説明

導電粒子、回路接続材料及び接続構造体

【課題】同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の十分な導電性とを高水準で両立することができ、かつ良好な絶縁性と良好な導電性とを長期間にわたって維持することが可能である接続信頼性に十分に優れる回路接続材料に適した導電粒子を提供すること。
【解決手段】融点または軟化点がT(℃)の材料を主成分とするコア12と、コア12の表面を被覆する、融点がT(℃)の低融点金属を主成分とする導電層14と、該導電層14の表面を被覆する、軟化点がT(℃)の樹脂組成物からなる絶縁層16と、を備えており、T、T及びTが下記式(1)を満たし、Tが130〜250℃である導電粒子を提供する。
>T>T (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電粒子、該導電粒子を含有する回路接続材料、及び当該回路接続材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化・薄型化に伴い、電子部品に用いられる電極は高密度化・高精細化している。対向配置された第1の電極と第2の電極とを接続する回路接続材料として、異方導電性接着剤又は異方導電性フィルムが用いられている。このような異方導電性フィルムとしては、複数の導電粒子(例えば、Ni等の金属粒子)及び接着剤組成物からなる回路接続材料をフィルム状に形成したものが挙げられる。
【0003】
対向配置された第1の電極と第2の電極とは、以下の方法で接続される。まず、第1の電極と第2の電極とを互いに対向配置された状態で、第1の電極と第2の電極との間に異方導電性フィルムを介在させる。その後、第1及び第2の電極と異方導電性フィルムとからなる構造体を加熱すると共に対向する方向に加圧する。この際、異方導電性フィルムが硬化することにより、第1の電極と第2の電極とは互いに接着固定される。これによって、隣り合う第1及び第2の電極間の絶縁性を維持しつつ対向配置された第1の電極と第2の電極とを電気的に接続させる。
【0004】
上述の接続方法において、対向配置された第1の電極と第2の電極との間の電気的導通は、主として異方導電性フィルム中の導電粒子が第1及び第2の電極に接触することによって得られる。しかしながら、このような接続では、融点の高い金属同士の接触によって導通を得ているため、接触抵抗が大きく、また、長期間の接続信頼性が不足していた。
【0005】
そこで、接触抵抗を低減する試みとして、例えば基材の表面に異なる金属層を複数設けるとともに、最外層として低融点のインジウム、錫、錫−鉛合金を主成分として用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この場合、加熱により導電粒子の最外層が融解して、融解した低融点金属が第1及び第2の電極と金属接合するため、対向配置された第1の電極と第2の電極との間の接続抵抗を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−170427号公報
【特許文献2】特許第3542611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2のような導電粒子を用いた場合、表面の低融点金属は溶融状態において表面張力が非常に大きいため、加熱及び加圧して電極同士を接続する際に、隣接する導電粒子同士が互いに接触して融合し易くなってしまう。その結果、隣り合う電極が導通して短絡(ショート)してしまう傾向がある。かかる傾向は、隣り合う第1の電極間及び第2の電極間が狭ピッチ化するほど顕著になる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の十分な導電性とを高水準で両立することができ、かつ良好な絶縁性と良好な導電性とを長期間にわたって維持することが可能である接続信頼性に十分に優れる回路接続材料、及び当該回路接続材料に用いられる導電粒子を提供することを目的とする。また、上記特徴を有する回路接続材料を用いることによって、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の導電性とが十分に向上され、接続信頼性に十分優れる接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、融点または軟化点がT(℃)の材料を主成分とするコアと、該コアの表面を被覆する、融点がT(℃)の低融点金属を主成分とする導電層と、該導電層の表面を被覆する、軟化点がT(℃)の樹脂組成物からなる絶縁層と、を備えており、T、T及びTが下記式(1)を満たす導電粒子を提供する。
>T>T (1)
【0010】
本発明における導電粒子は、低融点金属を主成分とする導電層の表面が更に絶縁層で被覆されている。よって、酸化雰囲気に曝されることによる表面の不動態膜の形成が十分に抑制されている。このような導電粒子が加熱されると、まず、表面の絶縁層を構成する樹脂組成物の軟化点Tで、その絶縁層が軟化して流動性を示すようになる。絶縁層が流動するに伴い、導電粒子の表面に低融点金属を主成分とする導電層が露出する。更に加熱して昇温すると、低融点金属の融点Tで導電層が溶融する。導電粒子の導電層には、不動態膜が形成されていないため、導電層は層内部だけでなくその表面も円滑に溶融する。このため、例えば回路接続材料として用いられた場合に、絶縁層を最外層に有しない導電粒子よりも、電極などの金属材料とより十分に密着させることが可能になる。
【0011】
一方、最外層に絶縁層を有しない従来の導電粒子では、低融点金属が概して耐酸化性に劣る材料であるため、低融点金属を主成分とする導電層は容易に酸化される。そうすると、酸化された導電層の表面はいわゆる不動態膜を形成して安定化すると考えられる。そのような導電層を最外層に有する導電粒子では、加熱しても、不動態膜よりも内側の層内部にある酸化されていない低融点金属が溶融するだけであり、表面の安定化した不動態膜は溶融し難い。このため、例えば回路接続材料として用いられた場合に、電極と十分に密着できないと考えられる。
【0012】
本発明において、導電粒子の導電層の主成分である低融点金属の融点Tは130℃〜250℃である。
【0013】
これによって、導電粒子を加熱した場合に導電層を円滑に溶融させることができ、例えば回路接続材料として用いられた場合に、接続構造体の接続信頼性を一層向上させることができる。なお、融点Tが130℃未満の場合、例えば上限125℃以上の耐温度サイクル試験において、低融点金属が溶融するため、得られる接続構造体の十分優れた接続信頼性及び十分優れた機械的強度が損なわれる傾向がある。一方、融点Tが250℃を超える場合、電極の接続時に、低融点金属が十分に融解せず、得られる接続構造体の優れた導電性及び接続信頼性が損なわれる傾向がある。
【0014】
また、本発明では、互いに対向する第1の電極と第2の電極とを接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物と、該接着剤組成物中に分散されている上記導電粒子と、を有する回路接続材料を提供する。
【0015】
このような回路接続材料は、上記特徴を有する導電粒子を含有していることから、接続構造体の回路接続部として用いられた場合に、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の十分な導電性とを高水準で両立することができ、かつ良好な絶縁性と良好な導電性とを長期間にわたって維持することができる。
【0016】
なお、本発明の回路接続材料における導電粒子は、最外層に低融点金属よりも、通常、表面張力が小さい樹脂組成物を主成分とする絶縁層を有するので、加熱して電極を接合する際に、接着剤組成物中における導電粒子同士の融合を十分に抑制することができる。たとえ隣接する粒子同士が接触したとしても、最外層に絶縁層を有するので電気的に導通されることはない。このため、同一基板上で隣接する電極間の絶縁性を高水準で維持することができる。なお、電極接続時の加圧の際に、絶縁層は溶融または軟化した状態にあるが、加圧方向とは垂直な方向に隣接する導電粒子同士の間には加圧による外力は直接作用しないので、絶縁層を突き破って内側の導電層同士が接触及び融合する可能性は極めて低いと考えられる。
【0017】
ちなみに、電極接続時の加圧による外力は、対向配置された第1及び第2の電極間に挟まれた導電粒子に対して、溶融または軟化した状態にある絶縁層を流動または排除するように作用し、さらに溶融した導電層を第1または第2の電極に押し付ける力として作用する。しかしながら、本発明の導電粒子には、高い融点または軟化点Tの材料を主成分とするコアが存在するため、外力によって押し潰されて低融点金属成分が周囲に飛散する可能性は極めて低くなっている。
【0018】
本発明の回路接続材料は、接着剤組成物が熱可塑性樹脂を含有しており、接着剤組成物の軟化点をTとしたときに、下記式(2)を満足することが好ましい。
>T>T>T (2)
【0019】
このような回路接続材料は、対向配置された電極の接続時において、低い軟化点Tを有する接着剤組成物が十分な流動性を有する。このため、加熱・加圧によって、対向配置された電極と導電粒子とに十分な圧力が加わり、接続安定性を一層向上させることができる。また、導電粒子の絶縁層は、Tよりも高い軟化点Tを有する樹脂組成物を主成分としているため、流動しているときに導電粒子同士が互いに接触しても融着し難く、さらに対向配置された電極間の接続に関与しない導電粒子の絶縁層は、Tよりも高い軟化点Tを有する樹脂組成物を主成分としているため、電極に接触しない導電粒子の導電層がむき出しになり難く、導電粒子の導電層同士の接触によるショートの発生を一層確実に防止することができる。
【0020】
本発明の回路接続材料は、接着剤組成物が熱硬化性樹脂を含有しており、接着剤組成物は、加熱によって流動性を有するものであり、第1の電極及び第2の電極と低融点金属成分を主成分とする導電層とが接合してから硬化するものであることが好ましい。
【0021】
すなわち、回路接続材料を構成する接着剤組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、加熱によって粘度が低下して流動性を有し、さらに加熱を続けることによって硬化反応が進行して増粘し固形になることが望ましい。加熱・加圧によって回路接続材料の温度が上昇すると次に説明する通り接続構造を形成することができる。すなわち、接着剤組成物が流動性を示し、導電粒子が第1及び第2の電極に挟まれる。次いで導電粒子の絶縁層が軟化して低融点金属が露出する。次いで低融点金属が溶融して第1及び第2の電極と金属接合を形成する。次いで接着剤組成物の粘度が増加して硬化する。また、対向配置された電極間の接続に関与しない導電粒子の絶縁層は、軟化点Tよりも高い温度になっても圧力が加わらないため導電粒子の導電層がむき出しになり難く、導電粒子の導電層同士の接触によるショートの発生を確実に防止することができる。
【0022】
本発明において、導電粒子の含有量は、回路接続材料全体の1〜10質量%であることが好ましい。
【0023】
導電粒子の含有量が回路接続材料全体の1〜10質量%である回路接続材料を用いることによって、対向配置された電極同士の接続抵抗を一層十分に小さくするとともに、同一基板上で隣接する電極同士の絶縁性を一層十分に維持することができる。
【0024】
回路接続材料は、フィルム状に形成されていることが好ましい。かかる形状を有する回路接続材料は、対向配置された回路電極の接続する工程を極めて容易に行うことができる。
【0025】
本発明ではまた、第1の基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の基板の主面上に第2の回路電極が形成され、第2の回路電極と第1の回路電極とが対向するように配置された第2の回路部材と、第1の基板と第2の基板との間に設けられ、第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する回路接続部と、を備える接続構造体であって、回路接続部が、上述の回路接続材料の硬化物を含み、第1の回路電極と第2の回路電極とが導電粒子の導電層に含まれる低融点金属を介して電気的に接続されている接続構造体を提供する。
【0026】
このような接続構造体は、回路接続部に上述の特徴を有する回路接続材料を硬化させた硬化物を有するため、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の十分な導電性とを高水準で両立することができ、かつ良好な絶縁性と良好な導電性とを長期間にわたって維持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の十分な導電性とを高水準で両立することができ、かつ良好な絶縁性と良好な導電性とを長期間にわたって維持可能な接続信頼性に十分に優れる回路接続材料を提供することができる。また、このような回路接続材料に用いるのに適した導電粒子を提供することができる。さらに、上記特徴を有する導電粒子を含有する回路接続材料を用いることによって、同一基板上で隣り合う電極間の十分な絶縁性と対向配置された電極間の導電性とが十分に向上され、接続信頼性に十分優れる接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の回路接続材料の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の導電粒子の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の接続構造体の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す工程断面図である。
【図5】本発明の接続構造体の一例である半導体装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(回路接続材料)
図1は、本発明の回路接続材料の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。図1の回路接続材料50は、フィルム状の形状を有する。かかる形状を有する回路接続材料は、裂ける、割れる、又はべたつく等の問題が生じにくく、取り扱いが容易である。フィルム状の回路接続材料50は、絶縁部である接着剤組成物52と、接着剤組成物52中に分散された導電粒子10とを有する。
【0030】
フィルム状の回路接続材料50は、例えば、接着剤組成物を溶媒に溶解させ、導電粒子10が分散したものを支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に通常の塗工装置を用いて塗布し、接着剤組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。
【0031】
フィルム状の回路接続材料50の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状の回路接続材料50の厚さが10μm以上であると、対向する回路部材間に十分な量の回路接続材料を充填でき、同一基板上で隣接する電極間の絶縁性を一層十分に維持できる傾向がある。また、該厚さが50μm以下であると、接続時において、対向配置された電極間の接着剤組成物を十分に排除することができ、対向する電極間の導通の確保が容易になる傾向がある。
【0032】
回路接続材料50の総質量に対する導電粒子10の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。当該含有割合が1質量%以上であると、接続構造体形成後の対向する電極間の導電性が一層向上する傾向にある。一方、当該含有割合が10質量%以下であると、同一基板上に隣接する回路電極間の絶縁性を一層向上できる傾向がある。
【0033】
導電粒子10の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましい。導電粒子10の平均粒径が1μm以上であると、電極表面の凹凸や、電極間の高さばらつきを吸収することによって一層良好な接続状態を得やすい傾向にある。一方、導電粒子10の平均粒径が10μm以下であると、電極間が狭ピッチになっても同一基板上で隣接する電極同士がショートしにくい傾向にある。
【0034】
導電粒子10は、互いに、同一の形状、同一の寸法及び同一の材料からなる複数のものが混合されてもよく、異なる形状、異なる寸法、異なる材料からなる複数のものが混合されてもよい。本実施形態において、導電粒子10に、例えば従来の導電粒子等を組み合わせて接着剤組成物52中に分散させてもよい。従来の導電粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、Co、半田等の金属やカーボン等からなるものが挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミックス、プラスチック等を上記金属等の導電物質で被覆したものも従来の導電粒子として使用できる。このとき、被覆する金属層の厚さは、十分な導電性を得るために0.1μm以上であることが好ましい。
【0035】
回路接続材料50の接着剤組成物52は、例えばラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始材を含有する。
【0036】
回路接続材料の形態は特に制限されず、例えば、上記接着剤組成物52における各成分にトルエン、酢酸エチル等の有機溶媒を添加して導電粒子10を分散させたペースト状であってもよい。
【0037】
(導電粒子)
図2は、本発明の導電粒子の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。図2の導電粒子10は、コア12と、そのコアの表面12aを被覆する導電層14と、その導電層14の表面14aを被覆する絶縁層16とを備える。導電粒子10の形状は特に限定されず、例えばほぼ球状であってもよい。このような導電粒子10は、回路接続材料用の導電粒子として好適に用いられる。
【0038】
本明細書における「導電粒子」は、その粒子の状態では導電性を示さなくてもよく、表面の絶縁層が溶融または軟化することにより導電性を示すものであればよい。
【0039】
導電層14は、融点Tの低融点金属を主成分とするものである。コア12は、導電層14を構成する低融点金属の融点Tよりも高い融点T1mまたは軟化点T1sを有する材料を主成分とするものである。
【0040】
コア12の主成分である材料の融点T1m及び軟化点T1sの両方が、低融点金属の融点Tよりも高い温度であることが好ましい。なお、本明細書において、Tは、融点T1mまたは軟化点T1sを示す。コア12の主成分である材料が明確な融点を示さないもの(非晶質など)である場合、上記(1)式におけるTは軟化点を示す。また、絶縁層16を構成する樹脂組成物は、融点Tよりも低い軟化点Tを有する。
【0041】
導電粒子10は、導電層14の表面14aが絶縁層16で被覆されているので、導電粒子10が酸化雰囲気に曝されても、その表面14aに不動態膜が形成されることが十分に抑制されている。このため、対向する電極同士を接続する際の加熱時に、絶縁層16の軟化、流動による導電層14の露出に続いて、低融点金属の融点T付近で導電層14が溶融する。このとき、導電層14は層内部だけでなくその表面14aも容易に溶融するため、導電粒子10を電極に十分に密着させることが可能となる。
【0042】
導電粒子10の導電層14は、電気導電性を示すものである。導電層14の主成分である低融点金属は、130〜250℃の融点Tを有するものが好ましい。このような低融点金属としては、例えば各種の共晶合金、非共晶低融点合金または単独金属が挙げられる。具体的には、Pb82.6−Cd17.4(融点248℃)、Pb85−Au15(融点215℃)、Bi97−Na3(融点218℃)、Bi57−Sn43(融点139℃)、Sn(融点232℃)、In97.2−Zn2.8(融点144℃)、In(融点157℃)などが挙げられる。
【0043】
低融点金属の融点Tは、150〜200℃であることがより好ましい。これによって、後述する絶縁層の樹脂組成物及び接着剤組成物の材質の選択の自由度を高めつつ、対向配置された回路部材の接続時の加熱温度を低くすることができる。したがって、接続構造体の熱的影響を低減することができる。
【0044】
導電層14の厚さは、0.1〜1μmであることが好ましい。導電層14の厚さが0.1μm以上であると、例えば導電層14の溶融した低融点金属と電極などの導電部材との接合面積または接触面積を一層拡大することができる傾向にある。一方、導電層14の厚さが1μm以下であると、例えば、導電粒子10を用いて狭ピッチの電極同士を接続しても、同一基板上で隣接する電極間の短絡を一層確実に抑制できる傾向にある。
【0045】
導電層14の厚さが0.1μm未満であると、導電粒子10と接続すべき電極との接触面積が小さいため、接続抵抗を十分低減する効果が得られ難い傾向がある。一方、導電層14の厚さが1μmを超える場合、例えば、この導電粒子10を用いて狭ピッチの電極同士を接続すると、導電層が加圧方向と直交する方向に過剰に広がり易いので、同一基板上で隣接する電極間の短絡が増加する傾向にある。
【0046】
なお、導電粒子10を構成する各層の厚さは、導電粒子10の中心を通る平面で切断したときの各層の平均厚さとして求めることができる。この厚みは、例えば走査型電子顕微鏡等によって確認することができる。
【0047】
コア12は、導電層14の主成分である低融点金属の融点Tよりも高い融点T1m及び/又は軟化点T1sを有する材料を主成分とする。T1mとしては、T+20〜T+2000℃であることが好ましい。また、T1sとしては、T+20〜T+2000℃であることが好ましい。コア12の材料としては、絶縁性材料であっても、導電性材料であってもよく、絶縁性材料及び導電性材料の両方を含むものであってもよい。絶縁性材料としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)及びシリコーンゴム等の各種ゴム、ポリスチレン及びエポキシ樹脂等の各種プラスチック、デンプン及びセルロース等の天然物が挙げられる。コア12の主成分として絶縁性材料を用いることにより、導電粒子10と接着剤組成物52との密度差を小さくすることができる。これによって、接着剤組成物52中への導電粒子10の分散性を一層良好にすることができる。
【0048】
一方、コア12の主成分として導電性材料を用いることにより、コア12も電流を通すことが可能となるので、導電粒子10全体の導電性を一層向上することができる。好ましい導電性材料としては、例えばAu、Ag、Ni、Cu、Co、半田等の金属やカーボン等が挙げられる。融点T1m及び軟化点T1sの少なくとも一方が上記低融点金属の融点Tよりも高い非導電性のガラス、セラミックス、プラスチック等を、上記金属等の金属層で被覆したものをコア12として使用することもできる。このとき、非導電性の材料を被覆する金属層の厚さは、十分な導電性を得る観点から0.1μm以上であることが好ましい。
【0049】
なお、本明細書における「軟化点」とは、ビカット軟化温度又はガラス転移温度をいう。ビカット軟化温度は、加熱浴槽中に規定された寸法の試験片を据え、中央部に一定の断面積の端面を押し当てた状態で浴槽の温度を上昇させ、試験片に端面が一定の深さまで食い込んだ時の温度である(JIS K7206)。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって測定した損失正接(tanδ)のピーク温度である。
【0050】
コア12の形状は、導電粒子10を構成できない形状でなければ特に限定されず、例えばほぼ球状であってもよい。
【0051】
絶縁層16を構成する樹脂組成物は、導電層14を構成する低融点金属の融点Tよりも低い軟化点Tを有するものであれば特に限定されない。このような樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂及び/又はホットメルト性樹脂を含有することが好ましい。また、熱軟化性又は融点を有するホットメルト接着剤のベースポリマー又はエラストマー類も好ましく用いることができる。このような樹脂として、例えば、ポリエチレン、エチレン共重合体ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリル酸エステル系ゴム、ポリビニルアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン、フェノキシ、固形エポキシ樹脂、ポリウレタン等が挙げられ、その他、テルペン樹脂やロジン等の天然及び合成樹脂、EDTA等のキレート剤も挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
絶縁層16の樹脂組成物の軟化点Tは、130〜250℃であることが好ましい。
【0053】
絶縁層16の厚さは、0.01〜0.5μmであることが好ましい。絶縁層16の厚さが0.01μm以上であると、加圧方向(電極が対向する方向)と直交する方向に配置される複数の導電粒子10間において、導電層14の溶融した低融点金属同士の接合を一層抑制することができる。一方、絶縁層16の厚さが0.5μm以下であると、導電粒子10の絶縁層16が押圧される際に、小さい圧力でも導電粒子10の押圧された部分に導電層14の表面14aが露出されるので、対向する電極間の導電性を一層向上させることができる。
【0054】
(接着剤組成物)
本実施形態の回路接続材料50に含有される接着剤組成物52は、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する。
【0055】
ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物である。ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを組み合わせて使用してもよい。
【0056】
(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。上記(メタ)アクリレート化合物をラジカル重合させることで、(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0057】
マレイミド化合物は、マレイミド基を少なくとも1個有する化合物である。マレイミド化合物としては、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
シトラコンイミド化合物は、シトラコンイミド基を少なくとも1個有する化合物である。シトラコンイミド化合物としては、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
ナジイミド化合物は、ナジイミド基を少なくとも1個有する化合物である。ナジイミド化合物としては、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
また、ラジカル重合性化合物としては、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物を使用してもよい。
【0061】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、金属等の無機物質に対する接着剤組成物の接着力を向上させる観点から、好ましく用いられる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物の使用量は、接着剤組成物52の全固形分100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物として得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(リン酸エステルジメタクリレート)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物とリン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。このような組合せを用いた場合、(メタ)アクリレート化合物、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物をそれぞれ単独で用いた場合に比べて、接着剤組成物の接着強度をより向上させることができる。
【0063】
ラジカル重合開始剤としては、光照射及び/又は加熱によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限はない。かかるラジカル重合開始剤としては、150〜750nmの光照射及び/又は80〜200℃の加熱によりラジカルを発生する化合物が好ましく、具体的には、過酸化物、アゾ化合物等が好ましい。これらは、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等を考慮し適宜選択される。
【0064】
過酸化物としては、高反応性及び保存安定性の点から、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物のうち、半減期10時間の温度(すなわち、半減期が10時間となる温度)が40℃以上、かつ半減期1分間の温度(すなわち、半減期が1分間となる温度)が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が50℃以上、かつ半減期1分間の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。なお、接続時間を10秒間以下とする場合、一層十分な反応率を得る観点から、ラジカル重合開始剤の配合量は、接着剤組成物52の固形分全量を基準として、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%が特に好ましい。
【0065】
有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。中でも、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドは、塩素イオンや有機酸の含有量が、通常5000ppm以下に低減されている。このため、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の電極の腐食を抑えることができるので特に好ましく用いられる。
【0066】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0067】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0068】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0069】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0070】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0071】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0072】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0073】
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、さらに分解促進剤、抑制剤等を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
また、これらのラジカル重合開始剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるので、好ましく用いることができる。また、加熱又は光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤のほかに、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。なお、回路部材の電極の腐食を抑えるため、ラジカル重合開始剤中に含有される塩素イオンや有機酸の濃度は5000ppm以下であることが好ましい。さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないラジカル重合開始剤がより好ましい。また、接着剤組成物の硬化後の安定性が向上することから、室温及び常圧下で24時間の開放放置後に20質量%以上の質量保持率を有することが好ましい。
【0075】
また、必要に応じて、接着剤組成物52は、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤を硬化性が損なわれない範囲で含有してもよい。
【0076】
接着剤組成物52は、ラジカル重合性化合物以外の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
また、上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、通常のエポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものが使用できる。具体的には、アミン類、フェノール類、酸無水物類、イミダゾール類、ジシアンジアミド等が挙げられる。さらに、硬化促進剤として通常使用されている3級アミン類、有機リン系化合物を適宜使用してもよい。
【0078】
また、エポキシ樹脂を反応させる方法として、上記硬化剤を使用する以外に、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等を使用して、カチオン重合させてもよい。
【0079】
接着剤組成物52は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、エチレン共重合体ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリル酸エステル系ゴム、ポリビニルアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂の種類や配合割合の調整によって、接着剤組成物52の軟化点Tを調整することができる。
【0080】
接着剤組成物52は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和性を付与するため、高分子化合物を含有してもよい。高分子化合物としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0081】
接着剤組成物52に含まれる高分子化合物は、10,000〜10,000,000の分子量を有するものが好ましい。また、高分子化合物は、回路接続材料の耐熱性を向上させる観点から、ラジカル重合性の官能基で変成されていることが好ましい。さらに、これらの高分子化合物は、カルボキシル基を含んでいてもよい。接着剤組成物52における上記高分子化合物の含有量は、接着剤組成物52の固形分全量を基準として、2〜80質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましく、10〜60質量%であることがさらに好ましい。高分子化合物の含有量が、2質量%以上であると、応力緩和や接着力を一層向上することができる傾向にある。一方、高分子化合物の含有量が80質量%以下であると接着剤組成物の流動性の低下を一層十分に抑制することができる傾向にある。
【0082】
接着剤組成物52は、適宜充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤を含んでいてもよい。
【0083】
以上説明した接着剤組成物52においては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜30質量部含有することが好ましく、1.0〜10質量部含有することがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量を0.5質量部以上とすると、硬化反応が十分に進行し、硬化が一層十分になる傾向にある。一方、ラジカル重合開始剤の含有量を30質量部以下とすると、接着剤組成物が一層優れる保存安定性を有する傾向にある。
【0084】
なお、本実施形態において、接着剤組成物52の軟化点Tは、上記式(2)を充足することが好ましい。接着剤組成物52の軟化点Tが、導電粒子10の絶縁層16の軟化点Tよりも低ければ、対向配置された回路部材同士を接続する際に、接着剤組成物が容易に流動するため、対向する電極同士を容易に電気的に接続させることができる。接着剤組成物52の軟化点Tとしては、接続時における接着剤組成物52の良好な流動性と回路接続材料の形態安定性を両立する観点から、130〜150℃であることが好ましい。
【0085】
(回路部材の接続構造体)
図3は、本発明の接続構造体の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。図3に示される接続構造体24は、第1の回路基板21の主面21a上に複数の第1の電極22が形成された第1の回路部材20と、第2の回路基板31の主面31a上に複数の第2の電極32が形成された第2の回路部材30と、回路基板21の主面21aと回路基板31の主面31aとの間に設けられた回路接続部26とを備える。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。また、回路基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0086】
回路部材20及び30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられるITO等で電極が形成されたガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用することができる。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0087】
回路接続部26は、回路電極22、32を対向させた状態で回路部材20と回路部材30とを接続しており、上述の回路接続材料の硬化物を含有する。すなわち、回路接続部26は、コア12と、導電層14を構成していた、低融点金属を主成分とする材料からなる低融点金属部114と、絶縁層16を構成していた樹脂組成物の硬化物からなる絶縁樹脂部116と、接着剤組成物の硬化物からなる絶縁部11と、導電粒子10とを備える。
【0088】
第1の電極22と第2の電極32とは、低融点金属部114を介して電気的及び機械的に接続されている。低融点金属部114は、導電層14が溶融した後に電極22及び電極32に接合して固化したものである。このため、低融点金属部114は、電極22及び電極32と密着している。よって、電極22と電極32との間の接続抵抗が十分に低減されると共に、電極22と電極32とを強固に固定することができる。その結果、電極22と電極32との間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
【0089】
また、絶縁樹脂部116によって、電極22と電極32とをより強固に固定することができる。さらに、絶縁樹脂部116は、隣り合う低融点金属部114同士が導通することを抑制することができる。よって、隣り合う第1の電極22間(第2の電極32間)の短絡を十分抑制することができる。
【0090】
このような接続構造体24では、対向する電極22と電極32との間の接続抵抗を十分に低減できると共に、隣り合う第1の電極22間の絶縁性及び隣り合う第2の電極32間の絶縁性を十分に維持することができる。なお、対向する電極22と電極32とは、回路接続部26によって強固に固定される。
【0091】
(接続構造体の製造方法)
次に、図面を参照しつつ上述した回路部材の接続構造体24の製造方法について説明する。図4は、本発明の接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す工程断面図である。図4(a)〜(c)は、回路部材の接続構造の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【0092】
まず、上述した回路部材20及びフィルム状の回路接続材料50を用意する(図4(a)参照)。次に、フィルム状の回路接続材料50を回路部材20の電極22が形成されている面(主面21a)上に載置する。なお、例えばフィルム状の回路接続材料50が支持体(図示せず)上に形成されている場合には、フィルム状の回路接続材料50側を回路部材20に向けるようにして、回路部材20上に載置する。このとき、回路接続材料50はフィルム状であるので取り扱いが容易である。よって、回路部材20と回路部材30との間に回路接続材料50を容易に介在させることができ、回路部材20と回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0093】
そして、回路接続材料50を図4(a)の矢印Aの方向に、回路部材20を矢印Bの方向にそれぞれ加圧して、回路接続材料50を回路部材20に仮接続する(図4(b)参照)。この仮接続は、加熱しながら加圧して行ってもよい。但し、加熱温度は回路接続材料50中の接着剤組成物が硬化しない温度、例えばラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。
【0094】
続いて、図4(c)に示すように、回路部材30を、電極32が回路部材20に向くようにして回路接続材料50上に載置する。なお、例えば回路接続材料50が回路部材20とは反対側に支持体(図示せず)を有している場合には、支持体を剥離してから回路部材30を回路接続材料50上に載せる。
【0095】
そして、回路接続材料50を、例えば加熱ヘッド等により加熱しながら、図4(c)の矢印A及び矢印Bの方向に回路部材20、30を加圧して本接続を行う。本接続時の加熱温度は、導電粒子10の導電層14の主成分である低融点金属が溶融可能な温度であり、かつラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。本接続時の条件としては、加熱温度130〜250℃、接続時間1〜60秒間とすることができる。これにより、まず、軟化点T付近の温度に到達すると、接着剤組成物52が流動する。その後、軟化点T付近において、導電粒子10の絶縁層16が軟化して流動性を示すようになる。回路部材20,30がA方向及びB方向にそれぞれ加圧されることによって、接着剤組成物52、絶縁層16の順に流動を開始し、導電粒子の表面に低融点金属を主成分とする導電層14が露出する。すなわち、絶縁層16が軟化すると共に第1及び第2の電極22,32によって押圧されることで絶縁層16が流動し、導電粒子10の押圧された部分に選択的に導電層14の表面14a(図2)が露出する。
【0096】
更に温度が上昇すると、低融点金属の融点T付近で導電層14が溶融する。この溶融により、低融点金属を介して第1の電極22と第2の電極32との接合が行われる。なお、かかる接合は、場合により第1の電極22と第2の電極32との間にある複数の導電粒子の低融点金属同士の接合によって行われる。また、これと同時に導電層14は、電極22及び電極32によって押圧されることで流動し、導電粒子10の押圧された部分に選択的にコア12の表面12a(図2)が露出する。これによって、電極22,32と導電粒子のコア12とが直接接触する。つまり、第1の電極22と第2の電極32とは、低融点金属部114及びコア12を介して接続される。
【0097】
また、接着剤組成物52においては、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。こうして、回路接続材料50の接着剤組成物が硬化処理され、本接続が行われる。その結果、図3に示すような回路部材の接続構造体24が得られる。なお、本接続の条件は、接着剤組成物の組成、回路部材の材質、接続構造体の用途等に応じて、適宜選択することができる。また、必要に応じて本接続後に後硬化を行ってもよい。
【0098】
導電粒子10はコア12を備えているため、第1の電極22と第2の電極32との間で完全には押し潰され難い。よって、溶融した低融点金属同士が加圧方向と直交する方向に広がることを抑制できるので、その方向における複数の導電粒子10間の接合を防止することができる。さらには、導電層14の表面14a(図2)における上述の露出した部分以外の部分は、絶縁層16で被覆されているので、加圧方向と直交する方向における複数の導電粒子10間の電気的導通を防止することができる。
【0099】
上記のようにして、回路部材の接続構造体24を製造すると、対向する第1の電極22と第2の電極32との間の接続抵抗を十分に低減できると共に、同一基板上で隣り合う電極22間、電極32間の絶縁性を十分に向上することができる。
【0100】
上述の本接続によって得られる接続構造体では、電極22と電極32との間の距離が十分に小さくされた状態で、接着剤組成物が硬化した絶縁部11を有する(図3)。また、導電層14は、溶融して電極22及び電極32に接合した後に固化するので、回路部材20と回路部材30とが回路接続部26を介して強固に接続される。得られる回路部材の接続構造24において、回路接続部26は上記回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20及び第2の回路部材30に対する回路接続部26の接着強度は十分に高い。
【0101】
なお、導電層14は低融点金属を主成分とするため、回路部材の接続構造24を製造する際のプロセス温度を低くすることができる。よって、回路部材の接続構造24を構成する部品は耐熱性をそれ程要求されないので、当該部品の材料選択の幅を十分に広げることが可能となる。
【0102】
(接続構造体の変形例)
図5は、本発明の接続構造体の一例である半導体装置を模式的に示す断面図である。半導体装置100は、半導体素子80と、半導体素子80を支持する基板60とを備える。半導体素子80及び基板60の間には、これらを電気的及び機械的に接続する半導体素子接続部材40(回路接続部)が設けられている。半導体素子接続部材40は、基板60の主面60a上に設けられている。半導体素子80は、半導体素子接続部材40上に設けられている。
【0103】
基板60上には複数の回路パターン61が形成されている。回路パターン61は半導体素子80に対向配置されている。半導体素子接続部材40は、半導体素子80と基板60との間に設けられており、これらを電気的及び機械的に接続している。
【0104】
半導体素子80の構成材料としては、特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウム等のIV族半導体材料、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsP等のIII−V族化合物半導体材料、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTe等のII−VI族化合物半導体材料、CuInSe(CIS)等の種々の材料が挙げられる。
【0105】
半導体素子接続部材40は、上記実施形態の回路接続材料の硬化物で構成されている。半導体素子接続部材40は、回路接続部26と同様に、例えば、コア12と、導電層14を構成する低融点金属を主成分とする材料からなる低融点金属部114と、絶縁層16を構成する樹脂組成物の硬化物からなる絶縁樹脂部116と、接着剤組成物の硬化物である絶縁部11とを備える。
【0106】
半導体装置100においては、半導体素子80と回路パターン61とが、低融点金属部114を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子80及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子80及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体素子80の有する機能を十分に発揮することができる。また、半導体素子接続部材40は優れた異方導電性を有するので、隣り合う回路パターン61間の絶縁性が十分に維持される。よって、隣り合う回路パターン61間の短絡の発生を十分に抑制することができる。
【0107】
半導体素子接続部材40では、低融点金属部114と半導体素子80及び回路パターン61とが金属接合していることから、半導体素子80及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、この状態を長期間にわたって持続させることができる。したがって、半導体素子80及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0109】
例えば、フィルム状の回路接続材料50は、硬化させたときに接着剤組成物のTg(ガラス転移温度)が5℃以上異なる2種以上の層からなる多層構造(図示せず)としてもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記に示す各軟化点(T1s,T,T)は、セイコーインスツルメンツ株式会社製の熱機械的分析装置TMA/SS6000を用いて、圧縮モードあるいは引張モードで、昇温速度5℃/minで測定したガラス転移温度である。
【0111】
(実施例1)
(1)導電粒子の作製
<前処理>
コニベックスCタイプ(球状フェノール樹脂、平均粒径:5μm、ユニチカ(株)製、軟化点T1s:180℃)をメチルアルコール中で強制的に撹拌して、脱脂および粗化を兼ねた前処理を行った。その後、濾過によりメチルアルコールを分離して、前処理した高分子核材(コア)を得た。
【0112】
<活性化>
得られた高分子核材を、サーキットプレップ3316(PdCl+HCl+SnCl系の活性化処理液、日本エレクトロプレーティングエンジニアーズ(株)製、商品名)中に分散させ、25℃で20分間撹拌して活性化処理を行った。続いて、水洗及び濾過して表面が活性化された高分子核体を得た。
【0113】
<無電解Niめっき>
得られた高分子核体をブルーシューマ(無電解Niめっき液、浴能力300μdm/l、日本カニゼン(株)製、商品名)液中に浸漬して、90℃で30分間強制撹拌した。その後、水洗して、高分子核体がニッケルめっきで被覆されたNi被覆粒子を得た。
【0114】
<無電解Auめっき>
Ni被覆粒子の表面に、Auの置換めっきを行った。めっき液として、エレクトロレスプレップ(無電解Auめっき液、日本エレクトロプレーティングエンジニアーズ(株)製、商品名)を用い、90℃で30分間のめっき処理を行った。その後、水でよく洗浄し、90℃で2時間の乾燥を行ってNi−Au被覆粒子を得た。このNi−Au被覆粒子をコアとして用いた。Ni−Au被覆粒子は、Ni0.3μm/Au0.05μmの金属薄層を有していた。Niめっき及びAuめっきの厚みは、粒子断面の走査型電子顕微鏡画像から算出した。なお、当該金属箔層は、1000℃以上の融点を有する。
【0115】
<はんだめっき>
得られたNi−Au被覆粒子の表面に、バレルめっき装置を用いて共晶はんだめっき(43%Sn−57%Bi、溶融温度(T)139℃)を施して、SnBi被覆粒子を得た。得られたSnBi被覆粒子の切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、はんだめっき層の厚みは3μmであった。
【0116】
<絶縁層の形成>
得られたSnBi被覆粒子の表面に、以下の通りにして絶縁層を形成して導電粒子を作製した。絶縁層の材料として、パラプレンP−25M(熱可塑性ポリウレタン樹脂、軟化点T:130℃、日本エラストラン(株)製、商品名)を1質量%含有するジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調製した。この溶液に、SnBi被覆粒子を添加して撹拌した。その後、スプレードライヤ(ヤマト科学(株)製、商品名:GA−32型)を用いて100℃で10分間噴霧乾燥を行い、導電粒子を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、この導電粒子の絶縁層の平均厚みは約1μmであった。
【0117】
(2)回路接続材料の作製
以下の手順でフィルム状の回路接続材料を作製した。まず、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名:PKHC、平均分子量:45,000)50gを、質量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂分散液を準備した。
【0118】
ラジカル重合性化合物として、ヒドロキシエチルグリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:80MFA)、及びリン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:P−2M)を準備した。
【0119】
ラジカル重合開始剤として、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(日本油脂株式会社製、商品名:パーロイルOPP)を準備した。
【0120】
上記の通り準備した各材料を、固形分に換算して下記の質量比で配合し、さらに、上述の通り作製した導電粒子を添加して分散させて、接着液
を得た。なお、導電粒子の添加量は、得られる回路接続材料全体に対して3質量%になるようにした。
・PKHC:50
・80MFA:50
・P−2M:10
・パーロイルOPP:5
【0121】
次に、得られた接着液を、厚さ80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間の熱風乾燥により、厚さが20μmのフィルム状の回路接続材料を得た。得られたフィルム状の回路接続材料は、室温で十分な柔軟性を示した。
【0122】
(3)接続構造体の作製
次に、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚さ8μmのAuめっき回路を有するフレキシブル基板(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名:COF TEG_50A)と、ピッチ50μmのAuバンプ(バンプサイズ30μm×100μm)を有する半導体素子(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名:JTEG Phase6_50)とを準備した。フレキシブル基板と半導体素子との間に、上述の通り作製したフィルム状の回路接続材料(未処理、幅2mm)を配置し、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて160℃、3MPaで15秒間の加熱及び加圧をおこなった。なお、加圧はフレキシブル基板と半導体素子とが対向する方向に行った。こうして回路部材の接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を作製した。
【0123】
(実施例2)
ピッチ130μmのAuバンプ(バンプサイズ:70μm×70μm)を有する半導体素子(日立超LSIシステムズ製、商品名:JTEG Phase0−GB)と、ピッチ130μmのAuめっきパッドを有するFR−4基板(日立超LSIシステムズ製、商品名:JKIT TypeII)を準備した。そして、FR−4基板と半導体素子との間に実施例1と同様にして作製したフィルム状の回路接続材料(未処理、2.5mm×2.5mm)を配置し、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて160℃、3MPaで15秒間の加熱及び加圧を行った。こうして回路部材の接続構造体(半導体素子/FR−4基板の接続構造体)を作製した。
【0124】
(比較例1)
はんだめっきを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして導電粒子を作製した。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、この導電粒子の絶縁層の平均厚みは実施例1と同じ約1μmであった。そして、当該導電粒子を用いて実施例1と同様にして、回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を得た。
【0125】
(比較例2)
導電粒子として、比較例1で作製した導電粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/FR−4基板の接続構造体)を得た。
【0126】
(比較例3)
絶縁層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして導電粒子を作製した。実施例1と同様にして、回路接続材料を作製し、接続構造体(半導体素子/フレキシブル基板の接続構造体)を得た。
【0127】
<接続抵抗の測定>
上記各実施例及び各比較例で作製した接続構造体の対向する回路部材間の接続抵抗を測定した。具体的には、それぞれの接続構造体の全電極をデイジーチェインで結んだ回路の接続抵抗を、ADVANTEST製DIGITAL MULTIMETER R6871Eを用いて測定した。このとき、測定電流は1mAとした。測定結果は、表1に示す通りであった。導電粒子内部に低融点金属層を有する回路接続材料を用いた場合(実施例1,2)の方が、低融点金属層を有しない、高融点金属(Au,Ni)の接触のみによって導通を確保している回路接続材料を用いた場合(比較例1,2)よりも、低い接続抵抗を示した。
【0128】
<耐温度サイクル寿命>
上記各実施例及び各比較例で作製した接続構造体の耐温度サイクル寿命を評価した。測定における温度範囲は下限−40℃、上限125℃とし、下限及び上限温度での保持時間を15分間とした。常温から温度上限まで加熱して温度下限まで冷却し、その後常温に戻す一連の工程を1サイクルとし、かかるサイクルを繰り返し行って耐温度サイクル性を評価した。評価は、100サイクル毎に温度サイクル試験装置から接続構造体を取り出して接続抵抗を測定し、オープン不良が発生するまでのサイクル数を測定することにより行った。
【0129】
測定結果は表1に示す通りであった。導電粒子内部に低融点金属層を有する回路接続材料を用いた接続構造体(実施例1及び2)の方が、低融点金属層を持たず高融点金属(Au,Ni)の接触のみによって導通を確保している回路接続材料(比較例1及び2)よりも、耐温度サイクル寿命が長いことが確認できた。また、絶縁層を持たない導電粒子を用いた場合(比較例3)は、接続構造体を作製するときに、隣接する導電粒子同士が融着し、さらに、隣り合う電極同士が導通して短絡(ショート)が発生した。このため、耐温度サイクル性を評価することができなかった。
【0130】
【表1】

【符号の説明】
【0131】
10…導電粒子、11…絶縁部、12…コア、12a…コアの表面、14…導電層、14a…導電層の表面、16…絶縁層、20…回路部材(第1の回路部材)、21…回路基板(第1の回路基板)、21a,31a,60a…主面、22…電極(第1の電極)、24…接続構造体、26…回路接続部、30…回路部材(第2の回路部材)、31…回路基板(第2の回路基板)、32…電極(第2の電極)、50…回路接続材料、52…接着剤組成物、60…基板、61…回路パターン、40…半導体素子接続部、80…半導体素子、100…半導体装置、114…低融点金属部、116…絶縁樹脂部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点または軟化点がT(℃)の材料を主成分とするコアと、該コアの表面を被覆する、融点がT(℃)の低融点金属を主成分とする導電層と、該導電層の表面を被覆する、軟化点がT(℃)の樹脂組成物からなる絶縁層と、を備えており、
前記T、T及びTが下記式(1)を満たし、
前記Tが130〜250℃である導電粒子。
>T>T (1)
【請求項2】
前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する、請求項1記載の導電粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂である、請求項2に記載の導電粒子。
【請求項4】
互いに対向する第1の電極と第2の電極とを接続するための回路接続材料であって、
接着剤組成物と、該接着剤組成物中に分散されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電粒子と、を有する回路接続材料。
【請求項5】
前記導電粒子の含有量が1〜10質量%である請求項4に記載の回路接続材料。
【請求項6】
形状がフィルム状である請求項4又は5に記載の回路接続材料。
【請求項7】
第1の基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、
第2の基板の主面上に第2の回路電極が形成され、前記第2の回路電極と前記第1の回路電極とが対向するように配置された第2の回路部材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられ、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを接続する回路接続部と、を備える接続構造体であって、
前記回路接続部が、請求項4〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料の硬化物を含み、前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とが前記導電粒子の前記導電層に含まれる前記低融点金属を介して電気的に接続されている接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30485(P2013−30485A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184063(P2012−184063)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2008−231035(P2008−231035)の分割
【原出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】