説明

小便器と手洗い器の複合体

本発明は、小便器と手洗い器の複合体に関する。ここでは、手洗い器からの廃水は、小便器を洗い流すために用いられる。手洗い器と小便器は、互いに近接し、および/または、互いに物理的に接触する。小便器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面が、手洗い器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面に対してオフセット角度で位置決めされるように、手洗い器は、小便器に対してオフセットされる。この角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、さらに好ましくは40°〜70°の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器と手洗い器の複合体に関する。ここで、手洗い器からの廃水は、小便器を洗い流すために用いられる。手洗い器と小便器は、互いに近接し、および/または、互いに物理的に接触している。
【0002】
手洗い器は、小便器に対してオフセットされており、これにより、頂部から底部まで小便器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面(好ましくは、垂直対称平面、および/または、小便器と該小便器の排水口を洗い流す流出口/開口によって定義される垂直平面)は、手洗い器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面(好ましくは、垂直対称平面、および/または、蛇口と手洗い器の排水口とによって定義される垂直平面)に対して、所定の角度で位置決めされている。ここで、このオフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは、30°〜75°の範囲、さらに好ましくは、40°〜70°の範囲、さらに好ましくは、40°〜60°の範囲である。
【0003】
好ましくは、小便器および手洗い器の上記仮想垂直(対称)平面は、それぞれ、小便器および手洗い器の使用者による使用の方向に一致する。その結果、小便器に対する使用者の向きは、手洗い器に対する使用者の向きに対して、オフセットされる。ここで、このオフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは、30°〜75°の範囲、さらに好ましくは、40°〜70°の範囲、さらに好ましくは、40°〜60°の範囲である。
【0004】
本発明の好ましい実施形態において、小便器と手洗い器の2以上の複合体は、便所、好ましくは公衆便所において用いられる。
【0005】
好ましくは、本発明に係る複合体は、私用便所、特に、RV車(レクリエーショナルビークル)、キャンピングワゴン、バス、または、海上用途、特にボート、もしくは他の船舶といった乗り物装置における私用便所にて、用いられる。好ましくは、本発明に係る複合体は、以下のリストから選択された公衆便所にも、用いられる。このリストは、例えば鉄道駅、空港、または高速道路の便所施設といった公共の交通機関の現場や、大型船舶またはボート、ホテル、レストラン、会議施設、公共ビル、特に博物館、展示場、映画館、アートハウス、政府系ビル、学校、大学を含む。
【背景技術】
【0006】
手洗い器と小便器の複合体は、原則として、従来技術より知られている。例えば、独国実用新案出願DE200 07 812号は、手洗い器と小便器の複合体を開示している。この複合体は、単一の水流入口(手洗い器の蛇口)と、手洗い器および小便器の双方からの廃水のための、組み合わされた排水とによって、特徴付けられている。DE200 07 812号によれば、手洗い器は、小便器の直上に配置されている。すなわち、手洗い器の使用の方向が、小便器の使用の方向に一致している。
【0007】
同様の、「自己洗い流し型」の小便器と、手洗い洗面台固定具との複合体が、米国特許5862546号に記載されている。ここでも、手洗い器は、小便器の直上に配置されている。
【0008】
手洗い器が小便器の直上に配置された、一体型の手洗い器と小便器の他の複合体が、独国実用新案出願G94 13 046号、およびDE298 10 298号に開示されている。
【0009】
手洗い器と小便器(貯水器とともに)の複合体の代替的な実施形態が、DE197 04 452号に開示されている。この文献に開示された設備は、邸宅の客用バスルームに設置されることを意図したものである。ここで、この設備は、このような客用バスルームに既設されている流入口と排水管を用いている。小便器の直上に設けられた手洗い器の一体構造に加えて、代替的な実施形態が、開示されており(DE197 04 452号の図4および5を参照のこと)、これは、手洗い器が小便器に直交して配置されている形態を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
小便器と手洗い器の節水型複合体の公知の実施形態に共通する課題は、以下である。すなわち、その幾何学的配置は、小便器の使用の方向と、手洗い器の使用の方向とが一致する、つまり、使用者が、手洗い器を使用する位置と同じである、小便器を使用する位置に留まることになるような配置となる。これは、私用バスルーム、または客用バスルームでの使用に適し、且つ許容可能な幾何学的配置である一方、この配置は、公衆便所に関しては許容不可能となる。公衆便所においては、小便器は、典型的には汚れており、少なくとも衛生上の理由から、潜在的な使用者は、潜在的に小便器に近接する、または小便器に物理的に接触さえしてしまう間に、手洗い器を使用する傾向にないと予想される。公衆の環境においては、小便器に極近接(心理的に)して設置された手洗い器を使用することを妨げるような、心理的な障壁もある。従来技術に係る「小便器上の手洗い器」の実施形態における、これら実際上且つ物理的な障壁は、この設備の商品化に対する障害をもたらす。
【0011】
同様に、手洗い器がある程度小便器に近接し、且つ小便器に対して直交して配置されている幾何学的配置は、公衆便所においては許容することができないものである。何故ならば、これは、以下のことを意味するからである。すなわち、手洗い器と小便器の第1の複合ユニットにおける手洗い器の使用者は、手洗い器と小便器の第2の複合ユニットの第2の使用者の全体像を見ることになる。このような幾何学的配置は、公衆便所の潜在的使用者にとって許容することができないものと思われる。
【0012】
小便器と手洗い器の節水型複合体に係る従来技術に関する、上記した課題に基づいて、本発明に係る目的は、節水型であり、且つ、公衆便所の潜在的使用者にとって許容可能な、小便器と手洗い器を備える設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的および他の目的は、請求項1に係る小便器と手洗い器の複合体によって解決される。
【0014】
ここでは、本発明は、小便器と手洗い器の複合体に関する。手洗い器からの廃水は、小便器を洗い流すために用いられる。手洗い器と小便器は、互いに近接し、および/または、互いに物理的に接触する。
【0015】
頂部から底部まで小便器を通って垂直に延びる中心平面(好ましくは、垂直対称平面、および/または、小便器を洗い流すための流出口/開口と、小便器の排水口とによって定義される垂直平面)によって定義される仮想平面が、手洗い器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面(好ましくは、垂直対称平面、および/または、手洗い器の蛇口と排水口とによって定義される垂直平面)に対して所定の角度で位置決めされるように、手洗い器は、小便器に対してオフセットされる。ここで、オフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、より好ましくは40°〜70°の範囲、さらに好ましくは40°〜60°の範囲である。
【0016】
好ましくは、小便器および手洗い器の上記仮想垂直(対称)平面は、それぞれ、小便器および手洗い器の各々の使用者による使用の方向に一致する。その結果、小便器に対する使用者の向きは、手洗い器に対する使用者の向きに対して、オフセットされる。ここで、オフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、さらに好ましくは40°〜70°の範囲、さらに好ましくは40°〜60°の範囲となる。
【0017】
手洗い器と小便器の複合体の好ましい実施形態は、従属請求項において規定される。
【0018】
例えば、鉄道駅、空港、または高速道路の便所施設といった公共の交通機関の現場、ホテル、レストラン、会議施設、公共ビル、特に博物館、展示場、映画館、アートハウス、政府系ビル、学校、大学等において現在設けられているような、男性用の公衆便所において、例えば、5以上、10以上、または20以上もの多数の小便器が、1つの部屋に設けられている。その一方で、同様の、またはやや少数の手洗い器が、分離された部屋に設けられている。現在存在しているこれらの分離されたユニットが、本発明に係る手洗い器と小便器の複合体に置換された場合、大幅なコスト削減効果を達成することができる。本発明によれば、節水効果に加えて、(洗浄される必要のある)スペースと、(メンテナンスされる必要のある)配管に関して、コスト削減効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】小便器と手洗い器の複合体を示し、頂部から底部まで小便器を通過する仮想垂直(対称)平面と、頂部から底部まで手洗い器を通過する仮想垂直(対称)平面との間のオフセット角度が、45°となっている形態を示す。この実施形態においては、小便器と手洗い器は、互いに物理的に直接接触しており、個々に独立して交換可能な、2つの分離されたユニットとして実現されている。
【図2】公衆便所の環境(コンピュータアニメーション)において、図1に示す小便器と手洗い器の3つの複合体の配置を示しており、第1のユニットの手洗い器の使用者の視界が、隣接する小便器の潜在的使用者の視界に一致しないという、本発明の原則を示している。
【図3】手洗い器と小便器の複合体の代替的な実施形態を示しており、この複合体においては、手洗い器が、小便器と物理的に直接接触しているのではなく、蛇口を有する隔離ユニットによって小便器から分離されている形態を示す。また、この実施形態は、鏡、紙供給装置、および石鹸供給装置が、独創的な本構成に、どのようにして有利に組み込まれ得るかを示している。
【図4】代替的な実施形態を示しており、この実施形態においては、小便器と手洗い器の4つの複合ユニットが、例えば柱の周りに配置されている。
【図5】本発明に係る他の実施形態を示しており、この実施形態においては、小便器と手洗い器は、1つの一体ユニットとして設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における小便器は、小便を受けるのに適した、如何なるコンテナまたはレセプタクルであると理解されるべきである。この小便器の形状および/または材料に関して、如何なる限定も存在しない。
【0021】
好ましくは、上記小便器は、壁上に設置されるのに適しており、且つ、適当な配管を有している。
【0022】
小便器は、好ましくは、少なくとも1つの開口、流出口、またはオリフィスを有する。この開口、流出口、またはオリフィスを通して、水が小便器の内部(すなわち、小便に曝される領域)に供給され得る。本発明に従って、上記開口またはオリフィスは、「小便器を洗い流すための開口/流出口」としても言及される。
【0023】
本発明に従って、小便器を洗い流すために用いられる液体の少なくとも一部は、小便器と手洗い器の本複合体の手洗い器からの廃水である。
【0024】
本発明の一実施形態においては、上記手洗い器からではない他の水源からの水が、上記手洗い器からの廃水に加えて用いられてもよい。この少なくとも1つの追加的な水源が真水源である構成も、本発明の範囲内である。
【0025】
本発明は、小便器内に供給される前に、手洗い器からの廃水が貯蔵装置に貯蔵される実施形態にも関するものである。
【0026】
好ましくは、小便器内への水の供給プロセスのいずれも、手洗い器からの廃水のみを伴うものであれ、または、他の水源と混合された手洗い器および/または貯蔵ユニットからの水(廃水)を伴うものであれ、制御ユニットによって制御される。この制御ユニットとしては、例えば、中央演算ユニット、タイマー、中央制御ユニット、または他の如何なる考え得る制御器が挙げられる。
【0027】
また、本発明の小便器は、少なくとも1つの排水ユニットを有し、該排水ユニットは、小便、および小便器を洗い流すために用いられた如何なる水(廃水)を排水するのに適している。
【0028】
本発明に従って、小便器は、1つの仮想平面を有し、該仮想平面は、小便器の中心を通って垂直に延びる(すなわち、頂部から底部まで)中心平面によって定義される。好ましくは、上記平面は、垂直対称平面、および/または、小便器を洗い流すための流出口/開口と、小便器の排水口とによって定義される垂直平面である。
【0029】
好ましくは、上記平面は、小便器の使用者の所望の位置取り(肩と頭部を通る仮想線)に直交する。対称的形状の小便器に関して、小便器の上記仮想平面は、この場合においてはミラー平面(例えば、図1を参照のこと)である垂直対称平面と一致する。
【0030】
同様の仮想平面が、手洗い器に対して定義され得る。本発明に従って、上記仮想平面は、手洗い器の中心を通って延びる(好ましくは、垂直対称平面、および/または、手洗い器の蛇口と排水口とによって定義される垂直平面)。
【0031】
好ましくは、小便器および手洗い器の上記仮想垂直(対称)平面は、それぞれ、小便器および手洗い器の各々の使用者による使用の方向に一致する。
【0032】
本発明に従って、小便器と手洗い器は、小便器の垂直(対称/中心)平面と、手洗い器の垂直(対称/中心)平面との間のオフセット角度によって定義されるように、互いに対してオフセットされる。ここで、上記オフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、さらに好ましくは40°〜70°の範囲、さらに好ましくは40°〜60°の範囲である。このような幾何学的配置により、小便器に対する使用者の向きは、手洗い器に対する使用者の向きに対してオフセットされることになる。ここで、このオフセット角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、さらに好ましくは40°〜70°の範囲、さらに好ましくは40°〜60°の範囲となる。
【0033】
本発明に係る手洗い器は、真水を供給するための少なくとも1つの供給ユニット(好ましくは、蛇口)を有する。上記手洗い器は、使用済みの水を排水するための少なくとも1つの排水ユニットをさらに有する。なお、上記使用済みの水は、手洗い器のコンテナ/レセプタクル内に集められる。
【0034】
本発明に従って、廃水および/または供給ユニットから新たに供給された真水は、手洗い器の上記排水ユニットから、小便器を洗い流すための開口/流出口へと導かれる。
【0035】
好ましくは、手洗い器からの廃水を、手洗い器の排水ユニットを通って、小便器を洗い流すための開口/流出口へと移動させるために、自然の重力が用いられる。他の実施形態においては、手洗い器の排水ユニットからの廃水を、小便器を洗い流すための開口/流出口へと移動させるために、ポンプまたはポンプ手段が、重力に加えて、または重力に代えて、用いられてもよい。好ましくは、重力とポンプの組み合わせが用いられる。
【0036】
既に述べたように、小便器を洗い流すために、手洗い器からの廃水(または、手洗い器を通過する新たに供給された真水)に加えて、他の分離された真水ライン/真水源からの真水が、開口/流出口を介して、小便器を洗い流すために追加されるように、小便器の配管が配置されてもよい。上記真水を、使用者が手洗い器を使用していないときに、手洗い器を通過させてもよい。
【0037】
本発明に従って、小便器を洗い流すための、2以上のこのような開口/流出口は、より完全に小便器内部を洗い流すために、例えば、2つの開口/流出口を小便器の反対側にそれぞれ配すように設けられてもよい。好ましくは、これら2以上の開口/流出口のうち、1以上または全ての開口/流出口は、手洗い器の排水ユニットに連結される。
【0038】
本発明に従って、手洗い器からの廃水は、手洗い器の排水ユニットを通過し、小便器を経て、小便器の排水ユニットを通過して、排水される。
【0039】
手洗い器の形状、幾何学的配置、または材料に関して、如何なる限定も存在しない。
【0040】
一実施形態において、手洗い器は、小便器に近接して配置されるが、小便器に物理的に直接(または、直近に)接触して配置されない。しかしながら、この実施形態においては、手洗い器の廃水(または、蛇口から新たに供給された真水)は、例えば他の分離された配管を介して、手洗い器の排水ユニットから、小便器を洗い流すための開口/オリフィスへと導かれる。
【0041】
手洗い器が小便器に物理的に直接(または、直近に)接触していない場合、互いに最も近接している、小便器と手洗い器の2つの外面の間の距離は、40cm以下、好ましくは30cm以下、さらに好ましくは20cm以下、さらに好ましくは10cm以下、さらに好ましくは5cm以下であることが好ましい。
【0042】
他の実施形態においては、手洗い器と小便器とは、互いに近接しているが、物理的に接触してはおらず、例えば、好ましくは蛇口を含む分離ユニットのような他のユニットによって、互いに分離される。小便器と手洗い器との間に隔離ユニットが配置されている実施形態が、図3に示されている。ここでは、蛇口は、手洗い器の一部ではなく、上記隔離ユニットの一部となっている。このような配置は、小便器と手洗い器との間の隔離を強調するためには、特に有利であると思われる。
【0043】
本発明の一実施形態においては、2以上の、さらに好ましくは4以上の、さらに好ましくは5以上の、さらに好ましくは8以上の、さらに好ましくは10以上の、小便器と手洗い器の複合ユニットと、小便器とが、同じ部屋において互いに隣り合うように設置される。このような好ましい実施形態の一例が、図2に示されている。
【0044】
小便器と手洗い器の複数の複合体を互いに隣り合うように設置することは、例えば、空港、鉄道駅、政府系ビル、オフィスビル、学校、大学、レストラン、文化の場、スポーツスタジアム等の公衆便所における、典型的な配置となる。
【0045】
本発明の幾何学的配置の1つの特に有利な点、すなわち、小便器に対する(いずれにせよ小便器に近接する)手洗い器の配列または「オフセット」によって、複数のこれらユニットを、該ユニット間に物理的な境界(例えば、壁または敷居)を設けることなく、互いに隣り合うように配置することが可能となる。何故ならば、小便器を使用する者の視界は、隣接する小便器の潜在的使用者の視界と一致しないのと同時に、手洗い器を使用する者の視界は、他の(隣接する)ユニットの小便器の潜在的使用者の視界と一致しないからである。このような複数の複合ユニットのアレイにおいては、小便器と手洗い器が、互いに対して90°で配置されている場合、それぞれの視界は、深刻に交差することになる。
【0046】
必要ではないが、小便器と手洗い器の2以上の複合ユニットの間に、敷居または壁を設けることも、本発明と一致する。
【0047】
事実として、図4に示されている好ましい実施形態において、2、3、4以上、好ましくは4つの、小便器と手洗い器の複合ユニットは、柱、ポール、またはポストの周りに配置される。
【0048】
本発明に係る一実施形態においては、小便器と手洗い器は2つの分離された構造ユニットとして設けられ、該構造ユニットは、互いに独立して交換または取り外しされ得る(例えば、図1を参照のこと)。この実施形態は、柔軟性、優れたデザインの可能性、およびメンテナンス/修理の容易性といった利点を有する。
【0049】
代替的な実施形態において、小便器および手洗い器は、一体ユニットとして設けられる(図5を参照のこと)。この構造は、柔軟性には乏しい(すなわち、小便器および手洗い器のいずれかが故障した場合、ユニット全体を交換する必要がある)が、その一方で、この構造は、より低コストで製造することができ、且つ、より容易に設置することができる。好ましい実施形態において、このような一体ユニットは、1つの主材料、特に、セラミック材料、樹脂材料、または複合材料から作製される。このような一体ユニットは、鋳造成形、押し出し成形、またはプレス成形されることが、特に好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、小便器内に、センサが設けられ、該センサは、放尿プロセスの開始および/または終了を検知する。好ましくは、センサおよび関連する制御ユニットが、放尿プロセスが終了したことを検知した場合、例えば、小便の流入を最後に検知した後、予め定められたある期間を経過した後に、手洗い器における水の供給が、好ましくは蛇口を介して、自動的に開始される。
【0051】
上記に概略説明したように、小便器の洗い流し、および/または、手洗い器の水供給ユニットの動作は、好ましくは、少なくとも1つの制御ユニットによって制御される。上記制御ユニットは、好ましくは、少なくとも1つのセンサを有する。
【0052】
適当なセンサとしては、例えば、液体用センサ、重量センサ、尿素センサ、圧力センサ、および/または水位センサであり得る。一実施例において、センサは、小便の流入を恒久的に検知し、例えば、小便流入の3秒以上経過した後に、所定の内部トリガを設定する。所定の期間(例えば、3秒間)に小便が検知されなかった場合、第1の信号が出力(トリガ)された後、第2の信号が出力され得る。双方の信号が出力された場合、制御ユニットは、次いで、好ましくは手洗い器の蛇口を操作することによって、手洗い器への真水の供給を開始する。こうして、小便器の使用者による手洗いを促す、または補助する。好ましくは、小便の流入終了の検知と、水の供給との間に、十分な時間オフセットが設けられる。さらに好ましくは、上記「自動」の水供給は、予め定められた期間(例えば、5秒)の経過後に、停止される。
【0053】
好ましくは、小便を利用することによってトリガされる自動の水供給に係る、好ましい実施形態に加えて、手洗い器は、現代の手洗い器において一般的であるような、水の供給プロセスを開始するためのセンサも有する。これにより、小便を利用することなく、手洗い器を使用することができる。
【0054】
小便を利用することによって水供給をトリガする、好ましい実施形態は、小便器の使用者が自身の手を洗うことを促されるので、衛生状態を向上させるという追加的な利点を有することになる。
【0055】
本発明の全ての実施形態に関して、本発明に係る小便器と手洗い器の複合ユニットは、従来技術から公知となっている小便器と手洗い器、特に、公衆便所の環境にて用いられる小便器に対して、以下の利点を有している。
【0056】
第1に、小便器を洗い流すために、手洗い器からの廃水を再利用することによって、大量の水を節水することができる。このことは、便所の運営に係るコスト削減と、環境および地球の希少資源の保全の双方に関して、明白な利点を有している。この背景において、一般的な節水型小便器の手段は、いわゆる「ウォーターレス」小便器または化学小便器であり、これらにおいては、全く洗浄をしないか、または、間欠的な洗浄のみを行う。これは、明らかに小便器に関して節水に繋がるが、この構成は、洗浄動作を行わないことにより、臭いの問題をもたらす虞があるという欠点を有している。しかしながら、化学薬品によって臭いをマスキングすることは、資源保全の目標に逆行するものである。また、ウォーターレス小便器は、分離された手洗い器からの水を、節水または再使用するものではない。本発明は、いわゆるウォーターレス小便器と同様の節水効果を提供するが、小便器を洗い流すという追加的な利点を有している。これにより、臭いや、小便器の衛生に関する他の問題を処理するために化学薬品を使用することを削除または免除することができる。
【0057】
第2に、本発明の小便器と手洗い器の複合ユニットは、大幅な省スペースに関する可能性をもたらす。何故ならば、公衆便所全体において設置することが必要となる手洗い器(手洗い器は、便所内にも設けられたトイレ用に設置する必要がある)を、より少なくすることができるからである。
【0058】
第3に、本発明の構成は、必要となる配管を最小限とすることができ、それ故に、公衆便所における動作およびメンテナンスのコストを最小限とすることができる。
【0059】
第4に、恐らくは最も重要な事項として、本発明の特殊な幾何学的配置によって、公衆便所の環境において、小便器と手洗い器の多数の複合ユニットを、初めて提供することができる。何故ならば、使用者は、自身が公衆便所に対して期するプライバシーに関して、分離された小便器と手洗い器の場合と同程度のプライバシーを経験するからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手洗い器からの廃水が、小便器を洗い流すために用いられ、
前記手洗い器と前記小便器は、互いに近接し、または互いに物理的に接触する、小便器と手洗い器の複合体であって、
頂部から底部まで前記小便器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面が、前記手洗い器を通って垂直に延びる中心平面によって定義される仮想平面に対して所定の角度で位置決めされるように、前記手洗い器は、前記小便器に対してオフセットされ、
前記オフセットの角度は、20°〜80°の範囲、好ましくは30°〜75°の範囲、より好ましくは40°〜70°の範囲、さらに好ましくは40°〜60°の範囲であることを特徴とする、複合体。
【請求項2】
前記小便器は、少なくとも1つの開口、流出口、またはオリフィスを有し、
前記開口、流出口、またはオリフィスを通して、水が小便器の内部、すなわち小便に曝される領域に供給され、
前記水は、随意的には真水源からの水とともに、前記手洗い器からの廃水を含む、または、前記手洗い器からの廃水である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記手洗い器からの廃水は、前記小便器内に供給される前に、貯蔵装置に貯蔵される、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
小便器への如何なる水の供給も、例えば、中央演算ユニット、タイマー、中央制御ユニット、または他の如何なる制御器のような制御ユニットによって制御される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記手洗い器は、
真水を供給するための少なくとも1つの供給ユニット、好ましくは蛇口と、
前記手洗い器のコンテナ/レセプタクル内に集められた使用済みの水を排水するための少なくとも1つの排水ユニットと、を有し、
前記使用済みの水は、前記小便器を洗い流すための廃水となる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記手洗い器からの廃水を、前記手洗い器の排水ユニットを通って、開口、オリフィス、または流出口へと移動させるために、自然の重力が用いられ、
前記開口、オリフィス、または流出口を通して、随意的にはポンプとともに、水を小便器の内部に供給する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記手洗い器は、前記小便器に直接接触し、または、
それぞれ互いに最も近接する前記小便器と前記手洗い器の2つの外面の間の距離は、40cm以下、好ましくは30cm以下、さらに好ましくは20cm以下、さらに好ましくは10cm以下、さらに好ましくは5cm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
前記手洗い器と前記小便器は、少なくとも1つの隔離ユニットによって分離されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
前記手洗い器と前記小便器は、2つの分離された構造ユニットとして設けられ、
前記構造ユニットは、互いに独立して交換または取り外し可能である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
前記小便器と前記手洗い器は、一体ユニットとして設けられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項11】
前記小便器には、センサが設けられ、
前記センサは、放尿プロセスの開始および終了の少なくとも一方を検知する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項12】
1つの部屋、好ましくは公衆便所における、2以上の、好ましくは4以上の、好ましくは8以上の、請求項1〜11のいずれか1項に記載の小便器と手洗い器の複合体の使用方法。
【請求項13】
前記公衆便所は、例えば鉄道駅、空港、または高速道路の便所施設といった公共の交通機関の現場、ホテル、レストラン、会議施設、公共ビル、特に博物館、展示場、映画館、アートハウス、政府系ビル、学校、大学を含むリストから選択される、請求項12に記載の使用方法。
【請求項14】
2、3、4以上、好ましくは4つの、前記小便器と手洗い器の複合ユニットが、柱、ポール、またはポストの周りに配置される、請求項12または13に記載の使用方法。
【請求項15】
乗り物装置、特にRV車、キャンピングワゴン、バス、または、海上用途、特にボート、もしくは他の海上船舶における私用部屋、特に私用便所における、少なくとも1つの請求項1〜11のいずれか1項に記載の小便器と手洗い器の複合体の使用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−517395(P2013−517395A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548369(P2012−548369)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000017
【国際公開番号】WO2011/085942
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512185305)
【Fターム(参考)】