説明

導電膜形成用組成物の製造方法

【課題】 銅を主成分とする導電膜形成用材料において、基材として樹脂を利用できる温度で導電膜の形成が可能であり、且つ導電膜形成用組成物とした際に、均一性、分散性を確保できる導電膜形成用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を配位性化合物の存在下に粉砕して、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含む導電膜形成用組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用組成物の製造方法に関する。本発明により得られる導電膜形成用組成物は、エレクトロニクス分野で配線形成用材料として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、金属微粒子の分散体を導電性インクとして用い、インクジェット印刷法や、スクリーン印刷法により所望の配線パターンを印刷することで、回路基板における配線等の導電膜を形成する技術が注目を集めている。金属微粒子の平均粒子径を数nm〜数10nm程度とすることで、印刷用インクとして利用するための均一性を保つと共に、微細な金属粒子においては、バルクの金属よりも融点が著しく降下し、低い温度で粒子同士の融着が起こることを利用し、金属微粒子を低温で焼結させて導電膜を得るものである。中でも銅微粒子は、銅自体が安価であり、高い導電性を有するため、導電膜形成用材料として期待されており、銅微粒子を用いた導電膜形成用組成物が、数多く提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような方法では、銅微粒子の酸化を防ぎ、金属銅微粒子相互の凝集を抑制するため、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を分子構造内に有する有機化合物を金属銅表面に吸着させていることから、導電膜とする際には、金属銅微粒子表面を被覆する有機化合物を除去し、金属銅微粒子同士を融着させるために、一般的に300℃程度といった高温での加熱が必要であり、適応できる基材が限られる問題があった。また、金属銅の酸化を抑制するために水素を含む還元雰囲気下での加熱が必要な場合が多いことから、安全面にも大きな問題があった。
【0004】
そこで、金属銅以外の微粒子を導電膜前駆体として利用する方法も検討されている。例えば、銅酸化物微粒子と、銅酸化物微粒子に対して還元能を有する還元性有機ポリマーを含有する銅酸化物微粒子分散体を、成膜後、加熱処理することで、銅酸化物微粒子を還元させ銅薄膜を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この方法によれば、銅酸化物微粒子を用いることで、印刷用インクとして利用できる均一性を保持している。
【0006】
しかしながら、このような方法では、導電膜形成工程において、水素を含む還元雰囲気下での加熱は必要ないものの、銅酸化物微粒子の還元、還元性有機ポリマーの分解、揮発除去のために350℃といった高温での加熱が必要であり、銅微粒子を利用した場合と同様に適応できる基材が限られるおそれがあった。
【0007】
また、銅酸化物以外の導電膜前駆体としては、例えば、ギ酸銅等の銅塩の利用が検討されている。例えば、基材とギ酸銅とを共存させ、減圧下又は非酸化性雰囲気中でギ酸銅を熱分解して銅膜の形成された基材を製造する方法において、パラジウムを共存させてギ酸銅の熱分解を行う銅膜形成基材の製造法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
この方法によれば、パラジウムの触媒作用により、ギ酸銅本来の熱分解温度より低温であって、基材として樹脂を利用できる温度である130〜140℃との温度で、銅膜を得ることができるとされている。
【0009】
しかしながら、この方法では、液相法により調製した粗大粒子をそのまま利用しているため、導電膜形成用組成物とするのは均一性、分散性の面から困難であり、印刷法によるパターン形成ができないおそれがあった。
【0010】
一般的に、無機化合物をインクとして利用するためには、均一性、分散性を確保できるよう、十分に微細化する必要があり、微細化の方法としては、例えば、ビーズミル等の機械的粉砕が用いられる。また、機械的粉砕により製造した微細化粒子は一次粒子として十分微細であっても、二次粒子として凝集し、粗大化することがあり、均一性、分散性を確保するためには、適切な分散剤を利用する必要があることが知られている。しかしながら、例えば、ギ酸銅等の銅塩について、その微細化方法、及び分散方法に関する十分な知見はこれまで得られていなかった。
【0011】
以上のように、従来法はいずれも十分なものとは言えず、工業的な実用化を図るために更なる検討が要望されていた。すなわち、銅を主成分とする導電膜形成用材料において、基材として樹脂を利用できる温度で導電膜の形成が可能であり、且つ導電膜形成用組成物とした際に、均一性、分散性を確保できる導電膜形成用組成物の製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−321215号公報
【特許文献2】特開2005−2418号公報
【特許文献3】特開平6−93455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、銅を主成分とする導電膜形成用材料において、基材として樹脂を利用できる温度で導電膜の形成が可能であり、且つ導電膜形成用組成物とした際に、均一性、分散性を確保できる導電膜形成用組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、導電膜形成用組成物の製造方法について鋭意検討した結果、銅塩−金属触媒複合体、及び配位性化合物を含んでなる組成物を粉砕することを特徴とする製造方法が、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの導電膜形成用組成物の製造方法、導電膜形成用組成物、銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法、銅塩−金属触媒複合体微粒子に関するものである。
【0016】
[1]銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を、配位性化合物の存在下に粉砕することを特徴とする、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含む導電膜形成用組成物の製造方法。
【0017】
[2]銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物を予め調製し、当該組成物中の銅塩−金属触媒複合体を粉砕することを特徴とする上記[1]に記載の製造方法。
【0018】
[3]銅塩が、還元力を有するカルボン酸と銅イオンとからなる銅塩であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0019】
[4]銅塩が、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、及びクエン酸銅からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
[5]金属触媒が、11族元素及び白金族元素からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
[6]金属触媒が、金、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
[7]配位性化合物が、アルカンチオール、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び環状アミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
[8]銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物において、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の濃度が1〜99.9重量%の範囲であり、配位性化合物の濃度が0.1〜99重量%の範囲であることを特徴とする上記[2]乃至[7]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
[9]銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物がさらに、分散媒を含有することを特徴とする上記[1]乃至[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
[10]分散媒が、アルコール類、エーテル類、及びエステル類からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする上記[9]に記載の製造方法。
【0026】
[11]分散媒の濃度が、銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物を含む組成物全体の重量に対して99重量%以下であることを特徴とする上記[9]又は[10]に記載の製造方法。
【0027】
[12]粉砕が、予備粉砕工程と本粉砕工程とにより行われることを特徴とする上記[1]乃至[15]のいずれかに記載の製造方法。
【0028】
[13]予備粉砕工程が、ボールミル、ビーズミル、カッターミル、及び乳鉢からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉砕装置を用いて行われることを特徴とする上記[12]に記載の製造方法。
【0029】
[14]本粉砕工程が、ボールミルを用いて行われることを特徴とする上記[12]又は[13]に記載の製造方法。
【0030】
[15]銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の粒子径が、動的光散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、1nm〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする上記[1]乃至[14]のいずれかに記載の製造方法。
【0031】
[16]上記[1]乃至[15]のいずれかに記載の製造方法によって得られる導電膜形成用組成物。
【0032】
[17]上記[1]乃至[16]のいずれかに記載の製造方法によって得られる導電膜形成用組成物から、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を分離操作により分離することを特徴とする銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法。
【0033】
[18]分離操作が、濾過、遠心分離、又は(銅塩−金属触媒複合体微粒子以外の成分の)留去であることを特徴とする上記[17]に記載の銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法。
【0034】
[19]上記[16]又は[17]に記載の方法により得られる銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子であって、その粒子径が、動的光散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、1nm〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子。
【発明の効果】
【0035】
本発明は以下に示す効果を奏する。
【0036】
(1)本発明の導電膜形成用組成物の製造方法によれば、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を粉砕すると同時に、それを配位性化合物により被覆するため、凝集による二次粒子の生成を抑制することができ、印刷法に使用される導電性インクとするために必要な均一性、分散性に優れた導電膜形成用組成物を製造することができる。
【0037】
また、本発明の製造方法は、高価な金属を使用しないか、又は使用しても少量であり、主原料は低価格で入手することができる銅塩や配位性化合物であるため、コスト性、生産性に優れる。
【0038】
(2)本発明の導電膜形成用組成物の製造方法により得られる導電膜形成用組成物は、銅が主金属成分であるため、銅の優れた特性を有する導電膜や、導電性パターンを形成可能である。
【0039】
また、この導電膜形成用組成物は、塗布、加熱といった簡便な方法で導電膜や、導電性パターンを形成することが可能であり、省エネルギー、低コスト、低環境負荷を達成でき、工業的に極めて有用である。
【0040】
また、この導電膜形成用組成物は、導電膜形成工程において水素を含む還元雰囲気を必要とせず、窒素等の不活性雰囲気下での加熱で導電膜形成が可能であり、安全性に優れる。
【0041】
さらに、この導電膜形成用組成物は、基材として樹脂を利用できる温度で導電膜の形成が可能であり、汎用性に優れる。
【0042】
(3)本発明の銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法は、配位性化合物及び/又は分散媒と混合することで、容易に導電膜形成用組成物とすることができる銅塩−金属触媒複合体微粒子を提供することができ、コスト性、生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0044】
まず、本発明の導電膜形成用組成物の製造方法について説明する。
【0045】
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法は、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含む導電膜形成用組成物の製造方法であって、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を配位性化合物の存在下に粉砕することをその特徴とする。
【0046】
本発明において、「銅塩」とは、カチオン種として銅イオンを含有する化合物を意味する。このような銅塩としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、亜硝酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。これらのうち、導電膜とする際に、銅以外の無機物が残らないため、カルボン酸塩が好ましく、カルボン酸塩の中でも、導電膜形成用組成物とする際に、別途還元剤の添加が不要であることから、還元力を有するカルボン酸の銅塩がさらに好ましい。
【0047】
本発明において、還元力を有するカルボン酸の銅塩としては、還元力を有するカルボン酸をアニオン種とし、かつ銅イオンをカチオン種とする化合物であれば、特に限定するものではないが、例えば、一価の銅イオン、二価の銅イオン、及び三価の銅イオンからなる群より選ばれる一種又は二種以上の銅イオンと還元力を有するカルボン酸との銅塩が挙げられる。これらの中でも、安定性、及び入手の容易さから、還元力を有するカルボン酸と二価の銅イオンからなる銅塩が好ましい。
【0048】
還元力を有するカルボン酸の銅塩としては、具体的には、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、及びクエン酸銅からなる群より選ばれる一種又は二種以上の銅塩が挙げられる。これらの中でも、コスト、及び入手のし易さから、ギ酸銅が好ましい。本発明において、これら以外の還元力を有するカルボン酸の銅塩を使用しても差し支えないが、入手が困難であったり、高価であったりするため、工業的に不利となる場合がある。
【0049】
本発明において、還元力を有するカルボン酸の銅塩は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。一般的な合成の方法としては、例えば、水酸化銅(II)とギ酸を水中において反応させる等の方法が挙げられる。
【0050】
本発明において、「金属触媒」とは、銅塩に含まれる銅イオンを還元して銅金属とする反応において、触媒機能(特に、銅塩の反応温度を低下させる機能)を有する金属触媒を意味する。
【0051】
このような金属触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、11族元素及び白金族元素からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有するものが挙げられる。具体的には、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有するものが例示される。
【0052】
これらの中でも、コスト面、入手の容易さ、及び導電膜形成時の触媒能から、金、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有するものであることが好ましく、銀、銅、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有するものであることがさらに好ましい。
【0053】
上記した触媒機能を有するのであれば、これら以外の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有する金属触媒を使用しても差し支えないが、銅イオンにより金属触媒が酸化を受けたり、また触媒能が低下したり又は発現しなかったり、さらには銅塩から金属銅への還元析出速度が低下するおそれがあるため、上記した金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有するものであることが好ましい。
【0054】
また、金属触媒として用いられる金属化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。金属触媒としては、これらの中でも、触媒活性の点から金属であることが好ましい。
【0055】
本発明において、「銅塩−金属触媒複合体」とは、銅塩と金属触媒とが、物理的及び/又は化学的な手法により複合化した複合体を意味する。
【0056】
複合体としては、物理的な複合体であっても、化学的な複合体であっても、又はその両方が含まれても差し支えなく、特に限定されない。物理的な複合体としては、例えば、銅塩上へ金属触媒を担持した複合体、銅塩上へ金属触媒を吸着させた複合体、銅塩上へ金属触媒を析出させた複合体等が挙げられる。また、化学的な複合体としては、例えば、銅塩と金属触媒を複合塩化した複合体、銅塩の一部を金属触媒と合金化した複合体等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、製造のコストや工程数を考慮すると、物理的な複合体である、銅塩上へ金属触媒を析出させた複合体が好ましい。
【0058】
本発明において、銅塩−金属触媒複合体中の、金属触媒の含有量は特に限定するものではないが、例えば、金属触媒の含有量が、銅塩の重量に対して、0.01〜100重量%の範囲であることが好ましく、5〜60重量%の範囲であることがさらに好ましい。金属触媒の含有量が0.01重量%未満であると、触媒能が発現しないおそれがあり、金属銅への還元が起こらないか、又は還元速度が著しく低下する場合がある。また、金属触媒の含有量を100重量%を超えて使用しても、入れただけの向上効果が得られないだけでなく、導電膜形成用組成物の単位重量当たりの金属銅の含有量が低下し、工業的に不利となるおそれがある。
【0059】
本発明において、銅塩−金属触媒複合体は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。
【0060】
上記した銅塩−金属触媒複合体を合成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、銅塩と金属触媒前駆体を媒体中において混合し、さらに還元剤を添加することで、銅塩上に金属触媒を還元析出させる方法等が挙げられる。
【0061】
ここで、金属触媒前駆体としては、特に限定するものではないが、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属化合物が挙げられる。これらの中でも、コスト面、入手の容易さ、及び導電膜形成時の触媒能から、金、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属化合物であることが好ましく、銀、銅、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属化合物であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の純度については特に限定するものではないが、低純度であると導電膜とした際に、導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0063】
本発明において、「配位性化合物」とは、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子に対して配位能を有する化合物を意味する。本発明の製造方法において、配位性化合物は、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を粉砕により微粒子化した際に、銅塩−金属触媒複合体微粒子の表面に吸着し、分散性を確保し、再凝集を抑制する機能を有する。
【0064】
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法において、このような配位性化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、チオール基、ニトリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、又はヒドロキシカルボニル基からなる群より選ばれる一種又は二種以上の極性官能基を有する単分子化合物や、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる群より選ばれる一種又は二種以上のヘテロ原子を分子構造内に有するポリマー等が挙げられる。
【0065】
このような単分子化合物としては、例えば、チオール類、アミン類、又は脂式カルボン酸類が挙げられ、ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、溶解性、及び導電膜形成時の除去性を考慮すると、具体的には、アルカンチオール、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び環状アミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上の化合物が好ましい。
【0067】
例えば、アルカンチオール類としては、具体的には、エタンチオール、n−プロパンチオール、i−プロパンチオール、n−ブタンチオール、i−ブタンチオール、t−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、2−エチルヘキサンチオール等が例示される。
【0068】
また、脂肪族アミンとしては、具体的には、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ベンジルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチル−n−プロピルアミン、N−メチル−i−プロピルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン、N−メチル−i−ブチルアミン、N−メチル−t−ブチルアミン、N−メチル−n−ペンチルアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−メチル−n−ヘプチルアミン、N−メチル−n−オクチルアミン、N−メチル−2−エチルヘキシルアミン、N−メチル−n−ノニルアミン、N−メチル−n−デシルアミン、N−メチル−n−ウンデシルアミン、N−メチル−n−ドデシルアミン、N−メチル−n−トリデシルアミン、N−メチル−n−テトラデシルアミン、N−メチル−n−ペンタデシルアミン、N−メチル−n−ヘキサデシルアミン、及びN−メチル−ベンジルアミン等が例示される。
【0069】
また、芳香族アミンとしては、具体的には、アニリン、p−トルイジン、4−エチルアニリン、N−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン、N−メチル−4−エチルアニリン等が例示される。
【0070】
また、環状アミンとしては、具体的には、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ヘキサメチレンイミン、イミダゾール、ピラゾール、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、及びホモピペラジン等が例示される。
【0071】
本発明の製造方法において、配位性化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよい。また、その純度としては、特に限定するものではないが、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0072】
本発明においては、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を配位性化合物の存在下に粉砕して、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含む導電膜形成用組成物を得る。
【0073】
本発明において、「粉砕」とは、配位性化合物の存在下に、砕料である銅塩−金属触媒複合体を細かく砕いて、砕製物である銅塩−金属触媒複合体微粒子を得ることを意味する。
【0074】
本発明においては、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物を予め調製し、当該組成物中の銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を、粉砕装置を用いて物理的な力によりに細かく砕いて、銅塩−金属触媒複合体の粒子を微細化することが好ましい。
【0075】
ここで、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物との組成比は特に限定するものではないが、例えば、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の濃度が1〜99.9重量%、配位性化合物の濃度が0.1〜99重量%の範囲であることが好ましい。
【0076】
配位性化合物の濃度が0.1重量%未満では、十分な分散性を確保できないおそれがある。また、配位性化合物の濃度が99重量%を超えて使用しても入れただけの効果が無いばかりではなく、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を溶解させてしまうおそれがあり、好ましくない。
【0077】
本発明において、上記した銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物には、さらに分散媒を含んでもいても一向に差し支えない。
【0078】
このような分散媒としては、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体、並びに銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を溶解せず、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子、並びに配位性化合物と反応しないものであれば、特に限定するものではないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。
【0079】
例えば、アルコール類としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が例示される。
【0080】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が例示される。
【0081】
エーテル類としては、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が例示される。
【0082】
エステル類としては、具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が例示される。
【0083】
これらの中でも、コスト、及び安全性の面から、分散媒としては、エタノール、テトラヒドロフラン、及びγ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0084】
本発明において、分散媒の濃度は、特に限定するものではないが、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と、配位性化合物とを含む組成物全体の重量に対して0〜99重量%の範囲であることが好ましい。
【0085】
分散媒の濃度が99重量%を超えて使用しても、さらなる向上効果がないばかりではなく、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の処理量が少なくなるため、工業的に不利となるおそれがある。
【0086】
本発明において、分散媒の純度は、特に限定するものではないが、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0087】
本発明において、粉砕は、単一の粉砕装置で一度行っても、単一又は複数の粉砕装置を用いて複数回の工程に分けて行っても、単一の粉砕装置であっても異なる破砕メディアを用いて複数回の工程に分けて行っても良く、特に限定するものではないが、被粉砕物の粒子径によって適した粉砕装置が異なり、また単一の粉砕装置でも粒子径に適した破砕メディアが異なるため、複数回の工程に分けて行うことが好ましい。具体的には、予備粉砕工程と本粉砕工程の2段階に分けて行うことが好ましい。この際に、予備粉砕工程と本粉砕工程のそれぞれの工程において、異なる粉砕装置を用いたり、同じ粉砕装置を用いた場合でも粒子径に適した異なる破砕メディアを用い、それぞれの工程を複数回行っても一向に差し支えない。
【0088】
本発明において、粉砕装置としては、特に限定するものではないが、例えば、乾式の粉砕装置であっても、湿式の粉砕装置であっても一向に差し支えなく用いることができる。具体的には、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、カッターミル、ハンマーミル、振動ミル、コロイドミル、ロールミル、乳鉢、石臼等の装置を用いることができる。
【0089】
本発明において、「予備粉砕工程」とは、本粉砕工程に適した粒子径まで、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を粉砕し微細化する工程を意味する。予備粉砕工程に用いる粉砕装置としては、特に限定するものではないが、例えば、具体的には、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、カッターミル、ハンマーミル、振動ミル、コロイドミル、ロールミル、乳鉢、石臼等の装置を用いることができる。これらの中でも、コスト面から、ボールミル、ビーズミル、カッターミル、乳鉢等を用いることが好ましい。
【0090】
予備粉砕工程で得られる銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の粒子径は、用いる粉砕装置によって異なるため、特に限定するものではないが、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、0.5μm〜1mmの範囲内であることが好ましい。粒子径が0.5μm未満であれば、必ずしも本粉砕工程を行う必要はない。また、粒子径が1mmを超えると、本粉砕工程での効率が低下するおそれがある。なお、銅塩−金属触媒複合体の粒子径がすでに上記範囲内である場合は、予備粉砕工程を行う必要はない。
【0091】
ここで、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法」とは、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求める方法を意味する。
【0092】
本発明において、「本粉砕工程」とは、予備粉砕工程で微細化した銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を粉砕してさらに微細化する工程を意味する。本粉砕工程に用いる粉砕装置としては、特に限定するものではないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、カッターミル、ハンマーミル、振動ミル、コロイドミル、ロールミル、乳鉢、石臼等の装置を用いることができる。これらの中でも微細粒子が効率的に得られることから、ビーズミルを用いることが好ましい。
【0093】
ここで、「ビーズミル」とは、ビーズと被粉砕物(砕料)を混合し、充填した容器中で、回転羽根によりビーズに運動を与え、被粉砕物とビーズとの衝突時の衝撃力、及び被粉砕物がビーズ間をすり抜ける時の剪断力で被粉砕物を微細化する粉砕装置を意味する。
【0094】
本発明において、ビーズミルに用いるビーズのサイズ(粒径)としては、特に限定するものではないが、例えば、10μm〜30mmの範囲のものが挙げられ、銅塩−金属触媒複合体微粒子を効率的に得るためには、30μm〜500μmの範囲のものを用いることが好ましい。ビーズのサイズが10μm未満であると、粉砕力が著しく低下し、還元力を有するカルボン酸の銅塩を粉砕できないおそれがあり、30mmを超えると粉砕効率が低下し、十分に微細化された微粒子を得るために、工業的でない程時間を要するおそれがある。
【0095】
本発明において、ビーズミルに用いるビーズの素材としては、特に限定するものではないが、例えば、ジルコニア、アルミナ、ガラス、鉄、窒化珪素、又はチタニア等が挙げられる。これらの中でも粉砕力、及び強度の点からジルコニア製のビーズを用いることが好ましい。
【0096】
本発明において、ビーズミルの回転羽根の周速は、特に限定するものではないが、例えば、1m/分〜50m/分の範囲とするのが好ましく、10m/分〜30m/分の範囲とすることがより好ましい。回転羽根の周速が1m/分未満であると、十分に微細化された微粒子を得るために、工業的でない程時間を要するおそれがあり、50m/分を超えても、早くしただけの向上効果はなく、逆に、ビーズの消耗が早くなり、工業的に不利となるおそれがある。
【0097】
本発明において、ビーズミルの容器への充填率は、特に限定するものではないが、例えば、60〜99容積%の範囲とすることが好ましく、85〜95容積%の範囲とすることがより好ましい。充填率が60容積%未満であると、デッドスペースが多くなるため効率が低下するおそれがあり、99容積%を超えると、内容物の吹きこぼれるおそれがあり、好ましくない。
【0098】
本発明において、ビーズミルのビーズは、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物全量に対し、5〜10000重量%の範囲となるように混合することが好ましく、50〜5000重量%となることがより好ましい。ビーズが5重量%未満であると、粉砕力が著しく低下するおそれがあり、10000重量%を超えて混合してもそれだけの向上効果はなく、逆に、釜効率が低下し、工業的に不利となるおそれがある。
【0099】
本発明において、ビーズミルで粉砕を行う時間としては、特に限定するものではないが、一般的に10分〜24時間でよく、1時間〜12時間が好ましい。10分未満では十分に微細化された銅塩−金属触媒複合体微粒子が得られないおそれがあり、24時間を越えて機械的粉砕を行っても、行うだけの効果は無く、生産効率の観点から、工業的に不利となるおそれがある。
【0100】
本発明において、ビーズミルで粉砕を行う間、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物の温度は、−20℃〜90℃の範囲に保つことが好ましく、0℃〜50℃の範囲に保つことがさらに好ましい。−20℃より低い温度では、配位性化合物が凝固するおそれがあり、90℃を超えると、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体や銅塩−金属触媒複合体微粒子の還元反応が起こるおそれがある。
【0101】
本発明においては、上記した以外の操作を行っても一向に差し支えない。例えば、表面処理、洗浄、加熱、冷却、焼成、精製、濾過、分級、乾燥、及びその他薬液での処理等の操作を適宜実施することができる。
【0102】
次に、本発明の導電膜形成用組成物の製造方法によって得られる導電膜形成用組成物について説明する。
【0103】
この導電膜形成用組成物は、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含有する。
【0104】
この導電膜形成用組成物において、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の粒子径は、導電性インクに一般に用いられる金属微粒子と同程度の粒子径を有すればよく、特に限定するものではないが、動的光散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、1nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。粒子径が1nm未満になると、粒子表面の活性が非常に高くなり、溶解したり分解するおそれがある。また、0.5μmを超える場合では、この導電膜形成用組成物を用いて印刷用インクとした際に、均一性、分散性が損なわれ、印刷法による配線等のパターン形成が困難となるおそれがある。
【0105】
この導電膜形成用組成物は、そのままで、又は配位性化合物を添加して、さらには分散媒を添加して所望の粘度に調整して、インク状若しくはペースト状の導電膜形成用組成物として好適に用いることができる。
【0106】
この導電膜形成用組成物にさらに添加される配位性化合物としては、上記した配位性化合物を何ら差し支えなく用いることができる。
【0107】
この導電膜形成用組成物において、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物との組成比は特に限定するものではないが、例えば、導電膜形成用組成物全量に対し、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の濃度が1〜99重量%の範囲であり、配位性化合物の濃度が1〜99重量%の範囲であることが好ましい。
【0108】
銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の濃度が1重量%未満では、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子から生じる金属銅の量が少なく、十分な膜厚を有する導電膜を形成できないおそれがある。また、99重量%を超えると、導電膜形成用組成物の粘度上昇又は固化が起こり、作業性が低下するおそれがある。一方、配位性化合物の濃度が1重量%未満では、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子が十分に分散しないおそれがある。また、99重量%を超えて使用しても入れただけの向上効果が得られないばかりではなく、導電膜形成用組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の導電膜を得るための導電膜形成用組成物の塗布量が増加し、工業的に不利となる。
【0109】
この導電膜形成用組成物にさらに添加される分散媒は、上記した分散剤を何ら差し支えなく用いることができる。また、分散媒の添加量は特に限定するものではないが、例えば、導電膜形成用組成物全量に対し、分散媒の濃度が0〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0110】
分散媒の濃度が50重量%を超えて使用しても入れただけの向上効果が得られないばかりではなく、導電膜形成用組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の導電膜を得るための導電膜形成用組成物の塗布量が増加し、工業的に不利となる。
【0111】
この導電膜形成用組成物は、インクジェット、ディスペンサー法、又はスクリーン印刷法等で、基板上に直接描画し加熱処理することにより、配線等の導電膜を形成することができる。
【0112】
次に、本発明の銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法について説明する。
【0113】
本発明の銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法は、本発明の導電膜形成用組成物の製造方法により得られた導電膜形成用組成物から、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を分離操作により分離することをその特徴とする。
【0114】
本発明の導電膜形成用組成物の製造方法により得られた導電膜形成用組成物において、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子は、通常、分散媒に分散した状態で存在する。よって、導電膜形成用組成物から銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を分離操作により分離することで、それを粉体として得ることができる。
【0115】
銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の分離操作としては、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、濾過、遠心分離、(銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子以外の成分の)留去等が挙げられる。
【0116】
分離操作が濾過である場合、その濾過効率を向上させるため、貧溶媒を添加し銅塩−金属触媒複合体微粒子の凝集を促してもよい。このような貧溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の非極性溶媒が挙げられ、これらのうちの一種又は相溶性のある二種以上の混合物を用いることができる。
【0117】
分離操作が遠心分離である場合、公知の方法を用いることができ、その方法は特に限定するものではないが、例えば、遠心分離機を用いる分離操作が挙げられる。
【0118】
分離操作が留去である場合、公知の方法を用いることができ、その方法は特に限定するものではないが、例えば、蒸留による分離操作が挙げられる。留去に必要な加熱温度が90℃以上である場合、減圧条件下で行うことが好ましい。
【0119】
銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法においては、上記した以外の操作を行っても一向に差し支えない。例えば、表面処理、洗浄、加熱、冷却、焼成、精製、濾過、分級、乾燥、及びその他薬液での処理等の操作を適宜実施することができる。
【0120】
次に、本発明の銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法によって得られる銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子について説明する。
【0121】
この銅塩−金属触媒複合体微粒子において、金属触媒の含有量は特に限定するものではないが、例えば、銅塩の重量に対して、0.01〜100重量%の範囲であることが好ましく、5〜60重量%の範囲であることがさらに好ましい。金属触媒の含有量が0.01重量%未満であると、触媒能が発現しないおそれがあり、金属銅への還元が起こらないか、又は還元速度が著しく低下するおそれがある。また、金属触媒の含有量を100重量%を超えても、それだけの向上効果が得られないばかりでなく、導電膜形成用組成物とした場合の単位重量当たりの金属銅の含有量が低下するため、工業的に不利となるおそれがある。
【0122】
この銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子において、その純度については特に限定するものではないが、低純度であると導電性薄膜とした際に、導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0123】
この銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子は、上記した配位性化合物及び/又は分散媒に分散させることにより、インク状又はペースト状の導電膜形成用組成物として好適に用いることができる。
【0124】
ここで、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物との組成比は特に限定するものではないが、例えば、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の濃度が1〜99.9重量%、配位性化合物の濃度が0.1〜99重量%の範囲であることが好ましい。
【0125】
また、分散媒の添加量は特に限定するものではないが、例えば、導電膜形成用組成物全量に対し、分散媒の濃度が0〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0126】
なお、この銅塩−金属触媒複合体微粒子のそれ以外の用途としては、例えば、電極材料、触媒、着色剤、化粧品、近赤外線吸収剤、光記録材料、偏光材料、偽造防止用インク、電磁波シールド材等の材料等が挙げられる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0128】
なお、以下の実施例において、粒子径は、0.35μm以上の粒子に関しては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、レーザー回折式粒度分析計、商品名:マイクロトラックMKII SPA型)により測定し、0.35μm未満の粒子に関しては、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、商品名:マイクロトラックMKII UPA型)で測定した。粒子径の値はいずれも、装置測定値のメジアン粒径を用いた。
【0129】
参考例1 銀−ギ酸銅複合体の調製.
ギ酸銅(関東化学社製、粒子径:12μm)2.24gに、エタノール40g、硝酸銀0.2g、37%ホルマリン水溶液1.0gを加え、硝酸銀を完全に溶解させた後、攪拌しながら、90℃に加熱した。8時間攪拌した後、メンブレンフィルターでろ過し、減圧下、90℃で1時間乾燥させることで、銀−ギ酸銅複合体を1.52gを得た。
【0130】
この銀−ギ酸銅複合体の粒子径を、エタノールを分散媒とし、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法にて測定したところ、11.4μmであった。また、銀−ギ酸銅複合体の銀、及び銅の元素分布状態をEPMA(電子線マイクロアナライザー、堀場製作所社製、商品名:EMAX5770W)により測定したところ、ギ酸銅粒子上に銀が万遍なく存在しており、銀とギ酸銅が複合化していることが確認された。また、誘導結合プラズマ発光分析装置(京都光研社製、商品名:UOP−1 MK−II)を用い、各金属の含有量の測定を行った結果、得られた銀−ギ酸銅複合体には7.3重量%の銀と、37.8重量%の銅が含まれていた。
【0131】
参考例2 パラジウム−ギ酸銅複合体の調製.
ギ酸銅(関東化学社製、粒子径:12μm)2.24gに、エタノール40g、硝酸パラジウム0.34g、37%ホルマリン水溶液1.0gを加え、硝酸パラジウムを完全に溶解させた後、攪拌しながら、90℃に加熱した。8時間攪拌した後、メンブレンフィルターでろ過し、減圧下、90℃で1時間乾燥させることで、パラジウム−ギ酸銅複合体を1.58gを得た。
【0132】
このパラジウム−ギ酸銅複合体の粒子径を、エタノールを分散媒とし、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法にて測定したところ、12.7μmであった。また、パラジウム−ギ酸銅複合体のパラジウム、及び銅の元素分布状態をEPMA(電子線マイクロアナライザー、堀場製作所社製、商品名:EMAX5770W)により測定したところ、ギ酸銅粒子上にパラジウムが万遍なく存在しており、パラジウムとギ酸銅が複合化していることが確認された。また、誘導結合プラズマ発光分析装置(京都光研社製、商品名:UOP−1 MK−II)を用い、各金属の含有量の測定を行った結果、得られたパラジウム−ギ酸銅複合体には7.9重量%のパラジウムと、37.4重量%の銅が含まれていた。
【0133】
参考例3 銅−ギ酸銅複合体の調製.
ギ酸銅(関東化学社製、粒子径:12μm)2.24gに、エタノール40gを加え、攪拌しながら、室温でヒドラジン水和物0.025gを添加した。室温でそのまま1時間攪拌した後、メンブレンフィルターでろ過し、減圧下、90℃で1時間乾燥させることで、銅−ギ酸銅複合体を1.55g得た。
【0134】
この銅−ギ酸銅複合体の粒子径を、エタノールを分散媒とし、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法にて測定したところ、12.1μmであった。また、誘導結合プラズマ発光分析装置(京都光研社製、商品名:UOP−1 MK−II)を用い、金属含有量の測定を行った結果、得られた銅−ギ酸銅複合体微粒子は42.3重量%の銅が含まれていた。
【0135】
実施例1 ギ酸銅微粒子分散液の調製.
テトラヒドロフラン40gにギ酸銅(関東化学社製 粒子径:12μm)2.24g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150g、オクチルアミン0.65gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、ギ酸銅微粒子分散液を得た。
【0136】
このギ酸銅微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれるギ酸銅微粒子の粒子径を測定したところ、24nmであった。また、このギ酸銅微粒子分散液を遮光条件、25℃で保存したところ、1日経過後も沈殿の析出や凝集体の生成は無く、均一な溶液であった。
【0137】
実施例2 銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液の調製.
テトラヒドロフラン40gに銀−ギ酸銅複合体1.56g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150g、2−エチルヘキシルアミン0.65gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液を得た。
【0138】
この銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれる銀−ギ酸銅複合体微粒子の粒子径を測定したところ、390nmであった。
【0139】
実施例3 パラジウム−ギ酸銅複合体微粒子分散液の調製.
テトラヒドロフラン40gにパラジウム−ギ酸銅複合体1.56g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150g、デシルアミン0.8gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、パラジウム−ギ酸銅複合体微粒子分散液を得た。
【0140】
このパラジウム−ギ酸銅複合体微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれるパラジウム−ギ酸銅複合体微粒子の粒子径を測定したところ、352nmであった。
【0141】
実施例4 銅−ギ酸銅複合体微粒子分散液の調製.
テトラヒドロフラン40gに銅−ギ酸銅複合体1.56g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150g、ヘキシルアミン0.51gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、銅−ギ酸銅複合体微粒子分散液を得た。
【0142】
この銅−ギ酸銅複合体微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれる銅−ギ酸銅複合体微粒子の粒子径を測定したところ、420nmであった。
【0143】
比較例1 ギ酸銅微粒子分散液の調製(配位性化合物の添加なし).
テトラヒドロフラン40gにギ酸銅(関東化学社製、粒子径:12μm)2.24g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、ギ酸銅微粒子分散液を得た。
【0144】
このギ酸銅微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれるギ酸銅微粒子の粒子径を測定したところ、1.02μmであった。また、このギ酸銅微粒子分散液を遮光条件、25℃で保存したところ、1日経過後、凝集体が生成し、不均一な溶液となった。
【0145】
比較例2 銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液の調製(配位性化合物の添加なし).
テトラヒドロフラン40gに銀−ギ酸銅複合体1.56g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、1時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離した。続いてこの、分離液にジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.05mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、8時間攪拌し粉砕を行った。次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.025mmの篩に通し、ジルコニア製ビーズを分離し、銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液を得た。
【0146】
この銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液を動的光散乱式粒度分布測定法にて測定し、含まれる銀−ギ酸銅複合体微粒子の粒子径を測定したところ、1.14μmであった。また、このギ酸銅微粒子分散液を遮光条件、25℃で保存したところ、1日経過後、凝集体及び沈殿が生成し、不均一な溶液となった。
【0147】
実施例5 ギ酸銅微粒子、及びn−オクチルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
実施例1で調製したギ酸銅微粒子分散液に、n−オクチルアミンを0.65g添加した。この混合物を、減圧条件で60℃を超えない温度で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「ペーストA」と称する。)。
【0148】
実施例6 銀−ギ酸銅複合体微粒子、及び2−エチルヘキシルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
実施例2で調製した銀−ギ酸銅複合体微粒子分散液に、2−エチルヘキシルアミンを0.65g添加した。この混合物を、減圧条件で60℃を超えない温度で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「ペーストB」と称する。)。
【0149】
比較例3 ギ酸銅微粒子(配位性化合物の添加なし)、及びn−オクチルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
比較例1で調製したギ酸銅微粒子分散液に、n−オクチルアミンを1.3g添加した。この混合物を、減圧条件で60℃を超えない温度で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「ペーストC」と称する。)。
【0150】
比較例4 銀−ギ酸銅複合体微粒子(配位性化合物の添加なし)、及び2−エチルヘキシルアミンを含有する導電膜形成用組成物の調製.
比較例2で調製したギ酸銅微粒子分散液に、2−エチルヘキシルアミンを1.3g添加した。この混合物を、減圧条件で60℃を超えない温度で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電膜形成用組成物を調製した(以下、表記を簡潔にするため、「ペーストD」と称する。)。
【0151】
実施例7〜8、比較例5〜6 導電性評価、及び均一性持続評価.
ガラス基材上に、ペーストA〜Dを、スクリーン印刷法(スクリーン仕様、メッシュ数:200、線径:40μm、織厚:115μm、目開き:87μm、空間率:46.9%、ペースト透過体積:53.94mg/cm)を用いてガラス基板に塗布し、幅2mm×長さ30mm、膜厚54μmの均一な塗布膜とした。
【0152】
次に、窒素ガスを6L/分の流量で流通した加熱炉で、これらペーストを塗布したガラス基材を30分間、表1に示す温度で加熱処理を行い、導電膜を得た。
【0153】
形成された各導電膜について、表面抵抗率を四探針抵抗測定機(三菱化学社製、商品名:ロレスタGP」にて測定した。
【0154】
また、形成された各導電膜を切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各導電膜の平均膜厚を評価した。すなわち、各導電膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、5000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真において、導電膜の膜厚を計測し、これらの値を撮影倍率で除し、3箇所の膜厚を算術平均して得られた値を各導電膜の平均膜厚とした。
【0155】
導電性の評価は、各導電膜において、表面抵抗率と走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果から得られた平均膜厚から算出した、体積抵抗率の比較により行った。
【0156】
また、均一性持続評価については、遮光条件、25℃で、1日経過後の状態を目視で確認し、
固液分離が無い場合:○
固液分離がある場合:×
と評価した。
【0157】
これら評価の結果を表1に併せて示す。
【0158】
【表1】

実施例と比較例の間で導電性には大きな差は見られないものの、均一性の持続性に関しては、配位性化合物の存在下に粉砕を行った実施例の方が比較例(配位性化合物の添加なし)に比べ優れていた。
【0159】
また、銅塩−金属触媒複合体微粒子を含む実施例8の方が、銅塩微粒子を含む実施例7に比べ加熱処理の温度が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅塩又は銅塩−金属触媒複合体を、配位性化合物の存在下に粉砕することを特徴とする、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子と配位性化合物とを含む導電膜形成用組成物の製造方法。
【請求項2】
銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と、配位性化合物とを含む組成物を予め調製し、当該組成物中の銅塩−金属触媒複合体を粉砕することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
銅塩が、還元力を有するカルボン酸と銅イオンとからなる銅塩であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
銅塩が、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、及びクエン酸銅からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
金属触媒が、11族元素及び白金族元素からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
金属触媒が、金、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属元素からなる金属、合金又は金属化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
配位性化合物が、アルカンチオール、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び環状アミンからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物において、銅塩又は銅塩−金属触媒複合体の濃度が1〜99.9重量%の範囲であり、配位性化合物の濃度が0.1〜99重量%の範囲であることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
銅塩又は銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物とを含む組成物がさらに、分散媒を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
分散媒が、アルコール類、エーテル類、及びエステル類からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
分散媒の濃度が、銅塩−金属触媒複合体と配位性化合物を含む組成物全体の重量に対して99重量%以下であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
粉砕が、予備粉砕工程と本粉砕工程とにより行われることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
予備粉砕工程が、ボールミル、ビーズミル、カッターミル、及び乳鉢からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉砕装置を用いて行われることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
本粉砕工程が、ビーズミルを用いて行われることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の粒子径が、動的光散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、1nm〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の製造方法によって得られる導電膜形成用組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の製造方法によって得られる導電膜形成用組成物から、銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子を分離操作により分離することを特徴とする銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法。
【請求項18】
分離操作が、濾過、遠心分離、又は(銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子以外の成分の)留去であることを特徴とする請求項17に記載の銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子の製造方法。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の方法により得られる銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子であって、その粒子径が、動的光散乱式粒度分布測定法でのメジアン径として、1nm〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする銅塩微粒子又は銅塩−金属触媒複合体微粒子。

【公開番号】特開2011−243436(P2011−243436A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115121(P2010−115121)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】