説明

導電性部材、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】当接部材の物理的ストレスによる抵抗変動を制御可能で、ハーフトーンの濃度ムラを未然に防止することができる導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性軸芯体と、導電性弾性層と、導電性表面層とを有する現像ローラであって、該導電性弾性層は、シリコーンゴムと該シリコーンゴム中に分散されている塩基性のカーボンブラックとを含有し、該表面層は、カルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂と該ウレタン樹脂に分散されている酸性のカーボンブラックとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性部材、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触現像に用いられる現像ローラにおいて、カーボンブラックを分散させることで導電化してなる弾性層を備えた構成が知られている。そして、当該カーボンブラックの特性を調整することで、現像ローラに直流電圧を印加し続けたときの抵抗変動を抑えることが特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、カーボンブラックの選択によって、弾性層中のカーボンブラックの分散状態の変動に起因する抵抗変動は抑えられるものの、層構成に起因する抵抗変動が存在することを知見した。すなわち、現像ローラや帯電ローラは、導電性弾性層上に、トナー付着を抑えるため等の目的でカーボンブラックを分散させた導電性の表面層を設けることがある。
このように導電性弾性層と該導電性弾性層の表面を被覆してなる導電性の表面層とが積層された導電性ローラにおいては、弾性層中のカーボンブラックに起因する抵抗変動の対策を施した場合であっても、経時的に電気抵抗が上昇する場合があることを見出した。
そこで、本発明は、弾性層と該弾性層を被覆してなる表面層とが共にカーボンブラックを分散させることで導電化されてなる積層構造を有し、かつ、経時的な電気抵抗の上昇が抑制された導電性部材を提供することを目的とする。また、本発明は、安定して高品位な電子写真画像を形成し得るプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電性軸芯体と、導電性弾性層と、導電性表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、該導電性弾性層は、シリコーンゴムと該シリコーンゴム中に分散されている塩基性のカーボンブラックとを含有し、該導電性表面層は、カルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂と該ウレタン樹脂に分散されている酸性のカーボンブラックとを含有していることを特徴とする導電性部材に関する。
また、本発明は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成するための現像装置と、像担持体の表面をクリーニングするためのクリーニング装置とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、該現像装置が、前記導電性部材を有することを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジに関する。
さらに、本発明は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する電子写真装置であって、該現像装置が、前記導電性部材を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐久初期から耐久後半まで高抵抗化しにくい電子写真用の導電性部材、並びに電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明にかかる現像ローラを示す断面図である。
【図2】本発明に係る現像ローラの電気抵抗測定方法の説明図である。
【図3】本発明の電子写真装置の概略を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真装置に装着される電子写真プロセスカートリッジの拡大断面図である。
【図5】本発明に係る現像ローラに物理的ストレスを与える冶具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、弾性層および該弾性層を被覆してなる表面層とが共にカーボンブラックを分散させることで導電化されてなる積層構造を有する、ローラ形状の電子写真用導電性部材(以降、「導電性ローラ」ともいう)を、接触帯電用の帯電ローラとして用いたときに生じた経時的な電気抵抗値の上昇について検討した。
経時的な電気抵抗値の上昇は、導電性弾性層にシリコーンゴムを用い、かつ導電性表面層にウレタン樹脂を用いた場合に、特に顕著であった。
その結果、上記課題の原因の一つが、当該導電性ローラが当接する静電潜像担持体や現像ブレードなどから受ける、回転の摺擦に伴うせん断ストレスであるとの知見を得た。
【0009】
すなわち、本発明者らは、上記積層構造の導電性ローラの経時的な抵抗上昇のメカニズムを次のように考えている。
カーボンラックを含む弾性層と、カーボンラックを含む表面層の積層構造を有する導電性ローラにおいては、それぞれのカーボンブラックは、各層の厚み方向に導電パスを形成する。そして、各層の界面では、互いの層に対向する面に露出し、あるいは、その近傍に存在するカーボンブラック間で導電パスが形成され導電性が発現するものと考えられる。
しかし、弾性層と表面層との接着強度が弱い場合、外部からせん断ストレスによって、界面における導電パスが分断される。その結果、弾性層と表面層との界面において電荷の授受が行われにくくなり、電気抵抗が上昇するものと考えられる。
【0010】
本発明者らは上記のような、せん断ストレスによる界面の導電パスの分断を防ぐために、導電性弾性層であるシリコーンゴムに含まれるカーボンブラックと、導電性表面層であるウレタン樹脂の構造と、それに含まれるカーボンブラックの3者の関係に着目し、検討を進めた。
本発明者らは、シリコーンゴムに塩基性のカーボンブラックを含ませ、かつカルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂に酸性のカーボンブラックを含ませた場合のみ、強固な界面の導電パスが形成されることを見出した。本発明者らは、この組み合わせにおいて、以下のような現象が起こっていると考えている。
【0011】
導電性表面層のウレタン樹脂に存在するカルボキシル基(酸性基)は、導電性弾性層のシリコーンゴムに存在する塩基性のカーボンブラックと酸塩基相互作用により強く吸着する。この結果、導電性弾性層と導電性表面層の界面の接着強度が増す。
しかし、導電性表面層に酸性のカーボンブラック以外のカーボンブラックを含有させる場合、導電性表面層にあるカルボキシル基とそのカーボンブラックが優先的に吸着し、上記のカルボキシル基と塩基性のカーボンブラックの吸着の効果を損なってしまう。これに対して、導電性表面層に酸性のカーボンブラックを用いた場合は、カルボキシル基と酸性のカーボンブラックが吸着せず、両層の界面に存在するカルボキシル基が効果的に導電性弾性層の塩基性のカーボンブラックと吸着できる。
このように、本発明においては、導電性表面層に含まれるカルボキシル基と、導電性弾性層に含まれる塩基性のカーボンブラックとの酸塩基相互作用を、最大限に引き出せるため、両層の接着力を高められる。その結果として、導電性弾性層と導電性表面層との界面に、容易に破壊されない導電パスを形成することができるものと推測している。
【0012】
[導電性ローラ]
本発明に係る導電性ローラを図1に示す。導電性ローラ1は、導電性軸芯体2の外周に、導電性弾性層3と、さらにその外周に導電性表面層4を有している。
導電性軸芯体2としては、良好な導電性を有するものであれば、いずれのものも使用し得る。通常はアルミニウムや鉄、SUSの如き材料で形成された外径4mm以上10mm以下の金属製の円筒体や円柱体が用いられる。
図1に示した導電性ローラ1は以下のようにして作成することができる。導電性弾性層3は、例えば導電性軸芯体2を予め配した成型金型のキャビティ内に、塩基性のカーボンブラックとシリコーンゴムとを混練した組成物を注入して作成することができる。また、予め上記組成物を用いて別途形成したスラブやブロックから、押し出し加工や切削加工によりチューブを形成し、これを所定の形状、寸法に切り出した後、導電性軸芯体2を圧入して、導電性弾性層3を作成することもできる。所望の場合には、さらに、切削や研磨処理などによって所定の外径に調整してもよい。
導電性表面層4は、酸性のカーボンブラックとカルボキシル基を有するウレタン樹脂の原料たるポリオールとイソシアネートを、ボールミルなどの混練機などを用いて塗料にし、導電性弾性層3に塗布し、必要に応じて加熱処理を行うことにより作成する。
【0013】
導電性ローラの電気抵抗値測定は、図2に示す電気抵抗測定機を用いて測定することができる。すなわち、現像ローラ1の芯金両端部に4.9Nずつ加重を施し、現像ローラ1を直径(Φ)30mmの金属ドラム5に押し当て、ローラ回転数1rpsにて従動回転させながら、電源6により50Vの電圧を印加する。このとき電圧計7に示される、抵抗8(1kΩ)にかかる電圧を30秒間で3000点記録し、その相加平均値を求め、得られた値よりオームの法則に則って導電性ローラ1の電気抵抗値を求めることができる。
【0014】
[導電性弾性層]
導電性弾性層3は、像担持体とのニップ幅を安定的に確保し、画像の均一性や長時間安定な画像を出力し続けるために、弾性に富むものが好ましく、本発明ではシリコーンゴムより構成する。また、導電性弾性層3は、導電性付与剤を配合し、適切な抵抗領域に調整される。通常、導電性弾性層3の抵抗値は通常10Ω以上1010Ω以下の範囲で調整される。
本発明においては、導電性付与剤として塩基性のカーボンブラックを用いることが必須になる。特にpH値が9.0以上、10.0以下であれば、後述する導電性表面層4に存在するカルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂との相互作用が大きくなるので好ましい。また、塩基性のカーボンブラックであれば、導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボンでも特に種類は限定しない。導電性弾性層に含有する塩基性のカーボンブラックの量としては、通常、基材100質量部に対して、3.0質量部以上20質量部以下の範囲で用いられる。
なお、本発明におけるカーボンブラックのpHとは、カーボンブラック表面の官能基の数により決まるもので、酸性、塩基性を知る指標となるものである。一般的に、カーボンブラックの表面には、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型酸素などの含酸素官能基が存在する。これらの表面官能基の数はカーボンブラックの種類により異なることが知られている。
カーボンブラックのpHの測定は、以下の手順で行うことができる。
(1)カーボンブラック5gとpH7の蒸留水50mlを容器に採取し混合する。
(2)これを15分間煮沸し、その後常温まで30分で冷却する。
(3)この上澄み液中にpHメータ「HM30R」(東亜ディーケーケー社製)の電極を浸し、pHを測定する。
【0015】
導電性弾性層3の厚さは、通常0.3mm以上10mm以下、特には1.0mm以上5.0mm以下の範囲とする。
本発明における導電性弾性層3の厚さは、導電性弾性層3が形成された現像ローラを切り取り、ノギスでその断面を9点測定し、その相加平均値とした。厚さが薄い場合(1.0mm以下)は、断面をビデオマイクロスコープ/倍率5倍(商品名:VHX−500 キーエンス社製)で9点測定し、その相加平均値とした。
【0016】
[導電性表面層]
本発明では、導電性弾性層のカーボンブラックとの相互作用を大きくする目的で、導電性弾性層3の外周に形成する導電性表面層4の基材を、カルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂で構成する。
ウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネート、必要に応じて鎖延長剤から得ることができる。ウレタン樹脂の原料たるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。ウレタン樹脂の原料たるイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、およびこれらの混合物が挙げられる。ウレタン樹脂の原料たる鎖延長剤としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオールの如き2官能性低分子ジオール、トリメチロールプロパンの如き3官能性低分子トリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を含有させる方法は、ポリオールと酸無水物とから合成される半エステルを利用する半エステル共重合法を用いることができる。また、2個の水酸基と1個以上のカルボキシル基を持つ化合物をウレタン化反応時に共重合させても良い。
カルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂の分子構造は、熱分解GC/MSやNMR、IR、元素分析の如き手法を用いることにより同定することができる。
【0017】
導電性表面層4は、導電性付与剤を配合し、適切な抵抗領域に調整することが好ましい。導電性表面層4の体積抵抗率は、10Ω以上1010Ω以下の範囲で通常調整される。本発明では、導電性表面層4の導電性付与剤として酸性のカーボンブラックを用いることが必須になる。特にpH値を2.0以上、5.0以下に調整することで、導電性表面層4のカルボキシル基が導電性弾性層3に含まれる塩基性のカーボンブラックとの相互作用を大きくできるので好適である。また、酸性のカーボンブラックであれば、導電性カーボンブラック、ゴム用カーボンブラック、カラー(インク)用カーボンでも特に種類は限定しない。導電性表面層に含有する酸性のカーボンブラックの量としては基材100質量部に対して、通常、1.0質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。
【0018】
[電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真装置]
図3は、本発明の電子写真装置の概略を示す断面図である。図4は、図3の電子写真装置に装着される電子写真プロセスカートリッジの拡大断面図である。この電子写真プロセスカートリッジは、像担持体としての像担持体21と、帯電部材22を具備する帯電装置と、現像ローラ24を具備する現像装置と、クリーニング部材30を具備するクリーニング装置とを内蔵している。そして、電子写真プロセスカートリッジは、図3の電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている。
像担持体21は、不図示のバイアス電源に接続された帯電部材22によって一様に帯電(一次帯電)される。このときの像担持体21の帯電電位は−800V以上−400V以下である。次に、像担持体21は、静電潜像を書き込むための露光光23を、不図示の露光装置により照射し、その表面に静電潜像が形成される。露光光23には、LED光、レーザー光のいずれも使用することができる。露光された部分の像担持体21の表面電位は−200V以上−100V以下である。
【0019】
次に、現像ローラ24によって負極性に帯電したトナーが静電潜像に付与(現像)され、像担持体21上にトナー像が形成され、静電潜像が可視像に変換される。このとき、現像ローラ24には不図示のバイアス電源によって−500V以上−300V以下の電圧が印加される。なお、現像ローラ24は、像担持体21と0.5mm以上3mm以下のニップ幅をもって接触している。本発明の電子写真プロセスカートリッジにおいては、トナー規制部材である現像ブレード26と現像ローラ24との当接部に対して現像ローラ24の回転の上流側に、トナー供給ローラ25が回転可能な状態で現像ローラ24に当接される。
像担持体21上で現像されたトナー像は、中間転写ベルト27に1次転写される。中間転写ベルト27の裏面には1次転写部材28が当接しており、1次転写部材28に+100V以上+1500V以下の電圧を印加することで、負極性のトナー像を像担持体21から中間転写ベルト27に1次転写する。1次転写部材28はローラ形状であってもブレード形状であっても良い。
【0020】
電子写真画像形成装置がフルカラー画像形成装置である場合、上記の帯電、露光、現像、1次転写の各工程を、イエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各色に対して行う必要がある。そのために、図3に示す電子写真装置では、前記各色のトナーを内蔵したプロセスカートリッジが各1個、合計4個、電子写真装置本体に対し着脱可能な状態で装着されている。そして、上記の帯電、露光、現像、1次転写の各工程は、所定の時間差をもって順次実行され、中間転写ベルト27上に、フルカラー画像を表現するための4色のトナー像が重ね合わせた状態が作り出される。
【0021】
中間転写ベルト27上のトナー像は、中間転写ベルト27の回転に伴って、2次転写部材29と対向する位置に搬送される。中間転写ベルト27と2次転写部材29との間には所定のタイミングで記録用紙の搬送ルート32に沿って記録用紙が搬送されてきており、2次転写部材29に2次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト27上のトナー像を転写材(記録用紙)に転写する。このとき、2次転写部材29に印加されるバイアス電圧は、+1000V以上+4000V以下である。2次転写部材29によってトナー像が転写された記録用紙は、定着装置31に搬送され、記録用紙上のトナー像を溶融させて記録用紙上に定着させた後、記録用紙を電子写真画像形成装置の外に排出することで、プリント動作が終了する。
なお、像担持体21から中間転写ベルト27に転写されることなく像担持体21上に残存したトナー像は像担持体21表面をクリーニングするためのクリーニング部材30により掻き取られ、像担持体21の表面はクリーニングされる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明する。
実施例に用いたカーボンブラック、及びカーボンブラックのpHを上記測定方法に基づき測定した結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
[導電性弾性層の作製]
(導電性弾性層1の作製)
表2に記載の材料を、常温で攪拌機を用いて混合し導電性組成物1を作製した。
【0025】
【表2】

【0026】
次に、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:「DY35−051」東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布し、温度150℃にて30分間焼付けたものを金型に配置した。そして、半導電性組成物1を金型内のキャビティに注入した。続いて、金型を温度150℃で15分間加熱し、金型から脱型した後、温度200℃で2時間加熱して硬化反応を完結させた。このようにして直径12mmの導電性弾性層1を作製した。
【0027】
(導電性弾性層2の作成)
上記導電性弾性層1のカーボンブラック(商品名:「#970」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「Printex45」デグサ社製)に変更した以外は同様にして導電性弾性層2を作製した。
【0028】
(導電性弾性層3の作成)
上記導電性弾性層1のカーボンブラック(商品名:「#970」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「Printex60」デグサ社製)に変更した以外は同様にして導電性弾性層3を作製した。
【0029】
(導電性弾性層4の作成)
上記導電性弾性層1のカーボンブラック(商品名:「#970」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「トーカブラック#8300F」東海カーボン社製)に変更した以外は同様にして導電性弾性層4を作製した。
【0030】
[導電性表面層形成用の塗料の作製]
(塗料1の作製)
撹拌機、冷却器、温度計および窒素導入管を付した4つ口セパラブルフラスコに、表3に記載の材料を仕込み、撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度80℃、5時間反応させた。その後溶媒を除去し、カルボキシル基を分子内に有するウレタンプレポリマー1を得た。得られたウレタンプレポリマー1を用いて、表4に記載の材料をボールミルで攪拌分散して塗料1を調製した。
【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
(塗料2の作製)
上記導電性表面層の塗料1のカーボンブラック(商品名:「#2700」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「Printex150T」デグサ社製)に変更した以外は、同様にして塗料2を調製した。
【0034】
(塗料3の作製)
上記導電性表面層の塗料1のカーボンブラック(商品名:「#2700」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「トーカブラック#8300F」東海カーボン社製)に変更した以外は、同様にして塗料3を調製した。
【0035】
(塗料4の作製)
上記導電性表面層の塗料1のカーボンブラック(商品名:「#2700」三菱化学社製)をカーボンブラック(商品名:「#970」三菱化学社製)に変更した以外は、同様にして、塗料4を調製した。
【0036】
(塗料5の作製)
表5に記載の材料を、温度80℃で5時間反応させウレタンプレポリマー2を得た。得られたウレタンプレポリマー2を用いて、表6に記載の材料をボールミルで攪拌分散し、導電性表面層の塗料5を作製した。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
(塗料6の作製)
撹拌機、冷却器、温度計および窒素導入管を付した4つ口セパラブルフラスコに、表7に記載の材料を仕込み、撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度80℃、8時間溶液重合しカルボキシル基を有するアクリル樹脂溶液1を得た。得られたアクリル樹脂溶液1を用いて、表8に記載の材料をボールミルで攪拌分散し、塗料6を調製した。
【0040】
【表7】

【0041】
【表8】

【0042】
[現像ローラの作製]
(現像ローラ1〜12の作製)
上記作製した各導電性表面層の塗料にメチルエチルケトンを添加し、固形分28%に調整した。そして下記表9の組み合わせにて、先に成型した各導電性弾性層の上にディッピングにより塗布した。その後、温度80℃のオーブンで15分間乾燥後、温度140℃のオーブンで4時間硬化することにより、導電性表面層としての樹脂層を形成し、各現像ローラを得た。
【0043】
【表9】

【0044】
[性能評価]
当接部材のストレスによる導電性ローラの高抵抗化を比較するために、以下の手順で評価を行った。
(1)作製した導電性ローラを温度23℃、湿度50%の環境下に24時間放置し、その後温度23℃、湿度50%の環境下で抵抗R0を上記抵抗測定方法により求めた。
(2)図5に示した冶具にて、導電性ローラに物理的ストレスを与えた。具体的には、温度23℃、湿度50%の環境下で導電性ローラ1の芯金両端部に4.9Nずつ加重を施し、現像ローラ1を直径(Φ)24mmの金属ドラム9に押し当てた。続いて、導電性ローラ1の周速160mm/sec、金属ドラム9の周速100mm/secの速度で共に順方向に回転させ、導電性ローラ1を金属ドラム9に摺擦させながら4時間回転させた。
(3)上記のように導電性ローラに物理的ストレスを与えた後、再び導電性ローラを温度23℃、湿度50%の環境下に24時間放置し、その後温度23℃、湿度50%の環境下で導電性ローラの抵抗R1を上記抵抗測定方法により求めた。
(4)物理的ストレスを与える前後の電気抵抗値の変化率(R1/R0)を求めた。
【0045】
[画像評価]
(ハーフトーン画像濃度ムラ評価)
導電性ローラを、カラーレーザープリンタ(商品名:Color LaserJet 4700 ヒューレットパッカード社製)用のシアン用の電子写真プロセスカートリッジの現像ローラとして装着した。この電子写真プロセスカートリッジを、上記カラーレーザープリンタに装填して電子写真画像を出力した。
具体的には、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字濃度が2%となるように形成される画像を15000枚出力した。引き続いて、ハーフトーン画像を1枚出力した。ハーフトーン画像とは、A4サイズの紙上に、電子写真感光体ドラムの回転方向と垂直な方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線が描かれた画像である。
得られたハーフトーン画像について、マクベス反射濃度計(マクベス社製)を使用し、SPI補助フィルタ−を用いて、10点測定(ハーフトーン画像を左右に2等分割する排紙方向に平行な線を11等分割する10点測定)を行った。得られた10点の画像濃度の最大濃度(MAX)と最小濃度(MIN)との濃度差(MAX−MIN)を算出して、ハーフトーン画像の濃度ムラを表10の基準に基づき評価した。各現像ローラの性能評価、画像評価の結果を表11に示す。
なお、出力に用いた紙としては、キヤノン社製のCLC(カラーレーザーコピア)用紙(A4サイズ、坪量=81.4g/m2)を用いた。
また、トナーとしては、上記カラーレーザプリンターのシアン用の電子写真プロセスカートリッジに内蔵されているシアントナーをそのまま使用した。
更に、画像出力の環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。
【0046】
【表10】

【0047】
【表11】

【0048】
表2に示す実施例1から7の結果から明らかなように、本発明による構成を満たした現像ローラを用いた場合は、当接部材の物理的ストレスによる抵抗変動を抑制可能で、これによって、繰り返し使用後のハーフトーンの濃度ムラを未然に防止することができた。
一方、導電性表面層のウレタンが分子内にカルボキシル基を有していない場合や、カーボンブラックの特性が本発明と異なる場合は、当接部材の物理的ストレスによる抵抗変動の抑制が難しく、ハーフトーンの濃度ムラが効果的に抑制できなかった。
【符号の説明】
【0049】
1:現像ローラ
2:導電性軸芯体
3:導電性弾性層
4:導電性表面層
5:金属ドラム
6:電源
7:電圧計
8:抵抗
9:金属ドラム
21:像担持体
22:帯電部材
23:露光光
24:現像ローラ
25:トナー供給ローラ
26:現像ブレード
27:中間転写ベルト
28:1次転写部材
29:2次転写部材
30:クリーニング部材
31:定着装置
32:記録用紙の搬送ルート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、導電性弾性層と、導電性表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電性弾性層は、シリコーンゴムと該シリコーンゴムに分散されている塩基性のカーボンブラックとを含有し、
該導電性表面層は、カルボキシル基を分子内に有するウレタン樹脂と該ウレタン樹脂に分散されている酸性のカーボンブラックとを含有していることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記塩基性のカーボンブラックのpH値が9.0以上10.0以下であり、前記酸性のカーボンブラックのpH値が2.0以上5.0以下である請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電性部材がローラ形状を有する導電性ローラである請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項4】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、像担持体の表面をクリーニングするためのクリーニング装置とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、
該現像装置が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性部材を有することを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項5】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像装置と、該トナー像を転写材に転写するための転写装置とを有する電子写真装置であって、
該現像装置が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性部材を有することを特徴とする電子写真装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54105(P2013−54105A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190688(P2011−190688)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】