説明

導電性部材及びその製造方法

【課題】 導電性部材の長手方向両端に発生する不必要な弾性層及び表面被覆層の除去に用いる適切な部材及び方法を選択することで、軸芯体上に除去残りが無く、軸芯体に傷のない導電性部材及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 導電性の軸芯体と軸芯体の外周にソリッドゴムからなる弾性層及び表面被覆層を配した導電性部材であって、該弾性層の引き裂き強さが15N/mm以下であり、かつ該導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が該弾性層より大きい撚り糸を、該軸芯体、該弾性層及び該表面被覆層に接触させて該軸芯体から不要な弾性層及び表面被覆層を除去したことを特徴とする導電性部材及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における導電性部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンター等のOA機器は高画質化が進んでおり、それに伴い感光体上の静電潜像をトナーにより可視化する現像プロセスにおいては、現像剤担持部材として弾性層を有する現像剤担持部材を用い、感光体に均一に圧接して現像を行う接触現像方式が提案されている。この接触現像方式においては、現像剤担持部材は、感光体への均一な圧接幅を確保するために、弾性材料により構成される弾性層を有すると共に、電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するために、均一な導電性や耐リーク性が求められる。
【0003】
そこで、例えば導電性支持体上に、電子導電剤やイオン導電剤を分散して所望の抵抗値に調節した弾性層を形成し、その外周に、耐摩耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るために、ポリアミドやウレタン等の樹脂と、適宣表面粗さを確保するための粗し粒子や、導電性を確保するための導電剤を添加した被覆材料からなる被覆層を設ける場合が多い。
【0004】
さてこれらの現像剤担持部材等の導電性部材は、例えば装置本体、あるいはカードリッジ本体の軸受け部分に固定して回転させるため、通常、両端に軸体を露出させた部分を設けて使用される。
【0005】
現像剤担持部材等の導電性部材の製造過程においては、両端に露出した軸芯体に傷が付かないよう種々の工夫が成されているが、誤って傷を付けてしまうと不良品として取り扱わざる負えない。何故なら、両端に露出した軸芯体に傷のある導電性部材を装置本体、あるいはカードリッジ本体に組み込むと軸芯体の傷による回転ムラでの画像不良や装置本体、あるいはカードリッジ本体の軸受け部分を削ってしまい、削り屑が発生し、電子写真感光体等を痛める等のトラブルが発生するためである。
【0006】
従来技術においては、不必要なゴムを除去するため、超高圧水を吹きつけ、軸体にキズが付かない様に不必要なゴムを除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
この方法は、不必要な軸体端部のゴム部分を除去する際、必要な部分のゴムと軸体の接着面を痛めることが多く、完成されたゴムロールは、ゴムの端部側が軸体から剥離し、端部のゴム径が太くなる所謂ラッパ状となってしまう。また、水に対し、ローラの物性が速い可逆性を持つ場合のみしか利用できない。
【0008】
また別の方法としては、ゴムロールを回転させながら、ワイヤー(金属製)をゴムロールのゴム部分の両端面に接触させてバリを除去し、更に、ワイヤーによるゴムロールのバリ除去後にラッピングテープを軸芯体に接触させて仕上げるというものである(例えば、特許文献2)。
【0009】
この方法では、効率的に不要なゴム部分を除去することは可能であるが、金属製ワイヤーを利用するため、軸芯体の材質によっては、軸芯体に傷を付ける可能性が大きい。またワイヤーでのバリ除去後に、ラッピングテープでの仕上げ工程が必要となり、製造装置が複雑になってしまう。
【特許文献1】特開平8−174500号公報(第2頁)
【特許文献2】特許第3386591号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決することにあり、導電性部材の長手方向両端に発生する不必要な弾性層及び表面被覆層の除去に用いる適切な部材及び方法を選択することで、軸芯体上に除去残りが無く、軸芯体に傷のない導電性部材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、導電性の軸芯体と軸芯体の外周にソリッドゴムからなる弾性層及び表面被覆層を配した導電性部材であって、該弾性層の引き裂き強さが15N/mm以下であり、かつ該導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が該弾性層より大きい撚り糸を、該軸芯体、該弾性層及び該表面被覆層に接触させて該軸芯体から不要な弾性層及び表面被覆層を除去したことを特徴とする導電性部材が提供される。
【0012】
また、本発明に従って、導電性の軸芯体と軸芯体の外周にソリッドゴムからなる弾性層及び表面被覆層を配した導電性部材の製造方法であって、該軸芯体の外周面上に引き裂き強さが15N/mm以下の弾性層及び表面被覆層を形成する工程と、該導電性部材の長手方向両端に露出した軸芯体部分を把持した上で回転させ、該導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が該弾性層より大きい撚り糸を該軸芯体、該弾性層及び該表面被覆層に接触させて該軸芯体から不要な弾性層及び表面被覆層を除去する工程と、を有することを特徴とする導電性部材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、導電性部材の形成において、導電性部材の長手方向両端に発生する不必要な弾性層及び表面被覆層を除去する際、除去に用いる適切な部材及び方法を選択することで、軸芯体上に除去残りが無く、軸芯体に傷のない導電性部材及びその製造方法を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いてより詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の導電性部材の一つの実施形態の概略を示すもので、(a)は導電性部材の軸線に沿った概略断面図、(b)は導電性部材を軸方向から見た図である。
【0016】
この図に示す形態の導電性部材は、導電性の軸芯体となる導電性支持体1a上に弾性層1bを形成し、その外周に被覆層1cを設けたものである。
【0017】
1)構成材料
本発明に用いられる導電性の軸芯体となる導電性支持体1aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属製丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わないが、導電性を損なわないことが必要である。
【0018】
弾性層1bは、シリコーンゴムやウレタンゴム等のゴム材料に、必要に応じて導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル及び鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩)、導電性ゴム等を適宜用いることができる。この場合、導電剤は2種以上併用してもよい。導電剤の添加量は、ゴム材料100質量部に対し、通常、2〜20質量部とすればよい。
【0019】
またゴム形状としては、ソリッドゴムである必要があり、少なくとも1層以上の弾性層を設けることが好ましく、弾性層の厚みは通常、1〜6mmとするのが好ましい。
【0020】
弾性層の引き裂き強さは、ゴムに導電剤を付与した状態での引き裂き強さが15N/mm以下になることが必須である。15N/mmを超えると、糸切れが発生し易くなる。また15N/mmを超えると、マル刃を用いて切断することで、比較的容易に不要部分のゴムが除去できるため、糸を用いる必要性が低くなる。またゴムの新モース硬度については、ゴムに導電剤を付与した状態での新モース硬度が2未満になることが好ましい。
【0021】
導電性部材が現像剤担持部材の場合においては、硬さ、圧縮永久歪みを考慮した場合、付加反応型導電性シリコーンゴムが好ましい。
【0022】
被覆層1cは、弾性層(複数の弾性層を有する場合には外側の弾性層)の外周に、これに接して形成され、弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の成分が導電性部材表面へブリードアウトするのを防止する目的で、又は、導電性部材全体の電気抵抗を調整する目的で設けられる。
【0023】
被覆層の有無はあってもなくても構わない。被覆層を1層とする場合には、この被覆層の厚みは、ブリードアウトを防止するため、通常、8μm以上とするのが好ましく、また弾性層の柔軟性を損なうことなく、また耐摩耗性を考慮すると、100μm以下とするのが好ましく、更には30μm以下がより好ましい。また、被覆層を多層とする場合には、各層の合計厚みが上記範囲となるようにすればよい。
【0024】
樹脂材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの樹脂材料は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、これらの樹脂材料は単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
被覆層1cは、導電性部材が現像剤担持部材の場合の接触現像方式においては現像ローラの電子写真感光体への均一な圧接が必要であり、また現像ローラ上のトナーの層厚を規制する規制ブレードとも接触しているため、変形した跡が残ると、それが画像不良として現れてしまう。その様なことから、現像ローラは、複写機やプリンター等に用いられる環境温度に対し、高い圧縮永久歪みが要求されることからポリウレタン樹脂が好ましい。
【0026】
被覆層1cに使われる、ウレタン樹脂に用いられるポリオール化合物としては、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール及びポリプロピレングリコール等の公知のポリウレタン用ポリオールが挙げられる。
【0027】
また、イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、及びそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDI及びそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等である。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタン被覆層を生成する。
【0028】
また被覆層1cは、導電性部材が現像剤担持部材の場合において十分なトナー搬送性を確保するため、樹脂材料に対し絶縁性粒子を適当量添加することができる。絶縁性粒子の大きさとしては、3μm〜100μmの平均粒径を有するものが好ましく、更には5μm〜30μmの平均粒径のものがより好ましい。
【0029】
絶縁性粒子の材質としては、例えば、ウレタン粒子、ポリアミド粒子、アクリル粒子及びシリコーン粒子等が挙げられる。形状としては球形が好ましい。
【0030】
絶縁性粒子の添加量は、被覆層を形成する被覆材料中の樹脂材料を100質量部としたとき、絶縁性粒子は、通常、2〜50質量部とするのが好ましい。絶縁性粒子の添加量をこの範囲とすると、現像ローラとして適度のトナー搬送性を持つ、被覆層表面が得られる。
【0031】
本発明における被覆材料は、導電性部材全体の電気抵抗を調整する目的のため、導電性微粒子を含んでもよい。導電性微粒子としては、各種電子伝導機構を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル及び鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩)の微粒子を用いることができる。上記導電剤の2種以上を併用してもよい。また導電性微粒子を樹脂材料100質量部に対し、通常、5〜200質量部添加するのが好ましい。導電性微粒子の添加量を5質量部以上とすると、被覆層は導電性を付与することができ、200質量部まで必要量の導電性微粒子を加えることにより、導電性をコントロールすることが可能となる。導電性微粒子を樹脂材料100質量部に対し、15〜30質量部を添加するのがより好ましい。使用する導電性微粒子は、電子写真感光体を汚染する材料構成であってはならない。
【0032】
被覆層1cの形成に用いることのできる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン及びシクロヘキサノンのケトン類、キシレンやトルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチルや酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ及びテトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。また樹脂等が溶解する場合は、水等も溶剤として用いることが出来る。
【0033】
前述の各材料を有機溶剤や水等中に添加し適宣希釈し、導電剤を分散し、塗工液を作製する。
【0034】
塗工前の弾性層の表面清浄化は、従来の方法が利用でき、塗工液を弾性層の材料を注入した端部の長手方向反対側から塗工して被覆層を形成する方法と組み合わせることで、更に高い効果が期待出来る。その具体的な方法としては、例えば、圧縮空気の吹き付け、粘着テープとの接触、弾性層材料を侵さない有機溶剤での洗浄、高圧水での洗浄、水での洗浄等である。
【0035】
塗工方法としては、縦ディップ塗工、リング塗工及びロール塗工等から選択的に塗工液を塗布する方法を選択する塗布方法であれば特に限定されない。
【0036】
塗工液の作製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミル又は振動ミル等を用いる。
【0037】
次に、上記のような塗工方法で作製した膜を乾燥するが、乾燥の方法としては、熱を加えない風乾、加熱乾燥、熱硬化性樹脂の場合は、反応温度までの加熱処理等、用いる材料によって選択することが出来る。
【0038】
2)不要端部の除去について
図2は本発明の導電性部材1の不要端部3を糸5で除去する状態を示す概略図であり、図3は導電性部材1の不要端部3を糸5で除去する状態を導電性部材の軸方向から見た概略図である。
【0039】
本発明における導電性部材は、導電性支持体1a上に弾性層1bを形成し、その外周に被覆層1cを設ける。その製造工程において、導電性支持体1aを金属製の円筒型内に配しその両端を材料注入口のついた金属製コマにて芯金を支持し、長手方向のどちらか一方から材料を注入し熱硬化させ、その後、金型から脱型しソリッドゴムからなる弾性層を形成する。この際、弾性層1bの長手方向の両端には、円筒型と金属製コマの隙間や金属製コマと導電性支持体1aの隙間にバリが形成される。また、被覆層1cの形成時に導電性部材の長手方向両端の被覆層1cの膜厚が所望より薄かったり、厚かったりする。以上を解決するため、弾性層の長手方向の長さを予め所望される長さより長めに形成しておき、導電性部材の最後の製造工程で、不要部分をバリと共に切断除去し、導電性部材の完成とする。
【0040】
本発明における不要端部3の除去方法としては、図2に示す様に、ソリッドゴムからなる導電性部材1を回転させながら、導電性部材の長手方向に直角なるよう糸5を糸用ロール6によりテンションをかけた状態で、不要端部3の導電性部材端部の外周面から導電性支持体1aに向かって移動させ、糸5を導電性支持体1aに接触させて切断する。
【0041】
次に、不要端部3を切断した後、糸5が導電性支持体1aに接触した状態を保持して、導電性部材1の外側、すなわち把持部材4の方向に移動させて、不要端部3を除去する。
【0042】
また不要端部3を切断してあれば、不要端部3より外側の把持部材4側、すなわちソリッドゴムが無い部分から、導電性部材1の長手中心方向に不要端部3の切断部分まで、糸5が導電性支持体1aに接触した状態で移動させ不要端部3を除去することも可能である。
【0043】
上記導電性部材1の回転は、導電性部材1の両端に設けられた導電性支持体1aの露出部分を図2に示す様なかたちでチャック等の把持部材4に取り付けて行われる。このとき導電性部材1の回転数は、導電性部材径12〜20mmに対し400〜2000rpmが好ましく、更には導電性部材径16mmに対して回転数600〜1200rpmが好ましい。回転数が400rpm未満となると、作業効率が低下し、回転数が2000rpmを超えると、糸切れ等起こり易くなる。
【0044】
糸5は、図3に示すように一対の糸用ロール6でテンションをかける。この場合の糸5の巻数は1本以上が好ましいが、作業性や効率を上げるため、糸5及び糸用ロールの組を複数用意し、同時又は別々に動作させ複数本の糸を用いることも可能である。また不要端部3の導電性部材端部の外周面から導電性支持体1aに向かって移動させ、糸5を導電性支持体1aに接触させての切断又は、刃物での切断以外の糸5を用いての不要部分の除去においては、糸5の導電性部材当接面の反対側にバックアップする金属板を設けてもよい。このとき金属板は、導電性支持体1aには接触せず、また糸5を痛める形状であってはならない。また金属板の押し圧は、0.15〜0.5MPaとするのが好ましい。
【0045】
また導電性部材1に押し当てる糸5は、糸5が停止状態又は可動式のどちらも選択できる。停止状態を選択したときは、除去作業を行っていないときに糸5を送り汚れのない部分を出し、除去効果を高めることが出来る。また可動式を選択した場合は、糸5が移動しながら徐々に汚れのない部分を導電性部材1に押し当てることが出来る。何れの方法においても、糸の送り量の設定を適正化することで、不要端部のソリッドゴムの除去効率が確保される。糸5を可動式とした場合の糸の送り速度は、用いる糸5の本数によっても異なるが、1本の糸で片側の導電性部材端部を除去する場合においては、1〜20mm/secが好ましく、更には4〜8mm/secが好ましい。移動速度が20mm/secを超えると、除去効率は良いが糸5が無駄になってしまう。
【0046】
また、糸用ロール6で糸5にかける張力は、0.5Kgf〜3.0Kgfが好ましく、更には1.0〜2.0Kgfが好ましい。張力が0.5Kgf未満になると、糸5に撓みが出て装置トラブルが発生することが多くなる。張力が3.0Kgfを超えると、不要部分の除去中に糸切れが発生することが多くなる。
【0047】
使用する糸5は、直径が0.5〜2.0mmが好ましく、更には1.0〜1.2mmが好ましい。直径が0.5mm未満では、不要部分の除去には問題ないが、糸切れや時間がかかってしまう等の問題が発生し易くなる。また直径が2.0mmを超えると、糸が太いため不要端部3に入れた切り込み部分と導電性支持体1aのエッジ部分に不要部分が残ってしまうことがある。
【0048】
また使用する糸は撚ってあることが必須であり、糸の撚り数(繊維数)は多いことが好ましく、具体的には100本以上で撚っていることが更に好ましい。これは本発明の様に、弾性層の引き裂き強さが15N/mm以下のソリッドゴムを用いる場合、導電性部材1の不要端部3及びバリに糸5が押し当てられると、ゴムの引き裂き強さが比較的小さいため、バラバラに砕け更には柔らかさも備わっているため、導電性支持体1aや糸5に付着もしくは絡みつき容易に除去することが困難となる。そこで、複数の繊維が撚ってある糸を用いると、小さく砕けたゴム片は、撚ってある繊維の間に取り込まれ、まとわりつき除去しづらいゴム片を容易に除去することが可能となる。
【0049】
また糸5の材質としては、導電性支持体1aを傷つけることが無く、ソリッドゴムを除去できる強度を持つ有機材料からなるものであれば天然繊維、化学繊維を問わないが、コストや品質の安定性から化学繊維の方が好ましい。また糸5は、導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が弾性層より大きいことが必須である。これにより糸の傷みが無く、糸切れを起こさなくなる。好ましくは新モース硬度は2以上であり、特にポリアミド(ナイロン)からなる水糸が好ましい。
【0050】
本発明においては、糸5による導電性部材1の不要端部3及びバリの除去後は、完全に不要部分が除去されているため、その後のラッピング処理等を必要とせず、工程が簡素化され、更には糸5に有機材料からなるものを用いるため、導電性支持体に傷のない、導電性部材を得ることが出来る。
【0051】
本発明は、ローラ形状の現像剤担持部材の形成に関して好適であるが、現像剤担持部材以外の、帯電部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性部材においても同様に適用されうる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例中の「部」は「質量部」を示す。
【0053】
(実施例1)
<導電性支持体>
φ8mmの鉄鋼製軸芯体に無電解ニッケル−リンメッキを施し、導電性支持体を得た。
【0054】
<弾性層の作製>
次に、導電性シリコーンゴムからなる弾性層の形成は、上記芯金を内径16mmの円筒状金型内に金型キャビティと同心となるように設置し、両側にコマ金型、コマの間に円筒状金型を配置した金型を成型機にセットし、射出注入装置において液状ゴムを注入した。注入条件は、注入時間10秒、金型内に注入する液状ゴムの量は40mlで4ml/秒の一定速さで注入した。ここで用いた液状ゴムは、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗1×10Ω・cm品)を用い片液に微量に配合された白金触媒、更にもう片側に硬化剤を配合した2液混合の付加反応タイプのものとした。
【0055】
液状ゴムが注入された金型は成形装置内の熱盤にて加熱硬化し、脱型後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、導電性支持体に厚み4mmの弾性層を有する導電性部材前駆体を得た。
【0056】
<被覆層の作製>
次に被覆層の形成は、ウレタン塗料(ニッポランN5033;商品名、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(MA100;商品名、三菱化学製)を上記ウレタン塗料の固形分100部に対し70部、絶縁性粒子として平均粒径14μmのウレタン粒子(アートパールC400;商品名、根上工業製)を上記ウレタン塗料の固形分100部に対し12部添加した後、十分に分散したものに、硬化剤(コロネートL;商品名、日本ポリウレタン社製)を上記ウレタン塗料の固形分100部に対し10部添加し撹拌し、塗工液を調製した。次にこの塗工液を縦ディップ塗工装置の循環機中に投入し、液温度23±1℃、液粘度14.0mPa・sに調整し、上記方法で得られた導電性部材前駆体を塗工パレットに把持し、塗工工を縦ディップ塗布し、30分間室温にて風乾後、80℃のオーブンで15分間乾燥し、更に140℃のオーブンで4時間硬化し、被覆層を形成した。
【0057】
<不要端部の除去>
被覆層の形成を終えた不要端部の付いている導電性部材を図2で示すように、把持部材4で把持し、回転数800rpmで不要端部の付いている導電性部材を回転させながら、導電性部材の長手方向に直角なるよう撚りポリアミド製水糸(撚り数が100本以上、太さ0.8mm、トラスコ中山製)5を糸用ロール6によりテンションをかけた状態で糸は停止状態とし、切断位置に被覆層から導電性支持体に向かって侵入させ切断した後、糸が導電性支持体に接触した状態を保持して、導電性部材の外側、すなわち把持部材の方向に移動させて、不要端部を除去し、導電性部材を得た。
【0058】
<評価方法>
次に、以上の様にして得られた導電性部材両端の不要端部部分を除去した芯金露出部分を目視にて観察し、ゴム片残りの有無及び芯金表面上の傷の有無について、同様の方法で作製した導電性部材100本について発生数を調べ、その結果を表1に示す。
【0059】
<弾性層ソリッドゴムの引き裂き強さ測定>
弾性層に用いるソリッドゴムの引き裂き強さは、引き裂き試験(JIS K 6301、試験片形状:ダンベル3号形、試験温度23℃)に準じて測定し、結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、不要部分の除去に用いる糸を太さ0.6mmの撚りポリアミド製水糸(トラスコ中山製)に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0061】
(実施例3)
実施例1において、不要部分の除去に用いる糸の送り速度を4mm/secに変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、不要部分の除去に用いる糸を撚り合わせていない1本の太さ0.91mmの釣り糸(東レ製、材質:ポリアミド)に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、不要部分の除去に用いる糸を撚り合わせていない1本の太さ0.56mmの釣り糸(東レ製、材質:ポリアミド)に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0064】
(比較例3)
実施例1において、不要部分の除去に用いる糸を太さ2.0mmのステンレスワイヤ(トラスコ中山製)に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0065】
(比較例4)
エピクロルヒドリンゴム100部、四級アンモニウム塩2部、炭酸カルシウム30部、酸化亜鉛5部、脂肪酸5部の各材料を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーで更に20分間混練し、原料コンパウンドを調製した。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1部及びノクセラーTS0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを、実施例1と同様の導電性支持体の周囲にローラ状になるように押出成型機にて成型し、加熱加硫成型した後、導電性支持体上に厚み4mmの弾性層を有する導電性部材前駆体に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性部材を作製した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から明らかなように、実施例1〜3においては、引き裂き強さが15N/mm以下の弾性層を用いた導電性部材の不要端部及びバリ除去を有機材料からなる撚り糸で行ったため、ゴム片の付着は無く、また導電性支持体への傷付きもなかった。
【0068】
これに対し、比較例1及び比較例2では、有機材料であるが撚りが無い1本の繊維を用いたため、導電性支持体には傷は付かなかったもののゴム片の除去は出来なかった。
【0069】
また比較例3においては、ステンレス製の金属ワイヤーを用いたため、導電性支持体に傷が付いてしまった。
【0070】
比較例4においては、引き裂き強さが15N/mmを超える弾性層を用いた導電性部材のため、初めに糸を不要端部の切断位置に被覆層から導電性支持体に向かって侵入させ切断した際、糸切れが発生した。同様に丸刃を用いて切断したところ、弾性層の引き裂き強さが大きいため、不要端部部分が簡単に脱離したが、支持体に傷がつくおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の導電性部材の一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電性部材の不要端部を糸で除去する状態を示す概略図である。
【図3】本発明の導電性部材の不要端部を糸で除去する状態を導電性部材の軸方向から見た概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1 導電性部材
1a 導電性支持体
1b 弾性層
1c 被覆層
3 不要端部
4 把持部材
5 糸
6 糸用ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の軸芯体と軸芯体の外周にソリッドゴムからなる弾性層及び表面被覆層を配した導電性部材であって、該弾性層の引き裂き強さが15N/mm以下であり、かつ該導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が該弾性層より大きい撚り糸を、該軸芯体、該弾性層及び該表面被覆層に接触させて該軸芯体から不要な弾性層及び表面被覆層を除去したことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記撚り糸が有機材料からなる糸である請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記有機材料がポリアミドである請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
導電性の軸芯体と軸芯体の外周にソリッドゴムからなる弾性層及び表面被覆層を配した導電性部材の製造方法であって、
該軸芯体の外周面上に引き裂き強さが15N/mm以下の弾性層及び表面被覆層を形成する工程と、
該導電性部材の長手方向両端に露出した軸芯体部分を把持した上で回転させ、該導電性部材の長手方向に略直角に張った新モース硬度が該弾性層より大きい撚り糸を該軸芯体、該弾性層及び該表面被覆層に接触させて該軸芯体から不要な弾性層及び表面被覆層を除去する工程と、
を有することを特徴とする導電性部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235064(P2006−235064A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47220(P2005−47220)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】