説明

導電膜の製造方法及び透明導電性フイルム

【課題】電磁波を遮蔽する上で有効な導電膜の製造において、現像後のフイルムの表面抵抗を低減させる。また、透過率が高く、且つ表面抵抗率が低い透明導電性フイルムを提供する。また、上記の高い光透過率と低い表面抵抗が両立する透明導電性フイルムを低コストで大量に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】透明導電性フイルム10は、支持体12上に圧密処理された導電性金属からなる細線構造部14と透明導電性膜16とを有する。この製造方法は、支持体12上に銀塩を含有する銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成する金属銀形成工程と、金属銀部を圧密処理する圧密処理工程とを有する。そして、圧密処理をカレンダーロールにより行う。この場合、カレンダーロールによる圧密処理を線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜の製造方法及び透明導電性フイルムに関し、例えばCRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)等のディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器及びプリント配線板等に利用され、電磁波を遮蔽する上で有効な導電膜の製造方法及び透明導電性フイルムに関する。
【0002】
また、本発明は、光透過性が高く、安価で表面抵抗が極めて低く、大サイズに適した透明導電性フイルムを提供する。本発明の透明導電性フイルムは、透明面電極フイルムとして用いられ、特にエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられ高輝度、高耐久化を実現できる。
【背景技術】
【0003】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro−Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作や障害の原因になるほか、これらの装置のオペレータにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子電気機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0004】
上記EMIの対策には電磁波を遮蔽する必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよい。例えば、筐体を金属体又は高導電体にする方法や、回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する方法や、ケーブルを金属箔で覆う方法等がある。しかし、CRTやPDPではオペレータが画面に表示される文字等を認識する必要があるため、ディスプレイにおける透明性が要求される。このような材料として、下記特許文献1及び2に開示の透光性電磁波シールド膜が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2004−221565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2では、銀塩含有層を有する感光フイルムを露光し、現像することによって、金属銀部が形成された透光性電磁波シールド膜を作製するようにしている。
【0007】
しかしながら、現在においては、現像後のフイルムの表面抵抗をさらに低減させることが求められている。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、現像後のフイルムの表面抵抗を低減させることができる導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の目的は、表面抵抗が低く、電磁波シールド膜やプリント配線基板に用いて好適な透明導電性フイルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、導電膜の上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、現像処理により形成された金属銀部に圧密処理を行うことによって、導電性の顕著な増加が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
[1] すなわち、第1の本発明に係る導電膜の製造方法は、支持体上に銀塩を含有する銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成する金属銀形成工程と、前記金属銀部を圧密処理する圧密処理工程とを有することを特徴とする。
【0012】
これにより、現像後の感光材料の表面抵抗を低減させることができ、電磁波シールド膜やプリント配線基板に用いて好適な導電膜を得ることができる。
【0013】
[2] 第1の本発明において、前記圧密処理をカレンダーロールにより行うことを特徴とする。
【0014】
[3] 第1の本発明において、前記圧密処理を線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上で行うことを特徴とする。本発明では、銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いた導電膜の製造方法において、線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上という高い線圧で圧密処理を行うことで、導電膜の表面抵抗を十分に低減できる。このような高い線圧で圧密処理を行う場合、金属銀部が細線状(特に、線幅が25μm以下)に形成されていると、その金属銀部の線幅が広がり所望のパターンを形成することが難しくなると考えられる。しかし、圧密処理の対象が銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料である場合には、線幅の広がりが小さく、所望のパターンの金属銀部を形成することができる。すなわち、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができることから不良品の発生を抑制でき、導電膜の生産性をさらに向上させることができる。
【0015】
[4] また、前記圧密処理を線圧力2960N/cm(300kgf/cm)以上で行うことを特徴とする。
【0016】
[5] また、前記圧密処理を線圧力6860N/cm(700kgf/cm)以下で行うことを特徴とする。
【0017】
上記線圧力で圧密処理を行う場合、前記圧密処理をカレンダーロールで行うことが好ましく、一対の金属ロール、又は、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせで行われる。このとき、ロール間の面圧力は600kgf/cm2以上に設定することが好ましく、800kgf/cm2以上に設定することがより好ましく、900kgf/cm2以上に設定することがさらに好ましい。また、このときの上限値は、2000kgf/cm2以下に設定することが好ましい。
【0018】
[6] 第1の本発明において、前記金属銀形成工程は、前記金属銀部及び光透過性部を形成することを特徴とする。このとき、導電膜は、透光性電磁波シールド膜として好適である。
【0019】
[7] 第1の本発明において、前記金属銀形成工程は、前記金属銀部及び絶縁性部を形成することを特徴とする。
【0020】
[8] 第1の本発明において、前記圧密処理後の前記金属銀部が銀及び非導電性の高分子からなり、Ag/非導電性高分子の体積比が2/1以上であることを特徴とする。
【0021】
[9] 第1の本発明において、前記圧密処理後の前記金属銀部が銀及び非導電性の高分子からなり、Ag/非導電性高分子の体積比が3/1以上であることを特徴とする。
【0022】
[10] 第1の本発明において、前記非導電性の高分子は、体積で50%以上がゼラチンであることを特徴とする。
【0023】
[11] 第1の本発明において、前記圧密処理工程の前段に、さらに還元剤水溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする。
【0024】
[12] 第1の本発明において、前記圧密処理工程の後段に、さらに前記金属銀部の表面を黒化処理液で黒化処理する黒化処理工程を有することを特徴とする。
【0025】
[13] この場合、前記黒化処理液が、ニッケル、亜鉛、錫のいずれかを含むことを特徴とする。
【0026】
[14] 第1の本発明において、前記銀塩含有層におけるAg/バインダの体積比率が1/2以上であることを特徴とする。銀塩含有層におけるAgを増加させることで、導電膜の表面抵抗をさらに低減でき、平滑化処理による効果をさらに向上させることができる。
【0027】
[15] 第1の本発明において、前記圧密処理工程の前段又は後段に、さらに前記金属銀部の表面にめっき層を形成するめっき工程を有することを特徴とする。
【0028】
[16] 第1の本発明において、前記銀塩含有層におけるAg/バインダの体積比率が1/1以上であることを特徴とする。
【0029】
[17] 第1の本発明において、前記銀塩含有層におけるAg/バインダの体積比率が2/1以上であることを特徴とする。
【0030】
[18] 第1の本発明において、前記銀塩含有層が前記支持体の両面に設けられていることを特徴とする。
【0031】
[19] 第1の本発明において、前記支持体の膜厚が8〜200μmであることを特徴とする。
【0032】
[20] 第1の本発明において、前記支持体が樹脂フイルムであることを特徴とする。
【0033】
[21] この場合、前記樹脂フイルムがポリエチレンテレフタレートフイルム又はポリイミドフイルムであることを特徴とする。
【0034】
[22] 第1の本発明において、製造される前記導電膜が電磁波シールド性を有することを特徴とする。
【0035】
[23] 次に、上述の製造方法にて製造される導電膜は、支持体上に、密度8.0g/cm3〜10.5g/cm3である銀を含む金属銀部を有することを特徴とする。
【0036】
[24] 前記導電膜は、前記金属銀部の厚みが0.5μ〜5μmであることを特徴とする。
【0037】
[25] 前記導電膜は、前記金属銀部が細線パターンであり、その線幅が0.1μm〜18μmであることを特徴とする。
【0038】
[26] 前記導電膜は電磁波シールド膜であることを特徴とする。
【0039】
[27] 前記導電膜はプリント配線基板であることを特徴とする。
【0040】
[28] 次に、第2の本発明に係る透明導電性フイルムは、支持体上に圧密処理された導電性金属部からなる細線構造部と透明導電性膜とを有することを特徴とする。
【0041】
[29] 第2の本発明において、前記透明導電性膜が導電性材料を含むことを特徴とする。
【0042】
[30] 第2の本発明において、前記導電性材料が透明導電性有機ポリマー、導電性無機又は有機水溶性塩及び導電性無機微粒子から選ばれることを特徴とする。
【0043】
[31] 第2の本発明において、前記細線構造部がない場合の透明導電性膜単独の表面抵抗が、102オーム/sq〜108オーム/sqであり、透明導電性フイルムの表面抵抗が0.1オーム/sq以上1000オーム/sq以下であることを特徴とする。
【0044】
[32] 第2の本発明において、前記細線構造部の厚み(高さ)が、100μm以下であることを特徴とする。
【0045】
[33] 第2の本発明において、前記透明導電性フイルムの光の透過率が、550nmの光に対して70%以上であることを特徴とする。
【0046】
[34] 第2の本発明において、前記細線構造部が、前記支持体上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなることを特徴とする。
【0047】
[35] 第2の本発明において、前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより導電性金属銀部と光透過性部が形成されてなることを特徴とする。
【0048】
[36] 第2の本発明において、前記細線構造部の導電性金属部が銀を含有し、Ag/バインダ体積比が1/4 以上であることを特徴とする。
【0049】
[37] 第2の本発明において、前記透明導電性膜を前記細線構造部の上面及び/又は下面に設けることを特徴とする。
【0050】
[38] 第2の本発明において、前記支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層を有し、該写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光、現像することにより形成された前記細線構造部が、該導電性材料を含有する透明導電性膜と金属銀部と光透過性部からなることを特徴とする。
【0051】
[39] 第2の本発明において、前記細線構造部を形成した後に該細線構造部と前記透明導電性膜とが貼り合わされてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0052】
以上説明したように、本発明に係る導電膜の製造方法によれば、表面抵抗が十分に低減された導電膜を製造することができる。従って、本発明に係る製造方法によって製造された導電膜は、高い導電性,電磁波シールド性及び高い透光性を有する。
【0053】
また、導電膜の金属銀部を細線パターンにすることで、メッシュ状の金属銀部と透光性部を有する透光性電磁波シールド膜を提供することができる。
【0054】
また、本発明によれば、細線状パターンの形成が短工程で可能であり、高い電磁波シールド性と高い透明性とを有し、且つ、メッシュ部が黒色の透光性電磁波シールド膜を安価、大量に製造することが可能な透光性電磁波シールド膜の製造方法を提供することができる。
【0055】
また、本発明によれば、高い導電性を有し、ピンホールの少ないプリント基板を提供できる。
【0056】
また、本発明によれば、細線のパターンに形成可能であり、且つ、環境に対する負荷が小さく、安価に大量生産できるプリント基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に本発明の好ましい態様を記載する。
【0058】
先ず、「導電膜」は、例えばCRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)等のディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器及びプリント配線板等に利用され、電磁波を遮蔽する上で有効な導電膜を示す。
【0059】
「透明導電性フイルム」は、導電膜の1つの具体例であって、透明面電極フイルムとして用いられ、特にエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられ高輝度、高耐久化を実現できるフイルムを示す。
【0060】
本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、図1に示すように、透明性の支持体12と、該支持体12上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部14及び透明導電性膜16とを有する。
【0061】
図1の例では、細線構造部14の厚み(高さ)が、透明導電性膜16の厚み(高さ)よりも大きい例を示しているが、その他、図2及び図3に示すように、細線構造部14の厚み(高さ)が、透明導電性膜16の厚み(高さ)とほぼ同じでもよい。この場合、図2に示すように、細線構造部14の上面を露出させるようにしてもよいし、図3に示すように細線構造部14の上面を透明導電性膜16で被覆するようにしてもよい。
【0062】
あるいは、図4に示すように、支持体12上の全面に透明導電性膜16を形成し、該透明導電性膜16上に細線パターン状の細線構造部14を形成するようにしてもよい。この場合、図5に示すように、厚み(高さ)が細線構造部14の厚み(高さ)よりも大きい保護層18あるいは別の透明導電性膜を形成するようにしてもよい。
【0063】
また、図6に示すように、支持体12上に高抵抗の第1透明導電性膜16aと細線パターン状の細線構造部14を形成し、これら第1透明導電性膜16aと細線構造部14を含む全面に低抵抗の第2透明導電性膜16bあるいは保護層を形成するようにしてもよい。
【0064】
その他、図7に示すように、支持体12上にストライプ状に形成した複数の透明導電性膜16を形成し、各透明導電性膜16の上面中、幅方向端部の近傍に長手方向に沿って細線構造部14をそれぞれ形成するようにしてもよい。図7に示すように、各透明導電性膜16の例えば左側端部(又は右側端部)に細線構造部14を形成するようにしてもよいし、幅方向両端に細線構造部14を形成するようにしてもよい。
【0065】
細線構造部14の細線パターンとしては、例えば図12A及び図12Bに示すように、メッシュ状にしてもよいし、あるいは六角形状を多数並べた形状、三角形状を多数並べた形状、多角形状を多数並べた形状、ストライプ状(格子状)等が挙げられる。もちろん、各細線を直線状のほか波線状(サイン曲線等)にしてもよい。
【0066】
そして、この透明導電性フイルム10を利用して自発光表示装置20を構成する場合は、例えば図8に示すように、上述した本実施の形態に係る透明導電性フイルム10を例えば第1電極部22(例えば陽極)として用い、該第1電極部22上に表示部24を配置することで構成することができる。表示部24としては、第1電極部22の上面(細線構造部14を含む上面)上に積層された例えば発光層26(硫化亜鉛等の無機物やジアミン類等の有機物)と、該発光層26上に配置された第2電極部28(例えば陰極)を有する。本実施の形態に係る自発光表示装置は、画像を表示する用途のほか、照明用途にも使用することができることはもちろんである。
【0067】
本発明に用いる細線構造部の導電材料と開口部に付与する透明導電材料には効果的な発光を可能にするために、抵抗の最適な範囲が存在する。細線構造部では高導電性を活かすために体積抵抗として10-4オーム・cm以下のものを利用することが好ましい。また、開口部に用いる透明導電材料については、本材料による光損失を抑えるために、単独での表面抵抗として1000オーム/sq以上であることが好ましい。以上の範囲での形態により低抵抗で電力損失が少なく、透明性の高い導電膜が実現可能となる。
【0068】
特に、本実施の形態においては、第1電極部22を構成する細線構造部14の体積抵抗が10-4オーム・cm以下であり、同じく第1電極部22を構成する透明導電性膜16の体積抵抗が0.05オーム・cm以上である。
【0069】
また、第1電極部22を構成する細線構造部14の表面抵抗が100オーム/sq以下であり、同じく第1電極部22を構成する透明導電性膜16の表面抵抗が1000オーム/sq以上である。細線構造部14及び透明導電性膜16の表面抵抗は、JIS K6911に記載の測定方法に準じて測定された値である。
【0070】
さらに、後述する屈曲試験を行う前の第1電極部22の表面抵抗をR1、屈曲試験を行った後の第1電極部22の表面抵抗をR2としたとき、
R2/R1<18
を満足する。
【0071】
ここで、屈曲試験は、例えば図11に示すように、基台30に対して回転自在に取り付けられた直径φ=4mmのローラ32に長尺のサンプル34(第1電極部22)を引っ掛け、サンプル34の一方の端部34aを28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程と、サンプル34の他方の端部34bを同じく28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程とを繰り返し行って、サンプル34を100回屈曲させる。
【0072】
上述の条件を満足することによって、本実施の形態に係る自発光表示装置20は、光透過性が高く、且つ、表面抵抗が低く、さらに可撓性に優れた第1電極部22を有することになることから、無機EL、有機EL、電子ペーパー等を利用したフレキシブルディスプレイに容易に適用させることができ、これら無機EL、有機EL、電子ペーパー等の量産化を促進させることができる。
【0073】
また、本発明に係る透明導電性フイルム10によれば、光透過性が高く、且つ、表面抵抗が低く、さらに可撓性に優れるため、大面積のエレクトロルミネッセンス素子の低電圧化、高耐久化、面内輝度均一化や、太陽電池等の電力取り出し効率の改良、さらに電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイの低電圧・低消費電力化のために好ましく用いることができる。
【0074】
特に、後述するが細線構造部14を圧密処理することによって、高い透過率と低い表面抵抗とが両立する透明導電性フイルム10を提供することが可能となる。しかも、このような効果を有する透明導電性フイルム10を低コストで大量に製造することができる。本発明では、透明導電性材料等を透明導電性膜に用いたことによって透明導電性フイルムの量産化を実現することができる。
【0075】
ITO膜の表面抵抗値も十分に低いものではないが、本発明の透明導電性フイルムは、透明導電性膜と細線構造部との協働によって表面抵抗が低く、塗膜も安価であるので、無機EL、太陽電池等に利用することができる。
【0076】
また、EL素子に用いる場合、細線構造部14がITO膜の場合に比べて表面抵抗が低いことから、大サイズにしたときに、輝度が下がらない等の特徴がある。ITO膜の場合に必要となる電極の母線(バスバー)も不必要であることも特徴である。
【0077】
また、電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイにも低抵抗の電極として用いることができ、この場合、低電圧、低消費電力化に貢献することができる。いずれの製品に適用する場合でも、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、可撓性が優れているため、ロールトゥロールの生産が可能であり、これらの製品の生産プロセスコストを大幅に削減することができる。
【0078】
その他の好ましい態様としては、以下のとおりである。
【0079】
先ず、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10(第1電極部22)の透明導電性膜16は、導電性材料を含むことが好ましい。この場合、導電性材料は、透明導電性有機ポリマー又は導電性微粒子であることが好ましい。導電性微粒子は導電性金属酸化物、導電性金属微粒子又はカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0080】
本実施の形態では、細線構造部14は、支持体12上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなるようにしてもよい。この場合、細線構造部14は、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部が形成されるようにしてもよい。なお、光透過性部は、実質的に物理現像核を有しないようにしてもよい。また、細線構造部14は、銀を含有し、且つ、Ag/バインダ体積比が1/4以上であることが好ましい。上記Ag/バインダ体積比は、Ag:バインダ=10:1〜0.1:1が好ましく、4:1〜0.25:1がより好ましく、4:1〜0.7:1がさらに好ましいAg:バインダ=3.50:1〜1:1がさらに好ましい。
【0081】
ここで、支持体12上に細線構造部14を形成する製造方法について図9A〜図9Eを参照しながら説明する。
【0082】
先ず、図9Aに示すように、ハロゲン化銀40(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン42に混ぜてなる銀塩感光層44を支持体12上に塗布する。なお、図9A〜図9Cでは、ハロゲン化銀40を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0083】
その後、図9Bに示すように、銀塩感光層44に対して細線構造部14の形成に必要な露光を行う。ハロゲン化銀40は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0084】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図9Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層44を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)で現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀46)を形成する。
【0085】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層44中には光に感光できるハロゲン化銀40が残存するのでこれを除去するために図9Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0086】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部48が形成され、露光されていない部位にはゼラチン42のみが残存し、光透過性部となる。
【0087】
ハロゲン化銀40として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式を以下に示す。
AgBr(固体)+2個のS23イオン → Ag(S232
(易水溶性錯体)
【0088】
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS23とゼラチン42中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン42中から溶出される。その結果、現像銀46が金属銀部48として定着されて残る。
【0089】
従って、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀46を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀46にならなかったハロゲン化銀40を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0090】
なお、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層44を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0091】
そして、図9Eに示すように、例えば熱処理を行って残存するゼラチンを除去した後、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部48の表面のみに金属層50を担持させることによって、支持体12上に金属銀部48と、該金属銀部48に担持された金属層50にて細線構造部14が形成されることになる。
【0092】
ここで、上述した銀塩感光層44を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
【0093】
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なおレジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀40内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
【0094】
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀46が成長するものであって、未露光部分のゼラチン42の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
【0095】
なお、未露光部分のゼラチン42に含まれるハロゲン化銀40は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン42自体の除去は行われない(図9D参照)。
【0096】
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン42)は残存するが(図9D参照)、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
【0097】
そして、細線構造部14は、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像した後で、定着する前に少なくとも1度圧密処理を行い、定着終了後にさらに少なくとも1度圧密処理を行って得られることが好ましい。この場合、圧密処理は、露光済み感光層に対して現像、水洗、乾燥後に行い、さらに、定着、水洗、乾燥後に行うことが好ましい。圧密処理はカレンダーロール装置によって行うことができる。
【0098】
さらに、細線構造部14は、現像と乾燥の間に物理現像、電解めっき及び無電解めっきの少なくとも1つを行って得ることが好ましい。
【0099】
そして、透明導電性フイルム10(第1電極部22)は、細線構造部14を形成した後に、細線構造部14と透明導電性膜16とを貼り合わせて構成してもよい。
【0100】
次に、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10(第1電極部22)の具体的構成例について説明する。
【0101】
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0102】
[支持体12]
支持体12は、透光性を有していれば特に制限されないが、透光性が高いことが望ましい。また、透光性を有していれば、発明の目的を妨げない程度に着色していてもよい。本実施の形態において、支持体12の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。
【0103】
従って、支持体12としては、プラスチックフイルムを用いることができる。
【0104】
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0105】
本実施の形態においては、透明性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)であることが好ましい。
【0106】
透明導電性フイルム10は、透明性が要求されるため、支持体12の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本実施の形態では、前記プラスチックフイルムとして、本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0107】
本実施の形態におけるプラスチックフイルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0108】
また、耐光性の向上のために紫外線吸収剤を練り込んだベースや、バリア層を付与したり、反射防止層やハードコート層を付与したものを用いてもよい。
【0109】
本実施の形態における支持体12としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用導電性フイルムの用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、且つ、端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0110】
[細線構造部14]
本実施の形態は、透明導電性膜16に加えて、一様な網目状、櫛型あるいはグリッド型等の金属及び/又は合金の細線構造部14を配置し、圧密処理した導電性面を作成して通電性を改善する。
【0111】
金属や合金の細線(金属細線と記す)の材料としては、銅や銀、アルミニウムが好ましく用いられるが、目的によっては、前述の透明導電性材料を用いてもよい。電気伝導性と熱伝導性が高い材料であることが好ましい。また、これらの金属にめっき処理を施してめっき金属としてもよい。金属細線の幅は、任意であるが、0.1μm程度から30μmの間が好ましい。金属細線は、20μmから300μmの間隔のピッチで配置されていることが好ましい。 金属及び/又は合金の細線構造部を配置することで光の透過率が減少するが、減少はできるだけ小さいことが重要で、金属細線の間隔を狭くしすぎたり、金属細線の幅や高さを大きく取りすぎたりすることなく、好ましくは70%以上の光の透過率を確保することが重要である。本実施の形態においては、透明導電性フイルム10の光の透過率が、550nmの光に対して70%以上であることが好ましく、80%であることがより好ましい。さらには、90%以上であることが最も好ましい。
【0112】
本実施の形態の透明導電性フイルム10をEL素子に用いる場合に、輝度を向上させるため、また、白色発光を実現する上で、波長420nm〜650nmの領域の光を70%以上透過することが好ましく、より好ましくは80%以上透過することが好ましい。さらには白色発光を実現する上では、波長380nm〜680nmの領域の光を80%以上透過することがより好ましい。90%以上であることが最も好ましい。透明導電性フイルム10の光の透過率は、分光光度計によって測定することができる。
【0113】
金属及び/又は合金の細線構造部14の高さ(厚み)は、0.1μm以上10μm以下が、好ましい。特に好ましくは、0.1μm以上2μm以下である。さらには0.1μm以上1μm以下が最も好ましい。金属及び/又は合金の細線構造部14と透明導電性膜16は、どちらが表面に出ていもよいが、結果として細線構造部14の突起部と開口部の高低差が、5μm以下であることが好ましい。さらには実質的に高低差がないのが最も好ましい。
【0114】
ここで、導電性面の高さは、3次元表面粗さ計(例えば、東京精密社製;SURFCOM575A−3DF)を用いて5mm四方を測定したときの凹凸部の平均振幅を示す。表面粗さ計の分解能の及ばないものについては、STMや電子顕微鏡による測定によって、高さを求める。
【0115】
細線構造部14は、少なくとも一部が黒化処理を施されたものであることが好ましい。黒化処理により形成された黒化層は、防錆効果に加え、反射防止性を付与することができる。細線構造部14に黒化処理により反射防止性を付与することにより、反射率の高い金属が細線パターン化した細線構造部14における光の反射を抑制することができる。
【0116】
黒化処理については、例えば特開2003−188576号公報に開示されており、一般に、導電性金属化合物、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の化合物や合金を使用した電解めっき処理、黒色系の被膜を与えるめっき法、あるいは、電着塗装材料等の電着性イオン性高分子材料を使用する方法により実施することができる。例えば、Co−Cu合金めっきによって形成された黒化層は、金属表面の反射を防止することができ、さらにクロメート処理を施すことにより防錆性を付与することができる。クロメート処理は、クロム酸もしくは重クロム酸塩を主成分とする溶液中に浸漬し、乾燥させて防錆被膜を形成するものである。
【0117】
本実施の形態において、上記の黒化処理の際に用いる電解液の浴(黒色めっき浴)は、硫酸ニッケル塩を主成分とする黒色めっき浴を使用することができ、さらに、市販の黒色めっき浴も同様に使用することができ、具体的には、例えば、株式会社シミズ製の黒色めっき浴(商品名、ノ−ブロイSNC、Sn−Ni合金系)、日本化学産業株式会社製の黒色めっき浴(商品名、ニッカブラック、Sn−Ni合金系)、株式会社金属化学工業製の黒色めっき浴(商品名、エボニ−クロム85シリ−85シリ−ズ、Cr系)等を使用することができる。また、本実施の形態においては、上記の黒色めっき浴としては、Zn系、Cu系、その他等の種々の黒色めっき浴を使用することができる。また、金属の黒化処理剤として、硫化物系化合物を用いて容易に製造でき、さらにまた、市販品も多種類の処理剤があり、例えば、商品名・コパ−ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ−ブラックNo.65等(アイソレ−ト化学研究所製)、商品名・エボノ−ルCスペシャル(メルテックス株式会社製)等を使用することができる。
【0118】
細線構造部14の製造方法は特に制限されないが、銀塩写真法によって、ハロゲン化銀粒子を所望の細線パターンとなるように化学現像する方法が好ましい。銀塩写真法により得られる金属は、現像銀とよばれるものであり、化学現像によって得られるフィラメント状の金属銀の集合体、又は、フィラメント状の金属銀が互いに結合・融着した金属銀の集合体である。
【0119】
現像銀を得る方法は、一般によく知られている銀塩写真の原理・手法を利用できる。例えば、特開2004−221564号公報に記載の方法等を利用することができる。
【0120】
また、現像銀は、電解めっきのカソードとして用いるのに十分な導電性とすることが可能であるため、現像銀を電解めっきすることが可能である。また、現像銀は無電解めっき触媒として利用することも可能であり、現像銀に無電解めっきを施すことも可能である。従って、他の金属、例えば導電性の高い銅等によりめっき処理を施し、現像銀とめっき金属からなる(不可避不純物を含む)構成としてもよい。また、現像銀は上記のようにめっき処理が可能であるため、黒化処理を容易に施すことができる。
【0121】
細線構造部14の細線パターンの形状は特に制限なく、目的に応じて様々なパターンを選択することができ、上述したように、メッシュ状にしてもよいし、あるいは六角形状を多数並べた形状、三角形状を多数並べた形状、多角形状を多数並べた形状、ストライプ状(格子状)等が挙げられる。もちろん、各細線を直線状のほか波線状(サイン曲線等)にしてもよい。
【0122】
金属細線の厚みは、用途によって適宜変更することができるが、高い導電性を得るためには、0.2μm以上の厚みを有することが好ましい。上限は、上述したように、10μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
【0123】
細線パターンの線幅もまた、用途によって適宜変更することができるが、高い導電性を得るためには、1μm以上の線幅を有することが好ましく、線幅が太すぎるものは、上記と同様目視した場合に認識できてしまい、光を透過する材料にとっては問題であるので、1μm以上30μm以下の線幅の細線パターンであることが好ましい。より好ましくは、2μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上18μm以下である。
【0124】
[透明導電性膜16]
一方、透明導電性膜16は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートベース等の透明フイルム上に、PEDOT/PSS・ポリアニリン・ポリピロール・ポリチオフェン・ポリイソチアナフテン等の透明導電性有機ポリマー、インディウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、酸化亜鉛等の導電性無機又は有機水溶性塩及び金属酸化物、金属微粒子、金属ナノロッド・ナノワイヤ等の導電性金属、カーボンナノチューブ等の導電性無機微粒子、又は有機水溶性塩のいずれかを蒸着(スパッター法やイオンプレーティング法を含む)、塗布、印刷等の方法で一様に付着、成膜することで得られる。これらの塗布液は塗布適性向上や膜物性調整のために他の非導電性ポリマーやラテックス等をブレンドして用いてもよい。また、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造を用いてもよい。これら透明導電性材料に関しては、東レリサーチセンター発行「電磁波シールド材料の現状と将来」、特開平9−147639号公報等に記載されている。塗布及び印刷の方法としては、スライドコータ、スロットダイコータ、カーテンコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ等の塗布コータやスクリーン印刷等が用いられる。
【0125】
本実施の形態は、このような透明導電性膜16に加えて、一様な網目状、ストライプ状、櫛型あるいはグリッド型等の金属及び/又は合金の細線構造部14を配置した導電性面を作成して通電性を改善している。
【0126】
網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14と、透明導電性膜16を形成した透明フイルムとを別々に形成して重ねあわせ、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10を作製することができる。
【0127】
細線構造部14と透明導電性膜16を貼り合わせる以外に、透明フイルム上に形成した網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14の上から、さらに透明導電性材料の分散物を蒸着、塗布、印刷等の方法で一様に付着、成膜して、透明導電性フイルム10を作製するようにしてもよい。網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14の凸凹が、透明導電性材料の分散物によって緩和され、全体に凹凸の少ない滑らかな構造が得られる。また、透明導電性材料を透明フイルム上に形成し、その上に細線構造部14を設けてもよい。
【0128】
いずれの場合にも、金属及び/又は合金の細線構造部14と透明フイルム、又は透明導電性膜16と透明フイルムとの密着性等を向上させるために、有機高分子材料からなる中間層を用いたり、表面処理をしたりすることを好ましく行うことができる。
【0129】
金属及び/又は合金の細線構造部14が直接他の層に触れることがなく、且つ、透明導電性フイルム10の表面の凹凸も低く抑えられるため、例えば、その上に形成される電界発光層や電流注入層との均一な接合を得易く、自発光表示装置20の安定性を確保し易い。
【0130】
また、支持体12上に少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層を有し、該写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光し、現像することにより、金属銀部と光透過部を有する細線構造部14と、導電性材料を含有する透明導電性膜16とを形成するようにしてもよい。
【0131】
透明導電性膜16は、導電性ポリマーを含有する第1膜と絶縁性ポリマーを主成分とする第2膜とを積層した構成とすることも可能である。透明導電性膜16を導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有するものとした構成でもよい。これらの構成は、高価な導電性ポリマーの使用量を削減することができ、低価格化を実現することができる。ここで、導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有する場合、例えば、導電性ポリマー10%その他のバインダ90%でブレンドして使用する形態等が考えられる。導電性ポリマーの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。
【0132】
透明導電性膜16を導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有する場合は、導電性ポリマーは均一に分布していても、空間的に不均一な分布をしていてもよいが、不均一な分布の場合には透明導電性膜16の表面に近いほど導電性ポリマーの含有率が高くなることが好ましい。なお、上述した第1膜(導電性ポリマーを主成分)と第2膜(絶縁性ポリマーを主成分)の積層構造の場合、より低価格な構成とするためには、第2膜の層厚が、第1膜の層厚よりも大きい構成とすることが好ましい。
【0133】
導電性ポリマーとしては、透光性及び導電性の高いものが好ましく、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類等の電子伝導性導電性ポリマーが好ましい。
【0134】
電子伝導性ポリマーとしては、当該技術分野で既知のポリマー、例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等である。その詳細は、例えば“Advances in Synthetic Metals”,ed.P.Bernier,S.Lefrant,and G.Bidan,Elsevier,1999;“Intrinsically Conducting Polymers:An Emerging Technology”,Kluwer(1993);“Conducting Polymer Fundamentals and Applications,A Practical Approach”,P.Chandrasekhar,Kluwer,1999;及び“Handbook of Organic Conducting Molecules and Polymers”,Ed.Walwa,Vol.1−4,Marcel Dekker Inc.(1997)のような教本に見ることができる。なお、今後開発される新規な電子伝導性ポリマーも、電子伝導性ポリマーである限り同様に用いることができるということは、当業者なら容易に想到し得る。また、これらの電子伝導性ポリマーは単独で用いてもよいし、ポリマーブレンドのように複数種のポリマーを混合して用いてもよい。
【0135】
絶縁性ポリマーとしては、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられ、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0136】
また、透明導電性膜16は、導電性金属酸化物粒子やバインダ等を含んでいてもよい。導電性金属酸化物としては、酸化スズ、アンチモンがドープされたSnO2、インジウムとスズの酸化物(ITO)、酸化亜鉛、フッ素がドープされた酸化スズ、ガリウムがドープされた酸化亜鉛等が用いられる。
【0137】
バインダとしては、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられ、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0138】
透明導電性膜16は、耐水性や耐溶剤性等が向上されることから、架橋されていることが好ましく、導電性ポリマー自体に架橋反応性を有しない場合は、バインダに架橋反応性を有していることが好ましく、架橋剤に対して架橋反応が可能であるような官能基を有していることが好ましい。架橋剤については後記する。
【0139】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、後記する架橋剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。架橋剤としてカルボジイミド化合物を使用する場合は、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであることが好ましい。以下のバインダの例においては、架橋剤と反応可能な態様の例示は、架橋剤としてカルボジイミド化合物を使用する場合について示すが他の架橋剤を用いる場合は架橋剤の種類に応じた官能基を有することが好ましい。
【0140】
ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとすることが好ましい。
【0141】
ウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0142】
エステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記エステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。もちろん、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
【0143】
上記したように、透明導電性膜16は架橋されていることが好ましい。その場合、透明導電性膜16は、架橋剤により架橋されていてもよいし、感光性に影響のない手段によって架橋剤の添加なしに、単に、光照射により誘起される光化学反応を利用して架橋されていてもよい。架橋剤としては、ビニルスルホン類(例えば1,3−ビスビニルスルホニルプロパン)、アルデヒド類(例えばグリオキサール)、塩化ピリミジン類(例えば2,4,6−トリクロロピリミジン)、塩化トリアジン類(例えば塩化シアヌル)、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0144】
エポキシ化合物としては、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類及びトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等のエポキシ化合物が好ましく、その具体的な市販品としては、例えばデナコールEX−521やEX−614B(ナガセ化成工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
また、感光特性に影響を与えない添加量の範囲では、他の架橋性化合物との併用も可能であり、例えばC.E.K.Meers及びT.H.James著「The Theory of the Photographic Process」第3版(1966年)、米国特許第3316095号、同第3232764号、同第3288775号、同第2732303号、同第3635718号、同第3232763号、同第2732316号、同第2586168号、同第3103437号、同第3017280号、同第2983611号、同第2725294号、同第2725295号、同第3100704号、同第3091537号、同第3321313号、同第3543292号及び同第3125449号、並びに英国特許第994869号及び同第1167207号の各明細書等に記載されている硬化剤等があげられる。
【0146】
これらの硬化剤の代表的な例としては、2個以上(好ましくは3個以上)のメチロール基及びアルコキシメチル基の少なくとも一方を含有するメラミン化合物又はそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂、さらにはムコクロル酸、ムコブロム酸、ムコフェノキシクロル酸、ムコフェノキシプロム酸、ホルムアルデヒド、グリオキザール、モノメチルギリオキザール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−1,4−ジオキサンサクシンアルデヒド、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン及びグルタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物及びその誘導体;ジビニルスルホン−N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセトアミド)、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、メチレンビスマレイミド、5−アセチル−1,3−ジアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイル−ヘサヒドロ−s−トリアジン及び1,3,5−トリビニルスルホニル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル系化合物;2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(4−スルホアニリノ)−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(2−スルホエチルアミノ)−s−トリアジン及びN,N’−ビス(2−クロロエチルカルバミル)ピペラジン等の活性ハロゲン系化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)メチルプロピルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、2,4,6−トリエチレン−s−トリアジン、1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素及びビス−β−エチレンイミノエチルチオエーテル等のエチレンイミン系化合物;1,2−ジ(メタンスルホンオキシ)エタン、1,4−ジ(メタンスルホンオキシ)ブタン及び1,5−ジ(メタンスルホンオキシ)ペンタン等のメタンスルホン酸エステル系化合物;ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ジシクロヘキシル−3−(3−トリメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド化合物;2,5−ジメチルイソオキサゾール等のイソオキサゾール系化合物;クロム明ばん及び酢酸クロム等の無機系化合物;N−カルボエトキシ−2−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキノリン及びN−(1−モルホリノカルボキシ)−4−メチルピリジウムクロリド等の脱水縮合型ペプチド試薬;N,N’−アジポイルジオキシジサクシンイミド及びN,N’−テレフタロイルジオキシジサクシンイミド等の活性エステル系化合物:トルエン−2,4−ジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類;及びポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン反応物等のエピクロルヒドリン系化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
カルボジイミド化合物としては、分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物を使用することが好ましい。
【0148】
ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。ここで分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物の合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能であるが、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。
【0149】
合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
【0150】
具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。
【0151】
また、カルボジイミド系化合物の具体的な市販品としては、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡社製)等が入手可能である。
【0152】
架橋剤としてカルボジイミド系化合物を用いる場合は、バインダに対して1〜200質量%、より好ましくは5〜100質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0153】
透明導電性膜16の形成方法としては、スパッタリング等の各種物理的方法、一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法等の各種の塗布法等を利用することができる。
【0154】
これらの方法により透明導電性膜16を形成する場合は、(A)細線パターンの凹部を埋めて、細線構造部14の表面と透明導電性膜16の表面とが例えば平滑な表面を形成するように透明導電性膜16の設置量を調整する方法、(B)研磨によって細線構造部14の表面と透明導電性膜16の表面とが平滑な表面を形成するように調整する方法、(C)細線構造部14の表面に、透明導電性膜16の材料が付着することを防止する表面処理を施した後に透明導電性膜16を形成する方法が好ましく用いられる。
【0155】
(C)の方法では、透明導電性膜16の材料の塗布液が一般的に高極性であるか、あるいは親水的であるために、細線構造部14の表面は低極性あるいは疎水的であることが望ましく、具体的には細線構造部14の表面にアルキルチオール類に代表される疎水性金属表面処理剤を用いて表面処理を施されることが好ましい。この処理剤は後処理にて除去することがさらに好ましい。
【0156】
透明導電性膜16は、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層又はアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋等の汚れを除去し易い機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層等を設けることができる。これらの機能層は、透明導電性膜16の表面に設けてもよいし、支持体12の裏面に設けてもよい。
【0157】
次に、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部を形成することによって、細線構造部14を構成する場合について説明する。
【0158】
[乳剤層(銀塩含有感光層)]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、支持体12上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有感光層)を有する。銀塩含有感光層は、銀塩とバインダのほか、溶媒や染料等の添加剤を含有することができる。
【0159】
また好ましくは、乳剤層は、実質的に最上層に配置されている。ここで、「乳剤層が実質的に最上層である」とは、乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、乳剤層の上に設けられた層すなわち保護層の総膜厚が0.5μm以下であることを意味する。乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0160】
以下、乳剤層に含まれる各成分について説明する。
【0161】
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれていてもよい。該染料は、フィルタ染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。また、特開平7−152112号公報記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号公報記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号公報記載の(IV−2)〜(IV−7)等も好ましく用いられる。
【0162】
このほか、本実施の形態に使用することができる染料としては、現像又は定着の処理時に脱色させる固体微粒子分散状の染料としては、特開平3−138640号公報記載のシアニン染料、ピリリウム染料及びアミニウム染料が挙げられる。また、処理時に脱色しない染料として、特開平9−96891号公報記載のカルボキシル基を有するシアニン染料、特開平8−245902号公報記載の酸性基を含まないシアニン染料及び同8−333519号公報記載のレーキ型シアニン染料、特開平1−266536号公報記載のシアニン染料、特開平3−136038号公報記載のホロポーラ型シアニン染料、特開昭62−299959号公報記載のピリリウム染料、特開平7−253639号公報記載のポリマー型シアニン染料、特開平2−282244号公報記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開昭63−131135号公報記載の光散乱粒子、特開平9−5913号公報記載のYb3+化合物及び特開平7−113072号公報記載のITO粉末等が挙げられる。また、特開平9−179243号公報記載の一般式(F1)、一般式(F2)で表される染料で、具体的には同公報記載の化合物F35〜F112も用いることができる。
【0163】
また、上記染料としては、水溶性染料を含有することができる。このような水溶性染料としては、オキソノール染料、ベンジリデン染料、メロシアニン染料、シアニン染料及びアゾ染料が挙げられる。中でも本発明においては、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料及びベンジリデン染料が有用である。本発明に用い得る水溶性染料の具体例としては、英国特許第584,609号明細書、同第1,177,429号明細書、特開昭48−85130号公報、同49−99620号公報、同49−114420号公報、同52−20822号公報、同59−154439号公報、同59−208548号公報、米国特許第2,274,782号明細書、同第2,533,472号明細書、同第2,956,879号明細書、同第3,148,187号明細書、同第3,177,078号明細書、同第3,247,127号明細書、同第3,540,887号明細書、同第3,575,704号明細書、同第3,653,905号明細書、同第3,718,427号明細書に記載されたものが挙げられる。
【0164】
上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止等の効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0165】
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0166】
本実施の形態で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0167】
本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0168】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらに臭化銀や塩化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀、臭化銀50モル%以上を含有するハロゲン化銀が用いられる。
【0169】
なお、ここで、「臭化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この臭化銀を主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0170】
なお、ハロゲン化銀乳剤における沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5モル%を超えない範囲であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5モル%を超えない範囲とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1モル%以下である。
【0171】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましい。上記下限値は1nmがより好ましく、10nmがより好ましい。上記上限値は800nmがより好ましく、500nmがさらに好ましく、100nmがよりさらに好ましく、50nmが特に好ましい。上記数値範囲は0.1〜1000nmであることがより好ましく、10〜5000nmであることがさらに好ましい。
【0172】
なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0173】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、14面体状等、様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
【0174】
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また、粒子内部あるいは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
【0175】
本実施の形態に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著 Chimieet Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Forcal Press刊、1966年)、V.L.Zelikmanほか著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Forcal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0176】
すなわち、上記ハロゲン化銀乳剤の調製方法としては、酸性法、中性法等のいずれでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩とを反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせ等のいずれを用いてもよい。
【0177】
また、銀粒子の形成方法としては、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。さらに、同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0178】
また、アンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることも好ましい。これらの方法としてより好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号各公報に記載されている。好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが挙げられる。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類及び目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0179】
上記コントロールド・ダブルジェット法及びハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に好ましく用いることができる。
【0180】
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号公報、特公昭48−36890号公報、同52−16364号公報に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号公報、特開昭55−158124号公報に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く銀を成長させることが好ましい。
【0181】
本実施の形態における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{(粒子サイズの標準偏差)/(平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0182】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0183】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等や、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類(メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物(イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾール等)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
【0184】
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0185】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
【0186】
これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0187】
上記イリジウム化合物としては、K2IrCl6、K3IrCl6等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
【0188】
上記ルテニウム化合物としては、ヘキサクロロルテニウム、ペンタクロロニトロシルルテニウム、K4〔RuCN〕6〕等が挙げられる。
【0189】
上記鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0190】
上記ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号公報、特開平1−285941号公報、同2−20852号公報、同2−20855号公報等に記載された水溶性錯塩の形で添加され、特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6-n
【0191】
ここで、MはRu、又はOsを表し、nは0、1、2、3又は4を表す。
【0192】
この場合、対イオンは重要性を持たず、例えば、アンモニウム若しくはアルカリ金属イオンが用いられる。また、好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0193】
〔RuCl6-3、〔RuCl4(H2O)2-1、〔RuCl5(NO)〕-2、〔RuBr5(NS)〕-2、〔Ru(CO)3Cl3-2、〔Ru(CO)Cl5-2、〔Ru(CO)Br5-2、〔OsCl6-3、〔OsCl5(NO)〕-2、〔Os(NO)(CN)5-2、〔Os(NS)Br5-2、〔Os(CN)6-4、〔Os(O)2(CN)5-4
【0194】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0195】
その他、本実施の形態では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
【0196】
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加する等の方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
【0197】
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0198】
本実施の形態において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0199】
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0200】
本実施の形態では、一般のハロゲン化銀写真感光材料と同様に化学増感を施しても、施さなくてもよい。化学増感の方法としては、例えば特開2000−275770号公報の段落[0078]以降に引用されている、写真感光材料の感度増感作用のあるカルコゲナイト化合物あるいは貴金属化合物からなる化学増感剤をハロゲン化銀乳剤に添加することによって行われる。本実施の形態の感光材料に用いる銀塩乳剤としては、このような化学増感を行わない乳剤、すなわち、未化学増感乳剤を好ましく用いることができる。本実施の形態において好ましい未化学増感乳剤の調製方法としては、カルコゲナイトあるいは貴金属化合物からなる化学増感剤の添加量を、これらが添加されたことによる感度上昇が0.1以内になる量以下の量にとどめることが好ましい。カルコゲナイトあるいは貴金属化合物の添加量の具体的な量に制限はないが、本実施の形態における未化学増感乳剤の好ましい調製方法として、これら化学増感化合物の総添加量をハロゲン化銀1モルあたり5×10-7モル以下にすることが好ましい。
【0201】
本実施の形態では、さらに光センサとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等カルコゲン増感、金増感等の貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独又は組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法等の組み合わせが好ましい。
【0202】
上記硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさ等の種々の条件の下で変化し、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0203】
上記セレン増感に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、上記セレン増感は、通常、不安定型及び/又は非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号公報、同43−13489号公報、特開平4−109240号公報、同4−324855号公報等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号公報中の一般式(VIII)及び(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0204】
上記テルル増感剤に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面又は内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号公報に記載の方法で試験することができる。具体的には、米国特許US第1,623,499号公報、同第3,320,069号公報、同第3,772,031号公報、英国特許第235,211号公報、同第1,121,496号公報、同第1,295,462号公報、同第1,396,696号公報、カナダ特許第800,958号公報、特開平4−204640号公報、同4−271341号公報、同4−333043号公報、同5−303157号公報、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635頁(1980)、同1102頁(1979)、同645頁(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.1巻,2191頁(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and Tellunium Compounds)、1巻(1986)、同2巻(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に、特開平5−313284号公報中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0205】
本実施の形態で用いることのできるセレン増感剤及びテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0206】
また、上記貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられ、特に金増感が好ましい。金増感に用いられる金増感剤としては、具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、チオグルコース金(I)、チオマンノース金(I)等が挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成又は物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩等を共存させてもよい。
【0207】
また、本実施の形態においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物等を用いることができる。上記ハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)293917号公法に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。本発明に用いられる感光材料の作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、1種だけでもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)の併用であってもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426号公報に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0208】
<水溶性バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダが用いられる。本実施の形態において上記バインダとしては、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダが用いられる。かかる水溶性バインダとしては、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0209】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0210】
また、ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他アミノ基、カルボキシル基を修飾したゼラチン(フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができる。
【0211】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダの含有量は、Ag/バインダ体積比率が1/4以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。
【0212】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0213】
本実施の形態の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0214】
<帯電防止剤>
本実施の形態に係る感光材料は帯電防止剤を含有することが好ましく、乳剤層と反対側の支持体面上にコーティングするのが望ましい。
【0215】
帯電防止層としては、表面抵抗率が25℃25%RHの雰囲気下で1012オーム/sq以下の導電性物質含有層を好ましく用いることができる。本実施の形態に好ましい帯電防止剤として、下記の導電性物質を好ましく用いることができる。
【0216】
例えば特開平2−18542号公報の第2頁左下欄第13行から同公報第3頁右上欄第7行に記載の導電性物質を用いることができる。具体的には、同公報第2頁右下欄第2行から同頁右下欄第10行に記載の金属酸化物、及び同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物、米国特許第5575957号明細書、特開平10−142738号公報の段落[0043]〜[0045]、特開平11−223901号公報の段落[0013]〜[0019]に記載の針状の金属酸化物等を用いることができる。
【0217】
本実施の形態で用いられる導電性金属酸化物粒子は、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO及びMoO3並びにこれらの複合酸化物、そして、これらの金属酸化物に、さらに異種原子を含む金属酸化物の粒子を挙げることができる。金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、及びMgOが好ましく、さらに、SnO2、ZnO、In23及びTiO2が好ましく、SnO2が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素等の異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物又は複合酸化物に充分な導電性を付与することができにくくなり、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため適さない。従って、本実施の形態では、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物又は複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0218】
上記異種原子を少量含む導電性金属酸化物微粒子としては、アンチモンがドープされたSnO2粒子が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2粒子が好ましい。
【0219】
本実施の形態に用いる導電性金属酸化物の形状については特に制限はなく、粒状、針状等が挙げられる。また、その大きさは、球換算径で表した平均粒径が0.5〜25μmである。
【0220】
また、導電性を得るためには、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩等)、蒸着金属層、米国特許第2861056号明細書及び同第3206312号明細書に記載のようなイオン性ポリマー又は米国特許第3428451号明細書に記載のような不溶性無機塩を使用することもできる。
【0221】
このような導電性金属酸化物粒子を含有する帯電防止層は、バック面の下塗り層、乳剤層の下塗り層等として設けることが好ましい。その添加量は両面合計で0.01〜1.0g/m2であることが好ましい。
【0222】
また、感光材料の体積抵抗率は25℃25%RHの雰囲気下で1.0×107〜1.0×1012オーム・cmであることが好ましい。
【0223】
本実施の形態において、前記導電性物質のほかに、特開平2−18542号公報第4頁右上欄第2行から第4頁右下欄第下から3行、特開平3−39948号公報第12頁左下欄第6行から同公報第13頁右下欄第5行に記載の含フッ素界面活性剤を併用することによって、さらに良好な帯電防止性を得ることができる。
【0224】
<その他の添加剤>
本発明における感光材料に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限はなく、例えば下記公報等に記載されたものを好ましく用いることができる。ただし、本実施の形態では、硬膜剤を使用しないことが望ましい。硬膜剤を使用した場合、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理を行うと、抵抗が上がり、導電率が下がってしまうためである。
【0225】
(1)造核促進剤
上記造核促進剤としては、特開平6−82943号公報に記載の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物や、特開平2−103536号公報第9頁右上欄第13行から同第16頁左上欄第10行の一般式(II−m)〜(II−p)及び化合物例II−1〜II−22、並びに、特開平1−179939号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0226】
(2)分光増感色素
上記分光増感色素としては、特開平2−12236号公報第8頁左下欄第13行から同右下欄第4行、同2−103536号公報第16頁右下欄第3行から同第17頁左下欄第20行、さらに特開平1−112235号、同2−124560号、同3−7928号、及び同5−11389号各公報に記載の分光増感色素が挙げられる。
【0227】
(3)界面活性剤
上記界面活性剤としては、特開平2−12236号公報第9頁右上欄第7行から同右下欄第7行、及び特開平2−18542号公報第2頁左下欄第13行から同第4頁右下欄第18行に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0228】
(4)カブリ防止剤
上記カブリ防止剤としては、特開平2−103536号公報第17頁右下欄第19行から同第18頁右上欄第4行及び同右下欄第1行から第5行、さらに特開平1−237538号公報に記載のチオスルフィン酸化合物が挙げられる。
【0229】
(5)ポリマーラテックス
上記ポリマーラテックスとしては、特開平2−103536号公報第18頁左下欄第12行から同第20行に記載のものが挙げられる。
【0230】
(6)酸基を有する化合物
上記酸基を有する化合物としては、特開平2−103536号公報第18頁右下欄第6行から同第19頁左上欄第1行に記載の化合物が挙げられる。
【0231】
(7)硬膜剤
上記硬膜剤としては、特開平2−103536号公報第18頁右上欄5行目から同第17行目に記載の化合物が挙げられる。
【0232】
(8)黒ポツ防止剤
上記黒ポツ防止剤とは、未露光部に点状の現像銀が発生することを抑制する化合物であり、例えば、米国特許第4956257号明細書及び特開平1−118832号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0233】
(9)レドックス化合物
レドックス化合物としては、特開平2−301743号公報の一般式(I)で表される化合物(特に化合物例1ないし50)、同3−174143号公報第3頁ないし第20頁に記載の一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)、化合物例1ないし75、さらに特開平5−257239号、同4−278939号各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0234】
(10)モノメチン化合物
上記モノメチン化合物としては、特開平2−287532号公報の一般式(II)の化合物(特に化合物例II−1ないしII−26)が挙げられる。
【0235】
(11)ジヒドロキシベンゼン類
特開平3−39948号公報第11頁左上欄から第12頁左下欄の記載、及び欧州特許出願公開第452772A号明細書に記載の化合物が挙げられる。
【0236】
[その他の層構成]
乳剤層の上に保護層を設けてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0237】
(細線構造部の形成方法)
上記の感光材料を用いて細線構造部を形成する方法について説明する。なお、本実施の形態によって得られる透明導電性フイルム10は、パターン露光によって細線構造部14が支持体12上に形成されたものだけでなく、面露光によって金属が形成されたものであってもよい。また、透明導電性フイルム10を例えばプリント基板として用いる場合には、金属銀部と絶縁性部を形成してもよい。
【0238】
本実施の形態における細線構造部14の形成方法には、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの態様が含まれる。
【0239】
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0240】
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0241】
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0242】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0243】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面が小さい球形である。
【0244】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0245】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。現像についてはネガ型がより好ましい。
【0246】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Process,4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。また、例えば、特開2004−184693号公報、同2004−334077号公報、同2005−010752号公報、特願2004−244080号明細書、同2004−085655号明細書等に記載の技術を参照することもできる。
【0247】
[露光]
本実施の形態の製造方法では、支持体12上に設けられた銀塩含有感光層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0248】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザを用いた装置に比べて、簡便で、且つ、コンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。発光体としては、例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色あるいは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0249】
また、本実施の形態の製造方法では、露光を種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶とを組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザ、半導体レーザあるいは固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特に、コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが好ましい。
【0250】
レーザ光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザ(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザ(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザ、波長約685nmの赤色半導体レーザ(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザ(日立タイプNo.HL6501MG)等が好ましく用いられる。
【0251】
銀塩含有層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティ露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。
【0252】
本実施の形態の製造方法では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、ND−1、FT−803R、HS−1、HS−5、パピトール、コピナール、ファインドール、ミクロファインや、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる(いずれも商品名)。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社製のD85(商品名)等を用いることができる。
【0253】
本実施の形態の透明導電性フイルムの製造方法では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部にパターン状の金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。なお、本実施の形態では、現像温度、定着温度及び水洗温度は35℃以下で行うことが好ましい。
【0254】
本実施の形態の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本実施の形態の製造方法において定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0255】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有させることができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0256】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得易いため好ましい。
【0257】
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0258】
[酸化処理]
本実施の形態の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0259】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0260】
本実施の形態では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0261】
[還元処理]
現像処理後に還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。
【0262】
還元水溶液としては、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液のpHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0263】
[圧密処理]
本実施の形態の製造方法では、現像処理済みの細線構造部14に圧密(平滑化)処理を施すことが好ましい。これによって細線構造部14の導電性が顕著に増大する。さらに、細線構造部14の金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い導電性と高い透光性とを同時に有する透明導電性フイルム10が得られる。
【0264】
また、細線構造部14が形成された支持体12を温水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる前に、圧密処理をすることが好ましい。
【0265】
圧密処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた圧密処理をカレンダー処理と記す。
【0266】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の下限値は、好ましくは1960N/cm(200kg/cm)、さらに好ましくは2940N/cm(300kg/cm)である。線圧力の上限値は、好ましくは6860N/cm(700kgf/cm)である。ここで、線圧力とは、圧密処理されるフイルム試料1cmあたりにかかる力とする。
【0267】
カレンダーロールに代表される平滑化処理の適用温度は、10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュ状パターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲である。
【0268】
以上に述べたように、本実施の形態の製造方法によって、高い導電性を有する透明導電性フイルム10を簡便で低コストで製造することができる。本実施の形態では、銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いた透明導電性フイルム10の製造方法において、好ましくは線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上という高い線圧で平滑化処理を行うことで、透明導電性フイルム10の表面抵抗を十分に低減できる。このような高い線圧で平滑化処理を行う場合、金属銀部が細線状(特に、線幅が25μm以下)に形成されていると、その金属銀部の線幅が広がり所望のパターンを形成することが難しくなると考えられる。しかし、平滑化処理の対象が銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料である場合には、線幅の広がりが小さく、所望のパターンの金属銀部を形成することができる。すなわち、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができることから不良品の発生を抑制でき、透明導電性フイルム10の生産性をさらに向上させることができる。上記線圧力で平滑化処理を行う場合、前記平滑化処理をカレンダーロールで行うことが好ましく、一対の金属ロール、又は、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせで行われる。このとき、ロール間の面圧力は600kgf/cm2以上に設定することが好ましく、800kgf/cm2以上に設定することがより好ましく、900kgf/cm2以上に設定することがさらに好ましい。またこのときの上限値は、2000kgf/cm2以下に設定することが好ましい。
【0269】
[めっき処理]
本実施の形態においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。また、めっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0270】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明と下記公報に開示の技術とを組み合わせて使用することができる。
【0271】
特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228480号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−267627号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報。
【0272】
(温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理)
本実施の形態の製造方法では、支持体12上に細線構造部14を形成した後、該細線構造部14が形成された支持体12を40℃以上の温水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。上述のとおり、透明導電性フイルム10の導電性が向上する理由についてはまだ定かではないが、本実施の形態では、少なくとも一部の水溶性バインダが除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
【0273】
支持体12を浸漬させる温水の温度は好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃〜100℃である。特に好ましくは約80℃〜100℃であり、導電性の向上が顕著である。また、支持体12に接触させる水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水のpHは2〜13が好ましく、2〜9がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。40℃以上の温水ないしはそれ以上の温度の加熱水への浸漬時間又は蒸気への接触時間は、使用する水溶性バインダの種類によって異なるが、支持体12のサイズが60cm×1mの場合、約10秒〜約5分程度が好ましく、約1分〜約5分がさらに好ましい。
【0274】
本実施の形態の製造方法においては、線幅、開口率、Ag含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体12上に形成するため、十分な表面抵抗を有することから、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透明導電性フイルム10を製造することができる。
【0275】
本実施の形態の方法によって製造された透明導電性フイルム10は、低抵抗で、透光性も高いため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、有機EL、無機EL、太陽電池、タッチパネル、プリント回路基板等に広く応用することができる。
【0276】
<電圧と周波数>
通常、分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hzから400Hzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧並びに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m2以上の大面積素子の場合、素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなったりするため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になり易い。特に、0.25m2以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下がおこり、低輝度化が起こることがしばしば起こる。
【0277】
これに対し、本実施の形態の第1電極部22を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、0.25m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が、可能で、高輝度化することができる。この場合、500Hz以上5KHz以下での駆動が好ましく、より好ましくは、800KHz以上3KHz以下の駆動が好ましい。
【0278】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0279】
[第1実施例]
先ず、支持体12上に形成される細線構造部14の特性(表面抵抗、膜強度等)について評価した第1実施例を以下に示す。
【0280】
<実施例1〜14及び比較例1〜7>
(乳剤Aの調製)
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0281】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0282】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
【0283】
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0284】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×103kg/m3、粘度=60mPa・sとなった。
【0285】
(乳剤Bの調製)
乳剤Aの調製にて、1液のゼラチン量を8gとした他は、同じ条件で調製した乳剤を乳剤Bとした。
【0286】
(塗布試料の作製)
上記乳剤A、Bに増感色素(sd−1)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10-4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、よく混合した。
【0287】
次いで1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m2、ゼラチンに対して15wt%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m2、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m2、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(重量比88:5:7)を100mg/m2、コアシェル型ラテックスコア:スチレン/ブタジエン共重合体重量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(重量比84/16、コア/シェル比=50/50)を100mg/m2、ゼラチンに対し4wt%の化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0288】
乳剤Aを用いて、上記のように調製した乳剤層塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)上にAg10.5g/m2、ゼラチン0.94g/m2になるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料Aとした。
【0289】
また、乳剤Bを用いて、上記のように調製した乳剤層塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)上にAg10.5g/m2、ゼラチン0.33g/m2になるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料Bとした。
【0290】
PETにはあらかじめ表面親水化処理したものを用いた。
【0291】
【化1】

【0292】
得られた塗布試料Aは、乳剤層のAg/バインダ体積比率(銀/GEL比(vol))が1/0.7であり、本発明の導電膜形成用感光材料に好ましく用いられるAg/バインダ比率1/1以上に該当している(実施例1、2、比較例1及び2参照)。
【0293】
塗布試料Bは、乳剤層のAg/バインダ体積比率(銀/GEL比(vol))が4/1であり、本発明の導電膜形成用感光材料にさらに好ましく用いられるAg/バインダ比率2/1以上に該当している(実施例3、4及び比較例3参照)。さらに、ゼラチン量を変えたサンプルを作成し、実施例5〜11を作成した。
【0294】
(露光・現像処理)
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、線幅及び開口率の異なるサンプルa及びbを得た。
【0295】
塗布試料Aについて作成したものをA-a(比較例1及び実施例1参照)、A-b(比較例2及び実施例2参照)、塗布試料Bについて作成したものをB-a(比較例3、実施例3及び4参照)、B-b(実施例5)とした。また、全面露光のサンプルも作成した(比較例7、実施例13及び14参照)。
【0296】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0297】
(カレンダー処理)
上記のように現像処理したサンプルをカレンダー処理した。カレンダーロールは金属ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、ロール直径250mm)からなり、線圧力1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると700kgf/cm2)から7840N/cm(800kgf/cm、面圧に換算すると1850kgf/cm2)をかけてローラ間にサンプルを通し、処理前後の表面抵抗率(オーム/sq)を測定した。本実施例の場合には、線圧力100kgf/cmは面圧に換算すると417kgf/cm2となり、線圧力200kgf/cmは面圧に換算すると700kgf/cm2となり、線圧力300kgf/cmは面圧に換算すると936kgf/cm2となり、線圧力600kgf/cmは面圧に換算すると1519kgf/cm2となる。
【0298】
サンプルA−aのカレンダー処理前をA−a−1(比較例1)、処理後をA−a−2(実施例1)、サンプルA−bのカレンダー処理前をA−b−1(比較例2)、処理後をA−b−2(実施例2)とした。
【0299】
サンプルBのカレンダー処理前をB−a−1(比較例3)、処理後をB−a−2(実施例3)とした。
【0300】
得られたサンプルB−a−2(実施例3)は、金属銀部のAg/非導電性高分子の体積比が3.1/1、また、密度8.5g/cm3、厚みが1.2μmであり、本発明の導電膜に好ましく用いられる金属銀部のAg/非導電性高分子の体積比が3/1以上、厚みが0.5μ〜5μであることに該当している。
【0301】
(黒化処理)
次に、メッシュ状の銀画像が形成された透明フイルムに対して、下記組成の黒化メッキ液浴中で、カーボンを陽極電極として電気メッキを行った。
【0302】
黒化メッキ処理におけるメッキ処理液は以下の通りである。
【0303】
[黒化液組成]
硫酸ニッケル6水塩 120g
チオシアン酸アンモニウム 17g
硫酸亜鉛7水塩 28g
硫酸ナトリウム 16g
純水を加えて 1L
pH5.0硫酸と水酸化ナトリウムで(pH調整)
[メッキ条件]
浴温:約30℃
時間:20秒
陰極電流密度:0.1〜0.2A/dm2
陰極(35mm×12cm)全体に対し、電流0.03A
サンプルB−a−2(実施例3)の上記黒化処理サンプルをB−a−3(実施例4)とした。
【0304】
(比較例4〜6)
従来知られている中で最も導電性が高く、且つ、光透過性の高い技術と比較すべく、前述の従来技術欄の「フォトグラフィー法を利用したエッチング加工銅メッシュ」の代表として、特開平10−41682号公報に記載の金属メッシュを作製し、比較例4のサンプルとした。
【0305】
このサンプル(比較例4)は、特開平10−41682号公報の実施例と同様の実験を行って作製した。
【0306】
なお、本発明のサンプルとメッシュ形状線幅、ピッチを一致させるために、上記と同じピッチ200μmのフォトマスクを利用した。
【0307】
また、前述の従来技術欄の「銀ペーストを印刷したメッシュ」の代表として特開2000−13088号公報記載の金属メッシュの作製を行い、開口率の異なる比較例5及び6のサンプルを作製した。
【0308】
[評価]
このようにして得られた、導電性金属部と光透過性部とを有する本発明のサンプル及び比較例のサンプルの導電性金属部の線幅を測定して開口率を求め、さらに表面抵抗率(オーム/sq)を測定した。なお、各測定には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡及び低抵抗率計を用いた。
【0309】
また、メッシュの金属部の色を目視評価し、黒色のものを「○」、褐色ないしグレーのものを「×」とした。さらに、製造方法における工程数について、5以下の工程を有するものを「○」とし、5を超える工程を要するものを「×」と評価した。
【0310】
また、膜強度の評価は以下のように行った。
【0311】
メッシュ金属部が形成されている面側を0.1mmφのサファイヤ針を用いて1cm/秒の速さで引っかく。サファイヤ針の荷重を0〜100gに変化させ、傷がベースに到する時の荷重を以って膜強度の尺度にした。
◎: 引っかき傷が生じ始める荷重が80g以上
○: 引っかき傷が生じ始める荷重が50g以上80g未満
×: 引っかき傷が生じ始める荷重が20g以上50g未満
【0312】
評価結果を、各サンプルのデータと共に表1に示す。
【0313】
【表1】

【0314】
表1からわかるように、比較例4のエッチング銅メッシュは、メッシュの色が褐色であり、工程数も多工程であった。さらに、比較例5の銀ペーストを印刷したメッシュは、線幅が太いため開口率が低かった。この場合、比較例6に示すように、ピッチを広げて開口率を高めることは可能であるが、表面抵抗率が大きくなるという新たな問題が生じた。
【0315】
これに対し、実施例1及び2は、上記比較例に見られる問題点がなく、線幅が細く、もとの線幅からの広がりもほとんどなく、開口率が大きく、さらに、表面抵抗率が低く電磁波シールド能が高い。
【0316】
さらに好ましい形態である実施例4は、メッシュの金属部が黒色であることから、ディスプレイの画像への悪影響コントラスト低下が避けられる。また、製造時の工程数が短工程であった。
【0317】
しかも、実施例1〜4は、膜強度が大きく、取扱いの際にもメッシュ部の欠け、剥がれが起きにくく、品質上、信頼性の高いことがわかった。
【0318】
ゼラチン量を変えた実施例5〜8については、線幅が実施例1〜4よりも僅かに太い。しかし、ピッチを広げて開口率を高めても表面抵抗率が低いことから、実施例1〜4よりも開口率を大きくとることができた。また、膜強度が大きく、信頼性が高い。
【0319】
全面露光の比較例7は、表面抵抗率が低く良好であったが、膜強度が小さく、信頼性の点で問題がある。一方、全面露光の実施例13及び14は、比較例7よりも表面抵抗率が低く、しかも、膜強度が大きく、信頼性の点でも十分であった。
【0320】
なお、実施例9〜11については、表面抵抗率が2.5(オーム/sq)よりも高く、導電性の点では不十分であったが、膜強度が大きく、信頼性の点で十分であった。
【0321】
[第2実施例]
上述した表1に示す実施例1〜14のうち、現像後にカレンダー処理を行い、さらに、定着後にもカレンダー処理を行った実施例14の表面抵抗率が0.08(オーム/sq)で、最も低い値を示している。
【0322】
そこで、現像後のカレンダー処理及び定着後のカレンダー処理における線圧力と表面抵抗率との関係を調べた。その結果を図10に示す。
【0323】
サンプルは、上述したサンプルB−a−2(実施例3参照)と同様とし、上述と同様に、露光、現像を行った後、純水で1分間の水洗を行い、さらに、40℃の乾燥処理を行った。次いで、現像後のカレンダー処理を行い、その後、定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて定着処理を行い、次いで、純水で2分間の水洗を行い、さらに、乾燥処理を行って、定着後のカレンダー処理を行った。
【0324】
カレンダー処理に用いたカレンダーロールとして2種類用意し、1つは表面がエンボス加工された金属ロールと鏡面加工された金属ロールの組み合わせによる第1カレンダーロールであり、他の1つは、表面が鏡面加工された金属ロールと樹脂製のロールの組み合わせによる第2カレンダーロールである。
【0325】
第1カレンダーロールで線圧力を違えてカレンダー処理(現像後及び定着後)した際の表面抵抗率の変化をひし形のプロットで示し、第2カレンダーロールで線圧力を違えてカレンダー処理(現像後及び定着後)した際の表面抵抗率の変化を四角形のプロットで示す。
【0326】
図10から、現像後及び定着後にそれぞれカレンダー処理する場合は、カレンダーロールの種類にほとんど依存せず、線圧力として200(kgf/cm)以上であれば、1.8(オーム/sq)以下の表面抵抗率を得ることができることがわかった。また、線圧力が700(kgf/cm)以降は表面抵抗率のわずかな上昇が見られることから、上限として700(kgf/cm)以下であることが好ましいことがわかる。
【0327】
[第3実施例]
次に、透明導電性フイルム10の特性(透過率、体積抵抗、表面抵抗、可撓性等)について評価した第3実施例を以下に示す。
【0328】
1.細線構造部14を担持した支持体12の作製
(乳剤の調製)
第1実施例の乳剤Aと同様であるため、ここではその重複説明を終了する。
【0329】
(塗布試料の作製)
第1実施例において説明した事項と同様に、乳剤Aを用いた塗布試料Aと同様であるため、ここではその重複説明を終了する。
【0330】
得られた塗布試料は、乳剤層のAg/バインダ体積比率が1/0.7であり、本発明に好ましく用いられるAg/バインダ体積比率1/4以上に該当している。
【0331】
(露光・現像処理)
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=10μm/300μmの現像銀像を与え得る格子状のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0332】
上記処理剤を用いて露光、現像済み感材を、現像25℃、20秒、定着25℃で20秒、水洗:流水(5L/min)の20秒で処理し、且つ、現像、水洗、乾燥、圧密処理、定着、水洗、乾燥、圧密処理の順に行った。圧密処理は金属ロールを装備したカレンダーロール装置を用い、線圧3920N/cm(400kgf/cm)をかけてローラ間に試料を通して行った。
【0333】
2.透明導電性膜16の塗設
上記のようにして形成された細線構造部14の上に下記導電性ポリマーからなる透明性の透明導電性膜16をバーコータによって、塗布量を変更し、表1に示すように塗布して、透明導電性フイルム(実施例21〜23)を作製した。さらに同様の膜厚の塗布を、細線構造部14のないPETベースに実施例21〜23と同様の膜厚になるように塗布し、比較例21〜23を作製した。導電性ポリマーは、ティーエーケミカル株式会社(TA Chemical Co.)の導電性ポリマーBaytron PEDOT (ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。乾燥は室温にて自然乾燥で行った。
【0334】
同様に、細線構造部14のみのサンプルを比較例24、ITOフイルムを用いたサンプルを比較例25とした。
【0335】
3.エレクトロルミネセンス素子の作製
上記のように作製された透明導電性フイルム(実施例21〜23、比較例21〜25)を下記のように無機分散型EL(エレクトロルミネッセンス)素子に組み込み、発光テストを行った。
【0336】
平均粒子サイズが0.03μmの顔料を含む反射絶縁層と蛍光体粒子が50〜60μmの発光層を背面電極となるアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて110℃で1時間乾燥した。
【0337】
その後、透明導電性フイルム10を蛍光体層、背面電極の誘電体層面上に重ね、熱圧着して、EL素子を作製した。EL素子を2枚のナイロン6からなる吸水性シートと2枚の防湿フイルムと挟んで熱圧着した。EL素子のサイズは、3cm×5cm又はA4サイズであった。
【0338】
4.評価
(試料の表面抵抗/透過率)
実施例21〜23、比較例21〜25の表面抵抗、並びに波長550nmの光に対する透過率を測定した。
【0339】
(試料の輝度)
3cm×5cmの試料を用いて、ピーク電圧100V、周波数1kHzの駆動を行った際の初期輝度を評価した。
【0340】
(可撓性の評価)
上述した屈曲試験によるサンプル(実施例21〜23、比較例21〜25)の表面抵抗の上昇率Kを求めた。表面抵抗の上昇率Kは、屈曲試験を行う前のサンプルの表面抵抗をR1、屈曲試験を行った後のサンプルの表面抵抗をR2としたとき、
K=R2/R1
で求めた。
【0341】
屈曲試験は、図11に示すように、基台30に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラ32にサンプル34(実施例21〜23、比較例21〜25)を引っ掛け、サンプル34の一方の端部34aを幅1m当たり28.6(kg)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程と、サンプル34の他方の端部34bを幅1m当たり28.6(kg)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程とを繰り返し行って、サンプル34を100回屈曲させた。
【0342】
評価は、表面抵抗の上昇率Kが1.2以下の場合に○、1.2〜10の場合に△、10以上の場合に×とした。
【0343】
(結果1)
実施例21〜23、比較例21〜25の透過率、細線構造部14の表面抵抗、透明導電性膜16の表面抵抗、強度及び可撓性の評価結果を表2に示す。
【0344】
【表2】

【0345】
この評価結果から、比較例24(細線構造部のみ)の表面抵抗は、比較例25(ITO膜のみ)よりも低いが、図12Aに示すように、細線の近傍しか発光せず、開口部は発光しないため、輝度が著しく低くなる。これに対し、実施例21〜23のように、細線構造部14に透明導電性膜16をつけた場合では、図12Bに示すように、全面発光が確認された。また、表面抵抗が105オーム/sqの透明導電性膜16を用いた場合、比較例23では発光しなかったが、実施例23では、全面発光することが確認された。
【0346】
[第4実施例]
上述のようにして作製したサンプルのうち、A4サイズのサンプル(実施例23、比較例21、24、25)について、ピーク電圧50V、周波数1.4kHzにて駆動し、図13に示すように、Agペーストによるバスバーに取出し電極を設け、取出し電極からの距離を変化させて輝度の測定を行い、取出し電極近傍(基準点)の輝度を基準(=1)とした場合の輝度比を求めた。基準点は、バスバーからの最短距離が10mmであり、測定点は、バスバーからの最短距離が50mm、100mm、150mm、200mm、250mmとした。
【0347】
測定結果を図14に示す。この結果から、透明導電性膜のみの比較例21は、取出し電極からの距離が大きくなるにつれて輝度が減少している。比較例24(細線構造部のみ)は、取出し電極からの距離による輝度の減少がほとんどなく、ほぼ一定であるが、上述したように、比較例24では、図12Aに示すように、面発光しないという問題がある。ITO膜を用いた比較例25は、200mmの測定点までは輝度の減少がほとんどなかったが、250mmの測定点において急激に輝度が低下していることがわかった。これに対して、実施例23は、取出し電極からの距離による輝度の減少がほとんどなく、ほぼ一定であり、しかも、図12Bに示すように、全面発光を実現している。
【0348】
[第5実施例]
次に、以下に示すサンプル1〜6について、上述した屈曲試験を行い、上述と同様の評価基準(表面抵抗の上昇率K)にて可撓性を評価した。
【0349】
サンプル1はITO膜がスパッタにより形成され、表面抵抗300オーム/sqのITOフイルムである。
【0350】
サンプル2はPEDOTによる透明導電性膜16を用いて透明導電性フイルムを作製し、サンプル3は、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することによって形成された細線構造部14のみ有する透明導電性フイルムである。
【0351】
サンプル4は、細線構造部14と透明導電性膜16とを有し、製造過程において、カレンダー処理を行い、さらに温水に浸漬処理した透明導電性フイルムである。サンプル5は、支持体12の上面全面に透明導電性膜16を有し、製造過程において、カレンダー処理を行い、さらに温水に浸漬処理した透明導電性フイルムである。サンプル6は、支持体12の上面全面に透明導電性膜16を有し、製造過程において、カレンダー処理を行い、温水に浸漬処理をしなかった透明導電性フイルムである。
【0352】
評価結果を表3及び図15に示す。
【0353】
【表3】

【0354】
ITO膜を用いたサンプル1は、上昇率が18480.33という非常に高い上昇率を示した。これに対して、サンプル2〜6は、上昇率が2以下であった。なお、サンプル2は抵抗値の上昇はなく、反対に僅かではあるが抵抗が下がっていた。
【0355】
このように、ITO膜を使用した透明導電性フイルムは、サンプル1からも明らかなように、可撓性が不十分であることがわかった。
【0356】
なお、本発明に係る導電膜の製造方法及び透明導電性フイルムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0357】
【図1】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの構成を一部省略して示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第1の変形例を一部省略して示す断面図である。
【図3】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第2の変形例を一部省略して示す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第3の変形例を一部省略して示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第4の変形例を一部省略して示す断面図である。
【図6】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第5の変形例を一部省略して示す断面図である。
【図7】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの第6の変形例を一部省略して示す斜視図である。
【図8】本実施の形態に係る透明導電性フイルムを電極とした自発光表示装置の構成を一部省略して示す断面図である。
【図9】図9A〜図9Eは支持体上に細線構造部を形成する製造方法を示す工程図である。
【図10】現像後のカレンダー処理及び定着後のカレンダー処理における線圧力と表面抵抗率との関係を示す特性図である。
【図11】屈曲試験を説明するための図である。
【図12】図12Aは細線構造部の細線近傍のみが発光した状態を示す図であり、図12Bは全面発光を示す図である。
【図13】取出し電極からの距離に応じた輝度の変化を測定するための実験例を示す説明図である。
【図14】実施例23、比較例21、24及び25において、取出し電極からの距離に応じた輝度の変化を測定した結果を示す特性図である。
【図15】サンプル1〜6についての表面抵抗の上昇率を示す図である。
【符号の説明】
【0358】
10…透明導電性フイルム 12…支持体
14…細線構造部 16…透明導電性膜
22…第1電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に銀塩を含有する銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成する金属銀形成工程と、
前記金属銀部を圧密処理する圧密処理工程と、
を有することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理をカレンダーロールにより行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理を線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理を線圧力2960N/cm(300kgf/cm)以上で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理を線圧力6860N/cm(700kgf/cm)以下で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記金属銀形成工程は、前記金属銀部及び光透過性部を形成することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記金属銀形成工程は、前記金属銀部及び絶縁性部を形成することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理後の前記金属銀部が銀及び非導電性の高分子からなり、Ag/非導電性高分子の体積比が2/1以上であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の導電膜の製造方法において、
前記非導電性の高分子は、体積で50%以上がゼラチンであることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理工程の前段に、さらに還元剤水溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理工程の後段に、さらに前記金属銀部の表面を黒化処理液で黒化処理する黒化処理工程を有することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記銀塩含有層におけるAg/バインダの体積比率が1/2以上であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記圧密処理工程の前段又は後段に、さらに前記金属銀部の表面にめっき層を形成するめっき工程を有することを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法において、
前記支持体が樹脂フイルムであることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項15】
支持体上に圧密処理された導電性金属部からなる細線構造部と透明導電性膜とを有することを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項16】
請求項15記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記透明導電性膜が導電性材料を含むことを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項17】
請求項16記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記導電性材料が透明導電性有機ポリマー、導電性無機又は有機水溶性塩及び導電性無機微粒子から選ばれることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記細線構造部がない場合の透明導電性膜単独の表面抵抗が、102オーム/sq〜108オーム/sqであり、透明導電性フイルムの表面抵抗が0.1オーム/sq以上1000オーム/sq以下であることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記細線構造部の厚み(高さ)が、100μm以下であることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記透明導電性フイルムの光の透過率が、550nmの光に対して70%以上であることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記細線構造部が、前記支持体上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより導電性金属銀部と光透過性部が形成されてなることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記細線構造部の導電性金属部が銀を含有し、Ag/バインダ体積比が1/4 以上であることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記透明導電性膜を前記細線構造部の上面及び/又は下面に設けることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項25】
請求項15〜24のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層を有し、該写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光、現像することにより形成された前記細線構造部が、該導電性材料を含有する透明導電性膜と金属銀部と光透過性部からなることを特徴とする透明導電性フイルム。
【請求項26】
請求項15〜25のいずれか1項に記載の透明導電性フイルムにおいて、
前記細線構造部を形成した後に該細線構造部と前記透明導電性膜とが貼り合わされてなることを特徴とする透明導電性フイルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−4726(P2009−4726A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255763(P2007−255763)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】