説明

導電材料、タッチパネル、及び太陽電池

【課題】高透過性、低抵抗であり、耐久性、及び可撓性が向上し、簡易にパターニングが可能である導電材料、並びに該導電材料を用いた、視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い太陽電池の提供。
【解決手段】導電性繊維を含有する導電層を有する導電材料であって、前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmの吸収ピークが1つである導電材料とする。325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅が100nm以下である態様、導電材料の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aと、800nmの吸光度Bとの比(A/B)が1.5以上である態様などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材料、該導電材料を用いたタッチパネル、及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD、PDP、LED、EL等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、太陽電池、タッチパネルなどには、透明導電膜が広く用いられている。このような透明導電膜としては、銀ナノワイヤーについての検討が報告されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、有機溶剤を用いた高温中での銀ナノワイヤーの合成が行われており、太い直径の銀ナノワイヤーが合成されている。このような太い直径の銀ナノワイヤーは、プラズモン吸収が少なくなり、透明導電膜の分光吸収スペクトルにおいて、図1の試料No.106の導電材料で示すように、325nm〜390nmに吸収ピークが存在せず、可視光域においてバルク金属銀の光学特性に起因する高い反射率を有するので、ヘイズが高く、表示材料に用いる場合にはコントラストの低下が著しいという問題があった。
また、前記特許文献1には、(1)導電材料の導電層におけるバインダーとAgとの比(バインダー/Ag)を下げる方法、(2)導電材料の導電層を浸漬処理する方法、(3)導電材料の導電層を加熱処理する方法、などによって、分光吸収スペクトルの形状が変化することについては全く言及されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/74316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高透過性、低抵抗であり、耐久性、及び可撓性が向上し、簡易にパターニングが可能である導電材料、並びに該導電材料を用いた、視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、導電性繊維を含有する導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmの吸収ピークが1つである導電材料が、導電性繊維同士の接点が強化され、導電性、透過率、ヘイズ、可撓性、及び耐久性が向上することを知見した。
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 導電性繊維を含有する導電層を有する導電材料であって、
前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmの吸収ピークが1つであることを特徴とする導電材料である。
<2> 325nm〜390nmの吸収ピークにおける半値幅が100nm以下である前記<1>に記載の導電材料である。
<3> 325nm〜390nmの吸収ピークにおける半値幅が20nm〜70nmである前記<2>に記載の導電材料である。
<4> 導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aと、800nmの吸光度Bとの比(A/B)が1.5以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電材料である。
<5> 導電層における導電性繊維以外の成分の導電性繊維に対する質量比が0.1〜5である前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電材料である。
<6> 導電性繊維が金属ナノワイヤーである前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電材料である。
<7> 金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる前記<6>に記載の導電材料である。
<8> 導電層における銀含有量Xg/mと、導電層の分光吸収スペクトルにおける325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aとの比(X/A)が0.4以上である前記<7>に記載の導電材料である。
<9> 金属ナノワイヤーの平均短軸長さが50nm以下であり、平均長軸長さが2μm以上である前記<6>から<8>のいずれかに記載の導電材料である。
<10> 導電層における全可視光透過率が85%以上である前記<1>から<9>のいずれかに記載の導電材料である。
<11> 導電層における表面抵抗が0.1Ω/□〜5,000Ω/□である前記<1>から<10>のいずれかに記載の導電材料である。
<12> 導電層がパターニングされている前記<1>から<11>のいずれかに記載の導電材料である。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の導電材料を用いたタッチパネルである。
<14> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の導電材料を用いた太陽電池である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、高透過性、低抵抗であり、耐久性、及び可撓性が向上し、簡易にパターニングが可能である導電材料、並びに該導電材料を用いた、視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1の試料No.101〜試料No.106の導電材料における導電層の分光吸収スペクトルである。
【図2】図2は、波長325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅の定義を説明するための図面である。
【図3】図3は、タッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、タッチパネルの他の一例を示す概略説明図である。
【図5】図5は、図4に示すタッチパネルにおける導電膜の配置例を示す概略平面図である。
【図6】図6は、タッチパネルの更に他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(導電材料)
本発明の導電材料は、導電性繊維を含有する導電層を少なくとも有する。本発明の導電材料は、更に、基材、感光層、防汚層、UVカット層、反射防止層等のその他の層を有していてもよい。
【0010】
本発明においては、前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、波長325nm〜390nmの吸収ピークが1つであることを特徴とする。このように導電層の分光吸収スペクトルにおいて、波長325nm〜390nmの吸収ピークが1つであると、導電性繊維同士の接点が強化され、導電性、透過率、ヘイズ、可撓性、及び湿熱耐久性が向上する。また、波長325nm〜390nmに吸収ピークを有さないと、導電性繊維が酸化されているか、粒子状等に変形して導電性の悪化が生じ、ヘイズ、可撓性、及び湿熱耐久性が低下することがある。
ここで、図1は、後述する実施例1における試料No.101〜No.106の導電材料における導電層の分光吸収スペクトルを示した図である。なお、図1においては、波長325nm〜700nmの範囲の吸収ピークの最大吸光度を1.0として規格化している。
図1のA部に示すように、本発明の導電材料である試料No.101〜No.105は、波長325nm〜390nmの範囲に吸収ピークが1つある。吸収ピークがある波長範囲は、より正確には、335nm〜375nmである。
これに対し、従来の導電材料である試料No.106は、波長325nm〜390nmの範囲に吸収ピークを有さず、なだらかな波形であり、可視光域に高い吸収もしくは散乱を有しており、透過率、ヘイズが悪化していることが認められる。
【0011】
また、前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、波長325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅は、100nm以下が好ましく、20nm〜90nmがより好ましく、20nm〜70nmが更に好ましい。
前記半値幅が、100nmを超えると、球状ナノ粒子が混在している可能性があり、導電材料が黄色味を帯びることがある。前記半値幅が、20nm未満であると、金属ナノワイヤーの太さ(平均短軸長さ)が細くなりすぎ、湿熱耐久性が悪化してしまうことがある。
ここで、前記波長325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅とは、図2に示すように、前記導電層の分光吸収スペクトル(図2では、試料No.101を代表させて示す)において、まず、波長600nm〜800nmの範囲の吸収スペクトルを直線近似し、それをベースラインとする。そのベースラインを延長し、吸収ピークトップから降ろした垂線との交点を基準位置とする。そして、吸収ピークの高さと前記基準位置との高さの半分の値の位置で吸収ピークを水平に切った時の、横幅(nm)で示される値を半値幅とする。
前記導電層の分光吸収スペクトルは、例えば、分光光度計(Jasco V−670、日本分光株式会社製)などにより測定することができる。
【0012】
また、前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、波長325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aと、800nmの吸光度Bとの比(A/B)は、1.5以上が好ましく、2.0〜5.0がより好ましく、2.0〜3.0が更に好ましく、2.1〜2.4が特に好ましい。前記比(A/B)が、1.5未満であると、可視光域の吸収が相対的に大きくなるため、透明性が悪化することがある。
また、前記導電層における銀含有量Xg/mと、前記導電層の分光吸収スペクトルにおける波長325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aとの比(X/A)は、0.4以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.6〜1.0が更に好ましく、0.6〜0.8が特に好ましい。前記比(X/A)が、0.4未満であると、導電性繊維の量に対して相対的に吸光度が高くなってしまうため、透明性が悪化することがある。
なお、ここでのピークトップ吸光度A及び800nmでの吸光度Bは、実測値である。
前記導電層における銀含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)などにより測定することができる。
【0013】
前記導電層の厚みは、0.01μm〜1μmが好ましく、0.05μm〜0.5μmがより好ましく、0.05μm〜0.3μmが更に好ましい。導電性繊維を用いた導電層は、導電層の厚みを非常に薄くしつつ、高い導電性を発現する。ただし、前記導電層の厚みが0.01μm未満であると、十分な膜強度が得られず、導電層の製造工程やその後の加工段階において膜剥がれや表面抵抗の変動が生じるおそれがあり、前記導電層の厚みが1μmを超えると、導電層に含まれるバインダーにより導電性が低下し、表面抵抗が上昇する懸念がある。
【0014】
−接点強化処理−
前記導電層の分光吸収スペクトルにおける波長325nm〜390nmの吸収ピークを1つとする方法には、前記導電材料の導電層を接点強化処理することが挙げられる。前記導電材料の導電層を接点強化処理することにより、導電性繊維間のバインダー、粒子、分散剤などが除去され、導電性繊維としての金属ナノワイヤー同士の接点が多くなる。その結果、導電性繊維としての金属ナノワイヤーのプラズモン吸収成分が減少する、又は導電性繊維の周囲の屈折率が低下することに起因するものと考えられる。
前記導電層の接点強化処理としては、例えば、(1)導電層におけるバインダーの含有量(A)と導電性繊維の含有量(B)との質量比(A/B)を下げる方法、(2)導電層を浸漬液で浸漬処理する方法、(3)導電層を加熱処理する方法などが挙げられる。前記(1)から(3)の方法を適宜組み合わせて行うことができる。
【0015】
前記導電層におけるバインダーの含有量(A)と導電性繊維の含有量(B)との質量比(A/B)を下げる方法としては、添加する塗布用バインダーの添加量を少なくすること、導電性繊維の添加量を多くすること、分散剤自体の使用量を減らすことなどが挙げられる。
前記導電層におけるバインダーの含有量(A)と導電性繊維の含有量(B)との質量比(A/B)は、前記導電性繊維の含有量(A)と前記水溶性ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)は、0.1〜3が好ましく、0.5〜2がより好ましい。
【0016】
前記(2)の導電材料の導電層を浸漬処理する方法としては、例えば、(i)容器中に浸漬液を入れ、浸漬液中に導電材料を浸漬する方法、(ii)導電材料を浸漬液中に通過させる方法、(iii)導電材料の導電層を浸漬液でシャワー、スプレー、リンスする方法、などが挙げられる。
前記浸漬液としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、又はこれらの混合溶媒が好ましく、水、エタノール、水とノルマルプロパノールの混合溶媒が好ましく、水とノルマルプロパノールの混合溶媒が特に好ましい。
前記水とノルマルプロパノールの混合溶媒における混合体積比(水:ノルマルプロパノール)は3:7〜7:3が好ましく、5:5が特に好ましい。
前記浸漬の条件としては、例えば、浸漬液がエタノールの場合には、5℃〜40℃の範囲で1秒間〜30分間が好ましく、10℃〜30℃の範囲で3秒間〜3分間がより好ましい。
前記浸漬液が水とノルマルプロパノールの混合溶媒(体積比1:1)の場合には、5℃〜40℃の温度で1秒間〜30分間が好ましく、10℃〜30℃の温度で5秒間〜10分間がより好ましい。
前記浸漬液が水の場合には、5℃〜40℃の温度で1秒間〜30分間が好ましく、10℃〜30℃の温度で5秒間〜15分間がより好ましい。
また、前記浸漬処理と同じ効果を達成する方法として、前記浸漬液を前記導電材料の導電層に対しスプレー、又はシャワーし、更にリンス液でリンスすることも好ましい。
前記リンス液は浸漬液そのものでもよいし、浸漬液と他の溶剤とを組み合わせたものでも構わない。前記他の溶剤としては、水などが挙げられる。
前記(2)の浸漬処理を行った後、純水によるリンスを複数回行うことが好ましい。
【0017】
前記(3)導電材料の導電層を加熱処理する方法としては、例えば、導電材料の導電層を50℃〜250℃の温度で1分間〜60分間、好ましくは80℃〜200℃の温度で2分間〜30分間、空気中又は窒素中でオーブン等により焼成するか、或いはホットプレート等を用いて導電材料を基材越しに加熱する方法などが挙げられる。
【0018】
前記接点強化処理としては、(1)導電層におけるバインダーの含有量(A)と導電性繊維の含有量(B)との質量比(A/B)を下げる方法と(2)導電層を浸漬液で浸漬処理する方法を組み合わせて行うこと、(1)導電層におけるバインダーの含有量(A)と導電性繊維の含有量(B)との比(A/B)を下げる方法と(3)導電層を加熱処理する方法を組み合わせて行うことが、好適である。
【0019】
前記導電材料は、上記特徴点を備えていればその形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記導電材料は、可撓性を有し、透明であることが好ましく、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
【0020】
前記導電材料における導電層はパターニングされていることが好ましい。前記パターニングとしては、既存のITO透明導電膜で施されているパターニングなどが挙げられ、長方形状のパターン、ダイヤモンドパターンと呼ばれているものなどが好適に挙げられる。
【0021】
<導電層>
前記導電層は、少なくとも導電性繊維を含有し、バインダー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0022】
〔導電性繊維〕
前記導電性繊維の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中実構造及び中空構造のいずれかが好ましい。
ここで、中実構造の繊維をワイヤーと呼ぶことがあり、中空構造の繊維をチューブと呼ぶことがある。
平均短軸長さが5nm〜1,000nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmの導電性繊維を「ナノワイヤー」と呼ぶことがある。
また、平均短軸長さが1nm〜1,000nm、平均長軸長さが0.1μm〜1,000μmであって、中空構造を持つ導電性繊維を「ナノチューブ」と呼ぶことがある。
前記導電性繊維の材料としては、導電性を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属及びカーボンの少なくともいずれかが好ましく、これらの中でも、前記導電性繊維は、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ、及びカーボンナノチューブの少なくともいずれかが好ましい。
【0023】
<<金属ナノワイヤー>>
−材料−
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0024】
−金属−
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、及び銀との合金が好ましい。
前記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
−形状−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状、断面の多角形の角が丸まっている断面形状が好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0026】
−平均短軸長さ及び平均長軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、50nm以下が好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、10nm〜40nmが更に好ましく、15nm〜35nmが特に好ましい。
前記平均短軸長さが、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、50nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとした。
【0027】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、2μm以上が好ましく、2μm〜40μmがより好ましく、3μm〜35μmが更に好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。
前記平均長軸長さが、2μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0028】
−製造方法−
前記金属ナノワイヤーの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
前記溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
前記加熱時の加熱温度としては、250℃以下が好ましく、20℃〜200℃がより好ましく、30℃〜180℃が更に好ましく、40℃〜170℃が特に好ましい。
前記加熱温度が、20℃未満であると、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎるので金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがあり、250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になり、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。
必要に応じて、金属ナノワイヤーの形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更により、金属ナノワイヤーの核形成の制御、再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果を向上させることができる。
【0029】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
前記水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。
前記水素化アルミニウム塩としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムなどが挙げられる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどが挙げられる。
前記ヘテロ環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなどが挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなどが挙げられる。
前記アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
前記還元糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
前記糖アルコール類としては、例えば、ソルビトールなどが挙げられる。
前記還元剤によっては、機能として分散添加剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
【0030】
前記金属ナノワイヤー製造の際には、分散添加剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子とを添加して行うことが好ましい。
前記分散添加剤と、ハロゲン化合物との添加のタイミングとしては、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい金属ナノワイヤーを得るためには、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0031】
前記分散添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、合成高分子、これらに由来するゲルなどが挙げられる。これらの中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が特に好ましい。
前記分散添加剤として使用可能な構造については、例えば、「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
また、使用する分散添加剤の種類によって、得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることもできる。
【0032】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等のアルカリハライド、下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
前記ハロゲン化合物によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0033】
前記分散剤とハロゲン化合物は同一物質で併用してもよい。前記分散剤とハロゲン化合物を併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0034】
前記脱塩処理は、金属ナノワイヤーを形成した後、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0035】
<<金属ナノチューブ>>
−材料−
前記金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
−形状−
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
−平均短軸長さ、平均長軸長さ、厚み−
前記金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、3nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、80nmを超えると、金属ナノチューブ起因の散乱が生じることがある。
前記金属ナノチューブの平均長軸長さは、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
−製造方法−
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の方法などを用いることができる。
【0036】
<<カーボンナノチューブ>>
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。前記単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、前記多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本発明で用いられる導電性繊維において、前記カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
−製造方法−
前記カーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。
また、これらの方法で得られたカーボンナノチューブは、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、クロマトグラフ等の方法により、副生成物、触媒金属等の残留物を除去することが、高純度化されたカーボンナノチューブを得ることができる点で好ましい。
−アスペクト比−
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上が好ましい。前記アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
前記アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記導電性繊維の長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、前記導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0037】
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記導電性繊維によるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維の形成時、その後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
−アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率−
前記アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率としては、全導電性組成物中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。これらの導電性繊維の割合を、以下、「導電性繊維の比率」と呼ぶことがある。
前記導電性繊維の比率が、50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0038】
ここで、前記導電性繊維の比率は、例えば、導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性繊維の比率を求めることができる。ろ紙に残っている導電性繊維をTEMで観察し、300個の導電性繊維の短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である導電性繊維であることを確認する。なお、ろ紙は、透過型電子顕微鏡(TEM)によるTEM像で短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である導電性繊維以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ導電性繊維の長軸の最短長以下の長さのものを用いることが好ましい。
【0039】
ここで、前記導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、光学顕微鏡を用い、TEM像、光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の導電性繊維を観察し、その平均値から求めたものである。
【0040】
<バインダー>
前記バインダーとしては、水溶性ポリマー、及び非水溶性ポリマーのいずれも好適に用いることができるが、これらの中でも、湿度耐久性の点で、非水溶性ポリマーが特に好ましい。
<<水溶性ポリマー>>
前記水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性繊維の含有量(A)と前記水溶性ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)は、0.2〜3が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/B)が、0.2未満であると、前記導電性繊維に対して前記ポリマーが多くなりすぎ、僅かな塗布量変動により抵抗が上がってしまう懸念があり、3を超えると、ポリマーが少ないため、膜強度が実用上十分にならない場合がある。
【0041】
<<非水溶性ポリマー>>
前記非水溶性ポリマーは、バインダーとしての機能を有しており、中性付近の水に実質的に溶解しないポリマーである。ここで、前記「非水溶性」とは、バインダーを25℃の純水1,000g中に溶解させたときに、その溶解量が3g以下の場合に、このバインダーを「非水溶性」という。
前記非水溶性ポリマーのSP値(沖津法により算出)は、18MPa1/2〜30MPa1/2が好ましく、19MPa1/2〜28MPa1/2がより好ましく、19.5MPa1/2〜27MPa1/2が更に好ましい。
前記SP値が、18MPa1/2未満であると、付着した有機汚れを洗浄するのが困難になる場合があり、30MPa1/2を超えると、水との親和性が高くなり、塗布膜の含水率上昇に起因し、赤外線領域の吸収が高くなるためか、例えば、太陽電池を作製したときに変換効率が減少してしまうことがある。
【0042】
ここで、前記SP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
複数の非水溶性ポリマーを用いた場合のSP値(σ)及びSP値の水素結合項(σh)は次の式により算出する。
【0043】
【数1】

ただし、σnは、非水溶性ポリマーと水のSP値又はSP値の水素結合項を、Mnは、混合液中における非水溶性ポリマーと水のモル分率を、Vnは、溶媒のモル体積を、nは、溶媒の種類を表す2以上の整数をそれぞれ表す。
【0044】
前記非水溶性ポリマーは、アクリロイル基及びメタクリロイル基(以下、これらの基を総称して「(メタ)アクリロイル基」とも言う。)から選ばれた少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する。このようなエチレン性不飽和基を有することにより、平均短軸長さが50nm以下の金属ナノワイヤーの前記非水溶性ポリマーへの分散性が向上すると共に、これらを含有する有機溶剤の溶液(以下、「塗布液」ともいう。)においても、金属ナノワイヤーの分散状態が維持される性質に優れる。そして、この塗布液を用いて形成された導電層は、高温かつ高湿度の雰囲気中に長時間晒されても、金属ナノワイヤーが、例えば、酸化等によって変質してしまうことが抑えられる。その結果、全面に亙って均一な、導電性、耐久性、及び長波長の透過率に優れた導電層が得られる。更に、基板と導電層との密着性にも優れ、摺りなどに対する耐久性に優れた導電層が得られる。
【0045】
前記非水溶性ポリマーは、主鎖に連結する側鎖に、前記エチレン性不飽和結合を少なくとも1種含むことが好ましい。前記エチレン性不飽和結合は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、前記エチレン性不飽和結合は、非水溶性ポリマーの側鎖中に、前記分岐及び/又は脂環構造、並びに/又は前記酸性基とともに含まれていてもよい。
前記エチレン性不飽和結合は、非水溶性ポリマーの主鎖との間に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を含む連結基を介して結合していることが好ましい。この場合、前記連結基と前記エチレン性不飽和結合(即ち、アクリロイル基又はメタクリロイル基)の間に、前記アクリロイル基又はメタクリロイル基に含まれるカルボニル基と共に形成されるエステル基を含む連結基が含まれていてもよい。
【0046】
前記非水溶性ポリマーは、下記一般式(I)で表されるものが含まれる。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、X、Y及びZは、各々独立して水素原子又はメチル基を表し、Xは、分枝構造又は脂環構造を有する有機基を表し、Zは、単結合又は二価の有機基を表し、Zは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、x、y及びzは、それらの合計を100モルとした場合における各繰り返し単位のモル比を表し、各々0より大きく100より少ない数値を表す。
【0047】
前記Xに係る分枝構造を有する有機基としては、例えば、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−アミル基、t−アミル基、2−オクチル基などの炭素数3〜8の分枝アルキル基が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
前記Xに係る脂環構造を有する有機基としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を示し、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基等が挙げられ、これらの基は、−CHCHO−基を介して、前記一般式(I)におけるCOO−と結合していてもよい。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基が好ましく、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロペンテニル基が特に好ましい。
前記Zに係る二価の有機基としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン基等のようなヒドロキシ基を有する炭素数3〜7のアルキレン基、例えば、2−ヒドロキシ−1,4−シクロヘキシレン基等のようなヒドロキシ基を有する炭素数6〜9の二価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。
前記xは、10〜75が好ましく、20〜60がより好ましく、25〜55が特に好ましい。
前記yは、7〜50が好ましく、10〜40がより好ましい。
前記zは、10〜70が好ましく、10〜50がより好ましく、20〜45が特に好ましい。
【0048】
前記非水溶性ポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、(1)酸性基を持つ繰り返し単位を含むポリマーの当該酸性基に、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを持つ化合物を付加する方法、(2)ヒドロキシル基を持つ繰り返し単位を含むポリマーの当該ヒドロキシル基に、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを持つ化合物を付加する方法、(3)イソシアネート基を持つ繰り返し単位を含むポリマーの当該イソシアネート基にヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とを持つ化合物を付加する方法などが挙げられる。
これらの中でも、(1)酸性基を持つ繰り返し単位を含むポリマーの当該酸性基に、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを持つ化合物を付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で特に好ましい。
【0049】
前記エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを持つ化合物は、これら両者の基を有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物、及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【化2】

前記構造式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、二価の有機基を表す。前記有機基としては、炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。前記炭化水素基の具体例としては、アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【化3】

前記構造式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
は、二価の有機基を表す。前記有機基としては、炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。前記炭化水素基の具体例としては、アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。Wは、4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。前記4〜7員環の脂肪族炭化水素基としては、4〜6員環が好ましく、5〜6員環が更に好ましく、シクロヘキサン環が特に好ましい。
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物の中でも、光硬化組成物と組み合わせて、ネガ型感光性樹脂組成物として使用した場合、現像性が良好、かつ膜強度に優れるという点で、構造式(1)で表される化合物が好ましい。
【0050】
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0051】
【化4】

【0052】
非水溶性ポリマーの具体例としては、例えば、下記構造で表される化合物(例示化合物P−1〜P−35)が挙げられる。これらの例示化合物P−1〜P−35は、いずれも5,000〜300,000の範囲の重量平均分子量を有する。
また、例示化合物中のx、y、及びzは、各繰り返し単位の組成比(モル比)を表す。
【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
<合成法>
前記非水溶性ポリマーは、モノマーの(共)重合反応の工程と、エチレン性不飽和基を導入する工程との二段階の工程から合成することができる。
前記非水溶性ポリマーは、種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより好ましい。
【0061】
前記非水溶性ポリマーは、10,000〜100,000の重量平均分子量を有するものが、製造が容易であり、かつ導電性、耐久性、及び長波長の透過率に優れる導電層が得られるので好ましい。重量平均分子量は、12,000〜60,000が更に好ましく、15,000〜45,000が特に好ましい。
前記非水溶性ポリマーは、20mgKOH/g以上の酸価を有していることが好ましい。これにより、本発明で用いられる導電性組成物を含むネガ型感光性樹脂組成物を調製し、これを基板上に形成したのちに、所望のパターン露光及び現像して導電性のパターンを形成する場合に、良好な現像性が確保されると共に、得られた導電性のパターンは、導電性、耐久性、及び長波長の透過率に優れたものとなる。
前記酸価は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g〜130mgKOH/gが特に好ましい。
【0062】
前記導電性繊維の含有量(A)と前記非水溶性ポリマーの含有量(C)との質量比(A/C)は、0.2〜3が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/C)が、0.2未満であると、塗布量変動による抵抗値のバラツキが問題になる場合、本発明における溶解液の作用が低下することがあり、3を超えると、塗布膜に実用上の十分な強度が得られないことがある。
前記導電性繊維の含有量(塗布量)は、0.005g/m〜0.5g/mが好ましく、0.01g/m〜0.45g/mがより好ましく、0.015g/m〜0.4g/mが更に好ましい。
【0063】
−分散剤−
前記分散剤は、前記導電性繊維の凝集を防ぎ、分散させるために用いる。前記分散剤としては、前記導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で導電性繊維に吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、ポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
【0064】
前記分散剤の含有量としては、前記ポリマー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が更に好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、分散液中で導電性繊維が凝集してしまうことがあり、50質量部を超えると、塗布工程において安定な塗布膜が形成できず、塗布ムラが発生してしまうことがある。
【0065】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、必要に応じて、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種添加剤などが挙げられる。
【0066】
前記導電層における導電性繊維以外の成分の合計含有量A(1種のみの場合は単独の含有量)と、前記導電性繊維の含有量Bとの質量比(A/B)は、0.1〜5が好ましく、0.5〜3がより好ましい。前記質量比(A/B)が、0.1未満であると、導電性繊維の凝集による導電性、透過率・ヘイズ等の光学特性の劣化、導電層の力学強度、基板との密着性の劣化、特にフォトリソグラフィを用いたパターニングで得られるパターンの品質(露光パターンの忠実再現性)の劣化等の問題を生じたりすることがある。前記質量比(A/B)が、5を超えると、導電性繊維間の接触点数の減少による導電性の低下、ヘイズ、光透過率などの光学特性の劣化を生じることがある。
【0067】
前記導電層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電層用組成物を下塗り層上に塗布することにより形成することができる。
前記導電層用組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
前記塗布法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などが挙げられる。
前記印刷法としては、例えば、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、などが挙げられる。
【0068】
<基材>
前記基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0069】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。
前記合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシート、ポリエーテルスルホンシート、ポリエステルシート、アクリル樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、芳香族ポリアミド樹脂シート、ポリアミドイミドシート、ポリイミドシートなどが挙げられる。
前記金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
【0070】
前記基材の全可視光透過率としては、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。前記全可視光透過率が、70%未満であると、透過率が低く実用上問題となることがある。
なお、本発明では、基材として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0071】
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜500μmが好ましく、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが更に好ましい。
前記厚みが、1μm未満であると、塗布工程でのハンドリングの困難さに起因して、歩留まりが低下することがあり、500μmを超えると、ポータブルなアプリケーションにおいては厚み及び質量が問題となることがある。
【0072】
−その他の層−
前記その他の層としては、例えば、感光層、防汚層、UVカット層、反射防止層などが挙げられる。
【0073】
本発明の導電材料における導電層の表面抵抗は、0.1Ω/□〜5,000Ω/□が好ましく、0.1Ω/□〜1,000Ω/□がより好ましい。前記表面抵抗が低いこと自体に弊害は無いが、0.1Ω/□未満であると、光透過率の高い導電体を得るのが困難になることがあり、5,000Ω/□を超えると、通電時に発生するジュール熱による断線を生じやすくなったり、配線の上流と下流で電圧降下が生じタッチパネルに用いる際の面積が制限されるなどの問題を生じることがある。
ここで、前記表面抵抗は、例えば、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて、測定することができる。
【0074】
本発明の導電材料における導電層の全可視光透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。前記全可視光透過率が、85%未満であると、タッチパネル等の画像表示媒体に用いる際に導電パターンが目立ってしまい画像の品質を損ねたり、輝度低下を補償するために消費電力を増加させる必要が生じる等の弊害が生じることがある。
ここで、前記全可視光透過率は、例えば、自記分光光度計(UV2400−PC、島津製作所製)により測定することができる。
【0075】
本発明の導電材料は、導電性繊維同士の接点が強化され、導電性、透過率、ヘイズ、可撓性、及び耐久性が向上するので、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル、太陽電池が特に好ましい。
【0076】
<表示素子>
本発明で用いられる表示素子としての液晶表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた前記導電体が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。このとき、カラーフィルター上に形成される導電体も、前記導電体を用いることが好ましい。
また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
なお、前記液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については特に制限はなく、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0077】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電材料(導電体)を有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0078】
本発明のタッチパネルには、外光の映りこみによるパネル操作のしにくさを防止したり、パネル表面の傷つき、汚れ防止のために、反射防止層、ハードコート層、防汚層などを設けることができる。これらの層は、タッチパネル表面側から、ハードコート層、反射防止層、及び防汚層の順に設けることができる。前記防汚層はその機能を反射防止層が備えていてもよい。前記ハードコート層は、タッチパネルの最表面に直接設けてもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明フィルム上にハードコート層を形成し、該ハードコート層が形成されていないフィルム表面をタッチパネル最表面に貼り付けてもよい。
前記ハードコート層及び反射防止層を透明フィルム上に形成する場合の透明フィルムとしては、ポリエステルフィルム、セルロースエステルフィルムなどの光透過性が高く、ヘイズが小さく無色のフィルムを用いることができる。透明フィルム上に反射防止層、ハードコート層を形成した態様については、特開2007−140497号公報の段落〔0107〕〜〔0141〕の記載に基づき作製することができる。
【0079】
前記ハードコート層は、反射防止層に強度を与えるために設けられる。また、本発明のタッチパネルが、操作者側の第一電極より外側に透明フィルムを有さない場合は、第一電極の保護膜として機能するための強度を与えるために、及び反射防止層の設置にあたり平滑な平面を付与するために設けられる。前記ハードコート層は厚みが5μm〜15μmであり、2H〜6Hの鉛筆硬度を有することが好ましい。前記鉛筆硬度を付与するためには架橋可能なバインダーを適宜選択すること、及び10nm〜200nmの直径のシリカなどの微粒子を用いて膜強度を高めることが好ましい。前記バインダーとしては、特開2007−140497号公報の段落〔0120〕〜〔0125〕に記載の化合物を用いることができる。前記微粒子としては、特開2007−140497号公報の段落〔0130〕に記載の微粒子を用いることができる。
【0080】
前記反射防止層は一層のみでもよいが、より低い反射率が求められる場合には複数の反射防止層を積層して形成する。複数の反射防止層を積層する態様には、異なる屈折率を有する光学干渉層を交互に積層する態様、異なる屈折率を有する光学干渉層を2層以上積層する態様がある。具体的には、ハードコート層上に低屈折率層のみを設ける態様、ハードコート層上に高屈折率層、低屈折率層をこの順に設ける態様、ハードコート層上に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層をこの順に設ける態様、などの態様が好ましく用いられる。
【0081】
前記反射防止層は、光学干渉を利用しているため、特開2009−204727号公報の段落〔0094〕、〔0106〕、及び〔0107〕に記載の屈折率と厚みを有することが好ましい。
【0082】
前記低屈折率層を形成するための好ましい組成物としては、少なくとも以下のいずれかを含む組成物であることが好ましい。
(1)架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素ポリマーを含有する組成物
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
上記の具体的な化合物、及びこれらを用いる方法については、特開2010−54737号公報の段落〔0054〕〜〔0064〕の記載を利用できる。なお、上記特開2010−54737号公報の段落〔0063〕に記載のポリシロキサン化合物は低屈折率層の上に防汚層を形成し、その防汚層に含ませてもよい。
【0083】
前記高屈折率層及び中屈折率層は高屈折無機微粒子とバインダーを含有する硬化性組成物から形成されることが好ましい。ここで使用することのできる高屈折率無機微粒子とバインダーは、ハードコート層に記載の微粒子とバインダーを所望の屈折率に合わせて用いることができる。
【0084】
本発明のタッチパネルとしては、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投影型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどが挙げられる。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパー、スルーホール方式、及び片面積層方式のいずれかが好ましい。
【0085】
ここで、前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図3を参照して説明する。この図3において、タッチパネル10は、透明基板11の表面を一様に覆うように透明導電体12を配してなり、透明基板11の端部の透明導電体12上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子18が形成されている。
なお、図3中、13は、シールド電極となる透明導電体を示し、14、17は、保護膜を示し、15は、中間保護膜を示し、16は、グレア防止膜を示す。
透明導電体12上の任意の点を指でタッチ等すると、前記透明導電体12は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子18と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0086】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの他の一例について図4を用いて説明する。該図4においてタッチパネル20は、透明基板21の表面を覆うように配された透明導電体22と透明導電体23と、該透明導電体22と該透明導電体23とを絶縁する絶縁層24と、指等の接触対象と透明導電体22又は透明導電体23の間に静電容量を生じる絶縁カバー層25からなり、指等の接触対象に対して位置検知する。構成によっては、透明導電体22,23を一体として構成することもでき、また、絶縁層24又は絶縁カバー層25を空気層として構成してもよい。
絶縁カバー層25を指等でタッチすると、指等と透明導電体22又は透明導電体23の間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
また、図5により、投影型静電容量方式タッチパネルとしてのタッチパネル20を透明導電体22と透明導電体23とを平面から視た配置を通じて模式的に説明する。
タッチパネル20は、X軸方向の位置を検出可能とする複数の透明導電体22と、Y軸方向の複数の透明導電体23とが、外部端子に接続可能に配されている。透明導電体22と透明導電体23とは、指先等の接触対象に対し複数接触して、接触情報が多点で入力されることを可能とされる。
このタッチパネル20上の任意の点を指でタッチ等すると、X軸方向及びY軸方向の座標が位置精度よく特定される。
なお、透明基板、保護層等のその他の構成としては、前記表面型静電容量方式タッチパネルの構成を適宜選択して適用することができる。また、タッチパネル20において、複数の透明導電体22と、複数の透明導電体23とによる透明導電体のパターンの例を示したが、その形状、配置等としては、これらに限られない。
【0087】
前記抵抗膜式タッチパネルの一例について、図6を用いて説明する。該図6において、タッチパネル30は、透明導電体32が配された基板31と、該透明導電体32上に複数配されたスペーサ36と、空気層34を介して、透明導電体32と接触可能な透明導電体33と、該透明導電体33上に配される透明フィルム35とが支持されて構成される。
このタッチパネル30に対して、透明フィルム35側からタッチすると、透明フィルム35が押圧され、押し込まれた透明導電体32と透明導電体33とが接触し、この位置での電位変化を図示しない外部検知回路で検出することで、タッチした点の座標が特定される。
【0088】
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、本発明の前記導電材料(導電体)を用いている。
前記型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスが好ましい。
【0089】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにゲルマニウムを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
(合成例1)
−非水溶性ポリマー(1)(非水溶性ポリマーP−26)の合成−
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業株式会社製)8.57質量部をあらかじめ加え90℃に昇温し、モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸(添加質量比は順に45.5mol%:2mol%:19mol%:33.5mol%となるように、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、及び後述のグリシジルメタクリレートを調整した)、アゾ系重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−601)1質量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール8.57質量部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.025質量部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.084質量部を加えた後、グリシジルメタクリレートを2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45質量%になるように溶媒を添加することにより調製し、不飽和基を有する非水溶性ポリマー(1)の溶液(重量平均分子量(Mw):30,000、1−メトキシ−2−プロパノールの45質量%溶液)を得た。
なお、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。
【0092】
(合成例2)
−非水溶性ポリマーP−1の合成−
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業株式会社製)8.57質量部をあらかじめ加えて90℃に昇温し、モノマーとしてイソプロピルメタクリレートを6.27質量部、メタクリル酸を5.15質量部、アゾ系重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−601)を1質量部、及び、1−メトキシ−2−プロパノール8.57質量部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.025質量部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.084質量部を加えた後、5.41質量部のグリシジルメタクリレートを2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させ後、固形分濃度が45質量%になるように1−メトキシ−2−プロパノールを添加することにより調製し、非水溶性ポリマーP−1(酸価:73mgKOH/g、重量平均分子量Mw:10,000)の45質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。
なお、非水溶性ポリマーP−1の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定した。
【0093】
(合成例3)
−非水溶性ポリマーP−29の合成−
合成例2において、モノマーとしてイソプロピルメタクリレート及びメタクリル酸の代わりに、ジシクロペンタニルメタクリレート(FA−513M、日立化成工業株式会社製)及びメタクリル酸を用い、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−29におけるモノマー構成比が40:25:35のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−29の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−29は、酸価:73.9mgKOH/g、重量平均分子量Mw:15,000であった。
【0094】
(合成例4)
−非水溶性ポリマーP−5の合成−
合成例2において、モノマーとしてt−ブチルメタクリレート、メタクリル酸、前述の構造式(2)で表される化合物としての3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートを、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−5におけるモノマー構成比45:20:35のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−5の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−5は、酸価:73mgKOH/g、重量平均分子量Mw:20,000であった。
【0095】
(合成例5)
−非水溶性ポリマーP−10の合成−
合成例2において、モノマーとして、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレートを、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−10におけるモノマー構成比30:30:40のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−10の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−10は、酸価:74.2mgKOH/g、重量平均分子量Mw:17,000であった。
【0096】
(合成例6)
−非水溶性ポリマーP−12の合成−
合成例2において、モノマーとして、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、前述の構造式(2)で表される化合物としての3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレートを、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−12におけるモノマー構成比30:30:40のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−12の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−12は、酸価:74mgKOH/g、重量平均分子量Mw:18,000であった。
【0097】
(合成例7)
−非水溶性ポリマーP−18の合成−
合成例2において、モノマーとして、ジシクロトリメチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレートを、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−18におけるモノマー構成比40:25:35のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−18の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−18は、酸価:73mgKOH/g、重量平均分子量Mw:19,000であった。
【0098】
(合成例8)
−非水溶性ポリマーP−20の合成−
合成例2において、モノマーとして、ジシクロトリメチルメタクリレート、メタクリル酸、前述の構造式(2)で表される化合物としての3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートを、前記例示化合物に示したように非水溶性ポリマーP−20におけるモノマー構成比40:30:30のモル比となるように各モノマーの添加量を変更した以外は、合成例2と同様の方法により合成し、非水溶性ポリマーP−20の溶液(固形分濃度=45質量%)を得た。
得られた非水溶性ポリマーP−20は、酸価:74.2mgKOH/g、重量平均分子量Mw:21,000であった。
【0099】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー水分散液(1)の調製−
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した硝酸銀溶液を調製した。その後、前記硝酸銀溶液に1Nのアンモニア水を透明になるまで添加し、全量が100mLになるように、純水を添加して、添加液Aを調製した。
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
添加液A 20.6mLを三口フラスコ内に入れ室温にて攪拌した。この液に純水41mL、添加液H 20.6mL、及び溶液B 16.5mLの順でロートにて添加し、90℃で5時間、200rpmで攪拌しながら加熱することで、銀ナノワイヤー水分散液(1)を得た。
得られた銀ナノワイヤー水分散液(1)を冷却した後、ポリビニルピロリドン(K−30、和光純薬工業株式会社製)を銀の質量1に対し0.05となるように撹拌しながら添加し、その後遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、銀ナノワイヤー水分散液(1)を調製した。
得られた銀ナノワイヤー水分散液(1)について、以下のようにして、平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
<金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(直径)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さを求めた。
【0101】
<金属ナノワイヤー短軸長さの変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、金属ナノワイヤーの短軸長さを300個観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの短軸長さを計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0102】
<アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率>
各銀ナノワイヤー水分散液をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量を各々測定し、短軸長さが50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーをアスペクト比が10以上の導電性繊維の比率(%)として求めた。
なお、導電性繊維の比率を求める際の金属ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0103】
(調製例2)
−銀ナノワイヤー水分散液(2)の調製−
エチレングリコール30mLを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのポリビニルピロリドン(PVP K−55、アルドリッチ社製)、3μMのアセチルアセトナート鉄、60μMの塩化ナトリウムエチレングリコール溶液18mLと、24mMの硝酸銀エチレングリコール溶液18mLを毎分1mLの速度で添加した。160℃で60分間加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、銀ナノワイヤー水分散液(2)を調製した。
このとき、得られた銀ナノワイヤー粒子は、平均短軸長さ105nm、平均長軸長さ34μmのワイヤー状であった。得られた銀ナノワイヤー水分散液(2)中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率は、銀ナノワイヤー水分散液(1)と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

*表1中、「導電性繊維の比率」とは、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率を表す。
【0105】
(実施例1)
以下に示すようにして、下記表2に示す試料No.101〜試料No.110の導電材料(1)〜導電材料(10)を作製した。
【0106】
<試料No.101の作製>
前記銀ナノワイヤー水分散液(1)と、ヒドロキシエチルセルロースとの質量比(銀ナノワイヤー/ヒドロキシエチルセルロース)を1/1となるように混合させて、導電性組成物(1)を調製した。
市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の表面にドクターコーターを用いて、前記導電性組成物(1)を塗布し、乾燥させることで、厚み0.11μmの導電層を形成し、導電材料とした。
その後、得られた導電材料を、接点強化処理として水/ノルマルプロパノール=1/1(体積比)液に25℃で1分間浸漬し、25℃の純水によるリンスを2回行い、試料No.101の導電材料(1)を作製した。
リンス後の試料No.101の導電材料(1)における導電層の銀ナノワイヤー含有量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.07g/mであった。
【0107】
<試料No.102の作製>
―銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)の調製―
前記銀ナノワイヤー水分散液(1)の調製において、遠心分離、精製後の銀ナノワイヤー水分散液100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加し、遠心分離を行い上澄み液を除去し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを200g加え、遠心分離を行い上澄みを除去し、最終沈殿物にプロピレングリコールモノメチルエーテル100g加え、銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)を作製した。
【0108】
次に、試料No.101において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を前記銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)に代え、ヒドロキシエチルセルロースを合成例1の非水溶性ポリマー(1)に代えた以外は、試料No.101と同様にして、試料No.102の導電材料(2)を作製した。
試料No.102の導電材料(2)における導電層の銀ナノワイヤー含有量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.07g/mであった。
【0109】
<試料No.103の作製>
試料No.102の銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)と、下記のネガ型フォトレジストとを質量比(銀ナノワイヤー/ネガ型フォトレジストの固形分)が2/1となるように混合(接点強化処理)させて、導電性組成物(3)を調製した。
【0110】
<<ネガ型フォトレジストの調製>>
−バインダー(A−1)の合成−
共重合体を構成するモノマー成分として、メタクリル酸(MAA)7.79g、ベンジルメタクリレート(BzMA)37.21gを使用し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを使用し、これらを溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55.00g中において重合反応させることによりバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.21であった。
【化12】

−ネガ型フォトレジストの調製−
前記バインダー(A−1)3.80質量部(固形分40.0質量%、PGMEA溶液)、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)1.59質量部、IRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.159質量部、EHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.150質量部、メガファックF781F(DIC株式会社製)0.002質量部、及びPGMEA 19.3質量部を攪拌しながら加えて、ネガ型フォトレジストを調製した。
【0111】
次に、市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の表面にドクターコーターを用いて、前記導電性組成物(3)を塗布し、乾燥させて、厚み0.09μmの導電層を形成し、導電材料を作製した。
得られた導電材料に、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)露光を行った。露光後の基板を、純水5,000gに炭酸水素ナトリウム5gと炭酸ナトリウム2.5gを溶解した現像液でシャワー現像30秒間を行った。シャワー圧は0.04MPaであった。接点強化処理として30℃の純水のシャワーを1分間行い、25℃の純水によるリンスを2回行い、試料No.103の導電材料(3)を作製した。
リンス後の試料No.103の導電材料(3)における導電層の銀ナノワイヤー含有量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.07g/mであった。
【0112】
<試料No.104の作製>
試料No.101において、銀ナノワイヤー水分散液(1)とヒドロキシエチルセルロースとの質量比(銀ナノワイヤー/ヒドロキシエチルセルロース)を3.6/1となるように混合(接点強化処理)させて、導電性組成物(4)を調製した。
次に、市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の表面にドクターコーターを用いて、前記導電性組成物(4)を塗布し、空気中でオーブンにより170℃で5分間乾燥(接点強化処理)させて、厚み0.08μmの導電層を形成し、試料No.104の導電材料(4)を作製した。
試料No.104の導電材料(4)における導電層の銀ナノワイヤー含有量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.07g/mであった。
【0113】
<試料No.105の作製>
試料No.101において、銀ナノワイヤー水分散液(1)とヒドロキシエチルセルロースとの質量比(銀ナノワイヤー/ヒドロキシエチルセルロース)を2.7/1となるように混合(接点強化処理)して、導電性組成物(5)を調製した。
次に、市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の表面にドクターコーターを用いて、前記導電性組成物(5)を塗布し、空気中でオーブンにより170℃で5分間乾燥(接点強化処理)させて、厚み0.1μmの導電層を形成し、試料No.105の導電材料(5)を作製した。
試料No.105の導電材料(5)における導電層の銀ナノワイヤー含有量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.07g/mであった。
【0114】
<試料No.106の作製>
試料No.101において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、試料No.101と同様にして、試料No.106の導電材料(6)を作製した。
【0115】
<試料No.107の作製>
試料No.102において、銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)を、下記の銀ナノワイヤー溶剤分散液(2)に代えた以外は、試料No.102と同様にして、試料No.107の導電材料(7)を作製した。
−銀ナノワイヤー溶剤分散液(2)の調製−
銀ナノワイヤー水分散液(2)の調製において、遠心分離、精製後の銀ナノワイヤー水分散液100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加し、遠心分離を行い上澄み液を除去し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを200g加え、遠心分離を行い上澄みを除去し、最終沈殿物にプロピレングリコールモノメチルエーテル100g加え、銀ナノワイヤー溶剤分散液(2)を作製した。
【0116】
<試料No.108の作製>
試料No.103において、銀ナノワイヤー溶剤分散液(1)を前記銀ナノワイヤー溶剤分散液(2)に代えた以外は、試料No.103と同様にして、試料No.108の導電材料(8)を作製した。
【0117】
<試料No.109の作製>
試料No.104において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を前記銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、試料No.104と同様にして、試料No.109の導電材料(9)を作製した。
【0118】
<試料No.110の作製>
試料No.105において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を前記銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、試料No.105と同様にして、試料No.110の導電材料(10)を作製した。
【0119】
次に、作製した各導電材料について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0120】
<導電材料の導電層の分光吸収スペクトルの測定>
得られた各導電材料の導電層の分光吸収スペクトルを、分光光度計(Jasco V−670、日本分光株式会社製)を用いて測定した。得られた分光吸収スペクトルにおいて、波長325nm〜390nmの吸収ピークが1つであった場合は、表2中「吸収」の項目で「○」とし、波長325nm〜390nm以外の波長域に吸収ピークがあったものは「×」とした。
ここで、試料No.101〜No.106の測定結果を図1に示す。また、図示を省略しているが、試料No.107〜110は、試料No.106と同様の結果であった。なお、図1においては、波長325nm〜700nmの範囲の吸収ピークの最大吸光度を1.0として規格化している。
【0121】
<比(A/B)及び比(X/A)の測定>
各導電材料の導電層の分光吸収スペクトルから、波長325nm〜390nmでのピークトップ吸光度Aと、800nmでの吸光度Bとの比(A/B)を求めた。ここで、325nm〜390nmの波長域に吸収ピークがない場合は、この計算は行わなかった。
また、各導電材料の導電層における銀含有量Xg/mと、各導電材料の導電層の分光吸収スペクトルにおける波長325nm〜390nmでのピークトップ吸光度Aとから、比(X/A)を求めた。ここで、325nm〜390nmの波長域に吸収ピークがない場合は、この計算は行わなかった。
なお、ここでのピークトップ吸光度A及び800nmでの吸光度Bは、実測値である。
【0122】
<325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅>
得られた各導電材料の導電層の波長325nm〜390nmにおける吸収ピークの半値幅とは、図2に示すように、導電層の分光吸収スペクトル(図2では、試料No.101を代表させて示す)において、まず、波長600nm〜800nmの範囲の吸収スペクトルを直線近似し、それをベースラインとした。そのベースラインを延長し、吸収ピークトップから降ろした垂線との交点を基準位置とした。そして、吸収ピークの高さと前記基準位置との高さの半分の値の位置で吸収ピークを水平に切った時の、横幅(nm)で示される値を半値幅とした。
【0123】
<導電材料の全可視光透過率の測定>
得られた各導電材料の全可視光透過率を、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて測定した。
【0124】
<導電材料の表面抵抗の測定>
得られた各導電材料の表面抵抗値を、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて測定した。
【0125】
<導電材料のヘイズ値の測定>
得られた各導電材料のヘイズ値を、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて測定した。
【0126】
<導電材料の耐久性の評価>
耐久性の評価として、湿熱経時試験を行った。得られた各導電材料を、温度80℃、湿度85%RHで250時間経時した後、Loresta−GP MCP−T600(三菱化学株式会社製)を用い、表面抵抗(Ω/□)を測定し、下記式から抵抗変化率を求め、下記基準で評価した。
抵抗変化率(%)=〔R1(経時後表面抵抗)/R0(経時前表面抵抗)〕×100
〔評価基準〕
「1」:抵抗変化率が300%以上で、実用上問題のあるレベルである
「2」:抵抗変化率が300%未満、200%以上で、実用上問題のあるレベルである
「3」:抵抗変化率が200%未満、150%以上で、実用上問題のあるレベルである
「4」:抵抗変化率が150%未満、110%以上で、実用上問題ないレベルである
「5」:抵抗変化率が110%未満で、実用上問題ないレベルである
【0127】
<可撓性>
得られた各導電材料の導電層を付与した面を外側にし、直径9mmの金属棒に巻きつけ、15秒間静置させた。巻きつけ前後の各サンプルの表面抵抗を、Loresta−GP MCP−T600(三菱化学株式会社製)により測定し、下記式から抵抗変化率を求め、下記基準で評価した。なお、可撓性は、抵抗変化率の数字が大きいほど優れていることを示す。
抵抗変化率(%)=(巻きつけ後の表面抵抗/巻きつけ前の表面抵抗)×100
〔評価基準〕
「1」:抵抗変化率が300%以上で、実用上問題のあるレベルである
「2」:抵抗変化率が300%未満150%以上で、実用上問題のあるレベルである
「3」:抵抗変化率が150%未満130%以上で、実用上問題ないレベルである
「4」:抵抗変化率が130%未満115%以上で、実用上問題ないレベルである
「5」:抵抗変化率が115%未満で、実用上問題ないレベルである
【0128】
【表2−1】

【表2−2】

【0129】
試料No.102において、非水溶性ポリマー(1)(非水溶性ポリマーP−26)を、合成例2〜8の非水溶性ポリマーP−1、P−29、P−5、P−10、P−12、P−18、及びP−20にそれぞれ代えた以外は、試料No.102と同様にして、導電材料を作製した。得られた各導電材料について、実施例1と同様にして評価したところ、いずれも、導電層の分光吸収スペクトルにおける325nm〜390nmの吸収ピークが一つであり、試料No.102と同レベルの良好な表面抵抗、透過率、ヘイズ値、耐久性、及び可撓性が備えていることが分かった。
【0130】
(実施例2)
−タッチパネルの作製−
試料No.101の導電材料を用いて作製したタッチパネルを使用した場合、透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
タッチパネルの作製に際しては、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に記載の公知な方法を用いた。
【0131】
(実施例3)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上に、試料No.101の導電材料を形成した。その上部にプラズマCVD法により厚み約15nmのp型、前記p型の上部に厚み約350nmのi型、前記i型の上部に厚み約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、前記n型アモルファスシリコンの上部に裏面反射電極として厚み20nmのガリウム添加酸化亜鉛層、前記ガリウム添加酸化亜鉛層の上部に厚み200nmの銀層を形成し、集積型太陽電池を作製した。
【0132】
(実施例4)
<集積型太陽電池の作製>
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により厚み500nm程度のモリブデン電極、前記電極の上部に真空蒸着法により厚み約2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、前記Cu(In0.6Ga0.4)Se薄膜の上部に溶液析出法により厚み約50nmの硫化カドミニウム薄膜、前記硫化カドミニウム薄膜の上部に試料No.101の導電材料を形成し、集積型太陽電池を作製した。
【0133】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
作製した各太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。結果を表3に示す。
【0134】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の導電材料は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用帯電防止、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、フレキシブルディスプレイ用帯電防止膜、太陽電池、その他の各種デバイスなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10、20、30 タッチパネル
11、21、31 透明基板
12、13、22、23、32、33 透明導電体
24 絶縁層
25 絶縁カバー層
14、17 保護膜
15 中間保護膜
16 グレア防止膜
18 電極端子
34 空気層
35 透明フィルム
36 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維を含有する導電層を有する導電材料であって、
前記導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmの吸収ピークが1つであることを特徴とする導電材料。
【請求項2】
325nm〜390nmの吸収ピークにおける半値幅が100nm以下である請求項1に記載の導電材料。
【請求項3】
325nm〜390nmの吸収ピークにおける半値幅が20nm〜70nmである請求項2に記載の導電材料。
【請求項4】
導電層の分光吸収スペクトルにおいて、325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aと、800nmの吸光度Bとの比(A/B)が1.5以上である請求項1から3のいずれかに記載の導電材料。
【請求項5】
導電層における導電性繊維以外の成分の導電性繊維に対する質量比が0.1〜5である請求項1から4のいずれかに記載の導電材料。
【請求項6】
導電性繊維が金属ナノワイヤーである請求項1から5のいずれかに記載の導電材料。
【請求項7】
金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる請求項6に記載の導電材料。
【請求項8】
導電層における銀含有量Xg/mと、導電層の分光吸収スペクトルにおける325nm〜390nmのピークトップ吸光度Aとの比(X/A)が0.4以上である請求項7に記載の導電材料。
【請求項9】
金属ナノワイヤーの平均短軸長さが50nm以下であり、平均長軸長さが2μm以上である請求項6から8のいずれかに記載の導電材料。
【請求項10】
導電層における全可視光透過率が85%以上である請求項1から9のいずれかに記載の導電材料。
【請求項11】
導電層における表面抵抗が0.1Ω/□〜5,000Ω/□である請求項1から10のいずれかに記載の導電材料。
【請求項12】
導電層がパターニングされている請求項1から11のいずれかに記載の導電材料。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の導電材料を用いたタッチパネル。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかに記載の導電材料を用いた太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227502(P2012−227502A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177914(P2011−177914)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】