説明

導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体、その製造方法および当該導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を含有する組成物

【課題】導電性高分子およびドーパントを有機溶媒に分散させて得られた安定な導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を提供すること。
【解決手段】導電性高分子(a1)、ドーパント(a2)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を含有し、水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体;導電性高分子(a1)およびドーパント(a2)からなる導電性高分子のドーパント錯体(A)の水分散体から、噴霧乾燥により水を取り除いた乾燥固体に、有機溶媒(D)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を加えて分散処理を行うことを特徴とする導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体、その製造方法および当該導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を含有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共役系構造を有する導電性高分子は、良好な導電性、安定性を示すことから各種の帯電防止剤や電極材料等の工業材料として使用されている。この共役系導電性高分子には、ドーパントと呼ばれる導電性を発現させるための物質を添加することによって、高い導電性が付与される。たとえば、近年、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTという場合がある。)は、帯電防止剤用途を中心に幅広く用いられている。PEDOTは、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンを、水相中でドーパントとしてポリアニオン(例えば、ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSという場合がある。))の存在下で酸化剤を用いて重合することにより、水溶性または水分散性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリアニオン錯体の状態で得られる。
【0003】
このPEDOT/PSSの水分散体は、水系ウレタン樹脂等に配合、塗布することにより、基材上に導電性塗膜を形成できることが知られており、透明電極、帯電防止用途等に利用されている。しかし、PEDOT/PSSは、水分散体という形態であり、またイオン性の構造を有するPSSを高い比率で含有するため、以下のような欠点があり、汎用性に欠けるものであると言える。
【0004】
その欠点のひとつとしては、PEDOT/PSS水分散体に、一般の有機溶媒を少量であれば添加することはできるが、多量に添加すると安定な分散状態を保てず、導電性粒子が凝集してしまうという現象があげられる。
【0005】
また、導電性塗膜を得るために、バインダーモノマー溶液または分散液と導電性高分子を混合または分散して重合させる、あるいは、バインダーポリマー溶液または分散液と導電性高分子を混合、分散させるという手法を採ることが多いが、大半のモノマー、ポリマーの溶液、分散液は有機溶媒系のものであるため、PEDOT/PSSの水分散体を添加すると、水が塗膜に残留した後蒸発する、またはPSSとマトリックス材料のポリマーとの相溶性が悪いために分離し、透明性の低下や塗工状態の不安定さ等の不具合が発生する場合があった。
【0006】
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子のような水分に敏感な材料に適用する場合には、この水分散体由来の水による不具合が発生するおそれがあり、適用に制約があった。
【0007】
これらの課題を解決するための方法として、水分散体の溶媒の一部を、低級アルコールのような水と混和しやすい有機溶媒で置換して、含水有機溶媒分散体を得て、これを使用する方法がある。しかし、一般にマトリックス材料のポリマーあるいは原料モノマーのアルコールに対する溶解性は十分ではないため、適用範囲が限定される。また、含水溶媒系であるため、水単独分散体を使用した場合と同様に、有機溶媒/バインダーモノマーまたはポリマーと併用すると、塗膜の透明性低下等が発生する場合があった。
【0008】
また、PEDOT/PSS水分散体に水と共沸する性質の有機溶媒を添加して、共沸により水を取り除き、有機溶媒の分散体とする方法も考えられる。この場合、分散させる有機溶媒の種類がアミド類、ピロリドン類などに限定されるため、適用に限界があった。(例えば、特許文献1参照)
【0009】
さらに、他の改善策として、PEDOT/PSS水分散体を加熱乾燥または凍結乾燥して固体とし、それを粉砕したものを分散に使用する方法もある。(例えば、特許文献2参照)この場合、水に分散していた粒子同士が強固に固着した状態になりやすく、もとの粒子サイズに解砕することが容易でない、分散体にするためにビーズミル等による処理が必要であり、分散に必要なエネルギー、時間が大きいという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特表2004−532292号公報
【特許文献2】特表2004−514753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、導電性高分子およびドーパントを有機溶媒に分散させて得られた安定な導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特定の方法で導電性高分子/ドーパントを分散させ、さらにアミン類、ノニオン性界面活性剤等を用いることにより、安定な導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を得ることができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、導電性高分子(a1)、ドーパント(a2)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を含有し、水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体;導電性高分子(a1)およびドーパント(a2)からなる導電性高分子のドーパント錯体(A)の水分散体から、噴霧乾燥により水を取り除いた乾燥固体に、有機溶媒(D)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を加えて分散処理を行うことを特徴とする水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法;導電性高分子(a1)およびドーパント(a2)からなる導電性高分子のドーパント錯体(A)の水分散体に、沈殿剤(C)または有機溶媒(D)を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、有機溶媒(D)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を加えて分散処理を行うことを特徴とする水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法;前記導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体および導電性高分子以外のポリマーを含有する組成物;前記導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体ならびに重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含有する組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体は、保存安定性に優れるものである。また、本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体は、導電性高分子/ドーパント錯体を有機溶媒に分散したものであるため、様々な用途に使用することができる。さらに本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法によれば、ビーズミル等の高度な分散処理を行うことなく、簡易的な分散処理を行うだけで導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体が得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体は、導電性高分子(a1)(以下、(a1)成分という。)、ドーパント(a2)(以下、(a2)成分という。)およびアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)(以下、(B)成分という。)を含有し、水の含有量が20重量%以下(好ましくは15重量%以下)である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体である。
【0016】
本発明に用いられる(a1)成分としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリフラン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類ポリチオフェンビニレン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。なお、(a1)成分は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を高分子中に導入することが好ましい。(a1)成分の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。(a1)成分としては、ポリチオフェン類が色相等の点から好ましい。
【0017】
(a1)成分は、市販のものをそのまま用いてもよいが、適当な溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤、酸化触媒および後述する(a2)成分の存在下で化学酸化重合することによって、容易に導電性高分子のドーパント錯体(A)(以下、(A)成分という)が得られる。
【0018】
前駆体モノマーとしては、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
使用する溶媒としては特に限定されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0020】
酸化剤、酸化触媒としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0021】
本発明で使用される(a2)成分としては、ポリアニオン化合物であれば特に限定されず公知のものを使用することができる。(a2)成分は、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。当該ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0022】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ3,3,3−トリフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0023】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0024】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミン類とからのポリイミドが挙げられる。
【0025】
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0027】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0028】
ポリアニオンのアニオン基としては、(a1)成分への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基の(a1)成分へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0029】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。
【0030】
ポリアニオンの重合度は、特に限定されないが、通常、モノマー単位が10〜100,000程度であり、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000とすることが好ましい。
【0031】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0032】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法としては、例えば、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、(a1)成分を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0033】
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸とすることが好ましい。アニオン酸とする方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0034】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
【0035】
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CH=CH−COO−(CH22−SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CH=CH−COO−(CH23−SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CH=CH−COO−C(CH32CH−SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CH=CH−COO−(CH2−SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CH=CHCH−COO−(CH22−SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CH=CHCH−COO−C(CH32CH−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−(CH22−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−(CH23−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−(CH2−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−C(CH32CH−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−C64−SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CH=CH(CH22−COO−C108−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−(CH22−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−(CH23−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−C(CH32CH−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−(CH2−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−C64−SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CH=C(CH3)−COO−C108−SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0036】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0037】
本発明で使用される(a1)成分および(a2)成分の使用量は特に限定されないが、通常(a1)成分1重量部に対し、(a2)成分が0.5〜5重量部程度である。また、本発明で使用される(a1)成分および(a2)成分の組合せとしては、上記に挙げたグループから選択されたものを使用できるが、化学安定性、電気伝導性、環境安定性等の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸が好ましい。これらは、前述の通り導電性高分子のモノマーとドーパントが共存した水溶液または水分散液状態で酸化剤の存在下重合を行って合成しても良いし、市販の導電性高分子/ドーパント水分散体を使用してもよい。市販の導電性高分子/ドーパント水分散体としては、例えば、Baytron P
(商品名、H.C.シュタルク社製) 、Orgacon (商品名、アグファ社)等(いずれもPEDOT/PSSの水分散体である。)が挙げられる。
【0038】
本発明に用いられる(B)成分としては、アミン類および/またはノニオン性界面活性剤であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。
【0039】
アミン類としては、分子中に少なくとも1つのアミノ基を有する化合物であれば特に限定されずに公知のものを使用することができる。アミン類としては、例えば、一般式(1):RNH3−n(式中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していても良いフェニル基若しくはベンジル基または一般式(2):−X−R(式中、Xは分岐構造を有していてもよいアルキレンオキシド基、Rはアルキル基または水素原子を表す。)で表される官能基、nは1〜3の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のアルキルアミン類、アニリン、ベンジルアミン等の芳香族系アミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類などが挙げられる。また、前記以外のモルホリン等の含酸素アミン類やピリジン等も用いることができる。これらの中では、ポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類が分散安定性の点で好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルアミン類が好ましい。
【0040】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等などが挙げられる。
【0041】
本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体は、例えば、(1)(a1)成分および(a2)成分からなる(A)成分の水分散体から、噴霧乾燥により水を取り除いた乾燥固体に、有機溶媒(D)(以下、(D)成分という)ならびに(B)成分を加えて分散処理を行う(以下、(1)法と言う場合がある)、または(2)(a1)成分および(a2)成分からなる(A)成分の水分散体に、沈殿剤(C)(以下、(C)成分という)を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、(D)成分および(B)成分を加えて分散処理を行う(以下、(2)法と言う場合がある)ことにより得られる。
【0042】
噴霧乾燥は、(A)成分の水分散体を、噴霧し、小滴状態にして、加熱することにより、乾燥固体を得る方法である。噴霧乾燥は、ノズル噴霧を伴う噴霧乾燥機を用いて行われ、特に限定されず公知の方法を採用できるが、たとえば、0.2〜0.8MPa程度の噴霧圧力により、70〜180℃程度のキャリヤガス温度(取入口温度)で行うことができる。
【0043】
得られた乾燥固体を、(D)成分に加え、さらに(B)成分を添加し、分散処理を行うことで、導電性高分子有機溶媒分散体に置換することができる。
【0044】
(D)成分としては、(A)成分を溶解しないものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、エステル類、ニトリル類などが挙げられる。アルコール類としては、水酸基を有するものであれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のモノアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類等が挙げられる。ケトン類としては、分子中にケトン構造を有するものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類等のエーテル類を用いることができる。アミド類としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。スルホン類としては、スルホラン等が挙げられる。エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。これらは、単独で使用しても良くまたは複数を混合して使用することもできる。これらのなかでは、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコール等のアルコール類が取り扱い性と分散安定性の点から好ましい。なお、分散性を向上させるために水を添加することもできるが、最終的に得られる導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の水分含有量が20重量%程度以下となるように、水添加量を調整するか、水を加えて分散させた後、脱水剤を使用して水を除去する、または、常圧または減圧で水分を蒸発させることが好ましい。使用する脱水剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができるが、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。また、分散処理は、特に限定されず公知の方法を採用すればよく、たとえば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、振とう機等の装置を使用して行うことができる。なお、高度な処理が必要な場合には、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等の処理を追加しても良い。なお、分散体の固形分は、用途等により適宜選択すればよく、特に限定されないが、通常は、0.1〜5重量%程度であり、好ましくは0.1〜3.5重量%、より好ましくは0.1〜2.5重量%以下である。
【0045】
なお、乾燥固体を有機溶媒に分散させるために用いられる(B)成分の添加量は、有機溶媒膨潤体中の固形分(導電性高分子/ドーパント錯体)に対して5〜300重量%程度、好ましくは10〜200重量%である。
【0046】
本発明の(2)法で使用される(C)成分としては、(A)成分を沈殿させることができるものであれば、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、前述した(D)成分にアミン類または酸類(前記(a1)成分および(a2)成分以外のもの)を添加したものが挙げられる。
【0047】
(C)成分を調製するために用いられる(D)成分としては、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルが、分散安定性が良好となり、生成するゲル状膨潤体の凝集塊の大きさ等の制御が容易となり、有機溶媒に対する分散性を良好にすることができるため好ましい。
【0048】
(D)成分と併用するアミン類としては、前述した(B)成分をそのまま用いることができる。これらアミン類は、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。これらの中では、ポリオキシエチレンアルキルアミン類を用いることにより有機溶媒に分散することが容易になる点で好ましい。酸類としては特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸類、酢酸、酪酸、シュウ酸、アジピン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸樹脂等のポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらの中では、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸が系に残留した場合の分散安定性の点で好ましい。これら酸類は単独で使用しても良くまたは複数を混合して使用することもできる。(C)成分を構成するアミン類または酸類の使用量は特に限定されないが、通常、(D)成分100重量部に対し、アミン類または酸類を、0.1〜25重量部程度添加すればよい。
【0049】
(C)成分、ゲル状膨潤体を精製させる際に使用する(D)成分の使用量は特に限定されず、ゲル状膨潤体が生成するまで加えればよい。(C)成分を用いる場合には、通常、(A)成分の合計量(固形分)100重量部に対し、(C)成分中のアミン類または酸類を5〜100重量部程度、好ましくは5〜70重量部、より好ましくは5〜50重量部添加すればよい。生成したゲル状膨潤体は、例えば、ろ過により分離することができる。ろ過は、公知の方法、例えば、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等を採用できる。なお、ゲル状膨潤体の分離は、有機溶媒および水を蒸発させることによって行ってもよい。
【0050】
得られたゲル状膨潤体には、通常、水が含まれているから、最終的に得られる導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の水分含有量が20重量%程度以下となるよう前記(D)成分による洗浄を繰り返し、ゲル状物を有機溶媒膨潤体とすることが好ましい。なお、水の除去は、脱水剤を併用しても良く、常圧または減圧で蒸発させてもよい。
【0051】
得られた有機溶媒膨潤体を、(D)成分に加え、さらに(B)成分を添加し、分散処理を行うことで、導電性高分子有機溶媒分散体に置換することができる。なお、分散に使用される(D)成分の種類は、ゲル状有機溶媒膨潤体を生成させる際に使用したものと同一でも、異なっても良く、また、単一の種類であっても複数の種類の混合物であっても良い。また、分散処理は、特に限定されず公知の方法を採用すればよく、たとえば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、振とう機等の装置を使用して行うことができる。なお、高度な処理が必要な場合には、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等の処理を追加しても良い。なお、分散体の固形分は、用途等により適宜選択すればよく、特に限定されないが、上限は通常5重量%以下、好ましくは3.5重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下であり、下限は通常、0.1重量%以上である。
【0052】
有機溶媒膨潤体を有機溶媒に分散させるために用いられる(B)成分がアミン類の場合には、ゲル状有機溶媒膨潤体を生成させる時に添加するアミン類と同様のものを用いることができる。(C)成分として、アミン類を添加した場合には残留物のアミン類が分散に利用できるが、分散を行う時点でさらに(B)成分を添加して処理を行うことが好ましい。(B)成分の添加量は、有機溶媒膨潤体中の(A)成分量(固形分)に対して5〜200重量%程度、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
【0053】
このようにして得られた導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体は、導電性高分子以外のポリマーと併用することにより、例えば、電子デバイス等の分野におけるコーティング剤として用いることができる。当該組成物は、例えば、(D)成分と同一、または相溶性のある有機溶媒に導電性高分子以外のポリマーを溶解させたものに、導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を添加、分散処理を行い、さらに必要に応じて消泡剤、レベリング剤等を添加して組成物を得ることができる。使用されるポリマーとしては、通常、コーティング剤に用いることができるポリマーであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂が挙げられる。このようにして得られた組成物は、基材上に塗布された後、乾燥処理を行うことで、導電性高分子が分散したポリマー皮膜となる。
【0054】
また、導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体と公知の重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを併用することで、例えば、電子デバイス等の分野におけるコーティング剤として用いることができる。当該組成物は、例えば、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーならびに必要に応じて(D)成分と同一、または相溶性のある有機溶媒を混合したものに、本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を添加、分散処理を行い、さらに必要に応じて消泡剤、レベリング剤等を添加することにより得られる。当該組成物は、必要に応じて重合開始剤の存在下、熱、光(紫外線、電子線等)等により重合させることができ、その結果として生成したポリマー中に導電性高分子が分散した状態の皮膜が得られる。使用する重合性モノマーとしてはラジカル重合することができるものであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン等の重合性カルボン酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、Nビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N′ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類、スチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸類などが挙げられる。また、オリゴマーとしては、公知のアクリル系オリゴマーを用いることができる。なお、本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の使用量は、特に限定されないが、通常、重合性モノマーおよび/またはオリゴマー100重量部(固形分)に対し、0.2〜5重量部(固形分)程度用いれば良い。
【0055】
また、ポリマー粉末またはポリマー溶液に本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体を添加し、有機溶媒を揮発させることにより、ポリマー粉末表面またはポリマー液に導電性高分子が分散、複合化された組成物を製造することもできる。マトリックスとなるポリマー粉末は熱可塑性であっても、熱硬化性であっても良く、熱可塑性の場合には必要に応じて核剤、離型剤等を添加しても良く、熱硬化性ポリマーの場合には必要に応じて硬化剤、硬化助剤等を添加しても良い。使用されるポリマーとしては、通常、コーティング剤に用いることができるポリマーであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂が挙げられる。熱可塑性組成物に対して、射出成形、押出成形、ブロー成形等を行うことにより、導電性高分子が分散したポリマーのシート、フィルム等が得られる。また、熱硬化性組成物に対して、圧縮成形、トランスファー成形等を行うことにより、導電性高分子が分散したポリマーのシート、板等が得られる。なお、本発明の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の使用量は、特に限定されないが、通常、ポリマー100重量部(固形分)に対し、0.5〜8重量部(固形分)程度用いれば良い。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。水分量評価は、カールフィッシャー水分計(ダイアインスツルメンツ社製、KF−21型)を使用して行った。なお、%は重量%を示す。
【0057】
実施例1
Orgacon(固形分1.2%)100gを、噴霧乾燥機(ヤマト科学社製、GA−32)を用いて、噴霧圧力0.6MPa、乾燥温度(取入口)150℃で処理、青色固体0.9gを得た。エタノール95gをビーカーにとり、アミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/25、ライオンアクゾ社製)1.6gを添加した後、青色固体0.9gを加えて、乳化分散機
(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)を用い、回転数18000rpmで10分処理、超音波分散機(19.6kHz、ギンセン製)を用いて、出力400Wで10分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均100nmであった。また、水分量は、8.6%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0058】
実施例2
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、エタノール100gを添加、撹拌しながらを、10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分7.8%の湿潤青色固体15gを得た。エタノール45gをビーカーにとり、アミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/15、ライオンアクゾ社製)0.4gを添加した後、湿潤青色固体15gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数4000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均80nmであった。また、水分量は、12.5%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0059】
実施例3
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、撹拌しながらアミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/15、ライオンアクゾ社製)を0.6g添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分10.2%の湿潤青色固体11.5gを得た。エタノール55gをビーカーにとり、ポリオキシエチレンステアリルアミン(商品名:NIKKOL TAMNS−10、日光ケミカルズ社製)0.4gを添加した後、湿潤青色固体11.5gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数4000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均100nmであった。また、水分量は、13.8%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0060】
実施例4
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、エタノール100gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分18.8%の湿潤青色固体6.3gを得た。メチルエチルケトン110gをビーカーにとり、アミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/15、ライオンアクゾ社製)0.4gを添加した後、湿潤青色固体6.3gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数5000rpmで20分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均110nmであった。また、水分量は、14.2%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0061】
実施例5
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、メタノール100gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後メタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分15.2%の湿潤青色固体7.7gを得た。メチルエチルケトン60gをビーカーにとり、アミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/15、ライオンアクゾ社製)0.4gを添加した後、湿潤青色固体7.7gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数4000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均100nmであった。また、水分量は、14.7%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0062】
実施例6
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、エタノール100gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分5.2%の湿潤青色固体21.9gを得た。エタノール60gをビーカーにとり、アミドアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソカード C/15、ライオンアクゾ社製)1.1gを添加した後、湿潤青色固体21.9gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数4000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均100nmであった。また、水分量は、12.2%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0063】
実施例7
丸菱油化工業製PPY−12(ポリピロール水分散液、固形分8%)30gをフラスコにとり、エタノール100gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分6.7%の湿潤黒色固体34.0gを得た。エタノール170gをビーカーにとり、アミンアルキレンオキサイド付加物(商品名:エソミン C/25、ライオンアクゾ社製)1.8gを添加した後、湿潤黒色固体34.0gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数7000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、ポリピロール/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均170nmであった。また、水分量は、14.4%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0064】
実施例8
濃硫酸0.2gを水10gに添加した後、アニリン0.37gを加えて淡黄色液を得た。これにポリスチレンスルホン酸ナトリウム30%水溶液8gを添加後、撹拌しながらこれに10%過硫酸アンモニウム水溶液4gを30分かけて添加、更に2時間撹拌を継続した。
この水分散液に、エタノール10gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後エタノール1200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分5.4%の湿潤緑色固体39.0gを得た。エタノール195gをビーカーにとり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:ノニオン E−205、日本油脂社製)2.1gを添加した後、湿潤緑色固体39.0gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数7000rpmで10分間処理を行った。得られた分散液は、ポリアニリン/PSS粒子の均一分散体であり、その粒子径は平均150nmであった。また、水分量は、14.1%であった。この分散液を室温で1ヶ月放置したが、分離や沈降といった現象は見られず、均一分散状態を保持した。
【0065】
実施例9
実施例1で調製したPEDOT/PSS錯体エタノール分散体20部、多官能ポリエステルアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM−400、固形分濃度100%)36部、N−ビニルホルムアミド(ダイヤニトリックス(株)製、NVF−TM、固形分濃度100%)4部、エタノール40部および光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(以下HCPKという、商品名:イルガキュアー184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2部を混合、超音波分散機(19.6kHZ、(株)ギンセン製)を用いて、出力400Wで10分間処理を行い、活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物を得た。この組成物を紫外線により硬化させた結果、表面抵抗値8.6×10Ω/□、全光線透過率86.3%、ヘイズ0.3であり、導電性、光学特性が良好なコーティング膜が得られた。
(1)面抵抗値
コーティング剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に#12バーコーターで塗布し、80℃で2分乾燥させ、空気下で高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の照射量で通過させて硬化させた。この硬化膜の硬化塗膜部の表面抵抗値をアドバンテスト(株)製超絶縁抵抗/微小電流計によって測定した。
測定条件: 温度25℃
(2)硬化膜の透明性(全光線透過率およびヘイズ)
上記硬化膜の全光線透過率およびヘイズ値を村上色彩技術研究所製カラーへイズメーターを用い、PETフィルムを基準として測定した。
【0066】
実施例10
実施例1に従い作製したPEDOT/PSS錯体エタノール分散体50部、ポリウレタン(荒川化学工業(株)製、KL−593、酢酸エチル/2−プロパノール系、固形分濃度35%)50部、2−プロパノール50部を混合、超音波分散機(19.6kHZ、(株)ギンセン製)を用いて、出力400Wで10分間処理を行い、コーティング剤組成物を得た。PETフィルム上に#12バーコーターで塗布し、80℃で30分乾燥させ表面抵抗値4.7×10Ω/□のコーティング膜が得られた。
【0067】
比較例1
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、メタノール100gを添加、撹拌しながら10%塩酸を0.5ml添加した。その後30分撹拌を継続した後、1時間放置した。得られたゲル状物を、グラスフィルターを用いて減圧ろ過、その後メタノール200gを添加、減圧ろ過という操作を8回繰り返した。固形分が完全に乾燥しない状態でグラスフィルターから取り出し、加熱重量減少から固形分重量を算出、固形分8.2%の湿潤青色固体14.2gを得た。エタノール60gをビーカーにとり、湿潤青色固体14.2gを加えて、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数5000rpmで20分間処理を行った。得られた処理液は、PEDOT/PSS粒子の均一分散体と、分散されない状態の粗大粒子が混合した状態であり、放置すると粗大粒子が沈降した。この処理液を蓋付ガラス容器に入れ、0.5mm径のジルコニアビーズを添加して、ペイントシェーカーで4時間振とう処理を行った結果、粗大粒子は粉砕されて均一分散液が得られた。この分散液を室温で1ヶ月放置したところ、透明層と青色層に分離現象が見られた。
【0068】
比較例2
Orgacon(固形分1.2%)100gをフラスコにとり、トルエン400gを添加、撹拌しながら加熱し、トルエン/水共沸混合物を留去した。残留した固形分をエタノールで洗浄、エタノールをろ別後、室温で8時間放置、乾燥した。得られた固形物1gをメタノール80gに添加、乳化分散機
(商品名:TKホモディスパー、特殊機化工業製)を用い、回転数5000rpmで20分処理を行った。得られた処理液は、淡青色懸濁液であり、PEDOT/PSSの粗大粒子、塊が目視で確認できる。この処理液を蓋付ガラス容器に入れ、0.5mm径のジルコニアビーズを添加して、ペイントシェーカーで4時間振とう処理を行った結果、粗大粒子は粉砕されたが、塊は残った状態であり、均一分散液とはならなかった。この塊をろ別して、分散液部分を室温で1ヶ月放置したところ、透明層と青色層に分離現象が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子(a1)、ドーパント(a2)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を含有し、水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項2】
導電性高分子(a1)が置換または非置換のポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリフラン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類およびポリチオフェンビニレン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項3】
ドーパント(a2)がポリアニオンである請求項1または2に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項4】
ポリアニオンのアニオン基が、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基およびスルホ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項5】
有機溶媒(D)がアルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、エステル類およびニトリル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項6】
アミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)が、アルキルアミンおよびポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体。
【請求項7】
導電性高分子(a1)およびドーパント(a2)からなる導電性高分子のドーパント錯体(A)の水分散体から、噴霧乾燥により水を取り除いた乾燥固体に、有機溶媒(D)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を加えて分散処理を行うことを特徴とする水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項8】
導電性高分子(a1)およびドーパント(a2)からなる導電性高分子のドーパント錯体(A)の水分散体に、沈殿剤(C)または有機溶媒(D)を添加し、得られたゲル状膨潤体から水を取り除き、有機溶媒(D)ならびにアミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)を加えて分散処理を行うことを特徴とする水の含有量が20重量%以下である導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項9】
導電性高分子(a1)が置換または非置換のポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリフラン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類およびポリチオフェンビニレン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7または8に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項10】
ドーパント(a2)がポリアニオンである請求項7〜9に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項11】
ポリアニオンのアニオン基が、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基およびスルホ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項10に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項12】
有機溶媒(D)がアルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、エステル類およびニトリル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7〜11のいずれかに記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項13】
沈殿剤(C)が、有機溶媒(D)にアミン類または酸を添加したものから選ばれる少なくとも1種である請求項3〜7のいずれかに記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項14】
アミン類およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する分散剤(B)が、アルキルアミンおよびポリアルキレンオキサイド構造を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体および導電性高分子以外のポリマーを含有する組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の導電性高分子/ドーパント錯体有機溶媒分散体ならびに重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含有する組成物。


【公開番号】特開2008−45116(P2008−45116A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185651(P2007−185651)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】