説明

導電率測定装置及び導電率測定方法

【課題】プローブ間の離間距離を連続的に調節し、各プローブを試料に押当てる力の再現性を高めて導電率を精度良く測定可能な導電率測定装置を提供する。
【解決手段】試料支持面2a上に試料S1が固定される試料台2と、試料支持面に平行な面に沿って隣接配置される観察用プローブ3及び把持用プローブ4を有する2端子ピンセット15と、試料台と2端子ピンセットとを試料支持面に平行な方向及び垂直な方向に移動させる移動手段と、観察用プローブを振動させる加振手段10と、観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、観察用プローブに対して把持用プローブを接近又は離間する方向へ移動させてプローブ間の距離を調節するプローブ駆動手段12と、2端子ピンセットをそれぞれ試料に接触させ、この状態で2端子ピンセット間に電流を流しそのときの2端子ピンセット間の電気的特性から試料上の2点間の導電率を測定する第1の測定手段35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の試料の導電率、又は微小な試料の導電率を測定する導電率測定装置及び導電率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の表面における極微細領域の電気的な特性を計測するために、例えば、特許文献1、2に示すように、四つの探針が直線上に等間隔に配置された計測プローブを有する走査トンネル顕微鏡等の導電率測定装置が使用されている。この計測プローブによる導電率測定方法は、外側に配された二本の探針(外側プローブ)を試料に接触又は接近させた状態で電圧を印加して、試料の電気抵抗のために生じる電圧降下を内側に配された残りの二本の探針(観察用プローブと把持用プローブ)で測定することにより、その位置における断面情報を含む表面特性を測定するものである。
この計測プローブによれば、外側二本の探針間に電圧を印加したとき、外側二本の探針間隔が離間しているほど、試料の深い位置まで内側二本の探針にて断面情報を計測することができる。
【特許文献1】特開2004−93352号公報
【特許文献2】特開2002−31655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の導電率測定装置では、以下のような問題があった。
第1に、内側に配された二本の探針がそれぞれ別々の駆動源により駆動されているので、内側に配された両プローブの離間距離を精度良く連続的に調節することができなかった。また第1の課題に関連して第2に、内側に配された二本の探針の離間距離を精度良く調節することができないので、極近接個所の導電率を精度良く測定できないという問題があった。
第3に、計測プローブを試料に押当てる力を調節することができないので、押当てる力の再現性が悪かった。
第4に、内側に配された二本の探針がそれぞれ別々の駆動源により駆動されているので、微小な試料を正確に摘んで電気的特性を測定することができなかった。
そして第5に、試料の形状を観察して、所定箇所を選択し把持し、他の箇所から切り離して所定箇所の導電率を測定することはできなかった。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、上記の課題を解決することが可能な導電率測定装置及び導電率測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の導電率測定装置は、試料支持面上に試料が固定される試料台と、該試料の上方に配置され、かつ前記試料支持面に平行な面に沿って互いに所定の離間距離を空けた状態で隣接配置される観察用プローブ及び把持用プローブを有する2端子ピンセットと、前記試料台と前記2端子ピンセットとを、前記試料支持面に平行な方向及び該試料支持面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記観察用プローブを振動させる加振手段と、前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、前記観察用プローブに対して前記把持用プローブを接近または離間する方向へ移動させて、両プローブ間の距離を調節するプローブ駆動手段と、前記2端子ピンセットをそれぞれ前記試料に接触させ、この状態で前記2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの前記2端子ピンセット間の電気的特性から前記試料上の2点間の導電率を測定する第1の測定手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
また、本発明の導電率測定方法は、上記に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、前記プローブ駆動手段により前記離間距離を調節し、前記試料の被測定点に前記2端子ピンセットを位置決めする位置決め工程と、前記2端子ピンセットを試料側へ相対的に所定長さだけそれぞれ移動させて、前記2端子ピンセットの先端を前記試料にそれぞれ押当てるプローブ押当て工程と、第1の測定手段により前記2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの前記2端子ピンセット間の電気的特性から前記試料の被測定点間の導電率を測定する測定工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、まずAFM観察により移動手段の操作により観察用プローブを試料上に沿って走査させながら試料を観察する。これにより、試料がどのような表面形状(高さ、外形形状等)であるかと、被測定点の位置を把握することができる。
続いて、プローブ駆動手段により離間距離を調節し、取得した位置データ及び形状データに基づいて、2端子ピンセットの先端を相対的に移動させて被測定点にそれぞれ位置決めさせる。
観察用プローブ及び把持用プローブは、試料支持面に平行な面に沿って配置されるとともに、移動手段により試料支持面に平行な方向及び試料支持面に垂直な方向に相対的に移動する。このため、観察用プローブ及び把持用プローブのそれぞれの先端を試料に同時に押当てることが可能となる。
また、AFM観察により被測定点の位置が把握できているので、指定した位置の被測定点への位置決めを迅速に行うことができる。
続いて、2端子ピンセットを試料側に所定長さだけ相対的に移動させる。2端子ピンセットの各プローブは試料に同時に押当てられているので、各プローブは試料とは反対側に所定長さだけ撓むことになる。また各プローブが試料を押当てる力は、各プローブの試料とは反対側へのバネ定数と撓み量により定まる。各プローブの撓み量は測定によらず一定になるので、2端子ピンセットの各プローブが試料の被測定点に押当てる力をそれぞれ一定にし、押当てる力の再現性を高めることができる。
【0008】
最後に、第1の測定手段により2端子ピンセットの間に電流を流すとともに、そのときの2端子ピンセット間の電気的特性から試料の被測定点間の導電率を測定する。
このように、一つのプローブ駆動手段により2端子ピンセット間の離間距離を調節するので、離間距離を精度良く連続的に調節することができる。また、離間距離を精度良く調節することができるので、2端子ピンセット間の離間距離をたとえば100ナノメートル以下までの所定微小距離まで近づけて導電率を精度良く測定することができる。
【0009】
また、本発明の導電率測定装置は、試料支持面上に試料が固定される試料台と、該試料の上方に配置され、かつ前記試料支持面に平行な面に沿って互いに所定の離間距離を空けた状態で隣接配置される観察用プローブ及び把持用プローブ、並びに両プローブの外側に該両プローブを結ぶ直線上に該両プローブに対して離間して配置される左右の外側プローブを有する4端子ピンセットと、前記試料台と前記4端子ピンセットとを、前記試料支持面に平行な方向及び該試料支持面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記観察用プローブを振動させる加振手段と、前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、前記観察用プローブに対して前記把持用プローブを接近または離間する方向へ移動させて、両プローブ間の距離を調節するプローブ駆動手段と、前記4端子ピンセットをそれぞれ前記試料に接触させ、この状態で左右の前記外側プローブ間に電流を流し、そのときの観察用プローブと前記把持用プローブの間の電気的特性から前記試料上の2点間の導電率を測定する第2の測定手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の導電率測定方法は、上記に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、前記プローブ駆動手段により前記離間距離を調節し、前記試料の被測定点に前記観察用プローブ及び前記把持用プローブを位置決めする位置決め工程と、前記移動手段の操作により前記4端子ピンセットを試料側へ相対的に所定長さだけそれぞれ移動させて、前記4端子ピンセットの先端を前記試料にそれぞれ押し当てるプローブ押当て工程と、第2の測定手段により左右の前記外側プローブ間に電流を流し、そのときの前記観察用プローブ及び前記把持用プローブ間の電気的特性から前記試料の被測定点間の導電率を測定する測定工程と、を備えることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、まずAFM観察により移動手段の操作により観察用プローブを試料上に沿って走査させながら試料を観察する。これにより、試料がどのような表面形状(高さ、外形形状等)であるかと、被測定点の位置を把握することができる。
続いて、プローブ駆動手段により離間距離を調節し、取得した位置データ及び形状データに基づいて、4端子ピンセットの先端を相対的に移動させて被測定点にそれぞれ位置決めさせる。
観察用プローブ及び把持用プローブは、試料支持面に平行な面に沿って配置されるとともに、左右の外側プローブは観察用プローブ及び把持用プローブを結ぶ直線上に配置されている。また、これら4端子ピンセットは、移動手段により試料支持面に平行な方向及び試料支持面に垂直な方向に相対的に移動する。このため、4端子ピンセットのそれぞれの先端を試料に同時に押当てることが可能となる。
また、AFM観察により被測定点の位置が把握できているので、指定した位置の被測定点への位置決めを迅速に行うことができる。
続いて、4端子ピンセットを試料側に所定長さだけ相対的に移動させる。4端子ピンセットの各プローブは試料に同時に押当てられているので、各プローブは試料とは反対側に所定長さだけ撓むことになる。また各プローブが試料を押当てる力は、各プローブの試料とは反対側へのバネ定数と撓み量により定まる。各プローブの撓み量は測定によらず一定になるので、4端子ピンセットの各プローブが試料の被測定点に押当てる力をそれぞれ一定にし、押当てる力の再現性を高めることができる。
【0012】
最後に、第2の測定手段により左右の外側プローブの間に電流を流すとともに、そのときの観察用プローブ及び把持用プローブ間の電気的特性から試料の被測定点間の導電率を測定する。
このように、一つのプローブ駆動手段により観察用プローブと把持用プローブの間の離間距離を調節するので、離間距離を精度良く連続的に調節することができる。また、離間距離を精度良く調節することができるので、離間距離をたとえば100ナノメートル以下までの所定微小距離まで近づけて導電率を精度良く測定することができる。
【0013】
また、本発明の導電率測定装置は、前記プローブ駆動手段は、一方が前記把持用プローブの基端側を固定するプローブベースに、他方が前記把持用プローブの中間部に設けられて互いに対応する一対の櫛歯と、それら櫛歯の対向面にそれぞれ設けられる一対の電極と、一対の該電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備えることを特徴としている。
この発明によれば、電圧印加部により一対の電極間に電圧を印加することで、一対の電極間に作用する静電気力により、プローブベースと把持用プローブの中間部にそれぞれ設けられて互いに対応する一対の櫛歯間の距離を調節することができる。これにより、観察用プローブと把持用プローブの間の離間距離をより精度良く連続的に調節することができる。
【0014】
また、本発明の導電率測定方法は、前記測定工程において、前記プローブ駆動手段の操作により前記観察用プローブ及び前記把持用プローブ間の前記離間距離を変えながら、前記試料の被測定点間の導電率を測定することを特徴としている。
この発明によれば、観察用プローブ及び把持用プローブ間の離間距離が電気的特性に及ぼす影響を測定することが可能となり、試料の被測定点間の導電率をより精度良く測定することができる。
【0015】
また、本発明の導電率測定方法は、上記に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、該試料の所定箇所に前記観察用プローブ及び前記把持用プローブを位置決めする位置決め工程と、前記プローブ駆動手段の操作により前記観察用プローブと前記把持用プローブ間の前記離間距離を所定長さだけ近づけて両プローブで前記試料の所定箇所を把持する把持工程と、該把持工程の後に、前記第1の測定手段により前記観察用プローブと前記把持用プローブ間に電流を流し、そのときの前記両プローブ間の電気的特性から前記試料の所定箇所間の導電率を測定する測定工程と、を備えることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、まずAFM観察により移動手段の操作により観察用プローブを試料上に沿って走査させながら試料を観察する。これにより、試料がどのような表面形状(高さ、外形形状等)であるかと、所定箇所の位置と形状を把握することができる。
続いて、プローブ駆動手段により離間距離を調節し、取得した位置データ及び形状データに基づいて、2端子ピンセットで試料の所定箇所を挟むように位置決めする。
AFM観察により所定箇所の位置と形状が把握できているので、指定した位置の所定箇所への2端子ピンセットの位置決めを迅速に行うことができる。
続いて、プローブ駆動手段の操作により2端子ピンセット間の離間距離を所定長さだけ近づけて2端子ピンセットで試料の所定箇所を押当てて把持する。
2端子ピンセットが所定箇所を押当てる力は、挟んだ所定箇所とは反対側へのバネ定数と撓み量により定まる。各プローブの撓み量は測定によらず一定になるので、2端子ピンセットの各プローブが所定箇所を押当てる力をそれぞれ一定にし、押当てる力の再現性を高めることができる。
【0017】
最後に、第1の測定手段により2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの2端子ピンセット間の電気的特性から試料の所定箇所間の導電率を測定する。
このように、一つのプローブ駆動手段により観察用プローブと把持用プローブの間の離間距離を調節するので、離間距離を精度良く連続的に調節し微小な所定箇所を正確に摘んで導電率を測定することができる。また、離間距離を精度良く調節することができるので、離間距離をたとえば100ナノメートル以下までの所定微小距離まで近づけて所定箇所を把持し、導電率を精度良く測定することができる。
【0018】
また、本発明の導電率測定方法は、一様で均質な試料だけでなく試料中に不均一な所定箇所がある試料に対して、前記把持工程と前記測定工程の間に、前記移動手段の操作により、前記試料中の所定箇所を選択し、把持した後、前記観察用プローブと前記把持用プローブで把持した前記試料の所定箇所を前記試料の他の箇所から切り離す測定箇所切離し工程を備えることを特徴としている。
この発明によれば、試料の影響を受けずに所定箇所間の導電率を測定し、導電率をより精度良く測定することができる。
【0019】
また、本発明の導電率測定方法は、前記測定工程において、前記プローブ駆動手段の操作により、前記観察用プローブと前記把持用プローブ間の前記離間距離を変えて前記試料の所定箇所間への把持力を変えながら、該試料の所定箇所間の導電率を測定することを特徴としている。
この発明によれば、試料の所定箇所間の押当て力が電気的特性に及ぼす影響を測定することが可能となり、所定箇所間の導電率をより精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電率測定装置及び導電率測定方法によれば、観察用プローブにより事前に試料を観察するため測定試料に対する位置あわせ精度が良く、観察用プローブと把持用プローブの間の離間距離を精度良く連続的に調節し、各プローブを試料に押当てる力の再現性を高めて導電率を精度良く測定することができる。さらに一様で均質な試料だけでなく試料中に不均一な所定箇所がある試料に対してもその箇所を試料面より切り離し所定箇所のみの導電率の測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一の実施形態)
以下、本発明に係る導電率測定装置の第一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1から図8は、本発明の第一実施形態の導電率測定装置の説明図である。図1は導電率測定装置の構成図、図2は導電率測定装置の要部斜視図である。
なお、本実施形態では、光てこ方式を利用した場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の導電率測定装置1は、図1及び図2に示すように、試料S1の導電率を測定する装置であって、試料台2と、2端子ピンセット15と、プローブベース7と、加振手段10と、変位測定手段11と、プローブ駆動手段12と、移動手段13と、第1の測定手段35と、制御手段14とを概略備えている。
【0022】
計測の対象となる平板状の試料S1は、試料台2に設けられた試料支持面2a上に図示しない固定手段により固定されている。そして、導電率測定装置1の通常の使用時においては、試料支持面2aは水平面に平行に配置され、試料支持面2aに平行な直交する二方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
2端子ピンセット15は、観察用プローブ3と把持用プローブ4とで構成され、試料S1の上方に配置され、かつ試料支持面2aに平行な仮想面C1に沿って互いに所定の離間距離Gを空けた状態で隣接配置されている。そして、観察用プローブ3の先端3aには導電性の第一のティップ5が設けられ、把持用プローブ4の先端4aには導電性の第二のティップ6が設けられている。また、第一のティップ5の先端5aと第二のティップ6の先端6aを結ぶ仮想線C2も仮想面C1に平行なるように設定されている。
【0023】
図2に示すように、第一のティップ5及び第二のティップ6も離間距離Gを空けた状態で隣接配置されていて、観察用プローブ3の基端3b側及び把持用プローブ4の基端4b側はプローブベース7に、それぞれ片持ち状態に固定されている。
第一のティップ5と第二のティップ6はたとえばタングステンのような導電性の材料で形成され、観察用プローブ3及び把持用プローブ4はシリコンにより形成されている。そして、観察用プローブ3と把持用プローブ4は、それぞれ電気的に絶縁されている。
また、観察用プローブ3と把持用プローブ4は、それぞれのZ方向の共振周波数が異なるように設定されている。
【0024】
観察用プローブ3には、観察用プローブ3を振動させる圧電体16が固定されている。この圧電体16は、圧電体制御部17からの信号を受けて所定周波数(f0)及び所定振幅(A0)で振動するようになっており、その振動を観察用プローブ3に伝えている。これにより、観察用プローブ3は、圧電体16と同様に所定周波数(f0)及び所定振幅(A0)で振動するようになっている。即ち、これら圧電体16及び圧電体制御部17は、上記加振手段10として機能する。
【0025】
把持用プローブ4の中間部とプローブベース7には、互いに接触しないように凹凸状に形成されて互いに対応する一対の櫛歯4c、櫛歯7aがそれぞれ設けられている。また、一対の櫛歯4cと櫛歯7aの対向面にはそれぞれ電極4d、電極7bが備えられている。
なお、櫛歯7aが移動しないように、櫛歯7aの剛性が高くなるように設定することが好ましい。
電極4dと電極7bは、櫛歯用電圧装置18に接続されている。櫛歯用電圧装置18によりの一対の電極4dと電極7bの間に電圧が印加されると、電極4dと電極7bが引き合うことにより、把持用プローブ4の先端4a側が観察用プローブ3の先端3a側に移動し、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gが調節される。
即ち、これら櫛歯4c、櫛歯7a、電極4d、電極7b及び櫛歯用電圧装置18は、上記プローブ駆動手段12として機能する。なお、櫛歯用電圧装置18は特許請求の範囲の電圧装置に相当する。
また、圧電体制御部17と櫛歯用電圧装置18は、制御部32に接続されている。
【0026】
また、導電率測定装置1は、観察用プローブ3を所定周波数及び所定振幅で振動させる加振手段10と、第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す電流を発生させる電流装置8と、第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定する電圧計測装置9を備えている。そして、これら電流装置8及び電圧計測装置9は、上記第1の測定手段35として機能する。
【0027】
図1に示すように、上記試料台2はXYスキャナ21上に載置されているとともに、図示しない防振台上に載置されている。このXYスキャナ21は、例えばピエゾ素子からなり、XY走査系とZサーボ系を含むXYZスキャナ制御部22から電圧を印加されることで、試料支持面2aに平行なXY方向に微小移動するようになっている。これにより、試料S1をXY方向に微小移動させることが可能とされている。
また、ホルダ部19はZスキャナ23にぶら下がるように固定されていて、上記プローブベース7は、ホルダ部19の下方に固定されている。
このZスキャナ23は、XYスキャナ21と同様に、例えばピエゾ素子からなり、XYZスキャナ制御部22から電圧を印加させることで、試料支持面2aに垂直すなわち試料S1表面に垂直なZ方向に微小移動するようになっている。これにより、プローブベース7に固定された観察用プローブ3及び把持用プローブ4をZ方向に微小移動させることが可能とされている。
【0028】
すなわち、これらXYスキャナ21、Zスキャナ23及びXYZスキャナ制御部22は、プローブベース7が試料支持面2aに対してX方向、Y方向及びZ方向平行な方向、すなわち三次元方向に移動するように、プローブベース7と試料台2を移動させる上記移動手段13として機能する。
【0029】
また、試料台2上には、観察用プローブ3の裏面側に形成された図示しない反射面に対してレーザ光Lを照射するレーザ光源25と、反射面で反射されたレーザ光Lを、ミラー26を利用して受光する光検出部27とが設けられている。この光検出部27は、例えば入射面が2分割或いは4分割されたフォトダイオードであり、レーザ光Lの入射位置から観察用プローブ3の振動状態を検出する。そして、光検出部27は、検出した観察用プローブ3のZ方向の振動状態の変位をDIF信号としてプリアンプ28に出力している。即ち、これらレーザ光源25、ミラー26、光検出部27は、観察用プローブ3の変位を測定する上記変位測定手段11として機能する。
なお、試料台2の上方には、試料台2を観察するために光学顕微鏡29が設けられている。
【0030】
光検出部27から出力されたDIF信号は、プリアンプ28によって増幅された後、交流−直流変換回路30に送られて直流変換され、Z電圧フィードバック回路31に送られる。Z電圧フィードバック回路31は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように、XYZスキャナ制御部22を通してフィードバック制御する。これにより、試料S1のAFM観察を行う際に、試料S1の表面と観察用プローブ3に設けられた第一のティップ5の先端5aとの距離を、観察用プローブ3のZ方向の振動状態が一定となるように、具体的には振幅の減衰量或いは周波数のずれ量、又は、位相のずれ量が一定となるように制御することができる。
【0031】
また、このZ電圧フィードバック回路31には、制御部32が接続されており、Z電圧フィードバック回路31により送信される信号に基づいて、制御部32が試料S1上の観察データを取得することができるようになっている。また制御部32は、XYの走査信号をXYZスキャナ制御部22に出力する。これにより試料S1の位置データや形状データを取得することができるようになっている。
このように、プリアンプ28、交流−直流変換回路30、Z電圧フィードバック回路31及び制御部32は、上記制御手段14として機能する。なお、この制御手段14は、上述した各構成品を総合的に制御している。
【0032】
次に、このように構成された導電率測定装置1により、試料台2上の試料S1を観察した後、試料S1の微小領域で、試料S1の被測定点間の導電率を求める工程について、以下に説明する。
図3は、導電率を求める工程を示すフローチャート、図4から図6は導電率を求める各工程を示す説明図である。
まず、この工程を行う前に初期設定を行う。即ち図1及び図2に示すように、観察用プローブ3の反射面に確実にレーザ光Lが入射するように、また、反射したレーザ光Lが光検出部27に確実に入射するように、レーザ光源25及び光検出部27の位置を調節する。また、圧電体制御部17から圧電体16に対して信号を出力して、圧電体16を所定周波数(f0)及び所定振幅(A0)で振動させる。これにより、観察用プローブ3は、図4に示すようにZ方向に所定周波数(f0)及び所定振幅(A0)で振動することとなる。
【0033】
この初期設定が終了した後、図3に示すデータ取得工程(ステップS11)で、まず、試料S1の表面全体の状態を光学顕微鏡29で観察し、試料S1の表面形状の概要や、被測定点のおおまかな位置を把握する。
続いて、試料S1のAFM観察を行う。
具体的には、図1及び図4に示すように観察用プローブ3を所定振幅(A0)でZ方向に振動させながら、観察用プローブ3の先端3aに設けられた第一のティップ5と試料S1の表面との距離を、観察用プローブ3のZ方向の振動状態が一定となるように高さ制御した状態で、XYスキャナ21により試料S1の表面の走査を行う。この際、試料S1の表面の凹凸に応じて観察用プローブ3のZ方向の振幅が増減しようとするので、図1に示す光検出部27に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光)の振幅が異なってくる。光検出部27は、この振幅に応じたDIF信号をプリアンプ28に出力する。出力されたDIF信号は、プリアンプ28によって増幅されるとともに交流−直流変換回路30によって直流変換された後、Z電圧フィードバック回路31に送られる。
【0034】
Z電圧フィードバック回路31は、直流変換されたDIF信号が常に一定となるように(つまり、観察用プローブ3のZ方向の振幅が一定となるように)。XYZスキャナ制御部22によりZスキャナ23をZ方向に微小移動させて、フィードバック制御を行う。これにより、試料S1の表面と第一のティップ5との距離を、観察用プローブ3のZ方向の振動状態が一定となるように高さ制御した状態で試料S1の表面の走査を行うことができる。
また、制御部32は、Z電圧フィードバック回路31により送信される、Zスキャナ23を上下させる信号に基づいて、試料S1の表面上の観察データを取得することができる。その結果、試料S1の位置データ及び形状データを取得することができ、被測定点Pが試料S1のどの辺りに配置されているのかを把握することができる。
【0035】
次に、位置決め工程(ステップS12)では、取得した位置データ及び形状データに基づいて被測定点Pを定め、XYZスキャナ制御部22によりXYスキャナ21及びZスキャナ23を移動させ、図5に示すように、被測定点Pに第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aが配置されるようにプローブベース7を移動させて位置決めする。
第一のティップ5の先端5aと第二のティップ6の先端6aを結ぶ仮想線C2は仮想面C1に平行なるように、すなわち試料支持面2aに平行になるように設定されている。そして、試料S1は平板状なので、仮想線C2は試料S1の上面と平行になる。
また、移動手段13により、2端子ピンセット15は試料支持面2aに平行な方向及び試料支持面2aに垂直な方向に移動する。このため、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aを試料S1に同時に押当てることが可能となる。
また、試料S1の表面上のどの辺りに被測定点Pが位置しているかを既にAFM観察により把握しているので、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aを速やかに位置決めすることができる。
【0036】
次に、プローブ押当て工程(ステップS13)では、XYZスキャナ制御部22によりZスキャナ23を移動させ、図6に示すように、2端子ピンセット14を試料S1側、すなわちZ方向へ所定長さDだけ移動させて、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aを試料S1に押当てる。
ここで、各ティップが試料S1を押当てる力は各プローブのZ方向のバネ定数とZ方向の撓み量、この場合は所定長さDにより定まる。従って、測定毎に各プローブのZ方向の撓み量を所定長さDとすることで、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aのそれぞれが試料S1を押当てる力が測定によらず一定になるように調節される。
これにより、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aのそれぞれの試料S1の被測定点Pに押当てる力の再現性を高めることができる。
【0037】
最後に、測定工程(ステップS14)では、まず電流装置8に第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す一定の電流を発生させ、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定する。
さらに、櫛歯用電圧装置18により電極4dと電極7bの間に印加する電圧を変化させて、把持用プローブ4の先端4a側を観察用プローブ3の先端3a側に移動して、第一のティップ5と第二のティップ6の間隔を変化させながら、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定していく。
【0038】
上述のように、第一のティップ5と第二のティップ6の間に一定の電流値I0の電流を流すことにより第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧値Vを測定する。この時、図7に示すように、測定した電圧値を電流値で除して求める合成抵抗値Qには、試料S1の被測定点間の抵抗Rだけでなく、第一のティップ5、観察用プローブ3、電圧計測装置9等が有する内部抵抗rと、第一のティップ5及び第二のティップ6と試料S1の表面のそれぞれの間に生じる接触抵抗rが含まれる。ただし、押当て力のバラつきが抑えられているので接触抵抗rはほぼ一定であり、同一の導電率測定装置を用いることにより内部抵抗rも一定となる。
すなわち、下記の式(1)から式(2)のようになる
【0039】
【数1】

【0040】
従って、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離GをG、G、‥と変化させながら、電圧計測装置9により第一のティップ5及び第二のティップ6間に生じる電圧をV、V、‥と測定すると、下記の式(3)から式(4)のような式が成立する。
【0041】
【数2】

【0042】
そして、図8に示すように、横軸の第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gに対する、縦軸の合成抵抗値Qの関係を直線Mで近似し、切片の値を求めることで、(r+r)の式で求められる値を得ることができる。
すなわち、求めた合成抵抗値Qから内部抵抗r及び接触抵抗rを分離した、試料S1の被測定点間のより正確な抵抗値Rを算出することができる。さらに、算出した抵抗値Rから試料S1の導電率を求めることが可能となる。
【0043】
こうして、本発明の実施形態の導電率測定装置によれば、一つのプローブ駆動手段12により2端子ピンセット15間の離間距離Gを調節するので、離間距離Gを精度良く連続的に調節することができる。また、離間距離Gを精度良く調節することができるので、2端子ピンセット15間の離間距離Gをたとえば100ナノメートル以下までの所定微小距離まで近づけて導電率を精度良く測定することができる。
また、櫛歯用電圧装置18により一対の電極4d、電極7bの間に電圧を印加することで、電極4d、電極7bの間に作用する静電気力により、プローブベース7と把持用プローブ4の中間部にそれぞれ設けられて互いに対応する一対の櫛歯4c、櫛歯7a間の距離を調節することができる。これにより、観察用プローブ3と把持用プローブ4の間の離間距離Gをより精度良く連続的に調節することができる。
また、観察用プローブ3及び把持用プローブ4の離間距離Gを変えながら、試料S1の被測定点P間の導電率を測定するので、観察用プローブ3及び把持用プローブ4間の離間距離Gが電気的特性に及ぼす影響を測定することが可能となり、試料S1の被測定点P間の導電率をより精度良く測定することができる。
【0044】
なお、上記第一実施形態では、電流装置8により第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す一定の電流を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gを変化させながら電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定するとした。しかし、定電圧装置8より第一のティップ5と第二のティップ6の間に印加する一定の電圧を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の間隔を変化させながら電流計測装置により第一のティップ5と第二のティップ6の間に流れる電流を測定してもよい。
【0045】
(第二の実施形態)
以下、本発明に係る導電率測定装置の第二実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図9から図13は、本発明の第二実施形態の導電率測定装置の説明図である。図9は導電率測定装置の構成図、図10は導電率測定装置の要部斜視図である。
なお説明の便宜上、本発明の第二実施形態において、前述の第一実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
第二実施形態は、前述の第一実施形態と導電率測定装置50の要部のみが異なる。具体的には、図9及び図10に示すように、第一実施形態の導電率測定装置1に備えられた観察用プローブ3及び把持用プローブ4に加え、観察用プローブ3及び把持用プローブ4の外側に両プローブに対して離間して配置された外側プローブ対53、54を備えている。
外側プローブ対53、54のそれぞれの先端53a、54aには外側探針55、56が設けられている。そして、外側探針55の先端55a及び外側探針56の先端56aは、第一のティップ5の先端5aと第二のティップ6の先端6aを結ぶ仮想線C2上に配置されている。
また、第一実施形態で観察用プローブ3の基端3bと把持用プローブ4の基端4bが固定されたプローブベース7に、第二実施形態では外側プローブ対53、54のそれぞれの基端53b、54bもそれぞれ片持ち状態に固定される。そして、4端子ピンセット57は観察用プローブ3、把持用プローブ4及び外側プローブ対53、54で構成される。
また、外側探針55、56はたとえばタングステンのような導電性の材料で形成され、外側プローブ対53、54はシリコンにより形成されている。
【0047】
第一実施形態の電流装置8は第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す電流を発生させているが、第二実施形態の電流装置8は外側探針55、56の間に流す電流を発生させている。また、電圧計測装置9は、第一実施形態と同様に第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定する。そして、これら電流装置8及び電圧計測装置9は、上記第2の測定手段58として機能する。
【0048】
次に、このように構成された導電率測定装置50により、試料台2上の試料S1を観察した後、試料S1の微小領域で、試料S1の被測定点間の導電率を求める工程について、以下に説明する。
この第二実施形態の工程は、図3に示す第一実施形態のデータ取得工程(ステップS11)までは共通であり、位置決め工程(ステップS12)以降の工程の内容のみが異なる。
【0049】
位置決め工程(ステップS12)では、取得した位置データ及び形状データに基づいて被測定点Pを定め、XYZスキャナ制御部22によりXYスキャナ21及びZスキャナ23を移動させ、図11に示すように、被測定点Pに第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aが配置されるようにプローブベース7を移動させて位置決めして、ステップS13に移行する。
第一のティップ5の先端5a、第二のティップ6の先端6a、外側探針55の先端55a及び外側探針56の先端56aは仮想線C2上に配置され、仮想線C2は仮想面C1に平行なるように、すなわち試料支持面2aに平行になるように設定されている。そして、試料S1は平板状なので、仮想線C2は試料S1の上面と平行になる。
また、移動手段13により試料支持面2aに平行な方向及び試料支持面2aに垂直な方向に移動する。
移動手段13により、4端子ピンセット57は試料支持面2aに平行な方向及び試料支持面2aに垂直な方向に移動する。このため、第一のティップ5の先端5a、第二のティップ6の先端6a、外側探針55の先端55a及び外側探針56の先端56aを試料S1に同時に押当てることが可能となる。
また、試料S1の表面上のどの辺りに被測定点Pが位置しているかを既にAFM観察により把握しているので、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6aを速やかに位置決めすることができる。
【0050】
次に、プローブ押当て工程(ステップS13)では、XYZスキャナ制御部22によりZスキャナ23を移動させ、図12に示すように、4端子ピンセット57を試料S1側、すなわちZ方向へ所定長さDだけ移動させて、第一のティップ5の先端5a、第二のティップ6の先端6a、外側探針55の先端55a及び外側探針56の先端56aを試料S1に押当てる。
ここで、4つの各探針が試料S1を押当てる力は各プローブのZ方向のバネ定数とZ方向の撓み量、この場合は所定長さDにより定まる。従って、測定毎に4つの各プローブのZ方向の撓み量を所定長さDとすることで、第一のティップ5の先端5a及び第二のティップ6の先端6a、外側探針55の先端55a及び外側探針56の先端56aのそれぞれが測定毎に試料S1を押当てる力が測定によらず一定になるように調節される。
これにより、4つの探針の先端のそれぞれの試料S1の被測定点Pに押当てる力の再現性を高めることができる。
【0051】
最後に、測定工程(ステップS14)では、まず電流装置8に外側探針55、56の間に流す一定の電流を発生させ、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定する。
更に、櫛歯用電圧装置18により電極4dと電極7bの間に印加する電圧を変化させて、把持用プローブ4の先端4a側を観察用プローブ3の先端3a側に移動して、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gを変化させながら、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定していく。
【0052】
こうして、本発明の実施形態の導電率測定装置によれば、第一のティップ5、第二のティップ6及び外側探針55、56とういう4つの探針を用いて電圧を測定するので、図13に示すように、外側探針55、56、外側プローブ53、54及び電圧計測装置9等が有する内部抵抗r1と、第一のティップ5と試料S1の表面の間等に生じる接触抵抗r2の影響をより効果的に抑えて、試料S1の被測定点P間の距離に対する電圧の変化を計測することができる。さらに、計測した電圧から試料S1の導電率を求めることが可能となる。
こうして、測定による試料S1に押当てる力のバラつき及び探針間の押当てる力のバラつきを抑えて試料S1の被測定点間の導電率を求めることができる。
【0053】
なお、上記第二実施形態では、電流装置8により外側探針55、56の間に流す一定の電流を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gを変化させながら電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定するとした。しかし、定電圧装置8より外側探針55、56の間に印加する一定の電圧を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の間隔を変化させながら電流計測装置により第一のティップ5と第二のティップ6の間に流れる電流を測定してもよい。
【0054】
(第三の実施形態)
以下、本発明に係る導電率測定装置の第三実施形態を図面を参照して詳細に説明する。なお説明の便宜上、本発明の第三実施形態において、前述の第一実施形態及び第二実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して、その説明を省略する。
第三実施形態は、前述の第一実施形態と導電率測定装置1の構成は同一であり、導電率を測定する試料の形状と、導電率を測定する工程の一部のみが異なる。具体的には、第一実施形態では平板状の試料S1を計測したが、第三実施形態では図14に示すように、例えば直径が数マイクロメートル以下という試料S1の微小な所定箇所S2を測定の対象とする。
【0055】
次に、導電率測定装置1により、試料台上の試料を観察した後、微小な所定箇所の導電率を求める工程について、以下に説明する。図15は、導電率を求める工程を示すフローチャート、図16及び図17は、本発明の第三実施形態の導電率測定装置の説明図である。である。
なお、第三実施形態の各工程を行う前に、第一実施形態で述べた初期工程を行う。
【0056】
初期設定が終了した後、図15に示すデータ取得工程(ステップS21)で、第一実施形態の図3に示すデータ取得工程(ステップS11)と同一の工程を行う。
ただし、本実施形態では試料S1のAFM観察により、試料S1がどのような表面形状(高さ、外形形状等)であるかと、所定箇所S2の位置と形状を把握する。
【0057】
次に、位置決め工程(ステップS22)では、取得した位置データ及び形状データに基づいて所定箇所S2の位置を定め、XYZスキャナ制御部22によりXYスキャナ21及びZスキャナ23を移動させ、さらに櫛歯用電圧装置18により電極4dと電極7bの間に印加する電圧を変化させる。そして、図16に示すように、観察用プローブ3に設けられた第一のティップ5及び把持用プローブ4に設けられた第二のティップ6で試料S1の所定箇所S2を挟むように位置決めする。
試料S1の表面上のどの辺りに所定箇所S2が位置しているかを既にAFM観察により把握しているので、第一のティップ5及び第二のティップ6を速やかに位置決めすることができる。
【0058】
次に、把持工程(ステップS23)では、櫛歯用電圧装置18により電極4dと電極7bの間に印加する電圧を変化させ、図17に示すように、第一のティップ5及び第二のティップ6間の離間距離Gを所定長さDだけ近づけて2端子ピンセット15で試料S1の所定箇所S2を押当てて把持する。
2端子ピンセット15が所定箇所S2を押当てる力は、挟んだ所定箇所S2とは反対側へのバネ定数と撓み量により定まる。各プローブの撓み量は測定によらず一定になるので、2端子ピンセット15の各プローブが所定箇所S2を押当てる力をそれぞれ一定にし、押当てる力の再現性を高めることができる。
【0059】
次に、測定箇所切離し工程(ステップS24)では、XYZスキャナ制御部22によりZスキャナ23を移動させ、図18に示すように、第一のティップ5と第二のティップ6で把持した試料S1の所定箇所S2をZ方向に持ち上げて試料S1の他の箇所から切り離す。
【0060】
最後に、測定工程(ステップS25)では、まず電流装置8に第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す一定の電流を発生させ、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定する。
さらに、櫛歯用電圧装置18により電極4dと電極7bの間に印加する電圧を変化させて、図19に示すように、把持用プローブ4の先端4a側を観察用プローブ3の先端3a側に移動して、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gを変化させながら、電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定していく。
【0061】
こうして、本発明の実施形態の導電率測定装置によれば、一つのプローブ駆動手段12により第一のティップ5と第二のティップ6間の離間距離Gを調節するので、離間距離Gを精度良く連続的に調節し、微小な所定箇所S2を正確に摘んで導電率を測定することができる。
また、所定箇所S2を持ち上げて導電率を測定するので、試料S1の影響を受けずに所定箇所S2間の導電率を測定し、導電率をより精度良く測定することができる。
また、離間距離Gを変えて所定箇所S2間への把持力を変えながら、所定箇所S2間の導電率を測定する。従って、試料S1の所定箇所S2間の押当て力が電気的特性に及ぼす影響を測定することが可能となり、所定箇所S2間の導電率をより精度良く測定することができる。
【0062】
なお、上記第三実施形態では、電流装置8により第一のティップ5と第二のティップ6の間に流す一定の電流を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の離間距離Gを変化させながら電圧計測装置9により第一のティップ5と第二のティップ6の間に生じる電圧を測定するとした。しかし、定電圧装置8より第一のティップ5と第二のティップ6の間に印加する一定の電圧を発生させ、第一のティップ5と第二のティップ6の間隔を変化させながら電流計測装置により第一のティップ5と第二のティップ6の間に流れる電流を測定してもよい。
【0063】
以上、本発明の第一実施形態、第二実施形態に及び第三実施形態ついて図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記第一実施形態から第三実施形態では、観察用プローブ3の先端3aに第一のティップ5を設けた。しかし、第一のティップ5を観察用プローブ3と一体として導電性のものとしてもよい。把持用プローブ4及び外側プローブ対53、54についても同様である。
また、上記第一実施形態から第三実施形態では、各プローブの探針の先端は各プローブから下方に伸び、探針の先端を結ぶ仮想線C2は各プローブが沿って配置されている仮想面C1上にないものとした。しかし、仮想線C2が仮想面C1上にある構成であってもよい。
【0064】
また、上記第一実施形態から第三実施形態では、プローブ駆動手段12は静電気力を利用する電極を有する櫛歯を備えるとした。しかし、熱アクチュエータにより把持用プローブ4の先端4a側を移動させてもよい。
また、上記第一実施形態から第三実施形態では、測定工程で第一のティップ5と第二のティップ6の間の離間距離Gを変化させて導電率を測定した。しかし、離間距離Gを変化させずに導電率を測定してもよい。
【0065】
また、上記第三実施形態では、所定箇所S2を持ち上げて導電率を測定したが、所定箇所S2を持ち上げずに所定箇所S2の導電率を測定してもよい。あるいは、所定箇所S2を持ち上げる替わりに、試料台2側に昇降機構を設けて、被測定試料S1を所定箇所S2から切り離すように降下させてもよい。
また、上記第三実施形態では、所定箇所S2間への把持力を変えながら導電率を測定したが、所定箇所S2間への把持力を一定にして変えずに所定箇所S2の導電率を測定してもよい。
【0066】
また、上記第一実施形態から第三実施形態では、データ取得工程を行い、試料S1のAFM観察を行って位置データ及び形状データを取得して試料S1の表面形状を把握した。しかし、このデータ取得工程を無くして、別に予め取得した試料S1の位置データ及び形状データを利用してもよい。
また、上記第一実施形態から第二実施形態では、AFM観察を行って取得した位置データ及び形状データに基づいて観察用プローブ3を位置決めした。しかし、位置決めする時も再度観察用プローブ3を振動させながらその振動の状態を観察して位置決めしてもよい。
【0067】
また、上記第一実施形態及び第三実施形態では、試料S1を固定して2端子ピンセット14を移動させたが、2端子ピンセット14を固定して試料S1を移動させてもよい。
第二実施形態においても、4端子ピンセット57を固定して試料S1を移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の導電率測定装置の第一実施形態の構成図である。
【図2】本発明の導電率測定装置の第一実施形態の要部斜視図である。
【図3】本発明の導電率測定装置の第一実施形態による導電率を求める工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の導電率測定装置の第一実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図5】本発明の導電率測定装置の第一実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図6】本発明の導電率測定装置の第一実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図7】本発明の導電率測定装置の第一実施形態の試料と両プローブに関連する部分の回路図である。
【図8】本発明の導電率測定装置の第一実施形態の試料の抵抗値を求める説明図である。
【図9】本発明の導電率測定装置の第二実施形態の構成図である。
【図10】本発明の導電率測定装置の第二実施形態の要部斜視図である。
【図11】本発明の導電率測定装置の第二実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図12】本発明の導電率測定装置の第二実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図13】本発明の導電率測定装置の第二実施形態の試料と両プローブに関連する部分の回路図である。
【図14】試料の微小な所定箇所の説明図である。
【図15】本発明の導電率測定装置の第三実施形態による導電率を求める工程を示すフローチャートである。
【図16】本発明の導電率測定装置の第三実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図17】本発明の導電率測定装置の第三実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図18】本発明の導電率測定装置の第三実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【図19】本発明の導電率測定装置の第三実施形態による導電率を求める工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1、50 導電率測定装置
2 試料台
2a 試料支持面
3 観察用プローブ
4 把持用プローブ
4b 基端
4c、7a 櫛歯
4d、7b 電極
7 プローブベース
10 加振手段
11 変位測定手段
12 プローブ駆動手段
13 移動手段
15 2端子ピンセット
18 櫛歯用電圧装置(電圧装置)
35 第1の測定手段
52 外側プローブ
57 4端子ピンセット
58 第2の測定手段
G 離間距離
P 被測定点
S1 試料
S2 所定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料支持面上に試料が固定される試料台と、
該試料の上方に配置され、かつ前記試料支持面に平行な面に沿って互いに所定の離間距離を空けた状態で隣接配置される観察用プローブ及び把持用プローブを有する2端子ピンセットと、
前記試料台と前記2端子ピンセットとを、前記試料支持面に平行な方向及び該試料支持面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記観察用プローブを振動させる加振手段と、
前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、
前記観察用プローブに対して前記把持用プローブを接近または離間する方向へ移動させて、両プローブ間の距離を調節するプローブ駆動手段と、
前記2端子ピンセットをそれぞれ前記試料に接触させ、この状態で前記2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの前記2端子ピンセット間の電気的特性から前記試料上の2点間の導電率を測定する第1の測定手段とを備えることを特徴とする導電率測定装置。
【請求項2】
試料支持面上に試料が固定される試料台と、
該試料の上方に配置され、かつ前記試料支持面に平行な面に沿って互いに所定の離間距離を空けた状態で隣接配置される観察用プローブ及び把持用プローブ、並びに両プローブの外側に該両プローブを結ぶ直線上に該両プローブに対して離間して配置される左右の外側プローブを有する4端子ピンセットと、
前記試料台と前記4端子ピンセットとを、前記試料支持面に平行な方向及び該試料支持面に垂直な方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記観察用プローブを振動させる加振手段と、
前記観察用プローブの変位を測定する変位測定手段と、
前記観察用プローブに対して前記把持用プローブを接近または離間する方向へ移動させて、両プローブ間の距離を調節するプローブ駆動手段と、
前記4端子ピンセットをそれぞれ前記試料に接触させ、この状態で左右の前記外側プローブ間に電流を流し、そのときの観察用プローブと前記把持用プローブの間の電気的特性から前記試料上の2点間の導電率を測定する第2の測定手段とを備えることを特徴とする導電率測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導電率測定装置において、
前記プローブ駆動手段は、一方が前記把持用プローブの基端側を固定するプローブベースに、他方が前記把持用プローブの中間部にそれぞれ設けられて互いに対応する一対の櫛歯と、それら櫛歯の対向面にそれぞれ設けられる一対の電極と、一対の該電極間に電圧を印加する電圧装置とを備えることを特徴とする導電率測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、
前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、前記プローブ駆動手段により前記離間距離を調節し、前記試料の被測定点に前記2端子ピンセットを位置決めする位置決め工程と、
前記2端子ピンセットを試料側へ相対的に所定長さだけそれぞれ移動させて、前記2端子ピンセットの先端を前記試料にそれぞれ押当てるプローブ押当て工程と、
第1の測定手段により前記2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの前記2端子ピンセット間の電気的特性から前記試料の被測定点間の導電率を測定する測定工程と、
を備えることを特徴とする導電率測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、
前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、前記プローブ駆動手段により前記離間距離を調節し、前記試料の被測定点に前記観察用プローブ及び前記把持用プローブを位置決めする位置決め工程と、
前記移動手段の操作により前記4端子ピンセットを試料側へ相対的に所定長さだけそれぞれ移動させて、前記4端子ピンセットの先端を前記試料にそれぞれ押し当てるプローブ押当て工程と、
第2の測定手段により左右の前記外側プローブ間に電流を流し、そのときの前記観察用プローブ及び前記把持用プローブ間の電気的特性から前記試料の被測定点間の導電率を測定する測定工程と、
を備えることを特徴とする導電率測定方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の導電率測定方法において、
前記測定工程において、前記プローブ駆動手段の操作により前記観察用プローブ及び前記把持用プローブ間の前記離間距離を変えながら、前記試料の被測定点間の導電率を測定することを特徴とする導電率測定方法。
【請求項7】
請求項1に記載の導電率測定装置を用いた導電率測定方法であって、
前記移動手段の操作により前記観察用プローブを前記試料上に沿って走査させながら、AFM観察により前記試料を観察し、前記プローブ駆動手段により前記離間距離を調節し、前記2端子ピンセットで前記試料の所定箇所を挟むように位置決めする位置決め工程と、
前記プローブ駆動手段の操作により前記2端子ピンセット間の前記離間距離を所定長さだけ近づけて該2端子ピンセットで前記試料の所定箇所を把持する把持工程と、
該把持工程の後に、前記第1の測定手段により前記2端子ピンセット間に電流を流し、そのときの該2端子ピンセット間の電気的特性から前記試料の所定箇所間の導電率を測定する測定工程と、
を備えることを特徴とする導電率測定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の導電率測定方法において、
前記把持工程と前記測定工程の間に、
前記移動手段の操作により、前記試料中の所定箇所を選択し、把持した後、前記観察用プローブと前記把持用プローブで把持した前記試料の所定箇所を前記試料の他の箇所から切り離す測定箇所切離し工程を備えることを特徴とする導電率測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の導電率測定方法において、
前記測定工程において、前記プローブ駆動手段の操作により、前記観察用プローブと前記把持用プローブ間の前記離間距離を変えて前記試料の所定箇所間への把持力を変えながら、該試料の所定箇所間の導電率を測定することを特徴とする導電率測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−192370(P2009−192370A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33291(P2008−33291)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】