説明

導電性部材、その製造方法、タッチパネル及び太陽電池

【課題】導電性と膜強度が両立可能な導電性部材、並びに該導電性部材を用いた耐久性と導電性に優れたタッチパネル及び太陽電池を提供する。
【解決手段】基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維を含み、かつ下記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を備える導電性部材であって、前記基材と前記導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する導電性部材。
−M1−O−M1− (I)
(一般式(I)中、M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材、その製造方法、タッチパネル及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属ナノワイヤーのような導電性繊維を含む導電性層を有する導電性部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この導電性部材は、基材上に、複数の金属ナノワイヤーを含む導電性層を備えるものである。この導電性部材は、例えば導電性層中にマトリックスとしての光硬化性組成物を含有させておくことにより、パターン露光及びそれに引き続く現像によって、所望の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層を有する導電性部材に容易に加工することができる。この加工された導電性部材は、例えばタッチパネルとして、又は太陽電池の電極としての用途に供することができる。
上記の導電性部材は導電性層の膜強度が弱い。そのため、導電性層の表面に硬質皮膜を設けて、導電性層をキズ及び磨耗から守る保護層とすることも提案されている。そして、このような硬質皮膜の例として、ポリアクリル酸、エポキシ、ポリウレタン、ポリシラン、シリコーン、ポリ(シリコ−アクリル)等の合成ポリマーの膜が例示されている(例えば、特許文献1の段落0071参照。)。
また、特許文献2には、銀ナノワイヤとバインダーマトリクスの組合せによる透明導電材料及び種々の表面処理された支持体に透明導電層を塗布することが開示されている。
更に、特許文献3には、ナノワイヤとポリマーからなる透明導電材料の下引きとしてシランカップリング剤を塗布した支持体の記載がある。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の硬質皮膜を設けて導電性層をキズ及び磨耗から守るようにすると、1μm前後〜50μm前後の厚さとする必要があり、導電性が低下してしまうという問題が生じてしまっていた。他方、導電性の低下の少ない範囲の厚みの硬質皮膜を設けた場合には、導電性層をキズ及び磨耗を防ぐには、不十分であった。
また、特許文献2には、表面処理により接触角制御した後に特定のシランカップリング剤を塗布した支持体を用いるとマイグレーションが改善される現象については言及されていない。
更に、特許文献3には、表面処理により接触角制御した後に特定のシランカップリング剤を塗布した支持体を用いるとマイグレーションが改善される現象については言及されていない。
このように、導電性繊維を含む導電性層を備えた導電性部材において、導電性層をキズ及び磨耗から守ることと高い導電性を保持させることとを両立させることは困難であり、これらを両立させた導電性部材が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−505358号公報
【特許文献2】特表2010−507199号公報
【特許文献3】特開2012−009479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、キズ及び磨耗に対して高い耐性を有し、かつ導電性に優れた導電性部材及びその製造方法、並びに当該導電性部材を用いたタッチパネル及び太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維を含み、かつ下記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を備える導電性部材であって、基材と導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する導電性部材。
−M1−O−M1− (I)
(一般式(I)中、M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素を示す。)
〔2〕
導電性層が、Si、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素のアルコキシド化合物の少なくとも一つを加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含む〔1〕に記載の導電性部材。
〔3〕
中間層のうち、導電性層に接する中間層が、導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む〔1〕又は〔2〕に記載の導電性部材。
〔4〕
官能基が、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びホスホン酸基、並びに、これらの基の塩及びこれらの基の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つである〔3〕に記載の導電性部材。
〔5〕
中間層がシランカップリング剤を含み、官能基がシランカップリング剤の反応により基材上に固定される〔3〕又は〔4〕に記載の導電性部材。
〔6〕
シランカップリング剤が中間層中に1μmol/m以上1mmol/m以下含まれる〔5〕に記載の導電性部材。
〔7〕
中間層表面における水接触角が5゜以上40゜以下である〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の導電性部材。
〔8〕
基材が、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はトリアセチルセルロースである〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の導電性部材。
〔9〕
導電性層が、導電性繊維として平均直径50nm以下、平均長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを含む〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の導電性部材。
〔10〕
導電性繊維が、銀ナノワイヤーである〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の導電性部材。
〔11〕
導電性層が、導電性領域及び非導電性領域を含み、かつ導電性領域及び非導電性領域の少なくとも一方が導電性繊維を含む〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の導電性部材。
〔12〕
(a)基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維と、Si、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素のアルコキシド化合物の少なくとも一つと、を含む水溶液を塗布して、当該水溶液の液膜を基材上に形成させること、及び、(b)水溶液の液膜中のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合させて、下記一般式(I)で示される三次元架橋結合を形成すること、をこの順に含む、基材上に、導電性繊維を含み、かつ三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を形成する導電性部材の製造方法において(a)に先だって、さらに基材における液膜が形成される表面に、少なくとも一層の中間層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。
−M1−O−M1− (I)
(一般式(I)中、M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素を示す。)
〔13〕
中間層のうち、導電性層に接する中間層が、導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む〔12〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔14〕
中間層がシランカップリング剤を含み、官能基が、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びホスホン酸基、並びに、これらの基の塩及びこれらの基の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、シランカップリング剤の反応により基材上に官能基を固定する〔13〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔15〕
シランカップリング剤が中間層中に1μmol/m以上1mmol/m以下含まれる〔14〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔16〕
(a)に先立って、中間層表面における水接触角が5゜以上40゜以下となるように表面処理する〔12〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
〔17〕
表面処理が、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はグロー放電処理である〔16〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔18〕
基材が、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はトリアセチルセルロースである〔12〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
〔19〕
導電性層が、導電性繊維として平均直径50nm以下、平均長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを含む〔12〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
〔20〕
〔12〕〜〔19〕のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法によって形成された導電性層に、さらに
(c)パターン状の非導電性領域を形成すること、を含む、導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層を備える導電性部材の製造方法。
〔21〕
エッチングによってパターン状の非導電性領域を形成する〔20〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔22〕
レーザー光照射によって導電性繊維を断線又は消失させてパターン状の非導電性領域を形成する〔20〕に記載の導電性部材の製造方法。
〔23〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の導電性部材を含むタッチパネル。
〔24〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の導電性部材を含む太陽電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キズ及び磨耗に対して高い耐性を有し、かつ導電性に優れた導電性部材、その製造方法、並びに当該導電性部材を用いたタッチパネル及び太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る導電性部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の導電性部材について詳細に説明する。
以下、本発明の代表的な実施形態に基づいて記載されるが、本発明の主旨を超えない限りにおいて、本発明は記載された実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
さらに、本明細書において、「□」は、「sq.」或いは「スクエア」ともいう。
【0010】
本明細書において「光」という語は、可視光線のみならず、紫外線、エックス線、ガンマ線などの高エネルギー線、電子線のような粒子線等を含む概念として用いる。
本明細書中、アクリル酸、メタクリル酸のいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリル酸」と、アクリレート、メタクリレートのいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリレート」と、それぞれ表記することがある。
また、含有量は特に断りのない限り、質量換算で示し、特に断りのない限り、質量%は、組成物の総量に対する割合を表し、「固形分」とは、組成物中の溶剤を除く成分を表す。
【0011】
<<<導電性部材>>>
本発明の導電性部材は、基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維を含み、かつ下記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を備える導電性部材であって、前記基材と前記導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する。
−M−O−M− (I)
(一般式(I)中、MはSi、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素を示す。)
【0012】
また、本発明は、(a)基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維と、Si、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素のアルコキシド化合物の少なくとも一つと、を含む水溶液を塗布して、当該水溶液の液膜を前記基材上に形成させること、及び、(b)前記水溶液の液膜中のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合させて、上記一般式(I)で示される三次元架橋結合を形成すること、をこの順に含む、前記基材上に、前記導電性繊維を含み、かつ前記三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を形成する導電性部材の製造方法において前記(a)に先だって、さらに前記基材における前記液膜が形成される表面に、少なくとも一層の中間層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法にも関する。
【0013】
<<基材>>
上記基材としては、導電性層を担うことができるものである限り、目的に応じて種々のもの使用することができる。一般的には、板状又はシート状のものが使用される。
基材は、透明であっても、不透明であってもよい。基材を構成する素材としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス;ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、熱可塑性ノルボルネン系樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属;その他セラミック、半導体基板に使用されるシリコンウエハーなどを挙げることができる。中でも、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)または非晶質シクロオレフィンポリマー(COP)であることが好ましく、可撓性がありロールハンドリングが可能で光透過率が高く、偏光特性の制御がしやすいTAC、PC、COPがタッチパネルなどの用途に対してより好ましい。TAC、PC、COPは、(PETやガラスに対して)銀ナノワイヤーからなる導電性層が後述の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層のパターン間でのエレクトロマイグレーションに対する本発明の効果がより顕著となる組合せであり、より好ましい態様であるといえる。
【0014】
(表面処理)
これらの基材の導電性層が形成される表面は、所望により、アルカリ性水溶液による清浄化処理、シランカップリング剤などの薬品処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。中でも、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はグロー放電処理を用いることが中間層のシランカップリングおよび3次元架橋結合を有する−M1−O−M1−層の密着を改善する観点より好ましく、コロナ放電処理およびグロー放電処理がより好ましい。
表面処理後の水接触角は3゜以上50゜以下が好ましく、より好ましくは5゜以上45゜以下であり、更に好ましくは5゜以上40゜以下であり、更に好ましくは5゜以上35゜以下であり、最も好ましくは5゜以上30゜以下である。
水接触角が3°以上の場合には中間層の銀と相互作用する基の固定密度が高くなるため好ましい。一方、水接触角が50°以下の場合には、3次元架橋結合を有する−M1−O−M1−層のムラとハジキが小さくなるため好ましい。
水接触角の測定は市販の接触角測定器と純水を用いて行うことができる。例えば協和界面化学株式会社製DM701全自動接触角計で測定できる。
基材の厚さは、用途に応じて所望の範囲のものが使用される。一般的には、1μm〜500μmの範囲から選択され、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが更に好ましい。
導電性部材に透明性が要求される場合には、基材の全可視光透過率が70%以上のもの、より好ましくは85%以上のもの、更に好ましくは、90%以上のものから選ばれる。
【0015】
<<導電性層>>
本発明に係る導電性層は、短軸径が150nm以下の導電性繊維を含み、かつ下記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される。
−M−O−M− (I)
(一般式(I)中、MはSi、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素を示す。)
【0016】
<短軸径が150nm以下の導電性繊維>
本発明に係る導電性層には、短軸径150nm以下の導電性繊維を含有する。導電性繊維は、中実構造、多孔質構造及び中空構造のいずれの態様をとるものであってもよいが、中実構造及び中空構造のいずれかであることが好ましい。本発明においては、中実構造の繊維をワイヤー、中空構造の繊維をチューブと、それぞれ称することがある。
前記繊維を形成する導電性材料としては、金属及びカーボンの少なくともいずれかであることが好ましく、例えば、ITOや酸化亜鉛、酸化スズのような金属酸化物、金属性カーボン、金属元素単体、複数金属元素からなるコアシェル構造、複数金属からなる合金などが挙げられる。また、繊維状とした後、表面処理されていてもよく、例えば、鍍金された金属繊維なども用いることができる。
【0017】
(金属ナノワイヤー)
透明導電膜を形成しやすいという観点からは、導電性繊維として、金属ナノワイヤーを用いることが好ましい。本発明における金属ナノワイヤーとは、例えば、アスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)が30以上である金属微粒子であって、平均短軸長さが1nm〜150nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmのものが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)は、100nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。前記平均短軸長さが小さすぎると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあるため、前記平均短軸長さは5nm以上であることが好ましい。前記平均短軸長さが150nmを超えると、導電性の低下や光散乱等による光学特性の悪化が生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0018】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。金属ナノワイヤーの平均長軸長さが長すぎると金属ナノワイヤー製造時に凝集物が生じる懸念があり、平均長軸長さ短すぎると、十分な導電性を得ることができないことがある。
ここで、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸方向断面が円形でない場合の短軸長さは、短軸方向の測定で最も長い箇所の長さを短軸長さとした。また。金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
本発明においては、導電性層が透明であり、平均直径50nm以下、平均長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを含むことが好ましい。
【0019】
本発明においては、短軸長さ(直径)が150nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上500μm以下である金属ナノワイヤーが、全導電性繊維中に金属量で50質量%以上含まれていることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
前記短軸長さ(直径)が150nm以下であり、長さが5μm以上500μm以下である金属ナノワイヤーの割合が、50質量%以上含まれることで、十分な伝導性が得られるとともに、電圧集中が生じがたく、これに起因する耐久性の低下を抑制しうるため好ましい。繊維状以外の導電性粒子が感光性層に含まれると、プラズモン吸収が強い場合には透明度が低下するおそれがあり好ましくない。
【0020】
本発明に係る導電性層に用いられる金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
前記変動係数が40%を超えると、短軸長さ(直径)の細いワイヤーに電圧が集中してしまうためか、耐久性が悪化することがある。
前記金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個のナノワイヤーの短軸長さ(直径)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより、求めることができる。
【0021】
前記金属ナノワイヤーの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
【0022】
前記金属ナノワイヤーにおける金属としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。これらの中でも、金属又は金属化合物から形成されるものが好ましく、金属から形成されるものがより好ましい。
前記金属としては、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0023】
前記金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金がより好ましく、銀又は銀を含有する合金が特に好ましい。
【0024】
(金属ナノワイヤーの製造方法)
前記金属ナノワイヤーは、特に制限はなく、いかなる方法で作製してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。また、金属ナノワイヤーを形成した後は、常法により脱塩処理を行うことが、分散性、感光性層の経時安定性の観点から好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0025】
金属ナノワイヤーの製造に用いられる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
加熱する場合、その加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。上記温度を20℃以上とすることで、形成される金属ナノワイヤーの長さが分散安定性を確保しうる好ましい範囲となり、且つ、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤーの断面外周が鋭角を有しない、なめらかな形状となるため、透明性の観点から好適である。
なお、必要に応じて、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
【0026】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。
これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
前記還元剤によっては、機能として分散剤や溶媒としても機能する化合物があり、同様に好ましく用いることができる。
【0027】
前記金属ナノワイヤー製造の際には分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオン或いはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよいナノワイヤーを得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0028】
前記分散剤を添加する段階は、粒子調製する前に添加し、分散ポリマー存在下で添加してもよいし、粒子調整後に分散状態の制御のために添加しても構わない。分散剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ワイヤーの長さにより変更する必要がある。これは核となる金属粒子量の制御による金属ワイヤーの長さに起因しているためと考えられる。
前記分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。これらのうち分散剤として用いられる各種高分子化合物類は、後述する(b)ポリマーに包含される化合物である。
【0029】
分散剤として好適に用いられるポリマーとしては、例えば保護コロイド性のあるポリマーであるゼラチン、ポリビニルアルコール(P−3)、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン構造を含む共重合体、アミノ基やチオール基を有するポリアクリル酸、等の親水性基を有するポリマーが好ましく挙げられる。
分散剤として用いるポリマーはGPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が、3000以上300000以下であることが好ましく、5000以上100000以下であることがより好ましい。
前記分散剤として使用可能な化合物の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることができる。
【0030】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドや下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
前記ハロゲン化合物によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0031】
また、分散剤とハロゲン化合物とは双方の機能を有する単一の物質を用いてもよい。即ち、分散剤としての機能を有するハロゲン化合物を用いることで、1つの化合物で、分散剤とハロゲン化合物の双方の機能を発現する。
分散剤としての機能を有するハロゲン化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
なお、金属ナノワイヤー形成後の脱塩処理は、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0032】
前記金属ナノワイヤーは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの20℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0033】
金属ナノワイヤー以外の、好ましい導電性繊維としては、中空繊維である金属ナノチューブやカーボンナノチューブが挙げられる。(金属ナノチューブ)
金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0034】
前記金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、3nm以上であることで、十分な耐酸化性が得られ、80nm以下であることで、金属ナノチューブに起因する光散乱の発生が抑制される。
前記金属ナノチューブの平均短軸長さは、金属ナノワイヤーと同様に150nm以下であることを要する。好ましい短軸径は金属ナノワイヤーにおけるのと同様である。また、長軸長さは、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の方法などを用いることができる。
【0035】
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層或いは多層の同軸管状になった物質である。単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本発明で用いられる導電性繊維において、カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0036】
(導電性繊維のアスペクト比)
本発明に用いうる導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であることが好ましい。アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記導電性繊維の長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、前記導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0037】
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記導電性繊維によるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維の形成時やその後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
【0038】
上記の導電性層は、Si、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素のアルコキシド化合物(以下、「特定アルコキシド化合物」ともいう。)を加水分解及び重縮合し、更に所望により加熱、乾燥して得られるゾルゲル硬化物で構成されたものであることが、キズ及び磨耗に対して高い耐性を有するものが容易に製造できるという点から好ましい。
ここで、上記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋構造に含まれるMの価数は、一般式(I)中のMがSi、Ti及びZrのいずれかの場合には、4となり、MがAlの場合には、3となる。
【0039】
本発明に係る導電性層は、上述の導電性繊維と共に、前記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される。このような三次元結合は、製造上の利点から、特定アルコキシド化合物を加水分解及び重縮合させて得られたものが好ましい。
〔特定アルコキシド化合物〕
特定アルコキシド化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが入手が容易である点で好ましい。
(OR4−a (II)
(一般式(II)中、MはSi、Ti及びZrから選択される元素を示し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を示し、aは2〜4の整数を示す。)
【0040】
一般式(II)におけるR及びRの各炭化水素基としては、好ましくはアルキル基又はアリール基が挙げられる。
アルキル基を示す場合の炭素数は好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8であり、さらにより好ましくは1〜4である。また、アリール基を示す場合は、フェニル基が好ましい。
アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0041】
以下に、一般式(II)で示される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
がSiでaが2の場合、即ち2官能のアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルジメチルジメトキシシラン、クロロジメチルジエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルメチルジメトキシシラン、γ−ブロモプロピルメチルジメトキシシラン、アセトキシメチルメチルジエトキシシラン、アセトキシメチルメチルジメトキシシラン、アセトキシプロピルメチルジメトキシシラン、ベンゾイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(カルボメトキシ)エチルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジプロポキシシラン、ヒドロキシメチルメチルジエトキシシラン、N−(メチルジエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、N−(3−メチルジエチキシシリルプロピル)−4−ヒドロキシブチルアミド、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、イソプロペニルメチルジメトキシシラン、イソプロペニルメチルジエトキシシラン、イソプロペニルメチルジブトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルメチルジメトキシシラン、ビニルデシルメチルジメトキシシラン、ビニルオクチルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、イソプロペニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)−アクリロキシプロピルメチルジス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−[2−(アリルオキシカルボニル)フェニルカルボニルオキシ]プロピルメチルジメトキシシラン、3−(ビニルフェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(ビニルフェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(ビニルベンジルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(ビニルベンジルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−[2−(N−ビニルフェニルメチルアミノ)エチルアミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、3−[2−(N−イソプロペニルフェニルメチルアミノ)エチルアミノ]プロピルメチルジメトキシシラン、2−(ビニルオキシ)エチルメチルジメトキシシラン、3−(ビニルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、4−(ビニルオキシ)ブチルメチルジエトキシシラン、2−(イソプロペニルオキシ)エチルメチルジメトキシシラン、3−(アリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、10−(アリルオキシカルボニル)デシルメチルジメトキシシラン、3−(イソプロペニルメチルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、10−(イソプロペニルメチルオキシカルボニル)デシルメチルジメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキプロピル]メチルジメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキシプロピル]メチルジエトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキメチル]メチルジメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキシメチル]メチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−[3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル]−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、O−「(メタ)アクリロキシエチル」−N−(メチルジエトキシシリルプロピル)ウレタン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、11−アミノウンデシルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、2−(4−ピリジルエチル)メチルジエトキシシラン、2−(メチルジメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルメチルジエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルメチルジメトキシシラン、N−3−[(アミノ(ポリプロピレンオキシ))]アミノプロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノメチルメチルジエトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−3−メチルジメトキシシリルプロピル−m−フェニレンジアミン、N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3−メチルジメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、ビス[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、アセトアミドプロピルメチルジメトキシシラン、2−(2−ピリジルエチル)チオプロピルメチルジメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)チオプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアナトエチルメチルジエトキシシラン、イソシアナトメチルメチルジエトキシシラン、カルボキシエチルメチルシランジオールナトリウム塩、N−(メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム塩、3−(メチルジヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、ジエチルホスフェートエチルメチルジエトキシシラン、3−メチルジヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネートナトリウム塩、ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、ビス(メチルジエトキシシリル)メタン、1,6−ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(メチルジエトキシシリル)オクタン、p−ビス(メチルジメトキシシリルエチル)ベンゼン、p−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ベンゼン、3−メトキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]メチルジメトキシシラン、メトキシトリエチレンオキシプロピルメチルジメトキシシラン、トリス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]メチルジエトキシシラン、N,N'−ビス(ヒドロキシエチル)−N,N'−ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス−[3−(メチルジエトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロポキシ]ポリエチレンオキシド、ビス[N,N'−(メチルジエトキシシリルプロピル)アミノカルボニル]ポリエチレンオキシド、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキシドを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、入手容易な観点と親水性層との密着性の観点から、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
がSiでaが3の場合、即ち3官能のアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、ベンゾイロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、N−(3−トリエチキシシリルプロピル)−4−ヒドロキシブチルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、イソプロペニルトリメトキシシラン、イソプロペニルトリエトキシシラン、イソプロペニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルデシルトリメトキシシラン、ビニルオクチルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、イソプロペニルフェニルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)−アクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−[2−(アリルオキシカルボニル)フェニルカルボニルオキシ]プロピルトリメトキシシラン、3−(ビニルフェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(ビニルフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ビニルベンジルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ビニルベンジルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−[2−(N−ビニルフェニルメチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[2−(N−イソプロペニルフェニルメチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、2−(ビニルオキシ)エチルトリメトキシシラン、3−(ビニルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、4−(ビニルオキシ)ブチルトリエトキシシラン、2−(イソプロペニルオキシ)エチルトリメトキシシラン、3−(アリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、10−(アリルオキシカルボニル)デシルトリメトキシシラン、3−(イソプロペニルメチルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、10−(イソプロペニルメチルオキシカルボニル)デシルトリメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキプロピル]トリメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキシプロピル]トリエトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキメチル]トリメトキシシラン、3−[(メタ)アクリロキシメチル]トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−[3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル]−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、O−「(メタ)アクリロキシエチル」−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−3−[(アミノ(ポリプロピレンオキシ))]アミノプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノメチルトリエトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−トリメトキシシリルプロピル−m−フェニレンジアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、アセトアミドプロピルトリメトキシシラン、2−(2−ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトエチルトリエトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシラン、カルボキシエチルシラントリオールナトリウム塩、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム塩、3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン、3−トリヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネートナトリウム塩、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、p−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、p−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、メトキシトリエチレンオキシプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン、N,N'−ビス(ヒドロキシエチル)−N,N'−ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、ビス−[3−(トリエトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロポキシ]ポリエチレンオキシド、ビス[N,N'−(トリエトキシシリルプロピル)アミノカルボニル]ポリエチレンオキシド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキシドを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、入手容易な観点と親水性層との密着性の観点から、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0043】
がSiでaが4である場合、即ち4官能のアルコキシドシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシラン、メトキシトリエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、プロポキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を挙げることができる。
【0044】
がTiでaが2の場合、即ち2官能のアルコキシチタネートとしては、例えば、ジメチルジメトキシチタネート、ジエチルジメトキシチタネート、プロピルメチルジメトキシチタネート、ジメチルジエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、ジプロピルジエトキシチタネート、フェニルエチルジエトキシチタネート、フェニルメチルジプロポキシチタネート、ジメチルジプロポキシチタネート等を挙げることができる。
がTiでaが3の場合、即ち3官能のアルコキシチタネートとしては、例えば、メチルトリメトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、プロピルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、プロピルトリエトキシチタネート、クロロメチルトリエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート、フェニルトリプロポキシチタネート等を挙げることができる。
がTiでaが4の場合、即ち4官能のアルコキシチタネートとしては、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等を挙げることができる。
【0045】
がZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、一般式(II)には含まれない化合物である、Alのアルコキシド化合物としては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
特定アルコキシドは市販品として容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
特定アルコキシドは、一種類の化合物を単独で用いても、二種類以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
前記化合物(II)/導電性繊維の含有比が、質量比で、0.5/1〜25/1の範囲、より好ましくは1/1〜15/1の範囲、最も好ましは2/1〜8/1の範囲にあることが、導電性が高く、ヘイズが少なく、かつ膜強度の高い導電性層が得られるという利点が得られるので好ましい。
【0047】
導電性層は、導電性繊維と特定アルコキシド化合物を含む水溶液を塗布液(以下、「ゾルゲル塗布液」ともいう。)として、基板上に塗布して塗布液膜を形成し、この塗布液膜中で特定アルコキシド化合物の加水分解と重縮合の反応(以下、この加水分解と重縮合の反応を「ゾルゲル反応」ともいう。)を起こさせ、更に必要に応じて溶媒としての水を加熱して蒸発させて乾燥することにより、形成される。ゾルゲル塗布液の調製に際しては、導電性繊維の水分散液を別に調製しておき、これと特定アルコキシド化合物とを混合してもよい。更に、特定アルコキシド化合物を含む水溶液を調製したのち、この水溶液を加熱して特定アルコキシド化合物の少なくとも一部を加水分解及び重縮合させてゾル状態とし、このゾル状態にある水溶液と導電性繊維の水分散液とを混合したものをゾルゲル塗布液としてもよい。
ゾルゲル反応を促進させるために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが反応効率を高められるので、実用上好ましい。以下、この触媒について、説明する。
【0048】
〔触媒〕
触媒としては、アルコキシド化合物の加水分解及び重縮合の反応を促進させるものであれば使用することができる。
このような触媒としては、酸、或いは塩基性化合物が含まれ、そのまま用いるか、又は、水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)で使用される。
酸、或いは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高過ぎる塩基性触媒を用いると、沈殿物が生成して導電性層に欠陥となって現れる場合があるので、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0049】
酸性触媒或いは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、導電性層中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで示される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0050】
金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0051】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0052】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0053】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0054】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0055】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液の経時安定性、並びに導電性層の皮膜面質及び高耐久性に優れるものを得られる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0056】
本発明に係る触媒は、前記ゾルゲル塗布液中に、その不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。触媒は、単独で用いても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
〔溶剤〕
上記のゾルゲル塗布液には、基板上に均一な塗布液膜の形成性を確保するために、所望により、有機溶剤を含有させてもよい。
このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、ゾルゲル塗布液の総質量に対して50質量%以下の範囲が好ましく、更に30質量%以下の範囲がより好ましい。
【0058】
基板上に形成されたゾルゲル塗布液の塗布液膜中においては、特定アルコキシド化合物の加水分解及び縮合の反応が起こるが、その反応を促進させるために、上記塗布液膜を加熱、乾燥することが好ましい。ゾルゲル反応を促進させるための加熱温度は、30℃〜200℃の範囲が適しており、50℃〜180℃の範囲がより好ましい。加熱、乾燥時間は10秒間〜300分間が好ましく、1分間〜120分間がより好ましい。
【0059】
本発明の導電性層の厚さは、0.01μm〜2μmが好ましく、0.02μm〜1μmがさらに好ましく、0.03μm〜0.8μmがより好まく、0.05μm〜0.5μmがさらにより好ましい。膜厚を0.01μm以上50μm以下とすることで、十分な耐久性、膜強度が得られる。特に、0.05μm〜0.5μmの範囲とすれば、製造上の許容範囲が確保されるので好ましい。
【0060】
<マトリックス>
導電性層は、さらにマトリックスを含んでもよい。
ここで、「マトリックス」とは、導電性繊維を含んで層を形成する物質の総称である。
マトリックスは、導電性繊維の分散を安定に維持させる機能を有するもので、非感光性のものであっても、感光性のものであってもよい。マトリックスを含むことにより、導電性層における導電性繊維の分散が安定に維持される上、基材表面に導電性層を接着層を介することなく形成した場合においても基材と導電性層との強固な接着が確保される。
導電性層が導電性繊維単独で構成される場合、基材上に予め接着層を設けておき、この接着層上に、導電性繊維単独で構成される導電性層を設けた態様が好ましい。
本発明においては、場合によっては導電性層がマトリックスを含んでいてもよい。マトリックスを含むものが、導電性繊維の分散が安定した導電性を有する導電性部材が得られる点から好ましい。
マトリックスは、有機高分子ポリマーのような非感光性のものであっても、フォトレジスト組成物のような感光性のものであっても良い。
導電性層がマトリックスを含む場合、マトリックス/導電性繊維の含有比率は、質量比で0.001/1〜100/1の範囲が適当である。このような範囲に選定することにより、基材への導電性層の接着力、及び表面抵抗の適切なものが得られる。マトリックス/導電性繊維の含有比率は、質量比で0.005/1〜50/1の範囲がより好ましく、0.01/1〜20/1の範囲が更に好ましい。
マトリックスは、前述のとおり、非感光性のものであっても、感光性のものであっても良い。
【0061】
好適な非感光性マトリックスには、有機高分子ポリマーが含まれる。有機高分子ポリマーの具体例には、ポリメタクリル酸(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリアクリレート、及びポリアクリロニトリルなどのポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、及びポリカーボネート)、フェノール又はクレゾール−ホルムアルデヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、及びポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU)、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及び環状オレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース、シリコーン及びその他のシリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサン及びポリシラン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、及びフッ素重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、又はポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体、及び炭化水素オレフィン(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、及び非晶質フルオロカーボン重合体又は共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)又はデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)が挙げられるがそれだけに限定されない。
【0062】
感光性のマトリックスには、リソグラフィック・プロセスに好適なフォトレジスト組成物が含まれる。マトリックスとして、フォトレジスト組成物が含まれ場合には、導電性層を導電性領域と非導電性領域とをパターン上に有するものを、リソグラフィック・プロセスにより形成することが可能となる点で好ましい。このようなフォトレジスト組成物のうち、特に好ましいものとして、透明性及び柔軟性に優れ、かつ基材との接着性に優れた導電性層が得られるという点から、光重合性組成物が挙げられる。以下、この光重合性組成物について、説明する。
<光重合性組成物>
光重合性組成物は、(a)付加重合性不飽和化合物と、(b)光に照射されるとラジカルを発生する光重合開始剤とを基本成分として含み、更に所望により(c)バインダー、(d)その他、上記成分(a)〜(c)以外の添加剤を含むものである。
以下、これらの成分について、説明する。
【0063】
[(a)付加重合性不飽和化合物]
成分(a)の付加重合性不飽和化合物(以下、「重合性化合物」ともいう。)は、ラジカルの存在下で付加重合反応を生じて高分子化される化合物であり、通常、分子末端に少なくとも一つの、より好ましくは二つ以上の、更に好ましくは四つ以上の、更により好ましくは六つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が使用される。
これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
このような重合性化合物としては、種々のものが知られており、それらは成分(a)として使用することができる。
このうち、特に好ましい重合性化合物としては、膜強度の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0064】
成分(a)の含有量は、前述の導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、2.6質量%以上37.5質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
[(b)光重合開始剤]
成分(b)の光重合開始剤は、光に照射されるとラジカルを発生する化合物である。このよう光重合開始剤には、光照射により、最終的には酸となる酸ラジカルを発生する化合物及びその他のラジカルを発生する化合物などが挙げられる。以下、前者を「光酸発生剤」と呼び、後者を「光ラジカル発生剤」と呼ぶ。
−光酸発生剤−
光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸ラジカルを発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0066】
このような光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジ−又はトリ−ハロメチル基を少なくとも一つ有するトリアジン又は1,3,4−オキサジアゾール、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルハライド、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
また、活性光線又は放射線の照射により酸ラジカルを発生する基、或いは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の化合物も、酸ラジカル発生剤として使用することができる。
【0067】
前記トリアジン系化合物としては、例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)一s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明においては、前記(1)光酸発生剤の中でもスルホン酸を発生する化合物が好ましく、下記のようなオキシムスルホネート化合物が高感度である観点から特に好ましい。
【0069】
【化1】

【0070】
−光ラジカル発生剤−
光ラジカル発生剤は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、ラジカルを発生する機能を有する化合物である。光ラジカル発生剤としては、波長300nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
このような光ラジカル発生剤としては、多数の化合物が知られており、例えば特開2008−268884号公報に記載されているようなカルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物、が挙げられる。これらは目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシムエステル化合物、及びアシルホスフィン(オキシド)化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0071】
前記ベンゾフェノン化合物としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記アセトフェノン化合物としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。市販品の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907などが好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、米国特許第4,311,783号、米国特許第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記オキシムエステル化合物としては、例えばJ.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02等が好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0076】
光ラジカル発生剤としては、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]が特に好ましい。
【0077】
成分(b)の光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その含有量は、導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。このような数値範囲において、後述の導電性領域と非導電性領域とを含むパターンを導電性層に形成する場合に、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0078】
[(c)バインダー]
バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶でアルカリ水溶液に可溶なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。
ここで、前記酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0079】
前記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0080】
前記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0081】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0082】
前記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0083】
前記アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
【0084】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記バインダーの重量平均分子量は、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0087】
成分(c)のバインダーの含有量は、前述の導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜85質量%がより好ましく、20質量%〜80質量%が更に好ましい。前記好ましい含有量範囲であると、現像性と金属ナノワイヤーの導電性の両立が図れる。
【0088】
[(d)その他、上記成分(a)〜(c)以外の添加剤]
上記成分(a)〜(c)以外のその他の添加剤としては、例えば、連鎖移動剤、架橋剤、分散剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種の添加剤などが挙げられる。(d−1)連鎖移動剤
連鎖移動剤は、光重合性組成物の露光感度向上のために使用されるものである。このような連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
連鎖移動剤の含有量は、前述の導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0090】
(d−2)架橋剤
架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、導電層を硬化させる化合物で、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
また、前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
なお、架橋剤としてエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を用いる場合、当該架橋剤も、また、前記(c)重合性化合物に包含され、その含有量は、本発明における(c)重合性化合物の含有量に含まれることを考慮すべきである。
架橋剤の含有量は、前述の導電性繊維を含む光重合性組成物の固形分の総質量を基準として、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0091】
(d−3)分散剤
分散剤は、光重合性組成物中における前述の導電性繊維が凝集することを防止しつつ分散させるために用いられる。分散剤としては、前記導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができる。例えば、顔料分散剤として市販されている分散剤を利用でき、特に導電性繊維に吸着する性質を持つ高分子分散剤が好ましい。このような高分子分散剤としては、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
なお、分散剤として高分子分散剤を、前記導電性繊維の製造に用いたもの以外をさらに別に添加する場合、当該高分子分散剤も、また、前記成分(c)のバインダーに包含され、その含有量は、前述の成分(c)の含有量に含まれることを考慮すべきである。
分散剤の含有量としては、成分(c)のバインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
分散剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、分散液中での導電性繊維の凝集が効果的に抑制され、50質量部以下とすることで、塗布工程において安定な液膜が形成され、塗布ムラの発生が抑制されるため好ましい。
【0092】
(d−4)溶媒
溶媒は、前述の導電性繊維を含む光重合性組成物を基材表面に膜状に形成するための塗布液とするために使用される成分であり、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブタノール、水、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアセテート、乳酸メチル、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような溶媒を含む塗布液の固形分濃度は、0.1質量%〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0093】
(d−5)金属腐食防止剤
導電性繊維として金属ナノワイヤーを使用した場合には、金属腐食防止剤を含有させておくことが好ましい。このような金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。金属腐食防止剤は感光性層形成用組成物中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する導電層用塗布液による導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
金属腐食防止剤を添加する場合は、金属ナノワイヤーに対して0.5質量%〜10質量%含有させることが好ましい。
【0094】
その他、マトリックスとしては、前述の導電性繊維の製造の際に使用された分散剤としての高分子化合物を、マトリックスを構成する成分の少なくとも一部として使用することが可能である。
【0095】
本発明に係る導電性層には、導電性繊維に加え、他の導電性材料、例えば、導電性微粒子などを本発明の効果を損なわない限りにおいて併用しうるが、効果の観点からは、前記したアスペクト比が10以上の導電性繊維の比率は、感光性層形成用組成物中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。これらの導電性繊維の割合を、以下、「導電性繊維の比率」と呼ぶことがある。
前記導電性繊維の比率が、50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0096】
ここで、前記導電性繊維の比率は、例えば、導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性繊維の比率を求めることができる。ろ紙に残っている導電性繊維をTEMで観察し、300個の導電性繊維の短軸長さを観察し、その分布を調べることにより検知される。
導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さの測定方法は既述の通りである。
【0097】
前述の導電性層を基材上に形成する方法としては一般的な塗布方法で行うことができ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0098】
<<中間層>>
本発明の導電性部材は、基材と導電性層との間に少なくとも一層の中間層を有することを特徴とする。基材と導電性層との間に中間層を設けることにより、基材と導電性層との密着性、導電性層の全光透過率、導電性層のヘイズ、導電性層の膜強度、及び導電性層が後述の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層である場合におけるエレクロトロマイグレーションのうちの少なくとも一つの向上を図ることが可能となる。
中間層としては、基材と導電性層との接着力を向上させるための接着剤層、導電性層に含まれる成分との相互作用により機能性を向上させる機能性層などが挙げられ、目的に応じて適宜設けられる。
【0099】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る導電性部材1を示す概略断面図である。図1において、基材10と導電性層20との間に、基材10との親和性に優れた第1の接着層31と、導電性層20との親和性に優れた第2の接着層32とを含む中間層30を備える。
図2は、本発明の第二の実施形態に係る導電性部材2を示す概略断面図である。図2において、基材10と導電性層20との間に、前記第1の実施形態と同様の第1の接着層31及び第2の接着層32に加え、導電性層20に隣接して機能性層33を備えて構成される中間層30を有する。本明細書における中間層30は、前記第1の接着層31、第2の接着層32、及び、機能性層33から選択される少なくとも1層を含んで構成される層をさす。
【0100】
中間層30に使用される素材は特に限定されず、上記の特性のいずれか少なくとも一つを向上させるものであればよい。
例えば、中間層として接着層を備える場合、接着剤に使用されるポリマー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、Siのアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合させて得られるゾルゲル膜などから選ばれる素材が含まれる。
また、導電性層と接する中間層(即ち、中間層30が単層の場合には、当該中間層が、そして中間層30が複数の層を含む場合には、そのうちの導電性層と接する中間層)が、当該導電性層20に含まれる導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む機能性層33であることが、全光透過率、ヘイズ、及び膜強度に優れた導電性層が得られることから好ましい。このような中間層を有する場合においては、導電性層20が導電性繊維と有機高分子とを含むものであっても、膜強度に優れた導電性層が得られる。
さらに、導電性層が後述の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層である場合、エレクトロマイグレーション現象を抑制できるという点においても、機能性層33を設けることが好ましい。
【0101】
この作用は明確ではないが、導電性層20に含まれる導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む中間層を設けることで、導電性層に含まれる導電性繊維と中間層に含まれる上記の官能基を有する化合物との相互作用により、導電性層における導電性材料の凝集が抑制され、均一分散性が向上し、導電性層中における導電性材料の凝集に起因する透明性やヘイズの低下が抑制されるとともに、密着性に起因して膜強度の向上が達成されるものと考えられる。また、水分と電界により銀イオンが泳動しやすくなることがエレクトロイオンマイグレーションの原因と考えられているが、本発明の中間層によりイオンの易動度が小さくなりエレクトロイオンマイグレーションが抑制されると推定される。このような相互作用性を発現しうる中間層を、以下、機能性層と称することがある。機能性層は、導電性材料との相互作用によりその効果を発揮することから、本発明における前述の三次元架橋構造を有する導電性層のみならず、導電性繊維と有機高分子とを含む導電性層と隣接して設けられても、その効果を発現する。
【0102】
上記の導電性繊維と相互作用可能な官能基としては、例えば導電性繊維が銀ナノワイヤーの場合には、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。さらに好ましくは、アミノ基、メルカプト基、リン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩であることが好ましく、最も好ましくはアミノ基である。
上記のような官能基を有する化合物としては、例えばウレイドプロピルトリエトキシシラン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどのようなアミド基を有する化合物、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン四塩酸塩、スペルミン、ジエチレントリアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどのようなアミノ基を有する化合物、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾチアゾール、トルエン−3,4−ジチオールなどのようなメルカプト基を有する化合物、例えばポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)などのようなスルホン酸又はその塩の基を有する化合物、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアスパラギン酸、テレフタル酸、ケイ皮酸、フマル酸、コハク酸などのようなカルボン酸基を有する化合物、例えばホスマーPE、ホスマーCL、ホスマーM、ホスマーMH、及びそれらの重合体、ポリホスマーM−101、ポリホスマーPE−201、ポリホスマーMH−301などのようなリン酸基を有する化合物、例えばフェニルホスホン酸、デシルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸などのようなホスホン酸基を有する化合物が挙げられる。
これらの官能基を選択することで、導電性層形成用の塗布液を塗布後、導電性繊維と中間層に含まれる官能基とが相互作用を生じて、乾燥する際に導電性繊維が凝集するのを抑制し、導電性繊維が均一に分散された導電性層を形成することができる。
【0103】
本発明においては、前記官能基が、シランカップリング剤の反応により前記基材上に固定される事が好ましい。
シランカップリング反応によって直接固定することが困難な官能基の場合は、前記官能基の前駆体を固定しておき、その後の化学処理で官能基に変換しても良い。例えばカルボン酸前駆体を有するシランカップリング剤としては特開2005−255615に開示されている化合物等を用いることができる。
官能基の適切な固定量は官能基の種類及びシランカップリング剤の構造により異なるが、適量よりも多すぎると返って金属ワイヤーの凝集を起こし、表面抵抗が上昇したり、エレクトロマイグレーションが悪化する。
このため、官能基の固定量の管理は重要であり、固定量管理が可能な塗工方式が好ましく、具体的にはスロットダイ方式が好ましい。一方、浸漬法による固定も好ましく行われる。浸漬法での固定量の調整は浸漬液中のシランカップリング剤濃度及び浸漬時間の調製により可能である。
前記中間層におけるシランカップリング剤の含有量としては、前記中間層中に1μmol/m以上1mmol/m以下含まれることが好ましく、2μmol/m以上500μmol/m以下含まれることがより好ましく、3μmol/m以上200μmol/m以下含まれることが更に好ましい。
前記中間層におけるシランカップリング剤の含有量を1mmol/m以下とすることにより、表面抵抗値が低く抑えられ、導電性層が後述の導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層である場合のエレクトロマイグレーション現象に起因する短絡時間を長くすることができる。また、前記含有量を1μmol/m以上とすることにより、エレクトロイオンマイグレーションが改良される。
固定された官能基の定量には各種の表面分析、例えばTOF−SIMS、ESCA、EDX、FTIR−ATRなどの方法を用いることができる。また、アミノ基やカルボン酸基等の官能基では官能基固定前後の膜面pHの変化として固定量が確認できる。
【0104】
中間層は、中間層を構成する化合物が溶解した、もしくは分散、乳化した液を基板上に塗布し、乾燥することで形成することができ、塗布方法は一般的な方法を用いることができる。その方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
【0105】
中間層形成又は中間層形成に先立ちコロナ放電照射といった表面処理を施すことが好ましく、これらの表面処理によって水接触角が適正範囲に入ることが好ましい。
表面処理は、上記の基材表面処理に用いうる方法で行うことができ、中でも、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はグロー放電処理を用いることが基材に与えるダメージが少なく表面エネルギー付与が可能である観点より好ましい。
表面処理後の水接触角は3゜以上50゜以下が好ましく、より好ましくは5゜以上45゜以下であり、更に好ましくは5゜以上40゜以下であり、更に好ましくは5゜以上35゜以下であり、最も好ましくは5゜以上30゜以下である。
水接触角が3°以上の場合には中間層の銀と相互作用する基の固定密度が高くなるため好ましい。一方、水接触角が50°以下の場合には、3次元架橋結合を有する-M1-O-M1-層のムラとハジキが小さくなるため好ましい。
水接触角の測定は市販の接触角測定器と純水を用いて行うことができる。例えば協和界面化学株式会社製DM701全自動接触角計で測定できる。
【0106】
<導電性層の形状>
本発明に係る導電性部材における、基材表面に垂直な方向から観察した場合の形状としては、導電性層の全領域が導電性領域である(以下、この導電性層を「非パターン化導電性層」ともいう。)第一の態様、及び導電性層が導電性領域と非導電性領域とを含む(以下、この導電性層を「パターン化導電性層」ともいう。)第二の態様の何れであっても良い。第二の態様の場合には、非導電性領域に導電性繊維が含まれていても含まれていなくても良い。非導電性領域に導電性繊維が含まれている場合、非導電性領域に含まれる導電性繊維は断線される。
第一の態様に係る導電性部材は、例えば太陽電池の透明電極として使用することができる。
また、第二の態様に係る導電性部材は、例えばタッチパネルを作成する場合に使用される。この場合、所望の形状を有する導電性領域と非導電性領域が形成される。
【0107】
〔導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層(パターン化導電性層)〕
パターン化導電性層は、例えば下記パターニング方法により製造される。
(1)予め非パターン化導電性層を形成しておき、この非パターン化導電性層の所望の領域に含まれる導電性繊維に炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等の高エネルギーのレーザー光線を照射して、導電性繊維の一部を断線又は消失させて当該所望の領域を非導電性領域とするパターニング方法。この方法は、例えば、特開2010−4496号公報に記載されている。
(2)予め形成した非パターン化導電性層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層に所望のパターン露光及び現像を行って、当該パターン状のレジストを形成したのちに、導電性繊維をエッチング可能なエッチング液で処理するウェットプロセスか、又は反応性イオンエッチングのようなドライプロセスにより、レジストで保護されていない領域の導電性層中の導電性繊維をエッチング除去するパターニング方法。この方法は、例えば特表2010−507199号公報(特に、段落0212〜0217)に記載されている。
上記(1)及び(2)の方法は、導電性層が導電性繊維単独で構成されている場合、及び導電性繊維と非感光性のマトリックス(例えば、有機高分子ポリマーなど)とを含む場合に好都合なパターンニング方法である。
【0108】
上記パターン露光に用いる光源は、フォトレジスト組成物の感光波長域との関連で選定されるが、一般的にはg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましく用いられる。また、青色LEDを用いてもよい。
パターン露光の方法にも特に制限はなく、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービーム等による走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0109】
前記導電性繊維を溶解する溶解液としては、導電性繊維に応じて適宜選択することができる。例えば導電性繊維が銀ナノワイヤーの場合には、所謂写真科学業界において、主にハロゲン化銀カラー感光材料の印画紙の漂白、定着工程に使用される漂白定着液、強酸、酸化剤、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でも、は漂白定着液、希硝酸、過酸化水素が特に好ましい。なお、前記導電性繊維を溶解する溶解液による銀ナノワイヤーの溶解は、溶解液を付与した部分の銀ナノワイヤーを完全に溶解しなくてもよく、導電性が消失していれば一部が残存していてもよい。
前記希硝酸の濃度は、1質量%〜20質量%であることが好ましい。
前記過酸化水素の濃度は、3質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0110】
前記漂白定着液としては、例えば特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。
漂白定着時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましく、90秒間以下5秒間以上が更に好ましい。また、水洗又は安定化時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましい。
前記漂白定着液としては、写真用漂白定着液であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、富士フイルム株式会社製CP−48S、CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)、コダック社製エクタカラーRA漂白定着液、大日本印刷株式会社製漂白定着液D−J2P−02−P2、D−30P2R−01、D−22P2R−01などが挙げられる。これらの中でも、CP−48S、CP−49Eが特に好ましい。
【0111】
前記導電性繊維を溶解する溶解液の粘度は、25℃で、5mPa・s〜300,000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜150,000mPa・sであることがより好ましい。前記粘度を、5mPa・s以上とすることで、溶解液の拡散を所望の範囲に制御することが容易となって、導電性領域と非導電性領域との境界が明瞭なパターニングが確保され、他方、300,000mPa・s以下とすることで、溶解液の印刷を負荷なく行うことが確保されると共に、導電性繊維の溶解に要する処理時間を所望の時間内で完了させることができる。
【0112】
前記導電性繊維を溶解する溶解液のパターン状の付与としては、溶解液をパターン状に付与できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、予めレジスト剤などによりエッチングマスクを形成しておきその上に溶解液をコーター塗布、ローラー塗布、ディッピング塗布、スプレー塗布する方法、などが挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷、インクジェット印刷、コーター塗布、ディップ(浸漬)塗布が特に好ましい。
前記インクジェット印刷としては、例えばピエゾ方式及びサーマル方式のいずれも使用可能である。
【0113】
前記パターンの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、文字、記号、模様、図形、配線パターン、などが挙げられる。
前記パターンの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナノサイズからミリサイズのいずれの大きさであっても構わない。
【0114】
本発明に係る導電性部材は、表面抵抗が1,000Ω/□以下となるように調整されることが好ましい。
上記表面抵抗は、本発明に係る導電性部材における導電性層の基材側とは反対側の表面を四探針法)により測定された値である。四探針法による表面抵抗の測定方法は、例えばJIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、市販の表面抵抗率計を用いて、簡便に測定することができる。表面抵抗を1,000Ω/□以下とするには、導電性層に含まれる導電性繊維の種類及び含有比率の少なくとも一つを調整すればよい。より具体的には、前述のように、前記一般式(II)で示される化合物と導電性繊維の含有比率を調製することにより、所望の範囲の表面抵抗を有する導電性層を形成することができる。
本発明に係る導電性部材の表面抵抗は、0.1Ω/□〜900Ω/□の範囲とすることが更に好ましい。タッチパネル用途および積層型太陽電池用途には10Ω/□〜250Ω/□が好ましい。
【0115】
本発明に係る導電性部材は、導電性層が導電性繊維を含有し、かつ前記一般式(I)で示される三次元結合を含んで構成されることにより、導電性層の膜強度が高く、かつ表面抵抗が低いという特異的な効果を奏する。
本発明に係る導電性層が、上に前述の特定アルコキシド化合物を含む水溶液を塗布液し、その塗布液膜に含まれる特定アルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含んで構成されるものであるという点と密接に関連して、表面抵抗が低いという効果を奏しているものと思われる。例えば、導電性繊維として銀ナノワイヤーを使用した場合、銀ナノワイヤーの調製時に使用された分散剤としての親水性基を有するポリマーが、銀ナノワイヤー同士の接触を少なくとも幾分かは妨げていると推測される。本発明による導電性要素においては、上記ゾルゲル硬化物の形成過程で、銀ナノワイヤーを覆っている上記の分散剤が剥離され、さらに特定アルコキシド化合物が重縮合する際に収縮するために多数の銀ナノワイヤー同士の接触点が増加し、その結果として、表面抵抗の低い導電性部材が得られるものと推定される。
【0116】
さらに、本発明に係る導電性部材において、導電性層の設置に先立って、基材の表面処理によって水接触角を調整すること、及び上述の、中間層に含まれる導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物をシランカップリング処理によって基材に固定することが好ましい態様として挙げられる。これにより、パターン化導電性層を有する導電性部材において、マイグレーションを抑制できるという効果を奏する。
なお、上記の水接触角とシランカップリング処理によるマイグレーションの抑制は、導電性層のバインダーマトリクスとして本発明以外の親水性バインダーや親水性バインダーの層を疎水性バインダーで被覆した場合でも効果があることがわかった。
【0117】
本発明に係る導電性部材は、導電性層のキズ及び磨耗に対する耐久性に優れ、併せて表面抵抗が低いので、例えばタッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、液晶表示装置、タッチパネル機能付表示装置、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル及び太陽電池への適用が特に好ましい。
【0118】
<<タッチパネル>>
本発明に係る導電性部材は、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投射型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどに適用される。ここで、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパー或いはスルーホール方式或いは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
【0119】
前記表面型静電容量方式タッチパネルについては、例えば特表2007−533044号公報に記載されている。
【0120】
<<太陽電池>>
本発明に係る導電性部材は、集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)における透明電極として有用である。
集積型太陽電池としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0121】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0122】
本発明に係る導電性部材は、前記全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。導電性部材は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接して導電性層が配置されていることがいることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電層の位置関係が分かる範囲の記載としている。ここで、[ ]で括られた構成が、本発明に係る導電性部材に相当する。
(A)[基材−導電性層]−光電変換層
(B)[基材−導電性層]−光電変換層−[導電性層−基材]
(C)基板−電極−光電変換層−[導電性層−基材]
(D)裏面電極−光電変換層−[導電性層−基材]
このような太陽電池の詳細については、例えば特開2010−87105号公報に記載されている。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の含有率としての「%」、及び、「部」は、いずれも質量基準に基づくものである。
以下の例において、金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、並びに、アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率は、以下のようにして測定した。
【0124】
<金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて拡大観察される金属ナノワイヤーから、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤーの直径(短軸長さ)と長軸長を測定し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ求めた。
<金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数>
上記電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個のナノワイヤーの短軸長さ(直径)を測定し、その300個についての標準偏差と平均値を計算することにより、求めた。
<アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、銀ナノワイヤーの短軸長さを300個観察し、ろ紙を透過した銀の量を各々測定し、短軸長さが50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である銀ナノワイヤーをアスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率(%)として求めた。
なお、銀ナノワイヤーの比率を求める際の銀ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0125】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー分散物(1)の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0126】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、前記添加液H 82.5mL、及び前記添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、前記添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温73℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5.5時間加熱した。
得られた分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続して、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー水分散液をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、0.84質量%の銀ナノワイヤー分散物(1)を得た。得られた分散液中の銀ナノワイヤーについて、前述のようにして平均短軸長さ、平均長軸長さ、アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率、及び銀ナノワイヤー短軸長さの変動係数を測定した。
【0127】
その結果、平均短軸長さ17.2nm、平均長軸長さ34.2μm、変動係数が17.8%の銀ナノワイヤーを得た。得られた銀ナノワイヤーのうち、アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの占める比率は81.8%であった。以後、「銀ナノワイヤー水分散液(1)」と表記する場合は、上記方法で得られた銀ナノワイヤー水分散液を示す。
【0128】
(調製例2)
−ゾルゲルシリカバインダー銀塗布液の調製−
下記アルコキシド化合物の溶液(1)3.44部と前記調製例1で得られた銀ナノワイヤー水分散液(1)16.56部を混合し、さらに蒸留水で希釈してゾルゲル塗布液を得た。
【0129】
[アルコキシド化合物の溶液(1)]
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・1%酢酸水溶液 11.0部
・蒸留水 4.0部
蒸気組成のアルコキシド化合物溶液(1)を60℃1時間攪拌して均一になったことを確認して、25℃に急冷した。
【0130】
〔実施例1〕
下記調製例に従い、ガラス基板を得た。
【0131】
(調製例3)
−ガラス基板の前処理−
はじめに、水酸化ナトリウム1%水溶液に浸漬した厚み0.35mmの無アルカリガラス基材を超音波洗浄機によって適宜1分〜30分超音波照射し(アルカリ性水溶液による清浄化処理)、ついでイオン交換水で60秒間水洗した後100℃で60分間加熱乾燥処理を行った。その後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより適宜5〜60秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。以後、「ガラス基板」と表記する場合は、上記前処理で得られた無アルカリガラス基板を示す。
【0132】
銀の塗工量が17mg/mになるように前記ゾルゲルシリカバインダー銀塗布液を前記ガラス基板上にバー塗布を行い、110℃75秒乾燥してパターニング前試料101Aを得た。
【0133】
試料101Aに富士フイルム社製ポジレジストを10g/mとなる様に塗設し、1cm×1cmの正方形が30μmのギャップで2つ並ぶパターンのポジパターンマスクを介してレジスト層の露光を行い、3.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像液で25℃45秒現像を行い水洗乾燥しマスク済み透明導電ガラスを得た。富士フイルム社製CP−45X漂白定着液(スタートアップ母液)を用いて非マスク部分の銀ナノワイヤーのエッチングを行った後、後露光、TMAH現像、水洗、乾燥して1cm×1cmの正方形が30μmのギャップで2つ並ぶパターンを形成し、さらに、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン1%と1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール1%を含む水溶液に30秒間浸漬、水洗、乾燥し、パターニング済み試料101Bを得た。
【0134】
〔実施例2〜6、比較例1〜2〕
適宜水酸化ナトリウム1%水溶液への浸漬時間とシランカップリング液浸漬時間とを変更し、表1に記載の水接触角となるように調整する以外は実施例1と同様にして、パターニング済み試料102B〜108Bを得た。
【0135】
〔実施例7〕
下記調製例に従い、表面処理PET基板を得た。
【0136】
(調製例4)
−PET基板の前処理−
下記の配合で接着用溶液1を調製した。
[接着用溶液1]
・タケラックWS−4000 5.0部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.3部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 94.4部
【0137】
厚さ125μmのPET基材の一方の面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、上記の接着用溶液1を塗布し120℃で2分乾燥させて、厚さが0.11μmの接着層1を形成した。
【0138】
以下の配合で、接着用溶液2を調製した。
[接着用溶液2]
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3.2部
(KBM−403、信越化学工業(株)製)
・2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 1.8部
(KBM−303、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=0.05%、pH=5.2) 10.0部
・硬化剤 0.8部
(ホウ酸、和光純薬工業(株)製)
・コロイダルシリカ 60.0部
(スノーテックスO、平均粒子径10nm〜20nm、固形分濃度20%、
pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.2部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
【0139】
接着用溶液2は、以下の方法で調製した。酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。次に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを酢酸水溶液中に強く攪拌しながら3分間かけて添加した。次に、テトラメトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後2時間攪拌を続けた。次に、コロイダルシリカと、硬化剤と、界面活性剤とを順次添加し、接着用溶液2を調製した。
この接着用溶液2をコロナ放電処理を施した接着層1の上にバーコート法により塗布し、170℃で5分間加熱して乾燥し、厚さ0.7μmの接着層2を形成した。その後、接着層2の上にコロナ放電処理を施し、表面処理PET基板を得た。
【0140】
上記表面処理PET基板に対し、下記のシランカップリング用溶液をバーコートし、100℃60秒の温風乾燥によりシランカップリング処理を行った。塗布液量は、シランカップリング処理前後の膜面pH変化が+1になるように調節した。
膜面pHは東亜DKK製GST−5423SpH電極とpHメーターにて、0.5mlの純水を膜面に滴下して測定した。
【0141】
[シランカップリング用溶液]
・N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.3部
(KBM603、信越化学工業(株)製)
・水 99.7部
【0142】
シランカップリング用溶液をKBM−603が1.35mg/mとなる様に塗設、100℃1分乾燥の後、調整例2の塗布液を銀ナノワイヤー塗工量が15mg/mとなる様にバーコーターにて塗設、100℃1分乾燥してパターニング前試料109Aを得た。
【0143】
109Aの試料に対して、101Aと同様の操作をしてパターニング済み試料109Bを得た。
【0144】
(実施例8〜18)
PET基材に対してコロナ照射量を表1記載の水接触角になる様に調整した以外は実施例7と同様にして、試料110B〜120Bを作成た。
【0145】
<<評価>>
得られた試料101B〜120Bに対して、表面抵抗及びマイグレーション短絡時間を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、O.L.とは、10の7乗Ω/□以上の抵抗を意味する。
【0146】
<表面抵抗>
パターニング前の試料の1cm角のパターンが形成される部分の表面抵抗を三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定した。
【0147】
<マイグレーション短絡時間測定>
作製した各導電材料について、ヘイズ、及び表面抵抗を測定した後、65℃で85%RHの雰囲気下にて両電極間に直流5Vの電圧を印加し、短絡するまでの時間を1時間単位で計測した。なお、短絡が発生したか否かの判断は、電極間の抵抗が1×10Ω以下になったことにより行った。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
表面処理なしではシランカップリング剤の塗布ができず(試料102B)、ゾルゲルシリカバインダー銀塗布液の塗布もできなかった。シランカップリング剤塗布をしない場合は銀の凝集が生じ(試料103B)導電性が得られなかった。
さらに、表1から分かるように、表面処理の程度を接触角が5゜以上40゜以下に調節した試料では、エレクトロマイグレーションによる短絡時間が長く(110B〜113B)好ましいが、シランカップリング剤の塗布量が多すぎると表面抵抗は高く、短絡時間は短くなる(例試料106B、120B)。接触角が4゜以下では表面抵抗は良好なものの短絡時間が短く、50゜では銀ナノワイヤー凝集が見られ高抵抗化している。これらの傾向はガラス基板でもPET基板と同様であることが分かる。
さらに、試料109Bの表面処理方法を大気圧プラズマ及びグロー照射に変更しても同様の結果がえられたことから、表面処理方法によらず、エレクトロマイグレーションによる短絡時間を長くする効果があることがわかる。
【0151】
(実施例19〜30)
基材をポリカーボネート(PC)基材(厚み75μm)に換え、接着層1、2を塗工せず、コロナ放電処理を施すことによりポリカーボネート(PC)基板を得たこと以外は試料109B〜120Bと同様にして、表2に示す試料201B〜212Bを作製し、表面抵抗及びマイグレーション短絡時間の評価を行った。
【0152】
【表3】

【0153】
表2に示されるように、表面処理の程度を接触角が5゜以上40゜以下に調節した試料では、エレクトロマイグレーションによる短絡時間が長く(例試料202B〜205B)、また、KBM603塗布量が0.5mg/m〜5mg/mの試料で短絡時間が長く(例試料207B〜210B)、本発明の目的に対して好ましい態様であることがわかる。
【0154】
(実施例31〜42)
基材をトリアセチルセルロース(TAC)基材(厚み100μm)に換え、接着層1、2を塗工せずコロナ放電処理を施すことによりトリアセチルセルロース(TAC)基板を得たこと以外は試料109B〜120Bと同様にして、表3に示す試料301B〜312Bを作製した。そして、表面抵抗及びマイグレーション短絡時間の評価を行った。
【0155】
【表4】

【0156】
表3に示されるように、表面処理の程度を接触角が5゜以上40゜以下に調節した試料では、エレクトロマイグレーションによる短絡時間が長く(例試料302B〜305B)、KBM603塗布量が0.5mg/m〜5mg/mの試料で短絡時間が長い(例試料307B〜310B)ため、本発明の目的に対して好ましい態様であることがわかる。また、PET基板及びポリカーボネート基板よりも、本発明の効果が顕著であり、TAC基板との組合せがより好ましいことが分かった。
【0157】
(実施例43〜49)
KBM603に変えて、下記の表4に示す化合物SA−1〜7を使用する以外は試料301Bと同様にして、表5に示す試料401B〜407Bを作製し、表面抵抗及びマイグレーション短絡時間の評価を行った。
【0158】
【表5】

【0159】
【表6】

【0160】
表5に示されるように、シランカップリング剤を用いて官能基を固定した場合、エレクトロマイグレーションによる短絡時間が長いことが分かる(試料401B〜404B)。SA−5は銀ナノワイヤーと相互作用する官能基が無いため、銀ナノワイヤーの塗布時に凝集を起こし、導電性が得られなかった。ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドからなる中間層でも導電性が得られ、マイグレーション抑制の効果も確認された。(試料406B、407B)
【0161】
(実施例50)
−タッチパネルの作製−
上記試料No.305Bの透明導電材料を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の片面、ブリッジ方法により、タッチパネルを作製した。このとき、X方向とY方向の電極パターンの略正方形状のパッド部の隣接する辺と辺との間隔を30μmにした。
作製したタッチパネルを使用した場合、透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。
また、この実施態様において、長時間短絡しないことからマイグレーションが生じず、タッチパネルの電気特性が長期間にわたり安定していることが分かった。
【0162】
(実施例51)
実施例50において、X方向とY方向の電極パターンの略正方形状のパッド部の隣接する辺と辺との間隔を50μmにした以外は、実施例50と同様にして、タッチパネルを作製した。
作製した実施例51のタッチパネルについて、実施例50と同様に性能を評価したところ、実施例50と同レベルの性能が得られた。
【0163】
(実施例52)
実施例50において、X方向とY方向の電極パターンの略正方形状のパッド部の隣接する辺と辺との間隔を60μmにした以外は、実施例50と同様にして、タッチパネルを作製した。
作製した実施例52のタッチパネルは、目視の観察にて透明電極のパターンが視認され、パターン間隔が60μm以上は好ましくない態様であることが分かった。
【0164】
(実施例53)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
上記試料No.117Bの透明導電材料の上部にプラズマCVD法により厚み約15nmのp型、前記p型の上部に厚み約350nmのi型、前記i型の上部に厚み約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、前記n型アモルファスシリコンの上部に裏面反射電極として厚み20nmのガリウム添加酸化亜鉛層、前記ガリウム添加酸化亜鉛層の上部に厚み200nmの銀層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0165】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
各太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで効率)を測定したところ、変換効率は9%であった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の導電膜形成用積層体は、そのまま使用しても、転写材料として用いても、現像によるパターニング性に優れ、透明性、導電性及び耐久性(膜強度)に優れるため、例えばパターン状透明導電膜、タッチパネル、ディスプレイ用帯電防止材、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、フレキシブルディスプレイ用帯電防止膜、表示素子、集積型太陽電池の作製に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0167】
1 導電性部材
10 基材
20 導電性層
30 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維を含み、かつ下記一般式(I)で示される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を備える導電性部材であって、前記基材と前記導電性層との間に、更に少なくとも一層の中間層を有する導電性部材。
−M1−O−M1− (I)
(一般式(I)中、M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素を示す。)
【請求項2】
前記導電性層が、Si、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素のアルコキシド化合物の少なくとも一つを加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含む請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記中間層のうち、前記導電性層に接する中間層が、前記導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む請求項1又は2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記官能基が、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びホスホン酸基、並びに、これらの基の塩及びこれらの基の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項3に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記中間層がシランカップリング剤を含み、前記官能基がシランカップリング剤の反応により前記基材上に固定される請求項3又は4に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記シランカップリング剤が前記中間層中に1μmol/m以上1mmol/m以下含まれる請求項5に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記中間層表面における水接触角が5゜以上40゜以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記基材が、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はトリアセチルセルロースである請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記導電性層が、導電性繊維として平均直径50nm以下、平均長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記導電性繊維が、銀ナノワイヤーである請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記導電性層が、導電性領域及び非導電性領域を含み、かつ前記導電性領域及び非導電性領域の少なくとも一方が前記導電性繊維を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項12】
(a)基材上に、短軸径が150nm以下の導電性繊維と、Si、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素のアルコキシド化合物の少なくとも一つと、を含む水溶液を塗布して、当該水溶液の液膜を前記基材上に形成させること、及び、(b)前記水溶液の液膜中のアルコキシド化合物を加水分解及び重縮合させて、下記一般式(I)で示される三次元架橋結合を形成すること、をこの順に含む、前記基材上に、前記導電性繊維を含み、かつ前記三次元架橋結合を含んで構成される導電性層を形成する導電性部材の製造方法において前記(a)に先だって、さらに前記基材における前記液膜が形成される表面に、少なくとも一層の中間層を形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。
−M1−O−M1− (I)
(一般式(I)中、M1はSi、Ti、Zr及びAlからなる群より選ばれた元素を示す。)
【請求項13】
前記中間層のうち、前記導電性層に接する中間層が、前記導電性繊維と相互作用可能な官能基を有する化合物を含む請求項12に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項14】
前記中間層がシランカップリング剤を含み、前記官能基が、アミド基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びホスホン酸基、並びに、これらの基の塩及びこれらの基の前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、シランカップリング剤の反応により前記基材上に前記官能基を固定する請求項13に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項15】
前記シランカップリング剤が前記中間層中に1μmol/m以上1mmol/m以下含まれる請求項14に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項16】
前記(a)に先立って、中間層表面における水接触角が5゜以上40゜以下となるように表面処理する請求項12〜15のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項17】
前記表面処理が、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はグロー放電処理である請求項16に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項18】
前記基材が、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はトリアセチルセルロースである請求項12〜17のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項19】
前記導電性層が、導電性繊維として平均直径50nm以下、平均長さ5μm以上の金属ナノワイヤーを含む請求項12〜18のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれか一項に記載の導電性部材の製造方法によって形成された導電性層に、さらに
(c)パターン状の非導電性領域を形成すること、を含む、導電性領域と非導電性領域とを含む導電性層を備える導電性部材の製造方法。
【請求項21】
エッチングによってパターン状の非導電性領域を形成する請求項20に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項22】
レーザー光照射によって導電性繊維を断線又は消失させてパターン状の非導電性領域を形成する請求項20に記載の導電性部材の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電性部材を含むタッチパネル。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電性部材を含む太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−238579(P2012−238579A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69932(P2012−69932)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】