層との各境界部分間の距離よりも短く設定する必要がある。しかも、導電性部材と像担持体との間で、不測の、あるいは予め許容された軸方向について相対的な振れ(変位)が発生しても、その振れによって空隙保持部材と像担持体の像形成領域とが接触しないように、像形成領域の幅をより小さく設定する必要がある。
【0052】
これに対して、電気抵抗調整層により、像担持体に潜像を形成するに際しては、より大きな潜像を効率的に得るという観点から、像担持体の幅は、電気抵抗調整層の幅と同等以上であることか好ましい。
【0053】
この点、本発明の請求項5に係る導電性部材は、空隙保持部材のうち、電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分よりも半径方向への突出量が小さいため、その突出量が小さい空隙保持部材のうちその突出量が小さい部分は、像担持体の像形成領域に接触する虞がない。
【0054】
しかも、この突出量が小さい部分まで像形成領域の幅を拡げることができ、電気抵抗調整層により、像担持体に潜像を形成するに際して、より大きな潜像を効率的に得ることができる。
【0055】
また、本発明の請求項6に係る導電性部材は、請求項1から5のうちいずれか1項に係る導電性部材において、前記電気抵抗調整層の外周面は、トナーの付着を防止する表面層により覆われていることを特徴とする。
【0056】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体(感光体)表面に付着したトナー(あるいはトナーの添加剤)が電気抵抗調整層の表面に付着することによる問題(像担持体との空隙量の変化や電気特性の変化等)を確実に防止することができ、導電性部材の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の請求項7に係る導電性部材は、請求項6に係る導電性部材において、前記空隙保持部材のうち前記電気抵抗調整層に隣接する部分が、前記半径方向への突出量が小さい部分であり、前記トナーの付着防止用の表面層が、前記突出量の小さい部分も覆っていることを特徴とする。
【0058】
このように構成された導電性部材によれば、電気抵抗調整層の外表面に形成されている、トナーの付着を防止する表面層を、この電気抵抗調整層に隣接する空隙保持部材のうち、像担持体の外表面と当接しない部分(半径方向への突出量が小さい部分)にも形成することにより、表面層を形成する際に、電気抵抗調整層には、確実に表面層を形成することができるため、電気抵抗調整層へのトナーの付着、抵抗変化、および空隙変化を防止することができる。
【0059】
また、本発明の請求項8に係る導電性部材は、請求項6または7に係る導電性部材において、前記表面層の電気抵抗が、前記電気抵抗調整層の内部の電気抵抗よりも大きいことを特徴とする。
【0060】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体が傷等の欠陥を有する場合であっても、導電性部材からこの欠陥部分に電圧が集中したり、異常な放電が生じるのを防止することができる。
【0061】
また、本発明の請求項9に係る導電性部材は、請求項1から8のうちいずれか1項に係る導電性部材において、前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とは、前記導電性支持体を中心とする円筒形状を呈していることを特徴とする。
【0062】
このように構成された導電性部材によれば、電気抵抗調整層の外周面が、導電性支持体の軸回りに回転対称となるため、導電性支持体を回転軸として回転させて導電性部材を用いることができ、この回転しながらの使用によって、電気抵抗調整層からの放電部位を均等化することができる。したがって、電気抵抗調整層の特定の局所部位が連続放電するのを防止して、全体として電気抵抗調整層の耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明の請求項10に係る導電性部材は、請求項1から9のうちいずれか1項に係る導電性部材において、画像形成装置における帯電部材として、またはプロセスカートリッジにおける帯電部材として使用されることを特徴とする。
【0064】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体を一様(均一)に帯電させることができる。
【0065】
また、本発明の請求項11に係る画像形成装置用のプロセスカートリッジは、本発明に係る各導電性部材と、前記像担持体とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0066】
このように構成された画像形成装置用のプロセスカートリッジによれば、像担持体と接触する空隙保持部材が、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているため、空隙保持部材の切削加工の際に、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0067】
また、上述した各請求項に対応した導電性部材による効果を得ることができる。
【0068】
さらに、プロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と導電性部材とが一体的に構成されているため、画像形成装置等このプロセスカートリッジが使用される装置に対して、交換容易に(メンテナンス性高く)、上述した優れた導電性部材を提供することができる。
【0069】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る導電性部材と、像担持体と、前記像担持体に担持された像が記録される記録媒体を搬送する搬送部とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0070】
このように構成された画像形成装置によれば、像担持体と接触する空隙保持部材が、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているため、空隙保持部材の切削加工の際に、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0071】
また、上述した各請求項に対応した導電性部材による効果を得ることができる。
【0072】
さらに、上述した優れた導電性部材を用いているため、搬送部によって搬送された記録媒体に形成(記録)される可視像を、長期間に亘って、安定したものとすることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明に係る導電性部材、この導電性部材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置によれば、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられた空隙保持部材を2以上の部材の接合により形成して、その外周面の切削加工の際に、部材の接合部で、切粉の成長を分断させることができ、空隙保持部に対する切削加工時の切粉処理を容易にして、生産性および歩留まりを向上させ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性(長寿命)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明に係る導電性部材、プロセスカートリッジおよび画像形成装置についての最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0075】
図1は、図9または図10に示した画像形成装置1の帯電ローラ2(帯電部材)として使用される本発明の一実施形態である導電性部材の構成を示した部分破断面図である。
【0076】
ここで、図9,10に示した画像形成装置1は、静電潜像が形成される感光体ドラム4(像担持体)と、感光体ドラム4に対して一様の帯電処理を行う帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するパワーパック(電圧印加電源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、レーザ光(あるいは原稿からの反射光や透過光等原稿の画像情報を担持した光。以下、同じ。)Lによって形成された感光体ドラム4上の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ6と、このトナーの付着によって形成されたトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4に残留するトナーを除去するとともに残留電荷を消去するクリーニング装置8とを備えている。
【0077】
なお、図10は、感光体ドラム4、帯電ローラ2、表面電位計5、現像ローラ6、およびクリーニング装置8が、プロセスカートリッジ9として一体化された画像形成装置1の一例を示している。
【0078】
ここで、感光体ドラム4は、図示しない駆動機構からの駆動力を得て、図示奥行き方向に延びる軸を中心として矢印A方向に回転し、帯電ローラ2は、パワーパック3から電力の供給を受けて帯電する。
【0079】
そして、この帯電ローラ2は、帯電ローラ2に対向する感光体ドラム4の表面4aを、所望の電位で一様に帯電させる。このとき、感光体ドラム4は、矢印A方向に回転するため、感光体ドラム4の表面4aのうち、帯電ローラ2に対向している部分よりも回転方向下流側となる表面部分が、回転にしたがって順次一様に帯電する。
【0080】
続いて、この感光体ドラム4の一様帯電表面に、原稿から読み取って得られた画像や文字等の画像情報あるいは予め記憶された画像情報に応じた出射光量に制御されたレーザ光Lが照射される。
【0081】
このとき、感光体ドラム4の表面4aの電位(負の電位)は、レーザ光Lの照射によって低下(絶対的な電位は、0(ゼロ)に近付く方向に上昇)する。そして、この低下する電位の幅は、レーザ光Lによる照射光量が大きくなるにしたがって大きくなる。したがって、上述した画像情報等を担持したレーザ光Lの照射によって、感光体ドラム4の表面4aには、その画像情報等に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0082】
そして、表面電位計5が、感光体ドラム4の表面4aに形成された静電潜像の電位(電位分布)を検出し、この電位の検出結果は、パワーパック3による帯電ローラ2の帯電制御やレーザ光Lの露光制御に用いられる。
【0083】
感光体ドラム4の静電潜像が形成された表面4aの部分が現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが付着し、感光体ドラム4の表面4aには、静電潜像に対応した濃度分布のトナー像が可視的に顕像(現像)される。
【0084】
このトナー像は、感光体ドラム4に向かって所定のタイミングで給送された記録紙Sが、感光体ドラム4と転写ローラ7とに挟まれつつ通過することにより、記録紙Sに圧着されて転写される。そして、このトナー像が転写された記録紙Sは、図示を略す定着ユニットに向けて矢印B方向に搬送される。
【0085】
一方、トナー像を記録紙Sに転写した後の感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されて清浄化されるとともに、図示しないクエンチングランプにより残留電荷が除去されて帯電処理の状態に戻り、次回の帯電処理待ちの状態となる。
【0086】
なお、これらの画像形成装置1は、帯電ローラ2の後述する電気抵抗調整層11(表面層11b)と感光体ドラム4の外周面4a(図1参照)とが、所定の空隙Mを介して対向している近接帯電方式のものである。
【0087】
図1に示した帯電ローラ2は、軸部材をなす長尺略円柱状の導電性支持体10と、導電性支持体10の外周面10aに形成された電気抵抗調整層11と、電気抵抗調整層11とは異なる材質からなり、導電性支持体10の外周面10a側であって電気抵抗調整層11の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層11の外周面11aよりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層11に対向配置される感光体ドラム4に当接する外周面12aを有する一対の空隙保持部材12とを備えている。
【0088】
また、電気抵抗調整層11の外周面11aは、トナーの付着を防止する表面層11bによって覆われている。
【0089】
この電気抵抗調整層11は、導電性支持体10を中心とした円筒状を呈し、各空隙保持部材12も、導電性支持体10を中心とした円筒状を呈している。
【0090】
図2は、図1に示した帯電ローラ2を、感光体ドラム4に隣接して設置した様子を示した模式図である。帯電ローラ2は、感光体ドラム4に対して任意の圧力で当接されて配置され、このとき、空隙保持部材12の外周面12aは感光体ドラム4の外周面4aに当接するが、電気抵抗調整層11の外表面11aと感光体ドラム4の外周面4aとの間には空隙Mが形成されている。
【0091】
さらに、帯電ローラ2は、その両空隙保持部材12の各外周面12dが、感光体ドラム4の外周面4aに形成された感光体層が形成された領域K1のうち画像形成領域K2以外の領域(非画像形成領域)K2に当接するようにして設置されている。この状態において、帯電ローラ2の導電性支持体10に対して、パワーパック3により電圧を印加することによって、感光体ドラム4を帯電させることが可能となる。
【0092】
また、感光体ドラム4も、円筒形状を呈しているため、帯電ローラ2と感光体ドラム4とを図示しない回転駆動手段によって互いに反対方向に回転させることにより、互いに対向する面の部分を周方向に変化させることができる。
【0093】
したがって、電気抵抗調整層12の特定の局所部位が連続放電することを回避することができ、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じにくくなり、製品寿命を高める(耐久性を向上させる)ことができる。
【0094】
なお、帯電ローラ2と感光体ドラム4との間でのスリップを防止するために、帯電ローラ2も、感光体ドラム4と同様に、駆動ギア等により独立して回転駆動を行うのが好ましい。
【0095】
また、感光体ドラム4および帯電ローラ2は、必ずしも円筒形状を呈している必要はなく、楕円筒状等であってもよい。
【0096】
ここで、空隙保持部材12は、図1(b)に示すように、2つの部材12a,12bが接合されて、外周面12dにおいてこれら2つの部材12a,12bの接合面12fの境界線12eが露呈している。そして、両部材12a,12bの外周面12dは面一に形成されている。
【0097】
これら2つの部材12a,12bの接合は、接着によるものであってもよいが、その他公知の種々の方法で接合することができる。
【0098】
また、図1(b)に示したように、分割した2つの部材12a,12bを単に嵌め合わせや接着剤等によって接合したものの他、図3に示すように、2つの部材12a,12bの間に、これら2つの部材12a,12bよりも直径の小さい中間部材12gを挟んで接合したものを適用することもできる。
【0099】
さらに、導電性支持体10上、電気抵抗調整層11端面および空隙保持部材12の各間に接着剤を塗布して、これらを接着してもよい。
【0100】
なお、空隙保持部材12をこのような接合構造とすることにより、各部材12a,12b(,12c)と導電性支持体10との各接合面積が小さくなるため、切削加工時の切削抵抗が接合力を上回り、いずれかの、または全部の部材12a,12b(,12c)が、切削工具Tと供回りしてしまう場合があるが、例えば図4に示す構成を採用することにより、部材12a,12b同士の接合力を増大させることができ、切削加工時の供回りを防止することができる。
【0101】
すなわち、2つの部材12a,12bは、空隙保持部材12の外周面12dにおいては、接合境界線12eが露呈しているものの、導電性支持体10との外表面10aとの接合は、一方の部材12bのみとの間での接合となるように、部材12bには、空隙保持部材12全体の長さとなるボス状の延長部分を形成し、一方、部材12aは、部材12bの延長部分の外周面とも接合されるように、その内径を部材12bの延長部分の外径と略等しく形成されている。これにより、導電性支持体10と部材12bとの接合面積、および部材12bと部材12aとの接合面積を大きくすることができ、接合力の向上を図ることができる。
【0102】
また、図6に示すように、空隙保持部材12の端部(角部)、特に、切削加工時の切削工具が入る側(切削加工開始側)の端部において、外周面12dと外周面12dに隣接する端面12hとは鈍角で交差するように形成され、または外周面12dと端面12hとが交差する角部が予め面取りされていることが好ましい。
【0103】
この角部は通常は切削加工時にバリが発生しやすく、90度以下(直角および鋭角)の場合は、特にバリの発生頻度が高くなるが、面取り形状等によって90度を超える鈍角に形成することにより、切削工具が空隙保持部材12に切り込む際に、90度を超える端面12h(またはその面取り形状の面取り面)に沿って倣いながら切り込んで行くために、バリの発生頻度を大幅に低下させることができる。
【0104】
また、空隙保持部材12に要求される特性は、感光体ドラム4の外周面4aと電気抵抗調整層11の外周面11a(本実施形態のように、電気抵抗調整層11の外周面11aに表面層11bが設けられているときは、この表面層11bの外周面)との間の空隙Mを、環境に拘らず、長期(経時)に亘って安定的に形成すること、および感光体ドラム4との円滑な摺動性を確保することであり、そのためには、吸湿性が小さく、耐摩耗性の大きい材料によって形成されるのが望ましい。
【0105】
すなわち、吸湿性が大きいものは、吸湿による体積膨張率が大きく、したがって、空隙保持部材12の外周面と電気抵抗調整層11の外周面11a(表面層11bの外周面)との段差量が吸湿程度に応じて変化し易く、この段差量に相当する感光体ドラム4と電気抵抗調整層11との間の空隙が変化し易い。よって吸湿性の小さいものが好ましい。
【0106】
そして、トナー(トナー添加剤含む)が付着(固着)しにくく、感光体ドラム4と当接して摺動するため、感光体を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。
【0107】
具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂や、PC、ウレタン、フッ素等の材料により形成されることが好ましい。空隙保持部材12を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することができる。
【0108】
なお、空隙保持部材12は、成型加工により成形されたものである。
【0109】
さらに、空隙保持部材12は絶縁性材料であることが好ましく、体積固有抵抗が1013Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体基体とのリーク電流の発生を防止するためである。
【0110】
なお、空隙保持部材12の全体が絶縁性を有するものであるものに限定されず、空隙保持部材12の外周面12aのうち、少なくとも感光体ドラム4に当接する外周面12dが絶縁性を有するものであってもよい。この外周面12dが絶縁性を有するものであれば、前述のリーク電流の発生を防止することができるからである。
【0111】
本願発明者らの検討の結果によれば、空隙保持部材12の材質としては、分子量100万以上、HDD60〜70度、密度が0.96以上の高密度ポリエチレン(PE)樹脂が、耐磨耗性において良好であり、さらに、感光体を傷つけず、摩耗させず、かつトナー(トナー添加剤含む。)が付着しにくいものであり、望ましいことが判明した。
【0112】
電気抵抗調整層11は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。
【0113】
この電気抵抗調整層11の体積固有抵抗は、106〜109Ωcmであることが望ましい。109Ωcm以下の範囲では、帯電能力や転写能力がより効果的に発揮され、106Ωcm以上の範囲では、感光体ドラム4への電圧集中によるリークが生じにくい状態が安定するからである。
【0114】
電気抵抗調整層11に用いられる熱可塑性樹脂は、その種類が特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
【0115】
熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。
【0116】
したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。
【0117】
配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があるため、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70〜30重量%とするのが好ましい。
【0118】
また、導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるために、相溶化剤を添加して、導電材料のミクロ分散を実現させることもでき、このような相溶化剤を適宜使用することもできる。
【0119】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等により溶融混練することによって、容易に製造することができる。
【0120】
導電性支持体10の外周面10aへの電気抵抗調整層11の形成は、押出成形や射出成形等の方法により、導電性支持体10に上述した半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0121】
導電性支持体10上に電気抵抗調整層11のみを形成して帯電ローラ2を構成すると、電気抵抗調整層11に、トナー(トナーの添加剤等を含む)が固着して、性能低下(感光体ドラム4との空隙Mの変化や電気特性の変化等)を引き起こす場合があるが、このような問題は、電気抵抗調整層11に表面層11bを形成することにより、確実に防止することができる。
【0122】
この表面層11bの抵抗値は、電気抵抗調整層11の抵抗値よりも大きくなるように形成され、この表面層11bを形成することにより、感光体ドラム4に欠陥があった場合にも、その欠陥部に電圧が集中したり、異常放電(リーク)が発生するのを回避することができる。
【0123】
なお、表面層11bの抵抗値を高くしすぎると、帯電能力や転写能力が十分に発揮されない場合も起こりうるため、表面層11bと電気抵抗調整層11との抵抗値の差を103Ωcm以下に設定することが好ましい。
【0124】
表面層11bを形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が好ましい。これは、非粘着性に優れ、トナー固着防止の効果を十分に発揮するからである。また、樹脂材料は電気的に絶縁性を有するため、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって、表面層11bの電気抵抗値を適宜調整することができるからである。
【0125】
表面層11bの材料は、1液性であってもよいし、2液性であってもよいが、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性を高めることができ好ましい。
【0126】
なお、2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的であるが、電気抵抗調整層11は、熱可塑性樹脂のため、高い温度で加熱することができない。
【0127】
そこで、2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤および水酸基と架橋反応を起こすイソシアネート系樹脂を用いることことが望ましい。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下という比較的低温で架橋・硬化反応を起こすことができ、電気抵抗調整層11への影響を回避することができる。
【0128】
本願発明者らの検討によれば、トナーの非粘着性の観点から、シリコーン系樹脂はトナーの非粘着性が高いことが確認された。特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好であることも判明した。
【0129】
表面層11bの電気抵抗調整層11上への形成は、上記表面層11bの構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行えばよい。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0130】
帯電ローラ2と感光体ドラム4との間の空隙Mは所定の値に保つ必要があり、好ましくは100μm以下である。空隙Mが大きく過ぎると、帯電ローラ2への電圧印加条件を高くする必要があり、感光体ドラム4の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0131】
また、空隙保持部材12は、空隙保持部材12の一部が電気抵抗調整層11と段差(高低差、あるいは半径差)を有している。帯電ローラ2と感光体ドラム4との空隙Mを所定の値に保つことが望ましいことから、図2に示すように、感光体ドラム4の画像形成領域K1と空隙保持部材12の外周面12dとが同一高さである場合は、(空隙保持部材12の一部の高さ)>(電気抵抗調整層11の高さ)、となる必要があり、そのために段差は100μm以下であることが望ましい。
【0132】
空隙Mを形成する方法としては、電気抵抗調整層11と空隙保持部材12とを切削、研削等の除去加工等によって同時加工する方法を採用することができる。
【0133】
また、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層11の外周面の高さと同一(直径同一)、もしくは電気抵抗調整層11の外周面よりも低く(直径を小さく)形成することにより、空隙保持部材12と感光体ドラム4との接触幅が低減され、帯電ローラ2と感光体ドラム4との空隙Mを高精度に確保することができる。
【0134】
そして、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する端部の外周面部分が、感光体ドラム4に当接することを防止することができ、この端部の外周面部分を介して電気抵抗調整層11が、感光体ドラム4の感光体層に接触してショート電流が発生するのを、確実に防止することが可能となる。
【0135】
また、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分は、残りの部分(空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分であって、感光体ドラム4と当接する部分)よりも半径方向への突出量が小さくなるように細く加工することによって、この細く形成された部分を、切削加工の際の切削刃等の逃げシロ(逃げ加工)とすることができる。
【0136】
さらに、空隙保持部材12の端部が感光体ドラム4の感光体層に当接しないことによって、空隙保持部材12の外周面12dと感光体ドラム4との当接幅が狭くなり、当接箇所の変化に伴う空隙Mの変化が少なくなり、空隙Mの精度をより一層高く保つことが容易となる。
【0137】
しかも、この突出量が小さい部分まで画像形成領域K1の幅を拡げることができ、電気抵抗調整層11により、感光体ドラム4に潜像を形成するに際して、より大きなサイズの潜像を効率的に得ることができる。
【0138】
なお、逃げシロの形状は、空隙保持部材12の端部が、感光体ドラム4の感光体層に当接しない形状であれば、いかなる形状であってもよい(例えば、本出願人による特願2003−0306026号に記載の形状等)。
【0139】
さらに、マスキングを電気抵抗調整層11と空隙保持部材12との境界で行うことは、製造ばらつきを考慮すると面一に制御が難しく、段差が形成された空隙保持部材12のうち電気抵抗調整層11と同一径に形成された部分、または電気抵抗体層11よりも細く形成された部分まで表面層11bを形成することで、電気抵抗調整層11上に確実に表面層11bを形成することができる。
【0140】
帯電ローラ2の製造方法の一例としては、図6(a)に示すように、導電性支持体10上に、電気抵抗調整層11を射出成形によって形成し、その後、この電気抵抗調整層11の両端面側であって導電性支持体10の外周面10aに接着剤を塗布し、接着剤が塗布された部分に、2つの部材12a,12bを接合して得られた空隙保持部材12を嵌め合わせ、空隙保持部材12を導電性支持体10に接着固定する(同図(b))。
【0141】
このように、空隙保持部材12と導電支持体10および電気抵抗調整層11とが一体的に組み合わされた状態で、同図(c)に示すように、導電支持部体10の軸C回りに回転させつつ、空隙保持部材12の外周面12dおよび電気抵抗調整層11の外周面11aを、切削工具Tにより、連続的に切削加工(除去加工)して、電気抵抗調整層11の外周面11aに対する空隙保持部材12の外周面12dの半径方向への突出量を、所望とする規定量M1に形成し、両外周面11a,12dの外径を仕上げる。
【0142】
そして、空隙保持部材12と導電支持体10および電気抵抗調整層11とが一体的に組み合わされた状態で、空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを連続的に切削加工して、両者の外周面12d,11aを形成することにより、空隙保持部材12を単体で加工し、かつ導電支持体10の外周面10a上に形成された電気抵抗調整層11の外周面11aを単体で加工し、その後に両者を一体的に組み合わせて得る従来の帯電ローラのように、集積誤差が生じることがなく、したがって、電気抵抗調整層11の外周面11aに対する空隙保持部材12の外周面12dの半径方向への突出量を、正確に所望とする規定量M1に設定することができる。
【0143】
よって、電気抵抗調整層11の外周面11aと感光体ドラム4の外周面4aとの間の空隙Mの長さを、正確に規定量M1に形成することができる。
【0144】
なお、表面層11bは、上述した切削加工の後に、空隙保持部材12を保護(マスキング)した上で、電気抵抗調整層11の外周面11a上に、例えば上述した塗布等により形成される(同図(d))。
【0145】
さらに、上述した空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを連続的に切削加工するに際しては、図1(b)に示すように、各空隙保持部材12の両端部のうち、電気抵抗調整層11に隣接する側の各端部12cを、切り欠くように除去するのが好ましい。
【0146】
このように両空隙保持部材12,12の端部12c,12cを切り欠くことにより、帯電ローラ2の軸方向に沿った、空隙保持部材12の外周面12dの長さが短縮されるため、空隙保持部材12と感光体ドラム4との当接長さが短くなり、例えば、空隙保持部材12の外周面12dが、導電性支持体10の軸Cに対して傾いていたり、この外周面12dの面精度が不十分であっても、この面12dの傾きや面精度に起因する、帯電ローラ2の1回転中における当接部分の変動を抑制し、空隙Mの変動を抑制することができる。
【0147】
また、これらの端部12cが切り欠かれることによって、この端部12cが感光体ドラム4に当接しないようにすることができ、空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを組み合わせた状態で、両者の外周面12d,11aを連続的に切削加工して、加工精度のばらつきがあった場合にも、電気抵抗調整層11が感光体ドラム4に接触して、電流のリークが生じるのを防止することができる。
【0148】
さらに、切削加工を行う場合に、この端部12cを前述したように面取り加工等して、鈍角に形成してもよく、これにより、切削工具Tの逃げシロ(加工逃げ)となり、切削加工の容易化を図ることもできる。なお、逃げシロとしての切欠きの形状は、どのような形状であってもよい。
【0149】
以上のように構成された本実施形態に係る帯電ローラ2によれば、感光体ドラム4と接触する空隙保持部材12は、2つ(2つ以上であってもよい)の部材12a,12bが接合されて、その外周面12dにおいてこれら両部材12a,12bの接合境界線12eが露呈しているが、これらの部材12a,12b間に作用する接合力は、空隙保持部材12が単一部材からなるものである場合に比べて、その接合面に作用する形状保持力が極めて小さい。
【0150】
そして、図7(a)に示すように切削工具Tを用いて切削加工を行った場合、枝状の切粉Gにおける上述の接合面12f(同図(b)参照)は、切粉Gの長手方向に対して略直交する方向に所在することとなり、接合面12fの面積が長さに対して極めて小さい割合となり、切粉の長手方向に直交する方向に僅かな切削荷重が作用しただけで、接合面12fには大きな剪断力が発生することとなる。
【0151】
この結果、枝状に伸びた切粉Gは、接合面12fにおいて、極めて容易に、元の2つの部材12a,12bに分断されるため、短い切粉Gとなる。したがって、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉が帯電ローラ2に巻き付く(絡まる)のを防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、感光体ドラム4との間に安定した空隙Mを維持することにより、感光体ドラム4の表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0152】
また、本実施形態に係る帯電ローラ2は、空隙保持部材12が、トナーが付着しにくい材料によって形成されているため、その外周面12dにトナーが付着するのが防止されている。したがって、空隙保持部材12の外周面12dにトナーが付着することによる電気抵抗調整層11と感光体ドラム4との間の空隙Mの変動を防止することができ、この空隙Mを厳密に維持することができる。これにより、感光体ドラム4に潜像を精度よく形成することができる。
【0153】
また、本実施形態に係る帯電ローラ2は、電気抵抗調整層11の外周面11aが表面層11bによって覆われているため、電気抵抗調整層11の外周面11aにトナーが付着するのを防止することができる。
【実施例】
【0154】
以下、上述した実施形態の帯電ローラ2の、より具体的な複数の実施例1〜実施例3と、比較例1とを用いて、空隙保持部材12のバリの発生有無、切粉Gの巻付きの有無、および空隙保持部材12へのトナー固着の有無について、実験および結果の評価を行った。
(実施例1)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0155】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテック HY540;日本ポリケム株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0156】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P;川上塗料株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(実施例2)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0157】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ジェイレクスKM780K;日本ポリオレフィン株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0158】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、シリコーン系樹脂(スリップコーティング剤HS−3;東芝シリコーン株式会社製)、硬化剤(XC9603;ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、触媒(YC6831;ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、およびカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗8.3×109Ω)によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(実施例3)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0159】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ジェイレクスKM780K;日本ポリオレフィン株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0160】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P;川上塗料株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(比較例1)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108Ωcm)を円筒状に射出成形により、外径12.0mmに成形した。
【0161】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、ウレタン樹脂(アデカボンタイターAM36;旭電化工業株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成した。
【0162】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、低密度ポリエチレン樹脂(NC524A;日本ポリオレフィン株式会社製)からなる単一部材からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着し、切削加工によって、この空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行い、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
【0163】
ただし、端部12cの形状は90度とした。
(試験)
上記各実験例1〜3および比較例1の帯電ローラ2を、図8に示した画像形成装置1に搭載して評価を行った。
【0164】
なお、試験条件は、帯電ローラへの印加電圧を、DC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2kHz)とし、600000枚の記録紙(A4サイズ)に画像を出力した。試験環境は、温度23°C、湿度60%RHである。
【0165】
以上の評価結果を表1に示す。
【0166】
【表1】
表1より明らかなように、実施例1〜実施例3の帯電ローラはいずれも、空隙保持部材12のバリの発生および切粉の巻付きは無く、また空隙保持部材12へのトナー固着も良好(固着量は少ない)であることが確認され、いずれも比較例1を上回る優れた効果が実証された。
【0167】
以上、本発明に係る導電性部材について、帯電ローラとして用いた実施形態および実施例についてを説明したが、本発明に係る導電性部材は、帯電ローラに限定されるものではなく、転写ローラ、現像ローラ、感光体ドラム等として適用することもでき、このようなものとして適用した場合にも、上述した実施形態と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0168】
また、上述した実施形態の帯電ローラ2と、感光体ドラム4と、表面電位計5と、現像ローラ6と、クリーニング装置8とが、図10に示すように、図示しない連結部材等によって一体化されたプロセスカートリッジ9は、本発明に係るプロセスカートリッジの一実施形態であり、このプロセスカートリッジ9も、本実施形態の帯電ローラ2によって奏される作用、効果と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0169】
さらに、このような実施形態のプロセスカートリッジ9は、画像形成装置1等このプロセスカートリッジ9が使用される装置に対して、交換が容易(メンテナンス性高く)であり、上述した優れた帯電ローラ2を簡易な脱着操作によって提供することもできる。
【0170】
また、図8は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図であり、上述した実施形態の帯電ローラ2を備えた画像形成装置1(例えば、デジタル複写機)である。
【0171】
図示の画像形成装置1は、装置本体の最上部に設けられ、所定の読取台上に載置された原稿を画像情報として光学的に読み取る原稿読取部20と、装置本体の下部に設けられ、多数の記録紙Sが収容された給紙部30と、記録紙Sに、原稿読取部20によって読み取られた原稿の画像情報を、可視像として記録紙Sに記録する画像記録部40と、可視像(画像)が記録された後の記録紙Sが載置される排紙部50と、給紙部30から画像記録部40を経て排紙部50まで記録紙を搬送する搬送部60と、画像記録部40から排紙部50に至る搬送部60の搬送経路上に設けられ、画像記録部40から搬送された記録紙S上の画像を定着させる定着部70とを備えた構成である。
【0172】
ここで、原稿読取部20は、例えば、原稿を読み取るための光を出射する光源と、光源から出射した光を原稿に照射しつつ、原稿からの反射光像を読み取る走査手段およびラインセンサ等とが設けられ、ラインセンサによって読み取られた反射光像は画像情報として、画像記録部40に送信される。
【0173】
給紙部30は、記録紙Sのサイズ違いに対応した2種類のサイズの給紙トレイ31,32を、上下2段に配列して備えるとともに、任意のサイズの記録紙Sを給紙するための手差し給紙部33を備えている。なお、給紙トレイ31,32は、例えばサイズの大きい記録紙Sに対応した大サイズの給紙トレイ31が下段側に配置され、サイズの小さい記録紙Sに対応した小サイズの給紙トレイ32が上段側に配置されている。
【0174】
また、各給紙トレイ31,32および手差し給紙部33にはそれぞれ、記録紙Sを1枚ずつ引き出して、搬送部60の搬送経路上に給紙するための枚葉手段である給紙ローラ34,35,36が設けられている。
【0175】
画像記録部40は、前述した実施形態の帯電ローラ2、感光体ドラム4等が一体的に構成された図10に示したプロセスカートリッジ9と、原稿読取部20から送信された画像情報に応じて光量が制御されることにより画像情報を担持したレーザ光Lを出射して、帯電ローラ2により一様均一に帯電された感光体ドラム4の外周面上に、この画像情報に応じた静電潜像を記録する書込ユニット41とを備えている。
【0176】
排紙部50は、下段側に設けられたビントレイ51と、上段側に設けられた排紙トレイ52とを備えており、ビントレイ51に排紙するか、または排紙トレイ52に排紙するかの振分けは、図示しない操作パネルに入力された指示に従って、搬送部60の搬送経路上に設けられた排紙ローラ64,65により行われる。
【0177】
搬送手段60は、上述した排紙ローラ64,65の他、搬送経路上の、画像記録部40の手前で記録紙Sの給紙位置を制御するレジストローラ対61、画像記録部40において記録紙Sに、感光体ドラム4上に形成されたトナー像を転写させる転写搬送ベルト62等を備えている。なお、転写搬送ベルト62は駆動ローラ63の回転によって循環駆動されている。
【0178】
このように構成された本実施形態の画像形成装置1は、まず、原稿読取部20によって原稿に記載された画像情報が読み取られ、この読み取って得られた画像情報が書込ユニット41に送られる。
【0179】
次いで、画像記録部40は、感光体ドラム4を矢印方向に回転させ、その外周面がプロセスカートリッジ9の除電ランプにより除電されて基準電位に平均化され、その後、帯電ローラ2により一様均一に帯電される。
【0180】
そして、書込みユニット41が、送信された画像情報に応じて光量制御したレーザ光Lを、感光体ドラム4に照射し、これによって、感光体ドラム4の外周面上には、画像情報に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0181】
さらに、感光体ドラム4の回転が進んで現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが感光体ドラム4の外周面に付着し、静電潜像の電位分布に対応した濃度分布のトナー像が顕像される。
【0182】
一方、図示しない操作パネルにより指示されたサイズの記録紙Sが収容された給紙トレイ31若しくは32、または手差しトレイ33の給紙ローラ34若しくは35または36が、対応するトレイ31、32または33から、記録紙Sを1枚ずつ引き出して、搬送部60の搬送経路上に給紙する。
【0183】
ここで、レジストローラ対61が、搬送経路上に給紙された記録紙Sの搬送方向先端と、感光体ドラム4上のトナー像の先端とを正確に一致させるように、記録紙Sのスキュー(skew;到達時間差)を補正して、記録紙Sの搬送タイミングを正確に調整する。
【0184】
そして、搬送タイミングが調整された記録紙Sは、転写搬送ベルト62によって、感光体ドラム4上のトナー像が転写されるように画像記録部40に搬送され、トナー像が転写される。
【0185】
このトナー像が転写された記録紙Sは、転写搬送ベルト62によりさらに搬送され、転写搬送ベルト62が駆動ローラ63に巻き掛けられた部分において、転写搬送ベルト62から分離されて、定着ユニット70へ搬送される。
【0186】
ここで、記録紙Sの剛性(腰)により、記録紙Sが撓んだときに形成される記録紙S自体の曲率半径は、駆動ローラ63の曲率半径よりも大きいため、記録紙Sが駆動ローラ63を通過した部分において、記録紙Sは転写搬送ベルト62から分離する。
【0187】
定着ユニット70は、記録紙Sを加熱しつつ挟持圧力を掛けて、記録紙S上に転写されたトナーをこの記録紙Sに融着させることにより定着させる。
【0188】
そして、トナー像が定着された記録紙Sは、排紙ローラ64,65によって、操作パネルに入力された指示に対応した排紙トレイ52またはビントレイ51に排出される。
【0189】
一方、画像記録部40の感光体ドラム4上に残留したトナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転し、クリーニング装置8のクリーニングブレードにより掻き取られ、再び次の画像記録工程に移行する。
【0190】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、本実施形態の帯電ローラ2によって奏される作用、効果と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0191】
さらに、上述した優れた帯電ローラ2を用いているため、搬送部60によって搬送された記録紙S(記録媒体)に記録される可視像を、長期間に亘って、安定したものとすることができる。
【0192】
なお、本発明に係る画像形成装置は、図8に示した画像形成装置1の形態に限定されるものではなく、他の形態の複写機や、原稿読取部20を備えないレーザプリンタを始めとした各種プリンタや、ファクシミリ装置等であってもよく、電子写真方式により信号(情報)に基づいて画像(文字等を含む)を形成するものであれば、如何なる形態の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明に係る導電性部材の一実施形態である帯電ローラを示す図であり、(a)は概略図、(b)は(a)におけるD部の詳細を示す部分破断面図である。
【図2】図1に示した帯電ローラと感光体ドラムとの位置関係を示す図(帯電ローラは断面図)である。
【図3】帯電ローラの他の実施形態を示す図1(b)相当の部分破断面図である(その1)。
【図4】帯電ローラの他の実施形態を示す図1(b)相当の部分破断面図である(その2)。
【図5】空隙保持部材の外周面と、この外周面に隣接する端面とが交差する角部に面取り加工を施して、外周面と端面との交差角度を鈍角とした実施形態を示す図である。
【図6】図1に示した帯電ローラの形成方法を模式的に表した断面図である。
【図7】空隙保持部材に対する切削加工によって生じた切粉の様子を示す模式図である。
【図8】図1に示した帯電ローラを備えた画像形成装置の一例の要部を示す図である。
【図9】画像形成装置の要部構成を示す図である。
【図10】プロセスカートリッジを備えた画像形成装置の要部構成を示す図である。
【図11】空隙保持部材を切削加工によって加工した際に発生する切粉の巻付きを表す模式図である。
【符号の説明】
【0194】
1 画像形成装置
2 帯電ローラ(導電性部材)
4 感光体ドラム(像担持体)
4a 外周面
10 導電性支持体
10a 外周面
11 電気抵抗調整層
11a 外周面
11b 表面層
12 空隙保持部材
12a 部材
12b 部材
12c 端部
12d 外周面
12e 接合境界線
12f 接合面
M 空隙
G 切粉
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接帯電方式の導電性部材、この導電性材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関し、詳細には、導電性部材の電気抵抗調整層の端部に設けられた空隙保持部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、感光体ドラム(像担持体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材等が、導電性部材として用いられている。
【0003】
図9は、帯電部材が導電性部材として用いられた一例である画像形成装置1を示すものであり、画像形成装置1における帯電ローラ2が帯電部材すなわち導電性部材として用いられている。
【0004】
この画像形成装置1は、静電潜像が形成される感光体ドラム4と、感光体ドラム4に対して一様の帯電処理を行う帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するパワーパック(電圧印加電源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、レーザ光Lによって形成された感光体ドラム4上の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ6と、このトナーの付着によって形成されたトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4をクリーニングするためのクリーニング装置8とを備えている。
【0005】
なお、感光体ドラム4、帯電ローラ2、表面電位計5、現像ローラ6、およびクリーニング装置8が、図10に示すように、プロセスカートリッジ9として一体化された画像形成装置1もある。
【0006】
ここで、感光体ドラム4は、図示しない駆動機構からの駆動力を得て、図示奥行き方向に延びる軸を中心として矢印A方向に回転し、帯電ローラ2は、パワーパック3から電力の供給を受けて帯電する。
【0007】
そして、この帯電ローラ2は、帯電ローラ2に対向する感光体ドラム4の表面4aを、所望の電位で一様に帯電させる。このとき、感光体ドラム4は、矢印A方向に回転するため、感光体ドラム4の表面4aのうち、帯電ローラ2に対向している部分よりも回転方向下流側となる表面部分が、回転にしたがって順次一様に帯電することとなる。
【0008】
続いて、この感光体ドラム4の一様帯電表面に、原稿から読み取って得られた画像や文字等の画像情報あるいは予め記憶された画像情報に応じた出射光量に制御されたレーザ光(あるいは原稿からの反射光や透過光)Lが照射される。
【0009】
このとき、感光体ドラム4の表面4aの電位(負の電位)は、レーザ光Lの照射によって低下(絶対的な電位は、0「ゼロ」に近付く方向に上昇)する。そして、この低下する電位の幅は、レーザ光Lによる照射光量が大きくなるにしたがって大きくなる。したがって、上述した画像情報等を担持したレーザ光Lの照射によって、感光体ドラム4の表面4aには、その画像情報等に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0010】
そして、表面電位計5が、感光体ドラム4の表面4aに形成された静電潜像の電位(電位分布)を検出し、この電位の検出結果は、パワーパック3による帯電ローラ2の帯電制御やレーザ光Lの露光制御に用いられる。
【0011】
感光体ドラム4の静電潜像が形成された表面4aの部分が現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが付着し、感光体ドラム4の表面4aには、静電潜像に対応した濃度分布のトナー像が可視的に現出(顕像)される。
【0012】
このトナー像は、感光体ドラム4に向かって所定のタイミングで給送された記録紙Sが、感光体ドラム4と転写ローラ7とに挟まれつつ通過することにより、記録紙Sに圧着されて転写される。そして、トナー像が転写された記録紙Sは、図示を略す定着ユニットに向けて矢印B方向に搬送される。
【0013】
一方、トナー像を記録紙Sに転写した後の感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されて清浄化されるとともに、図示しないクエンチングランプにより残留電荷が除去されて帯電処理前の状態に戻り、次回の帯電処理待ちの状態となる。
【0014】
ところで、上述した画像形成装置における一般的な帯電方式としては、帯電ローラを感光体ドラムに接触させる接触帯電方式が知られている(特許文献1)。
【0015】
しかしながら、接触帯電方式からなる帯電ローラ2を用いた場合には、以下に掲げるような問題があった。
(1)帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して感光体ドラムの表面に付着し、この付着が進行すると感光体ドラム表面に帯電ローラの跡が残る。
(2)帯電ローラに交流電圧を印加した際に、感光体ドラムに接触している帯電ローラが振動して帯電音が生じる。
(3)感光体ドラム表面のトナーが帯電ローラに付着して帯電性能が低下する。特に帯電ローラにおいて(1)の染出しが生じると、トナーが一層付着し易くなる。
(4)帯電ローラを構成している物質が感光体に付着し易い。
(5)感光体ドラムを長期間駆動しないと帯電ローラに永久ひずみが生じる。
【0016】
このような問題に対処するために、帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触させるのではなく、両者を非接触で近接させる近接帯電方式が考案されている(特許文献2)。
【0017】
この近接帯電方式は、帯電ローラ2と感光体ドラム4との最近接距離(以下、空隙という)が50μm〜300μmとなるように両者を非接触で対向させ、帯電ローラ2に電圧を印加して感光体ドラム4の帯電を行うものである。近接帯電方式においては、帯電ローラ2と感光体ドラム4とが接触しないため、接触帯電方式において問題となる、帯電ローラの構成物質の感光体ドラムへの付着、および長期間の不使用により生じる帯電ローラの永久ひずみ、については問題とならない。
【0018】
また、トナー付着による帯電ローラの帯電性能の低下、に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式の方が接触帯電方式よりも優れている。
【0019】
近接帯電方式を実現するものとして、帯電ローラの両端部に、所定の厚さを有するテープ状の空隙保持手段を巻き付けて帯電ローラと感光体ドラムとの間に一定間隔の空隙を確保する方法(特許文献3)、帯電ローラの両端部にスペーサリングを設けて、帯電ローラと感光体ドラムとの間に一定間隔の空隙を確保する方法(特許文献2,4)などが提案されている。
【特許文献1】特開昭63―149668号公報
【特許文献2】特開平3−240076号公報
【特許文献3】特開2002−139893号公報
【特許文献4】特開平4−358175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献3に開示された技術は、帯電ローラとテープ状空隙保持部材との間にトナーが侵入し、このトナーが固着等することによって、あるいはテープ状空隙保持部材の経時的摩耗によって、感光体ドラムと帯電ローラとの間の空隙を、経時的に、一定間隔に維持し続けることが困難である。
【0021】
また、テープ状空隙保持部材の摩耗等を防止するために、テープ状の部材に代えて、金属製のリングを使用する技術も考えられるが、このような金属製のリングは、当接する相手方である感光体ドラムの摩耗を促進させることとなり、感光体ドラムの表面層が摩耗して基層金属が表出すると、この基層金属と金属製リングとの間でショート電流が生じて、電源であるパワーパックを損傷させる虞がある。
【0022】
また、そのようなリングをスペーサリングとした特許文献2,4に開示された技術は、帯電ローラ(導電性部材)と感光体ドラム(像担持体)との間の空隙を、精度よく一定に保つための具体的な技術が何ら開示されていないため、帯電ローラおよびスペーサリングの寸法精度がばらついて、空隙幅(帯電ローラと感光体ドラムとの間の距離)が変動し、結果として、帯電体ドラムの帯電電位を一定に維持させることができないという問題がある。
【0023】
そこで、本願発明者らは、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、導電性支持体の外周面側であって電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材とを備えた導電性部材であって、空隙保持部材と導電支持体および電気抵抗調整層とが一体的に組み合わされた状態で、少なくとも空隙保持部材の外周面を除去加工することにより、電気抵抗調整層の外周面に対する空隙保持部材の外周面の半径方向への突出量を、所望とする規定量に形成した導電性部材を提案している(特願2003−306026号;未公開)。
【0024】
この提案技術によれば、空隙保持部材の外周面が感光体に接触する幅を狭くすることができる。そして、空隙保持部材と感光体との接触面積が少なくなって、接触箇所の変動に伴う空隙間隔の変動が少なくなるため、空隙間隔を、精度よく、かつ長期間に亘って、一定に維持させることが容易となる。
【0025】
しかし、上述した提案の後においても、長期間に亘る上記空隙のさらなる精度維持が求められている。
【0026】
すなわち、導電性部材としての帯電ローラ2の空隙保持部材12(および電気抵抗調整層11)を切削加工によって加工する際、切削工具Tによって切削する際に発生する切粉Gの除去性が悪いと、空隙保持部材12や電気抵抗調整層11、あるいはその他軸心への切粉Gの巻付き(絡みつき)が発生し(図11)、生産性を低下させるとともに、電気抵抗調整層に切粉が巻き付いた場合、ローラ表面にスジ状のキズを付けるなど、製品の品質低下が発生する場合がある。
【0027】
具体的に説明すると、切削加工において、連続的に切削加工を行う場合、切削時に発生する切粉Gは連続的となり、特に、樹脂の空隙保持部材では、発生した切粉Gに、いわゆる腰がなく、切粉除去を行わないまま切削を続けると、切粉Gが導電性部材の各部分に絡まり、また、電気抵抗調整層11に絡まると、この電気抵抗調整層11にスジ状のキズをつけて製品品質の低下を招くため、生産の歩留りを低下させる要因となる。
【0028】
連続する長い切粉Gを発生させないために、加工を断続的に行うことも考えられるが、そのような方法によれば、加工速度の変動(加工、停止の繰返し)によって、スジ状のキズが発生しやすくなるという問題を生じる。
【0029】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、空隙保持部に対する切削加工時の切粉処理を容易にして、生産性および歩留まりを向上させ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および耐久性の高い(長寿命)導電性部材を提供することを目的とする。
【0030】
また、本発明は、そのような導電性部材を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係る導電性部材、この導電性部材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置は、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられた空隙保持部材を2以上の部材の接合により形成して、その外周面の切削加工の際に、部材の接合部で、切粉の成長を分断させるようにしたものである。
【0032】
すなわち、本発明に係る導電性部材は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、前記導電性支持体の外周面側であって前記電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、前記電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、前記電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材と、を備えた導電性部材において、前記空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈していることを特徴とする。
【0033】
ここで、「外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈している」とは、外周面が、部材の接合面に対して交差している結果、この接合面の、外周面による断面線(接合境界線)が外周面上に現れていることを意味する。
【0034】
2以上の部材は、同一材質のであってもよいし、異なる材質のものであってもよく、これらの物理的に別体の部材が、接合されて単一の部材をなしていればよい。
【0035】
空隙保持部材の外周面を、切削工具による切削加工によって形成し、あるいはこの外周面を切削加工によって仕上げる場合、切削工具が空隙保持部材の外周面を切削加工するが、このとき、切削工具との接点からは切粉が発生し、この切粉は切削加工が進むのに伴って枝状に延々と伸びて、加工対象の部材自体や切削工具に絡みついて、切削対象面の加工精度の低下を招くなど、好ましくない自体を引き起こす虞がある。
【0036】
これに対して、本発明の導電性部材は、空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているが、これら2以上の部材間に作用する接合力は、単一部材の内部に作用する形状保持力に比して極めて小さい。
【0037】
そして、切削加工によって伸びた枝状の切粉における上述の接合面は、切粉の長手方向に対して略直交する方向に所在することとなり、接合面の面積が長さに対して極めて小さい割合となり、切粉の長手方向に直交する方向に僅かな荷重が作用しただけで、接合面には大きな剪断力が発生することとなる。
【0038】
この結果、枝状に伸びた切粉は、接合面において極めて容易に分断されて短い切粉となる。すなわち、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0039】
また、本発明の請求項2に係る導電性部材は、請求項1に係る導電性部材において、前記空隙保持部材のうち前記外周面と該外周面に隣接する端面とは鈍角で交差するように形成され、または該外周面と該端面とが交差する角部が予め面取りされていることを特徴とする。
【0040】
ここで、外周面に隣接する端面とは、少なくとも、外周面を切削加工し始める側の端面を意味し、必ずしも切削加工終了側の端面までも含むものではないが、この終了側の端面も含むものであってもよい。
【0041】
なお、鈍角は、90度を超える角度であるが、180度未満の角度であることはいうまでもない。
【0042】
切削時にバイト等の切削工具が切り込み始める空隙保持部材の端部は、その外周面と端面とが90度以下で交差した形状であるときは、バリが発生しやすいこことが判明したが、このバリは、空隙保持部材の外周面と像担持体との間に挟み込まれると、空隙量の変動を招き、空隙量が、導電性部材の長手方向の両端で差異を生じうる。
【0043】
しかし、外周面と端面とが鈍角(90度を超える角度)で交差した本発明の構成では、外周面に沿って切削を行った場合に、その交差部分において、バリ(カエリ)が発生しにくくなり、製品品質や製品精度を向上させることができる。
【0044】
また、本発明の請求項3に係る導電性部材は、請求項1または2に係る導電性部材において、前記空隙保持部材の外周面のうち、少なくとも前記像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有することを特徴とする。
【0045】
このように構成された導電性部材によれば、空隙保持部材の外周面のうち像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有するため、導電性部材に高電圧を印加した際に、空隙保持部材から像担持体の感光体基体(導電性部)に電流がリークすることがなく、像担持体(あるいは像担持体の感光体基体(導電性部)や基層金属)において形成される潜像に、電流リークによる悪影響を与えることがない。
【0046】
また、本発明の請求項4に係る導電性部材は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の導電性部材において、空隙保持部材の表面にトナーが付着しにくい材料によって形成されていることを特徴とする。
【0047】
このように構成された導電性部材によれば、空隙保持部材の表面は、トナーが付着しにくい材料によって形成されているため、トナーが付着しにくい。したがって、空隙保持部材の表面にトナーが付着することによる電気抵抗調整層と像担持体との間の間隔の変動を防止することができ、この間隔を厳密に維持することができる。これにより、像担持体に潜像を精度良く形成することができる。
【0048】
また、本発明の請求項5に係る導電性部材は、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の導電性部材において、前記空隙保持部材のうち、前記電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分(外周面が像担持体と当接する部分)よりも半径方向への突出量が小さいことを特徴とする。
【0049】
空隙保持部材は、電気抵抗調整層の両端部に形成されているため、これら両端の空隙保持部材間の最短間隔は、各空隙保持部材と電気抵抗調整層との各境界部分間の距離と略等しいということができる。
【0050】
ところで、空隙保持部材は、その外周面が像担持体に接するように形成されているものの、像担持体の外表面のうち像形成領域(例えば感光体層が形成されている領域)に接するものであってはならない。
【0051】
このため、像形成領域の幅は、各空隙保持部材と電気抵抗調整層との各境界部分間の距離よりも短く設定する必要がある。しかも、導電性部材と像担持体との間で、不測の、あるいは予め許容された軸方向について相対的な振れ(変位)が発生しても、その振れによって空隙保持部材と像担持体の像形成領域とが接触しないように、像形成領域の幅をより小さく設定する必要がある。
【0052】
これに対して、電気抵抗調整層により、像担持体に潜像を形成するに際しては、より大きな潜像を効率的に得るという観点から、像担持体の幅は、電気抵抗調整層の幅と同等以上であることか好ましい。
【0053】
この点、本発明の請求項5に係る導電性部材は、空隙保持部材のうち、電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分よりも半径方向への突出量が小さいため、その突出量が小さい空隙保持部材のうちその突出量が小さい部分は、像担持体の像形成領域に接触する虞がない。
【0054】
しかも、この突出量が小さい部分まで像形成領域の幅を拡げることができ、電気抵抗調整層により、像担持体に潜像を形成するに際して、より大きな潜像を効率的に得ることができる。
【0055】
また、本発明の請求項6に係る導電性部材は、請求項1から5のうちいずれか1項に係る導電性部材において、前記電気抵抗調整層の外周面は、トナーの付着を防止する表面層により覆われていることを特徴とする。
【0056】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体(感光体)表面に付着したトナー(あるいはトナーの添加剤)が電気抵抗調整層の表面に付着することによる問題(像担持体との空隙量の変化や電気特性の変化等)を確実に防止することができ、導電性部材の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の請求項7に係る導電性部材は、請求項6に係る導電性部材において、前記空隙保持部材のうち前記電気抵抗調整層に隣接する部分が、前記半径方向への突出量が小さい部分であり、前記トナーの付着防止用の表面層が、前記突出量の小さい部分も覆っていることを特徴とする。
【0058】
このように構成された導電性部材によれば、電気抵抗調整層の外表面に形成されている、トナーの付着を防止する表面層を、この電気抵抗調整層に隣接する空隙保持部材のうち、像担持体の外表面と当接しない部分(半径方向への突出量が小さい部分)にも形成することにより、表面層を形成する際に、電気抵抗調整層には、確実に表面層を形成することができるため、電気抵抗調整層へのトナーの付着、抵抗変化、および空隙変化を防止することができる。
【0059】
また、本発明の請求項8に係る導電性部材は、請求項6または7に係る導電性部材において、前記表面層の電気抵抗が、前記電気抵抗調整層の内部の電気抵抗よりも大きいことを特徴とする。
【0060】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体が傷等の欠陥を有する場合であっても、導電性部材からこの欠陥部分に電圧が集中したり、異常な放電が生じるのを防止することができる。
【0061】
また、本発明の請求項9に係る導電性部材は、請求項1から8のうちいずれか1項に係る導電性部材において、前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とは、前記導電性支持体を中心とする円筒形状を呈していることを特徴とする。
【0062】
このように構成された導電性部材によれば、電気抵抗調整層の外周面が、導電性支持体の軸回りに回転対称となるため、導電性支持体を回転軸として回転させて導電性部材を用いることができ、この回転しながらの使用によって、電気抵抗調整層からの放電部位を均等化することができる。したがって、電気抵抗調整層の特定の局所部位が連続放電するのを防止して、全体として電気抵抗調整層の耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明の請求項10に係る導電性部材は、請求項1から9のうちいずれか1項に係る導電性部材において、画像形成装置における帯電部材として、またはプロセスカートリッジにおける帯電部材として使用されることを特徴とする。
【0064】
このように構成された導電性部材によれば、像担持体を一様(均一)に帯電させることができる。
【0065】
また、本発明の請求項11に係る画像形成装置用のプロセスカートリッジは、本発明に係る各導電性部材と、前記像担持体とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0066】
このように構成された画像形成装置用のプロセスカートリッジによれば、像担持体と接触する空隙保持部材が、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているため、空隙保持部材の切削加工の際に、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0067】
また、上述した各請求項に対応した導電性部材による効果を得ることができる。
【0068】
さらに、プロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と導電性部材とが一体的に構成されているため、画像形成装置等このプロセスカートリッジが使用される装置に対して、交換容易に(メンテナンス性高く)、上述した優れた導電性部材を提供することができる。
【0069】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る導電性部材と、像担持体と、前記像担持体に担持された像が記録される記録媒体を搬送する搬送部とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0070】
このように構成された画像形成装置によれば、像担持体と接触する空隙保持部材が、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら両部材の接合境界線が露呈しているため、空隙保持部材の切削加工の際に、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉の巻付き(絡まり)を防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0071】
また、上述した各請求項に対応した導電性部材による効果を得ることができる。
【0072】
さらに、上述した優れた導電性部材を用いているため、搬送部によって搬送された記録媒体に形成(記録)される可視像を、長期間に亘って、安定したものとすることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明に係る導電性部材、この導電性部材を備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置によれば、導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられた空隙保持部材を2以上の部材の接合により形成して、その外周面の切削加工の際に、部材の接合部で、切粉の成長を分断させることができ、空隙保持部に対する切削加工時の切粉処理を容易にして、生産性および歩留まりを向上させ、初期および長期に亘って使用されても、潜像担持体との間に安定した空隙を維持することにより、像担持体表面の均一帯電、および高耐久性(長寿命)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明に係る導電性部材、プロセスカートリッジおよび画像形成装置についての最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0075】
図1は、図9または図10に示した画像形成装置1の帯電ローラ2(帯電部材)として使用される本発明の一実施形態である導電性部材の構成を示した部分破断面図である。
【0076】
ここで、図9,10に示した画像形成装置1は、静電潜像が形成される感光体ドラム4(像担持体)と、感光体ドラム4に対して一様の帯電処理を行う帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するパワーパック(電圧印加電源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、レーザ光(あるいは原稿からの反射光や透過光等原稿の画像情報を担持した光。以下、同じ。)Lによって形成された感光体ドラム4上の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ6と、このトナーの付着によって形成されたトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4に残留するトナーを除去するとともに残留電荷を消去するクリーニング装置8とを備えている。
【0077】
なお、図10は、感光体ドラム4、帯電ローラ2、表面電位計5、現像ローラ6、およびクリーニング装置8が、プロセスカートリッジ9として一体化された画像形成装置1の一例を示している。
【0078】
ここで、感光体ドラム4は、図示しない駆動機構からの駆動力を得て、図示奥行き方向に延びる軸を中心として矢印A方向に回転し、帯電ローラ2は、パワーパック3から電力の供給を受けて帯電する。
【0079】
そして、この帯電ローラ2は、帯電ローラ2に対向する感光体ドラム4の表面4aを、所望の電位で一様に帯電させる。このとき、感光体ドラム4は、矢印A方向に回転するため、感光体ドラム4の表面4aのうち、帯電ローラ2に対向している部分よりも回転方向下流側となる表面部分が、回転にしたがって順次一様に帯電する。
【0080】
続いて、この感光体ドラム4の一様帯電表面に、原稿から読み取って得られた画像や文字等の画像情報あるいは予め記憶された画像情報に応じた出射光量に制御されたレーザ光Lが照射される。
【0081】
このとき、感光体ドラム4の表面4aの電位(負の電位)は、レーザ光Lの照射によって低下(絶対的な電位は、0(ゼロ)に近付く方向に上昇)する。そして、この低下する電位の幅は、レーザ光Lによる照射光量が大きくなるにしたがって大きくなる。したがって、上述した画像情報等を担持したレーザ光Lの照射によって、感光体ドラム4の表面4aには、その画像情報等に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0082】
そして、表面電位計5が、感光体ドラム4の表面4aに形成された静電潜像の電位(電位分布)を検出し、この電位の検出結果は、パワーパック3による帯電ローラ2の帯電制御やレーザ光Lの露光制御に用いられる。
【0083】
感光体ドラム4の静電潜像が形成された表面4aの部分が現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが付着し、感光体ドラム4の表面4aには、静電潜像に対応した濃度分布のトナー像が可視的に顕像(現像)される。
【0084】
このトナー像は、感光体ドラム4に向かって所定のタイミングで給送された記録紙Sが、感光体ドラム4と転写ローラ7とに挟まれつつ通過することにより、記録紙Sに圧着されて転写される。そして、このトナー像が転写された記録紙Sは、図示を略す定着ユニットに向けて矢印B方向に搬送される。
【0085】
一方、トナー像を記録紙Sに転写した後の感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されて清浄化されるとともに、図示しないクエンチングランプにより残留電荷が除去されて帯電処理の状態に戻り、次回の帯電処理待ちの状態となる。
【0086】
なお、これらの画像形成装置1は、帯電ローラ2の後述する電気抵抗調整層11(表面層11b)と感光体ドラム4の外周面4a(図1参照)とが、所定の空隙Mを介して対向している近接帯電方式のものである。
【0087】
図1に示した帯電ローラ2は、軸部材をなす長尺略円柱状の導電性支持体10と、導電性支持体10の外周面10aに形成された電気抵抗調整層11と、電気抵抗調整層11とは異なる材質からなり、導電性支持体10の外周面10a側であって電気抵抗調整層11の両端側にそれぞれ設けられ、電気抵抗調整層11の外周面11aよりも半径方向に突出して、電気抵抗調整層11に対向配置される感光体ドラム4に当接する外周面12aを有する一対の空隙保持部材12とを備えている。
【0088】
また、電気抵抗調整層11の外周面11aは、トナーの付着を防止する表面層11bによって覆われている。
【0089】
この電気抵抗調整層11は、導電性支持体10を中心とした円筒状を呈し、各空隙保持部材12も、導電性支持体10を中心とした円筒状を呈している。
【0090】
図2は、図1に示した帯電ローラ2を、感光体ドラム4に隣接して設置した様子を示した模式図である。帯電ローラ2は、感光体ドラム4に対して任意の圧力で当接されて配置され、このとき、空隙保持部材12の外周面12aは感光体ドラム4の外周面4aに当接するが、電気抵抗調整層11の外表面11aと感光体ドラム4の外周面4aとの間には空隙Mが形成されている。
【0091】
さらに、帯電ローラ2は、その両空隙保持部材12の各外周面12dが、感光体ドラム4の外周面4aに形成された感光体層が形成された領域K1のうち画像形成領域K2以外の領域(非画像形成領域)K2に当接するようにして設置されている。この状態において、帯電ローラ2の導電性支持体10に対して、パワーパック3により電圧を印加することによって、感光体ドラム4を帯電させることが可能となる。
【0092】
また、感光体ドラム4も、円筒形状を呈しているため、帯電ローラ2と感光体ドラム4とを図示しない回転駆動手段によって互いに反対方向に回転させることにより、互いに対向する面の部分を周方向に変化させることができる。
【0093】
したがって、電気抵抗調整層12の特定の局所部位が連続放電することを回避することができ、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じにくくなり、製品寿命を高める(耐久性を向上させる)ことができる。
【0094】
なお、帯電ローラ2と感光体ドラム4との間でのスリップを防止するために、帯電ローラ2も、感光体ドラム4と同様に、駆動ギア等により独立して回転駆動を行うのが好ましい。
【0095】
また、感光体ドラム4および帯電ローラ2は、必ずしも円筒形状を呈している必要はなく、楕円筒状等であってもよい。
【0096】
ここで、空隙保持部材12は、図1(b)に示すように、2つの部材12a,12bが接合されて、外周面12dにおいてこれら2つの部材12a,12bの接合面12fの境界線12eが露呈している。そして、両部材12a,12bの外周面12dは面一に形成されている。
【0097】
これら2つの部材12a,12bの接合は、接着によるものであってもよいが、その他公知の種々の方法で接合することができる。
【0098】
また、図1(b)に示したように、分割した2つの部材12a,12bを単に嵌め合わせや接着剤等によって接合したものの他、図3に示すように、2つの部材12a,12bの間に、これら2つの部材12a,12bよりも直径の小さい中間部材12gを挟んで接合したものを適用することもできる。
【0099】
さらに、導電性支持体10上、電気抵抗調整層11端面および空隙保持部材12の各間に接着剤を塗布して、これらを接着してもよい。
【0100】
なお、空隙保持部材12をこのような接合構造とすることにより、各部材12a,12b(,12c)と導電性支持体10との各接合面積が小さくなるため、切削加工時の切削抵抗が接合力を上回り、いずれかの、または全部の部材12a,12b(,12c)が、切削工具Tと供回りしてしまう場合があるが、例えば図4に示す構成を採用することにより、部材12a,12b同士の接合力を増大させることができ、切削加工時の供回りを防止することができる。
【0101】
すなわち、2つの部材12a,12bは、空隙保持部材12の外周面12dにおいては、接合境界線12eが露呈しているものの、導電性支持体10との外表面10aとの接合は、一方の部材12bのみとの間での接合となるように、部材12bには、空隙保持部材12全体の長さとなるボス状の延長部分を形成し、一方、部材12aは、部材12bの延長部分の外周面とも接合されるように、その内径を部材12bの延長部分の外径と略等しく形成されている。これにより、導電性支持体10と部材12bとの接合面積、および部材12bと部材12aとの接合面積を大きくすることができ、接合力の向上を図ることができる。
【0102】
また、図6に示すように、空隙保持部材12の端部(角部)、特に、切削加工時の切削工具が入る側(切削加工開始側)の端部において、外周面12dと外周面12dに隣接する端面12hとは鈍角で交差するように形成され、または外周面12dと端面12hとが交差する角部が予め面取りされていることが好ましい。
【0103】
この角部は通常は切削加工時にバリが発生しやすく、90度以下(直角および鋭角)の場合は、特にバリの発生頻度が高くなるが、面取り形状等によって90度を超える鈍角に形成することにより、切削工具が空隙保持部材12に切り込む際に、90度を超える端面12h(またはその面取り形状の面取り面)に沿って倣いながら切り込んで行くために、バリの発生頻度を大幅に低下させることができる。
【0104】
また、空隙保持部材12に要求される特性は、感光体ドラム4の外周面4aと電気抵抗調整層11の外周面11a(本実施形態のように、電気抵抗調整層11の外周面11aに表面層11bが設けられているときは、この表面層11bの外周面)との間の空隙Mを、環境に拘らず、長期(経時)に亘って安定的に形成すること、および感光体ドラム4との円滑な摺動性を確保することであり、そのためには、吸湿性が小さく、耐摩耗性の大きい材料によって形成されるのが望ましい。
【0105】
すなわち、吸湿性が大きいものは、吸湿による体積膨張率が大きく、したがって、空隙保持部材12の外周面と電気抵抗調整層11の外周面11a(表面層11bの外周面)との段差量が吸湿程度に応じて変化し易く、この段差量に相当する感光体ドラム4と電気抵抗調整層11との間の空隙が変化し易い。よって吸湿性の小さいものが好ましい。
【0106】
そして、トナー(トナー添加剤含む)が付着(固着)しにくく、感光体ドラム4と当接して摺動するため、感光体を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。
【0107】
具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂や、PC、ウレタン、フッ素等の材料により形成されることが好ましい。空隙保持部材12を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することができる。
【0108】
なお、空隙保持部材12は、成型加工により成形されたものである。
【0109】
さらに、空隙保持部材12は絶縁性材料であることが好ましく、体積固有抵抗が1013Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体基体とのリーク電流の発生を防止するためである。
【0110】
なお、空隙保持部材12の全体が絶縁性を有するものであるものに限定されず、空隙保持部材12の外周面12aのうち、少なくとも感光体ドラム4に当接する外周面12dが絶縁性を有するものであってもよい。この外周面12dが絶縁性を有するものであれば、前述のリーク電流の発生を防止することができるからである。
【0111】
本願発明者らの検討の結果によれば、空隙保持部材12の材質としては、分子量100万以上、HDD60〜70度、密度が0.96以上の高密度ポリエチレン(PE)樹脂が、耐磨耗性において良好であり、さらに、感光体を傷つけず、摩耗させず、かつトナー(トナー添加剤含む。)が付着しにくいものであり、望ましいことが判明した。
【0112】
電気抵抗調整層11は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。
【0113】
この電気抵抗調整層11の体積固有抵抗は、106〜109Ωcmであることが望ましい。109Ωcm以下の範囲では、帯電能力や転写能力がより効果的に発揮され、106Ωcm以上の範囲では、感光体ドラム4への電圧集中によるリークが生じにくい状態が安定するからである。
【0114】
電気抵抗調整層11に用いられる熱可塑性樹脂は、その種類が特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
【0115】
熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。
【0116】
したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。
【0117】
配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があるため、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70〜30重量%とするのが好ましい。
【0118】
また、導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるために、相溶化剤を添加して、導電材料のミクロ分散を実現させることもでき、このような相溶化剤を適宜使用することもできる。
【0119】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等により溶融混練することによって、容易に製造することができる。
【0120】
導電性支持体10の外周面10aへの電気抵抗調整層11の形成は、押出成形や射出成形等の方法により、導電性支持体10に上述した半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0121】
導電性支持体10上に電気抵抗調整層11のみを形成して帯電ローラ2を構成すると、電気抵抗調整層11に、トナー(トナーの添加剤等を含む)が固着して、性能低下(感光体ドラム4との空隙Mの変化や電気特性の変化等)を引き起こす場合があるが、このような問題は、電気抵抗調整層11に表面層11bを形成することにより、確実に防止することができる。
【0122】
この表面層11bの抵抗値は、電気抵抗調整層11の抵抗値よりも大きくなるように形成され、この表面層11bを形成することにより、感光体ドラム4に欠陥があった場合にも、その欠陥部に電圧が集中したり、異常放電(リーク)が発生するのを回避することができる。
【0123】
なお、表面層11bの抵抗値を高くしすぎると、帯電能力や転写能力が十分に発揮されない場合も起こりうるため、表面層11bと電気抵抗調整層11との抵抗値の差を103Ωcm以下に設定することが好ましい。
【0124】
表面層11bを形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が好ましい。これは、非粘着性に優れ、トナー固着防止の効果を十分に発揮するからである。また、樹脂材料は電気的に絶縁性を有するため、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって、表面層11bの電気抵抗値を適宜調整することができるからである。
【0125】
表面層11bの材料は、1液性であってもよいし、2液性であってもよいが、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性を高めることができ好ましい。
【0126】
なお、2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的であるが、電気抵抗調整層11は、熱可塑性樹脂のため、高い温度で加熱することができない。
【0127】
そこで、2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤および水酸基と架橋反応を起こすイソシアネート系樹脂を用いることことが望ましい。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下という比較的低温で架橋・硬化反応を起こすことができ、電気抵抗調整層11への影響を回避することができる。
【0128】
本願発明者らの検討によれば、トナーの非粘着性の観点から、シリコーン系樹脂はトナーの非粘着性が高いことが確認された。特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好であることも判明した。
【0129】
表面層11bの電気抵抗調整層11上への形成は、上記表面層11bの構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行えばよい。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0130】
帯電ローラ2と感光体ドラム4との間の空隙Mは所定の値に保つ必要があり、好ましくは100μm以下である。空隙Mが大きく過ぎると、帯電ローラ2への電圧印加条件を高くする必要があり、感光体ドラム4の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0131】
また、空隙保持部材12は、空隙保持部材12の一部が電気抵抗調整層11と段差(高低差、あるいは半径差)を有している。帯電ローラ2と感光体ドラム4との空隙Mを所定の値に保つことが望ましいことから、図2に示すように、感光体ドラム4の画像形成領域K1と空隙保持部材12の外周面12dとが同一高さである場合は、(空隙保持部材12の一部の高さ)>(電気抵抗調整層11の高さ)、となる必要があり、そのために段差は100μm以下であることが望ましい。
【0132】
空隙Mを形成する方法としては、電気抵抗調整層11と空隙保持部材12とを切削、研削等の除去加工等によって同時加工する方法を採用することができる。
【0133】
また、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層11の外周面の高さと同一(直径同一)、もしくは電気抵抗調整層11の外周面よりも低く(直径を小さく)形成することにより、空隙保持部材12と感光体ドラム4との接触幅が低減され、帯電ローラ2と感光体ドラム4との空隙Mを高精度に確保することができる。
【0134】
そして、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する端部の外周面部分が、感光体ドラム4に当接することを防止することができ、この端部の外周面部分を介して電気抵抗調整層11が、感光体ドラム4の感光体層に接触してショート電流が発生するのを、確実に防止することが可能となる。
【0135】
また、空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分は、残りの部分(空隙保持部材12のうち、電気抵抗調整層11に隣接する部分であって、感光体ドラム4と当接する部分)よりも半径方向への突出量が小さくなるように細く加工することによって、この細く形成された部分を、切削加工の際の切削刃等の逃げシロ(逃げ加工)とすることができる。
【0136】
さらに、空隙保持部材12の端部が感光体ドラム4の感光体層に当接しないことによって、空隙保持部材12の外周面12dと感光体ドラム4との当接幅が狭くなり、当接箇所の変化に伴う空隙Mの変化が少なくなり、空隙Mの精度をより一層高く保つことが容易となる。
【0137】
しかも、この突出量が小さい部分まで画像形成領域K1の幅を拡げることができ、電気抵抗調整層11により、感光体ドラム4に潜像を形成するに際して、より大きなサイズの潜像を効率的に得ることができる。
【0138】
なお、逃げシロの形状は、空隙保持部材12の端部が、感光体ドラム4の感光体層に当接しない形状であれば、いかなる形状であってもよい(例えば、本出願人による特願2003−0306026号に記載の形状等)。
【0139】
さらに、マスキングを電気抵抗調整層11と空隙保持部材12との境界で行うことは、製造ばらつきを考慮すると面一に制御が難しく、段差が形成された空隙保持部材12のうち電気抵抗調整層11と同一径に形成された部分、または電気抵抗体層11よりも細く形成された部分まで表面層11bを形成することで、電気抵抗調整層11上に確実に表面層11bを形成することができる。
【0140】
帯電ローラ2の製造方法の一例としては、図6(a)に示すように、導電性支持体10上に、電気抵抗調整層11を射出成形によって形成し、その後、この電気抵抗調整層11の両端面側であって導電性支持体10の外周面10aに接着剤を塗布し、接着剤が塗布された部分に、2つの部材12a,12bを接合して得られた空隙保持部材12を嵌め合わせ、空隙保持部材12を導電性支持体10に接着固定する(同図(b))。
【0141】
このように、空隙保持部材12と導電支持体10および電気抵抗調整層11とが一体的に組み合わされた状態で、同図(c)に示すように、導電支持部体10の軸C回りに回転させつつ、空隙保持部材12の外周面12dおよび電気抵抗調整層11の外周面11aを、切削工具Tにより、連続的に切削加工(除去加工)して、電気抵抗調整層11の外周面11aに対する空隙保持部材12の外周面12dの半径方向への突出量を、所望とする規定量M1に形成し、両外周面11a,12dの外径を仕上げる。
【0142】
そして、空隙保持部材12と導電支持体10および電気抵抗調整層11とが一体的に組み合わされた状態で、空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを連続的に切削加工して、両者の外周面12d,11aを形成することにより、空隙保持部材12を単体で加工し、かつ導電支持体10の外周面10a上に形成された電気抵抗調整層11の外周面11aを単体で加工し、その後に両者を一体的に組み合わせて得る従来の帯電ローラのように、集積誤差が生じることがなく、したがって、電気抵抗調整層11の外周面11aに対する空隙保持部材12の外周面12dの半径方向への突出量を、正確に所望とする規定量M1に設定することができる。
【0143】
よって、電気抵抗調整層11の外周面11aと感光体ドラム4の外周面4aとの間の空隙Mの長さを、正確に規定量M1に形成することができる。
【0144】
なお、表面層11bは、上述した切削加工の後に、空隙保持部材12を保護(マスキング)した上で、電気抵抗調整層11の外周面11a上に、例えば上述した塗布等により形成される(同図(d))。
【0145】
さらに、上述した空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを連続的に切削加工するに際しては、図1(b)に示すように、各空隙保持部材12の両端部のうち、電気抵抗調整層11に隣接する側の各端部12cを、切り欠くように除去するのが好ましい。
【0146】
このように両空隙保持部材12,12の端部12c,12cを切り欠くことにより、帯電ローラ2の軸方向に沿った、空隙保持部材12の外周面12dの長さが短縮されるため、空隙保持部材12と感光体ドラム4との当接長さが短くなり、例えば、空隙保持部材12の外周面12dが、導電性支持体10の軸Cに対して傾いていたり、この外周面12dの面精度が不十分であっても、この面12dの傾きや面精度に起因する、帯電ローラ2の1回転中における当接部分の変動を抑制し、空隙Mの変動を抑制することができる。
【0147】
また、これらの端部12cが切り欠かれることによって、この端部12cが感光体ドラム4に当接しないようにすることができ、空隙保持部材12と電気抵抗調整層11とを組み合わせた状態で、両者の外周面12d,11aを連続的に切削加工して、加工精度のばらつきがあった場合にも、電気抵抗調整層11が感光体ドラム4に接触して、電流のリークが生じるのを防止することができる。
【0148】
さらに、切削加工を行う場合に、この端部12cを前述したように面取り加工等して、鈍角に形成してもよく、これにより、切削工具Tの逃げシロ(加工逃げ)となり、切削加工の容易化を図ることもできる。なお、逃げシロとしての切欠きの形状は、どのような形状であってもよい。
【0149】
以上のように構成された本実施形態に係る帯電ローラ2によれば、感光体ドラム4と接触する空隙保持部材12は、2つ(2つ以上であってもよい)の部材12a,12bが接合されて、その外周面12dにおいてこれら両部材12a,12bの接合境界線12eが露呈しているが、これらの部材12a,12b間に作用する接合力は、空隙保持部材12が単一部材からなるものである場合に比べて、その接合面に作用する形状保持力が極めて小さい。
【0150】
そして、図7(a)に示すように切削工具Tを用いて切削加工を行った場合、枝状の切粉Gにおける上述の接合面12f(同図(b)参照)は、切粉Gの長手方向に対して略直交する方向に所在することとなり、接合面12fの面積が長さに対して極めて小さい割合となり、切粉の長手方向に直交する方向に僅かな切削荷重が作用しただけで、接合面12fには大きな剪断力が発生することとなる。
【0151】
この結果、枝状に伸びた切粉Gは、接合面12fにおいて、極めて容易に、元の2つの部材12a,12bに分断されるため、短い切粉Gとなる。したがって、従来のような、取扱いに苦慮する程の長い切粉が発生するのを防止し、切粉が帯電ローラ2に巻き付く(絡まる)のを防止することができ、初期および長期に亘って使用されても、感光体ドラム4との間に安定した空隙Mを維持することにより、感光体ドラム4の表面の均一帯電、および高耐久性を実現することができる。
【0152】
また、本実施形態に係る帯電ローラ2は、空隙保持部材12が、トナーが付着しにくい材料によって形成されているため、その外周面12dにトナーが付着するのが防止されている。したがって、空隙保持部材12の外周面12dにトナーが付着することによる電気抵抗調整層11と感光体ドラム4との間の空隙Mの変動を防止することができ、この空隙Mを厳密に維持することができる。これにより、感光体ドラム4に潜像を精度よく形成することができる。
【0153】
また、本実施形態に係る帯電ローラ2は、電気抵抗調整層11の外周面11aが表面層11bによって覆われているため、電気抵抗調整層11の外周面11aにトナーが付着するのを防止することができる。
【実施例】
【0154】
以下、上述した実施形態の帯電ローラ2の、より具体的な複数の実施例1〜実施例3と、比較例1とを用いて、空隙保持部材12のバリの発生有無、切粉Gの巻付きの有無、および空隙保持部材12へのトナー固着の有無について、実験および結果の評価を行った。
(実施例1)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0155】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテック HY540;日本ポリケム株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0156】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P;川上塗料株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(実施例2)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0157】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ジェイレクスKM780K;日本ポリオレフィン株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0158】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、シリコーン系樹脂(スリップコーティング剤HS−3;東芝シリコーン株式会社製)、硬化剤(XC9603;ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、触媒(YC6831;ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、およびカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗8.3×109Ω)によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(実施例3)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2.1×108Ωcm)を円筒状に射出成形により成形した。
【0159】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、高密度ポリエチレン樹脂(ジェイレクスKM780K;日本ポリオレフィン株式会社製)からなるリング状の空隙保持部材を2個挿入接着し、切削加工によって、これら両部材12a,12bからなる空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行った。
【0160】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P;川上塗料株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成し、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
(比較例1)
ステンレスからなる外形8mmの円柱状の芯軸(導電性支持体10)の外周面に対して、電気抵抗調整層11として、ABS樹脂(デンカABS GR−0500;電気化学工業株式会社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108Ωcm)を円筒状に射出成形により、外径12.0mmに成形した。
【0161】
次いで、電気抵抗調整層11の外周面11aに、ウレタン樹脂(アデカボンタイターAM36;旭電化工業株式会社製)、イソシアネート系硬化剤、およびカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物によって、層厚約10μmの表面層11bを形成した。
【0162】
次いで、この成形品の両端部に、空隙保持部材12として、低密度ポリエチレン樹脂(NC524A;日本ポリオレフィン株式会社製)からなる単一部材からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着し、切削加工によって、この空隙保持部材12の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層11の外径を12.00mmとするように、同時仕上げ(図6(c)に示した連続的な切削加工)を行い、図6(d)相当の帯電ローラ2(導電性部材)を得た。
【0163】
ただし、端部12cの形状は90度とした。
(試験)
上記各実験例1〜3および比較例1の帯電ローラ2を、図8に示した画像形成装置1に搭載して評価を行った。
【0164】
なお、試験条件は、帯電ローラへの印加電圧を、DC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2kHz)とし、600000枚の記録紙(A4サイズ)に画像を出力した。試験環境は、温度23°C、湿度60%RHである。
【0165】
以上の評価結果を表1に示す。
【0166】
【表1】
表1より明らかなように、実施例1〜実施例3の帯電ローラはいずれも、空隙保持部材12のバリの発生および切粉の巻付きは無く、また空隙保持部材12へのトナー固着も良好(固着量は少ない)であることが確認され、いずれも比較例1を上回る優れた効果が実証された。
【0167】
以上、本発明に係る導電性部材について、帯電ローラとして用いた実施形態および実施例についてを説明したが、本発明に係る導電性部材は、帯電ローラに限定されるものではなく、転写ローラ、現像ローラ、感光体ドラム等として適用することもでき、このようなものとして適用した場合にも、上述した実施形態と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0168】
また、上述した実施形態の帯電ローラ2と、感光体ドラム4と、表面電位計5と、現像ローラ6と、クリーニング装置8とが、図10に示すように、図示しない連結部材等によって一体化されたプロセスカートリッジ9は、本発明に係るプロセスカートリッジの一実施形態であり、このプロセスカートリッジ9も、本実施形態の帯電ローラ2によって奏される作用、効果と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0169】
さらに、このような実施形態のプロセスカートリッジ9は、画像形成装置1等このプロセスカートリッジ9が使用される装置に対して、交換が容易(メンテナンス性高く)であり、上述した優れた帯電ローラ2を簡易な脱着操作によって提供することもできる。
【0170】
また、図8は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図であり、上述した実施形態の帯電ローラ2を備えた画像形成装置1(例えば、デジタル複写機)である。
【0171】
図示の画像形成装置1は、装置本体の最上部に設けられ、所定の読取台上に載置された原稿を画像情報として光学的に読み取る原稿読取部20と、装置本体の下部に設けられ、多数の記録紙Sが収容された給紙部30と、記録紙Sに、原稿読取部20によって読み取られた原稿の画像情報を、可視像として記録紙Sに記録する画像記録部40と、可視像(画像)が記録された後の記録紙Sが載置される排紙部50と、給紙部30から画像記録部40を経て排紙部50まで記録紙を搬送する搬送部60と、画像記録部40から排紙部50に至る搬送部60の搬送経路上に設けられ、画像記録部40から搬送された記録紙S上の画像を定着させる定着部70とを備えた構成である。
【0172】
ここで、原稿読取部20は、例えば、原稿を読み取るための光を出射する光源と、光源から出射した光を原稿に照射しつつ、原稿からの反射光像を読み取る走査手段およびラインセンサ等とが設けられ、ラインセンサによって読み取られた反射光像は画像情報として、画像記録部40に送信される。
【0173】
給紙部30は、記録紙Sのサイズ違いに対応した2種類のサイズの給紙トレイ31,32を、上下2段に配列して備えるとともに、任意のサイズの記録紙Sを給紙するための手差し給紙部33を備えている。なお、給紙トレイ31,32は、例えばサイズの大きい記録紙Sに対応した大サイズの給紙トレイ31が下段側に配置され、サイズの小さい記録紙Sに対応した小サイズの給紙トレイ32が上段側に配置されている。
【0174】
また、各給紙トレイ31,32および手差し給紙部33にはそれぞれ、記録紙Sを1枚ずつ引き出して、搬送部60の搬送経路上に給紙するための枚葉手段である給紙ローラ34,35,36が設けられている。
【0175】
画像記録部40は、前述した実施形態の帯電ローラ2、感光体ドラム4等が一体的に構成された図10に示したプロセスカートリッジ9と、原稿読取部20から送信された画像情報に応じて光量が制御されることにより画像情報を担持したレーザ光Lを出射して、帯電ローラ2により一様均一に帯電された感光体ドラム4の外周面上に、この画像情報に応じた静電潜像を記録する書込ユニット41とを備えている。
【0176】
排紙部50は、下段側に設けられたビントレイ51と、上段側に設けられた排紙トレイ52とを備えており、ビントレイ51に排紙するか、または排紙トレイ52に排紙するかの振分けは、図示しない操作パネルに入力された指示に従って、搬送部60の搬送経路上に設けられた排紙ローラ64,65により行われる。
【0177】
搬送手段60は、上述した排紙ローラ64,65の他、搬送経路上の、画像記録部40の手前で記録紙Sの給紙位置を制御するレジストローラ対61、画像記録部40において記録紙Sに、感光体ドラム4上に形成されたトナー像を転写させる転写搬送ベルト62等を備えている。なお、転写搬送ベルト62は駆動ローラ63の回転によって循環駆動されている。
【0178】
このように構成された本実施形態の画像形成装置1は、まず、原稿読取部20によって原稿に記載された画像情報が読み取られ、この読み取って得られた画像情報が書込ユニット41に送られる。
【0179】
次いで、画像記録部40は、感光体ドラム4を矢印方向に回転させ、その外周面がプロセスカートリッジ9の除電ランプにより除電されて基準電位に平均化され、その後、帯電ローラ2により一様均一に帯電される。
【0180】
そして、書込みユニット41が、送信された画像情報に応じて光量制御したレーザ光Lを、感光体ドラム4に照射し、これによって、感光体ドラム4の外周面上には、画像情報に応じた電位分布の静電潜像が形成される。
【0181】
さらに、感光体ドラム4の回転が進んで現像ローラ6を通過すると、この静電潜像の電位分布に応じた量のトナーが感光体ドラム4の外周面に付着し、静電潜像の電位分布に対応した濃度分布のトナー像が顕像される。
【0182】
一方、図示しない操作パネルにより指示されたサイズの記録紙Sが収容された給紙トレイ31若しくは32、または手差しトレイ33の給紙ローラ34若しくは35または36が、対応するトレイ31、32または33から、記録紙Sを1枚ずつ引き出して、搬送部60の搬送経路上に給紙する。
【0183】
ここで、レジストローラ対61が、搬送経路上に給紙された記録紙Sの搬送方向先端と、感光体ドラム4上のトナー像の先端とを正確に一致させるように、記録紙Sのスキュー(skew;到達時間差)を補正して、記録紙Sの搬送タイミングを正確に調整する。
【0184】
そして、搬送タイミングが調整された記録紙Sは、転写搬送ベルト62によって、感光体ドラム4上のトナー像が転写されるように画像記録部40に搬送され、トナー像が転写される。
【0185】
このトナー像が転写された記録紙Sは、転写搬送ベルト62によりさらに搬送され、転写搬送ベルト62が駆動ローラ63に巻き掛けられた部分において、転写搬送ベルト62から分離されて、定着ユニット70へ搬送される。
【0186】
ここで、記録紙Sの剛性(腰)により、記録紙Sが撓んだときに形成される記録紙S自体の曲率半径は、駆動ローラ63の曲率半径よりも大きいため、記録紙Sが駆動ローラ63を通過した部分において、記録紙Sは転写搬送ベルト62から分離する。
【0187】
定着ユニット70は、記録紙Sを加熱しつつ挟持圧力を掛けて、記録紙S上に転写されたトナーをこの記録紙Sに融着させることにより定着させる。
【0188】
そして、トナー像が定着された記録紙Sは、排紙ローラ64,65によって、操作パネルに入力された指示に対応した排紙トレイ52またはビントレイ51に排出される。
【0189】
一方、画像記録部40の感光体ドラム4上に残留したトナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転し、クリーニング装置8のクリーニングブレードにより掻き取られ、再び次の画像記録工程に移行する。
【0190】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、本実施形態の帯電ローラ2によって奏される作用、効果と同様の作用、効果を奏することが可能である。
【0191】
さらに、上述した優れた帯電ローラ2を用いているため、搬送部60によって搬送された記録紙S(記録媒体)に記録される可視像を、長期間に亘って、安定したものとすることができる。
【0192】
なお、本発明に係る画像形成装置は、図8に示した画像形成装置1の形態に限定されるものではなく、他の形態の複写機や、原稿読取部20を備えないレーザプリンタを始めとした各種プリンタや、ファクシミリ装置等であってもよく、電子写真方式により信号(情報)に基づいて画像(文字等を含む)を形成するものであれば、如何なる形態の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明に係る導電性部材の一実施形態である帯電ローラを示す図であり、(a)は概略図、(b)は(a)におけるD部の詳細を示す部分破断面図である。
【図2】図1に示した帯電ローラと感光体ドラムとの位置関係を示す図(帯電ローラは断面図)である。
【図3】帯電ローラの他の実施形態を示す図1(b)相当の部分破断面図である(その1)。
【図4】帯電ローラの他の実施形態を示す図1(b)相当の部分破断面図である(その2)。
【図5】空隙保持部材の外周面と、この外周面に隣接する端面とが交差する角部に面取り加工を施して、外周面と端面との交差角度を鈍角とした実施形態を示す図である。
【図6】図1に示した帯電ローラの形成方法を模式的に表した断面図である。
【図7】空隙保持部材に対する切削加工によって生じた切粉の様子を示す模式図である。
【図8】図1に示した帯電ローラを備えた画像形成装置の一例の要部を示す図である。
【図9】画像形成装置の要部構成を示す図である。
【図10】プロセスカートリッジを備えた画像形成装置の要部構成を示す図である。
【図11】空隙保持部材を切削加工によって加工した際に発生する切粉の巻付きを表す模式図である。
【符号の説明】
【0194】
1 画像形成装置
2 帯電ローラ(導電性部材)
4 感光体ドラム(像担持体)
4a 外周面
10 導電性支持体
10a 外周面
11 電気抵抗調整層
11a 外周面
11b 表面層
12 空隙保持部材
12a 部材
12b 部材
12c 端部
12d 外周面
12e 接合境界線
12f 接合面
M 空隙
G 切粉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、前記導電性支持体の外周面側であって前記電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、前記電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、前記電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材と、を備えた導電性部材において、
前記空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈していることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材のうち前記外周面と該外周面に隣接する端面とは鈍角で交差するように形成され、または該外周面と該端面とが交差する角部が予め面取りされていることを特徴とする請求項1記載の導電性部材。
【請求項3】
前記空隙保持部材の外周面のうち、少なくとも前記像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有することを特徴とする請求項1または2記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材は、その表面にトナーが付着しにくい材料によって形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記空隙保持部材のうち、前記電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分よりも半径方向への突出量が小さいことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記電気抵抗調整層の外周面は、トナーの付着を防止する表面層により覆われていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記空隙保持部材のうち前記電気抵抗調整層に隣接する部分が、前記半径方向への突出量が小さい部分であり、前記トナーの付着防止用の表面層が、前記突出量の小さい部分も覆っていることを特徴とする請求項6記載の導電性部材。
【請求項8】
前記表面層の電気抵抗が、前記電気抵抗調整層の内部の電気抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項6または7記載の導電性装置。
【請求項9】
前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とは、前記導電性支持体を中心とする円筒形状を呈していることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか1項記載の導電性部材。
【請求項10】
画像形成装置における帯電部材として、またはプロセスカートリッジにおける帯電部材として使用されることを特徴とする請求項1から9のうちいずれか1項記載の導電性部材。
【請求項11】
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像担持体とを少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像担持体と、前記像担持体に担持された像が記録される記録媒体を搬送する搬送部とを少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体の外周面に形成された電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層とは異なる材質からなり、前記導電性支持体の外周面側であって前記電気抵抗調整層の両端側にそれぞれ設けられ、前記電気抵抗調整層の外周面よりも半径方向に突出して、前記電気抵抗調整層に対向配置される像担持体に当接する外周面を有する一対の空隙保持部材と、を備えた導電性部材において、
前記空隙保持部材は、2以上の部材が接合されて、少なくともその外周面においてこれら2以上の部材の接合境界線が露呈していることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材のうち前記外周面と該外周面に隣接する端面とは鈍角で交差するように形成され、または該外周面と該端面とが交差する角部が予め面取りされていることを特徴とする請求項1記載の導電性部材。
【請求項3】
前記空隙保持部材の外周面のうち、少なくとも前記像担持体に当接する表面部分が絶縁性を有することを特徴とする請求項1または2記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材は、その表面にトナーが付着しにくい材料によって形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記空隙保持部材のうち、前記電気抵抗調整層に隣接する部分は、残りの部分よりも半径方向への突出量が小さいことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記電気抵抗調整層の外周面は、トナーの付着を防止する表面層により覆われていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記空隙保持部材のうち前記電気抵抗調整層に隣接する部分が、前記半径方向への突出量が小さい部分であり、前記トナーの付着防止用の表面層が、前記突出量の小さい部分も覆っていることを特徴とする請求項6記載の導電性部材。
【請求項8】
前記表面層の電気抵抗が、前記電気抵抗調整層の内部の電気抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項6または7記載の導電性装置。
【請求項9】
前記電気抵抗調整層と前記空隙保持部材とは、前記導電性支持体を中心とする円筒形状を呈していることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか1項記載の導電性部材。
【請求項10】
画像形成装置における帯電部材として、またはプロセスカートリッジにおける帯電部材として使用されることを特徴とする請求項1から9のうちいずれか1項記載の導電性部材。
【請求項11】
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像担持体とを少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置用のプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像担持体と、前記像担持体に担持された像が記録される記録媒体を搬送する搬送部とを少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−162800(P2006−162800A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351737(P2004−351737)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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