説明

小モジュール免疫薬のための凍結乾燥製剤

本発明は、とりわけ、小モジュール免疫薬(SMIP(商標))タンパク質のための安定な製剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質の凍結乾燥混合物を含有する製剤であって、凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質の7%未満が凝集形態で存在する製剤を提供する。本発明に従う製剤は、緩衝剤、安定剤、充填剤、界面活性剤、および/または他の賦形剤を含有し得る。本発明はまた、凍結乾燥、再構成のための製剤、およびその使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
この出願は、共に2009年6月18日に出願された米国仮特許出願第61/218,388号および米国仮特許出願第61/218,386号に対する優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
過去10年間で、バイオテクノロジーの進歩によって、薬学的用途のための様々なタンパク質を生産することが可能になった。タンパク質は、従来の有機薬剤および無機薬剤よりも大きくより複雑である(すなわち、複雑な三次元構造に加え、複数の官能基を有する)ため、このようなタンパク質の製剤、包装、および保存は、特別な問題を有する。液体製剤は、臨床上の利便性、患者の利便性、および製造の容易性のため、一般的に望ましい。しかし、多くのタンパク質では、液体製剤は実現不可能である。タンパク質の複雑性により、製造、包装、および運搬の間に受けるストレスから、タンパク質の分解が生じる。特定の小モジュール免疫薬は、このカテゴリーに属する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
結果として、液体製剤が選択肢でない場合は、凍結乾燥によって、許容可能な運搬条件および保存条件下で安定な投薬形態を生産することを合理的に保証する。凍結乾燥は通常、凍結、一次乾燥、および二次乾燥という、3つの主要な段階を含む。凍結は、水を氷に、または、一部の非晶質の製剤成分を結晶形態に変換する。一次乾燥は、低圧および低温での直接的な昇華によって凍結生成物から氷を除去する処理ステップである。二次乾燥は、蒸発表面への残留水の拡散を利用して生成物マトリクスから結合水を除去する処理ステップである。したがって、タンパク質の凍結ストレスおよび脱水ストレスを防ぐため、フリーズドライの間のタンパク質安定性を増強するため、および/または保管の間の凍結乾燥生成物の安定性を向上させるために、賦形剤および他の製剤成分の適切な選択が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質について、安定な凍結乾燥製剤が、緩衝剤、安定剤、充填剤、および/または界面活性剤の組み合わせを用いて調製され得るという発見を包含する。したがって、本発明は、とりわけ、凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質を含有する安定な製剤を提供する。
【0005】
1つの態様において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質の凍結乾燥混合物を含有する製剤を提供する。いくつかの実施形態において、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満の凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質が、凝集形態で存在する。特定の実施形態において、2〜8℃で少なくとも1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、または2年間にわたる保管の際に、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満の凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質が、凝集形態で存在する。特定の実施形態において、25℃または室温で少なくとも1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、または2年間にわたる保管の際に、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満の凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質が、凝集形態で存在する。特定の実施形態において、40℃で少なくとも2週間、1ヶ月間、3ヶ月間、または6ヶ月間にわたる保管の際に、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満の凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質が、凝集形態で存在する。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明に従う製剤は、充填剤、安定剤、および/または緩衝剤を含有する。いくつかの実施形態において、本発明に適した充填剤は、ショ糖、マンニトール、グリシン、塩化ナトリウム、デキストラン、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明に適した緩衝剤は、ヒスチジン、酢酸ナトリウム、クエン酸、リン酸、コハク酸、トリス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明に適した安定剤は、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、グリシン、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤はさらに等張剤を含む。いくつかの実施形態において、本発明に適した等張剤は、グリシン、ソルビトール、ショ糖、マンニトール、塩化ナトリウム、デキストロース、アルギニン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤は、非還元糖を含む。いくつかの実施形態において、非還元糖は、ショ糖またはトレハロースである。いくつかの実施形態において、小モジュール免疫薬タンパク質に対する非還元糖の質量比は、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、または5:1である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤はさらに界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、本発明に適した界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、トリトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80の凍結乾燥混合物を含む製剤を提供する。特定の実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、マンニトール、ならびにヒスチジンおよび/または酢酸ナトリウムから選択される緩衝剤の凍結乾燥混合物を含む製剤を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤における、ショ糖に対するマンニトールの質量比は、約0.1:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、または10:1である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、グリシン、および酢酸ナトリウムの凍結乾燥混合物を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明の独創的な製剤は、CD20を特異的に標的化する結合ドメインを含む小モジュール免疫薬タンパク質を含有する。いくつかの実施形態において、小モジュール免疫薬タンパク質は、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0014】
様々な実施形態において、本発明に従う、凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質は、保管の間に、例えば2〜8℃(例えば5℃)または室温(例えば25℃)での保管の間に安定である。
【0015】
小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80の凍結乾燥混合物を包含する製剤。
【0016】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される凍結乾燥製剤の再構成された製剤を提供する。いくつかの実施形態において、再構成された製剤は、希釈剤と、約25mg/mlから約400mg/ml(例えば、約25mg/mlから約200mg/ml、約50mg/mlから約200mg/ml、約25mg/mlから約150mg/ml、約100mg/mlから約250mg/ml、約100mg/mlから約300mg/ml、約200mg/mlから約400mg/ml、約300mg/mlから約400mg/ml)の範囲の濃度の小モジュール免疫薬タンパク質とを含む。いくつかの実施形態において、再構成された製剤は、希釈剤と、およそ25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350mg/ml、または400mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、再構成された製剤は、静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与のためのものである。
【0018】
本発明はまた、本発明の再構成された製剤を投与することによって患者を治療するための方法、および、本発明の凍結乾燥製剤を保持する容器を含むキットまたは他の製品を提供する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、非還元糖、および緩衝剤を包含する、凍結乾燥のための製剤を提供する。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、酢酸ナトリウムまたはヒスチジンから選択される。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、およそ5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、または30mMの濃度である。いくつかの実施形態において、ヒスチジンは、およそ5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、または30mMの濃度である。
【0020】
いくつかの実施形態において、製剤はさらにマンニトール含む。いくつかの実施形態において、製剤はさらにメチオニンを含む。いくつかの実施形態において、メチオニンはおよそ10mMの濃度である。いくつかの実施形態において、非還元糖はショ糖である。いくつかの実施形態において、ショ糖は、およそ0.5%から15%の間の範囲の濃度(例えば、およそ1%から10%の間、5%から15%の間、5%から10%の間)である。いくつかの実施形態において、ショ糖はおよそ5%の濃度である。いくつかの実施形態において、適切な製剤は、およそ10%の濃度のショ糖およびおよそ20mMの濃度のヒスチジンを含有する。いくつかの実施形態において、小モジュール免疫薬タンパク質に対する非還元糖の質量比は、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、または5:1である。
【0021】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥のための適切な製剤はさらに等張剤を含む。いくつかの実施形態において、等張剤は、グリシン、ソルビトール、ショ糖、マンニトール、塩化ナトリウム、デキストロース、および/またはアルギニンである。いくつかの実施形態において、凍結乾燥のための適切な製剤はさらに界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、適切な界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、および/またはトリトンである。
【0022】
様々な実施形態において、本発明に従う凍結乾燥のための製剤は、約25mg/mlから約400mg/ml(例えば、約25mg/mlから約200mg/ml、約50mg/mlから約200mg/ml、約25mg/mlから約150mg/ml、約100mg/mlから約250mg/ml、約100mg/mlから約300mg/ml、約200mg/mlから約400mg/ml、約300mg/mlから約400mg/ml)の範囲の濃度の小モジュール免疫薬タンパク質を含有する。いくつかの実施形態において、本発明に従う凍結乾燥のための製剤は、およそ25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350mg/ml、または400mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質を含有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、およそ5%から10%の間の範囲の濃度のショ糖、およそ10mMから20mMの間の範囲の濃度のヒスチジン、およびおよそ0.001%から0.1%の間の範囲の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ25mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、およそ6.5%の濃度のショ糖、およそ50mMの濃度のグリシン、およびおよそ20mMの濃度の酢酸ナトリウムを含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ50mg/mlから100mg/mlの間の範囲の濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、およそ20mMの濃度のヒスチジン、およそ4%の濃度のマンニトール、およびおよそ1%の濃度のショ糖を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ100mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、およそ10%の濃度のショ糖、およそ20mMの濃度のヒスチジン、およそ0.01%の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ100mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、およそ5%の濃度のショ糖、およそ1%の濃度のグリシン、およそ20mMの濃度のヒスチジン、およそ0.01%の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ100mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、およそ5%の濃度のショ糖、およそ2.4%の濃度のソルビトール、およそ20mMの濃度のヒスチジン、およそ0.01%の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明は、およそ200mg/mlの濃度の小モジュール免疫薬タンパク質、5%から10%の間の範囲の濃度のショ糖、およそ20mMの濃度のヒスチジン、およそ0.01%の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質、およそ5%の濃度のショ糖、およそ10mMの濃度のヒスチジン、およそ10mMの濃度のメチオニン、およびおよそ0.01%の濃度のポリソルベート80を含有する、凍結乾燥のための製剤を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、製剤は、およそ5.0からおよそ7.0の範囲のpHを有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、製剤は6.0のpHを有する。
【0033】
様々な実施形態において、本発明に従う凍結乾燥のための製剤は、CD20を特異的に標的化する結合ドメインを含有する小モジュール免疫薬タンパク質を含む。特定の実施形態において、小モジュール免疫薬タンパク質は、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、小モジュール免疫薬タンパク質を含有する製剤を凍結乾燥する工程、および凍結乾燥された製剤を室温以下の温度で保管する工程を含む、小モジュール免疫薬タンパク質を保管する方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の独創的な方法は、CD20を特異的に標的化する結合ドメインを含有する小モジュール免疫薬タンパク質を保管するために利用される。特定の実施形態において、小モジュール免疫薬タンパク質は、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、凍結乾燥製剤を約2〜8℃(例えば5℃)の温度で保管する工程を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、凍結乾燥された製剤をほぼ室温で保管する工程を含む。
【0037】
本発明はまた、本明細書において記載される方法および/または製剤を用いて凍結乾燥および/または保管された小モジュール免疫薬タンパク質を提供する。
【0038】
この出願において用いられる場合、「約」および「およそ」という用語は、同等のものとして用いられる。約/およそを伴う、または伴わない、この出願において用いられる任意の数字には、当業者によって認められる任意の通常の変動幅が含まれることが意味される。例えば、目的の値の通常の変動幅は、別段の記載がない限り、または文脈から別途明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向に(超または未満)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内、またはそれ未満以内にある値の範囲を含み得る(このような数字が、考えられる値の100%を超える場合を除く)。
【0039】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明において明らかとなる。しかし、詳細な説明は、本発明の実施形態を示すものであるが、例示の目的のみで設けられるものであり、限定の目的ではないことを理解されたい。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、詳細な説明から当業者に明らかとなろう。
【0040】
図面は、例示を目的としたものであり、限定を目的としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】例示的な小モジュール免疫薬タンパク質(SMIP(商標))の構造を示す図である。
【図2】Hull(Hull Co./SP Industries、Warminster、PA)臨床用凍結乾燥機において行われた、酢酸塩−グリシン−ショ糖(「AGS」)製剤中の25mg/mlのタンパク質についての例示的な凍結乾燥サイクルを示す図である。充填容積は、10mlのチュービングバイアル内に4mlである。
【図3】酢酸塩−マンニトール−ショ糖(「AMS」)緩衝液およびヒスチジン−マンニトール−ショ糖(「HMS」)緩衝液中の25mg/mlのタンパク質についての例示的な凍結乾燥サイクルを示す図である。サイクルは、Genesis(VirTis/SP Industries、Gardiner、NY)実験室用凍結乾燥機で行った。充填容積は、10mlのバイアル内に4mlである。
【図4】HMS緩衝液中の50mg/mlのタンパク質についての例示的な凍結乾燥サイクルを示す図である。サイクルは、実験室用のGenesis(VirTis/SP Industries、Gardiner、NY)凍結乾燥機で行った。充填容積は、10mlのバイアル内に4mlである。
【図5】HMS製剤中のマンニトールの結晶化に対するタンパク質濃度の効果を示す例示的なデータを示す図である。マンニトールの結晶化のピークは、最大89mg/mlのタンパク質濃度で−60℃から−10℃までの傾きの間に見ることができる。96から115mg/mlの間のタンパク質濃度では、マンニトールの結晶化は、−10℃での定温保持の間でのみ生じる。
【図6】HMS緩衝液中の100mg/mlのタンパク質についての例示的なフリーズドライサイクルを示す図である。
【図7】10%ショ糖製剤、5%ショ糖+1%グリシン製剤、5%ショ糖+2.4%ソルビトール製剤中の100mg/mlのタンパク質についての、例示的な凍結乾燥サイクルを示す図である。全ての製剤は、20mMのヒスチジンを含有する。
【図8】10%ショ糖+20mMヒスチジン緩衝液中の100mg/mlのタンパク質の例示的な再構成を示す図である。水注入の時間は、およそ30秒間であった。3分間持続的に回転させて、固体を溶解させた。30秒未満で、溶液から発泡を取り除いた。
【図9】5%ショ糖+1%グリシン+20mMヒスチジン緩衝液中の100mg/mlのタンパク質の例示的な再構成を示す図である。水注入の時間は、およそ30秒間であった。注入の後、水は、錠剤内部に可視的に浸透することなく、塊の上部に留まった。少なくとも9分間持続的に回転させて、固体を溶解させた。溶解の間に発泡は検出されなかった。
【図10】5%ショ糖+2.4%ソルビトール+20mMヒスチジン緩衝液中の100mg/mlのタンパク質の例示的な再構成を示す図である。水注入の時間は、およそ30秒間であった。注入の後、水は、錠剤内部に可視的に浸透することなく、塊の上部に留まった。少なくとも9分間持続的に回転させて、固体を溶解させた。溶解の間に発泡は検出されなかった。
【図11】5%ショ糖、10mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80内に低濃度のショ糖および200mg/mlのタンパク質を有する製剤についての、例示的な凍結乾燥サイクルのトレースを示す図である。
【図12】10%ショ糖、10mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80内に200mg/mlのタンパク質濃度を有する製剤についての、例示的な凍結乾燥サイクルのトレースを示す図である。
【図13】200mg/mlのタンパク質を含有する製剤中の低(5%)および高(10%)ショ糖の例示的な塊の外観を示す図である。
【図14】タンパク質についての例示的な凍結乾燥サイクル(基準サイクル)を示す図である。
【図15】凍結乾燥タンパク質の例示的な塊の外観を示す図である。
【図16】凍結乾燥タンパク質の示差走査熱量計(DSC)スキャンを示す図である。傾きの速度は2℃/分であり、100秒ごとに±0.5℃調節した。
【図17】加速温度でのタンパク質液の安定性に対するpHおよび賦形剤の効果を示す図である。
【図18】タンパク質についての例示的なロバスト性試験:高水分でのサイクルを示す図である。
【図19】タンパク質についての例示的なロバスト性試験:「活発なサイクル」番号4を示す図である。
【図20】凍結乾燥タンパク質材料:無傷の塊(基準サイクル、左のバイアル)に対して塊の半分が崩壊したもの(活発なサイクル番号4、右のバイアル)についての、塊の外観の例示的な比較を示す図である。
【図21】「活発な」サイクル番号1(表15)を用いて凍結乾燥されたタンパク質乾燥粉末のDSCスキャンを示す図である。傾きの速度は、2℃/分であり、100秒ごとに±0.5℃調節した。可逆的シグナル(緑)における基準のずれはガラス転移に相当し、一方、非可逆的シグナル(青)での発熱現象は、製剤成分の一部の明らかな結晶化に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、とりわけ、緩衝剤、安定剤、充填剤、界面活性剤、および/または他の賦形剤の組み合わせに基づく、小モジュール免疫薬(SMIP(商標))タンパク質のための凍結乾燥製剤を提供する。本発明に従う凍結乾燥製剤は、タンパク質の凍結ストレスおよび脱水ストレスを防ぎ、フリーズドライの間のタンパク質の安定性を保存もしくは増強し、ならびに/または保管の間の凍結乾燥生成物の安定性を保存し、もしくは向上させる。本発明はまた、安定な凍結乾燥製剤を調製する方法および前記凍結乾燥製剤の使用を提供する。
【0043】
本発明の様々な態様は、以下の節において詳細に記載される。節の使用は、本発明を限定することを意図したものではない。各節は、本発明の任意の態様に適用され得る。この出願において、「または」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。
【0044】
小モジュール免疫薬
本明細書において用いられる場合、小モジュール免疫薬(SMIP(商標))タンパク質は、結合ドメイン、免疫グロブリンヒンジ領域またはそれに由来するドメイン、免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはそれに由来するドメイン、および免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはそれに由来するドメインという融合ドメインの1つまたは複数を含有するタンパク質を言う。SMIP(商標)タンパク質治療薬は、好ましくは単一特異的である(すなわち、それらは、単一の抗原標的を認識しそれに付着して、生物学的活性を開始する)。本発明はまた、SMIP(商標)タンパク質を組み込み、分子のC末端からSMIP(商標)タンパク質部分までに位置するさらなる結合ドメインも有する、SCORPION(商標)治療薬などの、多特異性分子および/または多価分子にも関する。好ましくは、SCORPION治療薬の結合ドメインはそれぞれ、異なる標的に結合する。本発明に適した小モジュール免疫薬のドメインは、ヒト遺伝子配列の生成物であるポリペプチド、遺伝子操作されたポリペプチドおよび/もしくは突然変異したポリペプチドを含む任意の他の天然のもしくは人工の由来源の生成物であるポリペプチドであるか、または前記ポリペプチドに由来する。小モジュール免疫薬はまた、結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質としても知られている。
【0045】
いくつかの実施形態において、SMIP(商標)に適したヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgEなどの免疫グロブリンに由来する。例えば、ヒンジ領域は、0個、1個、または2個のシステイン残基を有する突然変異IgG1ヒンジ領域ポリペプチドであり得る。
【0046】
SMIP(商標)に適した結合ドメインは、抗原、受容体(例えば、CD20)、または2つ以上の分子の複合体もしくは集合体もしくは凝集体などの同族生物学的分子を特異的に認識しそれに結合する能力を有する、任意のポリペプチドであり得る。
【0047】
結合ドメインは、それが目的の抗原または他の所望の標的構造に特異的に結合することができるという条件で、重鎖または軽鎖のV領域の全てまたは一部または断片などの少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域ポリペプチドを含み得る。他の実施形態において、結合ドメインは、一本鎖免疫グロブリンに由来するFv生成物を含んでもよく、これは、少なくとも1つの免疫グロブリン軽鎖V領域の全てまたは一部および少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖V領域の全てまたは一部を含んでもよく、V領域に融合しているリンカーをさらに包含する。
【0048】
本発明は、様々な小モジュール免疫薬に適用することができる。典型的な小モジュール免疫薬は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、およびCD34などの受容体または他のタンパク質;EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体、もしくはHER4受容体などのHER受容体ファミリーの構成員;LFA−1、Mo1、p150、p95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、成長因子、例えばVEGFなどの細胞接着分子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;タンパク質C;EGFR、RAGE、P40、Dkk1、NOTCH1、IL−13、IL−21、IL−4、およびIL−22などを標的化し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明は、CD20を特異的に認識する小モジュール免疫薬を凍結乾燥または保管するために利用される。CD20を特異的に結合する典型的な小モジュール免疫薬タンパク質を、図1に示す。図1に示されるように、抗CD20 SMIP(商標)タンパク質は、典型的には、(1)15個のアミノ酸からなるリンカーによって連結されている重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変断片を含むキメラ(マウス/ヒト)CD20結合ドメイン、(2)修飾ヒトIgG1ヒンジドメイン、ならびに(3)ヒトIgG1のCH2ドメインおよびCH3ドメインからなるIgGエフェクタードメインという3つの異なるドメインからなる組換えホモ二量体融合タンパク質である(図1を参照されたい)。
【0050】
典型的には、SMIP(商標)タンパク質は、予想される鎖間ジスルフィド結合で連結された共有結合型のホモ二量体(CD)である主要な形態、および鎖間ジスルフィド結合を有さないホモ二量体形態(解離性二量体、DD)という、異なる様式で会合している2つのホモ二量体形態で存在し得る。解離性二量体は、通常、完全に活性である。典型的には、二量体は、およそ106000ダルトンの理論上の分子量を有する。SMIP(商標)タンパク質はまた、多価複合体も形成し得る。
【0051】
典型的には、SMIP(商標)タンパク質は、糖タンパク質として存在する。例えば、図1に示されるように、抗CD20 SMIP(商標)タンパク質は、各タンパク質鎖のCH2ドメインの、Nに連結したグリコシル化コンセンサス配列(例えば、327NST)で、オリゴ糖によって修飾されていてもよい(図1を参照されたい)。SMIP(商標)タンパク質はまた、各鎖上に、核フコシル化型アシアロアガラクト二分岐N連結型オリゴ糖(G0F);COOH末端のGly476、およびNH2末端のピログルタメートを含有し得る。2つの少数の糖形態であるG1F/G0FおよびG1F/G1F、ならびに他の期待される微量レベルのN連結型糖形態もまた存在し得る。さらに、低レベルのコア1型O−グリカン修飾もまた、SMIP(商標)タンパク質のヒンジ領域において観察される。
【0052】
いくつかの実施形態において、SMIP(商標)タンパク質の等電点(pIまたはIEP)は、およそ7.0から9.0の範囲である(例えば、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8)。
【0053】
本発明は、本明細書において論じられる様々な形態(例えば、単量体ポリペプチド、ホモ二量体、解離性二量体、または多価複合体)でSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。本発明は、ヒト化SMIP(商標)タンパク質またはキメラSMIP(商標)タンパク質などの、様々な修飾SMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。本明細書において用いられる場合、「ヒト化SMIP(商標)タンパク質」という用語は、少なくとも1つのヒト化免疫グロブリン領域(例えば、ヒト化免疫グロブリン可変領域または定常領域)を含むSMIP(商標)タンパク質を言う。いくつかの実施形態において、ヒト化SMIP(商標)タンパク質は、ヒト免疫グロブリン(例えば、完全にヒトのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4)に実質的に由来するが標的特異的な1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)(例えば、少なくとも1つのCDR、2つのCDR、または3つのCDR)を維持している可変フレームワーク領域を含む、ヒト化可変領域を包含する。いくつかの実施形態において、ヒト化SMIP(商標)タンパク質は、1つまたは複数のヒト定常領域またはヒト化定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリンCH2ドメインおよび/またはCH3ドメイン)を包含する。「実質的にヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体由来の」または「実質的にヒトの」という用語は、比較の目的でヒト免疫グロブリンまたはヒト抗体のアミノ酸配列にアラインすると、その領域が、ヒトフレームワーク領域または定常領域の配列と少なくとも80〜90%、好ましくは90〜95%、より好ましくは95〜99%の同一性(すなわち、局所的な配列同一性)を有し、例えば保存的置換、コンセンサス配列の置換、生殖細胞系の置換、復帰突然変異などを可能にすることを意味する。本明細書において用いられる場合、「キメラSMIP(商標)タンパク質」という用語は、可変領域が第1の種に由来し定常領域が第2の種に由来するSMIP(商標)タンパク質を言う。キメラSMIP(商標)タンパク質は、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから、例えば遺伝子操作によって、構築することができる。ヒト化SMIP(商標)タンパク質およびキメラSMIP(商標)タンパク質はさらに、参照によって本明細書に組み込まれる国際出願公開WO2008/156713において記載されている。
【0054】
本発明はまた、エフェクター機能を改変する、修飾されたグリコシル化パターンならびに/またはヒンジドメイン、CH2ドメイン、および/もしくはCH3ドメインに対する突然変異を有するSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、SMIP(商標)タンパク質は、受容体の結合に対する親和性に影響する、ヒンジ連結領域における隣接部位または近接部位に対する突然変異を含有し得る。さらに、本発明は、小モジュール免疫薬ポリペプチドまたはその一部を含む融合タンパク質の製剤に用いられ得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1〜76のいずれか1つのアミノ酸配列(典型的なSMIP(商標)配列の節を参照されたい)またはその変異体を含むSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1〜59のいずれか1つのアミノ酸配列またはその変異体を有する可変ドメインを含有するSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1〜59のいずれか1つのアミノ酸配列もしくはその変異体を有する可変ドメイン、配列番号60〜64のいずれか1つのアミノ酸配列もしくはその変異体を有するヒンジ領域、および/または配列番号65もしくは66のアミノ酸配列もしくはその変異体を有する免疫グロブリン定常領域を含有するSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号67〜76のいずれか1つのアミノ酸配列またはその変異体を有するSMIP(商標)タンパク質を製剤化するために用いられ得る。
【0056】
本明細書において用いられる場合、親配列の変異体には、限定はしないが、親配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一なアミノ酸配列が含まれる。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定され得るか、またはより好ましくは、比較は、Genetics Computer Group(GCG;Madison、Wis.),Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラム、「GAP」(Devereuxら、1984、Nucl.Acids Res.12:387)などのコンピュータプログラムもしくは他の同等のコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することによって行われる。「GAP」プログラムのための好ましいデフォルトのパラメータには、(1)SchwartzおよびDayhoff編、Atlas of Polypeptide Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、353〜358頁(1979)によって記載されている、GribskovおよびBurgess((1986)、Nucl.Acids Res.14:6745)の重み付けされたアミノ酸比較マトリクス、または他の同等の比較マトリクス、(2)アミノ酸配列では、各ギャップにつき30のペナルティーおよび各ギャップ内の各記号につき1の追加ペナルティー、(3)末端ギャップについてはペナルティーなし、ならびに(4)長いギャップについては最大ペナルティーなし、が含まれる。当業者によって用いられる他の配列比較のプログラムもまた用いられ得る。
【0057】
さらなる小モジュール免疫薬はさらに、例えば米国特許公開第20030133939号、米国特許公開第20030118592号、米国特許公開第20040058445号、米国特許公開第20050136049号、米国特許公開第20050175614号、米国特許公開第20050180970号、米国特許公開第20050186216号、米国特許公開第20050202012号、米国特許公開第20050202023号、米国特許公開第20050202028号、米国特許公開第20050202534号、米国特許公開第20050238646号、および米国特許公開第20080213273号、国際特許公開WO02/056910、国際特許公開WO2005/037989、および国際特許公開WO2005/017148において記載されており、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
小モジュール免疫薬のための凍結乾燥製剤
凍結乾燥またはフリーズドライは、目的のタンパク質調製物から水を除去するために役立つ、タンパク質を保存するために一般に採用される技術である。凍結乾燥は、乾燥したい材料をまず凍結し、次に、氷または凍結した溶媒を真空環境において昇華させることによって取り除くプロセスである。
【0059】
凍結乾燥は通常、凍結、一次乾燥、および二次乾燥という3つの主要な段階を含む。凍結は、水を氷に、または、一部の非晶質の製剤成分を結晶形態に変換するために必要である。一次乾燥は、低圧および低温での直接的な昇華によって凍結生成物から氷を除去する処理ステップである。二次乾燥は、蒸発表面への残留水の拡散を利用して生成物マトリクスから結合水を除去する処理ステップである。二次乾燥の間の生成物の温度は、通常、一次乾燥の間よりも高い。Tang X.ら、(2004)「Design of freeze−drying processes for pharmaceuticals:Practical advice」Pharm.Res.、21:191〜200;Nail S.L.ら(2002)「Fundamentals of freeze−drying」in Development and manufacture of protein pharmaceuticals.Nail SL編、New York:Kluwer Academic/Plenum Publishers、281〜353頁;Wangら(2000)「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals」Int.J.Pharm.、203:1〜60、Williams NAら(1984)「The lyophilization of pharmaceuticals;A literature review.」J.Parenteral Sci.Technol.、38:48〜59を参照されたい。
【0060】
凍結乾燥プロセスを通して温度および圧力が変化するため、賦形剤または他の成分、例えば安定剤、緩衝剤、充填剤、および界面活性剤の適切な選択が、フリーズドライおよび保管の間のSMIP(商標)の分解(例えば、タンパク質の凝集、アミド分解、および/または酸化)を防ぐために必要である。
【0061】
したがって、本発明は、安定剤、緩衝剤、充填剤、および/または他の賦形剤の組み合わせに基づく、SMIP(商標)を含有する安定な凍結乾燥製剤を提供する。本明細書において用いられる場合、「安定な」製剤は、その中のタンパク質が凍結乾燥の間および保管の際にその物理的および化学的な安定性および完全性を本質的に保持している製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が、当技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301、Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.,Pubs.(1991)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29〜90(1993)において概説されている。安定性は、選択された温度(例えば、0℃、5℃、25℃(室温)、30℃、40℃)で選択された期間(例えば、2週間、1ヶ月間、1.5ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間など)にわたる保管の後に測定することができる。迅速なスクリーニングでは、製剤は、40℃で2週間から1ヶ月間にわたり保持され、この時点で安定性が測定される。製剤が2〜8℃で保管される場合、通常、製剤は25℃(すなわち、室温)もしくは40℃で少なくとも1ヶ月間にわたり安定であるべきであり、および/または2〜8℃で少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、もしくは2年間にわたり安定であるべきである。製剤が30℃で保管される場合、通常、製剤は30℃で少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、もしくは2年間にわたり安定であるべきであり、および/または40℃で少なくとも2週間、1ヶ月間、3ヶ月間、もしくは6ヶ月間にわたり安定であるべきである。いくつかの実施形態において、凍結乾燥および保管の後の凝集の程度を、タンパク質の安定性の指標として用いることができる(例えば、本明細書における実施例を参照されたい)。本明細書において用いられる場合、「高分子量(「HMW」)凝集体」という用語は、少なくとも2つのタンパク質単量体の会合体を言う。本発明の目的では、単量体は、目的のタンパク質の任意の生物学的に活性な形態の、単一の単位を言う。例えば、小モジュール免疫薬タンパク質の単量体は、単量体ポリペプチド、またはホモ二量体、または解離性二量体、またはSMIP(商標)タンパク質の1単位の多価複合体であってもよい。会合は、共有結合、非共有結合、ジスルフィド結合、非還元性架橋、または他のメカニズムによるものであってもよい。
【0062】
例えば、「安定な」製剤は、タンパク質の約10%未満(例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%未満)、好ましくは約5%未満(例えば、4%、3%、2%、1%、0.5%未満)が製剤中で凝集体として存在している製剤(高分子量種(「HMW」)とも呼ばれる)であり得る。いくつかの実施形態において、安定性は、凍結乾燥製剤の凍結乾燥および保管の後の凝集体形成の増大によって測定することができる。例えば、「安定な」凍結乾燥製剤は、凍結乾燥製剤を25℃(すなわち、室温)もしくは40℃で少なくとも2週間、1ヶ月間、3ヶ月間、もしくは6ヶ月間にわたり保管した場合、または2〜8℃で少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、もしくは2年間にわたり保管した場合に、凍結乾燥製剤における凝集体の増大が約5%未満(例えば、4%、3%、2%、1%、0.5%未満)であり、好ましくは約3%未満(例えば、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%未満)である製剤であり得る。凝集体またはHMW種は、限定はしないがサイズ排除HPLC(SE−HPLC)、陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC)、逆相HPLC(RP−HPLC)、多角度光散乱(MALS)、蛍光、紫外線吸収、比濁法、キャピラリー電気泳動(CE)、SDS−PAGE、およびそれらの組み合わせを含む、当技術分野において知られている方法を用いて分析することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、タンパク質製剤の安定性は、生物学的活性アッセイを用いて測定することができる。例えば、「安定な」製剤は、選択された温度(例えば、0℃、5℃、25℃(室温)、30℃、40℃)で選択された期間(例えば、2週間、1ヶ月間、1.5ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間など)にわたる凍結乾燥または保管の後に元のタンパク質の活性を80%(例えば、85%、90%、92%、94%、96%、98%、または99%)保持する製剤であり得る。SMIP(商標)の生物学的活性アッセイは、当技術分野において知られている。典型的な方法は、米国特許公開第20030133939号、米国特許公開第20030118592号、米国特許公開第20050136049号、および米国特許公開第20080213273号、国際特許公開WO02/056910、国際特許公開WO2005/037989、および国際特許公開WO2005/017148において記載されており、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
製剤の調製
製剤化されるSMIP(商標)は、限定はしないが組換え技術およびペプチド合成またはこれらの技術の組み合わせを含む、当技術分野において良く確立されている技術を用いて調製することができる。SMIP(商標)タンパク質は、限定はしないが、生成物を生産する組換え細胞、細菌、真菌細胞、昆虫細胞、トランスジェニック植物もしくはトランスジェニック植物細胞、トランスジェニック動物もしくはトランスジェニック動物細胞、または動物の血清、腹水、ハイブリドーマもしくは骨髄腫の上清を含む、任意のインビボまたはインビトロのタンパク質発現系から得ることができる。適切な細菌細胞には、限定はしないが、大腸菌(Escherichia coli)細胞が含まれる。適切な大腸菌(E.coli)株の例には、HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断することができない任意の大腸菌(E.coli)株が含まれる。用いられ得る適切な真菌宿主細胞には、限定はしないが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、およびアスペルギルス属(Aspergillus)の細胞が含まれる。適切な昆虫細胞には、限定はしないが、S2 Schneider細胞、D.Mel−2細胞、SF9細胞、SF21細胞、High−5(商標)細胞、Mimic−SF9細胞、MG1細胞、およびKC1細胞が含まれる。適切な典型的な組換え細胞系には、限定はしないが、BALB/cマウス黒色腫系、ヒト網膜芽細胞(PER.C6)、サル腎細胞、ヒト胎児腎臓系(293)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスセルトリ細胞、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳腺腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、およびヒト肝細胞癌系(HepG2)が含まれる。
【0065】
SMIP(商標)タンパク質は、当技術分野において知られている様々なベクター(例えば、ウイルスベクター)を用いて発現させることができ、細胞は、当技術分野において知られている様々な条件(例えば、流加回分)下で培養することができる。タンパク質を生産するために細胞を遺伝子操作する様々な方法は、当技術分野において周知である。例えば、Ausabelら編(1990)、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley、New York)を参照されたい。典型的な方法は、米国特許公開第20030133939号、米国特許公開第20030118592号、米国特許公開第20050136049号、および米国特許公開第20080213273号、国際特許公開WO02/056910、国際特許公開WO2005/037989、および国際特許公開WO2005/017148において記載されており、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
目的のSMIP(商標)を調製した後、「凍結乾燥前製剤」(「凍結乾燥のための製剤」とも呼ばれる)を生産することができる。凍結乾燥前製剤中のSMIP(商標)の量は、所望の用量容積、(1つまたは複数の)投与様式を考慮して決定される。
【0067】
凍結乾燥のための適切な製剤は、様々な濃度の目的のSMIP(商標)を含有し得る。いくつかの実施形態において、凍結乾燥に適した製剤は、約1mg/mlから400mg/ml(例えば、約1mg/mlから50mg/ml、1mg/mlから60mg/ml、1mg/mlから70mg/ml、1mg/mlから80mg/ml、1mg/mlから90mg/ml、1mg/mlから100mg/ml、100mg/mlから150mg/ml、100mg/mlから200mg/ml、100mg/mlから250mg/ml、100mg/mlから300mg/ml、100mg/mlから350mg/ml、100mg/mlから400mg/ml、25mg/mlから350mg/ml、25mg/mlから400mg/ml、25mg/mlから250mg/ml、25mg/mlから200mg/ml、50mg/mlから200mg/ml、25mg/mlから150mg/ml)の範囲の濃度の目的のタンパク質を含有し得る。いくつかの実施形態において、凍結乾燥に適した製剤は、およそ25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350mg/ml、または400mg/mlの濃度の目的のタンパク質を含有し得る。
【0068】
タンパク質は、通常、溶液内に存在する。例えば、SMIP(商標)タンパク質は、pHが約4〜8(例えば、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、および8.0)の、またいくつかの実施形態においては約5〜7の、pH緩衝された溶液中に存在し得る。典型的な緩衝液には、ヒスチジン、リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)、クエン酸、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸、コハク酸、および他の有機酸が含まれる。緩衝液の濃度は、例えば緩衝液、および製剤の(例えば、再構成された製剤の)所望の等張性に応じて、約1mMから約30mM、または約3mMから約20mMであり得る。いくつかの実施形態において、適切な緩衝剤は、およそ1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、または50mMの濃度で存在する。
【0069】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥に適した製剤は、タンパク質を保護するための安定剤を含有し得る。安定剤はまた、凍結乾燥保護剤とも呼ばれる。典型的には、適切な安定剤は、ショ糖、ラフィノース、トレハロースなどの非還元糖、またはグリシン、アルギニン、およびメチオニンなどのアミノ酸である。凍結乾燥前製剤中の安定剤または凍結乾燥保護剤の量は、通常、再構成して得られる製剤が等張となるようなものである。しかし、高張の再構成された製剤もまた適している場合がある。さらに、凍結乾燥保護剤の量は、凍結乾燥の際にSMIP(商標)の許容不可能な量の分解/凝集が生じるような、少なすぎるものであってはならない。凍結乾燥保護剤が糖(ショ糖またはトレハロースなど)であり、タンパク質がSMIP(商標)である場合、凍結乾燥前製剤中の典型的な凍結乾燥保護剤濃度は、約10mMから約400mM(例えば、約30mMから約300mM、および約50mMから約100mM)、または代替えとして、0.5重量%から15重量%(例えば、1重量%から10重量%、5重量%から15重量%、5重量%から10重量%)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、安定剤およびSMIP(商標)の質量比は、約1:1である。他の実施形態において、安定剤およびSMIP(商標)の質量比は、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、5:1、10:1、または20:1であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥のための適切な製剤はさらに、1つまたは複数の充填剤を含み得る。「充填剤」は、凍結乾燥混合物に質量を加え、凍結乾燥塊の物理的構造に寄与する化合物である。例えば、充填剤は、凍結乾燥塊の外観を向上させ得る(例えば、本質的に均一な凍結乾燥塊)。適切な充填剤には、限定はしないが、塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトール、グリシン、ショ糖、トレハロース、ヒドロキシエチルデンプンが含まれる。充填剤の典型的な濃度は、約1%から約10%(例えば、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、および10.0%)である。
【0071】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥のための製剤は、凍結乾燥前製剤および再構成された製剤を等張に維持するための等張剤を含有する。典型的には、「等張」は、目的の製剤がヒトの血液と本質的に同一の浸透圧を有することを意味する。等張な製剤は、通常、約240mOsm/kgから約350mOsm/kgの浸透圧を有する。等張は、例えば蒸気圧型または凝固点型の浸透圧計を用いて、測定することができる。典型的な等張剤には、限定はしないが、グリシン、ソルビトール、マンニトール、塩化ナトリウム、およびアルギニンが含まれる。いくつかの実施形態において、適切な等張剤は、約0.01〜5重量%(例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、または5.0重量%)の濃度で凍結乾燥前製剤中に存在し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥のための製剤に界面活性剤を添加することが望ましい。典型的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80)などの非イオン性界面活性剤;ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン;リノネイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタルニドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウムまたはメチルオフェイルタウリンジナトリウム;ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体(例えば、プルロニック、PF68など)が含まれる。典型的には、添加される界面活性の量は、再構成されたタンパク質の凝集を低減させ、再構成後の粒子または発泡の形成を最少にするようなものである。例えば、界面活性剤は、約0.001〜0.5%(例えば、約0.005〜0.05%または0.005〜0.01%)の濃度で、凍結乾燥前製剤中に存在し得る。特に、界面活性剤は、およそ0.005%、0.01%、0.02%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、または0.5%などの濃度で、凍結乾燥前製剤中に存在し得る。代替として、またはさらに、界面活性剤は、凍結乾燥製剤および/または再構成された製剤に添加することができる。
【0073】
特定の実施形態において、安定剤(ショ糖またはトレハロース)および充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)の混合物が、凍結乾燥前製剤の調製において用いられる。本発明の特定の実施形態において、安定剤(ショ糖またはトレハロースなど)、充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、および界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)の混合物が、凍結乾燥前製剤の調製において用いられる。
【0074】
Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.ら編(1980)において記載されているような、他の薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定剤を、これらが製剤の所望の特徴に悪影響を及ぼさない限り、凍結乾燥前製剤(および/または凍結乾燥製剤および/または再構成された製剤)に含めることができる。許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、採用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、限定はしないが、さらなる緩衝剤、保存料、共溶媒、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)、ポリエステルなどの生分解性ポリマー、ならびに/またはナトリウムなどの塩形成対イオンを含む。
【0075】
本明細書において記載される製剤は、治療される特定の適応に適切なように2つ以上のタンパク質、好ましくは、他のタンパク質に悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するタンパク質を含有してもよい。
【0076】
インビボでの投与に用いられる製剤は、無菌でなくてはならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後の、滅菌濾過膜を介する濾過によって、容易に達成される。
【0077】
タンパク質、安定剤、および他の任意の成分を共に混合した後に、製剤を凍結乾燥する。この目的には、Hullパイロットスケールドライヤー(SP Industries、USA)、Genesis(SP Industries)実験室用フリーズドライヤー、または所与の凍結乾燥プロセスパラメータを制御し得る任意のフリーズドライヤーなどの、多くの異なるフリーズドライヤーが利用可能である。フリーズドライは、製剤を凍結し、その後、一次乾燥に適した温度で、凍結した内容物から氷を昇華させることによって達成される。最初の凍結によって、製剤は、典型的には約4時間以下(例えば、約3時間以下、約2.5時間以下、約2時間以下)で、約−20℃未満(例えば、−50℃、−45℃、−40℃、−35℃、−30℃、−25℃など)の温度になる。この条件下で、生成物の温度は、典型的には、製剤の共晶点または崩壊温度より低い。典型的には、一次乾燥のための棚温度は、典型的には約20から250mTorrの範囲の適切な圧力で、約−30から25℃の範囲である(生成物が、一次乾燥の間に融点未満を維持する限り)。製剤、試料を保持する容器のサイズおよびタイプ(例えば、ガラスバイアル)、ならびに液体の容積は、数時間から数日間にわたり得る、乾燥に必要な時間を主に決定付ける。二次乾燥段階は約0〜60℃で実施され、これは、採用される容器のタイプおよびサイズならびにSMIP(商標)のタイプに主に依存する。ここでも、溶液の容積は、数時間から数日間にわたり得る、乾燥に必要な時間を主に決定付ける。
【0078】
場合によって、アニーリングステップが、生成物の最初の凍結の間に導入されてもよい。アニーリングステップは、全体的なサイクル時間を低減させ得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、アニーリングステップは、賦形剤の、特にマンニトールの結晶化の促進を促すのに役立つことができ、これにより、製剤の残りの非晶質成分についてのガラス転移温度が上昇し、最高の棚温度が可能となると考えられる。アニーリングステップは、凍結の間の温度間隔または温度振動を含む。例えば、凍結温度は−40℃未満であり得るが、アニーリングステップは、温度を例えば−10℃まで上昇させ、この温度を一定期間にわたり維持する。アニーリングステップの時間は、0.5時間から8時間にわたり得る(例えば、0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3時間、4時間、6時間、および8時間)。アニーリング温度は、凍結温度から0℃の間であり得る。
【0079】
本発明に従う凍結乾燥生成物は、生成物の品質分析、再構成時間、再構成の質、高い分子量、湿度、およびガラス転移温度に基づいて評価することができる。典型的には、タンパク質の質および乾燥生成物の分析は、限定はしないがサイズ排除HPLC(SE−HPLC)、陽イオン交換HPLC(CEX−HPLC)、X線回折(XRD)、変調示差走査熱量計(mDSC)、逆相HPLC(RP−HPLC)、多角度光散乱(MALS)、蛍光、紫外線吸収、比濁法、キャピラリー電気泳動(CE)、SDS−PAGE、およびそれらの組み合わせを含む方法を用いる、生成物分解率の分析を含む。いくつかの実施形態において、本発明に従う凍結乾燥生成物の評価は、塊の外観を評価するステップを含む。しかし、いくつかの実施形態において、本発明に従う凍結乾燥生成物の評価は、塊の外観を評価するステップを含まない。
【0080】
凍結乾燥は、試験管、袋、ボトル、トレー、バイアル(例えば、ガラスバイアル)、シリンジ、または任意の他の適切な容器などの容器内で行うことができる。容器は、使い捨てであってもよい。凍結乾燥または、大規模または小規模で行うことができる。いくつかの場合において、容器内でタンパク質製剤を凍結乾燥し、その中でタンパク質の再構成を実施して移しかえステップを避けることが望ましい場合がある。この場合の容器は、例えば、3、4、5、10、20、50、または100ccのバイアルであり得る。
【0081】
一般的な提案として、凍結乾燥は、水分含有量が約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、および約0.5%未満である凍結乾燥製剤をもたらす。
【0082】
本発明に従うSMIP(商標)製剤の例には、
1. 6.5%ショ糖、50mMのグリシン、20mMの酢酸ナトリウム、pH6.0中の、25mg/mlのSMIP(商標)(例えば、TRU−015)、
2. 20mMのヒスチジン、4%マンニトール、1%ショ糖、pH6.0中の、50mg/mlのSMIP(商標)(例えば、TRU−015)、
3. 20mMのヒスチジン、4%マンニトール、1%ショ糖、pH6.0中の、100mg/mlのSMIP(商標)(例えば、TRU−015)、
4. 10%ショ糖、20mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80中の、100mg/mlのSMIP(商標)、
5. 5%ショ糖、1%グリシン、20mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80中の、100mg/mlのSMIP(商標)、
6. 5%ショ糖、2.4%ソルビトール、20mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80中の、100mg/mlのSMIP(商標)、
7. 5%または10%ショ糖、20mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80中の、200mg/mlのSMIP(商標)
が含まれる。
【0083】
さらなる典型的な製剤は、実施例の節において記載される。
【0084】
凍結乾燥製剤の保管
一般的に、凍結乾燥生成物は、室温で長期間にわたり保管することができる。保管温度は、典型的には、0℃から45℃にわたり得る(例えば、4℃、20℃、25℃、45℃など)。凍結乾燥生成物は、数ヶ月間から数年間にわたり、保管することができる。保管時間は通常、24ヶ月間、12ヶ月間、6ヶ月間、4.5ヶ月間、3ヶ月間、2ヶ月間、または1ヶ月間である。凍結乾燥生成物は、凍結乾燥容器内で直接的に保管することができ、この容器は再構成器としても機能し、移しかえステップをなくすことができる。代替として、凍結乾燥生成物製剤は、保管のために、より少ない増分に計量することができる。保管は通常、限定はしないが日光、UV照射、他の形態の電磁放射、過剰な熱または冷気、急速な熱ショック、および機械的ショックへの曝露を含む、タンパク質の分解をもたらす状況を避けるべきである。
【0085】
凍結乾燥製剤の再構成
所望の段階で、典型的には、患者にタンパク質を投与する時点で、再構成された製剤中のタンパク質濃度が望ましいものとなるように、凍結乾燥製剤を希釈剤で再構成することができる。例えば、SMIP(商標)タンパク質は、少なくとも25mg/ml(例えば、約25mg/mlから約400mg/ml)の濃度で、再構成された製剤中に存在し得る。様々な実施形態において、再構成された製剤のタンパク質濃度は、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/ml、少なくとも250mg/ml、少なくとも300mg/ml、または少なくとも400mg/mlである。再構成された製剤中の高いタンパク質濃度は、再構成された製剤の皮下送達または筋肉内送達が意図されている場合に特に有用であると考えられる。しかし、静脈内投与などの他の投与経路では、再構成された製剤中の低い濃度のタンパク質が望ましい場合がある(例えば、再構成された製剤中に約5〜50mg/ml、または約10〜40mg/mlのタンパク質)。
【0086】
再構成は通常、完全な水和を確実にするために、約25℃の温度で行われるが、他の温度も所望により採用してよい。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤のタイプ、(1つまたは複数の)賦形剤およびタンパク質の量に依存する。典型的な希釈剤には、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝された溶液(例えば、リン酸緩衝溶液)、滅菌生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液が含まれる。適切な希釈剤は、保存料を含有していてもよい。典型的な保存料には、ベンジルアルコールまたはフェノールアルコールなどの芳香族アルコールが含まれる。採用される保存料の量は、異なる保存料濃度を、タンパク質および保存料の有効性試験との適合性について評価することによって決定される。例えば、保存料が芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、保存料は、約0.1〜2.0%、約0.5〜1.5%、または約1.0〜1.2%の量で存在し得る。
【0087】
再構成された製剤の投与
再構成された製剤は、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、髄腔内経路、経口経路、局所経路、または吸入経路による、ボーラス投与としてのまたは一定期間にわたる連続注入による静脈内投与などの、既知の方法に従って、タンパク質(例えば、小モジュール免疫薬タンパク質)での治療を必要とする対象、例えばヒトに投与される。
【0088】
いくつかの実施形態において、再構成された製剤は、皮下(すなわち、皮膚の下)投与によって対象に投与される。このような目的では、製剤は、シリンジを用いて注入することができる。しかし、注入装置(例えば、Inject−ease(商標)装置およびGenject(商標)装置)、注入用ペン(GenPen(商標)など)、無針装置(例えば、MediJector(商標)およびBioJector(商標))、および皮下パッチ送達系などの、製剤を投与するための他の装置が利用可能である。
【0089】
小モジュール免疫薬の適切な投薬量(「治療上効果的な量」)は、例えば、治療される状態、状態の重症度および経過、タンパク質が予防の目的で投与されるか治療の目的で投与されるか、これまでの治療、患者の臨床歴およびタンパク質に対する応答、用いるタンパク質のタイプ、ならびに担当医の裁量に応じて決定する。小モジュール免疫薬は、1度で、または一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断以降の任意の時点で患者に投与され得る。タンパク質は、単独の治療として、または問題となっている状態の治療において有用な他の薬剤または治療法と組み合わせて投与することができる。
【0090】
キット
本発明は、本発明の凍結乾燥製剤を含有し、その再構成および/または使用のための指示を提供する、キットまたは他の製品を提供する。キットまたは他の製品は、容器を含み得る。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、およびシリンジが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は凍結乾燥製剤を保持し、容器上の、または容器に付随するラベルは、再構成および/または使用のための指示を示し得る。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が上記のようなタンパク質濃度まで再構成されることを示し得る。ラベルはさらに、製剤が、例えば皮下投与のために有用であるまたはその投与を意図したものであることを示してもよい。製剤を保持している容器は、複数回使用のためのバイアルであってもよく、これは、再構成された製剤の反復投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にする。キットまたは他の製品はさらに、適切な希釈剤(例えば、BWFI)を包含する第2の容器を含み得る。希釈剤と凍結乾燥製剤とを混合すると、再構成された製剤中のタンパク質の最終濃度は通常、少なくとも25mg/ml(例えば、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/ml、少なくとも250mg/ml、少なくとも300mg/ml、または少なくとも400mg/ml)である。キットまたは他の製品はさらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための指示を有する添付文書を含む、商業上の立場および利用者の立場から望ましい他の材料を含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明に従うキットには、凍結乾燥SMIP(商標)タンパク質を含有するバイアルまたは他の適切な容器、および充填前希釈剤用のシリンジが含まれる。充填前希釈剤は、再構成に適した任意の溶液(例えば、BWFI、または0.9%塩化ナトリウム溶液など)であり得る。適切なシリンジは、プラスチックまたはガラスであってもよく、使い捨てまたは再利用可能であってもよい。適切なシリンジはまた、様々なサイズ(例えば、1ml、2ml、4ml、6ml、8ml、10ml)のものであってもよい。いくつかの実施形態において、シリンジは、シリンジ管に取り付けられたプランジャーロッドを有し得る。いくつかの実施形態において、シリンジは、利用者によって組み立てられる必要がある、分離型のプランジャーロッドを有し得る。典型的には、適切なシリンジは、投与する前に取り外せるかまたは折り取ることができる、不正開封不可能なプラスチック製の先端キャップを有してもよい。再構成されたSMIP(商標)タンパク質をすぐに用いない場合には、考えられる汚染を予防するために、キャップを交換することもできる。凍結乾燥SMIP(商標)生成物を含有する適切なバイアルまたは他の容器は、プラスチックまたはガラスであってもよく、使い捨てまたは再利用可能であってもよい。適切なバイアルまたはアンプルなどの他の容器は、例えばゴム製のストッパー、ガラスキャップ、および/またはプラスチックキャップで密封されていてもよい。いくつかの実施形態において、キットは、バイアルのストッパーを貫通させるために用いられ得るアダプターを含み得る。いくつかの実施形態において、アダプターは、バイアルのストッパーを貫通させるために用いられ得る、凍結乾燥生成物の再構成および注入のためにシリンジに取り付けられるようになっている針を含む。いくつかの実施形態において、キットは、複数の充填前のバイアル、複数の充填前のシリンジ、および/または複数のバイアルの内容物を投与するためのさらに大きなシリンジを含み得る。典型的には、キットの構成要素は、個別に包装および滅菌され得る。いくつかの実施形態において、キットは、具体的な再構成手順および/または投与手順を含む使用のための指示を含み得る。
【0092】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、さらに完全に理解されよう。しかし、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。全ての引用文献は、参照により組み込まれる。
【実施例】
【0093】
(実施例1)25mg/mlのTRU−015を含有する酢酸塩−グリシン−ショ糖(「AGS」)凍結乾燥製剤
この実施例において、およそ25mg/mlの濃度のTRU−015を凍結乾燥するために、AGS製剤を設計した。具体的には、この実施例において用いられるAGS製剤は、pH6.0で、6.5%ショ糖、50mMのグリシン、20mMの酢酸ナトリウムを含んでいた。タンパク質濃度は25mg/mlであり、バイアル当たり100mgのタンパク質であった。ショ糖は、安定剤および充填剤として作用し、グリシンは、安定剤および等張剤として添加した。酢酸ナトリウムは緩衝液である。AGS製剤は、変調示差走査熱量計(「DSC」)によって測定された−34.2℃のガラス転移を有していた。フリーズドライ顕微鏡(「FDM」)によって測定されたAGS製剤の崩壊温度は、−31.4℃であることが明らかになった。実験室規模の凍結乾燥機における全凍結乾燥プロセスは、約120時間続いた。−10℃での任意のアニーリングステップによって、実験室規模でサイクル時間が90時間減少した。凍結乾燥サイクルを、GMP臨床施設で実行するためにスケールアップさせた。臨床規模の凍結乾燥の全サイクル時間は、およそ117時間であった。典型的な凍結乾燥プログラムおよびサイクルの典型的なトレースを、表1および図2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
図2に示されるように、一次乾燥の間の生成物の温度は、崩壊温度未満であった(図2)。熱電対センサーおよびPiraniセンサーは、二次乾燥の傾きの前に、一次乾燥の完了を示した。これにより、塊の外観が良くなり、残留水分が少なくなった(1.2%)。乾燥粉末凍結乾燥物のガラス転移温度は65℃であり、高温度での保管が可能となった。凍結乾燥生成物の再構成時間は、1分間未満であった。典型的な安定性データを、表2にまとめる。
【0096】
【表2】

【0097】
この実施例は、AGS製剤が、TRU−015分子の安定性を保つために適していることを示唆する。本明細書において記載される典型的な凍結乾燥サイクルは、AGS緩衝液中のTRU−015の凍結乾燥に適している。
【0098】
(実施例2)酢酸塩−マンニトール−ショ糖(「AMS」)製剤またはヒスチジン−マンニトール−ショ糖(「HMS」)製剤
この実施例において、AMS製剤およびHMS製剤という2つの製剤を開発した。酢酸塩−マンニトール−ショ糖(AMS)に基づいた製剤は、緩衝液として20mMの酢酸ナトリウムを、充填剤として4%マンニトールを、安定剤として1%ショ糖を含有する。ヒスチジン−マンニトール−ショ糖(HMS)製剤では、20mMのヒスチジンを酢酸ナトリウム緩衝液の代わりに用いた。残りの成分は同一であった(例えば、4%マンニトール、1%ショ糖)。溶液のpHは、両製剤で6.0であった。両製剤の等張性は、270mOsm/kgであった。充填容積は、両製剤で、10mlのバイアル内に4mlであり、バイアル当たり100mgのタンパク質であった。−15℃でのアニーリングステップを、凍結乾燥プロセスにおいて用いた。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このアニーリングステップはマンニトールの結晶化を促進すると考えられる。マンニトールが結晶化すると、AMS製剤とHMS製剤との両方で、残りの非晶質相のガラス転移温度が−35℃からおよそ−23℃に上昇し得る。凍結乾燥の間の構造の崩壊は、最大−16℃まで検出されなかった(AMS製剤について測定した)。実施例1におけるものより高いガラス転移温度および崩壊温度によって、さらに高い棚温度での凍結乾燥サイクルの実施が可能になり、サイクルの長さが著しく減少する。例示的な凍結乾燥プログラムおよびサイクルの例示的なトレースを、表3および図3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
データは、一次乾燥が崩壊温度よりも低い生成物温度(例えば、≦−16℃)で行われたことを示す。一次乾燥は、PiraniのDewポイントセンサーおよび生成物の熱電対によって示されるように、二次乾燥の傾きの前に完了した。塊の外観は、両製剤で許容可能であった。周辺以下のDSCは、AMS緩衝液と比較して、HMS緩衝液においてマンニトールの結晶度が低いことを示した。凍結乾燥によるタンパク質の分解は、両製剤で類似していた(AMSに基づいた製剤では0.3%HMWであるのに対し、HMSに基づいた製剤では0.5%HMW)。
【0101】
(実施例3)HMS製剤中の50mg/mlのTRU−015
この実施例において、TRU−015の濃度を、製剤中で25mg/mlから50mg/mlまで増大させた。したがって、10mlのバイアル中の4.3mlの充填容積では、バイアル中のタンパク質含有量は、バイアル当たり215mgの計算値まで増大した。HMS製剤を、50mg/mlの投薬形態に採用した。この実施例において用いられたHMS製剤は、緩衝液として20mMのヒスチジンを、充填剤として4%マンニトールを、そして安定剤として1%ショ糖を含有していた。製剤はpH6.0であった。DSCにより測定されたマンニトールの結晶化の開始は、約−23℃であった。アニーリング温度は、この製剤ではおよそ−10℃であった。アニーリング時間は、およそ4時間であった。HMS中の50mg/mlのTRU−015のガラス転移温度は、−9℃であった。一次乾燥は、約0℃の棚温度にあった。典型的なサイクルプログラムおよびサイクルの例示的なトレースを、表4および図4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
一次乾燥の間の生成物温度は、ガラス転移温度未満であった。一次乾燥は、PiraniのDewポイントセンサーおよび熱電対によって示されるように、二次乾燥の前に完了した。塊の外観は許容可能であり、残留水分は0.5%という低いものであった。乾燥粉末のガラス転移温度は、100℃を超えていた。マンニトールの不完全な結晶化が観察された。およそ45℃の開始温度で、少量の非晶質マンニトールが結晶化しているのが確認された。これはさらに、最大40℃までの温度での促進された保管を可能にする。再構成時間は、およそ2分間であった。ポリソルベート80を、凍結乾燥溶液または再構成のための希釈剤に添加することができる。4mlから4.3mlに充填容積を増大することによって、48mg/mlを超えるタンパク質濃度で、単一のバイアルから少なくとも200mgのTRU−015を送達することが可能になった。保管の際のHMW種の例示的なパーセンテージを表5にまとめた。
【0104】
【表5】

【0105】
安定性の傾向の分析は、HMS緩衝液中の50mg/mlのTRU−015が、4℃で2年間にわたり安定であると予測されることを示す。
【0106】
(実施例4)HMS製剤中の100mg/mlのTRU−015
この実施例において、皮下投薬形態(「SQ」)に適した製剤を開発したが、前記製剤は典型的に、新薬の商業化における有益な選択肢である。注入容積の制限(例えば、≦1.0ml)によって、タンパク質の濃度は、典型的には少なくとも100mg/mlであるべきである。別の制限は、緩衝液の等張性であり、これは典型的には、260から320mOsm/kgの間であるべきである。したがって、この実験において、少なくとも100mg/mlのタンパク質濃度のための製剤を開発した。具体的には、270mOsm/kgの等張性の計算値を有するHMS緩衝液(20mMのヒスチジン、4%マンニトール、1%ショ糖、pH=6.0)を、この製剤において用いた。DSCは、1ml当たり最大115mgのタンパク質の、HMS製剤における考えられるマンニトール結晶化を示した(図5)。
【0107】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、結晶性マンニトールは、良好な充填剤/塊形成剤であるだけではなく、高濃度タンパク質の再構成も促すと考えられる。典型的には、結晶性マンニトールを含有する製剤は、非晶質のタンパク質−ショ糖−マンニトール混合物とは対照的に、非常に速く溶解した。したがって、≧100mg/mlのタンパク質濃度でのマンニトールの結晶化の証拠は、高濃度(例えば、50mg/mlから150mg/ml)のTRU−015を凍結乾燥するためにはHMSに基づいた製剤が特に適していることを示す。DSCはまた、−10℃でマンニトールを結晶化させた後、ガラス転移温度が−9℃まで上昇し、5℃の棚温度での活発な一次乾燥が可能になったことを示す。
【0108】
【表6】

【0109】
−10℃でのアニーリングステップを行った。アニーリングステップの時間は、3から7時間であり得る。塊の外観は許容可能であり、残留水分は0.5%であった。凍結乾燥の前に0.01%の界面活性剤ポリソルベート80を溶液に添加すると、70秒以内での再構成が可能となった。再構成が終了した時点から1分以内に、溶液は澄明化した。バイアルの保持容積を占めるように、バイアル中の充填容積を1.2mlに増大させた。XRDは、ある程度の非晶質マンニトールが、凍結乾燥後に、HMS中の100mg/mlのTRU−015内に残ったことを示す。
【0110】
したがって、この実験に基づく、特に有用な製剤は、pH6.0の、4%マンニトール、1%ショ糖、20mMのヒスチジン、0.01%ポリソルベート80、100mg/mlのTRU−015(「HMST」製剤)を含む。保管の間のこの製剤の例示的な安定性データを、表7に示す。
【0111】
【表7】

【0112】
(実施例5)100mg/mlのTRU−015を含有する皮下用製剤
凍結乾燥TRU−015の安定性をさらに向上させるために、緩衝液の等張性を維持しながら、非晶質安定剤の量を増大させることができる。およそ1:1の、タンパク質に対する安定剤の質量比が、室温での保管の安定性を向上させ得ると考えられた。したがって、この実験において用いられる、ヒスチジンに基づく製剤は、100mg/mlの濃度のタンパク質、100mg/ml(10%)の濃度のショ糖、および20mMの濃度のヒスチジンを含むものであった。この製剤の等張性を、約312mOsm/kgと計算した。この製剤のガラス転移温度は、およそ−25℃であった。この10%ショ糖に基づく製剤は、粘度が2.3cPsであると決定されたHMS製剤(20mMのヒスチジン、4%マンニトール、1%ショ糖、pH6.0)と比較して(3.9cPs)の粘度を有していた。安定剤および等張剤として一方はグリシンを含有し、他方はソルビトールを含有する、2つの別の製剤を開発した。粘度を減少させるため、ショ糖の濃度を10%から5%まで減少させた。緩衝液の等張性を維持するため、グリシンの濃度は約1%であり、最終製剤において299mOsm/kgの計算上の等張性であった。代替として、ソルビトールの濃度は約2.4%であり、最終製剤において298mOsm/kgの計算上の等張性となった。グリシン含有製剤の粘度は約2.7cPsであり、ソルビトール含有製剤の粘度は約3.4cPsであった。グリシン含有製剤のガラス転移はおよそ−21℃であり、ソルビトール含有製剤のガラス転移は約−22.5℃であった。この実施例において、3つ全ての製剤について1つの凍結乾燥サイクルを設計して、ガラス転移温度未満での十分な乾燥プロセスをもたらした。製剤についての例示的な凍結乾燥プログラムおよびサイクルの例示的なトレースを、それぞれ表8および図7に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
このサイクルは、3つ全ての製剤で、塊の許容可能な外観をもたらした。残留水分は低く、ガラス転移温度は高く、安定性の加速試験の間の高温での保管を可能にした。例示的な凍結乾燥TRU−015製剤の特徴を、表9にまとめる。
【0115】
【表9】

【0116】
10%ショ糖−20mMのヒスチジン製剤中の100mg/mlのTRU−015の再構成を、図8に示す。水の注入の開始から、溶液から発泡が取り除かれた時点までの、全再構成時間は、5分以下であった。
【0117】
SQ溶液の再構成に対するポリソルベート80(「Tween」)の効果もまた研究した。3つのSQ(例えば、100mg/mlのタンパク質濃度)製剤を、0.01%Tweenと共に、およびTweenなしで、共凍結乾燥した。
【0118】
ポリソルベート80は、再構成の後に、溶液から発泡が取り除かれるのを助けた。10%ショ糖に基づく製剤は、グリシンおよびソルビトールを含有する製剤と比較して、合理的な再構成時間を示した。図8〜10は、100gm/mlの濃度のタンパク質を有する凍結乾燥生成物の再構成に対する異なるショ糖濃度が有し得る効果を例示する、例示的なデータを示す。SQ製剤の例示的な安定性データを、表10に示す。
【0119】
【表10】

【0120】
(実施例6)200mg/mlのタンパク質濃度で皮下投与するためのTRU−015製剤
この実験において、皮下投与を介してバイアル当たり約200mgのタンパク質投薬量の送達を容易にするために、製剤を開発した。したがって、この実験において用いられる全ての製剤は、およそ200mg/mlのタンパク質濃度を含有していた。典型的な製剤は、凍結乾燥保護剤(安定剤)としての低(5%)および高(10%)ショ糖濃度を用いて開発した。両製剤は、10mMのヒスチジンおよび0.01%ポリソルベート80を含有する。低ショ糖の製剤は、低い粘度を有すると予測された。しかし、高ショ糖の製剤は、室温で、より安定であり得る。5%ショ糖に基づく製剤のガラス転移は、−21℃であった。10%ショ糖を有する製剤は、−26℃のガラス転移を有する。異なる凍結乾燥プログラムを2つの製剤のために開発し、典型的なプロセスステップを表11および12に示す。各プロセスについての典型的な凍結乾燥サイクルを、図11および12に示す。塊の外観は、両製剤で許容可能であり、図13に示す。
【0121】
【表11】

【0122】
【表12】

【0123】
【表13】

【0124】
この実験のデータは、TRU−015が、200mg/mlという高いタンパク質濃度の、本明細書において記載される製剤を用いても、凍結乾燥ストレスに耐え得ることを示す。
【0125】
(実施例7)SBI−087製剤についての凍結乾燥プロセス
この実施例において、50mg/mlの濃度のSBI−087を凍結乾燥するために、製剤を設計した。製剤は、pH6.0の、5%ショ糖、10mMのメチオニン、10mMのヒスチジン、および0.01%ポリソルベート80を含有する。例示的な凍結乾燥プログラムを表14に示す。
【0126】
【表14】

【0127】
例示的なプロセスパラメータおよび実験データもまた、図14に示す。
【0128】
図14において見ることができるように、このケースにおける凍結乾燥の間の生成物の温度は、SBI−087製剤の崩壊温度である−15℃を超えなかった。凍結乾燥後に、塊のある程度の縮小が観察された(図15)。しかし、凍結乾燥材料の塊の外観は許容可能であった。
【0129】
凍結乾燥材料の残留水分は、0.37±0.01%であった。例示的な示差走査熱量計(「DSC」)スキャンを図16に示す。
【0130】
発熱事象の開始は、およそ44℃で生じた。ガラス転移温度はおよそ89℃であった。凍結乾燥生成物の特性に基づいて、保管の間の材料へのある程度の水分転移をさらに考慮すると、凍結乾燥生成物は、相転移を伴うことなく、室温で保管され得ることが予想される。
【0131】
(実施例8)SBI−087の再構成に対するポリソルベート80の影響
この実施例において、界面活性剤であるポリソルベート80を製剤に添加して、再構成に対するその効果を評価した。再構成されたSBI−087溶液は、ポリソルベート80を含有する溶液内に固体が溶解した1分以内に澄明化した。界面活性剤を有さないバイアル中の溶液は、少なくとも1時間にわたり濁ったままであった。ポリソルベート80を有する材料と有さない材料との間のタンパク質の質に、差は検出されなかった。したがって、いかなる理論にも束縛されるものではないが、「オパレセンス」は、ポリソルベートの存在下で素早く消滅した気泡に起因すると考えられた。
【0132】
(実施例9)SBI−087の安定性に対するメチオニンの効果
液体安定性の研究を行って、高温での適切なpHおよび賦形剤を確認した。ベース製剤は、10mMのヒスチジン、5%ショ糖である。高分子量種(「HMW」)の形成に対する、pH(5.5から6.5にわたる)ならびに0.01%ポリソルベート80および10mMのメチオニンの添加の効果を試験した。図17に示されるように、SBI−087に最適なpHは、pH5.5〜6.0の範囲であり得る。さらに、メチオニンは、HMWの形成の低減に有利であり得る。
【0133】
(実施例10)SBI−087についてのロバスト性の研究
サイクルの逸脱に対する製剤のロバスト性を評価するために、実施例7において記載された製剤(すなわち、pH6.0の、5%ショ糖、10mMのヒスチジン、10mMのメチオニン、および0.01%ポリソルベート80、および50mg/mlのタンパク質濃度)中のSBI−087で、さらなる研究を行った。予測されないプロセスの逸脱のために、凍結乾燥材料中の残留水分は、正常な平均水分レベルよりも高いレベルに上昇する可能性があった。したがって、適切な製剤は、水分の上昇に起因する変動性の増大に対する十分な「耐性」をもたらすべきである。この製剤が十分な安定性をもたらすことを示すために、一次乾燥の最後に、凍結乾燥試料を正常な水分含有量より高い状態のままにするためにバイアルに栓をすることを除いて、表14の凍結乾燥サイクルを実施した。例示的な凍結乾燥サイクルを図18に示す。凍結乾燥材料の塊の外観は、図15におけるものに類似していた。
【0134】
商業用の凍結乾燥の間に圧力および棚温度の逸脱が生じることは珍しいことではない。これらの逸脱は、常に予測不可能なものであるが、生成物の温度の崩壊温度までまたはさらにはそれを超える温度までの増加をもたらし得る。プロセスのこれらの逸脱を試験するために、一次乾燥の間に、高い棚温度および圧力で、いくつかの「活発な」サイクルを行った。これらのサイクルの設計は、一次乾燥の間に崩壊温度に達し、それを超え、生じた生成物の質を評価するためのものであった。例示的な凍結乾燥サイクルパラメータを表15に示す。活発なサイクルの例(サイクル番号4)もまた、図19に示す。SBI−087乾燥粉末についてのDSCの例を、図21に示す。
【0135】
【表15】

【0136】
図19に示されるように、生成物の温度は、崩壊温度を超えておよそ−6℃まで素早く上昇し、その後、−11℃の最低値まで低下した。計算上の生成物温度プロフィールは、生成物の温度が氷の融点を超える可能性があったことを示す。塊構造の崩壊によって、材料とバイアルの底との間の接触がなくなった。したがって、バイアルの底から生成物への熱流束が低減すると考えられ、これは、一次乾燥の間の温度の一時的低下として示される。この実施例から得られる崩壊の証拠は、図20で見ることができる。
【0137】
ロバスト性サイクルのSBI−087乾燥粉末試料の例示的な残留水分値および例示的な熱特徴を、表16に示す。
【0138】
【表16】

【0139】
高水分サイクルの間の水分含有量の増大によって、ガラス転移温度が18℃低下した。発熱事象の開始もまた低下した。しかし、試験した材料の全てのガラス転移は、保管温度よりも依然として高く、このことは、非晶質相における変動性が低いことを示す。「活性な」サイクル2〜4の材料のガラス転移温度は、水分データに基づいて、71℃から88℃の範囲内であると予想される。さらに、水分およびDSCのデータに基づいて、試験したプロセスの逸脱は、4℃での保管の間の分解速度に顕著には影響しないことが予測される。この予測を支持する例示的な安定性データを、表17に示す。
【0140】
【表17】

【0141】
(実施例11)充填前希釈剤用シリンジを有するキット
この実施例において、凍結乾燥SMIP(商標)タンパク質生成物および充填前希釈剤用シリンジを含有するキットが、再構成および投与の利便性のために開発される。充填前希釈剤用シリンジを有するキットは、典型的には、凍結乾燥タンパク質を有するバイアル、注入のための再構成緩衝液滅菌水を含有する充填前希釈剤用シリンジ、バイアルアダプター、およびシリンジのプランジャーロッドを含む。キットは、使用のための指示マニュアルを含み得る。充填前希釈剤用シリンジキットは、以下のステップに従って用いることができる。
【0142】
まず、凍結乾燥SMIP(商標)タンパク質のバイアルおよび充填前希釈剤用シリンジを、室温に達するようにする。次に、凍結乾燥タンパク質を含有するバイアルからプラスチック製の引き上げ式頂部キャップを取り外し、ゴムストッパーの中心部分を露出させる。バイアルの頂部を、消毒スワブまたは消毒布で拭く。洗浄した後、ゴムストッパーは、汚染の機会を最少にするために、あらゆる表面または人と接触すべきではない。汚染のリスクを最小にするために、手順の間を通して注意すべきである。
【0143】
次に、プラスチック製のバイアルアダプターの包装からカバーをはぎ取ることによって取り外す。次に、バイアルアダプターをバイアル上に載せ、アダプター内のアダプタースパイクがバイアルのストッパーを貫通するまで、バイアルアダプターを押す。次に、プランジャーロッドを希釈物用シリンジのプランジャーまで通すが、患者または医師は、汚染のリスクを最小にするために、プランジャーロッドをプランジャーに通す間、プランジャーロッドのシャフトとの接触を避けるべきである。次に、希釈剤用シリンジのプラスチック製の不正開封不可能な先端キャップを、キャップのミシン目を折ることによって折り取る。シリンジ先端とキャップ内部との接触は避けるべきである。次に、キャップを、その頂部を下にして、それが汚染されないと考えられる位置の清潔な表面上に置く。再構成された溶液をすぐに投与しない場合には、キャップは交換することができる。
【0144】
次に、アダプターの包装を、アダプターから持ち上げて外し、廃棄する。バイアルは、平らな表面に置く。次に、希釈剤用シリンジを、確実となるまで先端をアダプターの開口部に通すことによって、バイアルアダプターに接続する。次に、希釈剤の全てをタンパク質バイアルに注入するために、プランジャーロッドを押す。シリンジを取り外さずに、粉末が溶解するまで、バイアルの内容物を穏やかに回転させるかまたは混合する。次に、溶液を、溶解しなかった粉末について検査する。その際、溶液は、澄明化しており無色であるべきである。2つ以上のバイアルを1回の注入で投与する場合には、凍結乾燥SMIP(商標)タンパク質を含有するさらなるバイアルを、同じように再構成することができる。
【0145】
次に、バイアルを反転し、溶液をゆっくりとシリンジ内に引き入れる。SMIP(商標)タンパク質の2つ以上のバイアルを投与する場合、再構成された溶液をシリンジ内に引き入れずに、バイアルアダプターがバイアルに取り付けられたままにして、シリンジをバイアルから取り外すべきである。個別の大きなルアーロックシリンジを取り付けて、再構成された内容物をその中に引き入れることができる。この手順は、各バイアルについて繰り返すことができる。
【0146】
シリンジを穏やかに引きながら反時計回りに回すことによって、バイアルアダプターからシリンジを分離することができる。次に、アダプターを取り付けたまま、バイアルを廃棄する。典型的には、室温で保管する場合には、再構成されたSMIP(商標)タンパク質は、およそ3時間以内に投与すべきである。
【0147】
【表18−1】

【0148】
【表18−2】

【0149】
【表18−3】

【0150】
【表18−4】

【0151】
【表18−5】

【0152】
【表18−6】

【0153】
【表18−7】

【0154】
【表18−8】

【0155】
【表18−9】

【0156】
【表18−10】

【0157】
【表18−11】

【0158】
【表18−12】

【0159】
【表18−13】

【0160】
【表18−14】

【0161】
【表18−15】

【0162】
【表18−16】

【0163】
【表18−17】

【0164】
【表18−18】

【0165】
同等物
以下に、本発明の特定の非限定的な実施形態を記載した。当業者であれば、常法にすぎない実験を用いて、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識し、または確認することが可能であろう。当業者には、以下の特許請求の範囲に規定されるように、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この記載に対する様々な変更および修正が成され得ることが理解されよう。
【0166】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という冠詞は、逆のことが示されていない限り、または文脈から別途明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。1つの群の1つまたは複数の構成員の間に「または」を含む請求項または記載は、逆のことが示されていない限り、または文脈から別途明らかでない限り、その群の構成員の1つ、2つ以上、または全てが、所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、採用されるか、または他の形で関連すれば、満足なものであると考えられる。本発明は、群の厳密に1つの構成員が、所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、採用されるか、または他の形で関連する実施形態を含む。本発明はまた、群の構成員の2つ以上または全てが、所与の生成物もしくはプロセスにおいて存在するか、採用されるか、または他の形で関連する実施形態を含む。さらに、本発明が、1つもしくは複数の請求項の、または記載における関連する部分の、1つまたは複数の限定、要素、条項、記述用語などが別の請求項に導入される、全ての変形、組み合わせ、および並べ替えを包含することが理解される。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、従属する請求項が同一な任意の他の請求項において見られる1つまたは複数の限定を含むように修正され得る。さらに、請求項が組成物を列挙する場合、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書において開示される目的のいずれかのために組成物を用いる方法が含まれること、および本明細書において開示される作製方法のいずれかまたは当技術分野において知られている他の方法に従って組成物を作製する方法が含まれることが理解される。さらに、本発明は、本明細書において開示される組成物を調製するための方法のいずれかに従って作製された組成物を包含する。
【0167】
要素がリストとして表される場合、例えば、マーカッシュグループ形式で表される場合、要素の各下位群もまた開示され、(1つまたは複数の)任意の要素がその群から除去され得ることが理解される。「包含している(comprising)」という用語が、開放的なものであり、さらなる要素またはステップを含むことを許容することに注意されたい。通常、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴、ステップなどを包含するように記載されている場合、本発明または本発明の態様の特定の実施形態が、このような要素、特徴、ステップなどからなるか、またはこれらから基本的になることを理解されたい。簡潔性を目的として、これらの実施形態は、本明細書においてこの通りの文言で具体的に説明されていない。したがって、1つまたは複数の要素、特徴、ステップなどを包含する、本発明の各実施形態では、本発明はまた、これらの要素、特徴、ステップなどからなるかまたはこれらから基本的になる実施形態も提供する。
【0168】
範囲が示されている場合、端点が含まれる。さらに、別段の指示がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から別途明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈から別途明らかに示されない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の具体的な値を取り得ることが理解される。また、別段の指示がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から別途明らかでない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の部分範囲を取り得、部分範囲の終点は、範囲の下限の単位の10分の1と同程度の精度まで表されることが理解される。
【0169】
さらに、本発明の任意の特定の実施形態が請求項の任意の1つまたは複数から明確に排除され得ることが理解される。本発明の組成物および/または方法の任意の実施形態、要素、特徴、適用、または態様が、任意の1つまたは複数の請求項から排除され得る。簡潔さを目的として、1つまたは複数の要素、特徴、目的、または態様が排除される実施形態の全てが、本明細書において明確に説明されているわけではない。
【0170】
参照による組み込み
この出願において引用される全ての刊行物および特許文献は、全ての目的で、それぞれの刊行物または特許文献の内容が本明細書に組み込まれたかのように同程度まで、参照によりそれらの全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小モジュール免疫薬タンパク質の凍結乾燥混合物を包含する製剤であって、凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質の7%未満が凝集形態で存在する製剤。
【請求項2】
充填剤および/または緩衝剤をさらに包含する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
非還元糖をさらに包含する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
非還元糖がショ糖である、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
非還元糖がトレハロースである、請求項3に記載の製剤
【請求項6】
小モジュール免疫薬タンパク質に対する非還元糖の質量比が、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、または5:1である、請求項3に記載の製剤。
【請求項7】
充填剤が、ショ糖、マンニトール、グリシン、塩化ナトリウム、デキストラン、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の製剤。
【請求項8】
緩衝剤が、ヒスチジン、酢酸ナトリウム、クエン酸、リン酸、コハク酸、トリス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の製剤。
【請求項9】
緩衝剤がヒスチジンである、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
製剤が安定剤をさらに包含する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
安定剤が、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、グリシン、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
安定剤がショ糖である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
製剤が等張剤をさらに包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
等張剤が、グリシン、ソルビトール、ショ糖、マンニトール、塩化ナトリウム、デキストロース、アルギニン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
製剤が界面活性剤をさらに包含する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、トリトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、ヒスチジン、およびポリソルベート80の凍結乾燥混合物を包含する製剤。
【請求項19】
小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、マンニトール、およびヒスチジンまたは酢酸ナトリウムから選択される緩衝剤の凍結乾燥混合物を包含する製剤。
【請求項20】
ショ糖に対するマンニトールの質量比が、約2:1、3:1、4:1、または5:1である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
小モジュール免疫薬タンパク質、ショ糖、グリシン、および酢酸ナトリウムの凍結乾燥混合物を包含する製剤。
【請求項22】
小モジュール免疫薬タンパク質が、CD20を特異的に標的化する結合ドメインを包含する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
小モジュール免疫薬タンパク質が、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を包含する、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
凍結乾燥された小モジュール免疫薬タンパク質が室温で安定である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の製剤を保持する容器を包含するキット。
【請求項26】
希釈剤で再構成された請求項1〜24のいずれか一項に記載の製剤を包含する、再構成された製剤であって、小モジュール免疫薬タンパク質が、25mg/mlから400mg/mlの範囲内の濃度で、再構成された製剤中に存在する、再構成された製剤。
【請求項27】
静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与のための、請求項26に記載の再構成された製剤。
【請求項28】
請求項26または27に記載の再構成された製剤を投与するステップを包含する、患者を治療するための方法。
【請求項29】
小モジュール免疫薬タンパク質、非還元糖、および緩衝剤を包含する、凍結乾燥のための製剤。
【請求項30】
緩衝剤が酢酸ナトリウムまたはヒスチジンから選択される、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
緩衝剤がおよそ10mMの濃度である、請求項29または30に記載の製剤。
【請求項32】
緩衝剤がおよそ20mMの濃度である、請求項29または30に記載の製剤。
【請求項33】
マンニトールをさらに包含する、請求項29〜32のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項34】
メチオニンをさらに包含する、請求項29〜33のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項35】
メチオニンがおよそ10mMの濃度である、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
非還元糖がショ糖である、請求項29〜35のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項37】
ショ糖が1%から10%の間の範囲の濃度である、請求項26に記載の製剤。
【請求項38】
ショ糖がおよそ5%の濃度である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
非還元糖がトレハロースである、請求項29〜35のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
小モジュール免疫薬タンパク質に対する非還元糖の質量比が、約0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.4:1、0.5:1、1:1、2:1、2.6:1、3:1、4:1、または5:1である、請求項29〜39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
ショ糖がおよそ10%の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度である、請求項36に記載の製剤。
【請求項42】
等張剤をさらに包含する、請求項29〜41のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
等張剤がグリシンまたはソルビトールである、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
界面活性剤をさらに包含する、請求項29〜43のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項45】
界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、トリトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
ショ糖がおよそ5%から10%の間の範囲の濃度であり、ヒスチジンがおよそ10mMから20mMの間の範囲の濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.001%から0.1%の間の範囲の濃度である、請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ25mg/mlから400mg/mlの間の範囲の濃度である、請求項29〜46のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項48】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ25mg/mlの濃度であり、ショ糖がおよそ6.5%の濃度であり、グリシンがおよそ50mMの濃度であり、酢酸ナトリウムがおよそ20mMの濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項49】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ50mg/mlから100mg/mlの間の範囲の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度であり、マンニトールがおよそ4%の濃度であり、ショ糖がおよそ1%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項50】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ100mg/mlの濃度であり、ショ糖がおよそ10%の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.01%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項51】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ100mg/mlの濃度であり、ショ糖がおよそ5%の濃度であり、グリシンがおよそ1%の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.01%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項52】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ100mg/mlの濃度であり、ショ糖がおよそ5%の濃度であり、ソルビトールがおよそ2.4%の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.01%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項53】
小モジュール免疫薬タンパク質がおよそ200mg/mlの濃度であり、ショ糖が5%から10%の間の範囲の濃度であり、ヒスチジンがおよそ20mMの濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.01%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項54】
ショ糖がおよそ5%の濃度であり、ヒスチジンがおよそ10mMの濃度であり、メチオニンがおよそ10mMの濃度であり、ポリソルベート80がおよそ0.01%の濃度である、請求項47に記載の製剤。
【請求項55】
製剤が、およそ5.0からおよそ7.0の範囲のpHを有する、請求項29〜54のいずれかに記載の製剤。
【請求項56】
6.0のpHを有する、請求項55に記載の製剤。
【請求項57】
小モジュール免疫薬タンパク質が、CD20を特異的に標的化する結合ドメインを包含する、請求項29〜56のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項58】
小モジュール免疫薬タンパク質が、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を包含する、請求項57に記載の製剤。
【請求項59】
請求項29〜58のいずれか一項に記載の小モジュール免疫薬タンパク質を包含する製剤を凍結乾燥する工程、および
凍結乾燥された製剤を室温以下の温度で保管する工程
を包含する、小モジュール免疫薬タンパク質を保管する方法。
【請求項60】
保管温度が2〜8℃である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
保管温度が室温である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
請求項59〜61のいずれか一項に記載の方法に従って保管された、小モジュール免疫薬タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−530721(P2012−530721A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516348(P2012−516348)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/039227
【国際公開番号】WO2010/148337
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】