説明

導電性高分子化合物

【課題】無機粒子の分散性に優れ、長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも、好適に使用されうる導電性高分子化合物を提供する。
【解決手段】チオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを主鎖に有する導電性高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子の分散性に優れ、長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも、好適に使用されうる導電性高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物は、従来、電解コンデンサ及びリチウムイオン電池の電極、帯電防止フィルム等の用途に使用されてきた。近年、これらの用途に加えて、有機EL、有機トランジスタ、有機太陽電池等の分野においても導電性高分子化合物を用いることが検討されている。
【0003】
例えば、有機太陽電池としては、有機半導体と無機半導体とを混合して複合化した有機無機複合薄膜の両側に、電極を設けたものが開発されている。このような構造の有機太陽電池においては、有機無機複合薄膜の材料である有機半導体として、導電性高分子化合物を用いることが検討されている。
【0004】
このような構造の有機太陽電池では、光励起により有機半導体(導電性高分子化合物)で光キャリア(電子−ホール対)が生成し、電子が無機半導体を、ホールが導電性高分子化合物を移動することで、電界が生じる。しかしながら、導電性高分子化合物中の光キャリア生成に活性な領域は、無機半導体との接合界面付近の数十nm程度と非常に狭く、この活性な領域以外の領域は光キャリア生成に寄与できないため、有機太陽電池として、エネルギー変換効率が低くなってしまうという欠点があった。
【0005】
この問題を解決する目的で、 有機半導体に無機半導体を密充填させて、エネルギー変換効率を向上させる試みもなされている。
例えば、特許文献1には、有機電子供与体と化合物半導体結晶とを含有する活性層を二つの電極の間に設けた有機太陽電池において、前記活性層は有機電子供与体と化合物半導体結晶とを混合して分散してなり、且つ、化合物半導体結晶が平均粒径が異なる二種類のロッド状の結晶を含み、この二種類のロッド状結晶の平均粒径及び含有比率を所定範囲内とする有機太陽電池が記載されている。特許文献1には、有機電子供与体として、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体等の導電性高分子化合物が挙げられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の有機太陽電池であっても未だエネルギー変換効率はかなり低く、実用化に耐えうる有機太陽電池の開発のためには更なるエネルギー変換効率の改善が不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4120362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、導電性高分子化合物に平均粒子径がnmオーダーの無機粒子を分散させることにより、導電性高分子化合物に無機粒子を密充填させれば高いエネルギー変換効率を実現できると考えた。しかしながら、導電性高分子化合物と無機粒子とは親和性が低く、平均粒子径がnmオーダーであると、無機粒子を凝集させることなく微分散させることは難しかった。
また、本発明者らは、特許文献1に記載のポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体等の導電性高分子化合物は800nm以下の短波長の光しか吸収することができないため、800nm以上の長波長の光を吸収可能とすることにより高いエネルギー変換効率を実現できると考えた。
本発明は、無機粒子の分散性に優れ、長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも、好適に使用されうる導電性高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを主鎖に有する導電性高分子化合物である。
【0010】
【化1】

式(1)中、R及びRは水素原子又は置換基を示す。
【0011】
【化2】

式(2)中、Rは水素原子又は置換基を示し、Xは極性基を含有する官能基を示す。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、上記式(1)で表されるチオフェン骨格と、上記式(2)で表される骨格とを主鎖に有する導電性高分子化合物は、平均粒子径がnmオーダーであっても無機粒子を凝集させることなく微分散させるとともに800nm以上の長波長の光を吸収することが可能であり、有機太陽電池、特に長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも好適に使用されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の導電性高分子化合物は、下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを主鎖に有する。下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを主鎖に有するとは、最も長い分子鎖を構成する骨格構造として、下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを有することを意味する。このような構造を有することにより、本発明の導電性高分子化合物は、平均粒子径がnmオーダーであっても無機粒子を凝集させることなく微分散させるとともに、800nm以上の長波長の光を吸収することが可能である。
なお、このような構造を有することにより、本発明の導電性高分子化合物においては、下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とが共役結合を介して結合することとなる。
【0014】
【化3】

式(1)中、R及びRは水素原子又は置換基を示す。
【0015】
【化4】

式(2)中、Rは水素原子又は置換基を示し、Xは極性基を含有する官能基を示す。
【0016】
上記極性基として、例えば、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、チオール基、シアノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。なかでも、合成のしやすさから、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、水酸基が好適である。
極性基が存在しない場合には、導電性高分子化合物と無機粒子との親和性が低下し、無機粒子を充分に微分散させることができない。
【0017】
上記置換基は、上述したような極性基を含有する官能基であってもよいし、非極性基であってもよい。上記非極性基として、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0018】
本発明の導電性高分子化合物において、上記式(1)で表されるチオフェン骨格と、上記式(2)で表される骨格との比率(上記式(1)で表されるチオフェン骨格:上記式(2)で表される骨格)は、1:1〜7:1であることが好ましい。上記範囲よりも上記式(1)で表される骨格の割合が多くなると、長波長の吸収が低下してしまうことがある。上記範囲よりも上記式(2)で表されるチオフェン骨格の割合が多くなると、無機粒子との相溶性が低下することがある。上記式(1)で表されるチオフェン骨格と、上記式(2)で表される骨格との比率のより好ましい下限は2:1、より好ましい上限は5:1である。
【0019】
また、上記式(1)で表されるチオフェン骨格と、上記式(2)で表される骨格とは交互、ブロック、又は、ランダムのいずれで重合されていてもよいが、長波長の光を効率よく吸収できることから、交互に並んでいることが好ましい。上記式(1)で表されるチオフェン骨格、及び、上記式(2)で表される骨格の連続するユニット数としては、1〜5ユニットが好ましい。
【0020】
本発明の導電性高分子化合物は、数平均分子量の好ましい下限が3000、好ましい上限が1000000である。導電性高分子化合物の数平均分子量が3000未満であると、有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途に使用した場合に、導電性高分子化合物の電荷移動度が低くなり、エネルギー変換効率が低下することがあり、1000000を超えると、導電性高分子化合物の溶剤溶解性が低下し、製膜性が悪くなることがある。本発明の導電性高分子化合物の重量平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は700000である。
なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、クロロホルム中40℃にて測定し、標準ポリスチレンを基準にして算出することができる。
【0021】
本発明の導電性高分子化合物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記式(1)で表されるチオフェン骨格を有するモノマーと、上記式(2)で表される骨格を有するモノマーとを共重合する方法等が挙げられる。
【0022】
上記式(1)で表されるチオフェン骨格を有するモノマーとして、例えば、2,5−チオフェンジボロン酸、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン、2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン、5,5’−ビス(トリメチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン、2,5−ビス(マグネシウムブロミド)チオフェン5,5’−ビス(マグネシウムブロミド)−2,2’−ビチオフェン等が挙げられる。
【0023】
上記式(2)で表される骨格を有するモノマーとして、例えば、3,6−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2,5−ジオクチルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、3,6−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2,5−ジエチルヘキシルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、3,6−ビス(5−ヨードチオフェン−2−イル)−2,5−ジオクチルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、3,6−ビス(5−ヨードチオフェン−2−イル)−2,5−ジエチルヘキシルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、3,6−ビス(5−クロロチオフェン−2−イル)−2,5−ジオクチルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、3,6−ビス(5−クロロチオフェン−2−イル)−2,5−ジエチルヘキシルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン等が挙げられる。
【0024】
上記共重合する方法として、例えば、スティルカップリング、鈴木・宮浦カップリング、熊田・玉尾カップリング、根岸カップリング、檜山カップリング等が挙げられる。
【0025】
本発明の導電性高分子化合物は、平均粒子径がnmオーダーであっても無機粒子を凝集させることなく微分散させることが可能である。従って、本発明の導電性高分子化合物に平均粒子径がnmオーダーの無機粒子を分散させることにより、本発明の導電性高分子化合物に無機粒子を密充填させることができることから、有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも好適に使用されうる。また、有機太陽電池の有機無機複合薄膜以外にも、例えば、耐熱性のある長波長光のカットフィルターや長波長光センサー等の用途に好適に使用されうる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、無機粒子の分散性に優れ、長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも、好適に使用されうる導電性高分子化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0028】
(実施例1)
(導電性高分子化合物の合成)
撹拌機を備え付け、窒素置換を行った50mL容のシュレンク管に、3,6‐ジ(2‐チエニル)−2,5−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンを250mg(0.32mmol)、N−ブロモスクシンイミド171mg(0.96mmol)、ジクロロメタン10mLを仕込んだ。次いで、窒素雰囲気下、室温で48時間反応させた。反応終了後、これに水を加えて分液操作によって有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加え乾燥後、減圧下にて濃縮した。その後、クロロホルム、ヘキサンを1:1の比率で混合した展開溶媒を用いて、アミン修飾シリカゲルによるクロマトグラフィーにより、式(2)で表される骨格を有するモノマー(A)を得た。次に、撹拌機を備え付け、窒素置換を行った25mL容のシュレンク管に、式(2)で表される骨格を有するモノマー(A)を59.8mg(0.063mmol)、式(1)で表されるチオフェン骨格を有するモノマーとして2,5−チオフェンジボロン酸11.0mg(0.064mmol)、Aliquat336を59.2μL、トルエン59.2μL、トリフェニルフホスフィン(PPh)1.6mg(6.2μmol)を仕込んだ。この混合物に、サンプル瓶に用意した、リン酸カリウム(KPO)67.4mg(0.32mmol)を溶解させた蒸留水0.12mLとトルエン1.1mLとの混合溶液を加え、5分間窒素バブリングを行った。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))2.4mg(2.6μmol)を加え、窒素雰囲気下で115℃まで昇温し、同温度で72時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール500mLに注ぎ、ポリマーを析出させた。
析出したポリマーをろ別した後にクロロホルム25mLに再び溶かし、アンモニア水25mLを加え3時間攪拌した。その後、分液操作によって有機層を取り出した。この有機層にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を75mg加え室温で16時間攪拌した後、水25mLを加え12時間撹拌した。次に、再度分液によって有機層を取り出し、溶媒を減圧留去した。その後、乾燥した固体を約1mLのクロロホルムに溶解させ、再びメタノール500mLに注ぎ、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ別した後にメタノール、水及びヘキサンで順次洗浄した後、減圧乾燥して黒青色の導電性高分子化合物を得た(固体、32.4mg)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.95(br,2H),7.52(br,2H),7.05(br,2H),4.08(br,4H),2.18(br,4H),1.73(br,4H),1.68−1.50(br,4H),1.45−1.23(br,24H),1.42(s,18H).
【0029】
得られた導電性高分子化合物は、共役する、式(1)で表されるチオフェン骨格(R及びRは水素原子)と式(2)で表される骨格(R及びXはエステル基)とを主鎖に有しており、式(1)で表されるチオフェン骨格と、式(2)で表される骨格との比率は3:1であった。
得られた導電性高分子化合物の収率は、使用したジケトピロロピロール誘導体に対して60%であった。また、得られた導電性高分子化合物の数平均分子量は4000、重量平均分子量は8100であった。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社、商品名HLC−8020)を用いて、クロロホルム中40℃にて測定し、標準ポリスチレンを基準にして算出した。
【0030】
(ペーストの調製)
導電性高分子化合物40重量部と、無機粒子として平均粒子径が5nmの酸化亜鉛を120重量部とを、クロロホルム3000重量部とメタノール500重量部との混合溶媒中に分散させて、ペーストを調製した。
【0031】
(実施例2)
(導電性高分子化合物の合成)
攪拌機を備え付け、窒素置換を行った25mL容のシュレンク管に、式(2)で表される骨格を有するモノマーとして実施例1で合成したモノマー(A)を54.0mg(0.057mmol)、式(1)で表されるチオフェン骨格を有するモノマーとして5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン24.0mg(0.057mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh)1.5mg(5.7μmol)、凍結脱気を3回行ったトルエン0.96mL、Aliquant 336を54.0μL仕込んだ。ここで別の25mL容のシュレンク管の窒素置換を行い、リン酸トリカリウム(KPO)615mg(2.9mmol)及び蒸留水1.1mLを仕込み、窒素バブリングを20分行った。この水溶液107μLを取りだし、先のシュレンク管に加えた。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))2.2mg(2.4μmol)を加え、窒素雰囲気下で115℃まで昇温し、同温度で72時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール200mLに注ぎ、ポリマーを析出させた。
析出したポリマーをろ別した後にクロロホルム60mLに再び溶かし、アンモニア水60mLを加え室温で4時間攪拌した。その後、分液操作によって有機層を取り出した。この有機層に約0.1mol/Lのエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩(EDTANa)を60mL加え室温で16時間攪拌した。次に、再度分液操作によって有機層を取り出し、溶媒を減圧留去した。その後、固体を約1mLのクロロホルムに溶解させ、再びメタノール500mLに注ぎ、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ別した後にメタノール、水、及びヘキサンで順次洗浄した後、減圧乾燥して黒緑色の導電性高分子化合物を得た(固体、10mg)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.88(br,2H),7.26−6.77(br,6H),3.94(br,4H),2.20(br,4H),1.73(br,4H),1.67−1.50(br,4H),1.50−1.15(br,24H),1.44 (s,18H).
【0032】
得られた導電性高分子化合物は、共役する、式(1)で表されるチオフェン骨格(R及びRは水素原子)と式(1)で表されるチオフェン骨格(R及びXはエステル基)とを主鎖に有しており、式(1)で表されるチオフェン骨格と、式(2)で表される骨格との比率は4:1であった。
得られた導電性高分子化合物の収率は、使用したジケトピロロピロール誘導体に対して20%であった。また、得られた導電性高分子化合物の数平均分子量は4100、重量平均分子量は5400であった。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社、商品名HLC−8020)を用いて、クロロホルム中40℃にて測定し、標準ポリスチレンを基準にして算出した。
【0033】
(ペーストの調製)
導電性高分子化合物40重量部と、無機粒子として平均粒子径が5nmの酸化亜鉛を120重量部とを、クロロホルム3000重量部とメタノール500重量部との混合溶媒中に分散させて、ペーストを調製した。
【0034】
(比較例1)
合成した導電性高分子化合物の代わりに、式(2)で表される骨格を有さないポリチオフェン化合物(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、アルドリッチ社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペーストを調製した。
【0035】
(比較例2)
実施例1で重合したモノマー(A)の代わりに、式(2)のXが極性基でないモノマー(3,6−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2,5−ジオクチルピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン、和光純薬工業社製)を用いて重合したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子化合物を合成し、その導電性高分子化合物をもちいてペーストを調製した。
【0036】
(長波長光吸収の評価)
実施例及び比較例で得られたペーストをガラス基板上に2000rpmでスピンコートした。得られたガラス基板上の塗布膜吸光度を分光光度計(日立ハイテク社製、型式U−3000)を用いて測定し、波長800nmでの吸光度を求めることにより、長波長光吸収を評価した。波長800nmでの吸光度が0.3以上であった場合を○、波長800nmでの吸光度が0.3未満であった場合を×と判定した。
【0037】
(無機粒子の分散性評価)
実施例及び比較例で得られたペーストをガラス基板上に3000rpmでスピンコートした。得られたガラス基板上の塗布膜を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−500F、倍率1000倍)を用いて観察した。塗布膜に相分離している模様が見えている場合は×、均一で模様が見えない場合を○とした。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1及び2で得られたペーストは、波長800nmでは大きな吸収があるため透過率は比較的低かったが、導電性高分子化合物の無機粒子に対する分散性が高いため、光学顕微鏡観察では相分離状態は確認されなかった。
比較例1で得られたペーストは、波長800nm付近に吸収をもたないために波長800nm付近の吸光度が低かった。比較例2で得られたペーストは、導電性高分子化合物の無機粒子に対する分散性が悪く、光学顕微鏡観察において相分離状態が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、無機粒子の分散性に優れ、長波長の光を吸収可能な有機太陽電池の有機無機複合薄膜等の用途にも、好適に使用されうる導電性高分子化合物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるチオフェン骨格と、下記式(2)で表される骨格とを主鎖に有することを特徴とする導電性高分子化合物。
【化1】

式(1)中、R及びRは水素原子又は置換基を示す。
【化2】

式(2)中、Rは水素原子又は置換基を示し、Xは極性基を含有する官能基を示す。

【公開番号】特開2013−43905(P2013−43905A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180994(P2011−180994)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】