説明

導電性酸化亜鉛微粒子、その分散液、塗料およびその製造方法

【課題】0.2μm以下のレベルの細かい粒子径と、高い導電性を併せ持つインジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子、該酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散させた分散液、該分散液を含む塗料、および該導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子であって、亜鉛(Zn)とインジウム(In)の金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45、該微粒子の平均粒子径が1〜200nm、かつ9.81MPaの加圧時の電気伝導度が0.05S/cm以上である導電性酸化亜鉛微粒子。さらに臭素や塩素などのハロゲン元素を、亜鉛とインジウムとの金属成分(Zn+In)の合計原子数1に対して、ハロゲン元素として0.0001〜0.05原子数含有しても良い。及び前記導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散させた分散液、該分散液を含有する塗料、および前記導電性酸化亜鉛微粒子を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性塗料、熱線反射塗料などの塗料、着色材、帯電防止材、静電気防止材、電磁波シールド材などの機能性材料の添加剤などとして用いられる分散性の改良された導電性酸化亜鉛微粒子、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料、触媒、医薬・化粧品等の幅広い分野でナノオーダーの微粒子を製造する技術へのニーズが高まっている。特にITO(錫ドープ酸化インジウム)を主成分とする導電性酸化物微粒子は、その高導電性である特徴を利用し、透明導電性膜への利用が盛んになっている。
この導電性酸化物微粒子を透明導電性皮膜とする方法としては、例えば、一次粒子径約0.2μm以下の導電性酸化物微粒子の粉末を、溶媒とバインダー樹脂とからなる溶液中に分散させ、これを、ガラス、プラスチック等の基材に塗布、印刷、浸漬、スピンコート或いは噴霧などの手段で塗工し、乾燥する方法があげられる。
こうして作製した透明導電膜は、ガラスやプラスチック等の帯電防止やほこりの付着防止に有効であり、例えば、ディスプレイや計測器の窓ガラスの帯電防止やほこりの付着防止に利用されている。
さらに、導電性酸化物微粒子は、ICパッケージ回路、クリーンルーム内装材、塗布型透明電極あるいは赤外線遮蔽材料などの用途に利用されはじめてきている。
【0003】
しかしながらITO微粒子は主原料のInが希少金属であり、高価なことから代替材料が求められている。その代表として酸化亜鉛は従来から検討されてきているが、微粒子としてはITOほどの高い導電性を得ることが困難であり代替できないでいる。
例えば特許文献1では、ZnOに導電性を付与する方法としてアルミニウム、ガリウムまたはインジウム元素を水溶性亜鉛塩と混合し、焼成する方法が記載されているが、600〜1000℃の高温で焼成するために、粒子径は1μm以上と、大きくなるという問題点がある。
一方、特許文献2では、酸化亜鉛、水溶性アルミニウム化合物、炭酸アンモニウム、さらには珪酸塩微粉末などの四種成分を水分散液から共沈させ、ろ過乾燥して600℃以下の温度で加熱処理する方法が示されている。この方法では0.1μmオーダーの微粒子が出来ると示されているものの、導電性は最高でも2.8×10-2S/cm(100kg/cm2加圧下)であり、ITO微粒子に比べて1桁以上低いというだけでなく、珪酸などの不純物が混入するという問題がある。またこの特許文献2では、水分散系で行うために脱水過程が必要であり、製造プロセスが煩雑になるという課題もある。
【0004】
【特許文献1】特公昭62−35970号公報
【特許文献2】特許第2583536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題点を改良するためになされたものであり、0.2μm以下のレベルの細かい粒子径と、高い導電性を併せ持つインジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子、該インジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散させてなる分散液、該分散液を含む塗料、および該インジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
1.インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子であって、亜鉛(Zn)とインジウム(In)の金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45であり、該微粒子の平均粒子径が1〜200nmであり、かつ9.81MPaの加圧時の電気伝導度が0.05S/cm以上であることを特徴とする導電性酸化亜鉛微粒子。
2.前記導電性酸化亜鉛微粒子のゼータ電位が+20mV以上である上記1に記載の導電性酸化亜鉛微粒子。
3.さらに塩素、臭素及びヨウ素の少なくとも1種のハロゲン元素を、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、0.0001〜0.05原子数(ハロゲン元素として)含有してなる上記1または2に記載の導電性酸化亜鉛微粒子。
4.上記1〜3のいずれかに記載の導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒中に分散させてなる分散液。
5.上記4に記載の分散液を含有することを特徴とする塗料。
6.酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末とが、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45の割合で含まれるインジウムを含有する酸化亜鉛微粒子粉末に、さらに亜鉛とインジウムとの金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン化物をハロゲン元素として0.001〜0.05原子数となるように添加した後、不活性ガス、および必要により水素ガス存在下に200〜600℃未満にて加熱することを特徴とする導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法。
7.ハロゲン化物が、臭化アンモニウムまたは塩化アンモニウムである請求項6に記載の導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、0.2μm以下のレベルの細かい粒子径と、高い導電性を併せ持つインジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子、該インジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散させてなる分散液、該分散液を含む塗料、および該インジウム含有導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子であって、亜鉛(Zn)とインジウム(In)の金属成分の合計(Zn+In)原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45、好ましくは0.01〜0.45であり、該微粒子の平均粒子径が1〜200nm、好ましくは、凝集の防止及び生産性の観点から、10〜200nmであり、かつ9.81MPa(100kg/cm2)の加圧時の電気伝導度が0.05S/cm以上である導電性酸化亜鉛微粒子であることが肝要である。
インジウム元素を添加することにより、導電性を向上させるのみならず、粒成長を抑制する効果があり、超微粒子とすることが容易になる。
また、本発明は、さらに塩素、臭素及びヨウ素の少なくとも1種のハロゲン元素を、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン元素として0.0001〜0.05原子数、好ましくは0.001〜0.03原子数、より好ましくは0.002〜0.02原子数含有してなる導電性酸化亜鉛微粒子である。
このようなハロゲン元素を添加することにより、インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子の電気伝導度が改善されるので好ましい。
これらの金属亜鉛や金属イリジウムの原子数、およびハロゲン原子数は、蛍光X線分析などの公知の手段を用いて計測することができる。
【0009】
本発明の導電性酸化亜鉛微粒子は以下の特性を有する。
1)該微粒子の平均粒子径が1〜200nmである。
この導電性微粒子を含有するペーストや分散液として用いる観点から、平均粒子径が前記範囲内とすることが好ましく、凝集の防止や生産性の観点から10〜200nmがさらに好ましい
2)該微粒子の9.81MPaの加圧時の電気伝導度が0.05S/cm以上である。
微粒子の電気伝導度は高いほうが好ましいが、前記条件下で0.05S/cm以上であれば、導電性微粒子としての機能が発現する。
3)該導電性酸化亜鉛微粒子のゼータ電位が+20mV以上である。
ゼータ電位は、導電性微粒子の分散性の指標となるものであり、前記範囲とすることにより、導電性微粒子を分散性が良く、凝集しにくい粒子とすることができる。なお、ゼータ電位の上限は、特に制限がないが、通常+50mV程度で十分である。
【0010】
次に、上記特性を有する前記インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散させてなる分散液について説明する。
ここで使用することができる溶媒としては、前記微粒子を分散させることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、水や有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
さらに、必要に応じて、スルホン酸アミド系、ε−カプトラクトン系、ハイドロステアリン酸系、ポリカルボン酸系、ポリエステル系などの分散剤を使用することも可能である。
前記溶媒に、インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子と、必要に応じて添加する分散剤を所定量となるように添加し、十分に混合させることにより、分散液が製造される。
【0011】
こうして得られた分散液は、そのまま塗料として使用することができる。また、必要に応じて、さらに塗膜形成成分として、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂などを加えた分散液を塗料として用いることもできる。
【0012】
続いて、このようなインジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法について、説明する。
本発明の製造方法は、酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末とが、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45の割合で含まれるインジウムを含有する酸化亜鉛微粒子粉末に、さらに亜鉛とインジウムとの金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン化物をハロゲン元素として、0.001〜0.05原子数となるように添加した後、不活性ガス、および必要により水素ガス存在下に200〜600℃未満にて加熱するものである。
上記において、ハロゲン化物の添加量は、該粉末中の亜鉛とインジウムとの金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン元素として、好ましくは0.001〜0.03原子数、より好ましくは0.002〜0.02原子数とする。
【0013】
酸化亜鉛微粒子粉末は、純度99.0%以上、また、その平均粒子径は1〜100nmのものが好ましい。
一方、インジウム化合物微粒子粉末としては、酸化インジウム、硝酸インジウム、酢酸インジウム、塩化インジウムなどが例示され、その純度は99.0%以上、平均粒子径は1〜100nmのものが好ましい。
また、ハロゲン化物の具体例としては、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウムおよびヨウ化アンモニウムが挙げられるが、取り扱いの容易さ、および価格の点で臭化アンモニウムまたは塩化アンモニウムが好ましい。
なお、原料を混合粉砕する際には、凝集を防ぎ、より微粒子化できるという理由で、炭酸アンモニウムなどを併用することが好ましい。
【0014】
本発明においては、このような酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末、およびハロゲン化物とを、上記の特定の比となるように混合後、さらに遊星ボールミルなどの適当な混合・破砕手段により、十分混合することにより、インジウムを含有する酸化亜鉛微粒子粉末を得ることができる。
これら、酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末の混合は、前記インジウムを含有する酸化亜鉛粉末中の金属粒子の平均粒子径が1〜100nmとなるまでを目処とする。
亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001未満では、所望の導電性と平均粒子径が得られない可能性が生じると言う理由で、また、前記比が0.45を超えると、インジウムの使用量を削減すると言う目標が達せられなくなると言う理由で、それぞれ好ましくない。
ハロゲン化物は水溶液の形で添加すればよい。
ハロゲン化物の添加量が、該粉末中の亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン元素として0.001原子数未満となると、電気伝導度の改善に寄与しなくなると言う理由で、また、前記比が0.05原子数を超えると、逆に電気伝導度がむしろ低下してくるので、それぞれ好ましくない。
【0015】
次に、こうして得られた前記インジウムを含有する酸化亜鉛粉末を窒素ガスなどの不活性ガス、および必要により水素ガスの存在下で加熱する。
加熱処理手段は、通常の電気炉やマイクロ波加熱炉などを用いて行うことができる。
加熱処理における加熱温度、加熱時間は、特に限定されないが、加熱温度としては、原料の種類にもよるが、通常、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上とする。
この加熱温度が高すぎると、ハロゲン元素を加えた場合には、加熱によりハロゲン元素の脱離が生じるだけでなく、粒成長が著しくなる場合があるので、加熱温度は、600℃未満にすることが好ましく、特に、500℃以下が好ましい。
加熱時間としては、例えば、1〜120分、好ましくは、5〜90分、より好ましくは10〜60分である。
加熱時間が長くなると、微粒子が成長する傾向にあるが、加熱温度の影響ほどは微粒子が成長に影響しないようである。
加熱雰囲気としては、上記の通り、不活性ガスの存在下で行うが、この際、さらに水素ガスを添加することにより、反応が促進され、かつ、より高い電気伝導度の導電性微粒子が得られるので好ましい。
水素ガスの添加量は全体のガスに対して、0.5〜5体積%程度とする。
この水素ガスの添加量が0.5体積%未満となると、反応の促進効果や導電性微粒子の電気伝導度の改善がみられなくなると言う理由で、また、5体積%を超えると、安全上の問題(水素漏洩による爆発の危険性)があると言う理由で、それぞれ好ましくない。
なお、より高い導電性を得るためには、低酸素雰囲気が好ましく、低酸素雰囲気における酸素濃度は1体積%以下、好ましくは0.1体積%以下とする。
こうして加熱後、急冷すると、本発明のイリジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子が得られる。
【0016】
以上のように、本発明によれば、酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末、およびハロゲン化物を混合し、加熱処理するという簡便な方法で、導電性酸化亜鉛微粒子を製造することができる。この導電性酸化亜鉛微粒子は、導電性を損なうことなく、ケトン、アルコールなどの溶媒に対する分散性が良好で、かつ安価であり、塗料や機能性材料の添加剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例と比較例を掲げて、さらに本発明を説明する。
なお、本実施例と比較例で用いた物性の測定方法は次のとおりである。
(1)原子数の比:
導電性微粒子の原子数の比[In/(Zn+In)]は、蛍光X線(型式:ZSX101e、(株)リガク製)により求めた。
(2)ハロゲン含有量:
導電性微粒子におけるハロゲン含有量は、蛍光X線(同上)により求めた。
(3)平均粒子径:
導電性微粒子の平均粒子径は、BET法(一点法)による比表面積(m2/g)から測定した。
(4)ゼータ電位:
ゼータ電位は、試料0.02gを入れたサンプル瓶に、10cm3のイオン交換水を入れ、10分間超音波洗浄機にて分散させた後、シメックス(株)製ゼータサイザーナノシリーズを用いて測定した。
(5)電気伝導度:
導電性微粒子の電気伝導度は、粉体抵抗システム((株)ダイアインスツルメント製)を用い、加圧しながら測定し、圧力―電気伝導度のグラフから9.81MPaにおける電気伝導度を測定した。
【0018】
実施例1
まず、原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)98.306gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)1.694gを秤量し、これをメノウ乳鉢に入れた。
次に、臭化アンモニウム1.5gと炭酸アンモニウム2gを溶解させた水溶液20gを前記メノウ乳鉢に添加して、原料粉末を混合した。
その後、さらに遊星ボールミルで6時間、混合・粉砕を行い、インジウムを含有する酸化亜鉛微粒子粉末からなる混合粉体を得た。
次に、得られた混合粉体を90℃で3時間乾燥させ、乾燥後、この混合粉体をアルミナボートに入れ、このアルミナボートを管状炉の中に挿入し、処理雰囲気として、水素含有窒素ガスとするために、水素2体積%を混合した窒素ガスを0.5リットル/分の流量で流した(酸素含有量0体積%)。そして、加熱温度を400℃、加熱時間を30分とするために、室温から400℃まで約20分間かけて昇温し、400℃で30分間保持し、その後加熱を止め、アルミナボートを取り出して急冷し、白色の粉体を得た。
【0019】
〔原子数の比〕
この白色の粉体についての原子数の比[In/(Zn+In)]を上記方法で求めたところ、0.01であった。
〔ハロゲン含有比〕
この白色の粉体のハロゲン含有比を上記方法で測定したところ、ZnとInの合計の原子数1に対して0.0045であった。
〔平均粒子径〕
この白色の粉体の平均粒子径を上記方法で求めたところ、69nmであった。
〔ゼータ電位〕
この白色の粉体のゼータ電位を上記方法で求めたところ、+38mVとプラスの大きな値であった。
〔電気伝導度〕
この白色の粉体の9.81MPaの加圧時の電気伝導度は、8.5×10-1S/cmであり、電気伝導性が良好であった。
【0020】
実施例2
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)96.636gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)3.364gとした以外は、実施例1と同様の条件で実施し、白色の粉体を得た。
また、この白色の粉体の原子数の比[In/(Zn+In)]、ハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、良好な電気伝導度と分散性を有することがわかった。
【0021】
実施例3
ハロゲン化物として塩化アンモニウムを0.8gとした以外は、実施例2と同じ条件で実施し、白色の粉体を得た。
この白色の粉体の原子数の比[In/(Zn+In)]、ハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、良好な電気伝導度と分散性を有することがわかった
【0022】
実施例4
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)84.068gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)15.932gとした以外は、実施例1と同様の条件で実施し、白色の粉体を得た。
この白色の粉体の原子数の比[In/(Zn+In)]、ハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、良好な電気伝導度と分散性を有することがわかった。
【0023】
実施例5
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)70.107gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)29.893gとした以外は、実施例1と同様の条件で実施し、白色の粉体を得た。
この白色の粉体の原子数の比[In/(Zn+In)]、ハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、良好な電気伝導度と分散性を有することがわかった
【0024】
実施例6
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)46.793gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)53.207gとした以外は、実施例1と同様の条件で実施し、薄灰白色の粉体を得た。
この薄灰白色の粉体の原子数の比[In/(Zn+In)]、ハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この薄灰白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、良好な電気伝導度と分散性を有することがわかった
【0025】
比較例1
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)のみ100g添加し、加熱温度を650℃とした以外は、実施例1と同じ条件で実施し白色の粉体を得た。
この白色の粉体の平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、電気伝導度は2.6×10-7S/cmと非常に低く、かつ粒子径も350nmと、大きくなっていた。
【0026】
比較例2
加熱温度を400℃とした以外は、比較例1と同じ条件で実施し、白色の粉体を得た。
この褐色の粉体の平均粒子径、ゼータ電位、電気伝導度を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、電気伝導度は測定限界(約1.0×10-8S/cm)以下と非常に低く、かつ粒子径も実施例に比較して、大きくなっていた。
【0027】
比較例3
ハロゲン化アンモニウム塩を添加しなかった以外は、実施例2と同じ条件で実施し、白色の粉体を得た。
この白色の粉体のハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、電気伝導度(6.2×10-4S/cm)が低いことが明らかになった。
【0028】
比較例4
原料の純度99.8%の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製、第一種、比表面積30m2)36.961gおよび純度99.9%の酸化インジウム粉末(新興化学株式会社製、比表面積30m2)63.039gとした以外は、実施例1と同様の条件で実施し、薄灰白色の粉体を得た。
この薄灰白色の粉体のハロゲン含有比、平均粒子径、電気伝導度およびゼータ電位を同様に測定した結果を表1に示す。
その結果、この白色の粉体である導電性酸化亜鉛微粒子は、Inが多量(0.56)含まれるにもかかわらず、得られる電気伝導度((2.1×10-1S/cm)は実施例と比較して、1/4程度にしかならず、効率が悪くなることが明らかになった。
【0029】
【表1】

*1:Zn+Inの原子数1に対する比率
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の、分散性の改良された、インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子導電性微粒子は、ケトンやアルコールなどの溶媒に対する分散性に優れているため、導電性塗料、熱線反射塗料などの塗料、着色、帯電防止、静電気防止、電磁シールドなどの機能性材料の添加剤などとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウムを含有する導電性酸化亜鉛微粒子であって、亜鉛(Zn)とインジウム(In)の金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45であり、該微粒子の平均粒子径が1〜200nmであり、かつ9.81MPaの加圧時の電気伝導度が0.05S/cm以上であることを特徴とする導電性酸化亜鉛微粒子。
【請求項2】
前記導電性酸化亜鉛微粒子のゼータ電位が+20mV以上である請求項1に記載の導電性酸化亜鉛微粒子。
【請求項3】
さらにフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の少なくとも1種のハロゲン元素を、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、0.0001〜0.05原子数(ハロゲン元素として)含有してなる請求項1または2に記載の導電性酸化亜鉛微粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性酸化亜鉛微粒子を溶媒中に分散させてなる分散液。
【請求項5】
請求項4に記載の分散液を含有することを特徴とする塗料。
【請求項6】
酸化亜鉛微粒子粉末とインジウム化合物微粒子粉末とが、亜鉛(Zn)とインジウム(In)との金属成分の合計原子数に対するインジウムの原子数の比[In/(Zn+In)]が0.001〜0.45の割合で含まれるインジウムを含有する酸化亜鉛微粒子粉末に、さらに亜鉛とインジウムとの金属成分の合計(Zn+In)原子数1に対して、ハロゲン化物をハロゲン元素として0.001〜0.05原子数となるように添加した後、不活性ガス、および必要により水素ガス存在下に200〜600℃未満にて加熱することを特徴とする導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法。
【請求項7】
ハロゲン化物が、臭化アンモニウムまたは塩化アンモニウムである請求項6に記載の導電性酸化亜鉛微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−135227(P2010−135227A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311340(P2008−311340)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】