説明

小切束及び小切束の判別方法

【課題】 本発明は、銀行券、商品券等の束を束ごと目視で真偽判別することが可能な小切束及び小切束の判別方法に関する。
【解決手段】 大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置され、大判シートを断裁して得られる小切が、同一方向に所定の枚数が重なった小切束(A)において、i)小切束の長辺の一方の側面の濃度と、長辺の他方の側面の濃度の違い、ii)小切束の短辺の一方の側面の濃度と、短辺の他方の側面の濃度の違いによって真偽判別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、商品券等の束を束ごと目視で真偽判別することが可能な小切束及び小切束の判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行券、商品券などの貴重製品には、様々な偽造防止技術が開示されている。例えば、製紙工程で付与するスレッドや蛍光繊維、又は、印刷工程で付与するスクリーン印刷や凹版印刷、更には、印刷工程後の別工程で付与するホログラムやレーザ穿孔などが代表的である。しかし、これら技術を貴重製品に付与するには、高価な印刷用諸材料と専用の製造装置が必要となる。
【0003】
これらの真偽判別方法としては、道具を用いない方法として、スレッド、ホログラム又はレーザ穿孔のように、角度を変えて視認し判別する技術や、凹版印刷物のように触感で判別する技術がある。また、簡易的な道具を用いる方法として、微小文字のようにルーペで判別する技術や蛍光繊維などを蛍光ランプで判別する技術がある。さらには、特別な道具を用いる方法として、赤外線反射吸収ペア印刷物のように、赤外線モニタで判別する技術がある。
【0004】
しかし、上記記載のような真偽判別方法による印刷物を作製する上では、高価な印刷用諸材料及び専用の製造装置が必要となり、印刷物のコストがかなり高くなるという課題がある。
【0005】
特殊な諸材料を用いないで偽造防止印刷物を作製する方法としては、レーザ加工機を用いて、基材に微細な穿孔をあけて、真偽判別する方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、レーザ加工機を用いて、冊子の側面を加工し、切り欠きを形成する方法が開示されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、これらの先行技術は、諸材料は必要としないが、高価なレーザ加工機が必要となるという課題があった。
【0008】
一方、銀行券、商品券等の貴重製品は、一枚一枚がバラバラにならないように、複数枚の束として帯封される。帯封は、一枚一枚がバラバラにならないようにするとともに、容易に枚数を把握する効果を有する。また、特殊な帯封がされている束は、その束の全体が本物であることを保障している。そのため、貴重製品の束を結束する帯封自体には、真偽判別可能な特殊な材料を付加する必要があった。
【0009】
例えば、有価証券と、有価証券を十文字状に帯封する横帯体と縦帯体の交差部において、横帯体及び縦帯体の両者に跨るように貼付された蛍光物質を含む製品保証テープを備えてなる封緘有価証券類が開示されている(特許文献3)。
【0010】
しかし、特許文献3の技術は、貴重製品の束を結束する帯封に貼付された蛍光物質を含む製品保証テープ自体によって、真偽判別するものであり、実際の貴重製品の束自体を真偽判別するものではなかった。つまり、帯封がなければ貴重製品を束ごと真偽判別することが不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2000−501036号公報
【特許文献2】特許第3785479号公報
【特許文献3】特許第4250736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、特殊な材料及び製造装置を用いず、通常の印刷に用いる製造装置で作製した大判シートを断裁し、得られた所定の枚数の小切を小切束とし、従来のような帯封がなくても小切束ごと目視によって容易に真偽判別することが可能であるとともに、特殊な判別道具を用いず、簡易的な機器で真偽判別することができることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置され、大判シートを断裁して得られる小切が、同一方向に所定の枚数が重なった小切束(A)において、i)小切束の長辺の一方の側面の濃度と、長辺の他方の側面の濃度の違い、ii)小切束の短辺の一方の側面の濃度と、短辺の他方の側面の濃度の違い、i)又はii)によって判別することが可能であることを特徴とする小切束である。
【0014】
また、本発明は、大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置され、各小切の長辺の一方と長辺の他方、及び/又は短辺の一方と短辺の他方を跨って同一色の連続地紋画線が印刷され、大判シートを断裁して得られる小切が、同一方向に所定の枚数が重なった小切束(A)において、i)小切束の長辺の一方の側面から視認可能な連続地紋画線の領域の濃度と、長辺の他方の側面から視認可能な連続地紋画線の領域の濃度の違い、ii)小切束の短辺の一方の側面から視認可能な連続地紋画線の領域の濃度と、短辺の他方の側面から視認可能な連続地紋画線の領域の濃度の違い、i)又はii)によって判別することが可能であることを特徴とする小切束である。
【0015】
また、本発明の長辺の一方の側面は、断裁時にクランプに抑えられて断裁されることによって平滑性を有し、長辺の他方の側面は、断裁時にクランプに抑えられることなく断裁されることによって、一方の側面より平滑性が低く、短辺の一方の側面は、断裁時にクランプに抑えられて断裁されることによって平滑性を有し、短辺の他方の側面は、断裁時にクランプに抑えられることなく断裁されることによって、一方の側面より平滑性が低いことを特徴とする小切束である。
【0016】
また、本発明は、小切束(A)と、小切束(A)を反転した小切束(B)を重ねた小切束(C)において、小切束(C)の側面の長辺又は短辺の側面は、小切束(A)の濃度と、小切束(B)の濃度の違いによって判別することが可能であることを特徴とする小切束である。
【0017】
また、本発明は、小切束Aの側面の長さが、10mm以上であることを特徴とする小切束である。
【0018】
また、本発明は、連続地紋画線の色が、赤系色、青系色及び緑系色の少なくとも一色で形成されたことを特徴とする小切束である。
【0019】
また、本発明は、大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置された各小切には、同一図柄が形成されたことを特徴とする小切束である。
【0020】
また、本発明は、小切束が銀行券又はパスポートであることを特徴とする小切束である。
【0021】
また、本発明は、小切束の判別方法において、第1の照射部によって小切束の長辺又は短辺の一方の側面に光源を照射し、第2の照射部によって小切束の長辺又は短辺の他方の側面に光源を照射し、第1の撮影部によって、光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第1の側面画像を取得し、第2の撮影部によって、光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第2の側面画像を取得し、演算部によって、第1の側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している第1の平均側面画像と比較し、第1の類似度を算出し、第1の類似度から第1の統計値を算出し、第1の統計値とあらかじめ記憶部に登録している第1の基準値と比較し、第2の側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している第2の平均側面画像と比較し、第2の類似度を算出し、第2の類似度から第2の統計値を算出し、第2の統計値とあらかじめ記憶部に登録している第2の基準値と比較し、第1の統計値が第1の基準値内であり、かつ、第2の統計値が第2の基準値内である場合に「真」と判別し、第1の統計値が第1の基準値外、又は、第2の統計値が第2の基準値外である場合に「偽」と判別することを特徴とする小切束の判別方法である。
【0022】
また、本発明は、小切束の判別方法において、照射部によって小切束の長辺又は短辺の側面に光源を照射し、撮影部によって、光源を照射した長辺又は短辺の側面を撮影し、側面画像を取得し、演算部によって、側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している平均側面画像と比較し、類似度を算出し、類似度から統計値を算出し、統計度とあらかじめ記憶部に登録している基準値と比較し、統計値が基準値内である場合に「真」と判別し、基準値外である場合に「偽」と判別することを特徴とする小切束の判別方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の小切束は、特殊な印刷材料や製造装置を使用することなく、通常の印刷機及び断裁機で作製できる。また、本発明の小切束は、複数枚の小切を所定の方法で重ね、その側面を目視で視認し、シート色及び/又は連続地紋画線の色の差異で真偽判別することが可能なため、帯封を用いることなく、特別な道具を使用せず、容易に実施できる。さらに、大量の偽造品が発生した場合、1枚1枚で真偽判別することなく、複数枚重ねることで瞬時に真偽判別ができるため、真偽判別する時間が大幅に短縮できる。また、判別機器を用いることなく、簡易的な機器で真偽判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の印刷物の概要図である。
【図2】本発明の印刷物の積層状態の概要図である。
【図3】本発明の印刷物の断裁方法の概要図である。
【図4】本発明の印刷物の断裁方法の概要図である。
【図5】本発明の印刷物の断裁方法の概要図である。
【図6】本発明の小切束の概要図である。
【図7】本発明の短冊を小切束とする概要図である。
【図8】本発明の印刷物の拡大図である。
【図9】本発明の小切束真偽判別方法の概要図である。
【図10】本発明の簡易的な機器を用いた真偽判別方法の概略図である。
【図11】本発明の簡易的な機器を用いた真偽判別方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の具体的な構成を説明するが、本発明の技術的思想に含まれ実施できれば、本形態に限定されるものではない。
【0026】
(小切束の作製)
図1は本発明の偽造防止印刷物の概要図であり、大判シート10に印刷物1となる小切8面分(2行×4列)を設ける。例えば、小切となる印刷物1には、料額、連続地紋画線及び人像をオフセット印刷し、図中の点線部内には用紙製造段階で、すかしを形成した貴重印刷物である。図1に示す各小切となる印刷物1は、料額、連続地紋画線及び人像が同一のものとなっているが、本発明は、これに限定されることなく、連続地紋画線が同一であればその他のデザインは異なっていてもよい。この時、大判シート10は、各印刷物1に渡って連続した縦方向及び横方向の連続地紋画線Jを付与している。なお、本発明の印刷物1に付与する偽造防止技術には制限はなく、凹版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、パール印刷、ホログラムやレーザ加工などで付与しても構わない。なお、ここでいう「連続地紋画線」とは、断裁前の大判シート10では、各印刷物1の隣接した長辺及び/又は短辺に連続的に設けた地紋画線をいい、一方、断裁後の印刷物1では、長辺及び/又は短辺の端部まで設けた地紋画線をいう。
【0027】
図1では、長辺及び短辺の両方に連続地紋画線が設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、長辺又は短辺のいずれか一方に形成すればよい。また、図1では、連続地紋画線は、複数の曲画線で形成しているが、本発明は、これに限定されることなく、直万線、曲万線、同心円万線、幾何学模様等を用いることができる。また、各画線の画線幅は、特に限定されるものではない。
【0028】
次に、図2に印刷後の大判シート10の断裁方法を示す。断裁方法は、通常、生産性の理由から大判シート10を同一方向に重ねて断裁する。重ねた大判シート10’の枚数は100〜500枚が一般的である。なお、カッコの数字は断裁順序を示しており、例えば、大判シート10’を(1)〜(3)で短冊に断裁した後、(4)〜(8)で小切の印刷物1となる。
【0029】
図3〜図5は、通常の断裁機で大判シート10’を断裁する模式図であり、まず、大判シート10’を短冊A1と短冊A2とに断裁する。図3(a)は、断裁機の定盤上に大判シート10’を置き、バックフェンスBを所定の量を移動した後、用紙10’をバックフェンスBに押し当てる。次に、図3(b)のように、大判シート10’をクランプPで圧力を加えて抑えた後、図3(c)のように、断裁刃Hを下降し、余白部Yを断裁する。なお、図中のカッコの数字は、断裁する順番と位置である。
【0030】
さらに、図4(a)、(b)、(c)は短冊A1、図5(a)、(b)、(c)は短冊A2を断裁する模式図であり、断裁方法は前述と同様である。
【0031】
次に、図2に示すように、短冊A1と短冊A2を(4)〜(8)の順序で断裁することで小切束Kとなる。例えば、図示しない断裁機のバックフェンスに短冊A1と短冊A2との断裁していない一方の側面を押し当て、図3〜図5の断裁方法と同様に断裁し、小切束Kを作製する。このように、大判シート10’から本発明の小切束を作製することができる。
【0032】
したがって、本発明の小切束の小切は、最低限の設備、具体的には、印刷機と断裁機があれば作製でき、特殊な装置は使用しない。なお、本発明でいう「小切束」とは、小切を所定の枚数、重ねた積層体をいう。また、「反転」とは、一方の小切束に対して、他方の小切束を天地方向で180度回転させることをいう。更に、「印刷情報」とは、基材に印刷する文字、数字、図形、図柄などの情報をいう。
【0033】
(真偽判別方法の原理)
次に、印刷物1の小切束Kを用いて真偽判別する方法を説明する。本発明の真偽判別方法の特徴は、小切束Kの側面の色の差異で真偽判別する、又は、二つの小切束Kを用い、一方の小切束Kを反転し重ねた後、各小切束Kの側面の色の差異で真偽判別することが特徴である。
【0034】
図6は、短冊A1又は短冊A2を断裁し、小切束Kとなる模式図である。この時、小切束Kの側面は、図4及び図5に示すように、クランプPで抑えられた側面D1とクランプPで抑えられない側面D2となる。具体的には、小切束Kの天を上にした場合、長辺の上辺は側面D1、長辺の下辺は側面D2、他方、短辺の右辺は側面D2、短辺の左辺は側面D1となる。したがって、図3〜図5に示した本発明の断裁方法では、小切束Kの長辺の一方は側面D1、他方には側面D2、一方で、小切束Kの短辺の一方は側面D1、他方には側面D2を夫々備え、且つ、側面D1と側面D2の位置は常に一定である。
【0035】
次に、小切束Kの側面D1と側面D2との断面状態の差異について説明する。図7は、小切束Kの側面を拡大した図である。まず、側面D1の表面状態は、クランプにより圧縮された状態で断裁されるため、その切口は1枚1枚のシートで平滑性が高く、且つ、切口の繊維状態は、断裁方向と同一方向に配向される。一方、側面D2は、クランプにより圧縮されない状態で断裁されるため、引き千切られるような状態で断裁され、その切口は1枚1枚のシートで凸状となり、且つ、切口の繊維状態には方向性はない。つまり、側面D1の表面状態は、側面D2の表面状態に比べて平滑性が優れている。例えば、表面粗さ計で側面D1の表面状態と側面D2の表面状態を比べた場合は、側面D1の表面の粗さの方が低い結果となる。
【0036】
また、図8は小切束Kの側面D1と小切束Kの側面D2を観察した図である。小切束Kの側面D1は平滑性が高いため、所定の光源に対し正反射するが、一方、側面D2は凹凸状なため、所定の光源に対し乱反射する。このため、側面D1と側面D2とは濃度差が生じ、その結果、色の濃淡として視認できる。
【0037】
次に、小切束Kの側面から視認できる連続地紋画線について説明する。側面D1の連続地紋画線DJ1は、側面D1は平滑性が高いため、連続地紋画線DJ1の現出は少なく、連続地紋画線DJ1の色が淡く視認できる。一方、側面D2は凸状となるため、側面D2の連続地紋画線DJ2の現出は連続地紋画線DJ1と比較して多いため、連続地紋画線DJ2の色が濃く視認できる。このため、側面D1の連続地紋画線DJ1と側面D2の連続地紋画線DJ2とは濃度差が生じ、その結果、色の濃淡として視認できる。
【0038】
したがって、本発明の真偽判別方法は、側面D1と側面D2とのシートの色及び/又は連続地紋画線の色の濃度差によって真偽判別でき、濃度差が視認できれば真正品、濃度差が視認できなければ偽造品となる。
【0039】
(小切束Kの第1の真偽判別方法)
まず、小切束Kの第1の真偽判別方法として、シートの色の差異によって真偽判別する方法を説明する。例えば、図9の小切束Kは、図1〜図6で説明した小切束Kを拡大したものである。小切束Kは、印刷物1の積層体であり、印刷物1には、料額、人像及び連続地紋画線Jをオフセット印刷で印刷している。
【0040】
図9(a)のように、小切束Kの側面は、長辺の上辺は側面D1、下辺は側面D2、短辺の右辺は側面D1、右辺は側面D2となる。この時、小切束Kの各側面は、側面D1と側面D2が配置され、表面状態が異なる側面を有する。この時、図8に示すように、側面D1と側面D2を視認した時、側面D1の色に対し側面D2の色は濃く認識され、色の濃度差が視認できたため、真正品として判別できる。
【0041】
(小切束2Kの第1の真偽判別方法)
次に、小切束2Kの第1の真偽判別方法として、シートの色の差異によって真偽判別する方法を説明する。
【0042】
図9(a)のように、小切束Kの側面は、長辺の上辺は側面D1、下辺は側面D2、短辺の右辺は側面D1、右辺は側面D2となる。次に、図9(b)は、図9(a)の小切束Kを反転させたものである。この時、小切束Kの側面は、長辺の上辺は側面D2、下辺は側面D1、短辺の右辺は側面D2、右辺は側面D1となり、図9(a)の小切束Kと側面が逆の構成となる。
【0043】
次に、図9(c)は、図9(a)の小切束Kと図9(b)の小切束Kを重ねた小切束2Kの模式図を示す。この時、小切束2Kの各側面は、側面D1と側面D2が配置され、表面状態が異なる側面を有する。この時、図8に示すように、側面D1と側面D2を視認した時、側面D1の色に対し側面D2の色は濃く認識され、色の濃度差が視認できたため、真正品として判別できる。
【0044】
(小切束Kの第2の真偽判別方法)
次に、第2の真偽判別方法として、連続地紋画線の色の差異で判別する方法を説明する。小切束Kの第1の真偽判別方法と思想は同一なため、同様な構成は説明を省略し、異なる構成のみ説明する。図9(a)のように、小切束Kの印刷物1には、連続地紋画線Jが配置されている。この時、小切束Kの側面では、側面D1では連続地紋画線DJ1、側面D2では連続地紋画線DJ2が視認できる。したがって、小切束Kの側面は、長辺の上辺は連続地紋画線DJ1、下辺は連続地紋画線DJ2、短辺の右辺は連続地紋画線DJ1、右辺は連続地紋画線DJ2となる。この時、図8に示すように、側面D1の連続地紋画線DJ1と側面D2の連続地紋画線DJ2を視認した時、側面D1の色に対し側面D2の色は濃く認識され、色の濃度差が認識できたため、真正品として判別できる。
【0045】
(小切束2Kの第2の真偽判別方法)
次に、第2の真偽判別方法として、連続地紋画線の色の差異で判別する方法を説明する。小切束Kの第1の真偽判別方法と思想は同一なため、同様な構成は説明を省略し、異なる構成のみ説明する。図9(a)のように、小切束Kの印刷物1には、連続地紋画線Jが配置されている。この時、小切束Kの側面では、側面D1では連続地紋画線DJ1、側面D2では連続地紋画線DJ2が視認できる。したがって、小切束Kの側面は、長辺の上辺は連続地紋画線DJ1、下辺は連続地紋画線DJ2、短辺の右辺は連続地紋画線DJ1、右辺は連続地紋画線DJ2となる。また、図9(b)は、図9(a)の小切束Kを反転させたものである。この時、小切束Kの側面は、長辺の上辺は連続地紋画線DJ2、下辺は連続地紋画線DJ1、短辺の右辺は連続地紋画線DJ2、右辺は連続地紋画線DJ1となり、図9(a)の小切束Kと連続地紋画線が逆の構成となる。
【0046】
次に、図9(c)は、図9(a)の小切束Kと図9(b)の小切束Kを重ねた小切束2Kの模式図を示す。小切束2Kの各側面は、連続地紋画線DJ1と連続地紋画線DJ2が配置される。この時、図8に示すように、側面D1の連続地紋画線DJ1と側面D2の連続地紋画線DJ2を視認した時、側面D1の色に対し側面D2の色は濃く認識され、色の濃度差が認識できたため、真正品として判別できる。
【0047】
なお、本発明の小切束K又は小切束2Kに対して、第1の真偽判別ではシートの色、第2の真偽判別では連続地紋画線の色の差異で真偽判別したが、第1と第2の真偽判別を組み合せることで、容易に真偽判別ができる。さらに、小切束2Kの真偽判別方法は、各小切束Kの側面の長さは重ねることで、色の差異が顕著に視認できるため、少なくとも3mm以上、好ましくは10mm以上が望ましい。小切束Kの真偽判別方法は、上下の側面又は左右の側面で色の差異を判別するため、10mm以上が望ましい。
【0048】
また、シート色には制限はなく、白色でも、小切束K’での反射光の差異が視認できる。一方、連続地紋画線の色は、薄い色では濃度差が顕著にならないためで、濃い色が望ましい。例えば、デザインを考慮して、赤系色、青系色、緑系色が好適である。
【0049】
本発明の小切束K又は小切束2Kは、上記記載のように人間の目視によって容易に真偽判別することが可能である。また、本発明の小切束K又は小切束2Kは、簡易機器によって真偽判別又は品質管理を行うことができる。簡易機器による真偽判別方法について、図10及び図11に示す。
【0050】
(小切束Kの簡易機器20Aによる真偽判別方法)
図10に連続地紋を有する小切束Kを真偽判別するための簡易機器20Aの一例を示す。簡易機器20Aは、第1の照射部21A、第2の照射部21B、第1の撮影部22A、第2の撮影部22B、演算部23及び記憶部24を有する。簡易機器20Aの被対象物は、図9(a)に示す小切束Kで説明しているが、図9(c)に示す小切束2Kであっても可能である。
【0051】
第1の照射部21Aは、小切束Kの長辺又は短辺の一方の側面に光源を照射する。図10は、短辺の側面D1に照射した例を示している。第2の照射部21Bは、小切束Kの長辺又は短辺の他方の側面に光源を照射する。図10は、短辺の側面D2に照射した例を示している。第1の照射部21A及び21Bは、白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。
【0052】
第1の撮影部22Aは、第1の照射部21Aの光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第1の側面画像を取得する。図10は、短辺の連続地紋DJ1を含む側面D1の側面画像を取得している例を示している。第2の撮影部22Bは、第2の照射部21Bの光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第2の側面画像を取得する。図10は、短辺の連続地紋DJ2を含む側面D2の側面画像を取得している例を示している。第1の撮影部22A及び22Bは、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって側面D1又はD2の反射画像データが取得できれば特に限定されるものではない。なお、撮影した側面画像は、位置補正処理、シェーディング補正等の一般的な画像処理によって補正することができる。
【0053】
演算部23は、第1の側面画像を、あらかじめ記憶部24に登録している第1の平均側面画像と比較し、第1の類似度を算出し、第1の類似度から第1の統計値を算出し、第1の統計値とあらかじめ記憶部24に登録している第1の基準値と比較する。さらに、第2の側面画像を、あらかじめ記憶部24に登録している第2の平均側面画像と比較し、第2の類似度を算出し、第2の類似度から第2の統計値を算出し、第2の統計値とあらかじめ記憶部24に登録している第2の基準値と比較する。比較結果において、第1の統計値が第1の基準値内であり、かつ、第2の統計値が第2の基準値内である場合に「真」と判別し、第1の統計値が第1の基準値外、又は、第2の統計値が第2の基準値外である場合に「偽」と判別する。
【0054】
第1の平均側面画像及び第2の平均側面画像は、複数の側面画像を画素単位で平均して得られるものである。また、第1の類似度は、第1の側面画像と第1の平均側面画像の画素単位の濃度の差の総和を類似度として算出するものである。同様に、第2の類似度は、第2の側面画像と第2の平均側面画像の画素単位の濃度の差の総和を類似度として算出するものである。第1の統計値は、第1の類似度からヒストグラム、平均、分散等を算出した値である。同様に、第2の統計値は、第2の類似度からヒストグラム、平均、分散等を算出した値である。具体的に演算部23は、コンピュータに備えた中央演算処理装置(CPU)である。
【0055】
記憶部24は、第1の平均側面画像、第2の平均側面画像、第1の基準値及び第2の基準値が登録できる媒体であれば特に限定されることがなく、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等が挙げられる。
【0056】
(小切束K2の簡易機器20Bによる真偽判別方法)
図11に連続地紋を有する小切束K2を真偽判別するための簡易機器20Bの一例を示す。簡易機器20Bは、照射部21、撮影部22、演算部23及び記憶部24を有する。各部の機能については、簡易機器20Aと同等である。ただし、簡易機器20Bの被対象物は、図9(c)に示す小切束2Kである。
【0057】
(実施例1)
例えば、図1に示す大判シート10は、大きさは800×350mm、厚みが1.0mmの上質紙を用いた。印刷物1の1枚の大きさは、150×75mmとして、料額、連続地紋画線及び人像をオフセット印刷で行った。なお、シート色は淡い黄色、連続地紋画線は青色とした。次に、図2に示すように、印刷した大判シート10を500枚重ねて断裁機で断裁した。断裁条件は、クランプ幅70mmとして、約3(t)の圧力で押圧し、図3、4、5又は6に示すように、まず、短冊断裁した後、小切に断裁し、500枚の小切束Kを作製した。
【0058】
次に、真偽判別方法として、図7に示すように、10枚の小切束Kの上に、反転した10枚の小切束Kを重ねた小切束2Kとし、図9に示すように、小切束K2の側面を視認した結果、用紙色では、側面D1は淡い黄色、側面D2は濃い黄色、一方、連続地紋画線の色では、側面D1は淡い青色、側面D2は濃い青色の濃度差が目視で確認できた。一方、複製物では、断裁条件等が同一でないため、小切束2Kの側面を視認した結果、用紙色又は連続地紋画線の色の濃度差は再現できず、偽造品として判別できた。
【0059】
(実施例2)
実施例1で作製した1000枚の小切束Kと、500枚の小切束Kの上に、反転した500枚の小切束Kを重ねた小切束2Kの真偽判別を行った。実施例2では、小切束2Kを「真」とし、小切束Kを「偽」と仮定した。小切束Kを図11に示す簡易機器2Bで真偽判別を行った。
【0060】
まず、小切束Kが、小切束2Kの右側の短辺の平均側面画像と比較し、「偽」と判定されるように実施を行った。照射部にはLEDライトを用いて、光源を照射し、撮影部には、CCDラインカメラで側面画像を取得し、取得した小切束Kの側面画像をシェーディング補正し、補正後の小切束Kの側面画像データを得た。
【0061】
次に、中央演算処理装置によって、小切束Kの右側の短辺の側面画像を、あらかじめコンピュータのハードディスクに登録している小切束2Kの右側の短辺の平均側面画像と比較し、類似度を算出し、類似度から平均値を算出し、平均値とあらかじめハードディスクに登録している上限値及び下限値の基準値と比較した。小切束Kの平均値は、基準値外であったため、「偽」と判定された。
【0062】
次に、小切束2Kが、小切束2Kの右側の短辺の平均側面画像と比較し、「真」と判定されるように実施を行った。照射部にはLEDライトを用いて、光源を照射し、撮影部には、CCDラインカメラで側面画像を取得し、取得した小切束2Kの側面画像をシェーディング補正し、補正後の小切束2Kの側面画像データを得た。
【0063】
次に、中央演算処理装置によって、小切束2Kの右側の短辺の側面画像を、あらかじめコンピュータのハードディスクに登録している小切束2Kの右側の短辺の平均側面画像と比較し、類似度を算出し、類似度から平均値を算出し、平均値とあらかじめハードディスクに登録している上限値及び下限値の基準値と比較した。小切束Kの平均値は、基準値内であったため、「真」と判定された。
【符号の説明】
【0064】
1 印刷物
10 大判シート
10’ シートの積層体
20A、20B 簡易機器
20B 簡易機器
21 照射部
21A 第1の照射部
21B 第2の照射部
22 撮影部
22A 第1の撮影部
22B 第2の撮影部
23 演算部
24 記憶部
K 小切束
2K 小切束と反転した小切束を重ねた小切束
J 連続地紋画線
D1 クランプで抑えられた小切束の側面
D2 クランプで抑えられない小切束の側面
DJ1 側面D1から視認できる連続地紋画線
DJ2 側面D2から視認できる連続地紋画線
A1、A2 短冊
Y 余白
B バックフェンス
P クランプ
H 断裁刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置され、前記大判シートを断裁して得られる小切が、同一方向に所定の枚数が重なった小切束(A)において、
i)前記小切束の長辺の一方の側面の濃度と、長辺の他方の側面の濃度の違い、
ii)前記小切束の短辺の一方の側面の濃度と、短辺の他方の側面の濃度の違い、
前記i)又は前記ii)によって判別することが可能であることを特徴とする小切束。
【請求項2】
大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置され、前記各小切の長辺の一方と長辺の他方、及び/又は短辺の一方と短辺の他方を跨って同一色の連続地紋画線が印刷され、前記大判シートを断裁して得られる小切が、同一方向に所定の枚数が重なった小切束(A)において、
i)前記小切束の長辺の一方の側面から視認可能な前記連続地紋画線の領域の濃度と、長辺の他方の側面から視認可能な前記連続地紋画線の領域の濃度の違い、
ii)前記小切束の短辺の一方の側面から視認可能な前記連続地紋画線の領域の濃度と、短辺の他方の側面から視認可能な前記連続地紋画線の領域の濃度の違い、
前記i)又は前記ii)によって判別することが可能であることを特徴とする小切束。
【請求項3】
前記長辺の一方の側面は、断裁時にクランプに抑えられて断裁されることによって平滑性を有し、前記長辺の他方の側面は、断裁時にクランプに抑えられることなく断裁されることによって、前記一方の側面より平滑性が低く、
前記短辺の一方の側面は、断裁時にクランプに抑えられて断裁されることによって平滑性を有し、前記短辺の他方の側面は、断裁時にクランプに抑えられることなく断裁されることによって、前記一方の側面より平滑性が低いことを特徴とする請求項1又は2記載の小切束。
【請求項4】
請求項1又は2記載の前記小切束(A)と、前記小切束(A)を反転した小切束(B)を重ねた小切束(C)において、
前記小切束(C)の側面の長辺又は短辺の側面は、小切束(A)の濃度と、小切束(B)の濃度の違いによって判別することが可能であることを特徴とする小切束。
【請求項5】
前記小切束Aの側面の長さが、10mm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の小切束。
【請求項6】
前記連続地紋画線の色が、赤系色、青系色及び緑系色の少なくとも一色で形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の小切束。
【請求項7】
大判シートに小切が行方向及び列方向に複数配置された各小切には、同一図柄が形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の小切束。
【請求項8】
前記小切束が銀行券又はパスポートであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の小切束。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載のいずれか一項の小切束の判別方法において、
第1の照射部によって前記小切束の長辺又は短辺の一方の側面に光源を照射し、
第2の照射部によって前記小切束の長辺又は短辺の他方の側面に光源を照射し、
第1の撮影部によって、前記光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第1の側面画像を取得し、
第2の撮影部によって、前記光源を照射した長辺又は短辺の一方の側面を撮影し、第2の側面画像を取得し、
演算部によって、前記第1の側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している第1の平均側面画像と比較し、第1の類似度を算出し、前記第1の類似度から第1の統計値を算出し、前記第1の統計値とあらかじめ記憶部に登録している第1の基準値と比較し、
前記第2の側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している第2の平均側面画像と比較し、第2の類似度を算出し、前記第2の類似度から第2の統計値を算出し、前記第2の統計値とあらかじめ記憶部に登録している第2の基準値と比較し、
前記第1の統計値が前記第1の基準値内であり、かつ、前記第2の統計値が前記第2の基準値内である場合に「真」と判別し、前記第1の統計値が前記第1の基準値外、又は、前記第2の統計値が前記第2の基準値外である場合に「偽」と判別することを特徴とする小切束の判別方法。
【請求項10】
請求項4乃至8に記載のいずれか一項の小切束の判別方法において、
照射部によって前記小切束の長辺又は短辺の側面に光源を照射し、
撮影部によって、前記光源を照射した長辺又は短辺の側面を撮影し、側面画像を取得し、
演算部によって、前記側面画像を、あらかじめ記憶部に登録している平均側面画像と比較し、類似度を算出し、前記類似度から統計値を算出し、
前記統計度とあらかじめ記憶部に登録している基準値と比較し、
前記統計値が前記基準値内である場合に「真」と判別し、前記基準値外である場合に「偽」と判別することを特徴とする小切束の判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−83957(P2012−83957A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229816(P2010−229816)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】