説明

導電性高分子アクチュエータ素子の駆動方法

【課題】 発生力及び機械的強度が大きく、かつ大きな伸縮率あるいは応答速度を備えたCFSOをドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子の駆動方法を提供する。
【解決手段】
アクチュエータ素子の駆動方法であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールあって、
上記ポリピロールフィルムは熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムに駆動用電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールを含むアクチュエータ素子を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子アクチュエータ素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロールに代表される導電性高分子は、導電性を有するだけではなくイオンをドーパントとして取り込むことができ、電圧を印加することによりドーピングと脱ドーピングとを繰り返し行うことができる。そのため、導電性高分子は電気化学的な酸化還元により伸縮若しくは変形する現象である電解伸縮を発現することが可能である。この導電性高分子の電解伸縮は、アクチュエータ素子の駆動として使用できる。
【0003】
導電性高分子を用いたアクチュエータは、軽量であることから組み込まれる装置全体の重量を軽減することが可能であり、マイクロマシン等の小型の駆動装置のみならず、大型の駆動装置として用いられることが期待され、特に、人工筋肉、ロボットアーム、義手やアクチュエータ、ポンプ等の用途として応用が期待されている。特に、ポリピロールを用いたリニアアクチュエータは、電解伸縮によって、1酸化還元サイクル当たり最大で15.1%の伸縮率を示し、最大で22MPaの力を発生することができる(例えば、非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】 原進、外4名、「高伸縮かつ強力なポリピロールリニアアクチュエータ(Highly Stretchable and Powerful Polypyrrole Linear Actuators)」、ケミストリーレターズ(Chemistry Letters)、日本、日本化学会発行、2003年、第32巻、第7号、p576−577。
【0005】
一方、発生力の大きなトリフレート(CFSO−)をドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータを駆動させる電解質にはヘキサフルオロ燐酸イオン(PF−)やテトラフルオロ硼酸イオン(BF−)が用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、CFSO−をドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータは、最大発生力49MPaと大きいが、最大伸縮率12.8%、−0.7V vs. Ag/Ag+を与えたときの2秒後の伸縮率約3%であり、大きな伸縮率あるいは応答速度を必要な用途には十分でない。一方、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)をドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータは最大伸縮率約30%、矩形波を与えたときの2秒後の伸縮率約10%と大きいが、最大発生力は数MPaで機械的強度も十分でない。
【0007】
本発明の課題は、発生力及び機械的強度が大きく、かつ大きな伸縮率あるいは応答速度を備えたCFSOをドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子の駆動方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
アクチュエータ素子の駆動方法であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムに駆動用電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる
アクチュエータ素子の駆動方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、発生力、機械的強度が大きいCFSOをドープしたポリピロールフィルムを、熱処理用溶液中で熱処理し、この熱処理された前記ポリピロールフィルムに駆動用電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる方法であるため、発生力及び機械的強度が大きく、かつ大きな伸縮率あるいは応答速度を持ったアクチュエータ駆動が与えられる。
【0010】
特に、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む水と有機溶媒との混合電解液中で熱処理後、同電解液中で駆動させることにより、大きな発生力と強靭な膜特性を維持しつつ、最大伸縮率約20%、矩形波を与えたときの2秒後の伸縮率約8%と伸縮率と応答速度を大幅に向上させることができる。
【0011】
因って、発生力の大きなCFSOをドープしたポリピロールフィルムを含むアクチュエータは、伸縮率と速度が向上し、応用範囲が一段と広がり実用化に大きく前進したことから、応用範囲が一段と広がり、たとえば人工筋肉やポンプなどへの実用化に大きく前進可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(熱処理用溶液、駆動用電解液)
本発明では、アクチュエータ素子の駆動の際に用いられる駆動用電解液と熱処理用溶液に用いられる電解液とは同じ電解液であることが好ましい。また熱処理用溶液に用いられる電解液をそのまま駆動用電解液として用いることができる。
【0013】
かかる電解液としては、前記アクチュエータ素子が電圧印可により駆動するための電解質を含み、該電解質を溶解するための溶媒を含む。前記動作電解質が、前記電解質を溶解する溶媒として、水と有機溶媒との混合溶媒を含むことにより、導電性高分子を含むアクチュエータ素子は、一定の電圧を与えた状態における時間に対する伸縮量(駆動速度)を測定した場合に、前記電解液中で大きな駆動速度を示すことができる。
【0014】
本発明における熱処理用溶液、駆動用電解液として用いられる電解液としては、次式で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドイオンを含む電解液が好ましい。
【化1】
(C(2n+1)SO 式(1)
(ここで、nは任意の整数。)
特に、この電解液には、中でも前記n=1であるビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む電解液が好ましい。
【0015】
前記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、前記ポリピロールフィルムを膨潤させる有機溶媒が好ましく、具体的には前記有機溶媒としてはアセトニトリル、プロピレンカーボネート及びγ−ブチロラクトンの群から選ばれる。アセトニトリルが特に好ましい。なおまた、この熱処理用溶液に含まれる溶媒としては、水と有機溶媒との混合溶媒であることが好ましい。
【0016】
前記混合溶媒における水と有機溶媒との混合比は、特に限定されるものではない。前記駆動用電解液の溶媒として水と有機溶媒との混合溶媒を用いた場合には、有機溶媒のみを用いた場合に比べて2倍以上の駆動速度の向上をすることができる。
【0017】
前記電解液は、導電性高分子や極性有機溶媒の種類により、前記混合比を特定することが難しい。極性有機溶媒の導電性高分子を膨潤させる能力等により、駆動速度を向上させるための極性有機溶媒の最小値は、該極性有機溶媒の種類に依存することになる。例えば、プロピレンカーボネートについては、特級試薬では水の含有量が0.005%であることから、水と極性有機溶媒との混合比を0.1:99.9とすることもできる。前記混合溶媒における水と極性有機溶媒との好適な混合比の範囲は、容量比で、水含有比下限が0.5、1.0、5.0、10又は20から選ばれる値から、水含有比下限上限が99.5、99.0、95.0、90.0、又は80.0から選ばれる範囲を、極性有機溶媒の種に応じて、選ぶことができる。なお、前記混合比は、ガスクロマトグラフィー法を用いた測定方法、特に水分含有率が少ない場合にはカールフェィッシャー法を用いた測定方法を用いることにより、駆動用電解液を分析することにより求めることができる。
【0018】
例えば、前記極性有機溶媒が、プロピレンカーボネートである場合には、水とプロピレンカーボネートとの混合比が、容量比で、25:75〜75:25であることが前記アクチュエータ素子において、導電性高分子への電圧印可による駆動速度がより速くなるので好ましい。前記混合溶媒は、前記極性有機溶媒が複数種用いられていてもよく、この場合には、前記混合比は、水の重量と全極性有機溶媒の合計重量との比で計算される。
【0019】
前記水は、特に限定されるものではないが、蒸留水若しくはイオン交換水であることが、金属イオンや塩化物イオン等による電解伸縮への阻害因子が含まれ難いために好ましい。
【0020】
(駆動条件)
本発明のアクチュエータ素子の駆動方法における駆動用電解液の温度は、特に限定されるものではないが、上記の導電性高分子をより速い速度で電解伸縮させるために、10〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃であることが好ましい。また、前記駆動用電解液中のアニオンの濃度も特に限定されるものではないが、0.1〜5.0mol/Lであることが大きな伸縮率が得られ、安定して駆動することができるために好ましい。
【0021】
本発明のアクチュエータ素子の駆動方法において、導電性高分子を含むアクチュエータ素子が前記駆動用電解液中に置かれ、前記駆動用電解液中に対極が設置されて、前記導電性高分子と前記対極とに電圧が印加されることにより、前記アクチュエータ素子が駆動する。前記電圧は特に限定されるものではない。前記アクチュエータ素子の伸縮運動のために印加電圧(V)の絶対値が0.2〜5.0である電圧を印加することが可能である。前記アクチュエータ素子の駆動速度(%/s)をより速くするために、前記アクチュエータ素子の伸縮運動のために印加電圧(V)の絶対値が0.5〜5.0であることが好ましい。なお、印加電圧は、導電性高分子の組成やアクチュエータ素子の用途に応じて、上限値を適宜することもできる。
【0022】
(アクチュエータ素子)
本発明のアクチュエータ素子は、電圧を印加することにより駆動用電解液中で、電解伸縮により駆動することができる前記ポリピロールフィルムを含むものであれば、特に限定されるものではない。
【0023】
この導電性高分子は、バルクとしての形状が特に限定されるものではなく、膜状体、筒状体、円柱状体、角柱状や六角柱状等の多角柱状体、円錐状体、板状体、直方体状体などの、特定の形状であればよい。前記導電性高分子が、特定の形状の有形物としてアクチュエータ素子の一部若しくは全体を構成することにより、導電性高分子への電圧印可による電解伸縮により前記導電性高分子が容易に駆動することができる。
【0024】
前記アクチュエータの形状としては、上記の形状以外にも使用状況に適した形状に形成することができる。また、本願発明のアクチュエータ素子の形状に保護部材等の部品を付加して所望の形状とすることができる。なお、前記アクチュエータ素子は、電解重合により作用電極上に得られた導電性高分子膜をそのまま用いても良く、積層等の成形を施して、所望の形状にしても良い。さらに、対極についても、柱状に限定されるものではなく、板状等の形状にすることができる。
【0025】
本発明によれば、
導電性高分子を含むアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが熱処理されている、アクチュエータ素子を提供することができる。
【0026】
前記CFSOがドープされたポリピロールフィルムが熱処理されることにより、表面がゴム状表面で構成されたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子が得られる。このゴム状表面で構成されるポリピロールフィルムが、次式で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、特にビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含んだ有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液中で、発生力及び機械的強度が大きく、かつ大きな伸縮率あるいは応答速度を備えたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子の駆動を実現することができる。
【化2】
(C(2n+1)SO 式(1)
(ここで、nは任意の整数。)
【0027】
従って、本発明は、熱処理され、表面がゴム状表面で構成されたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を提供する。
また本発明は、ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子であって、
上記ポリピロールフィルムが、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが、熱処理され、表面がゴム状表面で構成されている、
アクチュエータ素子を提供する。
【0028】
また本発明は前記ポリピロールフィルムが、熱処理用溶液中で熱処理されており、
上記熱処理用溶液が、次式で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドイオンを含む請求項14記載のアクチュエータ素子である。
(C(2+1)SO 式(1)
(ここで、nは任意の整数。)
【0029】
また本発明は、前記熱処理用溶液が、式(1)においてn=1であるビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンであるアクチュエータ素子であり、特にビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成されていることが好ましい。
【0030】
なお、好ましいアクチュエータ素子の駆動方法としては、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含み、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されており、
同じ電解液中で、この熱処理された前記ポリピロールフィルムに電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる
アクチュエータ素子の駆動方法である。
【0031】
なお、前記熱処理温度は室温〜100℃の範囲内、熱処理時間は10秒〜100時間の範囲内であることが好ましい。
【0032】
またより好ましい具体的としては、
導電性高分子を含むアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含み、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されている、アクチュエータ素子である。
【0033】
また、本発明の方法はポンプ又は人工筋肉に適用可能であり、具体的な態様としては、
アクチュエータ素子を駆動手段として含むポンプであって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含み、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムを含む上記電解液をポンプ内に組み込み、この電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させるポンプである。
【0034】
また、アクチュエータ素子を駆動手段として含む人工筋肉であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含み、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムを含む上記電解液を人工筋肉内に組み込み、この電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる人工筋肉である。
【0035】
ところで、熱処理前の前駆体としての前記フィルムを得るには、ピロール及び/またはピロール誘導体をモノマーとする電解重合法によりポリピロール層を作用電極上に形成し、前記ポリピロール層を剥離することによりポリピロールフィルムを得るポリピロールフィルムの製造方法であって、前記電解重合法がエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合若しくは官能基を含む有機化合物及び/又はハロゲン化炭化水素を溶媒として含む電解液を用い、前記電解液がトリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンを含み、前記作用電極が金属電極であることを特徴とするポリピロールフィルムの製造方法によってはじめて達成される。上記製造方法により得られたポリピロールフィルムは、定かではないが、重合度の大きなポリピロール分子鎖がからみ合い、緻密な膜を形成しているために優れた引張強度を有するものと考えられる。
【0036】
(ドーパント)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法において、電解重合法に用いられる電解液には、電解重合される有機化合物(ピロール及び/またはピロール誘導体)およびトリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンを含む。この電解液を用いて電解重合を行うことにより、たとえサブミクロンオーダーの薄い厚みのフィルムであっても、保形性を有しながら大きく変形し、機械的強度を有するポリピロールフィルムを得ることができる。上記電解重合により、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとしてポリピロールフィルムに取り込まれることになる。
【0037】
前記トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、電解液中に0.1〜30重量%含まれるのが好ましく、1〜15重量%含まれるのがより好ましい。
【0038】
トリフルオロメタンスルホン酸イオンは、化学式CFSOで表される化合物である。また、中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、ホウ素、リン、アンチモン及びヒ素等の中心原子に複数のフッ素原子が結合をした構造を有している。中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンとしては、特に限定されるものではないが、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、及びヘキサフルオロヒ酸イオン(AsF−)を例示することができる。なかでも、CFSO、BF及びPFが人体等に対する安全注を考慮すると好ましく、CFSO及びBF4−がより好ましい。また、CFSOに代表されるように、ドーパントが中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンであって、フルオロ基よりも大きい官能基が1以上中心原子と結合しているアニオンであることが好ましい。ドーパントが中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンであって、フルオロ基よりも大きい官能基が1以上中心原子と結合しているアニオンを用いることにより、本発明の製造方法により得られるポリピロールフィルムは、引張強度が優れ、しかも引張破断伸び率が良好であるので、膜面と水平に伸張させる方向に働く力に対して強く、ワレにくくなる。前記の中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンは、1種類のアニオンを用いても良く、複数種のアニオンを同時に用いても良く、さらには、トリフルオロメタンスルホン酸イオンと複数種の中心原子に対しフッ素原子を複数含むアニオンとを同時に用いても良い。
【0039】
(電解液の溶媒)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法において、電解重合法の電解液に含まれる溶媒は、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合あるいは官能基を含む有機化合物及び/またはハロゲン化炭化水素を電解液の溶媒として含む。これらの溶媒を2種以上併用することもできる。電解重合時の電解液を用いて電解重合を行うことにより、上記ドーパントとの相乗効果により、良好な導電性と優れた機械的強度を有するポリピロールフィルムを得ることができる。また、前記有機化合物が有する結合若しくは官能基はエステル結合及び/またはヒドロキシル基官能基であることが、膜質が良好で、特に機械的強度の大きな膜を得ることができるために好ましい。
【0040】
前記有機化合物としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−t−ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、及びアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)を例示することができる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコール及び炭素数4以上の1価アルコールであることが、特に機械的強度が大きな膜を得ることができるために好ましい。なお、前記有機化合物は、前記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち、2つ以上の結合あるいは官能基を任意の組合わせで含む有機化合物であってもよい。それらは、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−フェノキシエタノールなどである。
【0041】
また、本発明のポリピロールフィルムの製造方法において電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンを挙げることができる。前記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを前記電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、前記ハロゲン化炭化水素は、上記の有機化合物との混合溶媒を前記電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0042】
(金属電極)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法は、電解重合時に導電性高分子の重合が行われる作用電極として金属電極を用いる。電解重合において金属電極を用いることにより、ITOガラス電極やネサガラス電極等の非金属製の材料を主とする電極を用いた場合に比べて、得られた導電性高分子の機械的強度が向上する。前記金属電極は、金属を主とする電極であれば特に限定されるものではなく、Pt、Ti、Ni、Ta、W、Au等の元素について、これらの金属単体の電極や合金の電極を用いることができる。生成したポリピロールフィルムの機械的強度が良好であり、且つ電極を容易に入手できることから、前記金属電極の金属がNi、Tiであることが特に好ましい。また、前記金属電極は、得られたポリピロールフィルムの引張破断伸び率が高いので、衝撃に強いフィルムを得ることができるので好ましい。
【0043】
(電解重合)
前記導電性高分子は、電解重合法にて、容易に得ることができる。前記導電性高分子は、電解重合法により得られた導電性高分子であって、前記電解重合に用いる電解液(導電性高分子製造用電解液)が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合あるいは官能基を含む有機化合物及び/またはハロゲン化炭化水素を溶媒として用いることが好ましい。前記の電解液中に、前記溶媒を含み、さらにトリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4−、PF6−、過塩素酸イオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことにより、得られた導電性高分子は、1酸化還元サイクル当たりにおいて大きな電解伸縮を示すことができる。
【0044】
前記有機化合物としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸−t−ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、及びアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)を例示することができる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコール及び炭素数4以上の1価アルコールであることが、伸縮率が良いために好ましい。なお、前記有機化合物は、前記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基及びニトリル基のうち、2つ以上の結合あるいは官能基を任意の組合わせで含む有機化合物であってもよい。
【0045】
また、前記導電性高分子製造用電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンを挙げることができる。前記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを前記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、前記ハロゲン化炭化水素は、上記の有機化合物との混合して用いてもよく、該有機溶媒との混合溶媒を前記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできる。
【0046】
(電解重合条件)
本発明の導電性高分子の製造方法において用いられる電解重合法は、導電性高分子単量体の電解重合として、公知の電解重合条件を用いることが可能であり、定電位法、定電流法及び電気掃引法のいずれをも用いることができる。例えは、前記電解重合は、電流密度0.01〜20mA/cm、反応温度−70〜80℃、好ましくは電流密度0.1〜2mA/cm、反応温度−30〜40℃の条件下で行うことができる。
【0047】
(導電性高分子モノマー)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法において、電解重合法に用いられる電解液に含まれるポリピロールのモノマーとしては、ピロール及び/またはピロール誘導体であって、電解重合による酸化により高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではない。前記ピロール誘導体としては、1−メチルピロール、3−メチルピロール、または1−フェニルピロールを用いることができる。また、前記モノマーは、電解重合が容易で、良好な膜質の高分子が得られることから、ピロールであることが好ましい。また、前記モノマーは2種以上併用することができる、
【0048】
(その他の添加剤)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法において、電解重合法に用いられる電解液に上記の所定の溶媒を含み、前記トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンを含む電解液中に導電性高分子のモノマーを含むものであり、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を含むこともできる。
【0049】
(ポリピロールフィルム)
本発明のポリピロールフィルムの製造方法において、ピロール及び/またはピロール誘導体をモノマーとして電解重合法によりポリピロール層を重合することで、作用電極上にポリピロールが形成される。この作用電極上に形成された膜状のポリピロールを作用電極から剥離することにより、ポリピロールフィルムを得ることができる。得られたポリピロールフィルムは、機械的強度が優れ、水分等による自動変形性を備えた樹脂フィルムとして用いることができる。
【0050】
電解重合法により作用電極上に形成された膜状のポリピロールを作用電極から剥離する方法としては、公知の方法により剥離することができ、例えば有機溶媒または水に浸漬し、必要に応じてピンセットなどを用いることにより剥離することができる。前記ポリピロールフィルムは、薄膜状であれば、その形状が特に限定されるものではない。前記ポリピロールフィルムを公知の方法を用いて、管状、筒状、角柱及び繊維状等の形状に形成してもよい。前記ポリピロールフィルムは、基材表面上に積層させて基材の変形性被覆層とすることもできる。
【0051】
前記ポリピロールフィルムは、膜厚が特に限定されるものではないが、空気中下で、その表面における水等の吸脱着による好適な変形性を得るためにその厚みが25μm以下、サブミクロンオーダーの厚みとして用いることが重要である。
【実施例】
【0052】
25mol/dmのピロール、0.2mol/dmのトリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム(TBACFSO)を含む安息香酸メチル溶液を電解液とし、チタン電極上に0.2mA/cmで7時間定電流電解重合して得られたポリピロールフィルムを1mol/dmのビス(トリフルオロメチルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)のアセトニトリル/水(1/1)混合溶液に浸漬して60℃で2時間熱処理してポリピロールフィルムのアクチュエータ膜を得た。この膜をLiTFSIのアセトニトリル/水(1/1)混合溶液を駆動電解液として−0.9V〜+0.7V vs. Ag/Ag+の電位範囲で2mV/sの掃引速度で電解伸縮して測定した最大伸縮率は20%であった。同ポリピロールフィルムのアクチュエータ膜を上記駆動電解液中で−0.7V vs. Ag/Ag+あるいは+0.7V vs. Ag/Ag+の一定電位を印加して収縮あるいは伸張させたときの2秒、5秒、10秒、30秒後の収縮率あるいは伸張率を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
[比較例]
上記と同様に電解重合して得られたポリピロールフィルムのアクチュエータ膜を、上記熱処理工程なしで、1mol/dm3のヘキサフルオロ燐酸ナトリウム(NaPF)水溶液を駆動電解液として同様にアクチュエータ性能を評価した。最大伸縮率は12.8%、−0.7V vs. Ag/Ag+あるいは+0.7V vs. Ag/Ag+の一定電位を印加して収縮あるいは伸張させたときの2秒、5秒、10秒、30秒後の収縮率あるいは伸張率は表に示した。
【0055】
表1より、本発明のポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子は、発生力及び機械的強度が共に大きい駆動力を与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、導電性高分子の電解伸縮を利用してアクチュエータ素子の駆動が適用可能なすべての分野に利用することができるが、特に人工筋肉、ロボットアーム、義手やアクチュエータ、ポンプ等の用途に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ素子の駆動方法であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムあって、
上記ポリピロールフィルムは熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムに駆動用電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる
アクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項2】
前記熱処理用溶液が、前記駆動用電解液と同じ電解液である請求項1記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項3】
前記熱処理用溶液が、次式で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドイオンを含む請求項1又は2記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
〔化1〕
(C(2n+1)SON− 式(1)
(ここで、nは任意の整数。)
【請求項4】
前記熱処理用溶液が、式(1)においてn=1であるビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンである請求項3記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項5】
前記熱処理用溶液に含まれる溶媒が、水と有機溶媒との混合溶媒である請求項1〜4のいずれかの項に記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、前記ポリピロールフィルムを膨潤させる有機溶媒である請求項5記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、アセトニトリル、プロピレンカーボネート及びγ−ブチロラクトンの群から選ばれる請求項6記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項8】
アクチュエータ素子の駆動方法であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、熱処理用溶液中で熱処理されており、
上記熱処理用溶液は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成されており、
同じ電解液中で、この熱処理された前記ポリピロールフィルムに電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる
アクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項9】
前記熱処理温度は室温〜100℃の範囲内、熱処理時間は10秒〜100時間の範囲内である請求項1〜8のいずれかの項に記載のアクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項10】
導電性高分子を含むアクチュエータ素子であって、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが熱処理されている、アクチュエータ素子。
【請求項11】
前記ポリピロールフィルムが、熱処理用溶液中で熱処理されており、
上記熱処理用溶液は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成されている、
請求項10記載のアクチュエータ素子。
【請求項12】
表面がゴム状表面で構成されたポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子。
【請求項13】
熱処理され、表面がゴム状表面で構成されたポリピロールフィルムを含む請求項12記載のアクチュエータ素子。
【請求項14】
ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子であって、
上記ポリピロールフィルムが、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが、熱処理され、表面がゴム状表面で構成されている、
請求項12又は13記載のアクチュエータ素子。
【請求項15】
前記ポリピロールフィルムが、熱処理用溶液中で熱処理されており、
上記熱処理用溶液が、次式で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドイオンを含む請求項14記載のアクチュエータ素子。
〔化2〕
(C(2n+1)SO 式(1)
(ここで、nは任意の整数。)
【請求項16】
前記熱処理用溶液が、式(1)においてn=1であるビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンである請求項15記載のアクチュエータ素子。
【請求項17】
前記熱処理用溶液は、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含む有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成されている請求項13〜16のいずれかの項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項18】
トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムが、熱処理され、表面がゴム状表面で構成されている、
ポリピロールフィルム。
【請求項19】
アクチュエータ素子を駆動手段として含むポンプであって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含んだ、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムを含む上記電解液をポンプ内に組み込み、この電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させるポンプ。
【請求項20】
アクチュエータ素子を駆動手段として含む人工筋肉であって、
前記アクチュエータ素子は導電性高分子を含み、
前記導電性高分子が、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及び/または中心原子に対してフッ素原子を複数含むアニオンがドーパントとして取り込まれたポリピロールフィルムであって、
上記ポリピロールフィルムは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオンを含んだ、有機溶媒及び水の混合溶媒を含む電解液から構成された熱処理用溶液中で熱処理されており、
この熱処理された前記ポリピロールフィルムを含む上記電解液を人工筋肉内に組み込み、この電解液中で電圧を印加することにより当該ポリピロールフィルムを含むアクチュエータ素子を駆動させる人工筋肉。

【公開番号】特開2006−274229(P2006−274229A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124179(P2005−124179)
【出願日】平成17年3月26日(2005.3.26)
【出願人】(302014860)イーメックス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】