説明

導電性高分子微粒子の製造方法、それにより得られる導電性高分子微粒子およびその水性分散液、並びにその製造方法に用いられる流通式反応装置。

【課題】膜厚が厚くても透明性にすぐれた導電性薄膜を形成することができる導電性高分子微粒子を、効率良く得ることができる製造方法を提供する。さらにまた、微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子であり、しかもその電気特性等の各物性を調節・制御して得ることができ、この大量生産にも好適に対応しうる製造方法の提供、それにより得られる導電性高分子微粒子およびその水性分散液、並びにこれに用いられる流通式反応装置を提供する。
【解決手段】導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入して流通させ、この流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化するに当たり、前記の流通導電性高分子前駆体モノマー液に磁場を印加することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子微粒子の製造方法、それにより得られる導電性高分子微粒子およびその水性分散液、並びにその製造方法に用いられる流通式反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、ならびに電磁波シールド材などの基材のコーティングに用いられている。最も広く応用されている透明導電膜は、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)の蒸着膜であるが、成膜に高温が必要であるとか、成膜コストが高いという問題点がある。塗布成膜法によるITO膜も、成膜に高温が必要であり、その導電性はITOの分散度に左右され、ヘイズ値も必ずしも低くない。さらに、ITOなどの無機酸化物膜は、基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすい。また、インジウムは希少金属であり供給源が限られ、供給量が変動したり、滞ったりするおそれがある。そのため、各種表示機器等のより安定した生産を維持するよう、ITOに替わる次世代の透明導電膜材料が切望されている。
【0003】
導電性高分子であるポリピロールやポリチオフェンは、微粒子分散状態でも導電性能を有しかつ空気中で安定であり、導電性塗料、防錆塗料、半導体材料、コンデンサ用電解質、有機EL素子の正孔輸送材や電極材、二次電池用電極材等への活用が期待されている。そして導電性高分子は一般的に低温かつ低コストで成膜でき、これをITOなどの無機材料に換えて透明導電膜として用いることが提案されている。しかしながら、上記導電性高分子材料は通常黒色・粉末状のものである。有機材料ではあるが溶媒に不溶であり、微粒子状態で使用して、導電性を維持しながら、しかも高い透明性を実現することは困難である。
【0004】
ところで、ポリピロールの成形加工性の改良を目的として、ポリビニルアルコール(PVA)、界面活性剤等を用いて、ポリピロールを水性溶媒中に微分散させ、見掛け上均一な水性分散体を製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、ポリ酸の存在下重合することにより、好適な処理特性を有し、帯電防止材に適したポリチオフェンの水分散体を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。このほか、導電性高分子を形成するモノマーを反応性乳化剤の存在下に水中で化学酸化重合することで導電性高分子微粒子分散体を製造する方法が開示された(特許文献3参照)。しかし、上記で開示されている製造方法は、いずれもフラスコないし電解槽等を用いるバッチ法において重合反応させるものである。
【0005】
さらに、チオフェン等のモノマーやオリゴマーを電解液中において、電極表面上で電解液中のモノマー及び/又はオリゴマーに電気化学的に重合反応を生じさせるに当たり、該反応を10e以上の磁場の存在下に実施する有機導電体の製造方法が開示されている(特許文献4参照)。これにより、有機導電体に異方導電性を付与することができるとされる。しかし、これもやはり電解槽で反応させる方法を開示するものであり、しかも得られるポリチオフェン等の有機導電体はフィルム状のものであり、微粒子ではない。
【0006】
そのほか、作用電極および対極を内包するチャンネル形電極セル中のモノマー含有電解液に磁場を存在させ、この磁場の作用によって極めて緩やかに流動させたモノマー含有電解液において電解重合反応を行う方法が開示されている(特許文献5参照)。しかし、ここで得られる重合体もフィルム(薄膜)であり微粒子ではない。
【0007】
【特許文献1】特公平7−78116号公報
【特許文献2】特開平7−90060号公報
【特許文献3】特開2007−297500号公報
【特許文献4】特開平7−179576号公報
【特許文献5】特開平3−263424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の導電性ポリマーの水性分散体から導電性薄膜を形成した場合、薄い膜厚で所望の抵抗値を得ることは難しく、通常十分な抵抗値を達成するには数10μm以上の膜厚が必要であった。しかしながら、このような厚さの膜では、透明性の低い、黒色のものとなることがある。
本発明は、上記課題点を解決し、膜厚が厚くても透明性にすぐれた導電性薄膜を形成することができる導電性高分子微粒子を、効率良く得ることができる製造方法の提供を目的とする。さらにまた、本発明は微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子であり、しかもその電気特性等の各物性を調節・制御して得ることができ、この大量生産にも好適に対応しうる製造方法の提供、それにより得られる導電性高分子微粒子およびその水性分散液、並びにこれに用いられる流通式反応装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、以下の手段により達成された。
(1)導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入して流通させ、この流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化するに当たり、前記の流通導電性高分子前駆体モノマー液に磁場を印加することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。
(2)前記導電性高分子前駆体モノマー液が、該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることを特徴とする(1)に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(3)前記酸化重合が電解酸化重合であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(4)前記印加される磁場の強度が0.1T(テスラ)以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(5)導電性高分子前駆体モノマー液の流通速度を0.1ml/min以上100ml/min以下としたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(6)前記流通式反応装置が、前記導電性高分子前駆体モノマーを流通させる液体流通駆動手段と、該モノマーを電解酸化重合するための電圧印加手段と、前記流通状態のモノマー液に磁場を印加する磁場印加手段とを備えたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(7)前記流通式反応装置の流路の等価直径が10mm以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(8)前記流通式反応装置の流路の等価直径が1mm以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(9)導電性高分子微粒子を水性媒体に分散させた水性分散液として得ることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(10)導電性高分子微粒子がポリチオフェンの微粒子であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の方法で製造された導電性高分子微粒子。
(12)(11)に記載の導電性高分子微粒子を含有する水性分散液。
(13)前記導電性高分子微粒子の体積平均粒径(MV)が10〜70nmであり、体積平均粒径(MV)/個数平均粒径(MN)が1.2〜3.0であることを特徴とする(11)または(12)に記載の水性分散液。
(14)前記水性分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜に対する波長550nmの可視光線の透過率が95%以上であることを特徴とする(11)〜(13)のいずれか1項に記載の水性分散液。
(15)前記水性分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜の湿度50%下での表面抵抗率が1×10Ω/□以下であることを特徴とする(11)〜(14)のいずれか1項に記載の水性分散液。
(16)導電性高分子前駆体モノマーを流通させ、その流通過程で該モノマーを重合した導電性高分子を微粒子として生成させる流路を備えた流通式反応装置であって、前記導電性高分子前駆体モノマー液を前記流路内に流通させる液体流通駆動手段と、前記流通状態の導電性高分子前駆体モノマーを電解酸化重合するための電圧印加手段と、該流通状態のモノマー液に磁場を印加する磁場印加手段とを備えたことを特徴とする流通式反応装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、成膜性に優れ、可撓性を有し、厚くても十分な透明性を有し、高導電性の導電膜を形成しうる導電性高分子微粒子を、効率良く得ることができる。また本発明の製造方法によれば、上記の優れた特性を発揮する微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子を、必要によりその電気特性等の各物性を調節・制御して調製することができ、その大量生産にも好適に対応しうる。
本発明の導電性高分子微粒子及びその水性分散液は、ITOに替わる、エレクトロルミネッセンスパネルの表面電極、液晶ディスプレイの画素電極、コンデンサの電極、タッチパネルの透明電極などの各種透明電極を形成する透明導電性材料、ならびにブラウン管ディスプレイの電磁遮蔽材料として好適に利用できる。また、低温成膜が可能で、その薄膜は可撓性を有することから、プラスチックフィルム用の透明性の高い導電膜に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明製造方法においては、導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入して流通させ、この流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化するに当たり、前記流通させた導電性高分子前駆体モノマー液に磁場を印加する。
【0012】
まず、本発明における磁場効果について説明する。本発明においては、電解重合を磁場中で行うことにより、例えば次のような効果が期待できると考えられる。一般に、電荷(e)をもつ荷電粒子が磁束密度(B)の磁場の中を速度(V)で動くとき、磁場の方向と荷電粒子が移動する方向の両方に垂直な方向にローレンツ力(F)が働く。その大きさは、F=eV×Bで表される。このような効果を磁気流体力学(magnetohydrodynamics:MHD)効果とよび、この効果をポリマーの構造制御に利用することができる。磁場を用いることから、分子内の反磁性の異方性に起因して構造が制御される可能性もあり、これら両方の効果が複雑に混在しながら作用することもありえる。
【0013】
さらに詳しくは、本発明において磁場の印加を、導電性高分子微粒子の成長形態、微細組織の制御に用いることができる。これにより熱的特性、電気伝導性、結晶の配向性、光学特性(透明性)といった物性値に影響を及ぼし、所望の機能を付与するよう作用させてもよい。この磁場効果の好ましい実施態様についていうと、一部推定を含むが、異方性効果が乳化液滴中での重合でも十分寄与しうることが考えられる。そのため、磁場の存在下でラジカル重合における重合促進効果、つまりラジカル中間体を安定化し重合停止を起きにくくする効果が期待できる。そのような作用を通じ、本発明によれば、例えば導電性高分子のポリマー鎖を長くし、ナノメートルサイズの微粒子でありながら導電性を一層良化したものとすることができる。なお磁場の印加手段についての詳細は後述する。
【0014】
本発明の製造方法に用いられる導電性の高分子化合物の原料として用いるモノマー(以下、「導電性高分子前駆体モノマー」という。)は、チオフェン、ピロール、アニリン、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。導電性高分子前駆体モノマーとして例えば、チオフェン誘導体としては、アルキルチオフェン(例えば3−メチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ステアリルチオフェン、3−ベンジルチオフェン、3−メトキシジエトキシメチルチオフェン)、ハロゲン化チオフェン(例えば3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェン)、アリルチオフェン(3−フェニルチオフェン、3,4−ジフェニルチオフェン、3−メチル−4−フェニルチオフェン)、アルコキシチオフェン(例えば3,4ジメトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。ピロール誘導体としては、N−アルキルピロール(例えばN−メチルピロール、N−エチルピロール、メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール)、N−アリールピロール(例えばN−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール)、3−アルキルピロール(例えば3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール)、3−アリールピロール(例えば3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール)、3−アルコキシピロール(例えば3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール)、3−アリールオキシピロール(例えば3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール)、3−アミノピロール(例えば3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール)等が挙げられる。また、アニリン誘導体としては、アルキルアニリン(例えばo−メチルアニリン、m−メチルアニリン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニンリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン)、アルコキシアニリン(例えばm−メトキシアニリン、2,5−ジメトキシアニリン)、アリールオキシアニリン(例えば3−フェノキシアニリン)シアノアニリン(例えばo−シアノアニリン、m−シアノアニリン)、ハロゲン化アニリン(例えば、m−クロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン)等が挙げられる。好ましい導電性高分子前駆体モノマーは、チオフェン誘導体であり、更に好ましくはアルコキシチオフェンである。特に好ましくは3,4−ジアルコキシチオフェンである。3,4−ジアルコキシチオフェンについて、以下詳しく説明する。
【0015】
本発明の導電性高分子微粒子の製造方法に用いられる3,4−ジアルコキシチオフェンは、下記一般式(1)で表される。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、RおよびRは相互に独立して水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であるか、あるいはRとRとが結合して炭素原子数1〜4のアルキレン基を形成していてもよく、該アルキレン基は任意の置換基により置換されてもよい。
【0018】
一般式(1)において、RおよびRの炭素原子数1〜4のアルキル基としては、好適には、メチル基、エチル基、n−プロピル基などが挙げられる。RおよびRが結合して形成される炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、1,2−アルキレン基、1,3−アルキレン基などが挙げられ、好ましくは、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基などが挙げられる。このうち、1,2−エチレン基が特に好ましい。また、炭素原子数1〜4のアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基などが挙げられる。置換された炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、1,2−シクロヘキシレン基、2,3−ブチレン基などが挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる導電性高分子前駆体モノマー液は、該モノマーを酸化重合反応に用いる溶媒に均一に溶解させた液であってもよいが、固体状のモノマーを分散させた分散液であってもよいし、該モノマーを連続層および/または分散相に含む乳化液であってもよい。本発明において乳化とは、液体(連続相)中に液体粒子(分散相)がコロイド粒子又はそれより粗大な粒子として分散して安定な乳状分散系をなすことをいう。本発明の導電性高分子前駆体モノマー液は該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることが好ましく、連続相中に水を含む乳化液として用いることが特に好ましい。乳化液を調製する方法には特に限定はないが、ホモジナイザーを用いる方法、もしくは後述するマイクロリアクター(マイクロミキサー)を用いる方法が好ましい。該モノマー液は導電性高分子前駆体モノマー以外に溶媒および/または後述する各添加剤を導入してもよい。導電性高分子前駆体モノマー液中の導電性高分子前駆体モノマーの濃度は好ましくは0.01〜100質量%であり、より好ましくは0.1〜50質量%であり、特に好ましくは1.0〜20質量%である。ただし、80〜100質量%の場合は液状モノマーに限る。
【0020】
本発明の導電性高分子前駆体モノマーから得られる導電性高分子は、好ましいモノマーである3,4−ジアルコキシチオフェンで示せば一般式(2)で表されるような構造単位からなるポリマーである。なお、導電性高分子は溶剤に不溶なため、通常の測定方法によりポリマーの物性を規定するために用いる平均分子量を特定することは難しい。
【0021】
【化2】

【0022】
式中、R11は前記R、R22は前記Rと同義の基を表わす。
【0023】
本発明の製造方法で得られる導電性高分子微粒子の粒径(本発明において粒径とは粒子の直径をいう。)は動的光散乱法により測定された体積平均粒径(Mv)が10〜70nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。単分散性については、その指標である体積平均粒径(Mv)を個数平均粒径(Mn)で除した値(Mv/Mn)を用い、その値が1.2〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.0であることがより好ましい。
なお、粒子の粒径測定方法としては、顕微鏡法、動的光散乱法、電気抵抗法などを用いることができる。本発明における粒径は、特に断らない限り、動的光散乱法による(機器は日機装社製ナノトラックUPA―EX150[商品名])、分散液の濃度0.2質量%での測定値をいう。
【0024】
本発明の製造方法においては、導電性高分子前駆体モノマー液は前記流通式反応装置中の流通過程で酸化重合されるが、以下にその酸化重合方法について詳しく説明する。
流通過程で酸化重合する方法としては、酸化剤と流通過程で接触させて重合させる化学酸化重合と、流通過程でモノマー液を電極の間を通過させることで電気的に酸化する電解酸化重合とが挙げられる。
【0025】
まず、化学的酸化重合と電解酸化重合とに共通する事項について説明する。
本発明の流通過程での酸化重合において、得られる微粒子分散液の透明性および導電性を高めるために陰イオンを共存させてもよい。特にポリ陰イオンの共存がよい結果を与える場合が多い。共存させてもよいポリ陰イオンとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などのポリカルボン酸類、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などのポリスルホン酸類などが挙げられる。これらの中で、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。これらのカルボン酸およびスルホン酸類はまた、ビニルカルボン酸類またはビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類(例えば、アクリレート類、スチレンなど)との共重合体であっても良い。また、上記ポリ陰イオンの数平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲が好ましく、2,000〜500,000の範囲がより好ましく、10,000〜200,000の範囲が特に好ましい。ポリ陰イオンの使用量は、導電性高分子前駆体モノマー100重量部に対して、50〜3,000の範囲が好ましく、100〜1,000の範囲がより好ましく、150〜500の範囲が特に好ましい。
【0026】
酸化重合反応に用いる溶媒は、重合に不活性な溶媒であれば特に制限はないが、酸化重合過程に用いられる溶媒は化学酸化重合においては、酸化剤を十分に溶解可能な溶媒が好ましく、電解酸化重合においては伝導性を有する溶媒が好ましい。両方の酸化重合に用いることが可能な溶媒を具体的に示せば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールもしくはエチレングリコールなどのアルコール化合溶媒、アセトンもしくはメチルエチルケトンのケトン化合物溶媒、アセトニトリルなどのニトリル化合溶媒、ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドンなどのアミド化合溶媒、または水性媒体である。これらのうち特に水性媒体が好ましい(本発明において、水性媒体とは、水あるいは水に有機溶媒及び/又は酸ないし塩基を溶解した溶液をいう。)。水性媒体としては、前記有機溶媒を混合した水性媒体又は水が好ましく、水が特に好ましい。水性媒体を含む溶媒を酸化重合の反応液の媒体として用いた場合、得られる導電性高分子微粒子分散液は水性分散液として得られる。本発明において、水性分散液とは水性媒体を主媒体とする分散液をいい、その他の成分を含有していてもよい。本発明の導電性高分子微粒子は、その水性分散液として得られることが好ましい。このとき、微粒子の分散安定性等を考慮して有機溶媒を添加して用いてもよい。本発明において、上記分散液に含まれる導電性高分子微粒子の含有量は特に限定されないが、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましい。
【0027】
重合を行う際の反応混合液の温度は、−78〜100℃であることが好ましく、副反応を抑制する観点から、−10〜60℃がより好ましく、0〜50℃が特に好ましく、0〜30℃であることが殊更好ましい。
【0028】
また重合に際して、反応系中にドーピング剤(ドーパント)を共存させることにより、ドーパントを重合体中に導入することもできる。用いられるドーパントとしては、一般に使用されるアクセプター性のドーパントであれば特に制限はなく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、5フッ化リン等のルイス酸、塩化水素、硫酸等のプロトン酸、塩化第二鉄等の遷移金属塩化物、過塩素酸銀、フッ化ホウ素酸銀等の遷移金属化合物が挙げられる。また重合に用いる酸化剤の一部が重合体中に取り込まれドーパントの役割を果たすこともある。このようなドーパントの導入は本発明において必須ではないが、ドーパントを導入することによって、さらなる導電性能の向上が可能である。
【0029】
得られる導電性高分子微粒子の性能を悪化させない範囲で界面活性剤を使用してもよいし、ドープ剤として(ポリ)陰イオンを共存させるときは、それを界面活性剤の代わりとしてもよい。界面活性剤は(1)析出した微粒子表面に素早く吸着して、微細な粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものであることが好ましい。本発明では、このような界面活性剤(分散剤)として、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の低分子または高分子分散剤、又は高分子分散剤を使用することができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。
【0030】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、アシルメチルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、アシルメチルタウリン塩が好ましい。これらアニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
両イオン性分散剤(両イオン性界面活性剤)は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0033】
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
次に化学的酸化重合について説明する。
本実施態様において化学的酸化重合に用いる酸化剤としては、流通過程でモノマーを十分に酸化重合させる能力があれば特に限定されないが、好ましくはペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、無機酸化第二鉄塩、有機酸化第二鉄塩、過酸化水素、過酢酸、過マンガン酸カリウム、硫酸セリウム、ニクロム酸カリウム、過ホウ酸アルカリ塩、銅塩などである。特に好ましくは、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、およびペルオキソ二硫酸アンモニウムである。また、助酸化剤(メディエーター)として触媒量の金属イオン、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムイオンなどを添加しても良い。酸化剤の使用量は、上記導電性高分子前駆体モノマー1モル当たり、1から5当量の範囲が好ましく、より好ましくは、2から4当量の範囲である。反応温度は、用いるモノマー、酸化剤の種類や量等により適宜調節すればよいが、−78〜100℃で行うことが好ましく、−10〜60℃で行うことがより好ましい。
【0035】
次に電解酸化重合について説明する。
電解酸化重合は、電解条件下に不活性である溶媒の存在下、又は非存在下に実施することができ、不活性である溶媒の存在下に実施することが好ましい。また、溶媒に所定の添加剤を添加してもよい。電解酸化重合に用いる添加剤としては、電解質化合物、メディエーター(助酸化剤)等が挙げられる。
【0036】
好ましく使用される電解質化合物は、使用する溶媒にある程度の溶解性を有する遊離酸又は標準的な導電性を有する塩である。電解質化合物として適している化合物は、例えば、遊離酸ではp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、並びに塩としてアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、テトラフルオロホー酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロ砒酸塩、及びヘキサクロロアンチモン酸塩及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は随時アルキル化されていて良いアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びオキソニウムカオチンが挙げられる。
【0037】
電解質化合物は、電解中少なくとも0.1mAの電流が流れるのに必要な量を使用することが好ましい。電解酸化重合の際の導電性高分子前駆体モノマー液の導電性高分子前駆体モノマーの濃度は、特に限定されないが、0.01〜100質量%であることが好ましく、0.05〜20質量%であることがより好ましい。100質量%は液状モノマーの場合である。
【0038】
電解酸化重合においては、反応基質(モノマーまたはオリゴマー)と電極との電子移動を仲立ちするメディエーター(助酸化剤)を共存させることが好ましい。メディエーターとして有機、無機、金属メディエーターがあるが、好ましくは有機もしくは無機メディエーターである。具体的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)のN−オキシル化合物などの有機メディエーターや塩化鉄など無機メディエーターである。
【0039】
電解酸化重合は、不連続的に又は連続的に実施することができる。電解酸化重合反応を起こさせるために電圧を印加するときの電極材料として適している材料としては、例えば、貴金属及び鋼が挙げられる。具体的には、白金シート、鋼板、貴金属及び鋼の網、カーボンブラック充填ポリマー、金属蒸着絶縁層、カーボンフェルト等である。その他、膨潤性ポリマーフィルム(例えば、ポリ塩化ビニールフィルム)を塗布した電極を用いることができる。電解酸化重合の電流密度は広い範囲で変えることができ、電流密度は0.0001〜100mA/cmが好ましく、0.01〜40mA/cmがより好ましい。このような電流密度で電圧は約0.1〜50Vであることが好ましく、0.5〜30Vであることがより好ましい。電解酸化重合を行う際の反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、副反応を抑制する観点から、0〜50℃がより好ましく、0〜30℃であることが特に好ましい。
【0040】
電解酸化重合法については、特開昭61−8344号公報、同63−137925号公報、特開平1−313521号公報の記載を参考にすることができる。
【0041】
本発明の製造方法において、導電性高分子前駆体モノマー液は流通式反応装置中の流通過程で酸化重合されるが、流通式反応装置の流通過程について以下に詳しく説明する。酸化重合を流通過程で行うことにより導電性高分子前駆体モノマーの酸化重合を反応釜中で行うバッチ法に比べて均一な条件下で重合反応を行うことができる。また、電解酸化重合の場合、フラスコや電解槽を用いるバッチ法では、導電性高分子が電極上に堆積した膜として得られるため所望の微粒子として得ることは困難である。
【0042】
本発明において、流通過程の中でも層流下、または層流と乱流の間に位置する過渡状態下の過程で酸化重合することが好ましい。層流および乱流とは以下のように説明される。管の中に水を流し、その中心軸状に細い管を挿入し着色した液を注入すると、水の流速が遅い間は、着色液は一本の線となって流れ、水は管壁に平行にまっすぐに流れる。しかし、流速を上げ、ある一定の流速に達すると急に水流の中に乱れが生じ、着色液は水流と混じって全体が着色した流れになる。前者の流れを層流(laminar flow)、後者を乱流(turbulent flow)という。その間を過渡状態の流れという。
【0043】
流れが層流になるか乱流になるかは流れの様子を示す無次元数であるレイノルズ数(Reynolds number)が、ある臨界値以下であるか否かによって決まる。レイノルズ数が小さいほど層流を形成しやすい。管内の流れのレイノルズ数Reは次式で表される。
Re=D<υ>ρ/μ
Dは管の等価直径、<υ>は断面平均速度、ρは流体の密度、μは流体の粘度を表す。この式からわかるように等価直径が小さいほどレイノルズ数は小さくなるので、μmサイズの等価直径の場合は安定な層流を形成しやすくなる。また、密度や粘度の液物性もレイノルズ数に影響し、密度が小さく、粘度が大きいほどレイノルズ数は小さくなるので層流を形成しやすいことがわかる。
【0044】
流れが変化する臨界値のレイノルズ数を臨界レイノルズ数(critical Reynolds number)と呼ぶ。臨界レイノルズ数は必ずしも一定とはいえないが、凡そ次の値が基準となる。(荻野文丸総編集、「化学工学ハンドブック」、p37、2004年、朝倉書店)
Re<2300 層流
Re>4000 乱流
4000≧Re≧2300 過渡状態(遷移領域)
【0045】
過渡状態の流れとして、例えば層流渦の領域から乱流領域までを含む流れであるカルマン渦やテーラー渦等がある(「化学工学便覧改訂六版,化学工学会編,丸善株式会社」、「理化学辞典第5版,岩波書店」、「M.Engler et al.,“Effective Mixing by the Use of Convective Micro Mixers”,Conference Proceedings,2005 Spring National Meeting,AIChE,128d」、特開2006−342304号公報参照)。
【0046】
層流又は過渡状態(Re<4000)の流通過程で微粒子形成を行い、粒子の成長速度を制御することにより、粒子サイズが小さく、かつその分布が狭い微粒子分散液を効率良く調製することができる。この流通過程での酸化重合による導電性高分子微粒子析出は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。とりわけ、粒径分布の幅が狭い(単分散度性に優れる)微粒子であることは透明性に優れた薄膜形成に好ましい。
【0047】
本発明の製造方法において、好ましい流通式反応装置は流路の等価直径が10mm以下の装置であり、特に好ましくは等価直径1mm以下の装置である。流路の等価直径1mm以下の流通式反応装置は、一般に「マイクロリアクター」と総称され、最近大きな発展を遂げている。代表的マイクロリアクターには、その断面を円形に換算した場合の等価直径が数μm〜数百μm程度の複数本のマイクロ流路(上記の反応装置)、及びこれらのマイクロ流路と繋がる混合空間が設けられており、このマイクロリアクターでは、複数本のマイクロ流路を通して複数の溶液をそれぞれ混合空間へ導入することで、複数の溶液を混合し、又は混合と共に化学反応を生じさせることができる。
【0048】
次に、上記のようなマイクロリアクターによる反応がタンク等を用いたバッチ方式と異なる点を説明する。すなわち、液相間の化学反応では、一般に反応液の界面において分子同士が出会うことによって反応が起こるので、微小空間(マイクロ流路)内で反応を行うと相対的に界面の面積が大きくなり、反応効率は著しく増大する。また前記のように分子の拡散そのものも拡散時間は距離の二乗に比例する。このことは、スケールを小さくするに従って、反応液を能動的に混合しなくても、流通域で分子の拡散によって混合が進み、反応が起こり易くなることを意味している。また、微小空間においては、スケールが小さいために層流支配の流れとなり、溶液同士が層流状態となって互いに拡散し、混合されて行く。
【0049】
上記のような特徴を有するマイクロリアクーを用いれば、反応の場として大容積のタンク等を用いた従来のバッチ方式と比較し、溶液同士の反応時間及び温度の精密な制御が可能になる。またバッチ方式の場合には、特に、反応速度が速い溶液間では混合初期の反応接触面で反応が進行し、さらに溶液間の反応により生成された一次生成物が容器内で引き続き反応を受けてしまうことから、生成物が不均一になったり、混合容器内で凝集や析出が生じてしまうおそれがある。これに対して、マイクロリアクターによれば、溶液が混合容器内に殆ど滞留することなく連続的に流通するので、溶液間の反応により生成された一次生成物が混合容器内に滞留する間に引き続き反応を受けてしまうことを抑止でき、従来では取り出すことが困難であった純粋な一次生成物を取り出すことも可能になる。
【0050】
また、実験的な製造設備により製造された少量の化学物質を大規模の製造設備により多量に製造(スケールアップ)する際には、従来、実験的な製造設備に対し、バッチ方式による大規模の製造設備での再現性を得るために多大の労力及び時間を要していたが、必要となる製造量に応じてマイクロリアクーを用いた製造ラインを並列化することにより、このような再現性を得るための労力及び時間を大幅に減少できる可能性がある。なお、マイクロリアクターの作製は通常の方法によればよく、例えば特開2005−307154号公報の段落[0035]〜[0040]を参考にすることができる。
【0051】
本発明の製造方法に用いられる装置における流路の等価直径は、好ましくは10mm以下であり、1mm以下であることがより好ましく、10μm〜1mmであることがさらに好ましく、20〜500μmであることが特に好ましい。また流路の長さは特に限定されないが、1mm以上10m以下であることが好ましく、5mm以上10m以下であることがより好ましく、10mm以上5m以下であることが特に好ましい。マイクロリアクターに関しては、反応の効率向上などを目指したデバイスに関する報告がなされている。例えば、特開2003−210960号、特開2003−210963号、特開2003−210959号の各公報にはマイクロミキサーに関して記載されており、これらのマイクロデバイスを利用することもできる。
【0052】
流路中へ所定の液体を導入して流通させるために、液体流通駆動手段を用いることが好ましく、さらには流体制御手段を用いることがより好ましい。特に、マイクロ流路内における流体の挙動は、マクロスケールとは異なる性質を持つため、マイクロスケールに適した制御方式を採用することが好ましい。液体駆動方式は形態分類すると連続流動方式と液滴(液体プラグ)方式があり、駆動力分類すると電気的駆動方式と圧力駆動方式がある。これらの方式におけるさらに詳細については、例えば特開2005−307154号公報の段落[0041]〜[0046]を参照することができる。
【0053】
本発明の製造方法において、流路を流れる流体の速度(流速)は、化学酸化重合及び電解酸化重合を含め0.002ml〜5000ml/minとすることが好ましく、0.003ml〜500ml/minとすることがより好ましく、0.01ml〜250ml/minとすることが更に好ましく、0.1ml〜100ml/minとすることが特に好ましい。
【0054】
本発明の製造方法においては、流通式反応装置中で導電性高分子微粒子を得ることにより、フラスコ中で粒子形成したのでは得られない程に、粒径が揃った微粒子を得られる。さらに、この流通式反応装置をナンバリングアップ(並列化)すれば、微粒子およびその有機溶媒分散液を再現性よく大量に生産することができる。
【0055】
本発明における酸化重合を電解酸化にて行う場合に好適に用いられる反応装置の実施形態として、流路の側面に電極を有する電解酸化装置を概略的に図1〜3に示す。図2は図1のII−II線断面を示す断面図であり、図3は図1のIII−III線断面を示す断面図である。なお、本発明がこれらに限定されないことはいうまでもない。本実施形態の装置においては、流路が1つのみの形態を示したが、前述のとおり流路を複数設けてもよく、導入口111に到達する前に流路を2つ以上に分けて、多液を合流させるようにした多液混合型反応装置として化学的酸化重合に対応しうるようにしてもよい。このとき多液が合流する合液領域以降に磁場を印加する構成とすることが好ましいが、装置全体に磁場を印加するようにしてもよい。そのほか、磁場印加するための磁極115を電極114の両わきに配置した図示した構成ではなく、電極114の流路とは反対側の電極上下外方に磁極を設けた構成としてもよい。このようにした場合、磁場(磁界)の磁束発生方向と電場(電界)の電流発生方向は一致し、互いに平行した電場と磁場が発生する。以上の電極と磁極の配置が好ましい配置ではあるが、配置関係はこれらに限定されず、もっとも効率よく作用するのであれば配置関係に特に制限はない。
【0056】
本実施形態の装置100は114が白金蒸着電極である。本実施形態においては、電圧印加手段として電源、導線、端子、電極等を用いうるが、反応装置の電極部分のみを図示している。同装置100は導入口111、排出口112、流路113を有し、流路113の長さ方向に直交する断面の形状は必要に応じて微細加工しうるが、台形または矩形に近い形であることが好ましい。流路幅Wおよび流路深さHをマイクロメートルサイズにすれば、瞬時に加熱および冷却を行うことができる。導入口111から導入されたモノマー液は、電極を内蔵した流路長aで示される範囲を流通する過程で高分子微粒子分散液に電解酸化重合反応により変換される。そして電極114の両わきには磁場印加手段115が配置されている。したがって、上側電極114aと下側電極114bの間に電場(電界)が生じる。これに対して、磁場(磁界)は左側磁極115aと右側磁極115bとの間に磁場(磁界)が発生する。このように、本実施形態においては、磁場(磁界)における磁束の方向と、電場(電界)における電流の方向が直交するようにされている。
【0057】
本発明の製造方法において磁場印加手段は、磁場を発生できる磁極を有するものなら何を用いても構わないが、例えば永久磁石、電磁石、超伝導磁石、またはハイブリッド磁石が用いられる。また定常磁場、パルス磁場共に使用することができる。一般に磁気の強さは磁束密度(単位:T(テスラ)、1T=10,000Oe(エルステッド))で表すが、永久磁石は1.5T以下、鉄芯コイルの電磁石は2T程度までがカバーできる磁場と言われる。それ以上を実現するには超伝導磁石(15T程度まで現在可能)やハイブリッド磁石(30T程度まで現在可能)を使用することができる。本発明において使用される磁場は、0.01T〜10Tであることが好ましく、0.01T〜5Tであることがより好ましい。
【0058】
[透過率]
本発明の導電性高分子微粒子分散液の特徴は、それを用いて作製した薄膜の透過率が高く透明であることである。本発明において、薄膜の透過率は特に断らない限り、石英ガラス基板上に乾燥後ほぼ300nmの厚さになるようにスピンコート法にて薄膜を形成し、前記の乾燥工程を経て得られる薄膜塗布ガラス板を、ベースの石英ガラス基板をリファレンスとして分光光度計((株)島津製作所製MPC−2200)により測定した550nmの透過率値をいう。
【0059】
上記のガラス基板上の薄膜は、スピンコート・乾燥工程を経てほぼ300nmの厚さになるように作製する。ただし厚さのばらつきを考慮し、作製した薄膜の膜厚を触針式段差計(ULVAC, DEKTAK 6M[商品名])を用いて測定し、その値から300nmの厚さにおける透過率を算出する(透過率は膜厚に比例する)。このようにして得た、本発明の分散液によるガラス基板上の膜厚300nm薄膜の波長550nmにおける可視光の透過率(T)は、90%以上であり、好ましくは95%以上である。95%以上であるとは最先端技術における画像表示装置に対応しうる透明性の良いレベルの膜である。
【0060】
本発明の分散液を基材上に塗布・乾燥する場合の乾燥の温度は、20〜250℃であることが好ましく、50〜130℃であることがより好ましい。乾燥時間は3秒〜1週間であることが好ましく、5秒〜60秒であることがより好ましい。このようにして本発明の導電性高分子微粒子を有する透明導電膜を有する被覆基材が得られる。得られた基材表面の薄膜は、可撓性を有し、特にこれまでのポリチオフェン系導電性高分子分散液による薄膜に比べて、十分な導電性を有しながら高い透明性を示すものとすることができる。
【0061】
[表面抵抗率]
本発明において、導電性高分子微粒子を含有する膜の導電性は表明抵抗率(Surface Resistivity、単位Ω/□)で表す。測定は特に断らない限り、三菱化学製Loresta−EP MCP−T360(商品名)によって、湿度50%下において行った値をいう。表面抵抗率は、1×10〜1×10Ω/□の範囲であることが好ましく、1×10〜1×10Ω/□の範囲であることがより好ましい。
【0062】
本発明の導電性高分子微粒子の分散液を用いて作製した透明導電膜は、エレクトロルミネッセンスパネルの表面電極、液晶ディスプレイの画素電極、コンデンサの電極、タッチパネルの透明電極などの各種透明電極、ならびにブラウン管ディスプレイの電磁遮蔽などに好適に用いられる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、体積平均粒径Mv,個数平均粒径Mn、透過率の測定、表面抵抗率の測定は下記のようにして行った。
【0064】
[体積平均粒径(Mv)、個数平均粒径(Mn)の測定]
分散液試料を限外濾過装置(アドバンテック東洋社製、UHP−62K(商品名)、分画分子量5万)により蒸留水を加えてろ液を排除して体積を一定にしながら精製した後、5.0質量%まで濃縮した。この液の粒子の体積平均粒径、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnを測定した。粒子の粒径(Mv)及び単分散性(Mv/Mn)は日機装(株)社製のナノトラックUPA−EX150(商品名)にて、蒸留水で微粒子濃度0.2質量%に希釈して室温(約25℃)で測定した。
【0065】
[透過率の測定]
分散液試料の5.0質量%濃縮液を上記のガラス基板上にスピンコートし(MIKASA社製、1H−PX2[商品名]を使用した。)、70℃で60分乾燥して、300nmの厚さになるようにて導電性高分子微粒子膜を作製した。得られた膜試料の膜圧を触針式段差計(ULVAC社製、DEKTAK 6M[商品名])を用いて測定した(このとき膜厚による誤差の補正を行ない、300nmの厚さにおける透過率値を算出した。)。
【0066】
[表面抵抗率の測定]
上記透過率の測定と同様にして作製した膜試料の表面抵抗率を湿度50%において三菱化学製Loresta EP MCP−T360(商品名)を用いて測定した。
【0067】
(実施例1)
導電性高分子前駆体モノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)14g(0.1モル)、ポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量4,000)18g(0.1モルSOH)アニオン性界面活性剤(アクアロンKH−10、商品名、第一工業製薬(株)社製)2gとを、水300gとを激しく攪拌混合(ホモジナイザーを使用した。回転数は5000rpmで1分間とした。)して調製した乳化液をIA液とした。
【0068】
図1に示した反応装置として、流路の等価直径を300μmとしたセラミックス製装置100を準備した。テフロン(登録商標)チューブ2本を逆止弁付きコネクタを用いて導入口111に接続し、その先にIA液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。排出口112に圧力調節弁を有するコネクタを接続し、それを介してテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0069】
装置本体の大きさは20cm(長さ)×2cm(幅)×1cm(厚さ)とした。白金電極114及び115は、それぞれ10cm(長さa)にわたって流路113の上下に配設された。それらは配線によりポテンショスタットに接続された。反応温度は約50℃になるよう調節し(このときペルチェ素子冷却装置を使用した。)、流れるIA液に22mAの定電流(電圧は6〜7V)を印加し電解酸化重合反応を行った。磁場印加手段115は永久磁石装置(NECトーキン(株)製の永久磁石ランタネット[商品名])を用いて作製し、0.5Tの強度の磁場を発生させた。
【0070】
上記の条件で調製したIA液にメディエーターとして、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)1.4gを混合し、その溶液を20μL/minの流速で導入口111より注入したところ、排出口112から導電性高分子微粒子の分散液が得られた。注入を1時間継続して、分散液をチューブの先端より捕集した。得られた分散液(試料1)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0071】
(実施例2)
IA液の導電性高分子前駆体モノマーをピロールに等モル量で置き替え、メディエーターを塩化鉄(II)とした以外、実施例1と同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。得られた分散液(試料2)中の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0072】
(実施例3)
実施例2に対して磁場強度を電磁石装置(NECトーキン(株)製・磁極間隙可変実験用電磁石SEE-2[商品名])を用いて1.0Tとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。得られた分散液(試料3)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0073】
(実施例4)
実施例1に対して、磁場強度を電磁石装置(NECトーキン(株)製・磁極間隙可変実験用電磁石SEE-2)を用いて1.2Tとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。得られた分散液(試料4)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0074】
(実施例5)
実施例4に対して装置を代え、磁場印加手段115を、電極114に対して流路とは反対側のそれぞれ電極外方に位置するように設置した装置を用いた。ここに電磁石装置(NECトーキン(株)製・磁極間隙可変実験用電磁石SEE-2)を用いて1.2Tの磁場を印加し、電場の生じる方向と同一(平行)方向の磁場を印加して分散液試料の調製を行った。得られた分散液(試料5)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0075】
(実施例6)
実施例1に対してIA液の導電性高分子前駆体モノマーをアニリンの等モル量に置き替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。得られた分散液(試料6)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0076】
(実施例7)
実施例1に対して流路の等価直径を150μmに代え、磁場強度を2Tにした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。得られた分散液(試料7)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0077】
(実施例8)
上記実施例7に対して、流路の等価直径を500μmに代え、磁場強度を超伝導磁石装置(住友重機(株)製HF10−100VHT[商品名])を用いて10Tにした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。ただし、用いた装置は実施例5と同じ、磁場が電場と同一方向となる装置を用いた。得られた分散液(試料8)の微粒子の粒径及び単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。結果を下表1に示す。
【0078】
(実施例9)
上記IA液を準備した。ただしここではメディエーターを用いなかった。これとは別に、酸化剤として過硫酸アンモニウム108g(0.4モル)を水600gに溶解した溶液をIIA液とした。マイクロリアクターとして、図1〜3に示したものに対し、導入口を2つもうけ、2股としたT字型流路を有する装置を準備した。この装置においては、磁場印加手段を、導入口から導入流通された液体が合流する点以降に設置し、流路面に直交するように磁場が発生するように配置した。磁場強度は永久磁石装置(NECトーキン(株)製の永久磁石ランタネットを用いて作製)で0.5Tとなるようにした。合流部分及びその後の流路の等価直径を10mmとした。なお電極は電圧の印加を行わないため配設しなかった。
【0079】
上記のマイクロリアクターを用いコネクタの出口に接続したテフロン(登録商標)チューブのうちの6m長(出口から1m地点から7m地点)を温度を70℃に保ったオイルバスに浸けた状態で、IA液を10mL/min、IIA液を20mL/minの送液速度にて送り出した。導電性高分子微粒子分散液が得られたのでこれを捕集した。この分散液(試料9)の粒子の体積平均粒径、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径、透過率、表面抵抗率を測定した。
【0080】
(実施例10)
実施例9の条件に対して、流路の等価直径を1mmとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。なお、合流後のマイクロ流路23内の滞留時間を同じにするためにIA液の送液速度を0.3ml/min、IIA液の送液速度を0.6ml/minにした。この分散液(試料10)の粒子の体積平均粒径、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径、透過率、表面抵抗率を測定した。
【0081】
(実施例11)
実施例9の条件に対して、流路の等価直径を300μmとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液を得た。この分散液(試料11)の粒子の体積平均粒径、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径、透過率、表面抵抗率を測定した。
【0082】
(参考例)
磁場をかけなかった以外、上記各実施例と同様にして、分散液試料を調製した。得られた分散液(試料12〜22)の微粒子の粒径、単分散度、透過率、表面抵抗率を測定した。その結果を表1に示した。
【0083】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
試料No. Mv (nm) Mv/Mn 透過率 表面抵抗率
(体積平均径) (単分散度) (%) (Ω/□)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1 27.5 1.20 98.8 1.3×10
2 35.5 1.50 98.0 1.5×10
3 25.5 1.20 98.8 7.0×10
4 24.3 1.19 99.0 9.8×10
5 28.0 1.22 98.5 1.5×10
6 39.0 1.60 96.6 1.8×10
7 18.5 1.19 99.6 8.8×10
8 17.5 1.15 99.8 2.5×10
9 55.0 2.60 92.0 9.5×10
10 40.1 1.90 94.5 7.5×10
11 35.4 1.65 96.6 2.5×10
12 30.5 1.22 98.3 1.2×10
13 40.3 1.55 97.2 2.0×10
14 30.0 1.35 97.5 8.5×10
15 27.7 1.22 98.6 1.5×10
16 31.1 1.25 98.0 1.3×10
17 45.5 1.72 95.5 2.0×10
18 20.3 1.23 99.5 1.2×10
19 20.4 1.22 99.4 1.3×10
20 69.0 2.80 90.5 8.1×10
21 45.5 2.05 92.3 5.3×10
22 40.3 1.83 95.3 1.2×10
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0084】
(比較例)
実施例1で用いた導電性高分子前駆体モノマー液(IA液)をフラスコに入れ、1対の白金電極を液内に導入し、22mAの定電流が流れるように2時間電圧を印加し、電解酸化重合を行った。その結果、導電性高分子膜が電極に付着し微粒子は得られなかった。
【0085】
上記の結果より、本発明の製造方法によれば、ナノメートルサイズで粒径のそろった導電性高分子微粒子の分散液を効率良く得ることができることが分かる。また、その分散液を用いて形成した薄膜は、導電性があり、透明性が高い。
また、上記結果より、本発明の製造方法により得た導電性高分子微粒子の分散液によれば、厚い膜であっても高い透明性を維持した工業的に有用な導電性薄膜を形成しうることが分かる。さらに、本発明によれば、磁場の印加によりナノメールサイズの微粒子を一層微細化して、さらに粒径をそろえることができることが分かる。また、印加する磁場強度を変化させて、得られる導電性高分子微粒子の電気特性等の物性を変化させることができることが分かる。
【0086】
一方、フラスコによる電解酸化重合法(比較例)では導電性高分子化合物を微粒子として得ることさえできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の製造方法に用いられる流通式反応装置の好ましい実施形態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の流通式反応装置のII−II線断面を示す断面図である。
【図3】図1の流通式反応装置のIII−III線断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
110 反応装置本体
111 導入口
112 排出口
113 流路
114 電圧印加手段(白金蒸着電極)
115 磁場印加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入して流通させ、この流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化するに当たり、前記の流通導電性高分子前駆体モノマー液に磁場を印加することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記導電性高分子前駆体モノマー液が、該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記酸化重合が電解酸化重合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記印加される磁場の強度が0.1T(テスラ)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項5】
導電性高分子前駆体モノマー液の流通速度を0.1ml/min以上100ml/min以下としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記流通式反応装置が、前記導電性高分子前駆体モノマーを流通させる液体流通駆動手段と、該モノマーを電解酸化重合するための電圧印加手段と、前記流通状態のモノマー液に磁場を印加する磁場印加手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記流通式反応装置の流路の等価直径が10mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記流通式反応装置の流路の等価直径が1mm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項9】
導電性高分子微粒子を水性媒体中に分散させた水性分散液として得ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項10】
導電性高分子微粒子がポリチオフェンの微粒子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で製造された導電性高分子微粒子。
【請求項12】
請求項11に記載の導電性高分子微粒子を含有する水性分散液。
【請求項13】
前記導電性高分子微粒子の体積平均粒径(MV)が10〜70nmであり、体積平均粒径(MV)/個数平均粒径(MN)が1.2〜3.0であることを特徴とする請求項11または12に記載の水性分散液。
【請求項14】
前記水性分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜に対する波長550nmの可視光線の透過率が95%以上であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項15】
前記水性分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜の湿度50%下での表面抵抗率が1×10Ω/□以下であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項16】
導電性高分子前駆体モノマーを流通させ、その流通過程で該モノマーを重合した導電性高分子を微粒子として生成させる流路を備えた流通式反応装置であって、前記導電性高分子前駆体モノマー液を前記流路内に流通させる液体流通駆動手段と、前記流通状態の導電性高分子前駆体モノマーを電解酸化重合するための電圧印加手段と、該流通状態のモノマー液に磁場を印加する磁場印加手段とを備えたことを特徴とする流通式反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24304(P2010−24304A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185410(P2008−185410)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】