説明

小動物侵入防止構造

【課題】自動車用道路用地境界を仕切る立入防止柵に設けられた車両用出入口を開閉する扉の下部から小動物が侵入することを防止する。
【解決手段】本発明に係る小動物侵入防止構造は、自動車用道路用地境界を仕切る立入り防止柵に設けられた車両用出入口において鉛直方向に伸びる回転軸を中心に遥動し、前記車両用出入口を開閉する扉と、弾性材で形成され前記扉の下縁全長に亘って取り付けられたシート体と、前記扉が前記車両用出入口を閉鎖した状態において前記下縁と平行して延び前記車両用出入口を交差する配置で地面に設けられた起伏部で構成される。そして、前記シート体の前記扉に取り付けられた状態における垂下長は、前記扉の下縁から地面までの間隔よりも短く、前記扉の下縁から前記起伏部の稜線までの間隔よりも長くされ、前記起伏部の稜線の地面からの高さは、前記車両用出入口を通行する車両の最低地上高より低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用道路用地内に小動物が侵入することを防止するための、小動物侵入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用道路用地境界は、通常、施設保護や事故防止のため、立入防止柵で仕切られている。しかしながら、山間部などに設けられた施設では、その周辺に棲息する小動物が立入防止柵の隙間から敷地内に侵入する場合があった。そこで、山間部などの道路周辺に棲息する小動物を走行車両との衝突事故から保護するための対策が提案されている。
【0003】
例えば、特開2003−82624号公報には、自動車用道路用地境界を仕切る立入防止柵の下部と地面との間の隙間に、ゴムマット素材の長手方向に沿って、水抜き用の開口および取付け具挿通用の開口をそれぞれ複数個設けた改修工事用資材を固定する道路立入防止柵の改修工法が開示されている。
【0004】
また、特開2009−133185号公報には、自動車用道路用地境界を仕切る立入防止柵の下端部に、少なくともその一部が接地配置される弾性スカート部材とからなる合成樹脂製網状体を固定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−82624号公報
【特許文献2】特開2009−133185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立入防止柵には、通常、工事車両や巡回車両などの出入口が設けられるが、この出入口を開閉する扉の下側の縁部と地面の隙間も、立入防止柵の他の部分と同様に小動物の侵入を防止するための施策が必要となる。ところが、立入防止柵と地面の隙間を塞ぐ従来の手法では、閉塞用部材を地面に押し付ける、或いは固定することで、地面から容易に離れない状態とする必要があった。そのため、地面に対し相対移動する扉に用いることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、自動車用道路用地境界を仕切る立入防止柵に設けられた車両用出入口を開閉する扉の下部から小動物が侵入することを防止することができる小動物侵入防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る小動物侵入防止構造は、自動車用道路用地境界を仕切る立入り防止柵に設けられた車両用出入口において鉛直方向に伸びる回転軸を中心に遥動し、前記車両用出入口を開閉する扉と、弾性材で形成され前記扉の下縁全長に亘って取り付けられたシート体と、前記扉が前記車両用出入口を閉鎖した状態において前記下縁と平行して延び前記車両用出入口を交差する配置で地面に設けられた起伏部で構成される。そして、前記シート体の前記扉に取り付けられた状態における垂下長は、前記扉の下縁から地面までの間隔よりも短く、前記扉の下縁から前記起伏部の稜線までの間隔よりも長くされ、前記起伏部の稜線の地面からの高さは、前記車両用出入口を通行する車両の最低地上高より低くなっている。
【0009】
なお、本発明において、シート体の扉に取り付けられた状態における垂下長とは、シート体が起伏部と干渉していない状態における扉の下縁からシート体の鉛直方向下端に至る長さをいうものとする。また、車両の最低地上高とは、車両の接地部(具体的にはタイヤ)以外の部分と地面との間隔のうち、最も狭いものをいうものとする。
【0010】
前記起伏部は、その稜線(最も高くなる地点を結んでできる線)がこの最低地上高より低いものであれば、その形状に制限は無いが、例えば、地面から起立し前記車両用出入口と交差して延びる面が湾曲しているものであってもよく、更に、横断面の輪郭が円又は楕円の弧をなす形状となっているものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る小動物侵入防止構造では、弾性材で形成したシート体の、扉に取り付けられた状態における垂下長が、扉の下縁から地面までの間隔よりも短く、扉の下縁から起伏部の稜線までの間隔よりも大きくなっているため、車両用出入口を扉で閉鎖した状態ではシート体が撓んで起伏部に密着し扉の下縁と地面の隙間を塞ぎ、小動物の侵入を防ぐことができる。また、シート体と起伏部の密着はシート体の段発力によるものとなっているため、撓んだ状態にあるシート体が常態に戻る方向に力を加えながら移動させることで解除することができる。そのため、扉を開放状態にすることができる。更に、地面に設けられた起伏部の稜線は地面からの地面からの高さは、車両用出入口を通行する車両の最低地上高より低くなっているため、扉の開放状態において、起伏部が車両の通行の妨げになることもない。
【0012】
また、起伏部の地面から起立し車両用出入口と交差して延びる面が湾曲し、横断面の輪郭が円又は楕円の弧をなす形状となっているものであれば、車両がより円滑に通行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る小動物侵入防止構造を採用した車両用出入口を示す正面図である。
【図2】同車両用出入口の開放状態を示す正面図である。
【図3】起伏部とシート体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜3を参照しながら、本発明に係る小動物侵入防止構造の実施形態について説明する。図1に示す車両用出入口1は、自動車道路用地内へ工事車両や巡回車両などが出入りするために、自動車用道路用地境界を仕切る立入防止柵2に設けられたものであり、本発明に係る小動物侵入防止構造が採用されている。立入防止柵2は、紙面奥側の自動車用道路用地を仕切るもので、所定間隔を置いて配置された図示しない支柱に金網21を張り、更に金網21の下縁と地面との隙間を樹脂製網22で塞いだ公知の構成となっている。なお、図1においては、金網21と樹脂製網22の網目の図示は省略されている。
【0015】
車両用出入口1の両脇に位置する立入防止柵2の端の各々には、鉛直方向に伸びる回転軸3を介し扉4が取り付けられている。扉4の各々は立入防止柵2に対し回転軸3を中心に遥動自在とされ、2枚並んだ状態で車両用出入口1を閉鎖するものとなっている。また、扉4の回転軸3で支持されていない側の縁(揺動端側縁)の下端部には、鉛直方向に摺動する落とし棒5が摺動自在に取り付けられており、車両用出入口1を閉鎖した状態において、落とし棒5が、後述の起伏部に設けられた孔に嵌り込むことで、扉4が固定されるものとなっている。更に、扉4の下縁には、落とし棒5と交差しない配置で下縁全長に亘り、合成樹脂の網状体で形成したシート体6が取り付けられている。なお、扉4は鉄筋を矩形に配置して形成した枠に金網が張られた公知の構成となっているが、図1においては、枠と網目の図示が省略されている。また、シート体6の網目の図示も省略されている。
【0016】
車両用出入口1の地面は、所定深さの舗装材が打設され整地されるとともに、車両用出入口1の幅全体に亘って、立入防止柵2の一方の縁から他方の縁に至る起伏部7が舗装材整地面と一体に設けられている。なお、舗装材にはコンクリートが採用されているが、アスファルト等、その他公知の舗装材を使用してもよい。
【0017】
起伏部7は扉4が車両用出入口1を閉鎖した状態において、扉4の下側で扉4の下縁と平行して延びる配置とされている。また、図3に示すように、起伏部7の地面から起立し車両用出入口1と交差して延びる面が湾曲し、横断面の輪郭が楕円の弧をなす形状(かまぼこ形)となっている。横断面における頂部71(地面から最も離れた部分)を起伏部7の長手方向(車両用出入口1と交差する方向)に結んでできる線が本発明の稜線に相当するもので、この稜線の地面からの高さは70mmとなっている。ただし、稜線の地面からの高さに制限はなく、この車両用出入口を通行する車両の最低地上高より低くなる範囲で設定すればよい。例えば、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」で規定されている算出式で得られる最低地上高(90mm)よりわずかに低いもの(数ミリ程度低いもの)としてもよい。
【0018】
扉4に取り付けられた状態にあるシート体6の垂下長、すなわち、図3において想像線で示すように起伏部7と干渉していない状態における扉4の下縁から鉛直方向下端に至る長さLは、扉4の下縁から地面までの間隔Gよりも短く、扉4の下縁から起伏部7の稜線72までの間隔Hよりも長くなっている。そのため、車両用出入口1を扉4で閉鎖した状態では、図3において実線で示すようにシート体6が撓んで起伏部7に密着し扉4の下縁と地面の隙間を塞ぎ、小動物の侵入を防ぐことができる。また、シート体6と起伏部7の密着はシート体6の段発力によるものとなっているため、撓んだ状態にあるシート体6が常態に戻る方向に、すなわち、図1においては紙面手前方向(図3においては白抜矢線の方向)に、力を加えながら移動させることで解除することができる。更に、地面に設けられた起伏部7の稜線72は地面から車両用出入口1を通行する車両の最低地上高より低くなっているため、図2に示す扉4の開放状態において、起伏部7が車両の通行の妨げになることもない。
【符号の説明】
【0019】
1 車両用出入口
2 立入防止柵
3 回転軸
4 扉
5 落とし棒
6 シート体
7 起伏部
21 金網
22 樹脂製網
71 頂部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用道路用地境界を仕切る立入り防止柵に設けられた車両用出入口において鉛直方向に伸びる回転軸を中心に遥動し、前記車両用出入口を開閉する扉と、弾性材で形成され前記扉の下縁全長に亘って取り付けられたシート体と、前記扉が前記車両用出入口を閉鎖した状態において前記下縁と平行して延び前記車両用出入口を交差する配置で地面に設けられた起伏部で構成され、前記シート体の前記扉に取り付けられた状態における垂下長が、前記扉の下縁から地面までの間隔よりも短く、前記扉の下縁から前記起伏部の稜線までの間隔よりも長くされ、前記起伏部の稜線の地面からの高さは、前記車両用出入口を通行する車両の最低地上高より低くなっていることを特徴とする小動物侵入防止構造。
【請求項2】
前記起伏部は、地面から起立し前記車両用出入口と交差して延びる面が湾曲し、横断面の輪郭が円又は楕円の弧をなす形状となっている請求項1に記載の小動物侵入防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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