説明

導電性部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 空隙保持部材により形成される電気抵抗調整層の空隙を長期間安定維持することができ、安定した画像品質を得ることが可能な導電性部材、その導電性部材を有するプロセスカートリッジ、並びに該プロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る導電性部材200は、円筒形状の導電性支持体201と、導電性支持体201を中心軸として導電性支持体201の外周上に積層設置される電気抵抗調整層202と、電気抵抗調整層202とは異なる材質により形成されており中心部に導電性支持体201を圧入することが可能な嵌合孔が形成されて外周径が電気抵抗調整層202よりも拡径の空隙保持部材203とを有している。空隙保持部材203は、導電性支持体201の端部を空隙保持部材203の嵌合孔に圧入させることによって導電性支持体201に固定される。導電性支持体201の外表面の表面粗さRzは1μm〜10μmに規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性支持体と、該導電性支持体の外周上に積層設置される電気抵抗調整層と、前記導電性支持体の端部を圧入可能な嵌合孔が形成された空隙保持部材とを有する導電性部材、及び該導電性部材を有するプロセスカートリッジ、並びに該プロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。
【0003】
図3は電子写真方式を採用する画像形成装置を示した概略構成図である。
【0004】
画像形成装置100は、静電潜像が形成されるドラム状の感光体101と、感光体101に接触あるいは近接配置されて帯電処理を行う帯電ローラ(帯電部材)102と、図示を省略した露光装置(光源)より発せられるレーザー光あるいは原稿の反射光等の露光103と、感光体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104と、帯電ローラ102に電圧を印加するための電圧印加電源105と、感光体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106と、転写処理後の感光体101をクリーニングするためのクリーニング装置108と、感光体101の表面電位を測定する表面電位計109とを有している。なお、電子写真方式の画像形成装置100において必ずしも必要とされない機能ユニットに関しては、図1における説明を省略している。
【0005】
上述した画像形成装置100では、次述するような手段で画像形成を行う。
【0006】
1.帯電ローラ102が、感光体101の表面を所望の電位に帯電する。
2.露光装置が、感光体101に露光103を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を、感光体101上に形成する。
3.現像ローラ104が、静電潜像をトナーによって現像し、感光体101上にトナー像(顕像)を形成する。
4.転写ローラ106が、感光体101上のトナー像を、記録紙107に転写する。
5.クリーニング装置108が、転写されず感光体101上に残留したトナーを清掃する。
6.トナー像が転写された記録紙107は、転写ローラ106によって、図示を省略した定着装置へと搬送され、定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙107上に転写された転写画像を定着する。
【0007】
上記の1〜6の手順を繰り返すことによって、画像形成装置100は、記録紙107上に所望の画像を形成する。
【0008】
帯電ローラ102を用いた帯電方式として、感光体101に帯電ローラ102を接触させる接触帯電方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、接触帯電方式には以下のような問題がある。
【0009】
1.帯電ローラ102を構成している物質が帯電ローラ102から染み出し、被帯電体の表面に付着移行して、帯電ローラ跡が付いてしまうという問題があった。
【0010】
2.帯電ローラ102に交流電圧を印加したときに、感光体(被帯電体)101に接触する帯電ローラ102が振動して帯電音が発生する場合があるという問題があった。
【0011】
3.感光体101上のトナーが帯電ローラ102に付着することにより、帯電性能が低下するおそれがあるという問題があった。特に、帯電ローラ102からの物質の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなるという問題があった。
【0012】
4.帯電ローラ102を構成している物質が感光体101への付着してしまうおそれがあるという問題があった。
【0013】
5.感光体101を長期間停止したときに、帯電ローラ102が永久変形してしまうおそれがあるという問題があった。
【0014】
これらの問題を解決する方法として、帯電ローラ102を感光体101に近接させる近接帯電方式が考案されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。一般的な近接帯電方式では、互いの最近接距離(空隙)が50μm〜300μmとなるように帯電ローラ102と感光体101とを対向させ、帯電ローラ102に電圧を印加することにより、感光体101の帯電を行う。近接帯電方式では、帯電ローラ102と感光体101とが接触していないため、接触帯電方式で生じる「4.帯電ローラを構成している物質の感光体への付着」「5.感光体を長期停止したときに生ずる帯電ローラの永久変形」は問題は発生しない。また、「3.感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下」に関しても、帯電ローラ102に付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式の方が優れている。
【0015】
また、帯電ローラ102と感光体101間の空隙を保持する手段として、帯電ローラ102の両端部にスペーサリング層を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。
【0016】
しかしながら、スペーサリング層を設ける方法に関して、上述した特許文献7及び特許文献8には、空隙を精密に設定する具体的な手段の記載がなされておらず、帯電ローラ102及びスペーサリング層の寸法精度がばらつくことによって空隙が変動し、その結果、感光体101の帯電電位が均一にならずに変動してしまうおそれがある。
【0017】
このような問題に対して、所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持手段により、空隙を一定に保つ方法が提案されている(例えば、特許文献9)。
【0018】
しかしながら、テープ状部材が磨耗したり、帯電ローラ102と空隙保持部材との間へトナー粒子が進入・固着等したりするおそれがあり、長期間の使用において感光体101と帯電ローラ102との間の空隙を均一に維持することが困難であるという問題があった。
【0019】
そこで、予め任意の形状に形成された空隙保持部材の中心に嵌合孔を形成し、帯電ローラ12の回転中心軸をなす導電性支持体の端部を嵌合孔に圧入させることによって電気抵抗調整層の両端部に空隙保持部材を固定する構造が提案されている。特に、導電性部材をローラとして回転させる場合には、回転により空隙保持部材と導電性支持体間とが位置ズレを起こさないように耐トルクが必要となるが、この場合には圧入代(導電性支持体の外径から空隙保持部材の内径を引いた値)を調整・管理することにより、高い耐トルクを得ることができる。また、必要であれば、導電性支持体と電気抵抗調整層との少なくとも一方に空隙保持部材を接着することにより、さらに強固に空隙保持部材を固定することができる。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−2111779号公報
【特許文献3】特開平1−267667号公報
【特許文献4】特開平3−240076号公報
【特許文献5】特開平4−358175号公報
【特許文献6】特開平5−107871号公報
【特許文献7】特開平3−240076号公報
【特許文献8】特開平4−358175号公報
【特許文献9】特開平5−107871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、圧入代が同等の値であっても、導電性支持体の表面性状により圧入時に空隙保持部材に加える挿入力が変動する。例えば、導電性支持体の表面が非常に滑らかな面の場合は圧入時の接触面積が大きくなるため、高い挿入力が必要となり、逆に導電性支持体の表面が非常に粗い場合には、接触面の摩擦係数が大きくなるために、やはり挿入力が大きくなる傾向にある。
【0021】
空隙保持部材に対して高い挿入力を加えて圧入する場合、挿入力の影響で空隙保持部材の変形が発生する。その結果、感光体101と帯電ローラ102との間に高精度の空隙を形成して安定維持することが困難であるという問題があった。
【0022】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、感光体と電気抵抗調整層との間の空隙を長期間安定維持することができ、安定した画像品質を得ることが可能な導電性部材、その導電性部材を有するプロセスカートリッジ、並びに該プロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明に係る導電性部材は、円筒形状の導電性支持体と、該導電性支持体を中心軸として該導電性支持体の外周上に積層設置される電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層とは異なる材質により形成されており中心部に前記導電性支持体を圧入することが可能な嵌合孔が形成されて外周径が前記電気抵抗調整層よりも拡径の空隙保持部材とを有し、前記導電性支持体の端部を前記空隙保持部材の嵌合孔に圧入させることによって前記空隙保持部材が前記導電性支持体に固定される導電性部材であって、前記導電性支持体の前記嵌合孔に圧入される端部の外表面の表面粗さRzが1μm〜10μmに規定されていること特徴とする。
【0024】
なお、表面粗さRzのRzとは、表面粗さの種類を示す「十点平均高さ」を示している。「十点平均高さ」とは、面曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る導電性部材のように、導電性支持体の表面粗さを1μm〜10μmとすることによって、空隙保持部材を導電性支持体へ圧入する際の挿入力を低減させることができ、空隙保持部材の変形を防止することができる。また、空隙保持部材の変形が防止されることにより、導電性部材が画像形成装置の帯電部材や転写部材として用いられた場合には、感光体と導電性部材との間に安定した空隙を形成し、維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る電動性部材を、図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、本発明における導電性部材の概略構成を示す断面図である。導電性部材200は、導電性支持体201と、電気抵抗調整層202と、空隙保持部材203とを有している。
【0028】
導電性支持体201は円柱形状を呈しており、導電性支持体01の外周面の両端部を除いた部分には、電気抵抗調整層202が、均等の厚さとなるように積層設置されている。
【0029】
電気抵抗調整層202は高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層202の体積固有抵抗は10〜10Ωcmであることが望ましい。10Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまうためである。
【0030】
電気抵抗調整層202に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)及びその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であるため好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリクスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。従って、導電性顔料を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のバラツキが生じない。また高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電材が70〜30重量%とすることが好ましい。
【0032】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。また、押出成形や射出成形等の手段を用いて、導電性支持体201に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、導電性支持体201に電気抵抗調整層202を容易に形成することができる。
【0033】
空隙保持部材203は、電気抵抗調整層202の外周径よりも拡径のリング形状を呈しており、中心部に形成される嵌合孔に対して、導電性支持体201の端部を圧入することが可能となっている。導電性支持体201の両端部であって空隙保持部材203の嵌合孔の内部と摺接する周側面には、圧入を行う場合に嵌入を確実かつ円滑に行うために、表面粗さRzが1μm〜10μmとなる面加工が施されている。なお、表面粗さRzとは、表面粗さの種類を示す「十点平均高さ」を示している。「十点平均高さ」とは、面曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【0034】
表面粗さRzが1μmよりも低い場合には、導電性支持体201の表面が非常に滑らかな面となるため、圧入時に空隙保持部材の内面との間の接触面積が大きくなり、圧入完了に必要な挿入力が高くなってしまう。一方で、表面粗さRzが10μmよりも高い場合は接触面の摩擦係数が大きくなるため、この場合も高い挿入力が必要となる。このように、高い挿入力が必要とされると、その影響で空隙保持部材203が変形してしまい、導電性部材200が画像形成装置100の帯電部材に使用された場合に感光体101との空隙204(図2参照)を安定的に維持することが困難となってしまう。
【0035】
空隙保持部材203は、電気抵抗調整層202と異なる材質により形成されている。空隙保持部材203の材料としては、圧入によって割れ等が発生せず、かつ圧入により必要な耐トルク(2kgf・cm以上)が得られる材料が望ましい。さらに絶縁性材料であって、体積固有抵抗で1013Ω・cm以上であることが好ましく、感光体101を傷つけない程度に軟らかく、成形加工が容易である等の理由から、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0036】
絶縁性が必要である理由は、感光体101の基層とのショート電流の発生を無くすためである。なお、空隙保持部材203の絶縁性は、少なくとも電気抵抗調整層202に隣接する箇所に備えられていればよい。上述した材料を用いる場合には、圧入代(導電性支持体の外径から空隙保持部材の内径を引いた値)を0.1mm程度に設定することにより、実使用上で十分な耐トルクを得ることができる。
【0037】
図2は、導電性部材200を画像形成装置100の帯電部材として用いた場合の感光体101と導電性部材200との配置状態を示す模式図である。導電性部材200は、任意の圧力で感光体101に圧接される。空隙保持部材203の外周径は、電気抵抗調整層202の外周径よりも拡径となっているため、図2に示すように、感光体101の両端部の非画像形成領域に空隙保持部材203の外周面が当接する構造となり、電気抵抗調整層202と感光体101との間には微細な空隙204が形成される。電気抵抗調整層202と感光体101との間に形成される空隙204の距離は所定の値に保つ必要があり、100μm以下であることが好ましい。空隙204が大きくなると導電性部材200への電圧印加条件を高くする必要があり、感光体101の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0038】
図2に示すように設置された導電性部材200に電圧を印加することにより、感光体101の帯電を行うことが可能となる。なお、導電性部材200を画像形成装置100の転写部材として使用する場合も、同様である。
【0039】
導電性部材200及び感光体101の形状は特に限定されないが、ともに円筒形状であることが好ましい。両者が常に同一面で対向していると、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じてしまうが、両者を円筒形状として回転駆動させることで、この劣化を低減できるからである。
【0040】
なお、上述した構成からなる導電性支持体201上では、感光体101に付着したトナー等が電気抵抗調整層202の外表面に固着してしまい、帯電性能が低下してしまうおそれがある。このような不具合を回避するために、電気抵抗調整層202に表面層を形成する構成としてもよい。
【0041】
表面層の抵抗値は電気抵抗調整層202の抵抗値よりも大きくすることによって、感光体101の欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層と電気抵抗調整層202との抵抗値の差は10Ωcm以下にすることが好ましい。
【0042】
表面層を形成する材料は、製膜性が良好であるため、熱可塑性樹脂組成物が好適である。樹脂材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また樹脂材料は電気的に絶縁性であるため、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の抵抗を調整することが可能である。
【0043】
表面層の電気抵抗調整層202上への形成は、表面層構成材料を有機溶媒に分散して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング等によってコーティングすることによって行う。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0044】
以下、具体的な実施例を、実施例1〜5及び比較例1〜3を用いて説明する。
【0045】
〈実施例1〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、円周方向に形成される微細な溝を長手方向に複数配設して外周面全面に研磨加工を施した後、無電解ニッケルめっきを外周面に施して、外周面の表面粗さRzを3μmにした。
【0046】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業製)40重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)60重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸の両端部を除く外周面を射出成形により被覆した。
【0047】
さらに、芯軸の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材(内径7.9mm)を圧入により挿入し、シアノアクリレート系接着剤(1781、スリーボンド製)により芯軸及び電気抵抗調整層と空隙保持部材との接着を行った。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0048】
また、電気抵抗調整層の外周面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程を施した。
【0049】
〈実施例2〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、円周方向に形成される微細な溝を長手方向に複数配設して外周面全面に研磨加工を施した後、無電解ニッケルめっきを外周面に施して、外周面の表面粗さRzを5μmにした。
【0050】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸の両端部を除く外周面を射出成形により被覆した。
【0051】
さらに、芯軸の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材(内径7.9mm)を圧入により挿入し、シアノアクリレート系接着剤(1781、スリーボンド製)により芯軸及び電気抵抗調整層と空隙保持部材との接着を行った。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0052】
また、電気抵抗調整層の外周面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程を施した。
【0053】
〈実施例3〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、円周方向に形成される微細な溝を長手方向に複数配設して外周面全面に研磨加工を施した後、無電解ニッケルめっきを外周面に施して、外周面の表面粗さRzを7μmにした。
【0054】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸の両端部を除く外周面を射出成形により被覆した。
【0055】
さらに、芯軸の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材(内径7.9mm)を圧入により挿入し、シアノアクリレート系接着剤(1781、スリーボンド製)により芯軸及び電気抵抗調整層と空隙保持部材との接着を行った。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0056】
また、電気抵抗調整層の外周面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程を施した。
【0057】
〈実施例4〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、円周方向に形成される微細な溝を長手方向に複数配設して外周面全面に研磨加工を施した後、無電解ニッケルめっきを外周面に施して、外周面の表面粗さRzを4μmにした。
【0058】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸の両端部を除く外周面を射出成形により被覆した。
【0059】
さらに、芯軸の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材(内径7.9mm)を圧入により挿入した。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0060】
また、電気抵抗調整層の外周面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程を施した。
【0061】
〈実施例5〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、円周方向に形成される微細な溝を長手方向に複数配設して外周面全面に研磨加工を施した後、無電解ニッケルめっきを外周面に施して、外周面の表面粗さRzを6μmにした。
【0062】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業製)40重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)60重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸の両端部を除く外周面を射出成形により被覆した。
【0063】
さらに、芯軸の両端部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材(内径7.9mm)を圧入により挿入した。次いで切削加工によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mm、電気抵抗調整層の外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0064】
また、電気抵抗調整層の外周面に、アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、及びカーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×10Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成し、焼成工程を施した。
【0065】
〈比較例1〉
SUM22材(快削鋼材)からなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、切削加工により溝を設けて表面粗さRzを20μmとした。
【0066】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(GR−0500、電気化学工業製)50重量%、四級アンモニウム塩基を含有するイオン導電性の高分子化合物(レオレックスAS−1720、第一工業製薬製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸を射出成形により被覆し、切削加工によって外径を12.0mmに加工・調整した。
【0067】
さらに、電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成した。
【0068】
また、芯軸の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなるリング状の空隙保持部材(外径12.12mm、内径7.5mm)を圧入により挿入し、導電性部材を構成した。
【0069】
〈比較例2〉
ステンレスからなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外表面に、切削加工により溝を設けて表面粗さRzを30μmとした。
【0070】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸を射出成形により被覆し、切削加工によって外径を12.00mmに加工・調整とした。
【0071】
さらに、電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成した。
【0072】
また、芯軸の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなるリング状の空隙保持部材(外径12.12mm、内径7.7mm)を圧入により挿入し、導電性部材を構成した。
【0073】
〈比較例3〉
ステンレスからなる円柱状の芯軸(導電性支持体外径、外径8mm)の外周面に、切削加工により溝を設けて表面粗さRzを50μmとした。
【0074】
次いで、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を用いて、芯軸を射出成形により被覆し、切削加工によって外径を12.00mmに加工・調整した。
【0075】
さらに、電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)によって膜厚約10μの表面層を形成した。
【0076】
また、芯軸の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなるリング状の空隙保持部材(外径12.12mm、内径7.6mm)を圧入により挿入し、導電性部材を構成した。
【0077】
表1に実施例1〜5及び比較例1〜3の構成比較及び空隙保持部材圧入時に加えた最大挿入力を示す。
【0078】
【表1】

上述のようにして構成された導電性部材を帯電部材(帯電ローラ102)として用い、図3に示した画像形成装置100に搭載して帯電部材と感光体101との間の空隙量の測定を行った。
【0079】
次いで、印加する電圧をDC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2KHz)に設定し、600,000枚通紙し、帯電部材と感光体101間の空隙量、空隙保持部材203の状態、及び画像について評価を行った。評価環境は23℃、60%RHで評価用トナーとして、PxPトナー(粒径5μm)を用いた。
【0080】
以上の評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

表1に示すように、表面粗さRzを1μm〜10μmとした実施例1〜5は、挿入力が10kgf以下となるのに対して、表面粗さRzを20〜50μmとした比較例1〜3では、挿入力が50〜90kgfとなり、より多くの挿入力が必要とされる。このように、導電性支持体201の表面粗さを1〜10μmとすることによって、空隙保持部材203を導電性支持体201へ圧入する際の挿入力を低減させることができ、空隙保持部材203の変形を防止することができる。また、空隙保持部材203の変形が防止されることにより、表2に示すように、感光体101と導電性部材200との間に安定した空隙を形成・維持することが容易となる。
【0082】
また、実施例1〜3に示すように、芯軸(導電性支持部材201)及び電気抵抗調整層202と空隙保持部材203とを接着剤で接着することによって、空隙保持部材203を電気抵抗調整層202及び導電性支持体201に強固に固着することができるため感光体101と導電性部材200との間に形成された空隙204を維持しやすくなる。また、接着剤で固定することによって、空隙保持部材203と電気抵抗調整層202との間にトナー粒子等が侵入し、固着することを防止することができるので、導電性部材200の帯電性能の劣化を防止することが容易となる。
【0083】
さらに、表面層の抵抗を電気抵抗調整層203の抵抗よりも大きくすることによって、感光体101の欠落部への電圧集中、異常放電(リーク)を防止することができる。また、導電性部材200を近接帯電方式の帯電部材として画像形成装置100に用いることによって、長期間にわたって優れた画像品質を得ることが容易となる。
【0084】
なお、本実施の形態に置いては、導電性部材200を画像形成装置100の帯電部材として用いた例を示して説明を行ったが、導電性部材200は帯電部材に限定されるものではなく転写部材として用いる場合であっても同様の効果を奏することができ、さらに、この導電性部材200を用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置100であっても同様の効果を奏することができる。
【0085】
以上、本発明に係る導電性部材を、図面を用いて説明したが、本発明に係る導電性部材は、上述したものに限定されるものではない。例えば、電気抵抗調整層及び空隙保持部材は、必ずしも断面が円形状となったものである必要はなく、断面形状が楕円形状等のものであってもよい。このような楕円形状のものであっても、空隙が一定に保たれるものであれば、その構造に拘わらず上述した導電性部材200と同様の効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る導電性部材の構造を示した断面図である。
【図2】図1に示した導電性部材を画像形成装置の帯電部材として用い、感光体に対して配置された状態を示す概略構成図である。
【図3】一般的な画像形成装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0087】
100 画像形成装置
101 感光体ドラム
102 帯電ローラ(導電性部材)
103 露光
104 現像ローラ
105 パワーパック
106 転写ローラ
107 記録紙
108 クリーニング装置
109 表面電位計
200 導電性部材
201 導電性支持体(芯軸)
202 電気抵抗調整層
203 空隙保持部材
204 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の導電性支持体と、該導電性支持体を中心軸として該導電性支持体の外周上に積層設置される電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層とは異なる材質により形成されており中心部に前記導電性支持体を圧入することが可能な嵌合孔が形成されて外周径が前記電気抵抗調整層よりも拡径の空隙保持部材とを有し、前記導電性支持体の端部を前記空隙保持部材の嵌合孔に圧入させることによって前記空隙保持部材が前記導電性支持体に固定される導電性部材であって、前記導電性支持体の前記嵌合孔に圧入される端部の外表面の表面粗さRzが1μm〜10μmに規定されていること特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記空隙保持部材は、前記導電性支持体と前記電気抵抗調整層との少なくとも一方に接着されることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層側の端部が絶縁性であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記電気抵抗調整層の外表面に、トナーの付着を防止する表面層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記表面層の抵抗は、電気抵抗調整層内部の抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の導電性部材。
【請求項6】
画像形成装置の帯電部材として使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の導電性部材。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−162669(P2006−162669A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349858(P2004−349858)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】