説明

導電膜及びその製造方法、並びにタッチパネル

【課題】塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れた導電膜の製造方法、前記導電膜の製造方法により製造された導電膜、及び前記導電膜を有するタッチパネルの提供。
【解決手段】金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液を含有する導電膜形成用塗布液を支持体上に塗布する塗布工程とを含み、前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上である導電膜の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜及びその製造方法、並びに、前記導電膜を有するタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
導電膜は、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスに広く利用されており、電気、電子分野における部材として、近年、需要が高まっている。
【0003】
導電膜を構成する材料としては、ITOが一般的であるが、近年、金属ナノワイヤーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
金属ナノワイヤーを含む導電膜は、透明性が高く、表面抵抗値が低く、導電性が良好である。また、その製膜方法は、該金属ナノワイヤー分散液を塗布するなどの簡便な方法で実現でき、大掛かりな設備も必要としない点で有利である。
金属ナノワイヤー分散液には、金属ナノワイヤーの凝集を防ぎ、安定な分散性を維持するために、分散剤を添加する。しかし、分散剤は、金属ナノワイヤーの表面に吸着し、金属ナノワイヤー同士のネットワーク形成を阻害し、導電性を低下させてしまう。
また、ポリオール法を用いて調製された銀ナノワイヤー分散液を、遠心分離工程や限外濾過工程(特許文献2参照)を経た後、水やアルコール等の溶媒で更に洗浄し、分散剤を除去する工程を含む銀ナノワイヤー分散液の製造方法も提案されている。これらの提案では、銀ナノワイヤー分散液を調製し、該銀ナノワイヤー分散液を塗布し、乾燥させることにより、導電膜の形成を行っており、銀ナノワイヤー表面に吸着した分散剤の減少によって銀ナノワイヤー間の接触抵抗が下がり導電性が向上できると推測される。
本発明者は、水系HTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)法で金属ナノワイヤーを作製し、透明導電膜を作製することを提案した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−215594号公報
【特許文献2】特開2009−129732号公報
【特許文献3】特開2010−84173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献3では、金属ナノワイヤーを含む分散液を、遠心分離工程や限外濾過工程を経た後、水やアルコール等の溶媒で更に洗浄すると、洗浄中に金属ナノワイヤーが凝集してしまい、塗布後に金属ナノワイヤーの塊を核とするブツ故障(pimple defects)が生じてしまうことがある。ブツ故障とは、ミクロンからサブミクロンオーダーの金属ナノワイヤーの塊が透明導電膜面に形成されてしまう現象を意味する。
【0006】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れた導電膜の製造方法、前記製造方法により製造された導電膜、及び前記導電膜を有するタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、本発明の導電膜の製造方法は、金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを少なくとも含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程を少なくとも含む導電膜の製造方法であって、前記洗浄工程後の前記金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上であることにより、塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れた導電膜を製造することができることを知見し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液を含有する導電膜形成用塗布液を支持体上に塗布する塗布工程と、を含む導電膜の製造方法であって、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上であることを特徴とする導電膜の製造方法である。
<2> 前記分散剤の含有量が、3.2質量%以上20質量%以下である前記<1>に記載の導電膜の製造方法である。
<3> 前記分散剤の含有量が、3.2質量%以上5質量%以下である前記<1>に記載の導電膜の製造方法である。
<4> 前記金属ナノワイヤーが、金属錯体を含有する水溶液を該水溶液の沸点以下の温度で加熱し、還元して形成されたものである前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<5> 前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、及びトリメチルステアリルアンモニウムブロミド(STAB)からなる群より選択される少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<6> 前記限外濾過膜の孔径が、1μm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<7> 限外濾過の際に用いる洗浄液が、分散剤を含む溶液である前記<1>から<6>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<8> 前記分散剤の存在下、分散機を用いて前記金属ナノワイヤーを分散する分散工程を含まない前記<1>から<7>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<9> 平均短軸長さ50nm以下であり、かつ平均長軸長さ5μm以上である金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<10> 前記金属ナノワイヤーが、銀を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の導電膜の製造方法により製造されたことを特徴とする導電膜である。
<12> 前記<11>に記載の導電膜を有することを特徴とするタッチパネルである。
<13> 金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程を有する金属ナノワイヤー分散液の製造方法であって、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上であることを特徴とする金属ナノワイヤー分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れた導電膜の製造方法、前記導電膜の製造方法により製造された導電膜、及び前記導電膜を有するタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のタッチパネル(表面型静電容量方式)の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明のタッチパネル(表面型静電容量方式)の別の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明のタッチパネル(投影型静電容量方式)の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明のタッチパネル(抵抗膜式)の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(導電膜の製造方法)
本発明の導電膜の製造方法は、洗浄工程と、塗布工程とを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
【0012】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤー及び分散剤を少なくとも含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する工程である。
【0013】
<<金属ナノワイヤー分散液>>
前記金属ナノワイヤー分散液は、金属ナノワイヤーと、分散剤と、を少なくとも含み、更に溶媒を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0014】
−金属ナノワイヤー−
前記金属ナノワイヤーは、平均短軸長さが150nm以下の金属ナノワイヤーである。本発明において、「ワイヤー」とは、中実構造の繊維のことを意味する。
【0015】
−−材料−−
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が特に好ましい。また、これらの材料を主成分として含むことが特に好ましい。
【0016】
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀又は銀と他の金属との合金が好ましい。
前記合金における他の金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
−−形状−−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、中実構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状等の任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0018】
−−平均短軸長さ−−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(以下、「平均短軸径」、「平均直径」と称することもある。)は、150nm以下であるが、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。前記平均短軸長さが、150nmを超えると、ヘイズ率が高くなることや、ブツ故障が生じやすくなることがある。
また、前記平均短軸長さの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。前記平均短軸長さの下限値が、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがある。
したがって、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、1nm〜150nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましく、10nm〜30nmが特に好ましい。
なお、本発明において、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、金属ナノワイヤーを観察して短軸長さを測定し、少なくとも300個の金属ナノワイヤーの短軸長さの平均値を求めた値である。
【0019】
−−平均長軸長さ−−
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(以下、「平均長さ」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。前記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがある。
また、前記平均長軸長さの上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長すぎると金属ナノワイヤー製造時に絡まるためか、製造過程で凝集物が生じてしまうことがあるため、前記平均長軸長さは、1mm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
したがって、前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、1μm〜100μmが好ましく、3μm〜30μmがより好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。
本発明において、前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、金属ナノワイヤーを観察して長軸長さを測定し、少なくとも300個の金属ナノワイヤーの長軸長さの平均値を求めた値である。
ここで、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合は、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとする。
【0020】
−−アスペクト比−−
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さと平均短軸長さとの比を平均アスペクト比と定義する。前記金属ナノワイヤーの平均アスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜5,000が好ましく、30〜1,000がより好ましく、40〜500が特に好ましい。
前記アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡等により測定することができる。前記金属ナノワイヤーのアスペクト比が高い場合には、電子顕微鏡の隣接した視野を観測することで測定することができる。また、前記金属ナノワイヤーの長軸長さと短軸長さとを各々別の倍率で測定し、平均値を得ることで、前記金属ナノワイヤー全体のアスペクト比を見積もることもできる。
【0021】
−−適切金属ナノワイヤー比率−−
前記金属ナノワイヤー分散液中の前記金属ナノワイヤーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全金属粒子中の、平均短軸長さ50nm以下であり、かつ平均長軸長さ5μm以上である金属ナノワイヤーの含有量が、金属量で、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が特に好ましい。本発明において、この金属ナノワイヤーの含有量を、以下、「適切金属ナノワイヤー比率」と称することがある。
前記適切金属ナノワイヤー比率が、50質量%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少するためか導電性が低下してしまうことがある。また、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じるためか、耐久性が低下してしまうことがある。また、金属ナノワイヤー以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に材質が金属の場合で、当該金属が球形などのプラズモン吸収が強い形状を有する場合には透明度を悪化してしまうことがある。
【0022】
ここで、前記適切金属ナノワイヤー比率は、例えば、金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー分散液を濾過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いて濾紙に残っているAg量と、濾紙を透過したAg量とを各々測定することで、適切金属ナノワイヤー比率を求めることができる。濾紙に残っている金属ナノワイヤーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、300個の金属ナノワイヤーの短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーであることを確認する。なお、濾紙は、TEM像で平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤー以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ金属ナノワイヤーの長軸の最短長以下の径のものを用いることが好ましい。
【0023】
−−変動係数−−
前記金属ナノワイヤーの短軸長さの変動係数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。前記変動係数が、40%を超えると、短軸長さの短いワイヤーに電圧が集中してしまうためか、耐久性が悪化することがある。
前記金属ナノワイヤーの短軸長さの変動係数は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個の金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより求めることができる。
【0024】
−分散剤−
前記分散剤としては、前記金属ナノワイヤーを分散させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、窒素、硫黄、及び酸素の少なくともいずれかを含む界面活性剤及び/又は高分子が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記分散剤の具体例としては、第4級アルキルアンモニウム塩等のイオン性界面活性剤、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類などが挙げられる。
【0026】
前記第4級アルキルアンモニウム塩としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルステアリルアンモニウムブロミド(STAB)、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、トリメチルステアリルアンモニウムブロミド(STAB)が特に好ましい。
【0027】
前記高分子類としては、窒素、硫黄、酸素といった元素を含んでいて、分子量が1,000以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン共重合体などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、前記分散剤としては、ポリビニルピロリドン、アミノ基含有化合物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、及びトリメチルステアリルアンモニウムブロミド(STAB)が特に好ましい。
【0029】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、親水性溶媒が好ましい。
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール系溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、水が特に好ましく、水以外の溶媒を含有する場合は、水と混和する溶媒を、水に対して80容量%以下の割合で併用することが好ましい。
【0030】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、腐食防止剤を含むことが好ましく、前記分散剤以外の界面活性剤、重合性化合物、酸化防止剤、硫化防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アゾール系化合物が好ましい。
前記アゾール系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾテトラゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩から選ばれる少なくとも1種などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記金属ナノワイヤー分散液が前記腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。前記腐食防止剤は、金属ナノワイヤー分散液中に直接添加してもよく、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末の状態で添加してもよく、前記ナノ粒子含有層又は前記導電膜を形成後に、これを腐食防止剤浴に浸すことで付与してもよい。
【0032】
−−製造方法−−
前記金属ナノワイヤーの調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属錯体を含有する水溶液を該水溶液の沸点以下の温度で加熱し、還元して形成されたものが好ましく、前記金属錯体を含有する水溶液には、前記分散剤と、ハロゲン化合物とを含むことがより好ましい。
また、金属ナノワイヤーの調製方法としては、例えば、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることもできる。
【0033】
前記金属錯体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、銀錯体が特に好ましい。前記銀錯体の配位子としては、例えば、CN、SCN、SO2−、チオウレア、アンモニアなどが挙げられる。これらについては、“The Theory of the Photographic Process 4th Edition”Macmillan Publishing、T.H.James著の記載を参照することができる。これらの中でも、銀アンモニア錯体が特に好ましい。
【0034】
前記金属錯体を添加する段階としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記分散剤の後に添加することが好ましい。この順序で添加することで、ワイヤー核を高い確率で形成できるためか、適切な直径及び長軸長さの金属ナノワイヤーの割合を高める効果がある。
【0035】
前記ハロゲン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物が好ましく、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドや前記分散剤と併用できる化合物がより好ましい。
前記ハロゲン化合物の種類によっては、分散剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0036】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を併用してもよい。
【0037】
前記分散剤と前記ハロゲン化合物とは、同一物質であってもよく、これらを併用してもよい。前記分散剤と前記ハロゲン化合物とを併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含む前記HTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含む、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0038】
前記分散剤及び前記ハロゲン化合物を添加する段階としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予め前記分散剤及び前記ハロゲン化合物を溶媒に添加しておき、該分散剤及び該ハロゲン化合物の存在下で、金属ナノワイヤーの核となる金属錯体を添加してもよいし、溶媒中で金属粒子を形成した後、分散状態の制御のために該分散剤及び該ハロゲン化合物を添加してもよい。
前記分散剤及び前記ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ナノワイヤーの長さにより変更する必要がある。金属ナノワイヤーの長さに応じて金属ナノワイヤーの表面積が増減するため、前記分散剤及びハロゲン化合物の必要量が増減するためと考えられる。
また、使用する分散剤の種類によって、得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることもできる。
【0039】
前記加熱時の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記金属錯体を含有する水溶液の沸点以下の温度が好ましい。このような温度としては、150℃以下が好ましく、20℃〜130℃がより好ましく、30℃〜100℃が更に好ましく、40℃〜90℃が特に好ましい。前記加熱温度が、20℃未満であると、金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがある。これは、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり、金属ナノワイヤーが長くなりすぎるからである。また、前記加熱温度が150℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になり、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。
必要に応じて、金属ナノワイヤーの形成過程で適宜温度を変更してもよい。金属ナノワイヤーの形成過程での温度変更により、金属ナノワイヤーの核形成を制御し易くなったり、再核発生を抑制し易くなる。また、選択成長を促進して、単分散性を向上させることができる。
【0040】
前記加熱の際には還元剤を添加して行うことが好ましい。前記還元剤の添加の段階は、前記分散剤の添加前であってもよく、添加後であってもよい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。
【0041】
前記水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。
前記水素化アルミニウム塩としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムなどが挙げられる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどが挙げられる。
前記ヘテロ環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなどが挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなどが挙げられる。
前記アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
前記還元糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
前記糖アルコール類としては、例えば、ソルビトールなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、還元糖類、糖アルコール類が好ましく、グルコースが特に好ましい。
前記還元剤の種類によっては、機能として分散剤や溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
【0043】
<<限外濾過>>
本発明において、限外濾過とは、前記金属ナノワイヤー分散液を限外濾過膜の通液方向(限外濾過膜の厚み方向)に対して平行に通液しながら濾過する方法を意味する。
前記洗浄工程において、前記金属ナノワイヤーは、限外濾過膜上に残留し、分散剤は、限外濾過膜を通過する。そのため、前記分散剤の含有量を所望の量に適宜調整することができる。
【0044】
前記限外濾過膜の孔径としては、特に制限はなく、洗浄工程後の目的とする分散剤の含有量などに応じて適宜選択することができるが、小さすぎると分散剤を通過させることができなくなってしまうため、4nm以上が好ましい。
前記孔径の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記孔径を大きくしすぎると、前記金属ナノワイヤーがフィルターに詰まりやすくなるため、前記孔径の上限値は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.25μm以下が更に好ましい。
【0045】
前記限外濾過膜は、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、限外濾過モジュールUSP−043(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)、PSP−003(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)、UMP−053(旭化成株式会社製、孔径0.2μm)、PMP−003(旭化成株式会社製、孔径0.25μm)、ULP−043(旭化成株式会社製、孔径0.45μm)などが挙げられる。これらは、洗浄工程後の目的とする分散剤の含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記洗浄工程において、限外濾過を行う方法としては、例えば、旭化成株式会社製ペンシル型モジュール用卓上ろ過ユニットPX−02001を用いる方法などが挙げられる。具体的には、前記限外ろ過ユニット内にサンプルを循環させ、濾水出口から濾液を排出することで濃縮し、その後洗浄液を添加し初期濃度に戻すことにより洗浄を行う方法である。
【0047】
前記洗浄工程を行う回数としては、前記洗浄工程後の前記金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が3.2質量%以上となればよく、1回であってもよく、繰り返し行ってもよい。この洗浄工程の回数によって、前記分散剤の含有量を所望の量に適宜調整することができる。
なお、前記「分散剤の質量」は、前記洗浄工程後に前記限外濾過膜を通過しなかった金属ナノワイヤー分散液中の分散剤の質量を示し、「全金属粒子の質量」は、前記洗浄工程後に前記限外濾過膜を通過しなかった金属ナノワイヤー分散液中の全金属粒子の質量を示す。
【0048】
また、前記洗浄工程後の前記金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量(前記限外濾過膜を通過しなかった金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量)は、3.2質量%以上であることが必要であるが、3.2質量%以上20質量%以下が好ましく、3.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、3.2質量%以上5質量%以下が更に好ましい。前記分散剤の含有量が、3.2質量%未満であると、十分な導電性及び透明性が得られないことや、ヘイズが高くなること、ブツ故障が生じることがある。
前記分散剤の含有量は、例えば、示差熱重量測定装置(セイコー・インスツルメント社製、TG/DTA200)を用いて測定することができる。
【0049】
<<洗浄用溶液>>
前記洗浄用溶液としては、金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量が3.2質量%以上に調整できるものであればよく、洗浄工程後の目的とする分散剤の含有量に応じて適宜分散剤を添加してもよい。
洗浄工程における前記洗浄用溶液を用いた洗浄の回数としても、金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量が3.2質量%以上となる限り、特に制限はなく、洗浄工程後の目的とする分散剤の含有量などに応じて適宜選択することができ、1回であってもよく、複数回繰り返してもよい。また、繰り返す際、前記限外濾過と適宜組合せながら繰り返してもよい。
また、前記分散剤を含む洗浄用溶液で洗浄した後、更に溶媒で洗浄してもよい。
【0050】
前記洗浄用溶液は、少なくとも溶媒を含み、分散剤を含むことが好ましく、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0051】
−分散剤−
前記分散剤としては、前記金属ナノワイヤーを分散させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記金属ナノワイヤー分散液中の分散剤と同じものが好ましい。
【0052】
前記洗浄用溶液中の前記分散剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属ナノワイヤーに対して20質量%以下が好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%を超えると、塗布膜にした際にワイヤー同士の接触が阻害され、導電性が低下してしまうことがある。
【0053】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記金属ナノワイヤー分散液中の溶媒と同じものが好ましい。
【0054】
前記洗浄用溶液の添加量と添加回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
洗浄倍率は、10倍以上100,000,000倍以下が好ましく、100倍以上1,000,000倍以下がより好ましく、1,000倍以上100,000倍以下が更に好ましい。
なお、洗浄倍率は以下の式で計算できる。
=(Vn−1+D)/V
W=W×W×・・・×W
ここで、
W:洗浄倍率
:n回目の洗浄工程前後の洗浄倍率比率
:n回目の洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液量
:n回目の洗浄工程時に添加した洗浄用溶液の添加量
【0055】
なお、前記洗浄工程は、該洗浄工程後の前記分散剤の含有量が3.2質量%以上となる限り、限外濾過以外に、透析、ゲル濾過、デカンテーション、遠心分離等による他の洗浄方法を併用してもよい。
前記遠心分離による洗浄としては、例えば、前記金属ナノワイヤー分散液を遠心し、金属ナノワイヤー及び分散剤の一部を沈殿させ、該沈殿に前記洗浄用溶液を添加して懸濁し、再び遠心する方法などが挙げられる。前記遠心は、1回であってもよく、複数回行ってもよい。
前記洗浄工程は、前記分散剤の含有量を3.2質量%以上とするだけでなく、脱塩処理も併せてできる点で好ましい。
また、表面抵抗が下がることがあるため、前記金属ナノワイヤー分散液を塗布して得られた塗布膜を、分散剤が溶解する溶媒に浸漬させてもよい。
【0056】
<塗布工程>
前記塗布工程は、前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液を含有する導電膜形成用塗布液を支持体上に塗布する工程である。
前記導電膜形成用途布液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などが挙げられる。
前記印刷法としては、例えば、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法などが挙げられる。
【0057】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記導電膜を腐食防止剤浴に浸漬する工程、パターニング処理を施す工程などが挙げられる。
なお、前記導電膜の製造方法は、前記洗浄工程後、分散剤の存在下に分散機を用いて前記金属ナノワイヤーを分散する分散工程は、含まないことが好ましい。このような分散工程を含まなくても、本発明の導電膜の製造方法によれば、均一に金属ナノワイヤーを配した導電膜を得ることができ、該導電膜は、膜剥がれを起こすことなく、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れる点で有利である。
【0058】
<導電膜>
本発明の導電膜は、本発明の前記導電膜の製造方法により製造される導電膜である。
【0059】
前記導電膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均厚みで、0.01μm〜0.3μmが好ましく、0.01μm〜0.15μmがより好ましく、0.01μm〜0.08μmが特に好ましい。前記導電層の平均厚みが、0.01μm未満であると、導電性の面内分布が不均一になることがあり、0.3μmを超えると、透過率が低くなり、透明性が損なわれることがある。
ここで、前記導電膜の平均厚みは、例えば、ミクロトーム切削で前記導電膜の断面を出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する、又は前記導電膜をエポキシ樹脂で包埋した後、ミクロトームで作製した切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
なお、前記平均厚みとは、前記導電膜おける任意の10箇所以上で測定した厚みの平均値をいう。
【0060】
前記導電膜中の前記金属ナノワイヤーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.0001g/m〜1g/mが好ましく、0.001g/m〜0.5g/mがより好ましく、0.01g/m〜0.1g/mが特に好ましい。
前記金属ナノワイヤーの含有量が、0.0001g/m未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下することや、表面抵抗値が高くなることがある。更に、金属ナノワイヤー以外に導電性に大きく寄与しない成分を含む場合、該成分が吸収を持つこともあり好ましくない。特に金属ナノワイヤー以外の成分が金属の場合で、当該金属が球形等のプラズモン吸収が強い形状である場合には、透明度が悪化してしまうことがある。
また、金属ナノワイヤーの含有量が1g/mを超えると、透過率が低下することがある。
前記導電層における前記金属ナノワイヤーの含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(ICP発光分析装置)などにより測定することができる。
【0061】
前記導電膜中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)としては、3.2質量%以上であり、3.2質量%〜50質量%が好ましく、3.2質量%〜20質量%がより好ましく、3.2質量%〜5質量%が特に好ましい。前記分散剤の含有量が、3.2質量%未満であると、ブツ故障が生じてしまうことがあり、50質量%を超えると、金属ナノワイヤー同士の接触が阻害され、導電性が劣化してしまうことがある。
【0062】
<<表面抵抗>>
前記導電膜の表面抵抗としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000Ω/sq未満が好ましく、500Ω/sq未満がより好ましく、100Ω/sq未満が特に好ましい。前記表面抵抗が、1,000Ω/sq以上であると、通電時に発生するジュール熱による断線を生じやすくなることや、配線の上流と下流とで電圧降下が生じ、電極材料等に用いる際の面積が制限されるなどの問題を生じることがある。
前記表面抵抗が低いこと自体に弊害はないが、10Ω/sq未満であると、光透過率の高い導電体を得るのが困難になることがある。
前記表面抵値抗は、例えば、表面抵抗計(Loresta−GP MCP−T600、三菱化学株式会社製)を用いて測定することができる。
なお、前記表面抵抗値が低いほど、導電性が高いことを意味する。
【0063】
<<透過率>>
前記導電膜の透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。前記透過率が、75%未満であると、タッチパネル等の画像表示媒体に用いる際に導電パターンが目立ってしまい、画像の品質を損ねることや、輝度低下を補償するために消費電力を増加させる必要が生じる等の弊害が生じることがある。
前記透過率は、例えば、積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス、ガードナー社製)を用いて測定することができる。
【0064】
<<ヘイズ>>
前記導電膜のヘイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3%未満が好ましく、2%未満がより好ましく、1.5%以下が特に好ましい。前記ヘイズが、3%以上であると、不透明になり、タッチパネル等に用いた場合に視認性が悪くなることがある。
前記ヘイズは、例えば、積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス、ガードナー社製)を用いて測定することができる。
【0065】
<<ブツ故障>>
前記導電膜中の金属ナノワイヤーのブツ故障の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該導電膜の5cm四方内の金属ナノワイヤーのブツ故障の数が、10個以下が好ましく、5個以下がより好ましく、2個以下が特に好ましい。前記ブツ故障の数が、10個を超えると、導電性十分に得ることができないことやタッチパネル等に用いた際にブツ故障が見えてしまい使用できないことがある。
前記ブツ故障の数は、例えば、光学顕微鏡で観察することで計測することができる。なお、このとき、導電膜の中央部付近を観察することが好ましい。
【0066】
本発明の前記導電膜の製造方法により製造された本発明の前記導電膜は、塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れるため、例えば、後述する本発明のタッチパネルや、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機又は無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く用いられる。
【0067】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電膜を少なくとも有し、必要に応じて、更にその他の部材を有する。
【0068】
<基材>
前記基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0069】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記基材には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板、前記合成樹脂製シート、前記金属基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記導電膜の基材と同じものなどが挙げられる。
【0070】
前記タッチパネルの方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抵抗膜式タッチパネル、表面型静電容量方式タッチパネル、投影型静電容量方式タッチパネル、電磁誘導方式タッチパネル、超音波表面弾性波方式タッチパネル、赤外線走査方式タッチパネルなどが挙げられる。
なお、本発明において、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
【0071】
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2枚の前記導電膜を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に前記導電膜を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
【0072】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図1を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図1において、タッチパネル10は、透明基板11の表面を一様に覆うように導電膜12が配されており、透明基板11の端部の導電膜12上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子18が形成されている。
なお、図1において、13は、シールド電極となる導電膜を示し、14及び17は、保護膜を示し、15は、中間保護膜を示し、16は、グレア防止膜を示す。
導電膜12上の任意の点を指でタッチ等すると、前記導電膜12は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子18と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0073】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの別の一例について図2を参照して説明する。
図2において、タッチパネル20は、透明基板21の表面を覆うように配された導電膜22及び導電膜23と、該導電膜22と該導電膜23とを絶縁する絶縁層24と、指等の接触対象と導電膜22又は導電膜23との間に静電容量を生じる絶縁カバー層25と、からなり、指等の接触対象に対して位置検知する。構造によっては、導電膜22及び導電膜23を一体として形成することもでき、また、絶縁層24又は絶縁カバー層25を空気層として形成してもよい。
絶縁カバー層25を指等でタッチすると、指等と導電膜22又は導電膜23との間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0074】
前記投影型静電容量方式タッチパネルの一例について図3を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図3は、投影型静電容量方式タッチパネルとしてのタッチパネル20を、導電膜22と導電膜23とを平面から視た配置を通じて模式的に説明した図である。
タッチパネル20は、X軸方向の位置を検出可能とする複数の導電膜22と、Y軸方向の複数の導電膜23とが、外部端子に接続可能に配されている。導電膜22と導電膜23とは、指先等の接触対象に対し複数接触して、接触情報が多点で入力されることを可能とされる。
このタッチパネル20上の任意の点を指でタッチ等すると、X軸方向及びY軸方向の座標が位置精度よく特定される。
なお、透明基板、保護層等のその他の構造としては、前記表面型静電容量方式タッチパネルの構造を適宜選択して適用することができる。また、タッチパネル20において、複数の導電膜22と、複数の導電膜23とによる導電膜のパターンの例を示したが、その形状、配置等としては、これらに限られない。
【0075】
前記抵抗膜式タッチパネルの一例について、図4を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図4において、タッチパネル30は、導電膜32が配された透明基板31と、該導電膜32上に複数配されたスペーサ36と、空気層34を介して、導電膜32と接触可能な導電膜33と、該導電膜33上に配される透明フィルム35とが支持されて構成される。
このタッチパネル30に対して、透明フィルム35側からタッチすると、透明フィルム35が押圧され、押し込まれた導電膜32と導電膜33とが接触し、この位置での電位変化を図示しない外部検知回路で検出することで、タッチした点の座標が特定される。
【実施例】
【0076】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
<測定方法>
以下の調製例において、銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、銀ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数、適切金属ナノワイヤー比率、及び分散剤の含有量は、以下のようにして測定した。
【0078】
<<銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さ>>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の銀ナノワイヤーの短軸長さ又は長軸長さを観察し、その平均値から銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さを求めた。
【0079】
<<銀ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数>>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の銀ナノワイヤーの短軸長さを観察し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0080】
<<適切金属ナノワイヤー比率>>
各銀ナノワイヤー(水)分散液を濾過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いて濾紙に残っているAg量と、濾紙を透過したAg量を各々測定し、短軸長さ(直径)が50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である銀ナノワイヤー(適切な金属ナノワイヤー)の全金属粒子中の金属量(質量%)を求めた。
なお、適切金属ナノワイヤー比率を求める際の適切な銀ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0081】
<<分散剤の含有量>>
洗浄工程後の分散剤の含有量は、示差熱重量測定装置(セイコー・インスツルメント社製、TG/DTA200)を用いて測定し、下記式(I)で算出した。
分散剤の含有率(質量%)={分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100・・・式(I)
分散剤の含有率の測定手順は以下とした。
1.分散液をガラスシャーレに所定量秤量し、ホットプレート上で120℃にて30分間乾固させた。
2.1で得た乾固物をガラスシャーレから削り取って所定量秤量し、TG/DTA装置にセットし、昇温に伴う質量変化を測定した。
ここで、昇温は窒素雰囲気下で下記工程a〜dの温度パターンで行った。
工程a:室温〜80℃まで10℃/minの速度で昇温
工程b:80℃を20分間維持
工程c:80℃〜550℃まで10℃/minの速度で昇温
工程d:550℃を5分間維持
3.前記測定において、工程b完了後の質量を全金属粒子の質量と分散剤の合計質量、工程d完了後の質量を全金属粒子の質量と定義し、(工程b完了後の質量−工程d完了後の質量)を分散剤の質量と定義した。
これらの値から、前記式(I)の値を算出し、分散剤の含有率を求めた。
【0082】
(調製例1)
<試料No.101の調製>
−添加液の調製−
予め、下記の添加液A、添加液G、及び添加液Hを調製した。なお、添加液G及び添加液Hは、分散剤である。
[添加液Aの調製]
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解し、次いで1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した後、全量が100mLになるように純水を添加した。
[添加液Gの調製]
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
[添加液Hの調製]
HTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0083】
−銀ナノワイヤー水分散液の調製−
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(1段目)。この液に、添加液Aを流量2.0mL/分間、攪拌回転数800rpmで合計206mL滴下した(2段目)。添加剤Aを滴下した後、10分間撹拌し、更に添加液H 82.5mL添加した(3段目)。次いで、3℃/分間で内温75℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱し、室温まで冷却し、銀ナノワイヤー水分散液を得た。
【0084】
−洗浄工程−
限外濾過モジュールPSP−003(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)、チュービングポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー水分散液(分散剤としてHTABを上記式(I)に示した分散剤含有率で81.5質量%含有)を、前記限外濾過装置のステンレスカップに500mL入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。循環液が50mLになった時点で、ステンレスカップに、洗浄用溶液としての0.5質量%HTAB水溶液を450mL加え、洗浄を行った。上記の洗浄を合計10回繰り返した。その後、ステンレスカップに450mL蒸留水を加え、更に洗浄を行った。この洗浄工程を、分散剤の含有量が上記式(I)に示した分散剤含有率で3.3質量%となるまで繰り返し行い、試料No.101を調製した。
得られた試料No.101中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0085】
(調製例2)
<試料No.102の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が3.7質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.102を調製した。
得られた試料No.102中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0086】
(調製例3)
<試料No.103の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が5.0質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.103を調製した。
得られた試料No.103中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0087】
(調製例4)
<試料No.104の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が10.0質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.104を調製した。
得られた試料No.104中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0088】
(調製例5)
<試料No.105の調製>
調製例1において、1段目の混合時の初期温度を、20℃から30℃に変えた以外は、調製例1と同様にして、試料No.105を調製した。
得られた試料No.105中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0089】
(調製例6)
<試料No.106の調製>
調製例1において、添加液Hに添加したHTABを、該HTABと等モルのステアリルトリメチルアンモニウムブロミド(STAB)に変えた以外は、調製例1と同様にして、試料No.106を調製した。
得られた試料No.106中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0090】
(調製例7)
<試料No.107の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が3.2質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.107を調製した。
得られた試料No.107中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0091】
(調製例8)
<試料No.108の調製>
調製例1において、洗浄工程で使用した限外濾過モジュールPSP−003(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)を、限外濾過モジュールPMP−003(旭化成株式会社製、孔径0.25μm)に変えた以外は、調製例1と同様にして、試料No.108を調製した。
得られた試料No.108中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0092】
(調製例9)
<試料No.109の調製>
調製例1において、洗浄工程での洗浄用溶液として0.5質量%HTAB水溶液の代わりに0.5質量%ポリビニルピロリドン(PVP K55、和光純薬工業株式会社製)水溶液を入れて洗浄を行い、PVP含有率が3.3質量%となるまで限外ろ過を繰り返し行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.109を調製した。得られた試料No.109を20g採取し、120℃で5時間ホットプレートの上で乾固させた後、示差熱重量測定装置(セイコー・インスツルメント社製、TG/DTA200)を用いて分析し、試料No.109内にHTABが含まれずPVPが含まれることを確認した。
得られた試料No.109中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0093】
(調製例10)
<試料No.110の調製>
−銀ナノワイヤー分散液の調製−
エチレングリコール30mLを三口フラスコに入れ、160℃に加熱した。その後、下記に示す方法で調製したエチレングリコール溶液A 18mLと、下記に示す方法で調製したエチレングリコール溶液B 18mLとを、それぞれ流量1mL/分間、攪拌回転数400rpmで全量滴下した。次いで、160℃で60分間加熱し、室温まで冷却し、銀ナノワイヤー分散液を得た。
以下、この銀ナノワイヤー分散液の調製方法を、「ポリオール法」と称することがある。
[エチレングリコール溶液Aの調製]
36mM ポリビニルピロリドン(PVP K55、和光純薬工業株式会社製)と、3μM アセチルアセトナート鉄と、60μM 塩化ナトリウムとをエチレングリコールに溶解した。
[エチレングリコール溶液Bの調製]
24mM 硝酸銀をエチレングリコールに溶解した。
【0094】
−洗浄工程−
限外濾過モジュールPSP−003(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)、チュービングポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー分散液を、前記限外濾過装置のステンレスカップに500mL入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。循環液が50mLになった時点で、ステンレスカップに、洗浄用溶液としての0.5質量%ポリビニルピロリドン(PVP K55、和光純薬工業株式会社製)水溶液を450mL加え、洗浄を行った。上記の洗浄を合計10回繰り返した。その後、ステンレスカップに450mL蒸留水を加え、更に洗浄を行った。この洗浄工程を、分散剤の含有量が上記式(I)に示した分散剤含有率で3.5質量%となるまで繰り返し行い、試料No.110を調製した。
得られた試料No.110中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0095】
(調製例11)
<試料No.201の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が2.8質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.201を調製した。
得られた試料No.201中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0096】
(調製例12)
<試料No.202の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が1.5質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.202を調製した。
得られた試料No.202中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0097】
(調製例13)
<試料No.203の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が3.1質量%になるまで洗浄を行った以外は、調製例1と同様にして、試料No.203を調製した。
得られた試料No.203中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0098】
(調製例14)
<試料No.204の調製>
調製例1において、洗浄工程で分散剤の含有量が1.4質量%になるまで洗浄用溶液として蒸留水を用いて洗浄を行い、洗浄工程で使用した限外濾過モジュールPSP−003(旭化成株式会社製、孔径0.1μm)を、限外濾過モジュールPMP−003(旭化成株式会社製、孔径0.25μm)に変えた以外は、調製例1と同様にして、試料No.204を調製した。
得られた試料No.204中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0099】
(調製例15)
<試料No.205の調製>
調製例10において、分散剤の含有量が1.5質量%となるまで洗浄を行った以外は、調製例10と同様にして、試料No.205を調製した。
得られた試料No.205中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)、平均長軸長さ、適切金属ナノワイヤー比率、及び銀ナノワイヤーの直径(短軸長さ)の変動係数を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
(実施例1〜10及び比較例1〜5)
<下引き層の作製>
市販の二軸延伸熱固定済の厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基板に、8W/m・分間のコロナ放電処理を施し、次いで下記組成の下引き層を、乾燥厚みが0.8μmになるように塗設した。
[下引き層の組成]
下引き層用の組成物は、ブチルアクリレート(40質量%)、スチレン(20質量%)、グリシジルアクリレート(40質量%)の共重合体ラテックスと、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)とを含有し、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)の含有量は0.5質量%である。
【0102】
<親水性ポリマー層の作製>
下引き層の表面に8W/m・分間のコロナ放電処理を施して、次いで、親水性ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロースを、乾燥厚みが0.2μmになるように塗設し、親水性ポリマー層を形成した。
【0103】
<導電膜の作製>
PI−1210自動塗工装置(テスター産業社製)を用いて、試料No.101〜110及び201〜205を親水性ポリマー層上に塗布し、乾燥して、塗布銀量が20mg/mの実施例1〜10及び比較例1〜5の導電膜を得た。
【0104】
<評価>
次に、得られた各導電膜について、以下に示す方法で、導電性、透明性、ヘイズ、及びブツ故障の評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
<<導電性の評価>>
表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて実施例及び比較例の導電膜の表面抵抗を測定し、下記評価基準に基づき導電性について評価した。表面抵抗値が低いほど、導電性が高いことを意味する。
[評価基準]
A:表面抵抗が100Ω/sq未満で、実用上問題ないレベルである。
B:表面抵抗が100Ω/sq以上、500Ω/sq未満で、実用上問題ないレベルである。
C:表面抵抗が500Ω/sq以上、1,000Ω/sq未満で、実用上問題ないレベルである。
D:表面抵抗が1,000Ω/sq以上で、実用上問題あるレベルである。
【0106】
<<透明性の評価>>
積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス、ガードナー社製)を用いて、実施例及び比較例の導電膜の全光透過率を測定し、下記評価基準に基づき透明性について評価した。
[評価基準]
A:全光透過率が90%以上で、実用上問題ないレベルである。
B:全光透過率が80%以上90%未満で、実用上問題ないレベルである。
C:全光透過率が75%以上80%未満で、実用上問題ないレベルである。
D:全光透過率が0%以上75%未満で、実用上問題あるレベルである。
【0107】
<<ヘイズの評価>>
積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス、ガードナー社製)を用いて、実施例及び比較例の導電膜のヘイズを測定し、下記評価基準に基づきヘイズについて評価した。
[評価基準]
A:ヘイズが1.5%未満で、実用上問題ないレベルである。
B:ヘイズが1.5%以上2.0%未満で、実用上問題ないレベルである。
C:ヘイズが2.0%以上3%未満で、実用上問題ないレベルである。
D:ヘイズが3%以上で、実用上問題あるレベルである。
【0108】
<<ブツ故障の評価>>
実施例及び比較例の導電膜の中央部5cm四方内の銀ナノワイヤーのブツ故障の数を光顕微鏡で観察し、下記評価基準に基づき破断ブツ故障について評価した。
[評価基準]
A:ブツ故障の数が5cm四方内に2個以下である。
B:ブツ故障の数が5cm四方内に3個以上5個以下である。
C:ブツ故障の数が5cm四方内に6個以上10個以下である。
D:ブツ故障の数が5cm四方内に11個以上20個以下である。
E:ブツ故障の数が5cm四方内に21個以上である。
【0109】
【表2】

【0110】
(実施例11)
実施例1の導電膜を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の導電膜の製造方法は、塗設時に金属ナノワイヤーを凝集させることなく好適に分散させることができ、ヘイズが低く、ブツ故障が少なく、導電性及び透明性に優れた導電膜を製造することができるため、前記導電膜の製造方法により製造された導電膜は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機又は無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く用いられる。
【符号の説明】
【0112】
10 タッチパネル
11 透明基板
12 導電膜
13 導電膜
14 保護膜
15 中間保護膜
16 グレア防止膜
17 保護膜
18 電極端子
20 タッチパネル
21 透明基板
22 導電膜
23 導電膜
24 絶縁層
25 絶縁カバー層
30 タッチパネル
31 透明基板
32 導電膜
33 導電膜
34 空気層
35 透明フィルム
36 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液を含有する導電膜形成用塗布液を支持体上に塗布する塗布工程と、を含む導電膜の製造方法であって、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤の含有量が、3.2質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤の含有量が、3.2質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記金属ナノワイヤーが、金属錯体を含有する水溶液を該水溶液の沸点以下の温度で加熱し、還元して形成されたものである請求項1から3のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、及びトリメチルステアリルアンモニウムブロミド(STAB)からなる群より選択される少なくともいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記限外濾過膜の孔径が、1μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項7】
限外濾過の際に用いる洗浄液が、分散剤を含む溶液である請求項1から6のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項8】
前記分散剤の存在下、分散機を用いて前記金属ナノワイヤーを分散する分散工程を含まない請求項1から7のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項9】
平均短軸長さ50nm以下であり、かつ平均長軸長さ5μm以上である金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む請求項1から8のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤーが、銀を含有する請求項1から9のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の導電膜の製造方法により製造されたことを特徴とする導電膜。
【請求項12】
請求項11に記載の導電膜を有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項13】
金属粒子として平均短軸長さ150nm以下の金属ナノワイヤーと、分散剤とを含有する金属ナノワイヤー分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、洗浄する洗浄工程を有する金属ナノワイヤー分散液の製造方法であって、
前記洗浄工程後の金属ナノワイヤー分散液中の前記分散剤の含有量({分散剤の質量/(全金属粒子の質量+分散剤の質量)}×100)が、3.2質量%以上であることを特徴とする金属ナノワイヤー分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33729(P2013−33729A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−147192(P2012−147192)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】