説明

導風路構造

【課題】小型化と軽量化を実現でき、しかもペルチェ素子による熱交換を最大限に促進できる導風路構造を提供する。
【解決手段】導風路構造1は、一端部3、及び他端部5を有する函体7と、函体7の一端部3、及び他端部5の互いに対向する位置に各々設けられた導入口9,11と、これらの導入口9,11に対して函体7の厚み方向に位置を違えて函体7の一端部3、及び他端部5に各々設けられた導出口13,15と、函体7の内部に配置される複数の熱電ユニットを支持する支持体19と、支持体19を挟む位置で互いに対面する2枚の規制板21,23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電素子のペルチェ効果を利用して気体の温度を調整する気体温調装置の導風路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の調湿装置は、熱電素子であるペルチェ素子の吸熱作用により一方から導入される空気を冷却すると同時に、その放熱作用により他方から導入される空気を加熱するものである。同調湿装置を実際に運転するには、上記のように空気を導入するためのダクトと、空気の流れを切り替えるダンパー等が不可欠である。そこで、特許文献2に記載の給排気装置は、ペルチェ素子を吸熱フィンと放熱フィンとの間に挟着した熱電ユニットを形成し、その周囲に配置した複数のダクトに対して熱電ユニットを回転自在とし、複数のダクトの中から空気を熱電ユニットに導くダクト、及び熱電ユニットから空気を排出するダクトを選択できるようにしている。
【0003】
しかしながら、熱電ユニットの性能を向上させるためにペルチェ素子の個数を増し、又はペルチェ素子に接続するヒートシンクを大型化すると、熱電ユニットを回転させるためのスペースが必要になる分、給排気装置を大型化、又は重量を増加するという問題がある。また、ヒートシンクにフィンを増設するためにフィン同士の間隔を狭くし、又は気体の流れる方向にフィンの奥行きを長くすると、フィン同士の間を流れる気体の圧力損失が著しくなる。このため、ダクトに気体を供給するための送風機等の出力を不要に増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−115869号公報
【特許文献2】特開2005−230716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、小型化と軽量化を実現でき、しかもペルチェ素子による熱交換を最大限に促進できる導風路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、ペルチェ素子の吸熱面に接合された吸熱フィン、及び放熱面に接合された放熱フィンに導かれる気体を導入する第1の導入路、及び第2の導入路と、前記ペルチェ素子の吸熱フィン、及び放熱フィンに導かれる気体を導出する第1の導出路、及び第2の導出路と、前記第1の導入路、及び第2の導入路に導入される気体が、前記第1の導出路、及び前記第2の導出路へ流れる向きを規制する導入孔、及び導出孔を有する2枚の規制板とを備え、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記2枚の規制板のうち一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記2枚の規制板のうち他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記ペルチェ素子と前記2枚の規制板とが相対的に平行移動することにより、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記2枚の規制板のうち一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記2枚の規制板のうち他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過する状態と、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過する状態と、を切替えられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、吸熱面の反対側を放熱面としたペルチェ素子を、前記吸熱面に接合された吸熱フィンと、前記放熱面に接合された放熱フィンとの間に挟着した熱電ユニットに、気体を導く導風路構造であって、互いに直交する方向の長さ、幅、及び厚みが規定された函体と、前記函体の互いに対向する位置に各々設けられた第1の導入路、及び第2の導入路と、前記函体の互いに対向する位置に、前記第1の導入路、及び第2の導入口に対して前記函体の厚み方向に位置を違えて各々設けられた第1の導出路、及び第2の導出路と、前記ペルチェ素子を前記函体の内部で支持し、前記吸熱フィン、及び前記放熱フィンに気体を導く吸熱風路、及び放熱風路を形成した支持体と、前記支持体を前記函体の長さ方向から挟む位置で互いに対向し、互いに前記厚み方向に位置を違えた導入口、及び導出口を有する2枚の規制板とを備え、前記支持体に対して前記2枚の規制板のうち一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させ、前記2枚の規制板のうち他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させ、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、吸熱面の反対側を放熱面としたペルチェ素子を、前記吸熱面に接合された吸熱フィンと、前記放熱面に接合された放熱フィンとの間に挟着した熱電ユニットに、気体の導かれる方向を切り替える導風路構造であって、互いに直交する方向の長さ、幅、及び厚みが規定された函体と、前記函体の互いに対向する位置に各々設けられた第1の導入路、及び第2の導入路と、前記函体の互いに対向する位置に、前記第1の導入路、及び第2の導入口に対して前記函体の厚み方向に位置を違えて各々設けられた第1の導出路、及び第2の導出路と、前記ペルチェ素子を前記函体の内部で支持し、前記吸熱フィン、及び前記放熱フィンに気体を導く吸熱風路、及び放熱風路を形成した支持体と、前記支持体を前記函体の長さ方向から挟む位置で互いに対向し、互いに前記厚み方向に位置を違えた導入口、及び導出口を有する2枚の規制板とを備え、前記支持体と前記2枚の規制板とが、前記函体の幅方向に相対的に移動自在に前記函体に取付けられ、前記支持体に対して前記2枚の規制板のうち一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動し、前記2枚の規制板のうち他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動することにより、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過し、前記支持体に対して前記一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動し、前記他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動することにより、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記2枚の規制板を前記函体に固定し、前記支持体を前記2枚の規制板に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記支持体を前記函体に固定し、前記2枚の規制板を前記支持体に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る導風路構造によれば、熱電ユニットに導かれる空気の流れを切り替えるダンパー等が不要であり、また空気の流れる風路に対して熱電ユニットを回転させるためのスペースが不要である。このため、当該導風路構造は、その函体が熱電ユニットを収納できる大きさであれば足りるので、当該導風路構造を小型化し軽量化するのに有利である。
【0013】
更に、本発明に係る導風路構造によれば、熱電ユニットの個数を増減させることにより、放熱風路、及び吸熱風路を通過する気体を冷却する性能、又は気体に放熱する熱量を調整することができる。この場合、複数の熱電ユニットを支持体の移動する方向に並べれば、気体が吸熱フィン、及び放熱フィンに沿って流れる距離を増大させなくて済むので、気体の圧力損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造の一部を破断した平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造の一部を破断した正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造の側面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した複数の熱電ユニットを支持する支持体を図1の矢印A−A線方向から見た側面図。
【図5】(a)は本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した2枚の規制板のうちの一の規制板を図1の矢印B−B線方向から見た側面図、(b)はその他の規制板を矢印C−C線方向から見た側面図。
【図6】図4のD−D線断面図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した熱電ユニットの分解斜視図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した支持体に対する2枚の規制板のうちの一の規制板の配置の一例を図1の矢印B−B線方向から表した側面図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した2枚の規制板の作用の一例を説明するのに支持体の一部を破断した概念図。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した支持体に対する2枚の規制板のうちの一の規制板の配置の他例を図1の矢印B−B線方向から表した側面図。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した2枚の規制板の作用の他例を説明するのに支持体の一部を破断した概略図。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造に適用した函体と支持体との気密構造を示す断面図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る導風路構造の平面図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る導風路構造の正面図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る導風路構造の側面図。
【図16】(a)は本発明の第2の実施形態に係る導風路構造に適用した2枚の規制板のうちの一の規制板の側面図、(b)はその他の規制板の側面図。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造の変形例を示す正面図。
【図18】本発明の第1の実施形態に係る導風路構造の更なる変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る導風路構造ついて図面に基づき説明する。図面は特に断らない限り図1乃至図5を参照する。
【0016】
導風路構造1は、一端部3、及び他端部5を有する函体7と、函体7の一端部3、及び他端部5の互いに対向する位置に各々設けられた導入口9,11と、これらの導入口9,11に対して函体7の厚み方向に位置を違え函体7の一端部3、及び他端部5の互いに対向する位置に各々設けられた導出口13,15と、函体7の内部に配置される複数の熱電ユニット17を支持する支持体19と、支持体19を函体7の長さ方向から挟む位置で互いに対面する2枚の規制板21,23とを備える。図中の矢印W、L、Tは、函体7の幅方向、長さ方向、及び厚み方向を各々指している。
【0017】
熱電ユニット17は、図6,7に示すように、吸熱面25の反対側を放熱面27としたペルチェ素子29を、吸熱面25にフィンベース31を介して接合される吸熱フィン33と、放熱面27にフィンベース31を介して接合される放熱フィン35との間に挟着したものである。吸熱フィン33は、アルミニウムの薄板を波形に塑性変形させたコルゲートフィンである。吸熱フィン33の表面にシリカゲル等の吸湿剤を定着させても良い。放熱フィン35は吸熱フィン33と同様のものである。
【0018】
支持体19は、縦材37,39、及び2本の横材41を方形に枠組みし、これらの内側を空気等の気体が長さ方向に通過できる開口部43としたものである。また、支持体19は、函体7の正面45の挿通口47から函体7の内部に差し込まれており、函体7に対して幅方向に自在に移動できる。挿通口47は、函体7の正面45と背面49の互いに対向する位置に形成されている。支持体19の開口部43には、複数の熱電ユニット17が位置決めされ、それぞれのペルチェ素子29の間が、3つの吸熱風路51,53,55と、3つの放熱風路57,59,61とに区分されている。
【0019】
また、複数の熱電ユニット17は、支持体19の開口部43を気体が通過する方向を横切る幅方向に並べられており、この並び順に、それぞれの吸熱フィン33を縦材37へ向ける姿勢と、それぞれの吸熱フィン33を縦材39へ向ける姿勢とを交互に違えている。吸熱風路51,53は、互いに幅方向に隣り合う熱電ユニット17がそれぞれの吸熱フィン33を相対向させる領域である。吸熱風路55は、縦材39とこれに対面する熱電ユニット17のペルチェ素子29との間の領域である。放熱風路57は、縦材37とこれに対面する熱電ユニット17のペルチェ素子29との間の領域である。放熱風路59,61は、互いに幅方向に隣り合う熱電ユニット17がそれぞれの放熱フィン35を相対向させる領域である。
【0020】
函体7は、2枚の分割板63と12枚の分流板65とを内装している。分割板63は、函体7の一端部3、及び他端部5の内部を厚み方向に2分することにより、第1、第2の導入路67,69、及び第1、第2の導出路71,73を形成するものである。分流板65は、6枚ずつ規制板21と支持体19の間、及び支持体19と規制板23との間に配置され、函体7の内部を複数の分流路75に仕切るものである。導出口13,15には、第1、第2の導出路71,73から気体を吸引し函体7の外側へ排出するためのファン77が設けられている。
【0021】
規制板21,23は函体7に固定されている。規制板21は、3つの導入孔79,81,83と、4つの導出孔85,87,89,91とを形成している。導入孔79,81,83に対して、導出孔85,87,89,91は厚み方向に位置を違えている。更に、導入孔79,81,83、及び導出孔85,87,89,91の幅方向の位置は、図1の右側に表れた7つの分流路75にそれぞれ合致している。規制板23は、4つの導入孔790,810,830,930と、3つの導出孔850,870,890とを形成している。導入孔790,810,830,930に対して、導出孔850,870,890は厚み方向に位置を違えている。更に、導入孔790,810,830,930、及び導出孔850,870,890の幅方向の位置は、図1の左側に表れた7つの分流路75にそれぞれ合致している。
【0022】
支持体19が図3に表れた位置にあるとき、図8に示すように、支持体19の吸熱風路51,53,55が、規制板21の導入孔79,81,83にそれぞれ合致し、支持体19の放熱風路57,59,61が、規制板21の導出孔85,87,89にそれぞれ合致する。規制板21の導出孔91は、縦材39によって第1の導出路71から遮られる。また、支持体19の放熱風路57,59,61が、規制板23の導入孔790,810,830にそれぞれ合致し、支持体19の吸熱風路51,53,55が、規制板23の導出孔850,870,890にそれぞれ合致する。規制板23の導入孔930は、縦材39によって第2の導出路73から遮られる。
【0023】
この状態で、ペルチェ素子29に、その吸熱面25から放熱面27へ熱が移動するように電流を供給する。そして、2つのファン77を起動させると、図9に矢印I,Xで示すように気体が流れる。同図は、吸熱風路53、及び放熱風路59を通過する気体にだけ注目した概念を表している。実際の気体の流れは次の通りである。
【0024】
即ち、気体が函体7の外側から導入口9を経て第1の導入路67に導かれ、規制板21の導入孔79,81,83、吸熱風路51,53,55、及び規制板23の導出孔850,870,890を通過して第2の導出路73に達し、導出口15から函体7の外側へ導出される。一方、導入口11から第2の導入路69に導かれる気体が、規制板23の導入孔790,810,830、放熱風路57,59,61、及び規制板21の導出孔85,87,89を通過して第1の導出路71に達し、導出口13から函体7の外側へ導出される。
【0025】
上記のように吸熱風路51,53,55を通過する気体と、総ての熱電ユニット17のそれぞれの吸熱フィン33との間で、同時に熱交換が行われるので、導風路構造1は気体を効果的に冷却し、導出口13,15から排出することができる。また、上記のように放熱風路57,59,61を通過する気体と、総ての熱電ユニット17のそれぞれの放熱フィン35との間で、同時に熱交換が行われるので、導風路構造1はペルチェ素子29の放熱面27の熱を効率よく放熱させることができる。
【0026】
導風路構造1は、以上の動作とその休止を一定周期で繰り返すバッチ処理を行うことができる。これにより、導風路構造1は連続的に気体の温度と湿度を調整することができる。また、バッチ処理の周期を増減することにより温度と湿度を所望に制御できる。例えば、バッチ処理の周期を短くすれば、除湿能力は増加するが、冷却能力(顕熱処理)は低下する。逆にバッチ処理の周期を長くすれば、除湿能力は低下するが、冷却能力は増加する。ここまで、導風路構造1による除湿冷房について記したが、ペルチェ素子29に、その放熱面27から吸熱面25へ熱が移動するように電流を供給すれば、加湿暖房も行える。
【0027】
また、吸熱フィン33、及び放熱フィン35にシリカゲルが定着されている場合、導風路構造1が除湿冷房を行うときに、気体に含まれる水蒸気を吸熱フィン33のシリカゲルに吸湿させることができる。このシリカゲルが飽和状態に達したところで、ペルチェ素子29に、その放熱面27から吸熱面25へ熱が移動するように電流を供給すると、導風路構造1は、吸熱風路51,53,55を通過する気体に、ペルチェ素子29の放熱面27の熱を放熱し、吸熱フィン33のシリカゲルに吸湿された水分を蒸発させることができる。
【0028】
更に、導風路構造1は、規制板21,23に対して支持体19を幅方向に移動する移動手段95を備える。移動手段95は、エアシリンダ、又は油圧シリンダのピストンロッド97に、連結部材99を介して支持体19を連結している。図1は、移動手段95がピストンロッド97を前進させた状態を示している。
【0029】
移動手段95がピストンロッド97を後退させると、図10に示すように、支持体19の放熱風路57,59,61が、規制板21の導入孔79,81,83にそれぞれ合致し、支持体19の吸熱風路51,53,55が、規制板21の導出孔87,89,91にそれぞれ合致する。規制板21の導出孔85は、縦材37によって第1の導出路71から遮られる。また、支持体19の吸熱風路51,53,55が、規制板23の導入孔810,830,930にそれぞれ合致し、支持体19の放熱風路57,59,61が、規制板23の導出孔850,870,890にそれぞれ合致する。規制板23の導出孔850は、縦材37によって第1の導出路71から遮られる。
【0030】
この状態で、ペルチェ素子29に、その吸熱面25から放熱面27へ熱が移動するように電流を供給する。そして、2つのファン77を起動させると、図11に矢印I,Xで示すように気体が流れる。同図は、吸熱風路53及び放熱風路59を通過する気体にだけ注目した概念を表している。実際の気体の流れは次の通りである。
【0031】
即ち、気体が函体7の外側から導入口9を経て第1の導入路67に導かれ、規制板21の導入孔79,81,83、放熱風路57,59,61、及び規制板23の導出孔850,870,890を通過して第2の導出路73に達し、導出口15から函体7の外側へ導出される。一方、導入口11から第2の導入路69に導かれる気体が、規制板23の導入孔810,830,930、吸熱風路51,53,55、及び規制板21の導出孔85,87,89を通過して第1の導出路71に達し、導出口13から函体7の外側へ導出される。
【0032】
以上に述べた導風路構造1によれば、熱電ユニット17に導かれる気体の流れを切り替えるダンパー等が不要であり、また気体の流れる風路等に対して熱電ユニット17を回転させるためのスペースが不要である。このため、函体7は熱電ユニット17を収納できる大きさであれば足りるので、導風路構造1の全体を小型化し軽量化することができる。
【0033】
更に、熱電ユニット17の個数を増減させることにより、放熱風路、及び吸熱風路を通過する気体を冷却する性能、又は気体に放熱する熱量を調整することができる。この場合、複数の熱電ユニット17を支持体19の移動する幅方向に並べれば、気体が個々の熱電ユニット17の吸熱フィン33、及び放熱フィン35に沿って流れる距離を増大させなくて済むので、気体の圧力損失を抑えることができる。
【0034】
また、函体7の適所にその気密を保つためのシール材を設けても良い。図12に示すように、断面形状が三角形で厚み方向に延びる弾性体101を、函体7の正面45に形成された挿通口47の口縁に取付け、弾性体101と同様の弾性体103を、支持体19の縦材37に取付けても良い。同図は、支持体19が矢印F方向に前進したとき、弾性体101に弾性体103が密接する例を示している。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について導風路構造1との相違点を説明する。図面は特に断らない限り図13乃至図16を参照する。
【0036】
第2の実施形態に係る導風路構造10は、支持体19を函体7に固定し、規制板21,23を、函体7の正面45に形成したスリット状の挿通口47から函体7の内部に差し込んでいる。2枚の規制板21,23は、連結部材96で互いに接合され、連結部材96を介して移動手段95のピストンロッド97に連結されている。規制板21は、外側導入孔107と内側導入孔109とを合わせて導入孔79とし、外側導入孔111と内側導入孔113とを合わせて導入孔83としている。規制板23は、外側導出孔115と内側導出孔117とを合わせて導出孔850とし、外側導出孔119と内側導出孔121とを合わせて導出孔890としている。
【0037】
移動手段95がピストンロッド97を矢印F方向へ前進させ、規制板21,23が図15に表れた位置にあるとき、規制板21は、その外側導入孔107、及び導出孔85を函体7の正面45から突出させるが、内側導入孔109を放熱風路57に合致させる。一方、規制板23は、その導入孔790、及び外側導出孔115を函体7の正面45から突出させるが、内側導出孔117を放熱風路57に合致させる。
【0038】
或いは、移動手段95がピストンロッド97を矢印B方向へ後退させると、規制板21は、その外側導入孔111、及び導出孔91を函体7の背面49から突出させるが、内側導入孔113を吸熱風路55に合致させる。一方、規制板23は、その導入孔930、及び外側導出孔119を函体7の背面49から突出させるが、内側導出孔121を吸熱風路55に合致させる。
【0039】
また、図12に示す弾性体103を規制板21,23に取付けても良い。この場合、規制板21の外側導入孔107と内側導入孔109との間を通る位置、及び外側導入孔111と内側導入孔113とを通る位置に、弾性体103が取付けられる。更に、規制板23の外側導出孔115と内側導出孔117との間を通る位置、及び外側導出孔119と内側導出孔121とを通る位置に、弾性体103が取付けられる。
【0040】
図17は、導風路構造1の変形例を使用して、室内の温度を調整する例を示している。上記の移動手段は省略されており、支持体19、及び規制板21,23は函体7に固定されている。支持体19、及び規制板21,23の相互の配置は、図8に照らして既に説明した通りである。符号123は室内と室外を遮断する壁を指している。室内の空気は、吸気口125を室内に解放したダクト126を介して、室外に設置された導風路構造1の導入口9に達している。導風路構造1の導入口11、及び導出口13は室外に解放されている。
【0041】
室内を冷房する場合、導風路構造1のペルチェ素子29に、その吸熱面25から放熱面27へ熱が移動するように電流を供給し、2つのファン77を起動させる。これにより、室内の空気は、導入口9から吸熱風路51,53,55を通過し、更に導出口15から室内へ循環する。室外の空気は、導入口11から放熱風路57,59,61を通過し、導出口13から排出される。室内を暖房する場合、導風路構造1のペルチェ素子29に、その放熱面27から吸熱面25へ熱が移動するように電流を供給し、上記のように室内の空気を循環させれば良い。
【0042】
図18は、導風路構造1の更なる変形例を使用して、室内の換気と室内の温度を調整する例を示している。この場合、函体7に端部開口127を解放し、函体7の他端部を室内へ向けて全開させる。図1の左側に表れた分割板63、分流板65、及び規制板23を省略し、規制板21を函体7に固定する。また、導入口9に設けられたファン78は、噴出口129を室内に解放したダクト130に、函体7の内部から空気を送風するものである。
【0043】
室内を冷房する場合、導風路構造1のペルチェ素子29に、その吸熱面25から放熱面27へ熱が移動するように電流を供給し、2つのファン77,78を起動させると、室内の空気は、端部開口127から吸熱風路51,53,55、及び放熱風路57,59,61に同時に流入する。そして、吸熱風路51,53,55に流入した空気が冷却され、規制板21の導入孔79,81,83を通過し、導入口9からダクト130を介して室内へ循環する。放熱風路57,59,61に流入した空気は、規制板21の導出孔85,87,89を経て導出口13から室外へ排気される。
【0044】
室内を暖房する場合、導風路構造1のペルチェ素子29に、その放熱面27から吸熱面25へ熱が移動するように電流を供給する。これにより、吸熱風路51,53,55に流入する空気が加熱され、規制板21の導入孔79,81,83を通過し、導入口9からダクト130を介して室内へ循環する。放熱風路57,59,61に流入する空気は、規制板21の導出孔85,87,89を経て導出口13から室外へ排気される。
【0045】
或いは、規制板21を函体7に対して幅方向に移動自在に取付けても良い。この場合、放熱風路57,59,61、及び吸熱風路51,53,55に、それぞれ規制板21の導入孔79,81,83、及び導出孔85,87,89が合致させれば、電流を切り換えることなく室内を次のように暖房できる。即ち、上記の冷房を行うときと同じように電流をペルチェ素子29に供給した状態で、放熱風路57,59,61で加熱される空気は、導入孔79,81,83を通過し、導入口9からダクト130を介して室内へ循環する。吸熱風路51,53,55に流入する空気は、導出孔85,87,89を経て導出口13から室外へ排気される。
【0046】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。例えば、吸熱風路、又は放熱風路の何れか一方に、温風、又は冷風を送風し、ペルチェ素子29の吸熱面25と放熱面27との間に温度差を生じさせても良い。これにより、ペルチェ素子29に起電力を発生させることができる。また、複数の分流路75は必須の要素ではなく、分流板65を省略し支持体19に2枚の規制板21,23を近接させても、本発明の実施が妨げられることはない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、電機部品を冷却、又は室内の温度調整をするのに使用できる。
【符号の説明】
【0048】
1,10…導風路構造、3…一端部、5…他端部、7…函体、9,11…導入口、13,15…導出口、17…熱電ユニット、19…支持体、21,23…規制板、25…吸熱面、27…放熱面、29…ペルチェ素子、33…吸熱フィン、35…放熱フィン、43…開口部、45…正面、47…挿通口、49…背面、51,53,55…吸熱風路、57,59,61放熱風路、63…分割板、65…分流板、67…第1の導入路、69…第2の導入路、71…第1の導出路、73…第2の導出路、75…分流路、77…ファン、79,81,83…導入孔、85,87,89,91…導出孔、790,810,830,930…導入孔、850,870,890…導出孔、95…移動手段、97…ピストンロッド、96,99…連結部材、101,103…弾性体、107,111…外側導入孔、109,113…内側導入孔、115,119…外側導出孔、117,121…内側導出孔、127…端部開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子の吸熱面に接合された吸熱フィン、及び放熱面に接合された放熱フィンに導かれる気体を導入する第1の導入路、及び第2の導入路と、
前記ペルチェ素子の吸熱フィン、及び放熱フィンに導かれる気体を導出する第1の導出路、及び第2の導出路と、
前記第1の導入路、及び第2の導入路に導入される気体が、前記第1の導出路、及び前記第2の導出路へ流れる向きを規制する導入孔、及び導出孔を有する2枚の規制板とを備え、
前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記2枚の規制板のうち一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記2枚の規制板のうち他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする導風路構造。
【請求項2】
前記ペルチェ素子と前記2枚の規制板とが相対的に平行移動することにより、
前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記2枚の規制板のうち一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記2枚の規制板のうち他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過する状態と、
前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の放熱フィンに達し、前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔を通り前記ペルチェ素子の吸熱フィンに達し、前記一の規制板の導出孔を通過する状態と、
を切替えられることを特徴とする請求項1に記載の導風路構造。
【請求項3】
吸熱面の反対側を放熱面としたペルチェ素子を、前記吸熱面に接合された吸熱フィンと、前記放熱面に接合された放熱フィンとの間に挟着した熱電ユニットに、気体を導く導風路構造であって、
互いに直交する方向の長さ、幅、及び厚みが規定された函体と、
前記函体の互いに対向する位置に各々設けられた第1の導入路、及び第2の導入路と、
前記函体の互いに対向する位置に、前記第1の導入路、及び第2の導入口に対して前記函体の厚み方向に位置を違えて各々設けられた第1の導出路、及び第2の導出路と、
前記ペルチェ素子を前記函体の内部で支持し、前記吸熱フィン、及び前記放熱フィンに気体を導く吸熱風路、及び放熱風路を形成した支持体と、
前記支持体を前記函体の長さ方向から挟む位置で互いに対向し、互いに前記厚み方向に位置を違えた導入口、及び導出口を有する2枚の規制板とを備え、
前記支持体に対して前記2枚の規制板のうち一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させ、前記2枚の規制板のうち他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させ、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする導風路構造。
【請求項4】
吸熱面の反対側を放熱面としたペルチェ素子を、前記吸熱面に接合された吸熱フィンと、前記放熱面に接合された放熱フィンとの間に挟着した熱電ユニットに、気体の導かれる方向を切り替える導風路構造であって、
互いに直交する方向の長さ、幅、及び厚みが規定された函体と、
前記函体の互いに対向する位置に各々設けられた第1の導入路、及び第2の導入路と、
前記函体の互いに対向する位置に、前記第1の導入路、及び第2の導入口に対して前記函体の厚み方向に位置を違えて各々設けられた第1の導出路、及び第2の導出路と、
前記ペルチェ素子を前記函体の内部で支持し、前記吸熱フィン、及び前記放熱フィンに気体を導く吸熱風路、及び放熱風路を形成した支持体と、
前記支持体を前記函体の長さ方向から挟む位置で互いに対向し、互いに前記厚み方向に位置を違えた導入口、及び導出口を有する2枚の規制板とを備え、
前記支持体と前記2枚の規制板とが、前記函体の幅方向に相対的に移動自在に前記函体に取付けられ、
前記支持体に対して前記2枚の規制板のうち一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動し、前記2枚の規制板のうち他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動することにより、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過し、
前記支持体に対して前記一の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の放熱風路と吸熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動し、前記他の規制板が、その導入孔と導出孔とを前記支持体の吸熱風路と放熱風路とにそれぞれ合致させる位置に移動することにより、前記第1の導入路から前記第2の導出路へ流れる気体が、前記一の規制板の導入孔、前記放熱風路、及び前記他の規制板の導出孔を通過し、前記第2の導入路から前記第1の導出路へ流れる気体が、前記他の規制板の導入孔、前記吸熱風路、及び前記一の規制板の導出孔を通過することを特徴とする導風路構造。
【請求項5】
前記2枚の規制板を前記函体に固定し、前記支持体を前記2枚の規制板に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項2又は4に記載の導風路構造。
【請求項6】
前記支持体を前記函体に固定し、前記2枚の規制板を前記支持体に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項2又は4に記載の導風路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−281514(P2010−281514A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135736(P2009−135736)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】