説明

導電性高分子溶液、導電性塗膜および入力デバイス

【課題】透明性、導電性、耐久性に優れた導電性塗膜を容易に形成でき、しかも保存安定性に優れた導電性高分子溶液を提供する。
【解決手段】本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子および分子中にスルホ基を有するポリアニオンからなる導電性高分子複合体と、前記スルホ基に配位または結合するアミン化合物と、該アミン化合物を触媒として反応を生じるグリシジル基を分子中に2個以上有するグリシジル基含有化合物と溶媒とを含み、25℃におけるpHが3.5〜7.5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性高分子溶液、該導電性高分子溶液から形成された導電性塗膜および該導電性塗膜を備える入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリンなどのπ共役系導電性高分子に電子供与性化合物や電子受容性化合物(ドーパント)を添加(ドーピング)した導電性材料が開発され、その用途は広がっている。
特に、π共役系導電性高分子の透明性に着目され、透明導電体として広く利用されているITO膜(錫ドープ酸化インジウム膜)の代替が検討されている。
しかしながら、π共役系導電性高分子自体は、いかなる溶媒にも溶解しないため、加工性が低い上に、膜の形成やパターニングが困難であった。
特許文献1には、π共役系導電性高分子を溶解させる手法として、質量平均分子量が2,000〜500,000のポリスチレンスルホン酸(ポリアニオン)をドーパントとして、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合して、ポリスチレンスルホン酸−ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)溶液(PEDOT−PSS溶液)を製造する方法が提案されている。
しかしながら、PEDOT−PSS溶液はスルホ基によって水溶性を持たせているため、その塗膜は耐久性(耐水性、耐アルコール性、耐傷付き性)が低いという問題を有していた。
【0003】
そこで、特許文献2には、π共役系導電性高分子と水溶性エポキシモノマーを含む溶液から形成した導電性塗膜を透明基材上に有するものが開示されている。特許文献2に記載の導電性塗膜は、PEDOT−PSS塗膜の耐久性の低さを、水溶性エポキシモノマーの硬化物によって改良している。
しかしながら、特許文献2に記載のπ共役系導電性高分子と水溶性エポキシモノマーを含む溶液は保存安定性が不充分であり、保存中に水溶性エポキシモノマーが硬化することがあった。そのため、この溶液を透明基材上に塗布することは困難であった。
また、スルホン酸由来の強酸性によって、前記溶液が接触する塗工機の金属部分が腐食し、腐食により溶出した金属イオンが溶液に含まれることがあった。金属イオンは不純物になるだけでなく、沈殿を生じさせる原因になった。
また、特許文献2に記載の塗膜を抵抗膜式タッチパネルに適用した場合には、高湿度雰囲気下で塗膜から酸成分が溶出するため、対向電極であるITO膜との接触により、対向電極を侵すことがあった。そのため、ITO膜に対する電気的接触の耐久性が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146259号公報
【特許文献2】特開2007−172984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、透明性、導電性、耐久性に優れた導電性塗膜を容易に形成でき、しかも保存安定性に優れた導電性高分子溶液を提供することを目的とする。また、透明性、導電性、耐久性に優れた導電性塗膜、該導電性塗膜を用いた入力デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]π共役系導電性高分子および分子中にスルホ基を有するポリアニオンからなる導電性高分子複合体と、前記スルホ基に配位または結合するアミン化合物と、該アミン化合物を触媒として反応を生じるグリシジル基を分子中に2個以上有するグリシジル基含有化合物と溶媒とを含み、25℃におけるpHが3.5〜7.5であることを特徴とする導電性高分子溶液。
[2][1]に記載の導電性高分子溶液が塗布されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。
[3][2]に記載の導電性塗膜を具備することを特徴とする入力デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性高分子溶液は、透明性、導電性、耐久性に優れた導電性塗膜を容易に形成でき、しかも保存安定性に優れている。
本発明の導電性塗膜は、透明性、導電性、耐久性に優れている。
本発明の入力デバイスは、透明性、導電性、耐久性に優れた導電性塗膜を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の入力デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<導電性高分子溶液>
本発明の導電性高分子溶液は、導電性高分子複合体とアミン化合物とグリシジル基含有化合物と溶媒とを含む。
【0010】
(導電性高分子複合体)
導電性高分子複合体(以下、「複合体」と略す。)は、π共役系導電性高分子とポリアニオンからなる。ポリアニオンはπ共役系導電性高分子に配位しているため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。
【0011】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であり、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。なかでも、重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。さらに、極性溶剤との相溶性及び透明性の点から、ポリオフェン類が好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子は無置換のままでもよいが、充分な導電性、バインダ樹脂との相溶性を得るためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0013】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0014】
[ポリアニオン]
本発明で用いるポリアニオンは、一分子中に複数のアニオン基を有する高分子であり、アニオン基を有する単量体のみを重合、またはアニオン基を有する単量体とアニオン基を有さない単量体を共重合する方法により得ることができる。これらの単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、アニオン基を有さない高分子を得た後、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸等のスルホン化剤によりスルホン化することにより得ることもできる。さらに、アニオン基を有する高分子を一旦得た後に、さらにスルホン化することにより、アニオン基含有量のより多いポリアニオンを得ることもできる。
本発明に用いるポリアニオンを構成する単量体としては、−O−SO、−SO、−COO、−O−PO、−PO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)等の強酸基を有する単量体が挙げられる。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。また、このアニオン基は、隣接してまたは一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0015】
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酪、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタクリロキシ)エタンスルホン酸、4−(メタクリロキシ)ブタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロバンスルホン酸などが挙げられる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基で中和した塩の状態で使用してもよい。
【0016】
リン酸基を含有する単量体としては、例えば、2−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アタリレート、モノ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート〉アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシッドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせていてもよく、また、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基で中和した塩の状態で使用してもよい。
【0017】
カルボキシ基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびそれらの酸無水物;マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;等が挙げられる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基で中和した塩の状態で使用してもよい。
【0018】
アニオン基を有する単量体と共重合可能な、アニオン基を有さない他の単量体は、公知の化合物を何ら制限なく使用することができる。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロへキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
上記単量体は、開始剤を用いて重合することで本発明に用いるポリアニオンを得ることができる。
【0019】
また、スルホン化ジカルボン酸とジオールによるスルホン化ポリエステルの製造(特開2007−102224号公報)、スルホン化ジアミノ化合物とテトラカルボン酸二無水物によるスルホン化ポリイミドの製造(特開2006−15009号公報、特開2007−302743号公報)、スルホン化ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの重合によるスルホン化ポリウレタンの製造(特表2002−514233号公報)等、公知の方法で本発明に用いるポリアニオンを得ることもできる。
あるいは、ポリスチレン、ポリメチルスチレン等を重合により得た後、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸等のスルホン化剤によりスルホン化することにより本発明に用いるポリアニオンを得ることもできる。
さらに、ポリエーテルケトンのスルホン化(欧州特許出願公開第41780号明細書)、ポリエーテルエーテルケトンのスルホン化(特開2008−108585号公報)、ポリエーテルスルホンのスルホン化(特開平10−309449号公報)、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールのスルホン化(特表2010−514161号公報)、ポリフェニレンオキシドのスルホン化、ポリフェニレンスルフィドのスルホン化等により本発明に用いるポリアニオンを得ることもできる。
【0020】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体が好ましい。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
【0021】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。ポリアニオンの質量平均分子量は2万〜100万が好ましい。ポリアニオンの質量平均分子量が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子をより均一な溶液にでき、前記上限値以下であれば、充分に高い導電性が得られる。
【0022】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。導電性高分子溶液中のπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であることが好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計含有量が0.05質量%以上であれば、充分に高い導電性が得られ、5.0質量%以下であれば、均一な導電性塗膜を容易に得ることができる。
【0023】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性および溶解性が低くなり、均一な溶液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0024】
(アミン化合物)
アミン化合物は、ポリアニオンのスルホ基に配位あるいは結合する。ここで、配位あるいは結合とは、ポリアニオンとアミン化合物とが電子を互いに供与/受容することにより、それらの分子間距離が短くなる結合形態のことである。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
【0025】
1級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、モノデシルアミン、モノウンデシルアミン、モノドデシルアミン、モノステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等が挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール、ピリジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
上記アミン化合物の中でも、溶解性および触媒の点から、3級アミン、複素環式アミンが好ましく、複素環式アミンの中でも、置換もしくは未置換のイミダゾールが好ましい。
【0026】
アミン化合物の含有量は、複合体の中和当量に対して0.7〜2.5倍であることが好ましく、3級アミンと複素環式アミンではその塩基性に違いがあることから、3級アミンの場合は0.70〜0.80倍、複素環式アミンの場合は1.00〜1.07倍であることがより好ましい。アミン化合物の含有量が前記範囲であれば、保存安定性がより高くなる。
【0027】
(グリシジル基含有化合物)
グリシジル基含有化合物は、グリシジル基を分子中に2個以上有する化合物である。グリシジル基は、アミン化合物を触媒として働いて活性化し、他のグリシジル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等と反応しやすくなる。
グリシジル基含有化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられ1種類または2種類以上の混合として用いることができる。
【0028】
グリシジル基含有化合物の含有量は、複合体100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好ましい。グリシジル基含有化合物が前記下限値以上であれば、得られる導電性塗膜の耐久性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、充分な導電性を確保できる。
【0029】
(溶剤)
溶剤としては特に制限されないが、前記のポリアニオンを溶解しやすいことから水系溶剤が好ましい。
水系溶剤としては、溶解度パラメータが10以上の溶剤が挙げられ、例えば、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N−メチル−2ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
【0030】
(カチオン発生化合物)
また、グリシジル基含有化合物を迅速にかつ充分に硬化させることから、導電性高分子溶液は、カチオン発生化合物を含有することが好ましい。
カチオン発生化合物は、ルイス酸を発生させる化合物である。ここで、カチオン発生化合物の具体例としては、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤等が挙げられる。光カチオン開始剤と熱カチオン開始剤は併用しても構わない。
【0031】
光カチオン開始剤としては、例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられる。これらは、カチオン部分が、芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウム等であり、アニオン部分が、(四フッ化ホウ素(BF)、六フッ化リン(PF)、六フッ化アンチモン(SbF)、[BX(ただし、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である。)等に構成されたオニウム塩である。
具体例としては、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジニウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体が挙げられる。
光カチオン開始剤の市販品としては、CD−1012(サートマー社製)。PCI−019、PCI−021(日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(ADEKA社製)、UVI−6990(ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI100A(サンアプロ社製)、TEPBI−S(日本触媒社製)、WPI031、WPI−054、WPI−113、WPI−116、WPI−170(和光純薬工業社製)、イルガキュア250(チバ・スペシャルティ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0032】
熱カチオン開始剤としては、芳香族オニウム塩、トリフル酸塩、三フッ化ホウ素エーテル錯体化合物および三フッ化ホウ素等のようなカチオン系またはプロトン酸触媒が挙げられる。そのなかでも、芳香族オニウム塩が好ましい。芳香族オニウム塩は熱によりカチオン種を発生するものがあり、熱カチオン重合開始剤として用いることもできる。例えば、三新化学社から入手できるサンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180Lなどの芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
三新化学社製以外の熱カチオン開始剤としては、例えば、アデカオプトンCP−66、CP−77(ADEKA社製)、CI−2920、CI2921、CI2946、CI−2639、CI−2624、CI−2064(日本曹達社製)、FC−520(スリーエム社製)等が挙げられる。
上記カチオン発生化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
カチオン発生剤の含有量は、グリシジル基含有化合物を100質量%とした際の0.1〜100質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることがより好ましい。カチオン発生剤の含有量が0.1質量%以上であれば、グリシジル基含有化合物を充分に硬化でき、100質量%以下であれば、導電性高分子溶液から形成される導電性塗膜においてバインダの特性を充分に発揮できる。
【0034】
(添加剤)
導電性高分子溶液には、必要に応じて、バインダ樹脂や添加剤が含まれてもよい。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂などが用いられる。バインダ樹脂は、混合しやすいため、水溶性もしくは水分散性エマルジョンの形態で添加することが好ましい。
添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
無機導電剤としては、金属イオン(金属塩を水に溶解させて形成する)類、導電性カーボン等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0035】
(pH)
導電性高分子溶液においては、25℃におけるpHが3.5〜7.5であり、4.0〜6.5であることが好ましい。pHが前記範囲外になると、グリシジル基の安定性が低下し、溶液がゲル化するなど、保存安定性が損なわれる。
【0036】
<導電性塗膜>
本発明の導電性塗膜は、上記導電性高分子溶液が塗布されて形成された塗膜である。
導電性塗膜は、通常、透明基材上に塗布される。ここで、透明基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。また、ガラスなども使用できる。
【0037】
導電性高分子溶液の塗布方法として、例えば、バーコーティング、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷などが適用される。導電性高分子溶液塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
紫外線照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。還元剤がアクリル化合物の重合を阻害することがあるため、照度が100mW/cm未満であると、充分に架橋せず、導電性塗膜の耐摺動性(耐久性)が低くなる傾向にある。なお、本発明における照度は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0038】
(導電性塗膜の厚さ)
導電性塗膜の厚さは0.001〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。導電性塗膜の厚みが0.001μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、10μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0039】
(導電性塗膜の表面抵抗値)
導電性塗膜の表面抵抗値としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5,000Ω以下であるが、2,500Ω以下であることが好ましく、500Ω以下であることがより好ましい。
【0040】
(導電性塗膜の用途)
本発明の導電性塗膜は、後述する入力デバイスに好適に用いられるが、表示デバイスの電極シートとして用いてもよい。表示デバイスとしては、例えば、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0041】
<入力デバイス>
本発明の入力デバイスは、上記導電性塗膜を透明電極として備えるものである。入力デバイスの中でも、本発明の効果がとりわけ発揮されることから、抵抗膜式タッチパネルが好適である。
以下、上記導電性塗膜を透明電極として備えた抵抗膜式タッチパネルの例について説明する。
本例の抵抗膜式タッチパネルは、図1に示すように、透明基材11表面に導電性塗膜12が形成され、入力者側に配置された可動電極シート10と、透明基材21表面にITO膜22が形成され、画像表示装置側に配置された固定電極シート20とが、導電性塗膜12とITO膜22が対向するように設けられたものである。また、可動電極シート10と固定電極シート20との間には、透明なドットスペーサ24が配置されて、隙間が形成されている。
【0042】
可動電極シート10または固定電極シート20の透明基材11,21としては、例えば、単層または2層以上のプラスチックフィルム、ガラス板、フィルムとガラス板との積層体が挙げられる。ただし、可動電極シート10の透明基材11としては、可撓性を有することから、プラスチックフィルムが好ましく、固定電極シート20の透明基材21としては、固定しやすいことから、ガラス板を用いたものが好ましい。
【0043】
可動電極シート10の透明基材11の厚さは20〜250μmであることが好ましい。透明基材11の厚さが20μm以上であれば、充分な強度を確保でき、250μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
可動電極シート10の導電性塗膜12の厚さは10〜700μmであることが好ましい。導電性塗膜12の厚さが10μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、700μm以下であれば、充分な可撓性及び透明性を確保できる。
固定電極シート20の透明基材21の厚さは0.1〜2.5mmであることが好ましい。透明基材21の厚さが0.1mm以上であれば、充分な強度を確保でき、2.5mm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
固定電極シート20のITO膜22の厚さは10〜1000nmであることが好ましい。ITO膜22の厚さが10nm以上であれば、充分な導電性を確保でき、1000nm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20〜100μmであることが好ましい。可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20μm以上であれば、非押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させないようにすることができ、100μm以下であれば、押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させることができる。前記間隔になるようにするためには、ドットスペーサ24の大きさを適宜選択すればよい。
【0044】
この抵抗膜式タッチパネルでは、指またはスタイラスにより可動電極シート10を押した際に、可動電極シート10の導電性塗膜12と、固定電極シート20のITO膜22とを接触させて導通させ、その際の電圧を取り込んで、位置を検出するようになっている。
【0045】
また、入力デバイスは静電容量式タッチパネルであってもよい。前記導電性塗膜を用いた静電容量式タッチパネルとしては、例えば、前記導電性塗膜からなる一対の透明電極が透明基材の両面に設けられ、透明電極全体に低圧の電界を形成し、指で触れることで表面電荷の変化を捉え、位置を検出するものが挙げられる。
【0046】
このような入力デバイスは、例えば、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、PHS、現金自動預け払い機(ATM)、自動販売機、販売時点情報管理(POS)用レジスタなどに備え付けられる。
【実施例】
【0047】
以下の例において、pHは25℃で測定した値である。また、分子量の中和当量は以下のようにして求めた。
[分子量]
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(Mw/Mn=1.2)を標準物質とし、下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した分子量である。
検出器:UV検出器(235nm)、溶離液:0.1M硫酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル(7/3容積比)、溶離液流速:1ml/分
【0048】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。このポリスチレンスルホン酸の質量平均分子量は約250000であった。
【0049】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0050】
(実施例1)
製造例2より得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.243g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して0.968倍)を添加して、pH3.59のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。
これとは別に、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)0.292g(複合体100質量部に対して20.2質量部)、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3.33g、エタノール133gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を添加し、攪拌して、導電性高分子溶液Aを得た。
また、導電性高分子溶液Aをポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、厚さ:188μm)にバーコーターで塗布し、150℃、2分間、熱風により乾燥して、導電性塗膜を形成した。
得られた導電性塗膜の表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性を以下の方法により評価した。それらの評価結果を表1に示す。
また、得られた溶液の保存安定性を以下の方法により評価した。その評価結果を表2に示す。
【0051】
[表面抵抗]
三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K 7194に準じて測定した。
【0052】
[全光線透過率およびヘイズ]
日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7136に準じて全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0053】
[摺動試験(耐水性、耐エタノール性の評価)]
導電性塗膜の塗膜強度を測定するため、水もしくはエタノールで湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア社製)を、500gf/cmの荷重をかけて50往復擦った後、導電性塗膜の剥がれを目視により以下の評価基準に基づいて評価した。
◎ :剥離なし、○:わずかに剥離、△:一部剥離、×:完全剥離
【0054】
[耐傷付き性の評価]
導電性塗膜の塗膜強度を測定するため、キムワイプ(日本製紙クレシア社製)に、500gf/cmの荷重をかけて50往復擦って傷付け試験を行った後、導電性塗膜の傷を目視により以下の評価基準に基づいて評価した。この結果は導電性塗膜の膜強度の指標になる。
◎ :傷なし、○:数本傷があり、△:数10本の傷があり、×:無数の傷があり
【0055】
[導電性高分子溶液の保存安定性]
導電性高分子溶液を100mlのガラス製の試料瓶に80mlの溶液を入れ、室温環境にて、1週間または2週間または3週間または4週間保存した。1週間経過したもの、2週間経過した溶液、3週間経過した溶液、4週間経過した溶液を、各々、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、厚さ188μm)にバーコーターにより塗布し、150℃、2分間、熱風により乾燥して、導電性塗膜を形成した。
得られた導電性塗膜について、上記のように、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性を評価した。上記3項目の評価が「◎」であったものを3点、「○」であったものを2点、「△」であったものを1点、「×」であったものを0点とし、3項目の合計点数が9点であったものを「○」、8〜5点であったものを「△」、4〜0点であったものを「×」とした。
なお、表2においては、上段に保存安定性の評価結果、下段左に耐水性、下段中に耐エタノール性、下段右に耐傷性の評価結果を示す。
【0056】
[PEDOT−PSS水溶液の中和当量]
なお、各実施例において、PEDOT−PSS水溶液の中和当量は、各実施例で使用したアミン化合物により中和滴定し、その変曲点を中和点とし、そのときのアミン化合物添加量から求めた。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
(実施例2)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.251g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.000倍)を添加して、pH4.20のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Bを得た。導電性高分子溶液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0060】
(実施例3)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.253g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.008倍)を添加して、pH5.19のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Cを得た。導電性高分子溶液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0061】
(実施例4)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.266g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.060倍)を添加して、pH6.10のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Dを得た。導電性高分子溶液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0062】
(実施例5)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.500g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.992倍)を添加して、pH7.40のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Eを得た。また、導電性高分子溶液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0063】
(実施例6)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、2−メチルイミダゾール0.3002g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.005倍)を添加して、pH4.33のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Fを得た。導電性高分子溶液Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0064】
(実施例7)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、1,2−ジメチルイミダゾール0.3567g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.006倍)を添加して、pH4.73のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Gを得た。導電性高分子溶液Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0065】
(実施例8)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、N−メチルイミダゾール0.3194g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して1.068倍)を添加して、pH5.47のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Hを得た。導電性高分子溶液Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0066】
(実施例9)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、エタノール133gを添加し、さらにトリプロピルアミン0.3833g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して0.725倍)を添加して、pH4.37のPEDOT−PSSのアミン塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのアミン塩水溶液にソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)0.292g(複合体100質量部に対して20.2質量部)、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3.33gを添加し、攪拌して、導電性高分子溶液Iを得た。導電性高分子溶液Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0067】
(実施例10)
製造例2により得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、エタノール133gを添加し、さらにトリオクチルアミン1.0021g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して0.769倍)を添加して、pH5.92のPEDOT−PSSのアミン塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのアミン塩水溶液を用いたこと以外は実施例9と同様にして、導電性高分子溶液Jを得た。導電性高分子溶液Jを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0068】
(比較例1)
ソルビトール系ポリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製SR−SEP)0.292g(複合体100質量部に対して20.2質量部)、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3.33g、ネオエタノール133gに、製造例2より得られたPEDOT−PSS水溶液100gを添加し、撹拌して、導電性高分子溶液K(pH1.98)を得た。導電性高分子溶液Kを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1,2に示す。
【0069】
(比較例2)
製造例2より得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.233g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して0.928倍)を添加し、pH3.40のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Lを得た。導電性高分子溶液Lを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0070】
(比較例3)
製造例2より得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール0.620g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して2.47倍)を添加し、pH7.60のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Mを得た。導電性高分子溶液Mを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0071】
(比較例4)
製造例2より得られたPEDOT−PSS水溶液100gに、イミダゾール3.30g(PEDOT−PSS水溶液の中和当量に対して13.0倍)を添加し、pH8.42のPEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を調製した。該PEDOT−PSSのイミダゾール塩水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Nを得た。導電性高分子溶液Nを用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0072】
実施例1〜10では、溶液の保存安定性、塗膜の導電性、透明性、耐水性、耐エタノール性、耐傷付き性に優れていた。
比較例1では、溶液の保存安定性が不充分で、塗膜の耐エタノール性が不充分であった。比較例2〜4では、溶液の保存安定性が不充分であった。
【符号の説明】
【0073】
10 可動電極シート
11 透明基材
12 導電性塗膜
20 固定電極シート
21 透明基材
22 ITO膜
24 ドットスペーサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子および分子中にスルホ基を有するポリアニオンからなる導電性高分子複合体と、前記スルホ基に配位または結合するアミン化合物と、該アミン化合物を触媒として反応を生じるグリシジル基を分子中に2個以上有するグリシジル基含有化合物と溶媒とを含み、25℃におけるpHが3.5〜7.5であることを特徴とする導電性高分子溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性高分子溶液が塗布されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性塗膜を具備することを特徴とする入力デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−201837(P2012−201837A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69292(P2011−69292)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】