説明

小便器システム

【課題】本発明は、節水化を図りながら、横引排水配管内の異物堆積、尿石付着などによるつまりを低減する小便器システムを提供することを目的としている。
【解決手段】小便器と、前記小便器の排水口に接続された横引排水配管を備えた小便器配管と、前記小便器配管の前記小便器より上流側に設けられたタンクと、を備え、前記タンクから洗浄水を放水することにより前記横引排水配管内の異物を除去することを特徴とする小便器システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共施設など小便器が連立されたトイレ空間において、小便器の横引排水配管内の尿石付着などによる詰まりを低減する小便器システムに関する
【背景技術】
【0002】
従来、小便器の横引排水配管内では、大半が1/50や1/100の勾配を持たせた重力流下式が用いられており、便器からの洗浄水量も最小限の水量まで節水化が図られて、わずかな水量で配管内面の洗浄、汚物の運搬を行っている。
【0003】
特許文献1によれば、便器の横引排水配管内に大量の水を流すことによって配管内にたまった汚物や異物、尿石などを押し流すシステムが提供されている。また、特許文献2でも排水管に加圧した水を流すことによって、異物を除去し、詰まりを防止する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−303639号公報
【特許文献2】特開2008−25245号公報
【特許文献3】特許3480173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の小便器の洗浄水量は限界まで節水化が図られているため、横引排水配管内において異物の堆積や尿石の発生が問題となっている。
横引排水配管への尿石の付着のメカニズムは次のようなものと考えられている。便器に排尿をすると、尿は横引排水配管へと流れ込む、横引排水配管内の滞留水に尿が滞留する。このとき、節水化された便器では、排水によって尿が薄まらずに高濃度のまま、横引排水配管内へ滞留することとなる。
一般に便器や横引排水配管には桿菌等の細菌が存在する。尿には多量の尿素が含有されているが、横引排水配管内部の滞留水に細菌が存在すると、尿素は細菌の有する酵素ウレアーゼの作用によりアンモニアと二酸化炭素に分解される。このとき生成するアンモニア量が多いと臭気の一因となる。またアンモニアが生成すると、横引排水配管内部に付着した液体や便器内の滞留水に溶解し、その液体のpHが上昇する。pHが上昇すると、横引排水配管内部に付着した液体や便器内の滞留水に含まれるカルシウムイオンが炭酸塩やリン酸塩へと形態変化して析出し、尿石として横引排水配管内部に付着して詰まりの原因となる。
【0006】
こうした問題を解決するために、横引排水配管内に大量の水を複数回にわたって流すことは、本来の節水化の目的と矛盾している。小便器内への排水を節水化しても、横引排水配管内へ大量の水を流していては本末転倒であるといわざるを得ない。
【0007】
また、上記に加え、小便器固有の課題として、小便器の封水面は非常に小さく、多量の水を勢いよく流すと、小便器の溢れ面より外部に流出してしまうという問題がある。つまり、小便器横引排水配管においては、便器上流より多量の水を流すことは節水化を望まなくとも現実的でない。
【0008】
そこで、本発明では節水化を図りながら、横引排水配管内の異物堆積、尿石付着などによる詰りを低減する小便器システムが提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の一態様によれば、小便器と、前記小便器の排水口に接続された横引排水配管を備えた小便器配管と、前記小便器配管の前記小便器より上流側に設けられたタンクとを備え、前記タンクから洗浄水を放水することにより前記横引排水配管内の異物を除去することを特徴とする小便器システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、横引排水配管内の汚物、尿石の堆積を抑えながら、無駄な水を流すことなく節水を達成できる小便器システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするために、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符合を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
本発明の第一の実施例である小便器システムの概略構成図を図1に示す。
本実施例では、複数の小便器5が連立して配置され、それぞれの小便器5の排水口はフランジ及び配管部材を介して横引排水配管6と接合されている。横引排水配管6の小便器との接合部より上流側に配管の立ち上がり部が設けられ、その上にタンクユニットが設けられている。タンクユニットは一次電磁弁2とコントローラー3とタンク4で構成されている。給水配管13はタンク4及び複数の小便器5と連結しており、タンク4及び複数の小便器5に水を供給することが可能である。さらに、それぞれの小便器5には洗浄フラッシュバルブ7が設けられている。
【0013】
横引排水配管の勾配を大きく取れれば、配管底面に異物や尿が残り難く、尿由来の堆積物も積層し難くなるが、排水口が低い小便器を床上の横引排水配管で連接し、連接数をできるだけ多く確保するためには、これ以上の勾配を取ることは通常困難であり、通常の横引排水配管では1/50又は1/100の水勾配が取られる。
【0014】
通常の小便器使用時においては、所定のタイミングで洗浄フラッシュバルブ7を開き、小便器のボウル面を洗浄する。このとき一次電磁弁2は閉じた状態である。前記所定のタイミングは、例えば予め設定された時間間隔であっても良いし、小便器の使用頻度をカウントして一定のカウントに達した時であっても良い。あるいは、1回の仕様毎に洗浄するように設定しても良い。
【0015】
コントローラ3に予め設定された設定時刻になると一次電磁弁2が開き、給水配管13からタンク4に水が供給される。タンク4に一定量の水が溜まった時点で一次電磁弁2が閉じて給水を停止する。給水が停止した後に、タンク4に設けられた排水弁が開いて、横引排水配管6に洗浄水が供給される。この洗浄水の放水によって、横引排水配管内に滞留している異物を押し流すことができる。
【0016】
コントローラ3に予め設定する設定時刻としては、小便器の使用者が途絶える時間帯の所定時刻を設定することが考えられる。小便器の使用頻度が高い時間帯にタンクからの洗浄を行なって異物を除去したとしても、洗浄後すぐに別の異物が横引排水配管6内に滞留する可能性があり、一日に複数回の洗浄が必要となる為、節水の観点からは非効率的である。また小便器の使用者が途絶える時間帯には、便器の洗浄の行われない為、横引排水配管6内への水の供給がなくなり、尿分溜りが長時間同じ状態で放置されて細菌の活動が活発化し、尿石の積層速度が早まる恐れがある。特に、異物が残った状態では異物が障害物となるため尿を含む汚水が異物近傍に長時間滞留することとなり、尿石の原因となる恐れがある。そこで、使用者が途絶える時間帯に入った後にタンクから横引排水配管に向けて大流量の洗浄水を放水することで、横引排水配管6内の異物を除去することができ、使用者が途絶える時間帯には横引排水配管6内を清浄な状態に保つことができる。
【0017】
例えば、駅舎のような設置場所であれば、終電から始発までの間の時間帯は使用者が途絶えるので、終電後の所定時刻にタンクからの洗浄水の供給を行なうことで滞留した一日分の異物を1度の洗浄で除去することができ、節水の観点からも尿石防止の観点からも効果的な配管洗浄を行なうことができる。
同様に商業施設であれば、閉店から開店まで、学校であれば放課後から登校時間まで、会社であれば終業から始業の間の時間帯であれば、使用者が途絶えるので一日分の異物を一度の洗浄で除去することができる。
さらに、長時間にわたり横引排水配管6内に尿や洗浄水が流れこまないため、殺菌水による殺菌された状態を長時間保つことが可能となり、効果的である。
【0018】
図2は本発明の第二の実施例である小便器システムの概略構成図である。
図2に示す実施例は、一次電磁弁2の流路の先に電解装置1を設けたもので、先に記載したタンクからの放水に続いて、再度一次電磁弁2を開くと同時に電解装置1の電極間に通電を行うことで殺菌力を持った殺菌水を生成、タンク4に溜める。一定量溜まったところで一次電磁弁2を閉じて給水を停止すると同時に電極間への通電も停止する。次にタンク4の排水弁が開き、殺菌水を横引排水配管6に押流し、配管表面を殺菌水でコーティングする。これによって、残存していた菌も死滅させられ、再び使用者が来るまでの間に汚れの元が形成されることを阻止する。
【0019】
また、本実施例では、小便器と横引排水配管とを接続する配管の排水流路が正の勾配となるようにしている。すなわち、小便器自体にトラップを設けず、さらに排水口を塞ぐ目皿も無くした構成としている。不特定多数の使用者があるような環境では、小便器排水口への異物が入り込む確率が高く、放置しておくと、目皿の開口部分を塞いで排水能力を妨げ、水が引き難い状態になることがある。それを防ぐため、清掃作業の都度、異物を回収すると、器具数が多い場合にはそれだけで非常に手間が掛かり、作業効率が悪化してしまう、という課題がある。しかしながら、小便器自体のトラップや目皿を設けないことで、清掃作業の負荷を低減することができる。
【0020】
このような構成の小便器システムに本発明を適用することで、横引排水配管6内へ多量の異物が入りこんでも、定期的にそれらや、発生した尿石を押し流すことによって、横引排水配管6の詰まりや臭いの発生を抑えながら、各便器のトラップが詰まる可能性の低減、横引排水配管6内の定期的な異物除去の手間低減などが可能となる。
【0021】
図3は本発明の第3の実施例である小便器システムの概略構成図である。
図3に示す実施例は、殺菌水を生成する電解装置1を流路に設けるのではなく、電解装置の電極16をタンク4内の溜水中に挿入した構成を取る。本実施例においては、一回目にタンク4に溜めて流す水の動作は図1の構成と同等で、2回目の動作では、一次電磁弁2が開き、給水配管10から水をタンク4に溜め、一定量溜まったところで一次電磁弁2を閉じて給水を停止すると同タイミングでタンク内溜水中に水没した電極間に通電を行い、溜水自体を殺菌水に変える。一定時間経過後通電を停止し、タンク排水弁を開いて殺菌水を横引排水配管6に流す。
【0022】
図4は本発明の第4の実施例である小便器システムの概略構成図である。
図4に示す実施例は、電解装置1、一次電磁弁2、コントローラ3、タンク4を天井裏に配置したものである。横引排水配管6の小便器との接合部より上流側に設けられた配管の立ち上がり部が天井裏のタンク4と接合し、露出部分は配管カバー11で覆い隠される。 このような構成とすることで、配管スペースが狭く、小便器5と同程度の高さにタンク4を配置できない場合においても、本発明を実施することが可能である。
【0023】
図5は本発明の第5の実施例である小便器システムの概略構成図である。
図5に示す実施例は、電解装置1を経由した配管をタンク側と各小便器の洗浄管への接合部に分岐させたものである。一次電磁弁2が開くと同タイミングで電解装置1の電極間に通電を行い、同時に二次電磁弁9を開くことで、小便器に殺菌水の吐水を行う。これを各小便器順番に殺菌水洗浄を行うことで、小便器トラップ内の殺菌を行い、ここでの汚れの元が形成されるのを阻止する。全ての小便器の洗浄が行った後に、タンク根元の二次電磁弁8を開くことで、殺菌水をタンク内に生成し、これを横引排水配管6内に流し、全ての汚れ発生の元を殺菌することができる。
【0024】
給水配管10の原水は水道水以外の再生水でもよく、同じトイレ内の洗面器からの排水や雨水を貯留、再利用することで、水資源の有効活用に繋がる。
【0025】
本発明における殺菌水とは、殺菌作用をもつ液体であればどのようなものでも良い。その一例として、実施例で挙げたような電解装置によりイオンを発生させる方式がある。また、発生させる殺菌水の一例としては水道水中に残存する塩素を利用するものがある。
【0026】
遊離塩素含有水以外にも、結合塩素(例えばモノクロラミン、ジクロラミン等)を含む水、オゾン含有水(例えば、無声放電による生成オゾンの水への溶解或いは水の電気分解による水中でのオゾン生成により得られたオゾン含有水)、抗菌性金属イオン(例えば銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等)を含む水等(PCT/JP95/01650)を殺菌水として用いる場合にも適用することができる。
【0027】
遊離塩素含有水を殺菌水として用いる場合、遊離塩素の濃度は、0.1mg/リットル以上、好ましくは0.5mg/リットル以上であるようにすると、横引排水配管6内の滞留水や横引排水配管6内面が充分に殺菌される。従って、生菌の作用に基づくウレアーゼの増加、固着効果が有効に抑制され、アンモニアの溶解によるpHの上昇が抑制されて尿石の付着が防止されるとともに、臭気の一因も防止される。
【0028】
さらに、オゾン含有水を殺菌水として用いる場合、オゾン含有水中のオゾン濃度は、0.01mg/リットル以上、好ましくは0.05mg/リットル以上であるようにすると、横引排水配管6内の滞留水や横引排水配管6内面が充分に殺菌される。従って、生菌の作用に基づくウレアーゼの増加、固着効果が有効に抑制され、アンモニアの溶解によるpHの上昇が抑制されて尿石の付着が防止されるとともに、臭気の一因も防止される。
【0029】
抗菌性金属イオンが銀イオンである場合において、銀イオン濃度を1μg/リットル以上、好ましくは10μg/リットル以上とすると、便器内の滞留水に銀イオンを含む液体を混合し、所定時間維持することにより、横引排水配管6内の滞留水が有効に殺菌される。従って、生菌の作用に基づくウレアーゼの増加、固着効果が有効に抑制され、アンモニアの溶解によるpHの上昇が抑制されて尿石の付着が防止されるとともに、臭気の一因も防止される。
【0030】
ここで、抗菌性金属イオンは、遊離塩素やオゾンと比較して、瞬時の接触による殺菌能力は低いが、抗菌寿命が長く、作用時間を長くかけることにより優れた抗菌性を有するので、かかる横引排水配管6内の滞留水に所定時間維持する態様で使用すれば少量で生菌が減少し、尿石の付着等が防止されるので好ましい。
【0031】
上記以外の殺菌水およびその生成方法としては、タンク中へ殺菌作用をもつ薬剤を混入させる方式などが挙げられる。
【0032】
抗菌性金属イオンを水中で電解混入させる場合、殺菌に必要な濃度を溶出するためには、混入する水の流速が大きいほど大きな電流を電極間に印加させる必要がある。タンク内に殺菌水を貯留するシステムを取ることで、小さな流速で電解させることが可能であり、電気エネルギーも最小限に抑えることを可能とする。
また、薬剤を混入する場合においても、流水へ薬剤を混入するよりも確実に一定濃度の溶液が得られるというメリットがある。
【0033】
タンクに貯留された水は、重力落下による位置エネルギーで水勢を得て、横引排水配管6を流下するため、ポンプ等の別のエネルギー源を使用しないシステムとして構築できる。また、供給される水の水圧に依存せず、一定の水圧で横引排水配管6内を流下させることが可能である。
【0034】
図6には、タンクユニットの一つの実施例を示す。予め設定した所定のタイミングになると、コントローラ3からの信号を受けて一次電磁弁2が開き、タンク内に給水される。タンク内水量が一定量に達すると、ボールタップ19のフロートが上がり自動止水する。タンクに水が溜まり止水するタイミング以降に洗浄レバー17を自動開閉するようコントローラからの信号を出して、タンク内溜水を横引排水配管6内に排出する。
2回目に殺菌水を吐水する際は、一次電磁弁2を開くと同タイミングで電極間1に所定の電流を通電し、ボールタップで止水するタイミングに合せて、通電を停止する。
【0035】
タンク内の水位検出、制御は、フロートスイッチを利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施例である小便器排水管の概略構成図
【図2】本発明の第二実施例である小便器排水管の概略構成図
【図3】本発明の第三実施例である小便器排水管の概略構成図
【図4】本発明の第四実施例である小便器排水管の概略構成図
【図5】本発明の第五実施例である小便器排水管の概略構成図
【図6】タンクユニットの一実施例
【符号の説明】
【0037】
1…電解装置
2…一次電磁弁
3…制御コントローラ
4…タンク
5…小便器
6…横引排水配管
7…洗浄フラッシュバルブ
8…大便器用自動フラッシュバルブ
9…二次電磁弁
13…給水配管
14…配管カバー
15…天井
16…電極
17…洗浄レバー
18…排水弁
19…ボールタップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器と、
前記小便器の排水口に接続された横引排水配管を備えた小便器配管と、
前記小便器配管の前記小便器より上流側に設けられたタンクと、を備え、
前記タンクから洗浄水を放水することにより前記横引排水配管内の異物を除去することを特徴とする小便器システム。
【請求項2】
前記タンクから前記洗浄水を放水した後に、
前記横引排水配管内へ殺菌水を流すことを特徴とする請求項1に記載の小便器システム。
【請求項3】
前記タンクからの前記洗浄水の放水は所定の時刻に行われることを特徴とする請求項1または2に記載の小便器システム。
【請求項4】
前記所定の時刻の設定変更が可能なことを特徴とする請求項3に記載の小便器システム。
【請求項5】
前記小便器と前記横引排水配管とを接続する配管の排水流路が正の勾配であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の小便器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−121276(P2010−121276A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293132(P2008−293132)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】