説明

導電性高分子フィルムおよびその製造方法

【課題】低い駆動電圧により弾性率の変化を発現させうる材料を提供する。
【解決手段】導電性高分子50〜99質量%と、水分子を保持する機能を有する添加剤50〜1質量%と、を含む導電性高分子フィルムおよびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性高分子フィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳細には、低駆動電圧で弾性率変化を発現しうる導電性高分子フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、小型でかつ軽量でアクチュエータ動作を可能にする材料、およびそれを用いたクッションやシート等の装置の必要性が高まっている。従来の技術としては、以下のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1では、電気絶縁性高分子材料中に電気分極する微粒子を分散させた材料であり、電場を印加すると微粒子が電気分極し、弾性率が変化する材料が開示されている。
【0004】
特許文献2では、電場を印加することにより、組成物の貯蔵弾性率やその他の特性を調節する性能が得られる動的機械的特性を有するエレクトロレオロジー的ゲルが開示されている。
【特許文献1】特公平6−41350号公報
【特許文献2】特開平7−258412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の材料では、材料の弾性率の変化を発現させるために、数kVの高い電圧を必要とするという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、低い駆動電圧により弾性率の変化を発現させうる材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、導電性高分子と水分子を保持する能力を有する添加剤とを含むフィルムに対して、電圧および湿度の刺激を与えることにより、前記フィルムの弾性率が変化することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、導電性高分子50〜99質量%と、水分子を保持する機能を有する添加剤50〜1質量%とを含む導電性高分子フィルムである。
【0009】
また、本発明は、導電性高分子と添加剤とを溶媒に加え、攪拌および混合し混合物を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、導電性高分子フィルムを得る第2の工程と、を含むことを特徴とする導電性高分子フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低い駆動電圧により弾性率が変化しうる導電性高分子フィルムおよびその製造方法が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の第1は、導電性高分子50〜99質量%と、水分子を保持する機能を有する添加剤50〜1質量%とを含む導電性高分子フィルムである。
【0013】
本発明の導電性高分子フィルムは、水分子を保持する能力を有する添加剤を含む。ここで、本発明において、「水分子を保持する能力を有する添加剤」とは、親水性基を有する添加剤を意味し、さらに具体的には、25℃において、単位質量あたりの化合物の水を吸着する量(吸着能)が、導電性高分子よりも上回る化合物を意味する。
【0014】
前記吸着能は、例えば以下の方法で算出することができる。
【0015】
まず、導電性高分子のみからなるフィルムを作製し、相対湿度30%と相対湿度70%との環境に前記フィルムを放置し水を吸着させ、フィルムの質量をそれぞれ求める。得られた質量をグラフ上にプロットし、得られた直線を外挿し相対湿度0%での質量を求める。その質量は導電性高分子のみの質量を表すため、その質量を例えば相対湿度70%の環境下に放置したフィルムの質量から除けば、相対湿度70%において水が何g吸着されたかが分かる。そして、その水の量を導電性高分子の質量で割ると、導電性高分子の単位質量あたりの水の吸着量がわかる。
【0016】
次に、添加剤と導電性高分子との混合物からフィルムを作製し、上記と同様の方法により、得られたフィルム中の添加剤の質量と導電性高分子の質量とをそれぞれ求める。そして、例えば相対湿度70%の環境下に放置したフィルムの質量から、添加剤の質量と導電性高分子の質量とを除けば、相対湿度70%において水が何g吸着されたかが分かる。そして、その水の量を添加剤の質量で割ると、添加剤の単位質量あたりの水の吸着量がわかる。こうして得られた添加剤の単位質量あたりの水の吸着量と、上記で得られた導電性高分子の単位質量あたりの水の吸着量とを比較する。
【0017】
本発明の導電性高分子フィルムの弾性率が、外部刺激により変化するメカニズムは、H.Okuzaki et al.,Macromolecules,33,8307−8311(2000)に記載されているような、以下のメカニズムであると推測される。
【0018】
湿度の刺激を与え、かつ、電圧が印加されていない場合の本発明の導電性高分子フィルムは、その内部に水分子が保持されている状態である。フィルム中の水分子は可塑剤として働き、導電性高分子鎖の運動性を高めることで、フィルムの弾性率を低下させていると考えられる。このフィルムに電圧を加えると、導電性高分子内にジュール熱が発生する。発生したジュール熱により、フィルム中の水分子は吐き出される。その結果、弾性率が大きくなると考えられる。
【0019】
外部刺激による本発明の導電性高分子フィルムの弾性率の変化を発現させるために、相対湿度が好ましくは30〜90%RH、より好ましくは70〜90%RHの環境下に前記導電性高分子フィルムを、好ましくは10分〜1時間置き、水分子を吸着させる。前記外部刺激は、特に制限されず、光、磁場、電圧などが好ましく挙げられるが、本発明の導電性高分子フィルムが弾性率の変化を起こすためには、前記導電性高分子フィルム中の導電性高分子がジュール熱を発生させて、水分子が脱離することが必要である。このジュール熱を発生させるために、前記外部刺激は電圧であることがより好ましい。
【0020】
外部刺激が電圧である場合、水分子が吸着した本発明の導電性高分子フィルムは、好ましくは1〜10V、より好ましくは1〜5Vの電圧を印加することにより、弾性率が変化しうる。
【0021】
本発明の導電性高分子フィルムは、水分子を保持する機能を有する前記の添加剤を、1〜50質量%含む。添加剤の含有量を前記範囲に制御することにより、得られる導電性高分子フィルムがゲル状とならず体積の増大を抑制することができ、また、低い駆動電圧で、導電性高分子フィルムのより大きな弾性率の変化を発現させうる。
【0022】
以下、本発明の導電性高分子フィルムを構成する材料について説明する。
【0023】
[導電性高分子]
本発明で用いられる導電性高分子は、導電性を示す高分子であれば特に制限されず、具体的な例としては、ポリアセチレン、ポリメチルアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリフルオロアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレンなどのポリアセチレン系高分子;ポリパラフェニレンなどのポリフェニレン系高分子;ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチル−3−メチルピロール)、ポリ(N−エチル−3−ドデシルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)などのポリピロール系高分子;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェン系高分子;ポリフラン;ポリセレノフェン;ポリイソチアナフテン;ポリフェニレンスルフィド;ポリアニリン;ポリフェニレンビニレン;ポリチオフェンビニレン;ポリぺリナフタレン;ポリアントラセン;ポリナフタレン;ポリピレン;ポリアズレン;またはこれらの誘導体が好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、安定性、信頼性、または入手の容易さなどの観点から、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリンがより好ましい。
【0024】
本発明における導電性高分子の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。製造方法の具体的な例としては、例えば、化学重合法、電解重合法、可溶性前駆体法、マトリックス(鋳型)重合法、もしくはCVDなどの蒸着法、または水や有機溶媒に分散させた導電性高分子分散溶液を展延法(キャスト法)により製膜し、分散液を蒸発、乾燥させる方法などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる導電性高分子は、さらにドーパントを含んでいてもよい。ドーパントを前記導電性高分子に添加することにより、より高い導電性を発現させることができる。
【0026】
前記ドーパントの具体的な例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン;六フッ化ヒ酸イオン;硫酸イオン;硝酸イオン;チオシアン酸イオン;六フッ化ケイ酸イオン;燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオンなどの燐酸系イオン;トリフルオロ酢酸イオン;トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオンなどのアルキルベンゼンスルホン酸イオン;メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオンなどのアルキルスルホン酸イオン;または、ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオンなどの高分子イオンなどが好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、高い導電性を容易に調整でき、かつ、水分子を保持するために有用な親水骨格を有することから、ポリスチレンスルホン酸イオンがより好ましい。
【0027】
前記ドーパントの添加量は、前記導電性高分子に対して好ましくは3〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0028】
前記導電性高分子の形態は、特に制限されず、固状、液状、粉末状、粒状、または溶液状など、いずれの形態であってもよい。
【0029】
[添加剤]
本発明で用いられる添加剤は、アルコール化合物、フェノール化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物、およびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物、または界面活性剤である。前記有機化合物および前記界面活性剤は、親水性基を有することから、水分子を保持する機能を有し、上述のように導電性高分子フィルムに、より大きな弾性率変化をもたらすことができる。
【0030】
前記有機化合物および前記界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
以下、本発明で用いられる有機化合物および界面活性剤について説明する。
【0032】
<有機化合物>
前記添加剤として有機化合物を用いる場合、アルコール化合物、フェノール化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物、およびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物であることが好ましい。
【0033】
前記アルコール化合物の具体的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、またはジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,9−ノナンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、アダマンタンテトラオール、1,3−ジメチルアダマンタン−5,7−ジオール、キシリトール、ソルビトール、グルコース、スクロール、ポリエチレングリコール、またはポリビニルアルコールなどの多価アルコールが好ましく挙げられる。
【0034】
前記アルコール化合物を用いる場合、多価アルコールを用いることがより好ましい。前記多価アルコールは、親水性部分が多く存在するため、水分子を保持する能力が高いという特性を有し、また、沸点が高いため、本発明の導電性高分子フィルムの製膜の際に、導電性高分子中に残留しやすいという性質を有するためである。
【0035】
前記フェノール化合物の具体的な例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、メチルカテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、またはジヒドロキシジメチルナフタレンなどが好ましく挙げられる。
【0036】
前記アルデヒド化合物の具体的な例としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ピルビンアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ジフェニルアルデヒド、またはクロトンアルデヒドなどが好ましく挙げられる。
【0037】
前記ケトン化合物の具体的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、またはジアセトンアルコールなどが好ましく挙げられる。
【0038】
前記カルボン酸化合物の具体的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、酒石酸等の脂肪族オキシカルボン酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘキセンモノカルボン酸、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などの脂環式カルボン酸、安息香酸、トルイル酸、アニス酸、p−(tert−ブチル)安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メリット酸などの芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。また、カルボン酸無水物も好適に用いることができ、その具体的な例としては、上記のカルボン酸類の酸無水物が挙げられる。
【0039】
前記カルボン酸エステル化合物としては、上記のカルボン酸化合物のモノまたは多価エステルを使用することができ、その具体例としては、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、ピバリン酸プロピル、ピバリン酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、酒石酸ジイソブチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−第三級ブチル安息香酸エチル、p−アニス酸エチル、α−ナフトエ酸エチル、α−ナフトエ酸イソブチル、ケイ皮酸エチル、フタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、ナフタル酸ジエチル、ナフタル酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラメチル、ピロメリット酸テトラエチル、またはピロメリット酸テトラブチルなどが好ましく挙げられる。
【0040】
前記エーテル化合物の具体的な例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルエーテル、ジアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、またはプロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどが好ましく挙げられる。
【0041】
前記スルホン酸化合物の具体的な例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはp−トルエンスルホン酸などが好ましく挙げられる。
【0042】
前記アミン化合物の具体的な例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、または1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などが好ましく挙げられる。
【0043】
前記アミド化合物の具体的な例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジ−n−プロピルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド、N,N−ジメチルブタナミド、N,N−ジエチルブタナミド、N,N−ジ−n−プロピルブタナミド、N−アセチルピロジリン、N−プロピオニルピロリジン、N−ブチリルピロリジン、N−アセチルピペリジン、N−プロピオニルピペリジン、N−ブチリルピロリジン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素などが好ましく挙げられる。
【0044】
これら有機化合物の中でも、添加剤としてさらに好ましいものは、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルエチルケトン、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコールである。
【0045】
本発明の導電性高分子フィルム中の、前記有機化合物の含有量は1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量である。前記有機化合物の含有量が1質量%未満であると、導電性高分子フィルムの水分子を保持する能力が低下し、外部刺激を与えた場合のフィルムの弾性率変化が得られない場合がある。前記有機化合物の含有量が50質量%を超えると、得られるフィルムがゲル状となる場合があり、また、フィルムの導電性が低下する場合がある。
【0046】
<界面活性剤>
本発明の添加剤として用いられる界面活性剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記陽イオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、またはポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
【0048】
前記陰イオン性界面活性剤の例としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、またはナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが好ましく挙げられる。
【0049】
前記非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコール、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体などが好ましく挙げられる。
【0050】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0051】
前記両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類、または加水分解コラーゲン類などが好ましく挙げられる。
【0052】
これら界面活性剤の中でも、添加剤としてさらに好ましいものは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、およびドデシルベンゼンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0053】
本発明の導電性高分子フィルム中の、前記界面活性剤の含有量は1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。前記界面活性剤の含有量が1質量%未満であると、導電性高分子フィルムの水分子を保持する能力が低下し、外部刺激を与えた場合のフィルムの弾性率変化が得られない場合がある。前記界面活性剤の含有量が50質量%を超えると、得られるフィルムがゲル状となる場合があり、また、フィルムの導電性が低下する場合がある。
【0054】
本発明の導電性高分子フィルムの厚さは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。前記厚さが1μm未満の場合、フィルム強度が弱くなる場合があり、50μmを超えると、フィルム深部の水分子が脱離するまでの時間が余計にかかるため、導電性高分子フィルムの応答速度が遅くなる場合がある。
【0055】
また、本発明の導電性高分子フィルムは、その特性を損なわない範囲内で、顔料、着色剤などの無機粒子などの添加成分を含むことができる。
【0056】
本発明の第2は、導電性高分子フィルムの製造方法である。
【0057】
本発明による導電性高分子フィルムの製造方法は、導電性高分子および添加剤を溶媒に加え、攪拌・混合し混合物を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、導電性高分子フィルムを得る第2の工程を含む。
【0058】
以下、第1の工程および第2の工程を説明する。
【0059】
[第1の工程]
第1の工程は、導電性高分子と添加剤とを溶媒に加え、攪拌および混合し混合物を得る工程である。
【0060】
前記導電性高分子および前記添加剤は、上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0061】
前記溶媒は、前記導電性高分子および前記添加剤を溶解するものであれば特に制限はない。しかし、後述する第2の工程において溶媒のみを除去し、導電性高分子中の添加剤量の制御を容易にするという観点から、前記添加剤よりも低い沸点を有する溶媒を選択することが好ましい。
【0062】
このような溶媒の例としては、水、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、iso−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒;エチルエーテル、iso−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒などを挙げることができ、これらは単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0063】
なお、前記導電性高分子が溶液状である場合、導電性高分子溶液に添加剤を加えて攪拌・混合することにより混合物を得てもよい。
【0064】
攪拌する際の温度は、好ましくは10〜30℃であり、攪拌時間は、好ましくは5〜15分である。
【0065】
本発明の導電性高分子フィルム中に残留する添加剤の量と導電率とのバランスの観点から、本工程で得られる混合物中の導電性高分子の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0066】
また、本発明の導電性高分子フィルム中に残留する添加剤の量と導電率とのバランスの観点から、本工程で得られる混合物中の添加剤の含有量は、好ましくは95〜60質量%、より好ましくは95〜70質量%である。
【0067】
[第2の工程]
第2の工程は、前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、導電性高分子フィルムを得る工程である。
【0068】
混合物がキャストされる基材や容器は、特に制限されず、例えば、ガラス製やテフロン製のシャーレ、ガラス基板、シリコンウェハ、金属板などが挙げられる。
【0069】
混合物中の溶媒を乾燥する際用いられる装置も、特に制限されず、例えば、オーブン、ホットプレート、ドライヤーなどが挙げられる。
【0070】
溶媒を乾燥する温度は、導電性高分子の種類、溶媒の種類、添加剤の種類や残存させる添加剤の量によって適宜決定されうるが、一般的には、60℃を下限とし、前記溶媒の熱重量分析(TG:Thermogravimetric Analysis)により得られる、前記溶媒の重量減少の開始温度を上限とする範囲が好ましい。例えば、導電性高分子としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTとも称す)/ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSとも称す)を用い、溶媒として水を用いた場合、溶媒を乾燥する温度の範囲は、好ましくは70〜120℃である。
【0071】
溶媒を乾燥する時間は、導電性高分子の種類、溶媒の種類、添加剤の種類や残存させる添加剤の量によって適宜決定されうる。例えば、導電性高分子としてPEDOT/PSSを用い、溶媒として水を用いた場合、溶媒を乾燥する時間は、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは3〜12時間である。
【0072】
本発明の導電性高分子フィルムは、様々な用途に用いることができるが、好ましくは車両用部品として用いられ、例えば、吸音材、アクチュエータなどとして適用することができる。
【0073】
車両用部品以外の用途としては、コンデンサ、電池、各種センサ、発光素子などが挙げられる。
【実施例】
【0074】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記の実施例および比較例で作製した導電性高分子フィルム中に残存する添加剤の量を算出するために、以下の方法により、導電性高分子のみからなるフィルムの乾燥質量をあらかじめ算出した。
【0075】
<導電性高分子のみからなるフィルムの乾燥質量の算出>
PEDOT/PSS(下記化学式(1)参照)の1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)19gをテフロンシャーレに取り、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、フィルムを得た。このフィルムを「フィルムA」と称する。
【0076】
【化1】

【0077】
前記フィルムAを、温度25℃、湿度30%に維持した恒温恒湿槽(株式会社カトー製、型番:SE43CRA)に1.5時間放置し、放置後のフィルムの質量を測定した。
【0078】
別途、前記フィルムAを、温度25℃、湿度70%に維持した恒温恒湿槽(株式会社カトー製、型番:SE43CRA)中に1.5時間放置し、放置後のフィルムの質量を測定した。
【0079】
湿度30%の環境下で放置した後のフィルム質量および湿度70%の環境下で放置した後のフィルム質量をグラフにプロットした。得られた直線を外挿し、湿度0%での質量を、PEDOT/PSS 1.3質量%水溶液を19g採取した際に得られる導電性高分子フィルムの乾燥質量とした。
【0080】
(実施例1)
<導電性高分子フィルムの作製>
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を19gと、添加剤であるエチレングリコール(以下、EGとも称す)1.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.3039gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.0569gと算出された。
【0081】
(実施例2)
PEDOT/PSS水溶液を18gとし、EGを2.0gとしたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子フィルム0.3973gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.1633gであった。
【0082】
(比較例1)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、EGを4.0gとしたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子フィルム2.226gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は2.018gと算出された。
【0083】
(実施例3)
PEDOT/PSS水溶液を18g、EGを2.0g、オーブンの乾燥温度を100℃、およびオーブンでの乾燥時間を5時間としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子フィルム0.2602gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.0262gと算出された。
【0084】
(実施例4)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、EGを4.0gとしたこと以外は、実施例3と同様にして導電性高分子フィルム0.304gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.096gと算出された。
【0085】
(比較例2)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、EGを6.0gとしたこと以外は、実施例3と同様にして導電性高分子フィルム0.7184gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.5364gと算出された。
【0086】
(比較例3)
PEDOT/PSS水溶液を18g、EGを2.0g、オーブンの乾燥温度を150℃、およびオーブンでの乾燥時間を2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子フィルム0.2328gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0087】
(実施例5)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、EGを4.0gとしたこと以外は、比較例3と同様にして導電性高分子フィルム0.2263gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.0183gと算出された。
【0088】
(実施例6)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、EGを6.0gとしたこと以外は、比較例3と同様にして導電性高分子フィルム0.2585gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.0765gと算出された。
【0089】
(比較例4)
PEDOT/PSS水溶液を12gとし、EGを8.0gとしたこと以外は、比較例3と同様にして導電性高分子フィルム0.4522gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.156gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.2962gと算出された。
【0090】
(比較例5)
PEDOT/PSS水溶液を16g、EGを4.0g、オーブンの乾燥温度を210℃、およびオーブンでの乾燥時間を30分としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子フィルム0.2069gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0091】
(比較例6)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、EGを6.0gとしたこと以外は、比較例5と同様にして導電性高分子フィルム0.182gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0092】
(比較例7)
PEDOT/PSS水溶液を12gとし、EGを8.0gとしたこと以外は、比較例5と同様にして導電性高分子フィルム0.156gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.156gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0093】
(比較例8)
PEDOT/PSS水溶液を10gとし、EGを10gとしたこと以外は、比較例5と同様にして導電性高分子フィルム0.130gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.130gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0094】
(実施例7)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤であるN,N’−ジメチルホルムアミド(以下、DMFとも称す)2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.2864gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.0524gと算出された。
【0095】
(実施例8)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、DMFを4.0gとしたこと以外は、実施例7と同様にして導電性高分子フィルム0.2967gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.0887gと算出された。
【0096】
(実施例9)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、DMFを6.0gとしたこと以外は、実施例7と同様にして導電性高分子フィルム0.6791gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.4971gと算出された。
【0097】
(比較例9)
PEDOT/PSS水溶液を19g、DMFを1.0g、オーブンの乾燥温度を150℃、およびオーブンでの乾燥時間を2時間としたこと以外は、実施例7と同様にして導電性高分子フィルム0.2469gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、DMFは含まれていないことが分かった。
【0098】
(実施例10)
PEDOT/PSS水溶液を18gとし、DMFを2.0gとしたこと以外は、比較例9と同様にして導電性高分子フィルム0.2368gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.0028gと算出された。
【0099】
(実施例11)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、DMFを4.0gとしたこと以外は、比較例9と同様にして導電性高分子フィルム0.2139gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.0059gと算出された。
【0100】
(実施例12)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、DMFを6.0gとしたこと以外は、比較例9と同様にして導電性高分子フィルム0.1901gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDMFの質量は0.0081gと算出された。
【0101】
(比較例10)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤であるメタノール(以下、MeOHとも称す)2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.234gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、MeOHは含まれていないことが分かった。
【0102】
(比較例11)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、MeOHを6.0gとしたこと以外は、比較例10と同様にして導電性高分子フィルム0.182gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、MeOHは含まれていないことが分かった。
【0103】
(実施例13)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤である1−ペンタノール 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.2746gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ペンタノールの質量は0.0406gと算出された。
【0104】
(実施例14)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、1−ペンタノールを4.0gとしたこと以外は、実施例13と同様にして導電性高分子フィルム0.2818gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ペンタノールの質量は0.0738gと算出された。
【0105】
(実施例15)
PEDOT/PSS水溶液を16g、1−ペンタノールを4.0g、オーブンの乾燥温度を100℃、およびオーブンでの乾燥時間を6時間としたこと以外は、実施例13と同様にして導電性高分子フィルム0.2562gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ペンタノールの質量は0.0482gと算出された。
【0106】
(実施例16)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、1−ペンタノールを6.0gとしたこと以外は、実施例15と同様にして導電性高分子フィルム0.2964gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ペンタノールの質量は0.1144gと算出された。
【0107】
(比較例12)
オーブンの乾燥温度を150℃とし、オーブンでの乾燥時間を2時間としたこと以外は、実施例13と同様にして導電性高分子フィルム0.234gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、1−ペンタノールは含まれていないことが分かった。
【0108】
(実施例17)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤である1−ブタノール 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.2501gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ブタノールの質量は0.0161gと算出された。
【0109】
(実施例18)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、1−ブタノールを4.0gとしたこと以外は、実施例17と同様にして導電性高分子フィルム0.2372gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ブタノールの質量は0.0292gと算出された。
【0110】
(実施例19)
PEDOT/PSS水溶液を14gとし、1−ブタノールを6.0gとしたこと以外は、実施例17と同様にして導電性高分子フィルム0.2382gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.182gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中の1−ブタノールの質量は0.0562gと算出された。
【0111】
(比較例13)
オーブンの乾燥温度を150℃とし、オーブンでの乾燥時間を2時間としたこと以外は、実施例17と同様にして導電性高分子フィルム0.234gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、1−ブタノールは含まれていないことが分かった。
【0112】
(実施例20)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤であるN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPとも称す) 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.283gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のNMPの質量は0.049gと算出された。
【0113】
(実施例21)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、NMPを4.0gとしたこと以外は、実施例20と同様にして導電性高分子フィルム0.307gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のNMPの質量は0.099gと算出された。
【0114】
(実施例22)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を18gと、添加剤であるメチルエチルケトン(以下、MEKとも称す) 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.242gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のMEKの質量は0.008gと算出された。
【0115】
(実施例23)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、MEKを4.0gとしたこと以外は、実施例22と同様にして導電性高分子フィルム0.229gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のMEKの質量は0.021gと算出された。
【0116】
(実施例24)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を19.5gと、添加剤である分子量200のポリエチレングリコール(以下、PEGとも称す) 0.5gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.2885gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.2535gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.035gと算出された。
【0117】
(実施例25)
PEDOT/PSS水溶液を19gとし、分子量200のPEGを1.0gとしたこと以外は、実施例24と同様にして導電性高分子フィルム0.313gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.066gと算出された。
【0118】
(実施例26)
分子量200のPEGの代わりに、分子量400のPEGを0.5g使用したこと以外は、実施例24と同様にして導電性高分子フィルム0.3145gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.2535gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.061gと算出された。
【0119】
(実施例27)
分子量200のPEGの代わりに、分子量400のPEGを1.0g使用したこと以外は、実施例25と同様にして導電性高分子フィルム0.355gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.108gと算出された。
【0120】
(実施例28)
分子量200のPEGの代わりに、分子量1000のPEGを0.5g使用したこと以外は、実施例24と同様にして導電性高分子フィルム0.3225gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.2535gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.069gと算出された。
【0121】
(実施例29)
分子量200のPEGの代わりに、分子量1000のPEGを1.0g使用したこと以外は、実施例25と同様にして導電性高分子フィルム0.408gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のPEGの質量は0.161gと算出された。
【0122】
(実施例30)
下記化学式(2)で表される繰り返し単位を有する、導電性高分子であるポリピロール(以下、PPyとも称す)の20質量%水溶液(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号48255−2)を18gと、添加剤であるEG 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度100℃で6時間乾燥させ、導電性高分子フィルム1.0404gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.900gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.1404gと算出された。
【0123】
【化2】

【0124】
(比較例14)
PPyの水溶液を16g、EGを4.0g、オーブンの乾燥温度を210℃、およびオーブンでの乾燥時間を30分としたこと以外は、実施例30と同様にして導電性高分子フィルム0.800gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.800gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0125】
(実施例31)
下記化学式(3)で表される繰り返し単位を有する、導電性高分子であるポリアニリン(以下、PAnとも称す)の20質量%水溶液(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号56109−6)を18gと、添加剤であるEG 2.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度100℃で6時間乾燥させ、導電性高分子フィルム4.1002gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が3.600gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のEGの質量は0.5002gと算出された。
【0126】
【化3】

【0127】
(比較例15)
PAnの水溶液を16g、EGを4.0g、オーブンの乾燥温度を210℃、およびオーブンでの乾燥時間を30分としたこと以外は、実施例31と同様にして導電性高分子フィルム3.182gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が3.182gであったことから、本比較例で得られた導電性高分子フィルム中には、EGは含まれていないことが分かった。
【0128】
(実施例32)
導電性高分子であるPEDOT/PSS 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を19.0gと、添加剤であるドデシルベンゼンスルホン酸(以下、DBSとも称す) 1.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、導電性高分子フィルム0.2708gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.247gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDBSの質量は0.0238gと算出された。
【0129】
(実施例33)
PEDOT/PSS水溶液を18gとし、DBSを2.0gとしたこと以外は、実施例32と同様にして導電性高分子フィルム0.3043gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.234gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDBSの質量は0.0703gと算出された。
【0130】
(実施例34)
PEDOT/PSS水溶液を16gとし、DBSを4.0gとしたこと以外は、実施例32と同様にして導電性高分子フィルム0.3444gを得た。別途算出した導電性高分子フィルムの乾燥質量が0.208gであったことから、本実施例で得られた導電性高分子フィルム中のDBSの質量は0.1364gと算出された。
【0131】
上記の各実施例および各比較例で得られた導電性高分子フィルムの特性評価を、下記の方法により行った。
【0132】
<評価1:フィルムの形状>
得られたフィルムが自己支持性を有する場合を○、得られたフィルムがゲル状で自己支持性を有さないものを×とした。
【0133】
<評価2:フィルムの弾性率変化の測定>
フィルムの弾性率変化は、図1に示すような装置10を用いて測定した。
【0134】
各実施例および各比較例で得られた導電性高分子フィルム14を、3mm×60mmの短冊状にカットし、両端から10mmの部分にそれぞれ導電性ペースト(藤倉化成株式会社製、ドータイト D−550)を塗布した。次いで、恒温恒湿槽11一体型の応力評価装置12の固定治具13(導線15が直接接続されている)に、導電性ペーストを塗布した短冊状のフィルムの両端から10mmの部分をそれぞれ固定させた。固定させたフィルムは、25℃、相対湿度70%RHの条件下で1.5時間放置し、水分を飽和吸着させた。その後、固定させたフィルムに対し、電圧印加装置16により4Vの電圧をかけた場合の応力−ひずみ曲線、および電圧をかけなかった場合の応力−ひずみ曲線をそれぞれ測定した。得られた応力−ひずみ曲線の傾きから弾性率を算出し、4Vの電圧をかけた場合の弾性率と電圧をかけなかった場合の弾性率との差を「弾性率変化幅」とした。
【0135】
<評価3:フィルムの導電率の測定>
(導電率の測定方法)
導電率(σ)は体積抵抗率(ρv)の逆数を算出することにより求めた。前記体積抵抗率は、シート抵抗(ρs)と膜厚(t)との積として表される(すなわち、ρv=ρs×t)ため、導電率(σ)は、下記の数式1で表される。
【0136】
【数1】

【0137】
シート抵抗と膜厚を下記の方法で計測し、上記数式1に代入して、導電率を算出した。
【0138】
(シート抵抗の測定方法)
シート抵抗(ρs)は、抵抗率計(ダイヤインスツルメンツ社製、ロレスターGP、MC P−T600型)に、4端子4探針PSP型プローブを装備して測定した。
【0139】
(膜厚の測定方法)
膜厚(t)は、DIGIMATIC MICROMETER(株式会社ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0140】
得られた結果を下記の表1〜7に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

【0147】
【表7】

【0148】
上記表1〜7からわかるように、導電性高分子と添加剤とを含む本発明の導電性高分子フィルムは、湿度および電圧の刺激により弾性率の変化を発現することがわかった。表1において、本発明の導電性高分子フィルムである実施例5と、添加剤を含まない導電性高分子フィルムである比較例3とを比較すると、実施例5のフィルムは導電率がやや低下するものの、より大きな弾性率変化幅を示すことがわかった。また、添加剤の含有量が本発明の範囲外である比較例1、比較例2、および比較例4のフィルムはゲル状となった。さらに、表1と表3を比較した場合、2価アルコールであるEGのほうが、1価アルコールである1−ペンタノールや1−ブタノールよりも、より大きな弾性率変化幅を示すことがわかった。
【0149】
また、添加剤として界面活性剤を用いた場合(実施例32〜34)、有機化合物よりも少ない添加量で、より大きな弾性率変化幅を発現させうることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】弾性率を測定する際に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0151】
10 弾性率変化測定装置、
11 恒温恒湿槽、
12 応力評価装置、
13 固定治具、
14 導電性高分子フィルム、
15 導線、
16 電圧印加装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子50〜99質量%と、
水分子を保持する機能を有する添加剤50〜1質量%と、
を含む導電性高分子フィルム。
【請求項2】
前記添加剤は、アルコール化合物、フェノール化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物、およびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項3】
前記有機化合物は、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルエチルケトン、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項4】
前記有機化合物の含有量が5〜20質量%であることを特徴とする、請求項3に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項5】
前記添加剤は界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項6】
前記界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、およびドデシルベンゼンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項7】
前記界面活性剤の含有量が5〜15質量%であることを特徴とする、請求項5または6に記載の導電性高分子フィルム。
【請求項8】
導電性高分子と添加剤とを溶媒に加え、攪拌および混合し混合物を得る第1の工程と、
前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、導電性高分子フィルムを得る第2の工程と、
を含むことを特徴とする、導電性高分子フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記膜を乾燥させる温度は70〜120℃である、請求項8に記載の導電性高分子フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記膜を乾燥させる時間は0.5時間〜15時間である、請求項8または9に記載の導電性高分子フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−1724(P2009−1724A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165608(P2007−165608)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】