説明

導電膜パターンおよび導電膜パターンの形成方法

【課題】微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその導電膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】基材5001と、前記基材上に絶縁性インクを配置することにより形成された絶縁層5002と、前記絶縁層上に、インクジェット装置によって導電性のインクを所定のパターンに配置することにより形成された導電層5004と、を少なくとも有する導電膜パターンにおいて、前記絶縁層上に、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤により形成されたカップリング剤膜5003を有することを特徴とする導電膜パターン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法及び無電解めっきを利用した導電膜パターンの形成方法とそれにより形成された導電膜パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法を用いて導電性インクを基材上に吐出することにより回路配線や電極を形成する技術が提案されている。従来行われてきたフォトリソグラフィー法では多数の工程(導電膜形成、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、などの複数回繰り返し)や材料(導電材料、フォトレジスト、現像液、洗浄液等)が必要であったのに対して、インクジェット法を用いると、工数が簡略であり、材料、エネルギーの使用量も少量で済むことから、低コストで微細な配線パターンの形成が可能な技術として注目を集めている。
【0003】
さらに、導電性インクに加えて絶縁性インクを使用することにより、配線同士のショートを防いだり(例えば、特開2005−210079号)、多層配線基板の作製に応用したり(例えば、特開平11−163499号)する技術が知られている。しかしながら、導電性インクと絶縁性インクの両方を利用して回路配線などのパターンを作製する際には、両者の接着性を改善させることにより回路の信頼性を向上させることが必要とされていた。
【0004】
この課題に対して、例えば、半硬化状態の絶縁層上に導電パターンを形成し、その後に熱処理して完全硬化させることにより、絶縁層と導電パターンとの密着力の改善を図る旨の記載がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法を用いると確かに密着力自体は向上するものの、半硬化状態の絶縁層は表面状態が必ずしも均一でないため、絶縁層上における導電性インクの濡れ性が均一にならず、位置により異なることになる。その結果、吐出された導電性インクの絶縁層上の着弾形状が一様でなく、形成するパターン形状が所望の形状と異なってしまうことになるため、半硬化状態の絶縁インクを利用する技術だけでは高精度で微細な形状のパターンを形成することは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその導電膜パターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0008】
1.基材と、
前記基材上に絶縁性インクを配置することにより形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に、インクジェット装置によって導電性のインクを所定のパターンに配置することにより形成された導電層と、
を少なくとも有する導電膜パターンにおいて、
前記絶縁層上に、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤により形成されたカップリング剤膜を有することを特徴とする導電膜パターン。
【0009】
2.前記絶縁層が、前記基材上の全面に配置されていることを特徴とする前記1に記載の導電膜パターン。
【0010】
3.前記絶縁層が、インクジェット装置により絶縁性インクが所定のパターンに配置されることで形成されていることを特徴とする前記1に記載の導電膜パターン。
【0011】
4.前記基材が複数の電極領域を所有する半導体基板であり、
前記導電膜パターンは前記複数の電極領域間を接続することを特徴とする前記3に記載の導電膜パターン。
【0012】
5.前記基材は導電性領域と非導電性領域とを有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0013】
6.前記基材は導電性インクによる所定のパターンが形成された基材であることを特徴とする前記5に記載の導電膜パターン。
【0014】
7.前記インクジェット装置が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる装置であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0015】
8.前記インクジェット装置が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる装置であることを特徴とする前記7に記載の導電膜パターン。
【0016】
9.前記導電性インクは、無電解めっきの触媒能を有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0017】
10.前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【0018】
11.基材の上に、絶縁性インクを配置することにより絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤によりカップリング剤膜を形成する工程と、
前記カップリング剤膜の上に、インクジェット法により導電性インクを所定のパターンに配置することにより導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする導電膜パターンの形成方法。
【0019】
12.前記絶縁層を形成する工程が、インクジェット法により絶縁性インクを基材の上に配置する工程であることを特徴とする前記11に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0020】
13.前記インクジェット法が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させるインクジェット法であることを特徴とする前記11または12に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0021】
14.前記インクジェット法が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させるインクジェット法であることを特徴とする前記13に記載の導電膜パターンの形成方法。
【0022】
15.前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする前記11〜14のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、微細な形状を有し、基材との密着性や形状精度、信頼性に優れ、複雑、高価な設備、工程を必要とせずに形成する導電膜パターン及びその導電膜パターンの形成方法を提供することができる。
【0024】
本発明は、絶縁層の形成された基材上にインクジェット法によって導電性インクを配置して導電層のパターンを形成する際に、予め所定のカップリング剤により絶縁層の表面処理を行っておくことにより、絶縁層の表面状態を所望の状態に均一化することが可能となるため、導電性インクによる導電層のパターン形状を良好なものにすることが出来るとともに、絶縁層と導電層のパターンとの密着性も向上させた導電層のパターン、更には導電膜パターンを得ることが可能になるものである。
【0025】
また、インクジェット法として静電力を利用する方法を用いることにより、微小な液滴を良好な位置精度で絶縁層上、さらには基材上に配置することが容易に可能となり、本発明の微細形状を有する導電膜パターンの形成に対して好ましく用いられる。
【0026】
また、インクジェット法によって配置されるインクとして無電解めっきの触媒能を有するインクを用い、絶縁層上に形成された導電層のパターン(導電性膜パターン)に対してさらに無電解めっき処理を行うことによりめっき膜を形成する場合においても、めっき金属をインクパターン(導電層のパターン)上に良好に析出させることが出来るため、本発明の信頼性に優れた膜パターンの形成に対して、好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に好ましく用いられる静電力を利用した液滴吐出装置(インクジェット装置)の全体構成を示す模式図である。
【図3】本発明に用いられる静電吸引方式のインクジェット装置のマルチノズルヘッドの概略構成の一例を示す分解斜視図である。
【図4】マルチノズルヘッド500の断面図の一例を図4に示す。
【図5】実施例1の導電膜パターンの形状を示す断面図。
【図6】実施例2の導電膜パターンの形状を示す断面図。
【図7】実施例3の導電膜パターンの形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
本発明は、基材上の絶縁層に対してインクジェット法により導電性インクを配置することによって導電層のパターンを作製する際に、絶縁層表面を予め所定のカップリング剤による表面処理を行っておくことにより、導電性インクの濡れ性を均一化して所望する微細形状のパターンを形成することを可能にするとともに、絶縁層と導電層のパターンとの密着性を良好なものとすることができる。すなわち、絶縁層表面との化学結合により形成されたカップリング剤の膜が有する官能基の作用により絶縁層の表面物性を制御して、配置された導電性インク滴の形状を、微細なパターン形成が可能である程度以上に濡れ広がらず、かつ適度な密着力を保つ程度に制御することを可能とすることができる。
【0030】
(絶縁性インク)
本発明で用いられる絶縁性インクは、絶縁性樹脂組成物を溶媒で溶解させたものであり、必要に応じて各種の添加剤を含有させても良い。
【0031】
絶縁性インクの絶縁性の樹脂組成物としては、電気絶縁性を示す材料を含有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂等を構成する、モノマー、オリゴマー及びポリマー等を含む組成物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。また、上記樹脂組成物は熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。熱硬化性樹脂を含有する絶縁性インクの硬化物からなる絶縁層は、耐熱性に優れるとともに、印刷配線板において絶縁信頼性及び接続信頼性に優れている。
【0032】
本発明においては、上記樹脂組成物が上記した樹脂のうちエポキシ樹脂を含有することが特に好ましい。エポキシ樹脂を用いることで、カップリング剤膜、更には導電層に対する接着性を向上させることができる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合反応させて得られるグリシジルエーテル化物等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて含有させることもできる。さらに、本発明においては、上記樹脂組成物が上記エポキシ樹脂とエポキシ樹脂を硬化する硬化剤とを含有することが好ましい。
【0034】
硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のアミン類;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などの酸無水物類;イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾール類;イミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等でマスクされたイミダゾール類;ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のフェノール化合物;フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物が挙げられる。なお、これらの硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させてもよい。なお、樹脂組成物中には、上述したような成分のほか、所望とする性状に合わせて硬化促進剤、カップリング剤、酸化防止剤、充填剤等を含有させることもできる。
【0035】
本発明で用いられる絶縁性インクに含有される溶媒としては、上述した樹脂組成物の成分を分散又は溶解するものであればよく、例えば、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0036】
(カップリング剤)
本発明で用いられるカップリング剤は、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、からなる群より選択されるものである。本発明においては、前記の群より選択した一種の化合物を用いる場合のみならず、二種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0037】
本発明で用いられるカップリング剤は、フッ素原子を含有しないものである。フッ素原子を含有したカップリング剤を用いることにより、後の工程において絶縁層上に付与される導電性インクと基材との間の接触角は比較的高い値が得られる(すなわち、撥液性が比較的高くなる)が、絶縁層と導電性インクとの密着力の観点や、回路配線として使用する際の観点から、本発明ではフッ素原子を含有しないカップリング剤が用いられる。
【0038】
また、基材上の絶縁層に対する膜自体の密着性、膜物性の安定性、膜形成時の取り扱いの容易性の観点から、本発明においてはチタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、からなる群より選択される化合物が好ましく用いられる。
【0039】
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、イミダゾリルアルキル−トリアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0040】
中でも、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0041】
本発明で用いられるチタンカップリング剤としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、ポリヒドロキシチタンステアレート、KR38S(味の素ファインテクノ社製)、KR44(味の素ファインテクノ社製)、KR46B(味の素ファインテクノ社製)、KR55(味の素ファインテクノ社製)、KR9SA(味の素ファインテクノ社製)、KRTTS(味の素ファインテクノ社製)、KR41B(味の素ファインテクノ社製)、KR138S(味の素ファインテクノ社製)、KR238S(味の素ファインテクノ社製)、KR338X(味の素ファインテクノ社製)、などが挙げられる。
【0042】
中でも、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリヒドロキシチタンステアレート、KR44(味の素ファインテクノ製)、KR46B(味の素ファインテクノ製)、KR55(味の素ファインテクノ製)、KR9SA(味の素ファインテクノ製)、KR41B(味の素ファインテクノ製)、等が好ましい。
【0043】
本発明で用いられるジルコニアカップリング剤としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、等が挙げられる。
【0044】
中でも、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等が好ましい。
【0045】
本発明で用いられるアルミニウムカップリング剤としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノオレイルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート、等が挙げられる。
【0046】
中でも、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が好ましい。
【0047】
(基材)
本発明で用いられる基材は、用途に応じて適宜選択して使用すればよいが、例としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0048】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。
【0049】
また、本発明は、複数の導電層を有する多層配線基板の製造に用いることもできる。この場合、複数の導電層の、一層のみを本発明の方法により形成しても良いし、複層の導電層や、全ての導電層を本発明の方法により形成してもよい。
【0050】
一部の導電層のみを本発明の方法により形成する場合は、既に導電性領域と非導電性領域とが形成されている基材に対して本発明の方法を適用する。即ち、既に形成されている導電性領域と非導電性領域に絶縁層を形成し、絶縁層表面にカップリング剤膜を形成し、その後、導電性インクを配置することで導電層のパターンを作成する。このことにより、既に導電層を有する配線基板にさらに導電層を形成し、多層配線基板を作製することができる。
【0051】
複数の導電層を本発明の方法により形成する場合は、本発明の方法により導電層の形成された基材上に、さらに本発明の方法を適用する。即ち、導電性インクにより既に所定のパターンが形成された基材上に、絶縁層を形成し、絶縁層表面にカップリング剤の膜を形成し、その後導電性インクを配置することで導電層のパターンを作製する。
【0052】
また、本発明は、基材として電極領域を複数ヶ所有する基板を用いて、電極同士を接続するように導電性インクによる導電層を形成しても良い。具体的には、半導体などの基材上に予め形成されている電極パターン間を導電性インクによる導電層で接続したり、基材上の端子と、基材上に搭載された電子部品などの電極を接続したりすることができる。この場合、導電層に先立って形成される絶縁層を、接続する電極部分以外の基材上に形成することで、電極部分による導通を確実なものとすることができる。
【0053】
(基材への絶縁層の形成)
基材上に絶縁性インクを配置して絶縁層を形成する方法としては、既存の塗布方法(スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スピンコート、ワイヤーバーコート、ブレードコート、ロールコート、ディップコート等)を用いることができるが、本発明においてはディスペンサー装置あるいはインクジェット装置を用いることが好ましい。特に、基材全面に絶縁層を設けるのではなく、導電層のパターンを形成する位置付近のみに絶縁層を設ける場合は、インクジェット装置が好ましく用いられる。ただし、基材全面に絶縁層を設ける場合でもインクジェット装置を使用しても良い。
【0054】
ディスペンサー装置を使用する場合には、既存のスクリーン印刷用の絶縁インクを用いることが可能である。粘度は1000〜20000mPa・Sが好ましく、3000〜15000mPa・Sがより好ましい。3000mPa・S以上であると濡れ広がり細線が形成できる点で好ましく、15000mPa・S以下であると細いニードルでの射出ができる点で好ましい。ニードルの太さとしては、0.10〜1.0μmを用いることが好ましい。
【0055】
また、インクジェット装置を用いる場合には、絶縁インクの粘度は50mPa・S以下が好ましい。なお、本発明に係るインクジェット装置を使用する場合のインク粘度としては、射出温度において20mPa・S以下であることが好ましい。さらには2.0〜8.0mPa・Sがより好ましい。2.0mPa・S以上であると絶縁性インクの濃度上から所望の絶縁性が得られる点で好ましく、また、8.0mPa・S以下であると射出性の点から好ましい。また、8.0mPa・S以上になると射出不良が出る場合がある。射出温度については、20〜60℃であることが好ましく、さらには25〜50℃がより好ましい。
【0056】
また、インクの表面張力は、20mN/m以上とすることが好ましく、吐出の安定性、描画の信頼性の観点から、25〜45mN/mとすることがより好ましい。
【0057】
また、静電力を利用したインクジェット装置を用いて描画する場合、インクの電気伝導度を0.1μS/cm以上とすることが好ましく、さらに高精度描画の観点からは1μS/cm以上とすることが好ましい。
【0058】
本発明においては、基材上に絶縁性インクを配置させた後に加熱や光照射などを行うことによって絶縁性インクを硬化させて絶縁層を形成する。硬化させる手段については、絶縁性インクの物性に応じて、熱風循環炉(オーブン)、ホットプレート、紫外線照射などの装置、方法を用いればよい。
【0059】
(絶縁層へのカップリング剤膜の形成)
基材上に形成した絶縁層に対してカップリング剤膜を形成する膜形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カップリング剤を溶媒に希釈した溶液を基材表面に対してスプレーコート、スピンコート、ディップコート、ロールコート、インクジェットなどの方法で付与する方法を挙げることが出来る。この場合、溶媒は用いるカップリング剤の種類に応じて適当なものを選択して用いることが出来るが、例えば、イソプロパノールや1−ブタノールを使用することが出来る。
【0060】
また、希釈液中のカップリング剤濃度は任意の値にすることが出来るが、濃度が高すぎると取り扱いが困難になり基材上へ均一に付与することが難しく、逆に濃度が低すぎると形成された膜が所望の物性を発現しない場合があるため、例えば0.01〜20質量%の範囲の中で任意の値に設定すればよい。
【0061】
また、カップリング剤を付与された基板は、熱風循環炉(オーブン)やホットプレートなどを用いて加熱乾燥される。加熱乾燥されることにより、絶縁層上に付与されたカップリング剤が絶縁層表面において所望の物性、機能を発現することになる。
【0062】
また、絶縁層上にカップリング剤を付与するのに先立って、絶縁層とカップリング剤膜との密着性を高めると言う観点から、絶縁層に予め表面処理を行ってもよい。表面処理の例として、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、化学薬品処理を挙げることができる。
【0063】
(多層配線基板の製造)
本発明は、導電膜パターンを一層だけでなく、複数層有する多層配線基板の製造に用いることができる。本発明を多層配線基板の製造に適用する場合の好ましい方法の一例として、以下の方法を挙げることができる。
1)基材上に、絶縁性インクを配置、乾燥させて第1絶縁層を形成する
2)第1絶縁層表面にカップリング層を形成し、乾燥させる
3)導電性インクをインクジェット法により配置する
4)焼成、乾燥させて第1導電層を形成する
5)絶縁性インクを配置、乾燥させて第2絶縁層を形成する
6)第2絶縁層表面にカップリング層を形成、乾燥する
7)導電性インクをインクジェット法により配置する
8)焼成、乾燥させて第2導電層を形成する
また、上記工程の後にさらに5)〜8)の工程を繰り返すことにより、さらに絶縁層、導電層を積層しても良い。
【0064】
(導電性インク)
本発明で用いられる導電性インクとして、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液などを用いることが出来る。
【0065】
前記インクの形態は特に限定されるものではないが、好ましい形態として、導電性微粒子として金属微粒子を含有する形態が挙げられる。
【0066】
本発明に用いられる金属微粒子としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等が挙げられるが、その中でも特に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Cu又はこれらを含む合金が好ましく用いられる。これらの金属微粒子は、平均粒子径が100nm以下の金属ナノコロイドであることが好ましい。
【0067】
本発明で用いられる金属微粒子含有インクには、金属微粒子の保護コロイドとして重合体または界面活性剤を用いることができ、特に、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリウレタンとアルカノールアミンとのブロック共重合体が好ましい。
【0068】
本発明で用いられる金属微粒子含有インクは、水系インクと油系インクとが挙げられる。金属微粒子を、水を主体とする分散媒に分散して構成される水系導電性インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
【0069】
塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液中に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながら、ジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子が析出する。その後、塩素イオンや硝酸イオンを限外濾過などの濾過方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより、高濃度に金属微粒子を含有した水系インクが得られる。この水系インクは、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解、混合することが可能である。
【0070】
また、金属微粒子を油性分散媒に分散した油系インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
【0071】
油溶性ポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、このポリマー溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると、金属微粒子が重合体中に分散された形で油相側に析出してくる。これを洗浄、濃縮、乾燥させることにより、水系インクと同様の濃厚な金属微粒子を含有する油系インクが得られる。この油系導電性インクは、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解、混合することが可能である。
【0072】
インクの分散媒中における金属微粒子の濃度は、最大80質量%程度にすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用することができる。通常は、インクにおける金属微粒子の含有量は2〜50質量%、界面活性剤および樹脂成分の含有量は0.3〜30質量%、粘度は3〜30mPa・sとすることが好ましい。
【0073】
また、本発明で用いられるインクは、インクジェットヘッドから良好に吐出でき、かつ基材上に配置した際に適度な濡れ広がり性を示すという観点から、表面張力を20mN/m以上50mN/m以下の値に調整することが好ましい。さらに、25mN/m以上45mN/m以下とすることがより好ましい。
【0074】
また、本発明で用いられるインクは、電気伝導度を0.1μS/cm以上、1000μS/cm以下とすることが好ましい。より好ましくは、1μS/cm以上、100μS/cm以下の値とする。このことにより、インクジェット方式として静電力を用いる場合に、インクの吐出が安定となり、インクの基材上への着弾位置のばらつきが低減され、好ましく用いることが出来る。
【0075】
本発明において、導電性インクとして金属微粒子を含有するインクを用いた場合、インクジェット装置により基板上に所定の形状の膜パターンを形成した後に熱風循環炉(オーブン)やホットプレートなどを用いて加熱、焼成を行うことが好ましい。このことにより、インク中に含有される分散剤などの有機物質や溶媒が蒸発し、形成されたパターンの電気伝導度を高めることができる。焼成時の温度は特に制限はないが、基材として樹脂基材を用いる場合は基材の軟化点や融点以下で行う必要がある。
【0076】
本発明で用いられる導電性インクは、無電解めっきの触媒能を有していても良い。この場合、基材上に導電膜パターンを形成した後、さらに無電解めっき処理を行うことにより導電膜パターンの厚みを増すことができる。無電解めっき処理に用いるめっき液は、めっき材料として析出させる金属イオンが溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有されるものであり、公知の無電解めっき液を用途に応じて特に制限無く使用することができる。
【0077】
めっき液に含有される金属塩の例としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが挙げられる。
【0078】
還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、金属とともに析出して含有されていてもよい。或いは2種類以上の金属塩を含有するめっき液を用いて、合金が析出するような形態を取っても良い。
【0079】
めっき液には、必要に応じて、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶媒として、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしてもよい。
【0080】
めっき液の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、および必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、めっき液の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、めっき液の温度を調整する方法、また例えばめっき液中に浸漬する場合、浸漬前に基材(カップリング剤膜が形成されている基材)を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。さらに、めっき液に浸漬する時間で析出する金属の膜厚を調整することもできる。
【0081】
また、導電膜パターンが形成された基材をめっき液で処理するに先立って、基材に前処理を行うことが好ましい。前処理の例として、基材の加熱乾燥処理、洗浄処理、触媒活性化処理などが挙げられ、公知の処理方法を必要に応じて選択して処理を行えばよい。特に、インクパターンに対して選択的に触媒能を付与する処理工程を行うことが好ましい。
【0082】
また、無電解めっき処理を行って配線パターンを形成した後に、さらに電気めっきを行って配線の厚みを増すようにしてもよい。この場合は、電気めっきを行う際の通電に使用するための電極として使用するためのパターンを、配線パターンと同様にインクによって形成しておくことが好ましい。
【0083】
(インクジェット装置、方法)
インクジェット装置として静電力を利用するインクジェット装置を用いることにより、微小な液滴を良好な位置精度で基材上に配置することが容易に可能となり、本発明の、微細形状を有する導電膜パターンの形成に対して好ましく用いることができる。
【0084】
(インクジェット記録装置の概要)
以下、本発明に係るインクジェット記録装置の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を示す斜視図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置100は、底板1と、水平ガイドレール2を下方から所定高さ位置で支持するガイドレール支持台3を備えている。水平ガイドレール2は、垂直ガイドレール6を介してキャリッジ7を支持しており、垂直ガイドレール6とキャリッジ7は、一体となって、図示しない移動機構により所定の搬送方向である水平な主走査方向Xに、水平ガイドレール2に沿って往復移動するようになっている。また、キャリッジ7は、図示しない移動機構により垂直方向Zに、垂直ガイドレール6に沿って往復移動するようになっている。底板1には、図示しない基材を非記録面側から支持する支持台4と、インクジェット記録ヘッド8のメンテナンスを行うメンテナンス装置5とが、水平ガイドレール2の長手方向に並んで配設されている。支持台4は、図示しない搬送機構により主走査方向Xと直交する副走査方向Yに、記録媒体を搬送するものである。
【0085】
また、支持台4は、静電吸引力を利用してインクを吐出させる場合には、静電電圧印加手段の電極としての機能も具備する。
【0086】
キャリッジ7には、本発明に係るインクを基材に対して吐出するインクジェット記録ヘッド8が搭載されている。インクジェット記録ヘッドについては後に詳述する。
【0087】
本発明において上記のインクジェット記録装置を使用する際には、支持台上に配置された基材上に、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクによって任意のパターンを描画するように、キャリッジと支持台を任意に移動できるように制御するとともに、記録ヘッドからのインクの吐出制御を行う。
【0088】
(静電力を利用した液滴吐出手段)
図2は、本発明に好ましく用いられる、静電力を利用した液滴吐出装置(インクジェット装置)の全体構成を示す模式図である。なお、本発明で用いられるインクジェット記録ヘッド402は、いわゆるシリアル方式あるいはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
【0089】
本実施形態の液滴吐出装置401は、帯電可能なインクLの液滴Dを吐出するノズル410が形成された液体吐出ヘッド402と、液体吐出ヘッド402のノズル410に対向する対向面を有すると共にその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極403とを備えている。
【0090】
インクジェット記録ヘッド(以下、液体吐出ヘッドともいう)402の対向電極403に対向する側には、複数のノズル410を有する樹脂製のノズルプレート411が設けられている。液体吐出ヘッド402は、ノズルプレート411の対向電極403に対向する吐出面412からノズル410が突出していないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている。
【0091】
各ノズル410は、ノズルプレート411に穿孔されて形成されており、各ノズル410には、それぞれノズルプレート411の吐出面412に吐出孔413を有する小径部414とその背後に形成されたより大径の大径部415との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル410の小径部414および大径部415は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部414の吐出孔413の内部直径(以下、ノズル径という。)が例えば10μm、大径部415の小径部414から最も離れた側の開口端の内部直径が、例えば75μmとなるように構成されている。
【0092】
ノズルプレート411の吐出面412と反対側の面には、例えばニッケル等の導電性部材よりなりノズル410内の液体Lを帯電させるための帯電用電極416が設けられている。本実施形態では、帯電用電極416は、ノズル410の大径部415の内周面417まで延設されており、ノズル内のインクLに接するようになっている。
【0093】
また、帯電用電極416は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源418に接続されており、単一の帯電用電極416が全てのノズル410内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源418から帯電用電極416に静電電圧が印加されると、全ノズル410内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド402と対向電極403との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
【0094】
帯電用電極416の背後には、ボディ層419が設けられている。ボディ層419の各ノズル410の大径部415の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lと連通したキャビティ420になっている。
【0095】
ボディ層419の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層421が設けられており、可撓層421により液体吐出ヘッド402が外界と画されている。
【0096】
なお、ボディ層419には、キャビティ420に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層419としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ420、共通流路、および共通流路とキャビティ420とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ420、ノズル410等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
【0097】
可撓層421の外面の各キャビティ420に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子422が設けられており、ピエゾ素子422には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源423が接続されている。ピエゾ素子422は、駆動電圧電源423からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル410の吐出孔413に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータや発熱素子等を採用することも可能である。
【0098】
駆動電圧電源423および帯電用電極416に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源418は、それぞれ動作制御手段424に接続されており、それぞれ動作制御手段424による制御を受けるようになっている。
【0099】
動作制御手段424は、本実施形態では、CPU425やROM426、RAM427等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU425は、ROM426に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源418および各駆動電圧電源423を駆動させてノズル410の吐出孔413からインクである液体Lを吐出させるようになっている。
【0100】
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド402のノズルプレート411の吐出面412には、吐出孔413からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層428が吐出孔413以外の吐出面412全面に設けられている。撥液層428は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面412に成膜されている。なお、撥液層428は、ノズルプレート411の吐出面412に直接成膜してもよいし、撥液層428の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
【0101】
液体吐出ヘッド402の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極403が液体吐出ヘッド402の吐出面412に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極403と液体吐出ヘッド402との離間距離は、0.1mm〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
【0102】
本実施形態では、対向電極403は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源418から帯電用電極416に静電電圧が印加されると、ノズル410の吐出孔413の液体Lと対向電極403の液体吐出ヘッド402に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極403はその電荷を接地により逃がすようになっている。また、これとは逆に、基材側の電極403に静電電圧を印加し、液体Lに接している電極416を接地ささせるような構成にしても良い。
【0103】
なお、対向電極403または液体吐出ヘッド402には、液体吐出ヘッド402と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド402の各ノズル410から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
【0104】
次に、以下、図面を参照しながら本発明に好ましく用いられるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の好ましい一態様について説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0105】
本発明に用いられるインクジェットヘッドの一例として、マルチノズルヘッド500が図3に示されている。マルチノズルヘッド500はノズルプレート531、ボディプレート532および圧電素子533を有している。ノズルプレート531は150μm〜300μm程度の厚みを有したシリコン基材また酸化シリコン基材である。ノズルプレート531には複数のノズル501が形成されており、これら複数のノズル501が1列に配列されている。
【0106】
ボディプレート532は、200μm〜500μm程度の厚みを有したシリコン基材である。ボディプレート532にはインク供給口601、インク貯留室602、複数のインク供給路603および複数の圧力室604が形成されている。
【0107】
インク供給口601は直径が400μm〜1500μm程度の円形状の貫通孔である。
【0108】
インク貯留室602は幅が400μm〜1000μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0109】
インク供給路603は幅が50μm〜150μm程度で深さが30μm〜150μm程度の溝である。圧力室604は幅が150μm〜350μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0110】
ノズルプレート531とボディプレート532とは互いに接合されるようになっており、接合した状態ではノズルプレート531のノズル501とボディプレート532の圧力室604とが1対1で対応するようになっている。
【0111】
ノズルプレート531とボディプレート532とが接合された状態でインク供給口601にインクが供給されると、当該インクはインク貯留室602に一時的に貯留され、その後にインク貯留室602から各インク供給路603を通じて各圧力室604に供給されるようになっている。
【0112】
圧電素子533はボディプレート532の圧力室604に対応した位置に接着されるようになっている。圧電素子533はPZTと電極からなるアクチュエータであり、電圧の印加を受けると変形して圧力室604の内部のインクをノズル501から吐出させるようになっている。
【0113】
次に、マルチノズルヘッド500の断面図の一例を図4に示す。図3では図示しないが、ノズルプレート531とボディプレート532と間には硼珪酸ガラスプレート534(図4参照)が介在している。また、ノズル内部の液体に静電電圧を印加するための図示しない帯電用電極が設けられている。
【0114】
図4に示す通り、1つの圧電素子に対応してノズル501と圧力室604とが1つずつ構成されている。
【0115】
ノズルプレート531においてノズル501には段が形成されており、ノズル501は下段部501aと上段部501bとで構成されている。下段部501aと上段部501bとは共に円筒形状を呈しており、下段部501aの直径D1(図4中左右方向の距離)が上段部501bの直径D2(図3中左右方向の距離)より小さくなっている。
【0116】
ノズル501の下段部501aは上段部501bから流通してきたインクを直接的に吐出する部位である。下段部501aは直径D1が1μm〜10μmで、長さL(図4中上下方向の距離)が1.0μm〜5.0μmとなっている。下段部501aの長さLを1.0μm〜5.0μmの範囲に限定するのは、インクの着弾精度を飛躍的に向上させることができるからである。
【0117】
他方、ノズル501の上段部501bは圧力室604から流通してきたインクを下段部501aに流通させる部位であり、その直径D2が10μm〜60μmとなっている。
【0118】
上段部501bの直径D2の下限を10μm以上に限定するのは、10μmを下回ると、ノズル501全体(下段部501aと上段部501b)の流路抵抗に対し上段部501bの流路抵抗が無視できない値となり、インクの吐出効率が低下しやすいからである。
【0119】
逆に、上段部501bの直径D2の上限を60μm以下に限定するのは、上段部501bの直径D2が大きくなるほど、インクの吐出部位としての下段部501aが薄弱化して(下段部501aが面積増大して機械的強度が小さくなる。)、インクの吐出時に変形し易くなり、その結果インクの着弾精度が低下するからである。すなわち、上段部501bの直径D2の上限が60μmを上回ると、接着剤液の吐出に伴い下段部501aの変形が非常に大きくなり、着弾精度を規定値(=0.5°)以内に抑えることができなくなる可能性があるからである。
【0120】
ノズルプレート531とボディプレート532との間には数百μm程度の厚みを有した硼珪酸ガラスプレート534が設けられており、硼珪酸ガラスプレート534にはノズル501と圧力室604とを連通させる開口部534aが形成されている。開口部534aは、圧力室604とノズル501の上段部501bとに通じる貫通孔であり、圧力室604からノズル501に向けてインクを流通させる流路として機能する部位である。圧力室604は、圧電素子533の変形を受けて当該圧力室604の内部のインクに圧力を与える部位である。
【0121】
以上の構成を具備するマルチノズルヘッド500では、圧電素子533が変形すると、圧力室604の内部のインクに圧力を与え、当該インクは圧力室604から硼珪酸ガラスプレート534の開口部534aを流通してノズル501に至り、最終的にノズル501の下段部501aから吐出されるようになっている。
【0122】
なお、本発明に係るインクジェット記録装置の一態様としては、マルチノズルヘッド500のノズルプレート531に対向する位置に基材電極が設けられており(図示略)、ノズル501と当該基材電極との間に静電電圧を印加できるようになっている。
【0123】
従って、圧電素子による液体への圧力付与と帯電用電極による液体への静電吸引力との相乗効果により効率的に液滴を吐出できる液滴吐出ヘッドとすることが出来る。換言すると、静電吸引力が働かない場合には飛翔中の空気抵抗の影響により飛翔速度が低下して正規の着弾位置まで到達できないような微小な液滴を吐出する場合においても、静電吸引力の作用により正規の着弾位置に高い精度で着弾させることができ、良好な形状のパターンを形成することができる。
【0124】
本発明において、インクジェット装置により線状のパターンを形成する際には、いわゆる間引き描画(まず、互いに接触しない間隔で液滴を配置し、その後に間隔を埋めることにより線状パターンを形成する方法)を行わず、液滴を連続的に配置することにより線状パターンを形成する方法が好ましく用いられる。この方法を用いると、線状パターンを形成する際に断線(線の途切れ)や、パターンからのインクの溢れなどがしばしば発生するといわれているが、本発明の如く基材の表面物性を所望の物性になるよう制御し、さらに使用するインク物性に応じて表面物性を変化させることにより、複雑な制御が必要となる間引き描画を行わずとも、前記のような問題の発生を解消できる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0126】
実施例1
エポキシ系接着剤であるエポテック330(エポキシテクノロジー社製)の主剤とγ−ブチロラクトンを質量比で1:3となるように混合した後、エポテック330の硬化剤を全体の2.5質量%になるように添加した。得られた溶液を0.45μmのフィルターでろ過することにより、絶縁性インクを調整した。
【0127】
シリコン基材に、酸素プラズマ処理を施すことにより表面洗浄を行った後、絶縁インクをスピンコート法により塗布し、150℃に設定した恒温槽内で60分間乾燥することにより、基材上に絶縁層を形成した。
【0128】
カップリング剤を溶媒で希釈した溶液を準備した。下表に、カップリング剤の種類と、溶媒種を示す(カップリング剤の濃度は、全て0.5質量%とした)。
【0129】
【表1】

【0130】
T1770:トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(東京化成工業社製)
【0131】
【化1】

【0132】
KBM−7103:トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CFCHCHSi(OCH
KBM−202SS:ジフェニルジメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0133】
【化2】

【0134】
KBM−3063:ヘキシルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CH(CHSi(OCH
KBM−602:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0135】
【化3】

【0136】
KBM−573:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0137】
【化4】

【0138】
KBM−803:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
(CHOSiCSH
KBM−3103:デシルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
CH(CHSi(OCH
KR 44:イソプロピル−トリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(味の素ファインテクノ社製)
i−CO−Ti[−O−(CH−NH−(CH−NH
KR 41B:(味の素ファインテクノ社製)
(i−CO−)Ti[(P(OC17OH)
KR 46B:(味の素ファインテクノ社製)
(C17O−)Ti[(P(OC1327OH)
KR 55:(味の素ファインテクノ社製)
【0139】
【化5】

【0140】
KR 9SA:(味の素ファインテクノ社製)
【0141】
【化6】

【0142】
KR TTS:(味の素ファインテクノ社製)
【0143】
【化7】

【0144】
PC−605:チタンオリゴマー化合物(オルガチックスPC−605)(マツモトファインケミカル社製)
TC−750:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル社製)
(i−CO)Ti(C
TC−200:チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(マツモトファインケミカル社製)
(C17O)Ti(O17
TPHS:ポリヒドロキシチタンステアレート(マツモトファインケミカル社製)
【0145】
【化8】

【0146】
ZC−580:ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル社製)、
Zr(O−n−C(C
ZB−320:ジルコニウムトリブトキシモノステアレート(マツモトファインケミカル社製)
Zr(O−n−C(OCOC1735
AL−M:アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(味の素ファインテクノ社製)
【0147】
【化9】

【0148】
これらカップリング剤溶液に、絶縁層を形成したシリコン基板を浸漬させた後、100℃に設定した恒温槽内で20分間乾燥させることにより、絶縁層上に各種カップリング剤膜を形成した。
【0149】
次に、銀ナノ粒子含有インク(住友電工製 AGIN−W4A)に純水及びエチレングリコールを添加して25℃における粘度が5mPa・s、表面張力が30mN/mとなるように調製したものをインクジェット用銀インクとして準備した。この銀インクを、図1〜4に記載したインクジェット装置(静電・圧電によるインクジェット装置)を用いて、ヘッド(ノズル径10μm)から吐出することにより、絶縁層基材上に銀インクのパターンを形成した。パターン形状が線幅30μm、長さ1mmの線状パターンを50μm間隔で20本並ぶ形状になるように、装置の射出周波数や吐出電圧、ヘッドと基材の相対移動速度を適宜調整した。
【0150】
パターンを形成した基材は、150℃の恒温槽内で30分間焼成させて、導電膜パターンを形成した試料を得た(図5)。
【0151】
導電膜パターンを形成した試料について、下記の評価を行った。
【0152】
(導電パターン形状)
導電膜パターンを形成した試料を顕微鏡で観察し、導電パターン(導電層のパターン)の形状を下記基準に則り○△×の三段階で評価した。
○:線幅のばらつきは少なく、形成されたパターン形状は良好であった。
△:線幅のばらつきはあるものの、断線したり、濡れ広がりすぎて隣接する線と短絡する部分は見られなかった。
×:導電インクが大きく濡れ広がって隣接する線と短絡したり、線が途切れてしまう部分が多く見られた。
【0153】
(密着性)
日本工業規格JIS K 5600−5−6に示されるクロスカット法に準じたテープ剥離試験により密着性を下記基準に則り評価し、結果を○△×の三段階で示した。
○:密着性は良好(クロスカット法の試験結果分類0に相当する)
△:密着性は中程度(クロスカット法の試験結果分類1〜2に相当する)
×:密着性は悪い(クロスカット法の試験結果分類3に相当するか、さらに悪い)
結果を表2に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のカップリング剤膜を基材に形成することにより、導電性インクの配置によって形成される導電層のパターンがパターン形状の良好な状態で得られ、さらに絶縁層と導電層の密着性も良好なものにすることが可能となることがわかる。
【0156】
実施例2
(絶縁性インクのパターン形成)
実施例1で作製した絶縁性インクを、実施例1と同様にインクジェット装置によりシリコン基材上に吐出した後、150℃で60分間乾燥させることにより、基材上に絶縁層のパターンを形成した。
【0157】
(カップリング剤処理)
次に、実施例1と同様にカップリング剤溶液への浸漬処理及び乾燥を行うことにより、絶縁層形成基材上に各種カップリング剤膜を形成した。
【0158】
次に、実施例1と同様にインクジェット装置により基材のカップリング剤膜を形成された絶縁層のパターン上に銀インクのパターンを形成し、乾燥させ、図6に示すような線状のパターンを形成した。銀インクの線状パターンの形状は良好であり、密着性も良好であった。
【0159】
また、比較として、カップリング剤処理を行わなかった絶縁層形成基材上に同様の銀インクのパターンの形成を試みたが、線状パターンが途切れたり、広く濡れ広がったりする部分が多数見られ、良好な形状の線状パターンは形成できなかった。
【0160】
実施例3
下記の工程により、図7に示すような、導電性パターンが2層積層されたパターンを形成した(工程の内容は、実施例1及び2に記載の方法に準ずる)。
1)シリコン基材に、絶縁性インクを配置、乾燥させて第1絶縁層を形成
2)第1絶縁層表面にカップリング層を形成、乾燥
3)導電性インクをインクジェット法により配置
4)焼成、乾燥させて第1導電層を形成
5)絶縁性インクを配置、乾燥させて第2絶縁層を形成
6)第2絶縁層表面にカップリング層を形成、乾燥
7)導電性インクをインクジェット法により配置
8)焼成、乾燥させて第2導電層を形成
上記の工程により形成された導電性パターンは、密着性が良好であり、隣接する配線間の絶縁性、さらに第1導電層と第2導電層の間の絶縁性も確保されていた。
【0161】
一方、上記の工程から2)、6)(カップリング層の形成工程)を省略した他は同様にして2層積層パターンを形成したものについては、導電層が途切れることによる断線(導通不良)、隣接する線間のリーク(短絡)、密着性不良による配線の剥がれ、が随所で観察された。
【符号の説明】
【0162】
1 底板
2 水平ガイドレール
3 ガイドレール支持台
4 基材を支持する支持台
5 メンテナンス装置
6 垂直ガイドレール
7 キャリッジ
8、11、402 インクジェット記録ヘッド
401 液滴吐出装置
403 対向電極
410、501 ノズル
416 帯電用電極
500 マルチノズルヘッド
533 圧電素子
604 圧力室
5001 基材(シリコン基材)
5002 絶縁層
5003 カップリング剤層
5004 導電層(パターン)
6001 基材(シリコン基材)
6002 絶縁層(パターン)
6003 カップリング剤層
6004 導電層(パターン)
7001 基材(シリコン基材)
7002 第1絶縁層
7003 第1カップリング剤層
7004 第1導電層(パターン)
7012 第2絶縁層
7013 第2カップリング剤層
7014 第2導電層(パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に絶縁性インクを配置することにより形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に、インクジェット装置によって導電性のインクを所定のパターンに配置することにより形成された導電層と、
を少なくとも有する導電膜パターンにおいて、
前記絶縁層上に、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤により形成されたカップリング剤膜を有することを特徴とする導電膜パターン。
【請求項2】
前記絶縁層が、前記基材上の全面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の導電膜パターン。
【請求項3】
前記絶縁層が、インクジェット装置により絶縁性インクが所定のパターンに配置されることで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電膜パターン。
【請求項4】
前記基材が複数の電極領域を所有する半導体基板であり、
前記導電膜パターンは前記複数の電極領域間を接続することを特徴とする請求項3に記載の導電膜パターン。
【請求項5】
前記基材は導電性領域と非導電性領域とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項6】
前記基材は導電性インクによる所定のパターンが形成された基材であることを特徴とする請求項5に記載の導電膜パターン。
【請求項7】
前記インクジェット装置が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させる装置であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項8】
前記インクジェット装置が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させる装置であることを特徴とする請求項7に記載の導電膜パターン。
【請求項9】
前記導電性インクは、無電解めっきの触媒能を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項10】
前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤、から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電膜パターン。
【請求項11】
基材の上に、絶縁性インクを配置することにより絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に、フッ素原子を含有しないシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤によりカップリング剤膜を形成する工程と、
前記カップリング剤膜の上に、インクジェット法により導電性インクを所定のパターンに配置することにより導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする導電膜パターンの形成方法。
【請求項12】
前記絶縁層を形成する工程が、インクジェット法により絶縁性インクを基材の上に配置する工程であることを特徴とする請求項11に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項13】
前記インクジェット法が、吐出孔を有するノズルプレート、吐出孔に連通する圧力室、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生素子、及び圧力発生素子に電圧を印加する駆動電圧印加手段、を具備する液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させるインクジェット法であることを特徴とする請求項11または12に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項14】
前記インクジェット法が、さらに静電電圧印加手段を有し、前記圧力変動に加えて静電力を利用して液滴を飛翔させるインクジェット法であることを特徴とする請求項13に記載の導電膜パターンの形成方法。
【請求項15】
前記カップリング剤が、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、およびアルミニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の導電膜パターンの形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−182776(P2010−182776A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23485(P2009−23485)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】