説明

導電性高分子微粒子、導電性高分子微粒子分散体およびそれらの製造方法

【課題】優れた導電性と分散性を兼ね備えた導電性高分子微粒子およびそのような導電性高分子微粒子を利用した、分散均一性および分散安定性に優れ、高導電性で透明性が高く、均一な塗膜を形成することが可能な導電性高分子微粒子分散体を提供する。
【解決手段】π供役系導電性高分子にドーパント成分をドープした導電性高分子の微粒子であって、ドーパント成分が、少なくとも次の成分(a)および(b);(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物
(b)低分子芳香族スルホン酸化合物を含むことを特徴とする導電性高分子微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子微粒子および該微粒子を分散媒中に分散した導電性高分子微粒子分散体に関し、より詳しくは、導電性が高く分散媒への分散性に優れる導電性高分子微粒子およびこの微粒子を用いた分散均一性、分散安定性に優れ、導電性が高く透明で均一な塗膜を形成することが可能な導電性高分子微粒子分散体並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等のπ共役系導電性高分子は、優れた安定性及び導電性を有することから、各種帯電防止剤、固体電解コンデンサ用電解質、防食塗料、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、メッキプライマー等への応用が期待されている。
【0003】
しかし、これらπ共役系導電性高分子物質は、一般に溶媒に不溶あるいは難溶であり、かつ、不融であるため成形、加工が困難であるという問題がある。
【0004】
そのため、導電性高分子を微粒子状あるいはフィラー状に微粉砕して水や有機溶媒等の分散媒に分散させることにより、成形性や加工性を向上させる技術が知られている。
【0005】
しかし、導電性高分子物質の微粒子は、一般に分散媒中で凝集し易く、分散均一性や分散安定性の良い分散体を得ることが非常に困難であるため、このような分散体から導電性や透明性の高い電導性皮膜(導電層)を形成させることが出来なかった。一方、導電性高分子微粒子の固形分濃度を低くすることにより分散性を改善しようとすると、厚膜の導電性皮膜を得たい場合に複数回塗布工程を繰り返さざるを得ないため、固体電解コンデンサ電解質用など厚膜の導電性皮膜が必要な用途への適用が困難であった。
【0006】
そこで、これまでに導電性高分子微粒子の分散安定性や導電性の向上を図った技術が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ポリアニオンをドープしたπ共役系導電性高分子を、ポリアニオンとイオン対となる塩基性有機化合物を含む有機溶媒中に分散させた導電性組成物が開示されている。この導電性組成物は、ある程度分散安定性は改善されているものの、形成される皮膜の導電性は十分なものではなかった。
【0008】
また特許文献2には、電導度が10S/cm以上の導電性高分子物質を有機溶剤中で平均粒径1000nm以下の粒子に湿式粉砕して、有機溶剤中に分散させた導電性高分子物質の有機溶剤分散液が開示されている。
【0009】
しかしながら、この分散液で用いられる導電性高分子粒子自体は、組成や性質において従来公知のものと異なるものではないため、依然として凝集を生じやすく、分散安定性が十分なものではなかった。
【0010】
また特許文献3には、導電性高分子の有機溶媒分散液に、バインダー樹脂を配合することによって、製膜の容易な導電性コーティング組成物が得られることが記載されている。しかしながら、この技術によっても、分散安定性と導電性とに優れた分散体を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−254730号公報
【特許文献2】特開2005−068166号公報
【特許文献3】特開2007−324142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れた導電性と分散性を兼ね備えた導電性高分子微粒子およびその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、そのような導電性高分子微粒子を利用して、分散均一性および分散安定性に優れ、高導電性で透明性が高く、均一な塗膜を形成することが可能な導電性高分子微粒子分散体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、スルホン酸基を分子構造内に有するポリエステル樹脂系化合物と低分子芳香族スルホン酸化合物とをドーパント成分として組み合わせ、これらをπ共役系導電性高分子にドープすることにより、分散性および導電性に優れた導電性高分子の微粒子が得られ、この微粒子の分散体は、長期間にわたって良好な分散状態を維持するとともに、透明性および導電性に優れる導電性皮膜を形成し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、π共役系導電性高分子にドーパント成分をドープした導電性高分子の微粒子であって、ドーパント成分が、少なくとも次の成分(a)および(b);
(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物
(b)低分子芳香族スルホン酸化合物
を含むことを特徴とする導電性高分子微粒子である。
【0015】
また本発明は、上記(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物が、
下記一般式(1)
【化1】

(上式中、Rはグリコール残基を示し、Aは、スルホン酸基を除く置換基を有していてもよい多価カルボン酸残基を示す。nは1あるいは2を示す。)
で示される繰り返し単位及び、下記一般式(2)
【化2】

(上式中、Rはグリコール残基を示し、Bは芳香環を示す。nは1或いは2を示す。)
で示される繰り返し単位を含む共重合体のものである。
【0016】
また本発明は、上記導電性高分子微粒子を溶媒中に分散ないし溶解させてなる導電性高分子微粒子分散体である。
【0017】
また本発明は、下記一般式(3)
【0018】
【化3】

(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Zは、それぞれ同一であっても異なっていても良い酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で示されるモノマー化合物、(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物、(b)低分子芳香族スルホン酸化合物および化学酸化重合触媒を含有するモノマー溶液に、酸化剤含有液を添加することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法である。
【0019】
さらに本発明は、上記導電性高分子微粒子、分散剤および溶媒を混合した導電性高分子微粒子含有液を湿式粉砕によって分散処理することを特徴とする導電性高分子微粒子分散体の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた導電性および分散性を具備した導電性高分子微粒子が得られる。この導電性高分子微粒子を分散媒中に分散ないし溶解した導電性高分子微粒子分散体は分散均一性、分散安定性に優れ、長期間にわたって均一な分散状態を維持することができる。そして、この分散体を基板上に塗布することにより、導電性が高く、透明性に優れ、均一な導電性皮膜を形成することができる。さらに、この分散体は分散均一性、分散安定性に優れるため導電性高分子微粒子の固形分濃度を高くすることができ、厚膜の導電性皮膜を容易に形成することが可能である。
【0021】
また、本発明の製造方法によれば、導電性高分子微粒子の粒径を制御することができ、均一で分散性のよい微粒子を簡便な工程にて収率良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施する形態について詳しく説明する。
【0023】
本発明の導電性高分子微粒子は、π共役系導電性高分子に、(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物および(b)低分子芳香族スルホン酸化合物をドーパント成分としてドープしたものである。
【0024】
上記ドーパント成分のうち、成分(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物は、スルホン酸基で置換されたポリエステル骨格部位を有するポリエステル樹脂であり、中でも線状ポリエステルが好適である。
【0025】
線状ポリエステルは、エステル形成性官能基を有する化合物からなる反応性原料を重合反応させて得られる。エステル形成性官能基とは、カルボキシル基又はヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成する官能基を意味し、具体的には、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のエステル形成性誘導基及びヒドロキシル基のエステル形成性誘導基が含まれる。カルボキシル基のエステル形成性誘導基とは、カルボキシル基が無水物化、エステル化、酸クロライド化、ハロゲン化されて誘導されたものであって、ヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成する基である。ヒドロキシル基のエステル形成性誘導基とは、ヒドロキシル基がアセテート化されるなどして誘導されたものであって、他のカルボキシル基と反応してエステル結合を形成する基である。特にエステル形成性官能基が、カルボキシル基又はヒドロキシル基である場合には、ポリエステル樹脂の製造時の反応性が良好となる点で好ましい。
【0026】
反応性原料に含まれる各化合物の使用量は、各化合物に含まれるカルボキシル基及びそのエステル形成性誘導基の総数と、ヒドロキシル基及びそのエステル形成性誘導基の総数とが、モル比率で1:1〜2.5の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0027】
反応性原料には、分子量を調整するために、適宜の量の公知の多官能性化合物、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジメチロールブタン酸、3官能性以上のカルボン酸などが含まれていてもよい。更に、例えばp−ヒドロキシ安息香酸、1価の脂肪族アルコール等が併せて用いられてもよい。
【0028】
このような線状ポリエステルとして、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを構成成分とする線状ポリエステルが好適に用いられる。多価カルボン酸成分には、二価以上の多価カルボン酸および多価カルボン酸中のカルボキシル基がカルボキシル基から誘導される上記エステル形成性誘導基に置換されたエステル形成性誘導体が含まれる。さらに多価カルボン酸成分には、スルホン酸基を有する多価カルボン酸およびそのエステル形成性誘導体並びにこれらのアルカリ金属塩も包含される。多価カルボン酸としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸、ナフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができ、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられる。一方、脂肪族ジカルボン酸としては例えば直鎖、分岐及び脂環式のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸等が挙げられる。
【0029】
上記多価カルボン酸成分は、一種単独で使用してもよく、或いは複数種を併用してもよいが、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体並びにこれらのアルカリ金属塩(以下、これらを総称して「スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸類」ということがある)と、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体(以下、これらを総称して「芳香族ジカルボン酸類」ということがある)を併用することが好ましく、特に多価カルボン酸成分として、これらのスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸類および芳香族ジカルボン酸類のみを用いるか、或いはこれらを主成分として用いることが好ましい。
【0030】
一方、グリコール成分には、グリコールと、グリコール中のヒドロキシル基がヒドロキシル基から誘導されるエステル形成性誘導基に置換されたエステル形成性誘導体が包含される。グリコールとしては、例えばエチレングリコール及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール等のポリエチレングリコール、並びにプロピレングリコール及びジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、並びに1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタリン、2,5−ジヒドロキシナフタリン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0031】
これらのグリコール及びそのエステル形成性誘導体は一種単独で使用してもよく、或いは複数種を併用してもよい。特に、エチレングリコール;ジエチレングリコール;1,4−ブタンジオール等のブタンジオール類;1,6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール類;ネオペンチルグリコール;ビスフェノールA等のグリコール;及びこれらのグリコールのエステル形成性誘導体が好適に使用される。
【0032】
(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物は、上記反応性原料を用いて公知のポリエステル製造方法により製造される。例えば、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを一段階の反応で反応させる直接エステル化反応によりポリエステル樹脂が生成する。一方、多価カルボン酸成分に多価カルボン酸のエステル形成性誘導体が含まれ、グリコール成分にグリコールが含まれる場合には、多価カルボン酸のエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル交換反応である第一段反応と、前記第一段反応による反応生成物が重縮合する第二段反応とを経て、ポリエステル樹脂が製造されてもよい。第一段反応においては、反応系中に反応性原料全てが最初から含まれていてもよく、重縮合反応時に反応系に添加されてもよい。一括仕込みの場合には、例えば反応系が窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、常圧条件下で、150〜260℃まで徐々に昇温加熱されることでエステル交換反応が進行する。第二段反応は、例えば6.7hPa(5mmHg)以下の減圧下、160〜280℃の温度範囲内で進行する。第一段反応及び第二段反応において、任意の時期に反応系中に触媒として、従来公知のチタン、アンチモン、鉛、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガン、アルカリ金属化合物等が添加されてもよい。
【0033】
このようにして得られる(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物の固有粘度は、0.03〜1.0の範囲が好ましく、0.05〜0.6の範囲であれば、特に分散安定性に優れた効果が得られる。固有粘度は、溶質1分子が溶液の粘度に寄与する率の指標で、ポリマーの希薄状態で濃度を変えて数点比粘度を測定し、溶液の比粘度を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。なお比粘度はo−クロロフェノールを溶媒としオストワルド粘度計にて20℃の条件下で測定した。
【0034】
(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物として、下記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位を有する共重合体が好ましい。
【0035】
一般式(1)で示される繰り返し単位は以下のものである。
【0036】
【化4】

【0037】
上式中、Rはグリコール残基を示し、Aは、スルホン酸基を除く置換基を有していてもよい多価カルボン酸残基を示す。nは1或いは2を示す。ここで、グリコール残基とはグリコール成分のヒドロキシル基を除いた部分を意味し、多価カルボン酸残基とは多価カルボン酸のカルボキシル基を除いた部分を意味する。
【0038】
Rとして好ましいものは、炭素数1〜6のアルキレン基あるいは全炭素数2〜12で間にエーテル結合をもつアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基あるいは全炭素数2〜8で間にエーテル結合をもつアルキレン基である。
【0039】
またAとして、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環が例示でき、特にナフタレン環が好ましい。また、Aが有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基等を例示できる。
【0040】
成分(a)が上記一般式(1)で示される繰り返し構造を有することにより、π共役系導電性高分子との相容性が良好になるため、導電性高分子微粒子の分散性を向上させる作用がある。
【0041】
一方、一般式(2)で示される繰り返し単位は以下のものである。
【0042】
【化5】

【0043】
上記一般式(2)中、Rはグリコール残基を示し、Bは芳香環を示す。nは1或いは2を示す。グリコール残基は上記と同じ意味である。Rとして好ましいのは、炭素数1〜6のアルキレン基あるいは全炭素数2〜12で間にエーテル結合をもつアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基あるいは全炭素数2〜8で間にエーテル結合をもつアルキレン基である。
【0044】
成分(a)が上記一般式(2)で示される繰り返し単位を有することにより、上記一般式(1)の繰り返し単位と同様に、π共役系導電性高分子との混和性、相溶性が良好になるため、導電性高分子微粒子の分散性を向上させる。また、スルホン酸基を有しているため、導電性高分子のドーパントアニオンとして機能し、導電性高分子微粒子の導電性を向上させる作用がある。
【0045】
上記一般式(1)と(2)で示される繰り返し単位を有する共重合体において、一般式(1)で示される繰り返し単位は、30〜80モル%含まれていることが好ましく、50〜70モル%がより好ましい。この範囲であると、分散性に優れるために好ましい。
【0046】
上記一般式(1)と(2)で示される繰り返し単位を有する共重合体において、一般式(2)で示される繰り返し単位は、少なくとも20モル%含まれていることが好ましく、より好ましくは20〜70モル%、特に好ましくは30〜60モル%である。すなわち、この共重合体中の一般式(2)のスルホン酸基を有する繰り返し単位のモル百分率をスルホン化率とすると、スルホン化率は、少なくとも20%以上であることが好ましく、20〜70%がより好ましく、特に30〜50%が好ましい。スルホン化率が20%に満たない場合、十分な分散性が得られない場合がある。
【0047】
上記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位を有する共重合体として、特に好ましいものは下記一般式(1a)および/または(1b)並びに(2a)で示される繰り返し単位を有する共重合体である。
【0048】
【化6】

(上式中、nは1或いは2を示す。)
【0049】
【化7】

(上式中、nは1或いは2を示す。)
【0050】
【化8】

(上式中、nは1或いは2を示す。)
【0051】
この共重合体において、一般式(2a)で示される繰り返し単位は、少なくとも20モル%含まれていることが好ましく、より好ましくは20〜70モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。すなわち、スルホン化率は、少なくとも20%以上であることが好ましく、20〜70%がより好ましく、特に30〜50%が好ましい。スルホン化率が20%に満たない場合、十分な分散性が得られない場合がある。スルホン化率が40%の共重合体として、互応化学株式会社製プラスコートZ−4000−100が市販されており、本発明においては、これを好適に用いることができる。
【0052】
上記一般式(1a)および/または(1b)並びに(2a)で示される繰り返し単位を有する共重合体は、具体的には、多価カルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを20〜60モル%、テレフタル酸ジメチルを0〜40モル%、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムを40モル%を使用し、グリコール成分としてエチレングリコールを70〜100モル%、ジエチレングリコールを0〜30モル%を用い、多価カルボン酸成分及びグリコール成分を1:2のモル比で混合してエステル交換反応器に仕込み、これに触媒としてシュウ酸チタニウムカリを全成分の0.01質量%添加して窒素雰囲気下で250℃まで昇温することにより、エステル交換反応生成を進行させると共に副生成物であるメタノールを留去する。次いで、反応器内の温度を255〜260℃まで昇温させると圧力を1mmHg(1.3hPa)まで減圧して、重縮合反応を適宜進行させると共に副生成物であるジオールを回収することでスルホン化率40%のポリエステル樹脂を得る事ができる。
【0053】
この共重合体の固有粘度は、分散安定性の観点から、0.03〜1.0の範囲が好ましく、0.05〜0.6の範囲がより好ましい。
【0054】
一方、ドーパント成分(b)低分子芳香族スルホン酸化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等の炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のベンゼンモノもしくはジスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等の炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のナフタレンモノスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のナフタレンジスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のナフタレントリスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等の炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラセンモノスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラセンジスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラセントリスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラセンテトラスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラキノンモノスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラキノンジスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラキノントリスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のアントラキノンテトラスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルモノスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルジスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルトリスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルテトラスルホン酸が挙げられる。
【0055】
これらの中でも、分散性及び導電性の面から、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のベンゼンモノスルホン酸、炭素数1〜20のアルキル置換もしくは無置換のナフタレンモノスルホン酸が好ましく、特に、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸が好適である。
【0056】
なお、上記ドーパント成分(b)の低分子芳香族スルホン酸化合物は1種類で用いる他、複数種を混合して併用することも可能である。
【0057】
本発明の導電性高分子微粒子におけるドーパント成分(a)中のスルホン酸基と(b)のモル比は、50:50〜10:90であることが好ましく、40:60〜20:80であることがより好ましい。ドーパント成分(a)中のスルホン酸基のモル比が10%未満の場合、得られた導電性高分子微粒子分散体を基材に塗布した際、十分な透明性が得られず、また、導電性高分子微粒子の分散安定性が十分に得られない場合がある。50%を超える場合、十分な導電性が得られない場合があり、また導電性高分子微粒子の分散が困難になる場合がある。
【0058】
本発明に用いることができるπ共役系導電性高分子としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等を用いることができるが、導電性および分散安定性に優れる導電性高分子微粒子分散体を得ることができ、またこの分散体により形成される導電性皮膜の透明性が優れることから、下記一般式(3)で示される化合物の重合体であることが好ましい。
【0059】
【化9】

【0060】
上式(3)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。Zはそれぞれ同一であっても異なっていても良い酸素原子又は硫黄原子を示す。Rは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。
【0061】
上記式(3)で示される化合物として、具体的には、3,4−エチレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、プロピル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、プロピル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシフラン、メチル−3,4−エチレンジオキシフラン、エチル−3,4−エチレンジオキシフラン、プロピル−3,4−エチレンジオキシフラン、3,4−プロピレンジオキシフラン、メチル−3,4−プロピレンジオキシフラン、エチル−3,4−プロピレンジオキシフラン、プロピル−3,4−プロピレンジオキシフラン、3,4−エチレンジチアチオフェン、メチル−3,4−エチレンジチアチオフェン、エチル−3,4−エチレンジチアチオフェン、プロピル−3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−プロピレンジチアチオフェン、メチル−3,4−プロピレンジチアチオフェン、エチル−3,4−プロピレンジチアチオフェン、プロピル−3,4−プロピレンジチアチオフェンなどが挙げられる。
【0062】
これらの中でも分散安定性に優れる導電性高分子微粒子分散体を得ることができ、またこれにより形成される導電性皮膜の導電性および透明性が優れることから、3,4−エチレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンが特に好適である。
【0063】
本発明の導電性高分子微粒子は、上記一般式(3)で示される化合物などπ共役系導電性高分子を構成するモノマー化合物を、上記ドーパント成分(a)および(b)の存在下で化学酸化重合あるいは電解酸化重合することによって得ることができる。
【0064】
化学酸化重合は、上記モノマー化合物を適当な酸化剤を用い反応させることによって行えばよく、また、電解重合は、上記モノマー化合物及び適当な支持電解質を含有した電解液中にて電解酸化することによって行うことができる。このうち、量産性や導電性高分子微粒子の形状の観点から、化学酸化重合が好適に用いられる。
【0065】
本発明の導電性高分子微粒子の製造方法の好ましい具体例としては、以下の方法を挙げることができる。
【0066】
すなわち、上記一般式(3)で示されるモノマー化合物などπ共役系導電性高分子を構成するモノマー化合物と、(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物、(b)低分子芳香族スルホン酸化合物、および化学酸化重合触媒を含有するモノマー溶液に、酸化剤含有溶液を添加して化学酸化重合させることにより導電性高分子微粒子を得る方法である。
【0067】
上記化学酸化重合触媒として、遷移金属化合物が好適に用いられ、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウムなどの塩であり、塩としては硫酸、塩酸、硝酸、酢酸などの塩が好ましく、その好ましい例としては硫酸第一鉄、硫酸第一銅、塩化第一銅、塩化モリブデン、塩化タングステン、硫酸第一鉄、硝酸第一銅等を挙げることができ、特に高収率で導電性高分子微粒子が得られることから、硫酸第一鉄が好ましい。
【0068】
モノマー溶液に用いる溶媒は、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合溶媒などを用いることができるが、得られる導電性高分子微粒子の導電性の点から水が好ましい。
【0069】
モノマー溶液中のモノマー化合物の濃度は、0.01〜3mol/Lが好ましく、0.1〜1mol/Lがより好ましい。ドーパント成分(b)の添加量は、このモノマー化合物1molに対して、スルホン酸基として好ましくは0.1〜3mol、より好ましくは、0.3〜2molである。一方、ドーパント成分(a)の添加量は、モノマー化合物1molに対して、好ましくは0.1〜10mol、より好ましくは0.2〜2molである。化学酸化重合触媒の添加量はモノマー化合物1molに対して0.0001〜0.5mol、より好ましくは0.001〜0.1molである。化学酸化重合触媒として、上記遷移金属化合物を用いる場合、遷移金属化合物は酸化剤としても作用し得るが、このような触媒量の濃度とすることが好ましく、これにより導電性高分子微粒子の分散性を向上することできる。
【0070】
上記酸化剤としては、モノマー化合物を化学酸化重合できる酸化剤であれば特に制限されず、例えば、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素、二酸化塩素、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、亜塩素酸等のハロゲン化物、5フッ化アンチモン、5塩化リン、5フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデン等の金属ハロゲン化物、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価状態金属イオンの塩、硫酸、硝酸、トリフルオロメタン硫酸等のプロトン酸、三酸化硫黄、二酸化窒素等の酸素化合物、過酸化水素、過硫酸アンモニム、過ホウ酸ナトリウム等のペルオキソ酸、前記ペルオキソ酸の塩、モリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸、前記ヘテロポリ酸の塩等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、適切な粒径を有する微粒子が得られることから、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等のペルオキソ硫酸塩を用いることが好ましく、より好ましくは過硫酸アンモニウムである。
【0072】
酸化剤含有溶液に用いる溶媒としては、水が好ましい。特に、モノマー化合物1molに対して、0.3〜5グラム当量の酸化剤を5〜40質量%の濃度で含有する水溶液とすることが好適である。
【0073】
上記モノマー溶液に酸化剤含有溶液を添加するにあたっては、モノマー溶液を撹拌しながら酸化剤含有溶液を滴下して、酸化剤含有溶液の投入量を制御しながら重合反応を行うことが好ましい。通常、モノマー溶液全量に対し、酸化剤含有溶液を0.1〜50時間、好ましくは0.2〜10時間かけて連続的、又は断続的に投入し、重合反応は、通常0℃〜100℃、好ましくは5℃〜60℃の範囲で0.2〜60時間、より好ましくは1〜12時間行う。
【0074】
反応後、析出物を公知の方法によって濾別し、必要により洗浄、乾燥することによって本発明の導電性高分子微粒子が得られる。
【0075】
上記製造方法によれば、酸化剤濃度の偏在が起こりにくく、局所的な重合反応の生成が抑制できるため、生成析出する導電性高分子微粒子の平均粒径を所望のものに制御することができ、より均一で分散性の良いものを高収率で得ることが可能となる。例えば、一次平均粒子径が10〜1000nmの導電性高分子微粒子を、用いたモノマー化合物の重量に対して80〜300%の収量で得ることができる。
【0076】
本発明の導電性高分子微粒子分散体は、上記のようにして得られる導電性高分子微粒子を分散媒に分散ないし溶解させてなるものである。この分散体の好ましい製造方法としては、導電性高分子微粒子、分散剤および溶媒を混合した導電性高分子微粒子溶液を湿式粉砕によって分散処理する方法が挙げられる。
【0077】
上記分散媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。
【0078】
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
【0079】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−オクタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0080】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等が挙げられる。
【0081】
エステル類としては、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、蟻酸イソブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、フタル酸エチル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル、γ−ブチロラクトン、マロン酸エチル、マロン酸メチル等が挙げられる。
【0082】
セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。
【0083】
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0084】
脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0085】
上記分散剤としては、アミン価を有する高分子系分散剤、酸価を有する高分子系分散剤、アミン価及び酸価を有する高分子系分散剤等を使用することができる。これらの市販品としては、例えば、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163,Disperbyk−166、Disperbyk−182、Disperyk−183、Disperbyk−184(以上、ビックケミー社製)、Solsperse−17000、Solsperse−20000、Solsperse−24000、Solsperse−32000(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素株式会社製)、EFKA4046、EFKA4300、EFKA4510(以上、EFKA社製)等が挙げられ、これらは、単独で使用しても良いし、併用することもできる。
【0086】
これらの中でも、特に、アミン価を有する高分子系分散剤(Disperbyk−161、Disperbyk−182等)を用いることが分散安定性の面から好ましい。
【0087】
分散剤の添加量としては、導電性高分子微粒子に対し、1〜10000重量%、好ましくは、10〜1000重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0088】
湿式粉砕は、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミルなどを使用することができ、バッチ式でも連続式でもよい。例えば、プレミックスとしてホモジナイザーで攪拌混合した後、ジルコニアビーズ等をメディアとしてビーズミルを用いて分散することができる。
【0089】
以上のようにして、導電性高分子微粒子を固形分濃度として通常0.1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%の分散体を調製することができる。このように高い固形分濃度のものが得られることから、膜厚の導電性皮膜を容易に形成することができる。
【0090】
また、分散媒中の導電性高分子微粒子の50%累積粒子径が10〜1000nmである分散体を調製することができる。なお、50%累積粒子径は、実施例中に記載された方法による測定値である。
【0091】
かくして得られる導電性高分子微粒子分散体を用いて基板上に導電性皮膜を形成することができる。導電性皮膜の形成方法としては、導電性高分子微粒子分散体をスピンコート等によって直接基板上にコートし、乾燥する方法が例示できる。
【0092】
また、本発明の導電性高分子微粒子分散体に導電性向上剤を添加することにより、得られる導電性皮膜の導電性をより高めることができる。
導電性向上剤は、π共役系導電性高分子の又はπ共役系導電性高分子のドーパントと相互作用して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させるものである。
導電性向上剤としては、例えば、窒素含有芳香族環式化合物、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物などが挙げられる。
【0093】
また、本発明の導電性高分子微粒子分散体を適当なバインダー樹脂と混合してコーティング組成物やインキ組成物として使用することも可能である。
【0094】
バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらバインダー樹脂は、有機溶剤にあらかじめ溶解されていてもよいし、スルホン酸基やカルボン酸基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
【0095】
バインダー樹脂の中でも、容易に混合できることから、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンのいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が硬いとともに透明性に優れるため、光学フィルタのような用途に適している。
【0096】
アクリル樹脂としては熱エネルギー及び/又は光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。
ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体及び自己架橋型重合体が挙げられる。
反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、カルボキシル基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メンタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物、1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物が挙げられる。
【0097】
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH)、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
【0098】
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシル基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシル基の両方を含むものなどが挙げられる。
【0099】
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0100】
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。
また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等が挙げられる。
【実施例】
【0101】
以下本発明について実施例等を挙げより詳細に説明する。なお、本発明は実施例等により何ら制限されるものでない。
【0102】
実 施 例 1
(導電性高分子微粒子(1)の合成)
イオン交換水100mlにスルホン酸基を有するポリエステル樹脂としてプラスコートZ−4000−100(互応化学工業株式会社製、スルホン化率40%)をスルホン酸基量として16mmol、2−ナフタレンスルホン酸24mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(1)を12.9g得た。また、この藍色重合体(1)を錠剤成型器で円盤状ペレット(直径13mm、厚み0.6mm)に成型した後、電導度計(三菱化学(株)製ロレスターGP(MCP−T600))を用いて電導度を測定した結果、7.0S/cmであった。
【0103】
(導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(1)3.5g、メチルエチルケトン60.2g、分散剤Disperbyk161(ビックケミー社製、有効成分30%、アミン価11mgKOH/g)6.3gとを分散機としてビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製DYNO MILL MULTI LAB)を用い、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率80%、スラリー温度を20℃以下に保って6時間攪拌混合することにより導電性高分子微粒子分散体(1a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体(1a)の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が770nmであった。
【0104】
(導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(1)3.5g、イソプロピルアルコール62.0g、分散剤Disperbyk182(ビックケミー社製、有効成分43%、アミン価13mgKOH/g)4.5gとを分散機としてビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製DYNO MILL MULTI LAB)を用い、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率80%、スラリー温度を20℃以下に保って6時間攪拌混合することにより導電性高分子微粒子分散体(1b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体(1b)の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が500nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が550nmであった。
【0105】
(導電性高分子微粒子分散体のガラス板への塗布)
得られた導電性高分子微粒子分散体(1a)をメチルエチルケトンで5倍に希釈後、ガラス板にスピンコート(2000rpm、10秒間)し、送風乾燥機により100℃で3分間乾燥させ、導電性高分子微粒子分散体を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は8×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.2%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は9×10Ω/□であり、全光線透過率が86.5%、ヘイズ値が1.4%であった。
ここで、表面抵抗値は表面抵抗測定機(三菱化学(株)製ハイレスターUP(MCP−HT450))を用いて測定し、全光線透過率及びヘイズ値はヘイズメーター(日本電色工業(株)製NDH5000)を用いて測定した。
【0106】
同様に得られた導電性高分子微粒子分散体(1b)をイソプロピルアルコールで5倍に希釈後、ガラス板にスピンコート(2000rpm、10秒間)し、送風乾燥機により100℃で3分間乾燥させ、導電性高分子微粒子分散体を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は9×10Ω/□であり、全光線透過率が88.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は1×10Ω/□であり、全光線透過率が87.5%、ヘイズ値が1.4%であった。
【0107】
(導電性インキ組成物(1c)の調製)
上記で得られた導電性高分子微粒子分散体(1b)2.0g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)1.5g、酢酸エチル2.3g、イソプロピルアルコール3.6g、N−メチル−2−ピロリドン0.5g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.1gを攪拌混合することにより、導電性インキ組成物(1c)を調製した。
【0108】
(導電性インキ組成物(1c)のフィルムへの塗布)
導電性インキ組成物(1c)を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイヤホイルT−600E、三菱樹脂株式会社製)にバーコーターNo.4を用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、光量50mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が89.0%、ヘイズ値が1.2%であった。
【0109】
実 施 例 2
(導電性高分子微粒子(2)の合成)
イオン交換水100mlにプラスコートZ−4000−100をスルホン酸基量として12mmol、2−ナフタレンスルホン酸28mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(2)を11.5g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、7.6S/cmであった。
【0110】
(導電性高分子微粒子分散体(2a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(2)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(2a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が650nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が660nmであった。
【0111】
(導電性高分子微粒子分散体(2b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(2)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(2b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が450nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が470nmであった。
【0112】
(導電性高分子微粒子分散体(2a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして導電性高分子微粒子分散体(2a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は6×10Ω/□であり、全光線透過率が87.6%、ヘイズ値が1.2%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は8×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
【0113】
(導電性高分子微粒子分散体(2b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして導電性高分子微粒子分散体(2b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は7×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は9×10Ω/□であり、全光線透過率が86.0%、ヘイズ値が1.4%であった。
【0114】
(導電性インキ組成物(2c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(2c)を調製した。
【0115】
(導電性インキ組成物(2c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が88.2%、ヘイズ値が1.3%であった。
【0116】
実 施 例 3
(導電性高分子微粒子(3)の合成)
イオン交換水100mlにプラスコートZ−4000−100をスルホン酸基量として8mmol、2−ナフタレンスルホン酸32mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(3)を10.3g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、9.8S/cmであった。
【0117】
(導電性高分子微粒子分散体(3a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(3)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(3a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が630nmであった。
【0118】
(導電性高分子微粒子分散体(3b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(3)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(3b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が400nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が430nmであった。
【0119】
(導電性高分子微粒子分散体(3a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(3a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が86.6%、ヘイズ値が1.4%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、全光線透過率が86.0%、ヘイズ値が1.6%であった。
【0120】
(導電性高分子微粒子分散体(3b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして導電性高分子微粒子分散体(3b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は6×10Ω/□であり、全光線透過率が86.0%、ヘイズ値が1.4%であった。
【0121】
(導電性インキ組成物(3c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(3c)を調製した。
【0122】
(導電性インキ組成物(3c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は1×10Ω/□であり、全光線透過率が88.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
【0123】
実 施 例 4
(導電性高分子微粒子(4)の合成)
イオン交換水100mlにプラスコートZ−4000−100をスルホン酸基量として4mmol、2−ナフタレンスルホン酸36mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(4)を8.9g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、49S/cmであった。
【0124】
(導電性高分子微粒子分散体(4a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(4)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(4a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が740nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が850nmであった。
【0125】
(導電性高分子微粒子分散体(4b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(4)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(4b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が750nmであった。
【0126】
(導電性高分子微粒子分散体(4a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(4a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は9×10Ω/□であり、全光線透過率が84.0%、ヘイズ値が1.6%であった。
また、作製一ヵ月後(保存条件:25℃)の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が82.0%、ヘイズ値が1.8%であった。
【0127】
(導電性高分子微粒子分散体(4b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(4b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は1×10Ω/□であり、全光線透過率が84.0%、ヘイズ値が1.6%であった。
また、作製一ヵ月後(保存条件:25℃)の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が82.0%、ヘイズ値が1.8%であった。
【0128】
(導電性インキ組成物(4c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(4c)を調製した。
【0129】
(導電性インキ組成物(4c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が86.5%、ヘイズ値が1.5%であった。
【0130】
実 施 例 5
(導電性高分子微粒子(5)の合成)
イオン交換水100mlにプラスコートZ−4000−100のスルホン化率を30%に減じて合成した樹脂(互応化学工業株式会社製、プラスコートGX−580)をスルホン酸基量として8mmol、2−ナフタレンスルホン酸32mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(5)を12.5g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、9.5S/cmであった。
【0131】
(導電性高分子微粒子分散体(5a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(5)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(5a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が700nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヶ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が800nmであった。
【0132】
(導電性高分子微粒子分散体(5b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(5)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(5b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヶ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が660nmであった。
【0133】
(導電性高分子微粒子分散体(5a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(5a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.4%であった。
また、作製一ヶ月後の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が86.5%、ヘイズ値が1.6%であった。
【0134】
(導電性高分子微粒子分散体(5b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(5b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が86.0%、ヘイズ値が1.5%であった。
また、作製一ヶ月後の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は6×10Ω/□であり、全光線透過率が85.5%、ヘイズ値が1.7%であった。
【0135】
(導電性インキ組成物(5c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(5c)を調製した。
【0136】
(導電性インキ組成物(5c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が88.0%、ヘイズ値が1.3%であった。
【0137】
実 施 例 6
(導電性高分子微粒子(6)の合成)
イオン交換水100mlにプラスコートZ−4000−100をスルホン酸基量として8mmol、p−トルエンスルホン酸32mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(6)を9.0g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、5.0S/cmであった。
【0138】
(導電性高分子微粒子分散体(6a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(6)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(6a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヶ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が660nmであった。
【0139】
(導電性高分子微粒子分散体(6b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(6)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(6b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が400nmであった。また、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヶ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が450nmであった。
【0140】
(導電性高分子微粒子分散体(6a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(6a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が87.5%、ヘイズ値が1.3%であった。
また、作製一ヶ月後の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.4%であった。
【0141】
(導電性高分子微粒子分散体(6b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(6b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が87.0%、ヘイズ値が1.4%であった。
また、作製一ヶ月後の導電性高分子微粒子分散体を、同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、全光線透過率が87.5%、ヘイズ値が1.5%であった。
【0142】
(導電性インキ組成物(6c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(6c)を調製した。
【0143】
(導電性インキ組成物(6c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、全光線透過率が88.5%、ヘイズ値が1.3%であった。
【0144】
比 較 例 1
(導電性高分子微粒子(7)の合成)
イオン交換水100mlに2−ナフタレンスルホン酸40mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(7)を6.9g得た。実施例1と同様に電導度を測定した結果、90S/cmであった。
【0145】
(導電性高分子微粒子分散体(7a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(7)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(7a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が680nmであった。しかし、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が1100nmであった。また、目視で確認できる沈降物が見られた。
【0146】
(導電性高分子微粒子分散体(7b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(7)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(7b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が600nmであった。しかし、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が1050nmであった。また、目視で確認できる沈降物が見られた。
【0147】
(導電性高分子微粒子分散体(7a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(7a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が80.0%、ヘイズ値が1.7%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は7×10Ω/□であり、全光線透過率が77.0%、ヘイズ値が2.0%であった。
【0148】
(導電性高分子微粒子分散体(7b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(7b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、全光線透過率が79.0%、ヘイズ値が1.8%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は8×10Ω/□であり、全光線透過率が76.0%、ヘイズ値が2.1%であった。
【0149】
(導電性インキ組成物(7c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(7c)を調製した。
【0150】
(導電性インキ組成物(7c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が83.0%、ヘイズ値が1.7%であった。
【0151】
比 較 例 2
(導電性高分子微粒子(8)の合成)
イオン交換水100mlにp−トルエンスルホン酸40mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(8)を5.7g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、6.0S/cmであった。
【0152】
(導電性高分子微粒子分散体(8a)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(8)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1a)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(8a)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が490nmであった。しかし、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が1200nmであった。また、目視で確認できる沈降物が見られた。
【0153】
(導電性高分子微粒子分散体(8b)の作製)
得られた導電性高分子微粒子(8)を用いて実施例1の導電性高分子微粒子分散体(1b)の作製と同様にして、導電性高分子微粒子分散体(8b)を得た。
得られた導電性高分子微粒子分散体の粒径を粒度分布測定装置(ナノトラック UPA−EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、50%累積粒径が450nmであった。しかし、導電性高分子微粒子分散体の作製一ヵ月後(保存条件:25℃)に同様に粒径を測定したところ、50%累積粒径が1100nmであった。また、目視で確認できる沈降物が見られた。
【0154】
(導電性高分子微粒子分散体(8a)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(8a)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、全光線透過率が79.0%、ヘイズ値が1.7%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は9×10Ω/□であり、全光線透過率が76.0%、ヘイズ値が2.0%であった。
【0155】
(導電性高分子微粒子分散体(8b)のガラス板への塗布)
実施例1と同様な処理を行うことにより、導電性高分子微粒子分散体(8b)を塗布したガラス板を得た。導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は5×10Ω/□であり、全光線透過率が79.0%、ヘイズ値が1.8%であった。
また、作製一ヵ月後の導電性高分子微粒子分散体を同様に塗布したところ、導電性高分子微粒子分散体が塗布された面の表面抵抗値は1×10Ω/□であり、全光線透過率が76.0%、ヘイズ値が2.1%であった。
【0156】
(導電性インキ組成物(8c)の調製)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物(8c)を調製した。
【0157】
(導電性インキ組成物(8c)のフィルムへの塗布)
実施例1と同様にして、導電性インキ組成物を塗布したフィルムを得た。導電性インキ組成物が塗布された面の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、全光線透過率が84.0%、ヘイズ値が1.7%であった。
【0158】
比 較 例 3
(導電性高分子微粒子(9)の合成)
イオン交換水200mlにプラスコートZ−4000−100をスルホン酸基量として40mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、ろ液のpHが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色の導電性高分子微粒子(9)を15.0g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、3.0S/cmであった。
【0159】
(導電性高分子微粒子分散体の作製)
得られた藍色重合体を用いて、実施例1と同様にして導電性高分子微粒子分散体の作製を試みたが、再凝集が見られ均一な分散液を得ることはできなかった。
【0160】
比 較 例 4
(導電性高分子微粒子(10)の合成)
イオン交換水100mlにポリスチレンスルホン酸(アルドリッチ社製、平均分子量75000)をスルホン酸基量として12mmol、2−ナフタレンスルホン酸28mmol、硫酸第一鉄0.4mmolを加え攪拌した。次に重合性単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン40mmolを加え攪拌した。この溶液を攪拌しながら、30%過硫酸アンモニウム水溶液34g(過硫酸アンモニウムとして45mmol)をゆっくりと添加し40℃で4時間反応させた。得られた析出物をろ過し、イオン交換水で洗浄し、次にアセトンで洗浄後、乾燥させ、藍色重合体を7.4g得た。また、実施例1と同様に電導度を測定した結果、51S/cmであった。
【0161】
(導電性高分子微粒子分散体の作製)
得られた藍色重合体を用いて、実施例1と同様にして導電性高分子微粒子分散体の作製を試みたが、再凝集が見られ均一な分散液を得ることはできなかった。
【0162】
上記実施例1〜6及び比較例1〜4に示した導電性高分子微粒子分散体の作製条件及び評価結果を下表1にまとめた。
【0163】
【表1】

【0164】
上表に示した通り、本実施例1〜6のものは、分散体作製1ヶ月後にも粒径に大きな変化が見られず、分散安定性に優れていた。一方、比較例1、2に示したものは微粒子の再凝集により粒径の増大が見られた。
【0165】
さらに、本実施例1〜6のものは、低表面抵抗であり、かつ、全光線透過率に優れ、ヘイズの小さいものであった。一方、比較例1のものは透過率が小さく、ヘイズも大きいものであった。比較例2のものは、表面抵抗値が高く、ヘイズも大きいものであった。
【0166】
以上の結果より、本発明の導電性高分子微粒子分散体は、分散安定性、導電性および透明性のいずれにも優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の導電性高分子微粒子分散体は、分散安定性に優れ、導電性が高く透明性に優れる皮膜を形成することができるため、帯電防止フィルム、防食塗料、EMIシールド、メッキプライマー等の用途に利用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子にドーパント成分をドープした導電性高分子の微粒子であって、ドーパント成分が、少なくとも次の成分(a)および(b);
(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物
(b)低分子芳香族スルホン酸化合物
を含むことを特徴とする導電性高分子微粒子。
【請求項2】
成分(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物が、
下記一般式(1)
【化1】

(上式中、Rはグリコール残基を示し、Aは、スルホン酸基を除く置換基を有していてもよい多価カルボン酸残基を示す。nは1或いは2を示す。)
で示される繰り返し単位及び、下記一般式(2)
【化2】

(上式中、Rはグリコール残基を示し、Bは芳香環を示す。nは1或いは2を示す。)
で示される繰り返し単位を含む共重合体である請求項1に記載の導電性高分子微粒子。
【請求項3】
成分(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物における一般式(2)で示される繰り返し単位が、少なくとも20モル%以上である請求項2に記載の導電性高分子微粒子。
【請求項4】
成分(a)中のスルホン酸基と成分(b)のモル比が、40:60〜20:80の範囲である請求項1〜3のいずれかの項に記載の導電性高分子微粒子。
【請求項5】
π共役系導電性高分子が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Zは、それぞれ同一であっても異なっていても良い酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で示されるモノマー化合物の重合体である請求項1〜4のいずれかの項に記載の導電性高分子微粒子。
【請求項6】
下記一般式(3)
【化4】

(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Zは、それぞれ同一であっても異なっていても良い酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基を示す。)
で示されるモノマー化合物、(a)スルホン酸基を有するポリエステル樹脂系化合物、(b)低分子芳香族スルホン酸化合物および化学酸化重合触媒を含有するモノマー溶液に、酸化剤含有溶液を添加することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項7】
モノマー溶液中の成分(a)中のスルホン酸基と成分(b)のモル比が、40:60〜20:80の範囲である請求項6に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の導電性高分子微粒子を分散媒に分散ないし溶解させてなる導電性高分子微粒子分散体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の導電性高分子微粒子、分散剤および分散媒を混合した導電性高分子微粒子含有液を湿式粉砕によって分散処理することを特徴とする導電性高分子微粒子分散体の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の導電性高分子微粒子分散体を含有することを特徴とする導電性インキ組成物。

【公開番号】特開2012−12507(P2012−12507A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150738(P2010−150738)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】