説明

導電性高分子溶液及びその製造方法

【課題】導電性高分子薄膜及び導電性高分子溶液の製造過程を簡潔化させることを課題とする。
【解決手段】本発明の導電性高分子溶液は、ドーピングされた共役系高分子ポリマー及び有機溶剤を含み、ドーピングされた共役系高分子ポリマーは導電性を有し、このドーピングされた共役系高分子の高分子は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン、ポリチアナフテン、ポリアニリン、または、その共重合体(共重合体)及び派生物、または、その組合せから選択され、有機溶剤は、フッ素を含む有機溶剤、または、フッ素を含む有機溶剤の混合溶剤、または、フッ素を含む有機溶剤とフッ素を含まない有機溶剤の混合溶剤である。有機溶剤は、ドーピングされた共役系高分子と混合される。本発明は、導電性高分子の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子溶液及びその製造方法に関し、特に、導電性高分子溶液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共役系高分子は同時に、高分子と半導体または導体の特性を有する。その導電性と絶縁性の特性は、酸化還元または過酸化アルカリの可逆変化を経て、さらに、導電性高分子膜の形式によって、太陽電池、コンデンサ(キャパシタ)、発光ダイオード、ケミカルセンサ、パターンエッチング、抗腐食、電極材料、EMI遮蔽(EMI shielding)、エレクトロクロミック技術(electrochromic)及び静電気放電(ESD)等の素子に応用される。一般的に、通常用いられる共役系高分子には、ポリアセチレン(polyacetylenes)、ポリピロール(polypyrroles)、ポリパラフェニレン(polyparaphenylenes)、ポリチオフェン(polythiophenes)、ポリフラン(polyfurans)、ポリチアナフテン(polythianaphthenes)、ポリアニリン(polyanilines, PANI)及びそれらの派生物または共重合体(共重合体)がある。導電性高分子膜を製造するために、従来の技術ではたいてい水または有機物等の溶剤に共役系高分子を融合させることにより、高分子溶液を形成して、後続の操作を行う。このうち、高分子溶液の濃度の大きさは、その導電性に影響するだけでなく、コーティングまたは塗布によって形成される導電性高分子膜の品質にも影響する。
【0003】
従来の技術における導電性高分子溶液は、製造の過程において、一般には非ドーピングの共役系高分子の粉末と有機溶剤を混合して、回転塗布によるコーティング(spin-coating)を組み合わせた後、さらにドーピング剤によって高分子薄膜をドーピングするか、または、非ドーピングの共役系高分子の粉末と有機溶剤を混合すると同時に、ドーピング剤を溶剤中に添加して共役系高分子をドーピングすることにより、導電性高分子溶液により形成された導電性高分子膜の導電性を高める。しかしながら、溶剤の沸点が高すぎたり、共役系高分子の種類が異なることで、異なる量または種類のドーピング剤を組み合わせることで良好な導電性を達成したりする場合、導電薄膜製造の際の過程が複雑になり、有機溶剤が残留するといった問題が発生する外、ドーピングされた導電性高分子溶液を製造する時、過程が複雑になることで不安定さが増す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、本発明は、導電性高分子薄膜の製造過程を簡潔化し、沸点が低く且つドーピングされた共役系高分子の溶解性を強化させた溶剤を提供して、導電性高分子膜の導電性を高めて、塗布によるコーティング方式を使用した導電性高分子溶液を得ると同時に、導電性高分子溶液の製造過程を簡潔化させることを課題とする。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、高濃度の導電性高分子溶液及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ドーピングされた共役系高分子及び有機溶剤を含む導電性高分子溶液を提供する。有機溶剤は、ドーピングされた共役系高分子と混合され、ドーピングされた共役系高分子は導電性を有し、さらに、ドーピングされた共役系高分子の高分子は、ポリアセチレン(polyacetylenes)、ポリピロール(polypyrroles)、ポリパラフェニレン(polyparaphenylenes)、ポリチオフェン(polythiophenes)、ポリフラン(polyfurans)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophenes), PEDOT)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン(poly(3,4-(2,2-benzyl propylenedioxythiophenes)), PProDOT)、ポリチアナフテン(polythianaphthenes)、ポリアニリン(polyanilines, PANI)、または、それらの共重合体及び派生物、または、その組合せ(combinations)から選択される。
【0007】
好適な実施例において、ドーピングされた共役系高分子の構造式は、それぞれ以下の化学式(1)から化学式(11)の一つであるか、またはその共重合体及び派生物、またはその組合せであり、有機溶剤の構造式は、少なくとも 化学式(12)、化学式(13)、またはその組合せから選択されたものを含む。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0008】
好適な実施例において、前記化学式(1)から化学式(11)のnは、3〜5000の間の整数である。前記化学式(2)から化学式(11)のR1からR20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2のうちの1つから選択される。このうち、jは、0〜8の間の整数である。化学式(3)のYは、硫黄、酸素、C6H4、C=C、C=NまたはN=Nのうちの1つである。化学式(4)のpは、0〜3の間の整数である。化学式(9)のyは、0〜1の間である。化学式(1)から化学式(11)のmは、-5000〜5000の間の整数である。化学式(1)から化学式(11)のaは、-5000〜5000の間の整数である。化学式(1)から化学式(11)のAaは、例えば、CSA-1(camphorsulfonic acid)、MSA-1(methylsulfonic acid)、TsO-1(toluene-p-sulfonic acid)、DBSA-1(dodecylbenzenesulfonic acid)、N-alkylpyridinium ([CnPY]+) のような有機マイナス/プラスイオンか、または、下記の化学式(14)から化学式(16)のうちの1つか、または、F-1、Br-1、Cl-1、I-1、SO4-2、PO4-3、ClO4-1、ClO2-1、BF4-1、NO3-1、NH4+、Na+、K+等の無機マイナス/プラスイオンである。
【化14】

【化15】

【化16】

【0009】
好適な実施例において、化学式(12)中のeは、0〜5の間の整数であり、化学式(12)及び化学式(13)中のR1からR8は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2である。このうち、jは、0〜8の間の整数である。
【0010】
好適な実施例において、前記化学式(15)及び化学式(16)のqは、1〜5000の間の整数である。
【0011】
好適な実施例において、ドーピングされた共役系高分子は、酸ドーピングまたは酸化ドーピングされた共役系高分子である。
【0012】
好適な実施例において、有機溶剤は、フッ素を含む有機溶剤、フッ素を含む有機溶剤の混合溶剤、または、フッ素を含む有機溶剤とフッ素を含まない有機溶剤の混合溶剤である。
【0013】
好適な実施例において、有機溶剤は、ヘキサフルオロイソプロパノール(hexafluoroisopropanol, HFIP)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-フェニル-2-プロパノール(1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-phenyl-2-propanol, HFPP)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-(p-tolyl)-プロパノール(1,1,1,3,3,3- hexafluoro-2-(p-tolyl)-propanol, HFTP)、または、パーフルオロプロパン(perfluoropropane, PFP)、または、その組合せである。
【0014】
好適な実施例において、ドーピングされた共役系高分子ポリマーの濃度の重量パーセンテージは、40%より小さい。
【0015】
好適な実施例において、上記導電性高分子溶液は、太陽電池、コンデンサ(キャパシタ)、発光ダイオード、ケミカルセンサ、パターンエッチング、抗腐食、静電気放電(ESD)、電極材料、EMI遮蔽(EMI shielding)またはエレクトロクロミック技術(electrochromic)に応用される。
【0016】
本発明は、以下の工程を備える導電性高分子溶液の製造方法も提供する。即ち、共役系高分子単体と酸化剤を酸性溶液中に混合する工程と、得られた混合液に重合反応を起こさせる工程と、重合反応により生じた固体部分をろ過して取得する工程と、ろ過して得た固体を洗浄及びドーピングして、請求項1に記載の、ドーピングされた共役系高分子を取得する工程と、このドーピングされた共役系高分子と有機溶剤とを混合する工程とにより構成されるものである。このうち、有機溶剤は、請求項3に記載の、少なくとも化学式(12)、または化学式(13)、またはその組合せから選択したものの一種類を含む。
【0017】
このように、本発明が提供する導電性高分子溶液は、ポリアセチレン(polyacetylenes)、ポリピロール(polypyrroles)、ポリパラフェニレン(polyparaphenylenes)、ポリチオフェン(polythiophenes)、ポリフラン(polyfurans)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophenes), PEDOT)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン(poly(3,4-(2,2-benzyl propylenedioxythiophenes)), PProDOT)、ポリチアナフテン(polythianaphthenes)、ポリアニリン(polyanilines, PANI)またはその共重合体及び派生物、または、その組合せ(combinations)のようなドーピングされた共役系高分子であり、ドーピングされた共役系高分子を低沸点の有機溶剤中に溶解させたものである。このうち、有機溶剤は特に低沸点の含フッ素有機溶剤か、または含フッ素有機溶剤の混合溶剤か、または含フッ素有機溶剤と非含フッ素有機溶剤の混合溶剤であり、実測時に特にHFIP、 HFPP、 HFTP、またはPFP等溶剤がドーピングされた共役系高分子に対して良好な溶解性を有して、共役系高分子の濃度を高めると同時に、薄膜形成後の導電性を高める。また、採用される溶剤が低沸点の有機溶剤であることから、導電性高分子膜を形成した後、有機溶剤の残留が抑制される。実験でも、本発明の導電高分子溶液は、塗布またはコーティング等の方式により、すでに電解コンデンサ、発光ダイオード、ケミカルセンサ、抗腐食、色素増感太陽電池及びエレクトロクロミック技術(electrochromic)等の分野に広く応用できることが証明されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、導電性高分子薄膜の製造過程を簡潔化し、沸点が低く且つドーピングされた共役系高分子の溶解性を強化させた溶剤を提供することにより、導電性高分子膜の導電性を高めることができる。また、塗布によるコーティング方式を使用して導電性高分子被膜を製造するのに適した導電性高分子溶液を提供できる。また同時に、導電性高分子溶液の製造過程を簡潔化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の導電性高分子溶液をケミカルセンサに応用した場合の実施例における導電性ポリアニリン膜と異なる濃度のビタミンC水溶液を作用させた後の紫外光/可視光吸收スペクトルである。
【図2】本発明の導電性高分子溶液を抗腐食技術に応用した場合の実施例におけるクリップの写真である。
【図3】本発明の導電性高分子溶液をエレクトロクロミック技術(electrochromic)に応用した場合の実施例におけるポリ(3,4-エチレンジオキシオフェン)膜の透過度曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図を参照しながら、本発明の複数の実施例における導電性高分子溶液及びその製造方法について説明する。本実施例において、導電性高分子溶液は、ドーピングされた共役系高分子及び有機溶剤を含む。
【0021】
ドーピングされた共役系高分子は、単結合と二重結合が交互に連なって構成される。それは、本質上導電性を有し、本質型導電性高分子(intrinsic conductive polymer, ICP)と称する。本実施例において、ドーピングされた共役系高分子の単体は、アセチレン(acetylenes)、ピロール(pyrroles)、パラフェニレン(paraphenylenes )、チオフェン(thiophenes)、フラン(furans)、3,4-エチレンジオキシチオフェン(3,4-ethylenedioxythiophenes, EDOT)、チアナフテン(thianaphthenes)、3,4-プロピレンジオキシチオフェン(3,4-(2,2-benzyl propylenedioxythiophenes), ProDOT)、アニリン(anilines)、または共重合体、またはその派生物、またはその組合せから選択される。例えば、上述のドーピングされた共役系高分子の構造式は、それぞれ以下の化学式(1)から化学式(9)のホモポリマー(homopolymers)型のドーピングされた共役系高分子であるほか、さらに、上述の一種以上の高分子の単体による、いずれかの組合せにより形成される共重合体(copolymers)をも含む。例えば、化学式(10)及び化学式(11)は、このうちの二個の共重合体の例である。このうち、化学式(10)は、ポリアニリン‐co(3,4-エチレンジオキシ‐チオフェン)(poly(aniline-co-3,4-ethylenedioxy- thiophenes))が、アニリン(aniline)と3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)により組成される共重合体である。化学式(11)は、ポリアニリン-co-ピロール(poly(aniline-co-pyrroles))であり、アニリン(aniline)とピロール(pyrrole)から組成される共重合体である。
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【0022】
このうち、化学式(1)はドーピングされたポリアセチレンの構造式、化学式(2)はドーピングされたポリピロール及びその派生物の構造式、化学式(3)はドーピングされたポリベンゼン及びその派生物の構造式、化学式(4)はドーピングされたポリチオフェンの代替物及びその派生物の構造式、化学式(5)はドーピングされたポリフラン及びその派生物の構造式、化学式(6)はドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその派生物の構造式、化学式(7)はドーピングされたポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)及びその派生物の構造式、化学式(8)はドーピングされたポリチアナフテン及びその派生物の構造式、化学式(9)はドーピングされたポリアニリン及びその派生物の構造式である。
【0023】
ここで説明すべきは、化学式(1)から化学式(11)のnは、3〜5000の間の整数であり、化学式(2)から化学式(11)のR1からR20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2のうちの一つであるということである。このうち、jは、0〜8の間の整数である。化学式(3)のYは、硫黄、酸素、C6H4、C=C、C=NまたはN=Nのうちの一つであり、化学式(4)のpは、0〜3の間の整数である。化学式(9)のyは、0〜1の間である。化学式(1)から化学式(11)のmは、-5000から5000の間の整数であり、化学式(1)から化学式(11)のaは、-5000〜5000の間の整数である。化学式(1)から化学式(11)のAaは、例えば、CSA-1(camphorsulfonic acid)、MSA-1(methylsulfonic acid)、TsO-1(toluene-p-sulfonic acid)、DBSA-1(dodecylbenzenesulfonic acid)、N-alkylpyridinium ([CnPY]+) のような有機マイナスイオンか有機プラスイオン、または、下記の化学式(14)から化学式(16)のうちの一つ、または、例えば、F-1、Br-1、Cl-1、I-1、SO4-2、PO4-3、ClO4-1、ClO2-1、BF4-1、NO3-1、NH4+、Na+、K+等の無機マイナスイオンかプラスイオンである。このうち、化学式(15)から化学式(16)のqは、1〜5000の間の整数である。本実施例における「の間」の定義は、端点の二個の数値を含む。
【化28】

【化29】

【化30】

【0024】
共役系高分子の導電性を高めるために、本実施例においては、ドーピング(doping)の手段は、ホールまたは電子伝導キャリアを形成することでドーピングされた共役系高分子に導電性を持たせる。このうち、ドーピングの手段は、酸ドーピングと酸化ドーピングの二種の方式により共役系高分子の導電性を高める。例えば、酸ドーピングで用いる酸は、塩酸水溶液であり、酸化ドーピングに用いられる酸化剤は、過硫酸アンモニウムまたは塩化鉄である。
【0025】
有機溶剤は、上述の少なくともいずれか一つの形式のドーピングされた共役系高分子と混合される。有機溶剤の構造は、少なくとも下記の化学式(12)または化学式(13)またはその組合せから選択されたものを一種含む。
【化31】

【化32】

【0026】
上記の化学式(12)中のeは、0〜5の間の整数であり、化学式(12)及び化学式(13)中のR1からR8は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2であり、このうち、jは、0〜8の間の整数である。
【0027】
以下に、それぞれドーピングされたポリアニリン、ドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びドーピングされたポリピロールの3種の共役系高分子の製造及びそれが有機溶剤と混合した場合を例として、本発明の導電性高分子溶液及びその製造方法について説明する。
【0028】
[ドーピングされたポリアニリンの合成及びドーピング]
0.41 gの過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)を取り、10 mlの1.2 M 塩酸水溶液中に溶解する。それとは別に、0.17 gのアニリン単体を0.17 gの0.01%フェノール水溶液中に溶解する。そして、さらに、26 mlの 1.2 M 塩酸水溶液と混合する。過硫酸アンモニウムを含む塩酸水溶液とアニリン単体を含む塩酸水溶液を混合した後、室温下で重合反応を進行させる。約20分後、溶液中に濃い緑のドーピングされたポリアニリン(固体)が生成される。この重合反応後の溶液をろ紙でろ過(液体部分を除去して、固体部分を保留する)した後、それぞれ蒸留水、メタノールと塩酸水溶液等の洗浄液で固体部分を洗浄して無色にし、得られたポリアニリン高分子粉末を脂肪抽出装置(fat extraction apparatus)を利用して、アセトン(acetone)とアセトニトリル(acetonitrile)等の有機溶剤によって再度充分に洗浄した後、最後に再び塩酸水溶液で洗浄することで、それがドーピングされたポリアニリンとなり、乾燥させた後粉末を収集する。
【0029】
[ドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の合成及びドーピング]
0.41 gの過硫酸アンモニウムを取り、10 mlの 1.2 M 塩酸水溶液に溶解させて、過硫酸アンモニウムの酸化率を増加させる。それとは別に、0.26 g の3,4-エチレンジオキシチオフェン単体を、26 mlの1.2 M 塩酸水溶液に溶解する。室温下で過硫酸アンモニウムを含む塩酸水溶液及び3,4-エチレンジオキシチオフェン単体を含む塩酸水溶液を混合させて、重合及びドーピング反応を進行させる。24時間後、溶液中に青いポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(固体)が生成される。この溶液をろ紙でろ過して、固体部分を得る。そして、それぞれ蒸留水、メタノールと塩酸水溶液によって、無色になるまで固体を洗浄した後、得られたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)高分子粉末を、さらに脂肪抽出装置を利用して、アセトンとアセトニトリル等の有機溶剤によって、再度充分に洗浄した後、最後に再び塩酸水溶液で洗浄し、乾燥させて粉末を収集する。
【0030】
[ドーピングされたポリピロールの合成及びドーピング]
0.41 gの過硫酸アンモニウムを取り、10 mlの 1.2 M塩酸水溶液に溶解する。それとは別に、0.13 gのピロール単体を、26 mlの1.2 M塩酸水溶液中に溶解する。室温下で過硫酸アンモニウムを含む塩酸水溶液とピロール単体を含む塩酸水溶液を混合して、重合反応を進行させる。24時間後、溶液中に黒いポリピロール(固体)が生成される。この溶液をろ紙でろ過して、固体部分を保留した後、それぞれ蒸留水、メタノールと塩酸水溶液によって、無色になるまで固体を洗浄した後、得られた高分子粉末を再び脂肪抽出装置を利用して、アセトンとアセトニトリル等の有機溶剤によって再度充分に洗浄後、最後に再び塩酸水溶液で洗浄して、乾燥させた後粉末を収集する。
【0031】
[ドーピングされた共役系高分子と有機溶剤の混合]
適量のドーピングされたポリアニリン粉末、ドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)粉末、またはドーピングされたポリピロール粉末を取り、それぞれ有機溶剤ヘキサフルオロイソプロパノール(hexafluoroisopropanol, HFIP)中に溶解させて、超音波でドーピングされた共役系高分子と有機溶剤混合物を数時間振動させることで、それぞれ緑のポリアニリン溶液、青いポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)溶液及び黒いポリピロール溶液が得られる。さらに、ドーピングされた共役系高分子の溶液中の濃度の重量パーセンテージは、最高それぞれ35、40及び15%に達する。ヘキサフルオロイソプロパノール(hexafluoro-isopropanol, HFIP)以外にも、有機溶剤は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-フェニル-2-プロパノール(1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-phenyl-2-propanol, HFPP)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-(p-tolyl)-プロパノール(1,1,1,3,3,3- hexafluoro-2-(p-tolyl)-propanol, HFTP)、または、パーフルオロプロパン(perfluoropropane, PFP)等が可能であり、いずれもドーピングされた共役系高分子に対する溶解性は良好である。
【0032】
以下、いくつか実施例を示して、本発明のドーピングされた共役系高分子が導電性高分子溶液中における分散度が良好であり、広く電子素子中に応用することが可能であることを証明する。
【0033】
[実施例1:導電性高分子溶液の電解コンデンサに応用した場合]
先ず、アルミ片を40Vの電圧で30分酸化させて、多孔性酸化アルミ膜を生成する。膜が生成されたアルミ片を脱イオン水で洗浄して、オーブンで乾燥させる。次に、導電性のポリアニリン溶液(構造は、化学式(17)に示したとおりで、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させる)を、多孔エッチングの酸化アルミ箔上に滴下し、乾燥後に再びカーボンペーストを塗って、オーブンで乾燥させることで溶剤を除去する。その後、カーボンペースト表面に均一に銀ペーストを塗って再びオーブンで乾燥させてから、最後に金箔で銀ぺスートの上から覆って、負極に接続されたワニ口クリップで挟み、正極に接続されたワニ口クリップで導線を挟めば、キャパシタンスの測定が行なえる。結果は、表1に示したとおりであり、本発明の導電性高分子溶液を乾燥後に形成された高分子導電膜が、キャパシタ(コンデンサ)素子に応用される特性を有していることを表している。
【化33】

【表1】

【0034】
[実施例2:導電性高分子溶液を発光ダイオードに応用した場合]
きれいに清浄したITOガラスの表面に実施例1と同様の導電性ポリアニリン溶液を一滴滴下し、乾燥させて膜を形成させた後、さらに回転塗布によるコーティング方式でpoly[(2-((2-ethyl-hexyl)-oxy)-5-methoxy-p-phenylene) vinylene](MEH-PPV)(使用する溶液は、6 mgのMEH-PPVを1mlのトルエン中に溶解させる)を形成させる。エバポレート方式によりMEH-PPV膜上に厚さ2500ÅのAlを形成させて陰極とすることで、導電性ポリアニリン膜が形成されて、正孔輸送層の二層構造の高分子発光ダイオードとなる。同様の方法で、他にも高分子発光ダイオードを形成させることが可能であるが、導電性ポリアニリンを含まない単層構造である。二種類の構造の異なる高分子発光ダイオード素子を比較する場合は、それぞれその電流-電圧曲線(Current-Voltage Curve)及び電圧-輝度曲線(Voltage-Brightness Curve)(使用する電源供給及び電流測量装置はHP 4145、輝度測定機器は光電増倍管)を測定する。さらに、素子の始動電圧(Turn-on voltage)、発光効率(Luminance Efficiency)及びバリアハイト(Barrier Height)等のパラメーターを測定する。表2の結果から、ポリアニリン導電膜(PANI)を含む発光ダイオードの多くのパラメーターの数字は、いずれもポリアニリン導電膜を含まない発光ダイオードの数字より優れていることが明らかである。
【表2】

【0035】
[実施例3:導電高分子溶液をケミカルセンサに応用した場合]
10片のきれいに洗浄されたポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate, PET)表面に、導電性ポリアニリン溶液(実施例1と同様)を一滴滴下する。乾燥後、厚さが同様の10片の導電性ポリアニリン膜が形成される。別に、左旋ビタミンC水溶液を10杯準備する。濃度は、それぞれ0 ppm,10-3 ppm,10-2 ppm,10-1 ppm,1 ppm,10 ppm,100 ppm, 1000 ppm,104 ppm,5 x 104 ppmで、塩酸水溶液で左旋ビタミンC水溶液のpH値を全て1に調整する。それぞれ、導電性ポリアニリン膜を異なる濃度の左旋ビタミンC水溶液中に3分間浸した後、導電性ポリアニリン膜の紫外光/可視光吸收スペクトルを計測する。結果は、図1に示したとおり、導電性ポリアニリン膜を利用してケミカルセンサとし、左旋ビタミンC水溶液中に浸して、その吸收スペクトラムの変化を計測することで、水溶液中の左旋ビタミンCの濃度を知ることができ、さらに、その計測極限は10-3 ppmまでに至ることができる。
【0036】
[実施例4:導電性高分子溶液を抗腐食技術に応用した場合]
2本のゼムクリップを準備し、このうちの1本はディップコーティング(dip coating)方式で導電性ポリアニリン膜を付着させる。使用する導電性ポリアニリン溶液は、実施例1と同様である。その後、2本のゼムクリップを同時に0.1 M塩酸水溶液に48時間浸してから取り出す。結果、導電性ポリアニリン膜を付着させたゼムクリップは新しいままであるが、導電性ポリアニリン膜を付着させないゼムクリップは、図2に示したように腐食して錆びていることがわかる。
【0037】
[実施例5:導電性高分子溶液を色素増感太陽電池に応用した場合]
本実施例は、スクリーン印刷(Screen printing)方式で、二酸化チタニウム(Titanium dioxide, TiO2)素材を洗浄した導電性ガラスの上に塗布する。管状炉に入れて450℃の高温でTiO2を鋭錘石(Anatase)に焼成し、その結晶は、それを緊密にFTO(fluorine-doped tin oxide)ガラスに付着させる。順に、二層のTiO2膜及び一層のTiO2散射層が塗布されてTiO2電極を形成する。生成されたTiO2電極を、濃度が3×10-4 MのN719 (cis-bis(isothiocyanato)bis-(2,2'-bipyridyl-4,4'-dicarboxylato)-ruthenium(II)bis-tetra- butylammonium)染料溶液中に4時間浸した後取り出して、アルコールで洗浄する。シャーレの中に放置して乾かす。また、それぞれ、導電性ポリアニリン溶液(実施例1と同様)、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)溶液(このうち、ドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の構造は、化学式(18)に示したとおりであり、さらに、ヘキサフルオロイソプロパノール中に溶解させる)及び導電性ポリピロール溶液(このうち、ドーピングされたポリピロールの構造は、化学式(19)に示したとおりであり、さらに、ヘキサフルオロイソプロパノール中に溶解させる)を三枚のFTOガラス上に滴下する。乾燥すれば導電性高分子対電極が得られる。Surlyn社(登録商標)のフィルムを使用して、染料のTiO2電極及び導電性高分子対電極を吸着させて、サンドイッチ型式で一つに組み立てる。最後に、穴が開けられた対電極上に電解液を注入する。電解液の成分は、0.6 M BMII(N-methyl-N- butyl-imidazolium iodide)、0.1 M LiI、0.05 M I2、0.5 M TBP(4-tert-butylpyridine)、0.1 M GuNCS(guanidinium thiocyanate)をアセトニトリル中に溶解させたものである。さらに、すばやくガラスの蓋で穴を蓋して密封すると、色素増感太陽電池素子の組立てが完了する。AM1.5(100 mW/cm2)の太陽光シュミレーション光源を照射させ、電流-電圧曲線図を測定して、光電変換率を計算して導き出す。同時に、プラチナ(Pt)膜で導電性高分子膜に取って代わり、同様の条件下でも、その電流-電圧曲線図をテストして比較することも可能である。そして、光電変換率を算出する。結果は、表3に示したとおりである。
【化34】

【化35】

【表3】

【0038】
[実施例6:導電性高分子溶液をエレクトロクロミック技術に応用した場合]
回転塗布によるコーティング方式で、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)溶液(実施例五と同様)を、ITO導電ガラスに塗布して、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)膜を形成させる。さらに、この高分子膜のエレクトロクロミック能力を測定する。図3は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)薄膜の異なる電圧下での通過度曲線図である。結果は、異なる電圧下で、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)薄膜は、非常にエレクトロクロミックの対比に優れており、さらに、全波にわたって変化することがわかる。
【0039】
このように、本発明の導電性高分子溶液は、ドーピングされた共役系高分子、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリチアナフテン、ポリアニリン、またはその派生物及び共重合物、またはその組合せと、有機溶剤を混合させることで、ドーピングされた共役系高分子の溶剤中の溶解性を高める。このうち、有機溶剤は、フッ素を含む有機溶剤、またはフッ素を含む有機溶剤の混合、またはフッ素を含む有機溶剤とフッ素を含まない有機溶剤の混合から組成される有機溶剤である。実測時には、特に、HFIP、HFPP、またはHFTP等の溶剤がドーピングされた共役系高分子に対する溶解性が良好であり、共役系高分子の濃度を高めると共に、その膜形成後の導電性が強化することがわかっている。実験でも、本発明の導電性高分子溶液は、塗布またはコーティング等の方式により、すでに広く電解コンデンサ、発光ダイオード、ケミカルセンサ、抗腐食、色素増感太陽電池及びエレクトロクロミック技術等の分野で応用が可能であることが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、さらに、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン、ポリチアナフテン、ポリアニリン、または、それらの派生物及び共重合体、または、その組合せから選択されるドーピングされた共役系高分子と、
前記ドーピングされた共役系高分子と混合される有機溶剤とを含むことを特徴とする導電性高分子溶液。
【請求項2】
前記ドーピングされた共役系高分子の構造式は、それぞれ下記化学式(1)から化学式(11)のうちの一つか、その派生物及び共重合体またはその組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【請求項3】
前記有機溶剤の構造式は、少なくとも下記化学式(12)、化学式(13)、またはその組合せから選択されたものを一つ含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【化12】

【化13】

【請求項4】
前記化学式(1)から前記化学式(11)のnは、3〜5000の間の整数であり、前記化学式(2)から前記化学式(11)のR1からR20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2のうちの1つから選択され、このうち、jは、0〜8の間の整数であり、前記化学式(3)のYは、硫黄、酸素、C6H4、C=C、C=NまたはN=Nのうちの1つであり、前記化学式(4)のpは、0〜3の間の整数であり、前記化学式(9)のyは、0〜1の間であり、前記化学式(1)から前記化学式(11)のmは、-5000〜5000の間の整数であり、前記化学式(1)から前記化学式(11)のaは、-5000〜5000の間の整数であり、前記化学式(1)から前記化学式(11)のAaは、有機マイナスイオン、または有機プラスイオン、または無機マイナスイオン、または無機プラスイオンのうちの1つであることを特徴とする請求項2に記載の導電性高分子溶液。
【請求項5】
前記化学式(12)中のeは、0〜5の間の整数であり、前記化学式(12)及び前記化学式(13)中のR1からR8は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、アルデヒド基、カルボキシル基、OCjH2j+1、CjH2j+1、SCjH2j+1、N(CjH2j+1)2、CjH2j+1SO3HまたはCjH2jPO3H2から選択され、このうち、jは0〜8の間の整数であることを特徴とする請求項3に記載の導電性高分子溶液。
【請求項6】
前記ドーピングされた共役系高分子は、酸ドーピングまたは酸化ドーピング共役系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項7】
前記有機溶剤は、フッ素を含む有機溶剤、またはフッ素を含む有機溶剤の混合溶剤、またはフッ素を含む有機溶剤とフッ素を含まない有機溶剤の混合溶剤から選択されることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項8】
前記有機溶剤は、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-フェニル-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオ-2-(p-tolyl)-プロパノール、または、パーフルオロプロパン、または、その組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項9】
前記ドーピングされた共役系高分子の濃度の重量百分率は、40%より小さいことを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項10】
前記導電性高分子溶液は、太陽電池、コンデンサ(キャパシタ)、発光ダイオード、ケミカルセンサ、パターンエッチング、抗腐食、静電気放電、電極材料、EMI遮蔽またはエレクトロクロミック技術に用いられることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項11】
共役系高分子単体及び酸化剤を酸性溶液中に混合する工程と、
得られた混合液に重合反応を起こさせる工程と、
重合反応により生じた固体部分をろ過して取得する工程と、
ろ過して得た固体を洗浄及びドーピングして、請求項1に記載の、ドーピングされた共役系高分子を取得する工程と、
前記で得られたドーピングされた共役系高分子を、請求項3に記載の、少なくとも化学式(12)、または化学式(13)、またはその組合せから選択した一種類を含む有機溶剤中に混合する工程と、
を備えることを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229391(P2012−229391A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174059(P2011−174059)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(511194809)国立中央大学 (2)
【Fターム(参考)】