説明

小動物用脳活動呼吸血圧測定装置

【課題】覚醒動物で脳活動と血圧と呼吸を同時に計測できるようにすること。
【解決手段】あらかじめ頭部固定補助具26を装着した動物の頭部を固定するねじ11および支柱12を備え、呼吸測定装置本体36の呼吸測定装置センサー部21を動物の頸部に取り付けること、およびあらかじめ留置した動脈カテーテル23からの観血式血圧測定により、覚醒動物の頭部が固定され血圧が測定されつつ同時に呼吸を測定することができるように準備しておき、頭部を固定した動物の脳に記録電極28を刺入することで、脳活動と呼吸と血圧が同時に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒小動物の脳活動と呼吸と血圧を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、覚醒時に被験動物(主にラット)の血圧を測定する簡便な方法は、非観血式血圧計を用い、尾にカフを巻きつけて測定する。そのとき、ストレスが少なく、安定して、連続的に血圧測定するために、被験動物の体と尾を何らかの方法で不動化することが必要である。そのために、図3(カ)に示すような体固定具31を使う。血圧計本体33は血圧測定用カフ32と接続されている。動物は、体固定具31の中に閉じ込められ、尾が外に出され、尾は尾部固定具34に固定された状態で血圧測定用カフ32が装着され、血圧が測定される。
【0003】
呼吸をモニターする簡便な方法は、例えば図3(キ)に示すような、麻酔下の被験動物の体に呼吸測定用ひずみセンサー35を巻きつけ、呼吸測定用ひずみセンサー35は呼吸測定装置本体36に接続され、その動きを検出する方法が知られている。この方法はもっぱら麻酔下の動物で行われ、覚醒の動物では、呼吸測定用ひずみセンサー35を取り付けられることによって生じる動物の呼吸以外の動きによって測定できなかった。
【0004】
覚醒小動物の脳活動の測定法では、あらかじめ動物の脳に慢性的に測定電極を取り付けておき、その後、自由行動下での記録電極周囲の神経細胞の活動を記録する方法が知られていた。そのときに、多チャンネルの電極を使用したり、複数の電極を脳に刺入し、それぞれを独立して動かしたりして、効率よく複数の神経細胞の活動を記録しようと試みられていた。しかしながら、記録電極周囲の神経細胞が記録できていても自由行動ゆえに安定して長時間測定することが困難であったり、そもそも記録電極周囲の神経細胞が記録できなかったりすることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−190191号公報
【特許文献2】特開2001−078608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モデルとしての実験動物での生理現象を調べるとき、平常時の現象を観測できることが望ましい。
【0007】
単純に上記背景技術に記した技術を組み合わせるだけでは、平常時の脳活動、呼吸、血圧を同時に計ることは困難である。その理由は、以下の1〜3の通りである。
【0008】
1.前記血圧測定法では体を固定保持する器具のため、露出している尾以外の部位に呼吸モニターのセンサーを取り付けることは困難で、かつ脳活動を記録するための記録電極を頭部に装着することも構造上難しい。
【0009】
2.麻酔下の動物では測定可能な、従来技術で記載した呼吸モニター方法や、従来技術で記載した非観血式血圧計を用いた血圧測定法は、覚醒動物では不必要な刺激、ストレスとなり、平常時の脳活動を測定する阻害要因となるだけでなく、体の動きによるノイズのために脳活動、呼吸、血圧の項目が精度良く測定できない。
【0010】
3.例えば感覚刺激に応答する神経活動を記録するには非常に精度良く記録電極を脳に刺入して目的の応答を同定する必要があり、慢性記録電極による脳活動の計測では、覚醒下の動物を何らかの方法で固定して記録電極を操作しなければならず、自由に動き回る動物で、呼吸と血圧を測定しながら目的の応答をする神経活動を同定することは困難である。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、平常時の小動物の脳活動と血圧と呼吸の同時測定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の小動物用脳活動血圧呼吸測定装置は、小動物の脳活動と血圧と呼吸を同時に測定するための装置であって、安定した精度の良い脳活動測定のため頭部を固定する頭部固定用ねじ11、支柱12、頭部固定補助具26を有し、脳活動の測定のための記録電極28を脳に装着し、前記ラットの呼吸数を測定する呼吸測定装置センサー部21を背側頸部に装着し、大腿動脈または腹部大動脈から導出した動脈カテーテル23に血圧測定する圧トランスデューサ24を接続し、それを体外に設置するということにより、覚醒状態のラットの脳活動と呼吸と血圧を同時に測定する装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小動物用脳活動呼吸血圧測定装置によれば、ラットをはじめとする小動物の覚醒状態の平常時の脳活動と血圧と呼吸を同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における小動物用脳活動呼吸血圧測定装置の頭部固定用の部分の図
【図2】本発明の実施の形態における赤外光検出式呼吸測定装置と観血式血圧測定装置を装着した図
【図3】従来の非観血式血圧測定法と歪みセンサーによる呼吸測定法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態)
本発明の実施の形態について以下説明をする。
【0017】
まず、あらかじめ頭部固定補助具26を小動物(ラットなど)に装着し、その動物の頭部固定補助具26を介して支柱12に頭部固定用ネジ11で固定する。小動物の頭部に頭部固定補助具26を水平に保って装着しておけば、その小動物は以後毎回同じ方向で頭部を固定することができる。図2に小動物を固定具に取り付けたときの様子を模式的に示す。小動物を頭部固定具に取り付けることを数回繰り返すと、覚醒した動物でもスムーズに取り付けられるようになる。
【0018】
呼吸測定装置センサー部21を装着するとき、そのセンサーが皮膚に密着するように小動物の背側から腹側にかけて剃毛しておく。そしてセンサー部に、小動物の頸部の背側から腹側にわたる部分とセンサーの間を埋める程度のジェルを塗り、密着させる。呼吸測定装置センサー部21の出力は、ケーブルを通じて、呼吸測定装置本体モニター部22に送られる。呼吸測定装置センサー部21は小動物の頸部をはさみこみ装着されるが、当然、頸部の動き、呼吸を妨げない。
【0019】
血圧測定装置は、観血式のものである。あらかじめ小動物の大腿動脈に動脈カテーテル23を留置しておき、皮下トンネルを通して背側部から体外に導出する。そのカテーテルの端は体外の圧トランスデューサ24に接続される。圧トランスデューサ24の出力は血圧計本体表示部25に入力する。
【0020】
脳活動の測定のため、あらかじめ当該動物の頭蓋骨に必要最小限の穴を開けておき、記録電極28を刺入する直前までシリコンゴムで蓋をしておく。脳活動の測定のときは、小動物にマスク27を装着し、通気しておき、頭蓋骨のシリコンゴム製の蓋をあけて、記録電極28を刺入する。記録電極28から伸びる矢印は、測定される脳活動の信号の流れを示し、その先は記録装置へとつながる。マスク27は動物の鼻を覆うように装着され、任意の気体を提示することができる。マスク27を介してにおい刺激を小動物の鼻先に提示し、呼吸測定装置を介して呼吸が、血圧測定装置を介して血圧が測定され、脳の記録電極の位置を調節しながら、脳活動を記録する。
【0021】
かかる構成要素によれば、動物の頭部を固定するだけで、頸部背側から呼吸センサーを、大腿動脈から導かれた動脈カテーテルに圧センサーを装着でき、誰もが、覚醒状態の動物でも脳活動と呼吸と血圧を同時に測定できる。
【0022】
頭部固定補助具26の支柱12への固定は、ねじ止めのほかに、ピン止め、万力による固定でもよい。
【0023】
小動物はラット、マウス、モルモット、ハムスター、スナネズミなど齧歯類の小形動物でもよい。
【0024】
支柱12一箇所につきねじ止めは1本または2本以上のねじでもよい。
【0025】
呼吸測定装置は、パルスオキシメータでもよい。
【0026】
呼吸測定装置は、脈波センサーでもよい。
【0027】
動脈カテーテルは大腿動脈へ留置すると書いたが、腹部大動脈へ留置してもよい。
【0028】
マスク27を介するにおい刺激の代わりに、目に提示する視覚刺激、舌に提示する味覚刺激、耳に提示する聴覚刺激、洞毛を刺激する体性感覚刺激でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の小動物用脳活動血圧呼吸測定装置によれば、覚醒下の小動物の脳活動と血圧と呼吸を同時に計測することによって、誰でもが簡便に、動物の平常時の脳活動と生理状態をとらえることができるので、実験動物に刺激や操作を加えたときの脳生理反応と生理反応を調べることができる。
【符号の説明】
【0030】
11 頭部固定用ねじ
12 支柱
13 基盤
21 呼吸測定装置センサー部
22 呼吸測定装置本体モニター部
23 動脈カテーテル
24 圧トランスデューサ
25 血圧計本体表示部
26 頭部固定補助具
27 マスク
28 記録電極
31 体固定具
32 血圧測定用カフ
33 血圧測定装置本体
34 尾部固定具
35 呼吸測定用ひずみセンサー
36 呼吸測定装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物の脳活動と呼吸と血圧を測定するための装置であって、
頭部を固定する補助具を有し、
前記補助具を介して頭部を固定し
前記装置は、覚醒状態の動物の体を安静に固定でき
前記小動物に感覚刺激を提示し、
前記小動物の頭部から脳活動を測定し、
前記小動物の頸部の赤外線反射光から呼吸を測定し、
前記小動物の動脈から観血式に血圧を測定する
ことを特徴とする覚醒状態の小動物の脳活動と血圧と呼吸を測定する装置。
【請求項2】
前記感覚刺激は、視覚、聴覚、洞毛を含む触覚、嗅覚、味覚、温度、痛み刺激である
請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61198(P2012−61198A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208903(P2010−208903)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】