Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
導電性金属塗料及び導電性金属塗料による防食方法並びに防食補修方法
説明

導電性金属塗料及び導電性金属塗料による防食方法並びに防食補修方法

【課題】設備の制限や取扱の煩雑さがなく、かつ防食作用を長期間にわたり維持できる、汎用性の高い導電性金属塗料を提供する。
【解決手段】
鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含む導電性金属塗料であって、前記金属成分には、アルミニウムとマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である、ことを特徴とする導電性金属塗料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境下に置かれる建築構造物、又は土木構造物等に用いられる鋼材用の防食塗料及びこの防食塗料を使用した防食方法並びに防食補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より建築構造物や土木構造物に用いられる耐久性を有する防食方法として、鉄素地との電位差を利用し犠牲陽極反応を生じさせ防食する溶融亜鉛めっき、無機系亜鉛塗料(例えば特許文献1)、有機系亜鉛塗料(例えば特許文献2)による塗装方法のほか、亜鉛を含む金属溶射法などが使用されている。
【0003】
溶融亜鉛めっきは、建築構造物においては外装部分特に屋根などに使用され、土木構造物においては鋼製橋梁の上部構造体(ボックス桁)や支承材、さらにガードレールや道路標識の支柱など広範囲に用いられている。
【0004】
しかしながら、広く防食のために使用されている溶融亜鉛めっきは、通常、工場内に設置されためっき槽の中へ浸漬する工程が取られるため、槽の大きさによって溶融亜鉛めっきを施す製品の大きさに制限が生じ、大きなものができないという欠点があった。さらに、溶融亜鉛めっき槽の温度は430℃〜510℃であるため、めっきされる製品(鋼材)に熱による変形が生じ、めっき後に製品の平坦性を確保するための矯正作業を必要とする場合があった。そして、その矯正作業ではめっき表面の割れや損傷にも気を配らなければならなかった。
【0005】
さらに、溶融亜鉛めっきは、一般的に使用される亜鉛地金に蒸留亜鉛を用いることが多いが、この蒸留亜鉛については、含有するカドミウムや鉛が亜鉛とともにめっき混入することが指摘され、近年ヨーロッパ諸国で広まりを見せるRoHS指令(Restricting the use Of Hazardous Substances)により、その使用については慎重に行う傾向がある。
【0006】
上記亜鉛を含む塗料の塗装のほか、たとえば特許文献3に示すように、鉄に対して犠牲陽極反応を示す金属材料である、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどを溶射し、それらからなる溶射金属皮膜を母材上に形成させる技術がある。この場合の溶射金属は母材である鉄に対し犠牲陽極反応を示せばよいため、使用する各金属が、単体、合金又は擬合金のいずれであっても良好に防食を行なうことができる。
【0007】
犠牲陽極反応を示す金属材料を溶射し防食する技術は、予めブラストやパワーツールにより表面処理した製品表面へ、溶射用のガンにより溶融させた金属を高温で吹き付けて付着させるだけで良いため、前出した溶融亜鉛めっきのように、製品の温度が高温になることもなく、母材の熱変形を好適に防止でき、あわせてめっき槽のサイズによって、施工する製品の大きさの制限を受けることもない。
【0008】
しかし、溶射技術であっても、溶射ガンを使用して溶射するアルミニウムやマグネシウムの溶融金属は、溶射表面と好ましくは直角に吹付けられることが必要であり、溶射ガンが入らないような狭隘部分や、溶射用に必要なガス類のボンベや電源を持ち込めないような施工現場での作業は困難であった。
【0009】
したがって、鉄の犠牲防食の汎用的な方法としては、亜鉛を犠牲防食成分として使用する方法が広く実施されてきたのである。しかし、亜鉛を使用するには前述のように、原料鉱に鉛、カドミウムが混在するため、精製等を行わなくてはならないという問題がある。さらに、亜鉛は犠牲陽極反応を鉄素地に対し早期に生じさせることができる点では好ましい材料と言えるが、反面、その溶出する速度が早いため、耐久時間が比較的短く、長期間安定して犠牲陽極反応を維持し防食を行うには、補修等の頻回なメンテナンスを要する、という問題もあった。そのため、亜鉛に匹敵するほどの十分な犠牲防食反応を示し、かつ、耐久性を保持できる、他の金属を使用した技術が要望されてきたのである。
【0010】
特許文献4には、エアゾル化させた犠牲防食性を有する金属又は合金の微粒子を鋼材表面に吹付けることで形成させた被覆膜の技術が開示され、犠牲防食性を有する金属又は合金として亜鉛、アルミニウム、マグネシウムのうちいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましいとしている。
【0011】
しかし、特許文献4はエアゾル化した金属又は合金の微粒子を防食表面へ吹付けて鋼材表面に衝突させて被覆膜を形成させる技術であり、エアゾル用に吹付用の設備(エアゾル化室、分級室、噴射ノズル、ガス発生室、成膜室、真空ポンプ)が必要であり、さらにはヘリウム、窒素などの不活性ガスも必要であり、やはり、現場施工で容易に被覆膜を形成できるものではなかった。
【0012】
なお、エポキシ樹脂100重量部に亜鉛粉末を100〜900重量部配合した粉体塗装(粉体焼付け塗装)用の組成物について特許文献5に開示がある。これは、あくまでも粉体焼付け塗料を提供するもので、これまた専用の設備が必要となり、簡易な塗装施工はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−359800号公報
【特許文献2】特開平7−133442号公報
【特許文献3】特開2005−126750号公報
【特許文献4】特開2007−146267号公報
【特許文献5】特開平11−158415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来技術の問題に鑑み、溶融亜鉛めっき槽等の設備の制限を受けず、溶融亜鉛めっき処理による高い温度の入熱による母材の変形を防止でき、亜鉛を使用量を減じて、従来技術と同等以上の犠牲陽極反応による母材の防食作用を生じさせ、工場施工はもとより現場施工においても大きな設備を必要とせず容易に塗布できる導電性金属塗料及び該導電性金属塗料による防食方法並びに防食補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
〔請求項1記載の発明〕
請求項1記載の発明は、鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含む導電性金属塗料であって、前記金属成分には、アルミニウム及びマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である、ことを特徴とする導電性金属塗料を提供する。
【0016】
(作用効果)
従来、犠牲防食作用を生じる金属としては、高い犠牲防食反応を示す亜鉛が広く使用されていたが、原料鉱に含まれる鉛、カドミウムによる環境汚染の問題、防食性能の耐久性の問題などがあった。本発明は、亜鉛の使用量を極力減じ、アルミニウムとマグネシウムの両者を使用することで、特許文献1又は特許文献2に開示される無機系、有機系の亜鉛塗料に匹敵する犠牲防食反応を示し、かつ防食性能の高い耐久性を示すことを知見し、これを利用した犠牲防食塗料を提供するものである。
【0017】
本発明は、金属成分と無機系バインダーとを主成分として含む導電性金属塗料を提供するものであり、前記金属成分中には、アルミニウムおよびマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合するものとする。金属成分に占めるアルミニウムおよびマグネシウムの量は、80重量%以上とすることがより好ましく、90重量%以上とすることがさらに好ましい。防食性能を有する金属として、アルミニウム及びマグネシウムを主成分とし、亜鉛を全く使用しないか、若しくは33重量%未満(より好ましくは20%重量未満、特に10%重量未満)の少量の使用とすることができる。
【0018】
図1に、アルミニウム、マグネシウムを無機系バインダーとともに塗布した鉄素地のクロスカット部分における犠牲防食反応の概略を模式的に示した。マグネシウム(Mg)の犠牲防食反応の反応速度は、亜鉛に匹敵するほど早いため、鉄素地よりも早期に溶出し(図1(a))、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の皮膜を形成して、鉄素地のカバーリングを行う(図1(b))。鉄素地自体も若干酸化溶出するものの、マグネシウム(Mg)皮膜が早期に形成され、鉄素地をカバーするため、鉄の溶出はわずかな量のみで食い止められる。アルミニウム(Al)は、マグネシウム(Mg)と比して反応速度は遅いものの、長時間鉄表面で保持される性質がある。溶出したアルミニウム(Al)は、酸化アルミニウム等の皮膜を形成し、鉄表面とそれを覆うマグネシウム(Mg)をさらに覆うようにして、比較的長期にわたってこれらを保護する(図1(c))。したがって、アルミニウム(Al)とマグネシウム(Mg)とを組み合わせて金属成分とすることで、高い犠牲防食能を有し、かつ耐久性を有する導電性金属塗料を得ることが可能となる。
【0019】
アルミニウムとマグネシウムの含有比率は、重量比で70:30〜5:95とする。さらに、前記含有比率は、35:65〜15:85、より好適には30:70〜15:85、さらに好適には30:70〜20:80とすることが望ましい。前述のように、マグネシウムは反応性が高く、早期に溶出するのに対して、アルミニウムは比較的安定性が高いため、マグネシウムをより多く配合することで、マグネシウムの高い防食作用を長時間維持することができる。加えて、アルミニウムの有する長期安定性をも発揮するために、アルミニウムの含有量は、金属成分中5重量%以上配合することが好ましい。
【0020】
本発明は犠牲防食方法として無機系バインダーからなる塗料を使用するものであり、従来使用されてきた、溶融亜鉛めっき、金属溶射と比較し、特殊な設備や機材を必要とせず、スプレー、刷毛、ローラー等での塗布が可能である。そのため、従来溶射を施すことが難しかった狭隘な部位においても防食処理が可能となる。
【0021】
無機系バインダーとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、エチルシリケート系樹脂、アルキルシリケート系樹脂等の公知のものをいずれも使用することができる。
【0022】
〔請求項2記載の発明〕
請求項2記載の発明は、前記金属成分と前記無機系バインダーの配合比率が、硬化時の重量比で80:20〜40:60である請求項1記載の発明を提供する。
【0023】
(作用効果)
金属成分と無機系バインダーの配合比率を上記の範囲とすることで、金属による犠牲防食反応を充分に奏しつつ、安定した被膜を形成することが可能となる。金属成分の配合比率が40重量%未満となると、防食性能が不十分となり、80重量%を超えると、無機系バインダーと混合し塗料として塗布することが物理的に困難となる。
【0024】
〔請求項3記載の発明〕
請求項3記載の発明は、前記金属成分として、アルミニウム粉とマグネシウム粉の混合粉、アルミニウム/マグネシウム合金粉、又は両方を塗料中に含む請求項1記載の導電性金属塗料を提供する。
【0025】
(作用効果)
本項記載の金属塗料は、前記金属成分として、アルミニウム、マグネシウムをそれぞれの粉体として(混合粉として)含有することも、アルミニウム/マグネシウム合金粉として含有することも、また前記混合粉と合金粉とを混合した状態で含有することもできる。しかし、アルミニウム、マグネシウムの個々の特性が出やすい、製造コストを抑えられる、という利点があることから、混合粉とすることがより好ましい。なお、混合粉は、予め混合してから無機系バインダーと混合してもよく、また、無機系バインダーに別々に添加した後に混合してもよい。
【0026】
アルミニウム粉、マグネシウム粉は粒径が小さいほど、無機系バインダー成分への分散性を良好にすることができ、金属成分が偏析していない均一の状態を作ることができる。また、金属の表面積が大きくなり、犠牲防食反応の反応性が高くなる。しかし、これらの金属粉、特にマグネシウム粉は引火性が高いため、金属粉の粒径をあまり小さくしすぎると、粉塵爆発の要因となり、製造工程上危険である。金属粉の粒度は、前記製造上の問題が生じない範囲で、75メッシュアンダー、好ましくは100メッシュアンダー、より好ましくは200メッシュアンダーとする。
【0027】
〔請求項4記載の発明〕
請求項4記載の発明は、前記金属成分中に亜鉛を0〜33重量%含む請求項1記載の導電性金属塗料を提供する。
【0028】
(作用効果)
亜鉛の環境への影響を限定的としつつ、その高い防食性能を発揮させるため、金属成分中に亜鉛を0〜33重量%含有させることが好ましい。亜鉛を含有させることにより、塗装膜の膜厚を厚くすることなく、高い防食性能を奏することができる。環境への影響を軽減するため、亜鉛の使用量は可能な限り減じるのが好ましいため、金属成分中の亜鉛の配合量は、0〜20重量%、特に0〜10重量%とすることがより好ましい。
【0029】
〔請求項5記載の発明〕
請求項5記載の発明は、前記金属成分中にチタンを0〜33重量%含む請求項1記載の導電性金属塗料を提供する。
【0030】
(作用効果)
金属成分として、アルミニウム及びマグネシウムのみでなく、チタンを配合することにより、塗装膜の膜厚を厚くすることなく、高い防食性能を奏することができる。チタンは高価であるため、大量の使用に適するものではないが、少量の使用により、亜鉛を使用することなく、防食性能を向上させることが可能となる。金属成分中のチタンの配合量は、0〜20重量%、特に0〜10重量%とすることがより好ましい。
【0031】
〔請求項6記載の発明〕
前記無機系バインダーが、アルキルシリケートを主成分とする無機系バインダーである請求項1記載の導電性金属塗料を提供する。
【0032】
(作用効果)
本願発明の導電性金属塗料において、無機系バインダーとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物及および有機ジルコニウム化合物等の公知のものをいずれも使用可能であるが、特に、アルキルシリケートを主成分とする無機系バインダーとすることが、金属粒子と混合した後の結合性、被膜性等に優れるため好ましい。
【0033】
〔請求項7記載の発明〕
請求項7記載の発明は、鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含み、前記金属成分としてアルミニウムとマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である導電性金属塗料を、鉄からなる建築構造物又は土木構造物に塗布することを特徴とする導電性金属塗料による防食方法を提供する。
【0034】
(作用効果)
アルミニウム及びマグネシウムを犠牲防食金属として使用する導電性金属塗料を塗布する防食方法を用いることで、従来溶融亜鉛めっきが不可能であった、巨大な固定建造物などに対しても直接防食処理を施すことができる。また、従来金属溶射が困難であった、狭小な部位や、橋梁等の高所の現場作業においても、容易に防食処理を施すことが可能となった。
【0035】
〔請求項8記載の発明〕
請求項8記載の発明は、鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含み、前記金属成分としてアルミニウムとマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である導電性金属塗料を、既存の建築構造物又は土木構造物の防食処理の施された表面に塗布することを特徴とする導電性金属塗料による防食補修方法を提供する。
【0036】
(作用効果)
アルミニウム及びマグネシウムを犠牲防食金属として使用する導電性金属塗料を塗布する方法を用いることで、固定された建造物などで、すでに防食処理が施された部位について、容易に補修作業を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明による導電性金属塗料によれば、犠牲防食作用を容易に生じさせることができ、亜鉛による犠牲陽極反応を利用した防錆仕様に比較して、同等以上の防食効果と、高い耐久性を得ることができると共に、狭小な部位にも施工することができ、特別大掛かりな工程や設備を用いることなく構造物の防食処理が実施でき、さらには橋梁等の高所の現場作業においても容易に施工することも可能となる。
【0038】
さらに、本発明による導電性金属塗料の実際の施工に当たっては、スプレーによる塗布、刷毛による塗布、ローラーによる塗布又はコテ作業等の塗装方法を選択し、使用形態にあわせ適宜無機バインダーの溶剤配合比率を選択することが可能である。また、塗料の流動性を調整することができるため、防食する部位に割れがあった場合、その割れに充填するパテとしての機能を発揮させることができ、広範囲の防食ツールとして用いることができる。
【0039】
加えて、本発明による導電性金属塗料は亜鉛を全く使用しないか、若しくは使用する亜鉛の量を減じており、環境へ与える影響を従来技術と比して極めて低く抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】アルミニウム、マグネシウム含有塗量が鉄素地を保護する機構を示した模式図である。
【図2】複合サイクル試験の評価時間168時間の結果を示す写真である。対応関係は次のとおりである。(a)実施例1(b)実施例2、(c)実施例3、(d)実施例4、(e)比較例1。
【図3】複合サイクル試験の評価時間360時間の結果を示す写真である。対応関係は次のとおりである。(a)実施例1(b)実施例2、(c)実施例3、(d)実施例4、(e)比較例1。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含む導電性金属塗料である。この塗料は、裸の鋼材、鋼板のほか、メッキや各種塗膜が形成された鋼板又は鋼材に対して、その防食用として使用することもでき、裸の鋼材又は鋼板に施されたプライマー被膜の上に、本発明の導電性金属塗料の被膜を形成することもできる。さらに、防食補修を目的とする場合、本発明の導電性金属塗料を塗布する対象面の塗料成分に限定はない。
【0042】
本発明においては、金属成分として、アルミニウム及びマグネシウムを併せて67重量%以上配合したものを使用する。また、アルミニウムとマグネシウムの配合比が重量比で70:30〜5:95となるようにする。これらは混合粉でもよいし、アルミニウム/マグネシウム合金粉として含有することも、また前記混合粉と合金粉とを混合した状態で含有することもできることは既述のとおりである。
【0043】
本発明の導電性金属塗料は、鉄に対して犠牲陽極反応を示すアルミニウム、マグネシウムを含む金属成分と無機系バインダーとを主成分として含むことを規定するが、必要に応じて他の金属成分を、全金属成分中に33重量%未満(より好ましくは20重量%未満、特に10重量%未満)含むことについては、それを妨げるものではない。他の金属成分としては、亜鉛、チタン等を配合してもよく、またその他の鉄より卑なる金属の配合を妨げない。
【0044】
本発明における無機系バインダーとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物及および有機ジルコニウム化合物等の公知のものをいずれも使用可能である。本願発明においては、特に、アルキルシリケートを主成分とした、エチルシリケート系、アルキルシリケート樹脂系の無機バインダーが、結合性、被膜性に優れ、無機系塗料としては比較的厚膜での塗布が可能となるため、好適に使用できる。これらは、通常、溶剤としてのアルコール、特にメタノール、エタノール等と混合された状態で使用される。その溶剤量を調整することにより、粘度の調整が容易であり、適宜塗布形式に合わせた粘度とすることが可能である。
【0045】
本発明の前記金属成分と前記無機系バインダーの硬化時の配合比率としては、重量比で80:20〜40:60とすることが望ましい。
【0046】
本発明に係る導電性金属塗料の形成する被膜の膜厚は、50〜200μm程度とすることが好ましい。マグネシウム粉末は、その引火性の高さにより、粒径を小さくすることができないため、膜厚を50μm未満とすることは実質的に不可能である。また、膜厚が薄すぎれば、早期に金属成分の多くが溶出してしまうため、頻回の補修を要する、という問題が生じ得る。一方、無機系バインダーは、金属粒子表面を封じ込めにくく、金属成分の犠牲陽極反応を早期に発揮させやすい、という利点があるものの、有機系樹脂バインダーと比して耐応力性が小さいため、膜厚を200μm以上と厚くすると、クラックや剥落、離脱を生じやすい、という問題がある。
【0047】
本発明の塗料には、従来より使用されている顔料を適宜配合することができる。このような顔料としては、例えば、着色顔料や、体質顔料等を挙げることができる。着色顔料としては、例えば、酸化チタンや、ベンガラ、酸化鉄、キナクリドン、カーボンブラック、アゾ化合物、ジオキサン、スレン、フタロシアニンの金属錯体、その他金属塩を主とする物が列挙できる。体質顔料としては、例えば、硫酸バリウムや、二酸化珪素、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、ウォラストナイト、酸化アルミニウム、アスベスト、セラミックパウダー等が列挙できる。また、ストロンチウムクロメート等の防錆顔料も使用可能である。その他の添加剤も配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、レベリング剤や、顔料分散剤、チクソトロピック性付与剤、表面張力低下剤などが使用できる。この種の顔料や添加剤は、硬化時の配合重量比率で、3%程度以下であれば配合できる。
【実施例】
【0048】
本発明に係る導電性塗料を製造し、従来技術と比較した防食性能試験を行った。表1に、実施例1〜4として、本発明に係る実施品の組成、条件を示した。併せて、比較例として、市販の無機系ジンクリッチ塗料(日本ペイント社製「ジンキー1000QC」)の検討条件を示した。
【0049】
実施例1〜4に用いたアルミニウムとマグネシウムは金属粉の状態で、ともに100メッシュアンダー品を使用した。また、実施例3において、亜鉛粉は約10μmの偏平状のものを使用し、実施例4において、チタン粉は45μmアンダー品の球状でない不定形状のものを使用した。無機系バインダーとしてはエチルシリケート40(成分:エチルポリシリケート、テトラエトキシシラン、溶剤:エタノール(コルコート株式会社))を使用した。前記アルミニウム粉、マグネシウム粉、亜鉛粉、チタン粉を表1に示す混合比率で混合することで金属成分を作成し、該金属成分と無機系バインダーとを硬化時の重量比率が75:25となるように混合した。
【0050】
【表1】

【0051】
前記手順で作成した各塗料を使用し、以下の手順により防食試験を行った。防食試験は、促進試験である複合サイクル試験法(JIS H 8502:1999)に準拠し、表2のサイクルを繰り返すことにより行った。塩水は、塩化ナトリウムを試験液1Lあたり50±5g/Lとなるように溶解し、pH6.5となるように調製したものを使用した。複合サイクル試験の評価時間は168時間(21サイクル)、360時間(45サイクル)とし、表面観察を行った。
【0052】
【表2】

【0053】
複合サイクル試験に用いる試験体の素地材料はSPCC鋼材(JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯)とし形状は70mm×150mm×板厚1.6mmとした。塗装面は研削材をグリットとしてブラスト処理(ISO Sa3.0の素地調整)し、Sm/Rz比を4.0以下にした。素地調整された板面へ刷毛塗りにより、実施例1〜4及び比較例1の塗料をそれぞれ塗布した。硬化時の膜厚は、実施例1,3,4及び比較例1については75μm±15μm、実施例2については150μm±30μmとした。
【0054】
なお、試験体のエッジ部分からキャス試験に用いる腐食液が進入するのを防止するため、試験体の裏面全面と腐食液暴露面のエッジ面から端幅5mmを絶縁材で養生した。絶縁材としては変性エポキシ樹脂プライマーを膜厚100μm以上で塗布した。
【0055】
各試験体腐食液暴露面には防食皮膜の欠損や傷による腐食進行状態を観察するため、JIS H 8502に記載されている方法により皮膜面にクロスカットを与え試験に供した。
【0056】
複合サイクル試験の評価は、目視にて錆、塗装のはがれ等の有無を判定することにより行った。判定基準は下記の通りである。
◎:錆がほとんど見られない。
○:クロスカット部の一部にのみ軽微な錆が見られる。又はクロスカット部とクロスカット部以外に渡り、全体的に非常に軽微な錆が見られる。
△:クロスカット部に軽微な錆が見られる、又はクロスカット部とクロスカット部以外に渡り、全体的に軽微な錆が見られる。
×:クロスカット部に著しい錆が見られる、又はクロスカット部とクロスカット部以外に渡り、全体的に著しい錆が見られる。
【0057】
168時間後の試験結果は、表1及び図2に示す通りである。実施例2〜4については、クロスカット部分の一部に軽微な錆が見られたものの、クロスカット部以外にはほとんど錆が見られず、比較例1と比して同等程度の良好な防食効果を示した。一方、実施例1は、クロスカット部の錆は極めて軽微であったものの、クロスカット部以外の部分に全体的に軽微な点状の錆が見られた。
【0058】
360時間後の試験結果は、表1及び図3に示す通りである。実施例1,2,4については、クロスカット部以外の部分に軽微な点状の錆が見られた。実施例3にも点状の錆は見られたが、実施例1,2,4と比して極めて軽微であった。比較例1については、点状の錆は見られなかったが、表面全体的に白錆が生じていた。
実施例1〜4のいずれもクロスカット部分の錆は非常に軽微なものであった。一方、比較例1においては、クロスカット部の錆は見られなかった。
【0059】
以上の結果について、発明者らは以下のように考察する。
実施例1の結果について、亜鉛、チタンを含まない無機系バインダーを使用したアルミニウムとマグネシウムからなる塗料において、検討当初は、亜鉛より卑なるマグネシウムが早期に溶出し鉄材表面を被覆することによって犠牲陽極反応が起こり、高い防食効果を奏することが期待された。実際に、クロスカット部分においては非常に軽微な錆が見られるのみであり、その防食効果の高さがうかがえる。しかし、製造上の安全性の問題により、マグネシウムの粒径を小さくすることができないため、鉄素地面の被膜は、マグネシウム金属粒子の存在しないポーラスな部分が無数に存在することとなる。そのため、クロスカット部分ではなく、塗布面に点状の錆が現れたものと考えられる。同一の塗料を膜厚を高めて塗布した実施例2においては、塗布面における錆の発生は実施例1と比して軽微なものであったが、これは金属粒子の積層によりポーラス部分が減じたためと考えられる。
【0060】
一方、より粒径を小さくすることが可能な亜鉛、チタンを少量配合した実施例3,4については、マグネシウムのポーラス部分を補う形で亜鉛、チタンが作用することにより、初期の防食反応がよりスムーズに進んだものと考えられる。
比較例1の無機系ジンクリッチ塗料については、亜鉛の犠牲陽極反応が極めて早く起こることから初期の防食反応は非常に良好に進んだものと考えられる。しかし、360時間の複合サイクル試験によって、その表面の全体に白錆を生じていた。白錆部分が多くなると、亜鉛の反応性が低下することはよく知られていることから、さらに長時間の試験を行うと、この高い防食性能が保てなくなることが予測される。
【0061】
以上の結果より、本願発明に係る無機系バインダーを使用した導電性金属塗料の使用においては、金属成分を実質的にアルミニウム及びマグネシウムのみとする場合には、膜厚を高くすることが好ましく、膜厚を下げる場合には、金属成分に少量の亜鉛、チタンを混合することが好ましいといえる。
しかし、上記のマグネシウムのポーラス部分に生じる点錆の問題は、導電性金属塗料塗装後の表面にアルキル無機複合樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂等を使用した封孔処理を施すことにより解決し得る問題である。亜鉛の塗装面に封孔処理を施した場合、時間経過とともに白錆とともに封孔処理の樹脂層がはがれやすい、という問題があり、他の金属と比して困難であることが知られていることから、亜鉛の配合量は少量であることが好ましいともいえ、また、点錆の問題は、安全性を確保しつつ、マグネシウム粉末の粒径を実機レベルで小さく加工することが可能になれば解決し得るものであることも明らかである。これらの点より、本願発明は、亜鉛、チタン等を含まず、かつ薄い膜厚で充分な防食効果を奏する、無機系バインダーを使用したアルミニウムとマグネシウムからなる導電性金属塗料を除外するものではない。
なお、亜鉛を含まない前記無機系導電性金属塗料については、RoHS指令による環境影響評価の対象とならないため、使用に際して特別の措置を必要とせず、管理の負担が少ない、という利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る導電性塗料は、腐食環境下に置かれる建築構造物又は土木構造物に用いられる鋼材用の防食塗料として利用可能であるとともに、車両、鋼材等の防食処理を必要とするすべての分野、対象物において、利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含む導電性金属塗料であって、前記金属成分には、アルミニウム及びマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である、ことを特徴とする導電性金属塗料。
【請求項2】
前記金属成分と前記無機系バインダーの配合比率が、硬化時の重量比で80:20〜40:60である請求項1記載の発明。
【請求項3】
前記金属成分として、アルミニウム粉とマグネシウム粉の混合粉、アルミニウム/マグネシウム合金粉、又は両方を塗料中に含む請求項1記載の導電性金属塗料。
【請求項4】
前記金属成分中に亜鉛を0〜33重量%含む請求項1記載の導電性金属塗料。
【請求項5】
前記金属成分中にチタンを0〜33重量%含む請求項1記載の導電性金属塗料。
【請求項6】
前記無機系バインダーが、アルキルシリケートを主成分とする無機系バインダーである請求項1記載の導電性金属塗料。
【請求項7】
鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含み、前記金属成分としてアルミニウムとマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である導電性金属塗料を、鉄からなる建築構造物又は土木構造物に塗布することを特徴とする導電性金属塗料による防食方法。
【請求項8】
鉄に対して犠牲防食作用を生じる金属成分と無機系バインダーとを主成分として含み、前記金属成分としてアルミニウムとマグネシウムが合わせて67重量%以上を占めるように配合され、かつ、アルミニウムとマグネシウムの含有比率が重量比で70:30〜5:95である導電性金属塗料を、既存の建築構造物又は土木構造物の防食処理の施された表面に塗布することを特徴とする導電性金属塗料による防食補修方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−87267(P2012−87267A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237475(P2010−237475)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】