説明

導電性黒色組成物及びプラズマディスプレイパネルにおけるその使用

【課題】一層構造でありながら、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を提供しうる、導電性黒色組成物を提供する。
【解決手段】(a)Ag粉末、(b)Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料、及び(c)ガラスフリットを含む、導電性黒色組成物である。(a)成分100質量部に対し、黒色度の点から、(b)成分は2〜12質量部とすることができ、3〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは、4.5〜7.5質量部である。また、(a)成分100質量部あたり、比抵抗の点から、(c)成分は1〜25質量部とすることができ、3〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは、3.5〜18質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性黒色組成物、特にプラズマディスプレイパネル(以下、PDPということがある)のバス電極形成用の組成物、並びに組成物を用いて得られたバス電極、及びバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは、プラズマ発光を利用した平面表示素子の一種である。例えば、PDP(AC型)の典型的な基本構造は、図1に示すとおりである。
【0003】
この構造では、ガラス等の透明材料からなる表示面側基板1と背面側基板2とを、所定の空間を有して互いに対向させて構成してあり、該空間には、放電ガスとして希ガスが封入されている。表示面側基板1には、透明電極3と、透明電極3のライン抵抗を下げるためのバス電極4とから構成された電極対が、所定のピッチで多数設けられ、それらが透明な誘電体層5、さらには保護層6で覆われている。同様に誘電体層7で覆われた背面側基板2には、上記の電極対と直交する多数のアドレス電極8が設けられている。これら電極対とアドレス電極8との交差部、あるいはその近傍には、隔壁9によって放電セルが画定され、これら各放電セルを選択的に放電させて蛍光体10を発光させることによって表示が行われる。
【0004】
バス電極4は、コントラスト及び電気特性の観点から、一般に、導電性物質としてAgを使用した白層と、黒色顔料を使用した黒層の白黒二層構造のものが主流となっている。また、黒層に使用される黒色顔料としては、ルテニウム化合物、四酸化三コバルトが使用されている。
【0005】
近年、PDPの製造コスト低減の要求が高まっている。従来、バス電極形成は、フォトリソグラフィ法を用いた工法が主流であり、白・黒層各々について、印刷・乾燥・露光の工程が必要である。このため、バス電極を一層構造で形成し、コントラスト及び電気特性を達成することは、製造工数の低減につながり、ひいては、コストダウンへの寄与が図れる。さらに、従来、黒色層に対して、着色のために主に使用されてきたルテニウム化合物、四酸化三コバルトといった黒色顔料は、非常に高価であり、PDP製造コスト低減の面から不利である。これらの黒色顔料を使用せずに、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を形成することは、さらに望ましい。
【0006】
一層構造のバス電極を、導電性を得るためのAg等の導電粒子、コントラストを得るための黒色顔料、密着性を得るためのガラスフリットを含む組成物によって形成することも提案されているが、そこで使用されているのは四酸化三コバルトであり、コスト面で不利である(特許文献1)。また、一層構造のバス電極においては、コントラストを向上させるため、黒色顔料の比率を増加させると、比抵抗が上昇し、電気特性が低下することになる。一方、電気特性を確保するために、Ag粉末の比率を増加すると、コントラストが低下することになり、トレードオフの関係にある。さらに、コントラスト及び電気特性を両立させうるとして提案されたバス電極は、超伝導体を含み、コスト的に不利である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−6435号公報
【特許文献2】特開2006−196455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一層構造でありながら、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を提供しうる、導電性黒色組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料を使用することにより、一層構造でありながら、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、(a)Ag粉末、(b)Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料、及び(c)ガラスフリットを含む、導電性黒色組成物に関し、特にプラズマディスプレイパネルのバス電極形成用のこの組成物に関する。また、本発明は、前記の組成物を用いて得られたバス電極に関し、特に、一層構造のバス電極に関する。さらに、本発明は、前記のバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性黒色組成物によれば、高価な黒色顔料を使用することなく、一層構造でありながら、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を提供しうる。本発明の導電性黒色組成物によれば、バス電極特性として、特に重要視される比抵抗を低下させることができ、産業上の有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のPDP(AC型)の典型的な基本構造である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、(a)Ag粉末を含む。(a)成分の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、針状、不定形状が挙げられ、好ましくは、球状である。比表面積は、比抵抗及び解像度の点から、好ましくは、0.1〜2.5m/gであり、より好ましくは、0.3〜2.0m/gである。本明細書において、比表面積は、BET法で測定した値である。(a)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明の組成物は、(b)Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料を含む。Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料は、鉄、コバルト、ニッケル及びクロムの複合酸化物をいう。(b)成分の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、針状、不定形状が挙げられる。平均粒子径は、0.01〜5μmとすることができ、黒色度の点から、(b)成分の比表面積は、好ましくは、3〜20m/gであり、より好ましくは5〜15m/gである。本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(体積基準)をいう。(b)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料は、例えば、原料となる酸化物等を混合粉砕し、所定の温度で焼成し、次いで、粉砕することにより得ることができる。混合・粉砕は、公知の方法により行うことができる。
【0014】
本発明の組成物は、(c)ガラスフリットを含む。(c)成分は、当該分野で公知のものを使用することができる。当該分野では、通常、軟化点が600℃以下のものが用いられ、580℃以下のものが好ましい。具体例としては、ホウケイ酸ビスマス系、ホウケイ酸アルカリ金属系、ホウケイ酸アルカリ土類金属系、ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸鉛系、ホウ酸鉛系、ケイ酸鉛系等を挙げることができ、環境への配慮の点から鉛フリーであることが好ましく、例えばホウケイ酸ビスマス系、ホウケイ酸アルカリ金属系が挙げられる。形状は、特に限定されず、平均粒子径は、通常、0.1〜10μmであり、好ましくは、0.2〜5μmである。(c)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の組成物において、(a)成分100質量部に対し、黒色度の点から、(b)成分は2〜12質量部とすることができ、3〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは、4.5〜7.5質量部である。
【0016】
また、(a)成分100質量部あたり、比抵抗の点から、(c)成分は1〜25質量部とすることができ、3〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは、3.5〜18質量部である。
【0017】
本発明の組成物は感光性組成物として使用することができ、その場合には、通常
(d)カルボキシル基含有樹脂
(e)光重合性モノマー、及び
(f)光重合開始剤
を配合する。
【0018】
(d)カルボキシル基含有樹脂
(d)成分は、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸のホモポリマーやコポリマー、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物とのコポリマーが挙げられる。
【0019】
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又はこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。熱分解性の点から、メチルメタクリレートが好ましい。
【0021】
特に、エチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む感光性樹脂としたものが好ましく、例えば、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物とのコポリマーに、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させて製造することができる。
【0022】
エチレン性不飽和基を有するペンダントの具体的な例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。このようなペンダントを、コポリマーの主鎖に付加させる方法としては、コポリマーの主鎖中のカルボキシル基に、グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させる方法が知られている。
【0023】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
また、コポリマーの主鎖中のカルボキシル基に、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アリルクロリド、メタアリルクロリド等を付加反応させてもよい。
【0025】
これらのエチレン性不飽和化合物又はクロリドの付加量は、感光特性の点から、コポリマー主鎖中のカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量が望ましく、さらに好ましくは0.1〜1モル当量が望ましい。
【0026】
(d)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
(e)光重合性モノマー
(e)成分は、感光性を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であれば、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。具体的な例として、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0028】
(e)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
(f)光重合開始剤
(f)成分は、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロリド、キノリンスルホニルクロリド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、及びエオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0030】
(f)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0031】
本発明において、(a)成分100質量部あたり、(d)成分は、解像度の点から、5〜40質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。
(e)成分は、解像度の点から、1〜10質量部が好ましく、より好ましくは4〜8質量部である。
(f)成分は、解像度の点から、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部である。
【0032】
感光性組成物は、有機溶媒に分散させて感光性ペーストとすることができる。有機溶媒の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、ソルベッソ(登録商標)100、ソルベッソ(登録商標)150等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせ使用してもよい。有機溶媒の量は、ペーストの塗布方法によって適宜、選択することができる。
【0033】
また、本発明の組成物は、スクリーン印刷等によってもパターン形成することができ、その場合には、通常、(g)有機バインダを配合する。
【0034】
(g)成分としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロースのようなセルロース系樹脂;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のポリマー及びコポリマーのようなポリ(メタ)アクリレート類;ポリビニルアルコール;ポリ−α−メチルスチレン、ポリブテン等が挙げられる。
【0035】
(g)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0036】
本発明において、(a)成分100質量部あたり、(g)成分は、印刷性の点から、3〜40質量部が好ましく、より好ましくは10〜20質量部である。
【0037】
(g)成分を有機溶媒に溶解・分散させたビヒクルを用いて、発明の組成物を印刷によってパターン形成するためのペーストとすることができる。有機溶媒の具体例としては、上記感光性ペーストについて述べたものが挙げられる。有機溶媒の量は、ペーストの塗布方法によって適宜、選択することができる。
【0038】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の導電性粒子、可塑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、重合禁止剤、増感剤、安定剤等を含有することができる。導電性粒子としては、ITO粒子が挙げられ、例えばBET比表面積が20m/g以上のものを使用することができる。本発明の組成物は、コスト面から、ルテニウム化合物、四酸化三コバルトといった黒色顔料を含有しないことが好ましい。
【0039】
本発明の組成物をペースト化したものを用いて、当該分野で公知の方法により、所定のパターンを形成することができる。
【0040】
例えば、感光性ペーストを使用する場合、例えば、所望の基材上に、上記ペーストを、スクリーン印刷、バーコーター等の方法で塗布した後、有機溶媒を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得て、その後、パターンマスクを通して露光し、現像、焼成を行うことによって、所定のパターンを形成することができる。
【0041】
具体例として、一層構造のバス電極の形成を以下に説明する。
(1)ガラス基板上に、本発明の導電性黒色組成物のペーストを塗布し、乾燥させる。
(2)次いで、所定の露光パターンを有するパターンマスクを重ね合わせ、露光した後、アルカリ水溶液等の現像液により現像して、電極パターンを形成する。
(3)その後、焼成して、一層構造のバス電極を形成する。焼成温度は、例えば600℃以下とすることができ、300〜450℃温度域での脱バインダ過程、及びそれに続く600℃以下のAg焼結過程を含む温度プロファイル条件を採用することもできる。
【0042】
本発明の導電性黒色組成物のペーストを使用することにより、CIE1976(L)系の明度の指標となるL値を抑制しつつ、バス電極の比抵抗を小さくすることができる。
【0043】
本発明の導電性黒色組成物は、プラズマディスプレイパネルにおける一層構造のバス電極の形成に好適であるが、従来の白黒二層構造のバス電極の黒層の形成にも使用することができる。黒層は、当該分野で公知の方法により形成することができる。二層構造のバス電極の白層は、従来の公知の白層形成用ペーストを使用することができる。また、本発明の導電性黒色組成物は、プラズマディスプレイパネルにおけるバス電極以外の導電性部分の形成にも用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。部、%は、他に断りのない限り、質量部、質量%を表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
表1に示す量(部表示)で、Ag粉末に、黒色顔料及びガラスフリットを添加した後、さらに他の成分を添加し、三本ロールミルにて均一に混練、分散して、導電性黒色組成物のペーストであるペースト(実施例1、比較例1〜4)を得た。次いで、下記の手順にて、バス電極特性(比抵抗及び色調)を測定した。結果を、表1に示す。なお、平均粒子径は、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック HRA MICROTRAC 9320−X100)を用いて測定したメジアン径(体積基準)であり、測定にあたっては、測定サンプル0.5gをヘキサメタリン酸ソーダ(分散剤)0.5質量%溶液100mlに添加し、超音波で3分間分散したものを使用した。
【0046】
〔バス電極の作製〕
以下のようにして、実施例及び比較例の各ペーストを用いて、バス電極を作成した。
(1)PDP用ガラス基板(50mm×75mm、厚み2.8mm)にペーストを全面印刷した(48mm×70mm、ポリエステル350メッシュ、乳剤厚10μm)。
(2)80℃、10分の条件で乾燥させた。
(3)所定のパターンマスクを介し、UV200mJ/cm照射を行った(スポットUV照射機SP−7(USHIO製)、10mW/cm)。
(4)所定時間(TTC(The Total Cleaning Time)×1.5)、アルカリ現像液をスプレーし、取り出し後、直ちに水洗した。
(5)エアーで水分除去した後、メッシュベルト式連続炉で、580℃、10分の条件で焼成してバス電極を作製した。
上記のようにして、各ペーストで、異なるパターンマスクを使用して、ライン/スペースが50μm/50μm、100μm/100μm、200μm/200μmのバス電極を作製することができた。
〔比抵抗〕
上記のバス電極と同様にして、幅 1mm×長さ 100mmのパターンを作製して、LCRメーターを用い、パターン両端部間の抵抗を測定した。その後、表面粗さ計を用い、パターンの膜厚さを測定した。これらの測定値を用い、比抵抗を算出した。
〔L値〕
上記のバス電極と同様にして、20mm×20mmパターンを作製して、L値を、ガラス面より色彩計NF999(日本電色工業製)で測定した。L値が小さいほど、黒色度に優れる。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示されるように、Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料を使用した場合、他の黒色顔料を使用した場合と比べて、比抵抗は著しく低く、L値で示されるコントラストも同等又は良好である。
【0049】
表2に示す量で各成分を配合した(「感光性バインダ」という)。さらに、表3に示す量で、Ag粉末(平均粒子径1.0μm、BET比表面積1.5m/g)100質量部に、Fe−Co−NI−Cr系黒色顔料及びビスマス系ガラスフリットを添加した(「フィラー成分」という)。次いで、フィラー成分と感光性バインダ中の固形分との質量比が、80:20になるように、三本ロールミルにて均一に混練、分散して、導電性黒色組成物のペーストを得た。次いで、上記の手順にて、バス電極特性(比抵抗)を測定した。結果を、表3に示す。また、同様のペーストについて、バス電極特性(色調)を測定した結果を、表4に示す。表2〜4で使用した各成分は、表1の注で示したとおりである(Ag粉末を除く)。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表3及び4に示されるように、Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料及びガラスフリットの配合量を変動させた場合にも、比抵抗は低く、L値で示されるコントラストも良好である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の導電性黒色組成物によれば、高価な黒色顔料を使用することなく、一層構造でありながら、コントラスト及び電気特性の両方に優れたバス電極を提供しうる。本発明の導電性黒色組成物によれば、バス電極特性として、特に重要視される比抵抗を低下させることができ、産業上の有用性が高い。
【符号の説明】
【0055】
1 表示面側基板
2 背面側基板
3 透明電極
4 バス電極
5 誘電体層
6 保護層
7 誘電体層
8 アドレス電極
9 隔壁
10 蛍光体
11 観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Ag粉末
(b)Fe−Co−Ni−Cr系黒色顔料、及び
(c)ガラスフリット
を含む、導電性黒色組成物。
【請求項2】
プラズマディスプレイパネルのバス電極形成用の請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(b)成分が、平均粒子径0.5〜1.5μmのFe−Co−Ni−Cr系黒色顔料である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(a)成分100質量部に対して、(b)成分が2〜12質量部、(C)成分が1〜25質量部である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
さらに、(d)カルボキシル基含有樹脂、(e)光重合性モノマー及び(f)光重合開始剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
さらに、(g)有機バインダを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を用いて得られたバス電極。
【請求項8】
一層構造である、請求項7記載のバス電極。
【請求項9】
請求項7又は8記載のバス電極を備えたプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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