小型ピリミジン誘導体およびその使用の方法
提供されるのは、ユビキチンリガーゼ活性、特にPOSHポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性を阻害し、癌、血管新生障害、および炎症性障害の治療に有用なユビキチン化阻害剤である、ピリミジン誘導体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述する主題は、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性の阻害剤である小型ピリミジン誘導体に関するものであり、具体的には、POSH阻害剤、ならびに細胞移動に起因する病状、障害、又は疾患の治療のための組成物および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜在的な医薬品ターゲットのバリデーションには、あるDNA、RNA、又はタンパク質分子がある疾患のプロセスに関係しており、それゆえ新たな治療薬の開発に適した標的であるかどうかということに対する判定が含まれる。生物活性化合物を同定し、特性を明らかにするためのプロセスである創薬は、ヒト疾患の新たな治療法を開発するうえできわめて重要な手順である。創薬の状況は、ゲノミクス革命によって劇的に変化した。DNAおよびタンパク質配列が、多数の新たな創薬標的および関連する膨大な量の情報を生み出している。
【0003】
炎症および免疫反応など、多様な病的状態または重要な生物過程に関与する遺伝子およびタンパク質の同定は、薬物設計プロセスの手順の欠くべからざる要素である。適切な分子標的が同定され、適切な拮抗薬が開発されれば、病状の分子的発症要因に関与する1以上の遺伝子の発現を低下させることによって、多くの疾患および障害を治療または予防することができる。例えば、癌は、1以上の細胞性癌遺伝子が活性化されて細胞周期プロセスに歯止めの効かない進行をもたらすのであるが、適切な細胞周期制御遺伝子を拮抗させることによってこれを治療することができる。また、遺伝因子にもエピジェネティック因子にも影響されるハンチントン舞踏病をはじめとする多くのヒト遺伝子疾患およびプリオン病の特定の病状は、あるポリペプチドの、完全な機能喪失の対極にある不適切な活性によって発症する。したがって、このような突然変異遺伝子の異常機能の拮抗が、ひとつの治療手段を提供すると考えられる。このような疾患および障害を治療するための薬物治療戦略は、疾患遺伝子のポリペプチド産物を標的とする分子的拮抗薬を採用することが多かった。しかし、適切な遺伝子またはタンパク質の標的を発見することは多くの場合困難であり、かつ多大な時間を必要とした。
【0004】
ユビキチン依存性プロテオソームの作用によるものと考えられる選択的分解が行われている標的タンパク質は、ユビキチンのC末端グリシル残基と基質タンパク質の特定のリジル残基との間のイソペプチド結合の形成によって、共有結合でユビキチンにより標識される。このプロセスはユビキチン活性化酵素(E1)およびユビキチン包合酵素(E2)によって触媒され、場合によっては補助的な基質認識タンパク質(E3)が必要となる。最初のユビキチン鎖の結合に続き、前に包合された部分のリジン側鎖にユビキチン分子がさらに結合し、分岐マルチユビキチン鎖を形成することもある。
【0005】
タンパク質基質へのユビキチンの包合は、多段階プロセスである。ATPを必要とする最初のステップでは、ユビキチンのC末端とE1酵素の内部システイン残基との間にチオエステルが形成される。活性化されたユビキチンが、次にいくつかのE2酵素のひとつにある特異的なシステインに転移することもある。最後に、これらのE2酵素が、一般にユビキチンリガーゼ酵素とも呼ばれるE3タンパク質の補助を得て、タンパク質基質にユビキチンを提供する。場合によっては、基質が直接ユビキチン包合E2酵素に認識される。ユビキチン(ub)タンパク質リガーゼ(E3)は、機能的に、E1(ub活性化酵素)およびE2(ub担体タンパク質)の存在下における1または複数のユビキチン分子と基質タンパク質との共有結合(包合)と定義される。タンパク質基質の不在下では、E3が自己ユビキチン化、すなわち自己ユビキチン化と呼ばれる反応である活性化ユビキチンのE2からE3ポリペプチド上のリジン残基受容体部位への転移、を触媒する可能性がある。自己ユビキチン化は、トランスユビキチン化と同じく、E1、E2、およびE3の無傷の機能モジュールすなわちRINGフィンガーまたはHECTドメインによって左右される(非特許文献1;非特許文献2)。
【0006】
また、ユビキチン系が、細胞内輸送、細胞周期の進行、アポトーシス、および多数の膜受容体の、代謝回転をはじめとする広範囲の細胞過程の一翼を担っていることも公知である。ウイルス感染の場合、ユビキチン系は、集合、出芽、および放出のみならず、ウイルス誘発性新生物を生じさせる可能性のあるp53などの宿主タンパク質の抑制にも関与する。HIV Vpuタンパク質は、IκBの分解を調節するE3タンパク質と相互作用し、またNFκB活性を間接的に阻害することによって感染した細胞のアポトーシスを促進させると考えられている(非特許文献3)。ユビキチン系は、モノユビキチン化とポリユビキチン化との両方によってタンパク質機能を調節する。ポリユビキチン化は、主としてタンパク質分解に伴って起こる。
【0007】
細胞移動は、胎発育、創傷治癒、および免疫反応をはじめとする多様な生物過程にとってきわめて重要である。また異常な細胞移動も、癌細胞の浸潤、血管新生、および転移などの多くの病態(Chiang and Massague, 2008)、炎症性疾患(Mackay, 2008)、老人性黄斑変性(AMD)などの網膜症(Das and McGuire, 2003)などに共通の特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,932,425号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lorickら、Proc Natl Acad Sci USA.、1999年、第96巻、11364−9頁
【非特許文献2】Kao WHら、J Virol.、2000年、第74巻、6408−6417頁
【非特許文献3】Bourら、J Exp Med、2001年、第194巻、1299−311頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記述する主題によれば、特定のピリミジン誘導体はユビキチン化阻害剤として作用し、POSHタンパク質に媒介されるユビキチン化を阻害することによって細胞移動を遮断することができることが明らかになった。
【0011】
本明細書に記述する主題は、細胞移動を強力に阻害する小分子を対象とする。本主題はさらに、病的な細胞移動を伴う癌などの様々な適応症、炎症に起因する様々な適応症、ならびに老人性黄斑変成症(AMD)、網膜症などの血管新生に起因する適応症の治療薬としての阻害分子の可能性について説明する。
【0012】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に起因する疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、治療的有効量の本明細書に記述する化合物を患者に投与することを含む。
【0013】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に起因する疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、これには治療的有効量の本明細書に記載の式Iの化合物を含む医薬組成物を、患者に投与することが含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に記述する主題は、後述する式Iのピリミジン誘導体である小分子の、細胞移動に起因するまたは細胞移動に伴う疾患、障害、または状態の治療のための使用を対象とする。いくつかの実施態様において、本明細書に記述する主題は、本明細書で指定される化合物1、2、3、4、5、6、および7の化合物である式Iの化合物の、細胞移動に起因するまたは細胞移動に伴う疾患、障害、または状態、すなわち細胞移動疾患、障害、または状態の治療のための使用に関する。
【0015】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に伴う疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、ここで、細胞移動疾患、障害、もしくは状態は、癌、炎症状態、もしくは血管新生に起因する状態である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、細胞移動に対する化合物1および化合物2の阻害効果を示す図式表示である。
【図1B】図1Bは、細胞移動に対する化合物1および化合物2の阻害効果を示す図式表示である。
【図1C】図1Cは、軟寒天コロニー形成(MDA−MB231細胞)に対する化合物1の効果を示す図式表示である。
【図1D】図1Dは、軟寒天コロニー形成(A375細胞)に対する化合物1の効果を示す図式表示である。
【図1E】図1Eは、細胞移動に対する化合物3の阻害効果を示す図式表示である。
【図1F】図1Fは、軟寒天コロニー形成(MDA−MB231細胞)に対する化合物3の効果を示す図式表示である。
【図2】図2は、様々な細胞系の細胞移動に対する化合物1の阻害効果の写真表示である。
【図3】図3は、HUVEC細胞の管形成に対する化合物1の阻害効果の写真表示である。
【図4A】図4Aは、B16F10ネズミのメラノーマ細胞を埋め込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえでの化合物1の有効性を示す図式表示である。
【図4B】図4Bは、B16F10ネズミのメラノーマ細胞を埋め込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえでの化合物3の有効性を示す図式表示である。
【図5】図5は、化合物1および3が、対照と同じ抗炎症活性を有することを示す図式表示である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
考えうる追加の定義に対して範囲を制限することなく、本明細書で使用する以下の用語を下記の通り定義する。
【0018】
用語「ヒドロカルビル」は、1〜20個の炭素原子、1〜10個、1〜6個、または2〜3個の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、およびアリールを含む非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族でありうる炭化水素由来の基、ヒドロカルビル基を意味する。
【0019】
「アルキル」、「アルケニル」、または「アルキニル」基は、それぞれ「C1−C10アルキル」または「C1−C4アルキル」、「C2−C10アルケニル」または「C2−C4アルケニル」、「C2−C10アルキニル」または「C2−C4アルキニル」であり、直鎖でも分岐でもよく、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断されてもよく、および/または、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって置換されてもよく、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子とともに、N、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む5〜7員の飽和複素環を形成し、またここで、前記追加のN原子がヒドロカルビルにより任意に置換される。
【0020】
用語「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖であっても分岐でもあってもよいアルキル基であり、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断されてもよく、および/または、上に定義されたように置換されてもよい「C1−C4アルキル」を指す。低級アルキルには、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルがある。一実施態様では、低級アルキルはメチルである。
【0021】
いずれの「C2−C4アルケニル」も、2〜4個の炭素原子および1または2の二重結合を有する直鎖または分岐不飽和基、例えばアルカジエニル基であり、ここで、アルケニル基は任意で末端二重結合を有することができ、例えばビニル、プロパ−2−エン−1−イル、ブタ−3−エン−1−イルを含む。いずれの「C2−C4アルキニル」も、2〜4個の炭素原子および1以上の三重結合を有する直鎖または分岐不飽和基であり、例えばエチニル、プロピニル、ブチニルを含む。いずれのアルキル、アルケニル、およびアルキニル基も、本明細書に定義されるように置換されることができる。
【0022】
用語「カルボシクリル」は、本明細書において、用語「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」を含み、これはそれぞれ「C5−C6シクロアルキル」または「C5−C6シクロアルケニル」、すなわち完全に飽和または部分的に不飽和の5〜6の炭素原子のカルボサイクリック基を指し、さらにシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニルを含み、これはハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基により置換されてもよく、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、もしくはヘテロシクリルであり、またはR’およびR’’がその結合する窒素原子と共に、N、S、および/もしくはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和複素環を形成し、またここで、該追加のN原子がヒドロカルビルによって任意に置換される。
【0023】
用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルのような単環式、二環式、または三環式の環からなり、6〜14個の炭素原子、もしくは6〜10個の炭素原子を有する「C6−C14」の芳香族カルボサイクリック基を指し、これは本明細書で上記に定義された1以上の基で置換されうる。
【0024】
用語「ヘテロシクリル」は、飽和または部分的に不飽和の(非芳香族の)3〜12、5〜10、または5〜6環員の単環式、二環式、または三環式の複素環に由来する基を意味し、該環員のうち1から3がO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子である。非芳香族ヘテロシクリルの限定されない例としては、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピぺリジニル、ピぺラジニル、モルホリノ、1,3−ジオキサニルなどが挙げられる。ヘテロシクリル基は、本明細書で上記に定義された1以上の基によって置換されてもよい。多環式ヘテロシクリル環が置換される場合は、該置換が炭素環および/または複素環のいずれであってもよいことは、理解されなければならない。
【0025】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書において、O、S、およびNからなる群より選択される1から3のヘテロ原子を含む単環式または多環式の芳香族複素環に由来する基を意味する。具体例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジアゼピニル、および追加の多環式芳香族複素環に由来するその他の基が挙げられる。ヘテロアリール基は、本明細書で上記に定義された1以上の基によって置換されてもよい。多環式のヘテロアリール環が置換される場合は、該置換が炭素環式および/または複素環式環のいずれであってもよいことは、理解されなければならない。一実施態様では、ヘテロアリールはチエニルである。
【0026】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。いくつかの実施態様では、ハロゲンはクロロである。
【0027】
−NR7R8もしくは−NRR’の各基は、R7(またはR)およびR8(またはR’)がいずれも水素の場合は−NH2であってもよく、またはR7(またはR)がHであり、かつR8(またはR’)がC1−C4アルキルである場合は第2級アミノであってもよく、またはR7(またはR)およびR8(またはR’)がそれぞれC1−C4アルキルである場合は第3級アミノであってもよく、またはR7もしくはR8(それぞれRおよびR’)がその結合する窒素とともに、窒素、酸素、および/もしくは硫黄より選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む、例えば5または6員環の飽和複素環式を形成してもよい。このような環は、例えば追加のNにおいて、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって置換されてもよい。このような環の例としては、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N−アルキルピぺラジノ、例えばN−メチルピペラジノ、およびジアゼピノが挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
R6(またはR)がアルキルの場合にOR6(またはOR)基、SR6(またはSR)基、COR6(またはCOR)基によって形成されるいずれのアルコキシ基、アルキルチオ基、またはアルカノイル基も、それぞれC1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルチオ基、およびC2−C4アルカノイル基である。アルコキシの例としてはメトキシ、エトキシ、プロピロキシ、ブトキシ等が挙げられ、アルキルチオの例も同じであるが、−O−を−S−によって置き換え、またアルカノイルの例としては、アセチル、プロパノイル、ブタノイル等が挙げられる。すべてのアルコキシ基、チオアルキル基、およびアルカノイル基が、上記に定義されたように置換されてもよい。一実施態様では、C1−C4アルコキシはメトキシである。
【0029】
本明細書において、用語「投与する」、「投与」等の用語は、健全な医療行為において対象に対し、治療効果を提供するようなやり方で組成物を投与する任意の方法を指す。本主題の一態様では、治療的有効量の本主題の組成物の、それを必要とする患者への経口投与を提供する。他の適切な投与経路には、非経口経路、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口腔内、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、または局所的経路を含むことができる。これに代えて、または併用で、経口的経路による投与でもよい。投与する用量は、受容者の年齢、健康、および体重、併用療法があればその種類、治療の頻度、ならびに所望される効果の性質によって異なるであろう。
【0030】
「血管新生に起因する適応症」という語句は、血管新生に起因し、異常な細胞移動を特徴とする任意の状態を意味する。このような血管新生に起因する状態には、糖尿病性失明;慢性炎症;関節炎;老人性黄斑変性症;網膜症;慢性関節リウマチ;骨関節炎;クローン病;乾癬;癌;アルツハイマー病;再狭窄;肺線維症;喘息;血管線維腫;血管新生緑内障;動静脈奇型;偽関節骨折;ループスおよびその他の結合組織障害;オスラー・ウェーバー・ランドゥ症候群;アテローム硬化性プラーク;角膜移植片の血管新生;化膿性肉芽腫;水晶体後方繊維増殖症;強皮症;肉芽形成;血管腫;トラコーマ;血友病性関節;腹腔内子宮内膜症;脂肪過多症;および血管癒着など、過剰または不要の血管新生に起因する任意の状態を意味する。
【0031】
「血管新生阻害剤」という語句は、血管新生を阻害する任意の物質を意味する。適切な血管新生阻害剤としては、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、スニチニブ(SUTENT(商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(商標))、サリドマイド(THALOMID(商標))、レナリドマイド(REVLIMID(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、およびエルロチニブ(TARCEVA(商標))が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
「抗癌剤」という語句は、癌の治療に有効な任意の物質を意味する。このような物質としては、例えばキナーゼ阻害剤、例えば1以上のチロシンキナーゼ阻害剤を挙げることができる。適切なチロシンキナーゼ阻害剤としては、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セディラニブ(cediranib)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブを挙げることができるが、これに限定されない。
【0033】
「抗炎症剤」という語句は、炎症を減少させるか鎮静する任意の物質を意味する。適切な抗炎症剤としては、例えばコルチゾール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、コルチゾンアセテート、チキソコルトールピバレート、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、プレドニソン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾン・ジプロピオネート、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、フルコルトロンカプロエート、フルオコルトロンピバレート、およびフルプレドニデンアセテートをはじめとするコルチコステロイド、例えばcox−2阻害剤、ニメスリデ、ジクロフェナク、リコフェロン、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬、フェニルアラニン−グルタミン−グリシンおよびそのD−異性体をはじめとする免疫選択的抗炎症性誘導体、ならびに、例えばハルパゴフィツム、ヒソップ、ジンジャー、ターメリック、アルニカ、柳樹皮、およびカンナビスなどのハーブが挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
「癌」という用語は、異常で歯止めのない細胞分裂、正常な組織に浸潤する能力、および身体のほかの部分に拡大する能力を特徴とする疾患群の一般名である。このような癌としては、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭頸部腫瘍、肝臓癌、睾丸癌、子宮頸癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、胃癌、基底細胞癌、悪性黒色種、および扁平上皮癌をはじめとする皮膚癌、口腔扁平上皮癌、大腸癌、多形膠芽腫、子宮内膜癌、および悪性神経膠腫を挙げることができる。
【0035】
「癌化学療法剤」という語句は、本明細書に記述する主題との併用療法に用いてもよい任意の公知の化学療法剤を意味し、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロランブシル、ジカルバジン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、ブスルファン、トリエチレンメラミン、チオテパ、ヘキサメチルメラミンをはじめとするアルキル化剤;メトトレキサートなどの代謝拮抗物質;フルオロウラシル;5−フルオロウラシル;フロクスリジン(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン);イドキシウリジン;シタラビン;N−ホスホノアセチル−L−アスパルテート;5−アザシチジン;アザリビン;6−アザウリジン;ピラゾフラン;3−デアザウリジン;アシビシン;チオグアニン、メルカプトプリン、アザチオプリン、ペントスタチン、エリトロヒドロキシノニルアデニンなどのプリン類似体;ビンクリスチンおよびビンブラスチンをはじめとするビンカアルカロイド;エトポシドおよびテニポシドをはじめとするエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトマイシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼをはじめとする酵素;シスプラチン、カルボプラチンをはじめとする白金配位錯体;ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン;ならびにプレドニソンおよびプレドニソロンなどのアドレノコルチコステロイドをはじめとするホルモンまたは関連物質;アミノグルテチミド;ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲステロールアセテートなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロン、エチニルエストラジオールなどのエストロゲンおよびアンドロゲン、タモキシフェンなどの抗エストロゲン、ならびにリュープロリドなどのゴナドプロピン放出ホルモン類似体が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
本明細書に説明する癌の治療方法を実施する際には、本化合物を、単一の医薬組成物の一部として少なくとも1の公知の化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤とともに投与してもよい。あるいは、本化合物を、少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤とは別に投与してもよい。ある実施態様では、本化合物および少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤が実質的に同時に投与される、つまり化合物が血中で同時に治療レベルに達する限り、同時または相次いで投与される。別の実施態様では、本化合物および少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤は、化合物が血中で治療レベルに達する限り、その個別の投与計画に従って投与される。
【0037】
同様に、本明細書に説明する主題の別の実施態様は、本明細書に記述する化合物を放射線療法と組み合わせて投与することによる癌の治療方法を対象とする。この実施態様では、本化合物は放射線療法の実施と同時に投与されても、別の時間に投与されてもよい。
【0038】
「細胞移動に起因する疾患、障害、または状態」という語句は、異常な細胞移動を特徴とする任意の疾患、障害、または状態を意味する。このような疾患、障害、または状態としては、癌、炎症に起因する種々の適応症、および老人性黄斑変性症(AMD)、網膜症およびその他の血管新生に起因する適応症が挙げられ得る。
【0039】
本明細書において、用語「担体」、「賦形剤」、または「アジュバント」は、医薬組成物の原薬ではない任意の成分を指す。
【0040】
本明細書において、語句「医薬品製剤」、「医薬品の剤形」、「最終剤形」等は、治療を必要とする患者に投与される1以上の原薬と1以上の賦形剤との組み合わせ(すなわち、医薬組成物)を指し、溶液、水溶液、乳剤、懸濁液、錠剤、カプセル、貼剤、坐剤、クリーム、ゲル、ローション等の形態をとることができる。
【0041】
本明細書に記述する化合物またはその医薬的に許容できる塩を活性成分として含む医薬組成物は、通常の薬剤配合技術に従って調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)を参照されたい。
【0042】
語句「炎症に起因する適応症」は、異常な細胞移動を特徴とする任意の炎症状態を意味する。このような炎症状態として、肺線維症;虚血性心疾患;クローン病、皮膚筋炎、糖尿病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、混合結合組織病、重症筋無力症、睡眠発作病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、ヴェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性貧血、甲状腺中毒症、多発性硬化症、および強皮症などの自己免疫疾患;喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、関節硬化症、慢性腎臓病、炎症性腸疾患、および脈管炎などの慢性炎症状態;腹膜炎;巨乳頭結膜炎、ブドウ膜炎、および季節性アレルギー性結膜炎などの炎症性眼疾患;慢性前立腺炎;糸球体腎炎;過敏症;炎症性腸疾患;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植拒絶反応;チェジアック・東症候群;慢性肉芽腫性疾患;尿管炎症状態;間質性膀胱炎;潰瘍性大腸炎;全身性硬化症;皮膚筋炎;多発性筋炎;および封入体性筋炎を挙げることができる。
【0043】
本明細書において、用語「医薬的に許容できる担体」は、あらゆる種類の非毒性、不活性固体、半固体の充填液、希釈剤、封入材、助剤、または、単に塩水などの滅菌水性媒質を指す。医薬的に許容できる担体として役立つことのできる材料の例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉などの澱粉;セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテートをはじめとするその誘導体;トラガカント末;麦芽、ゼラチン、タルク;カカオ脂および坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油脂;プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;精製水;等張食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬調合物に用いるその他の非毒性の適合物質が挙げられる。
【0044】
本明細書で担体として役立つことのできる物質の限定されないいくつかの例としては、糖、澱粉、セルロースおよびその誘導体、トラガカント末、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、精製水、等張食塩水、リン酸緩衝液、カカオ脂(坐剤基剤)、乳化剤、ならびに他の医薬調合物に用いられる他の医薬的に適合する非毒性の物質が挙げられる。湿潤剤および硫酸ラウリルナトリウムなどの潤滑剤、ならびに着色剤、香料、賦形剤、成形剤、安定剤、酸化防止剤、および防腐剤も存在してよい。任意の非毒性、不活性、および有効な担体が、本明細書で意図される組成物の製剤化に用いられてよい。この点で、医薬的に許容できる適切な担体、賦形剤、および希釈剤は、The Merck Index, Thirteenth Edition, Budavari et al., Eds., Merck & Co., Inc., Rahway, N.J. (2001); the CTFA (Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association) International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Tenth Edition (2004); およびthe “Inactive Ingredient Guide”, U.S. Food and Drug Administration (FDA) Center for Drug Evaluation and Research (CEDR) Office of Managementに記載されたものをはじめとしてこの分野の当業者に周知のものであり、そのすべての内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。本組成物に有用な医薬的に許容できる賦形剤、担体、および希釈剤の例としては、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびDMSOが挙げられる。
【0045】
この一連の追加の不活性成分、ならびに有効な製剤および投与手順は当分野で周知であり、Goodman and Gillman’s: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Gilman et al. Eds. Pergamon Press (1990)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)などの標準的な教科書に記載されており、その2冊とも、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
担体は、合計で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%から約99.99999重量%までを構成してよい。
【0047】
本明細書に記述される医薬組成物は、経口組成物の形態をとることができる。本明細書で検討される経口組成物は、錠剤、カプセル、ソフトゲル、ハードゲル、溶液、懸濁液、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、その組み合わせ、または当技術分野で通常は公知と考えられる他の任意の経口製剤の形態をとることができる。
【0048】
固形担体は、希釈剤、香料、溶解補助剤、潤滑剤、沈殿防止剤、結合剤、または錠剤崩壊剤の役割も果たす1以上の物質でもよく、また封入材料でもよい。散剤では、担体は活性化合物との混合剤に入れた微粉固体であってもよい。錠剤では、活性化合物は必要な結着性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の大きさと形状に成形されてもよい。適切な固形担体の限定されない例としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、他のセルロース誘導体、低融点ワックス、カカオ脂等が挙げられる。
【0049】
本明細書において、語句「医薬的に許容できる塩」は、本未変性の化合物(複数可)と同じ活性を保有し、生物学的にもその他の点でも有害ではない特定成分(複数可)の塩を指す。塩は、例えば有機酸または無機酸で作ることができる。適切な酸の限定されない例としては、酢酸、アセチルサリチル酸、アジピン酸、アルギニン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、ホウ酸、酪酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、炭酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシルスルホン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、グリセリン酸、グリセロ燐酸、グリシン、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタール酸、グリコール酸、ヘミ硫酸、へプタン酸、ヘキサン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフチレンスルホン酸、ナフチル酸、ニコチン酸、亜硝酸、シュウ酸、ペラルゴン酸、リン酸、プロピオン酸、サッカリン、サリチル酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、チオグリコール酸、チオ硫酸、トシル酸、ウンデシレン酸、および天然および合成のアミノ酸が挙げられる。
【0050】
有機塩基を用いる場合は、好ましくは揮発性の低い塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−n−プロパノール、ジメチルアミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパンジオール、およびトリイソプロパノールアミンなどの低分子量アルカノールアミンを採用する。エタノールアミンがこの点で適切である。挙げることのできる別の低揮発性塩基としては、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ドデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、ジメチルステアリルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペラジン、4−メチルシクロヘキシルアミン、およびN−ヒドロキシエチルモルホリンがある。
【0051】
また、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、または水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムの塩も用いることができ、同じくグアニジンおよびその誘導体、特にそのアルキル化生成物も用いることができる。しかし、造塩剤として、例えば、メチルアミン、エチルアミン、またはトリエチルアミンなどの低分子量アルキルアミンを採用することもできる。本明細書の主題に従って成分に採用するべき適切な塩としては無機カチオンを有するものもあり、例えばアルカリ金属塩、特にナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩またはカルシウム塩など、ならびに二価または四価のカチオン、例えば亜鉛塩、アルミニウム塩、またはジルコニウム塩が挙げられる。これ以外にも考えられるのは、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基を有する塩;メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩である。また、窒素含有塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物をはじめとするハロゲン化低級アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸化物をはじめとする硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物をはじめとする長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよびフェネチルの臭化物をはじめとする喘息用ハロゲン化物、およびその他の作用物質を用いて四級化することも可能である。これによって、水または油脂に溶解性または分散性の生成物が得られる。
【0052】
本明細書において、用語「POSH」、「POSHタンパク質」、または「POSHポリペプチド」は互いに互換可能に用いられ、アミノ酸配列にRINGドメインおよび少なくとも1のSH3ドメインを含むポリペプチドを指す。場合によって、POSHタンパク質は3または4のSH3ドメインを有することがある。
用語「POSH介在性ユビキチン化」または「POSHタンパク質介在性ユビキチン化」は互いに互換可能に用いられ、POSHタンパク質の関与を必要とするあらゆるユビキチン化プロセスを指す。
【0053】
POSHは、POSHポリペプチドまたはPOSH−APポリペプチドのレベルおよび/または活性に影響を及ぼすことによって操作されると思われる、広範囲にわたる重要な細胞機能と交わり、調節する。POSH、特にヒトのPOSHの多くの特徴が、PCT特許公開公報WO03/095971A2およびWO03/078601A2に記載されており、その教示する内容の全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0054】
上記の公報に記載されている通り、ヒトの天然のPOSHはRINGドメインおよび4つのSH3ドメインを含む大型ポリペプチドである。POSHはユビキチンリガーゼ(「E3」酵素とも称される)であり、RINGドメインは、例えばPOSHポリペプチド自体のユビキチン化を仲介する。POSHは、多数のタンパク質と相互作用し、多くの異なる生物プロセスに参加する。本開示に示される通り、POSHは細胞内の異なるいくつかのタンパク質と結合する。POSHはトランスゴルジ網に位置することが公知のタンパク質と共局在化しており、分泌系のタンパク質輸送にPOSHが参加していることがうかがわれる。用語「分泌系」は、膜コンパートメントならびに結合するタンパク質およびその他の分子、該分子は翻訳箇所から分泌系自体のコンパートメントである液胞リソソームまたはエンドソーム内の場所へ、または形質膜もしくは細胞外の場所へのタンパク質の移動に関与する、を指すものと理解されなければならない。よく言及される分泌系のコンパートメントとしては、内質網状組織、ゴルジ体、ならびにシスゴルジ網およびトランスゴルジ網が挙げられる。
【0055】
加えて、POSHの相互作用因子Rac 1は様々な癌で上昇し、細胞移動及び細胞浸潤に関与する(Bosco, Mulloy et al. 2009)。Racは、慢性骨髄性白血病(CML)などBCR−ABLチロシンキナーゼ誘導性の骨髄増殖性疾患の治療標的である(Thomas, Cancelas et al. 2007; Thomas, Cancelas et al. 2008)。CML患者は、構成的に活性化したチロシンキナーゼであるp210−BCR−ABLを標的とするイマチニブ(Gleevec)などのチロシンキナーゼ阻害剤で治療される。POSHとRac 1との相互作用は、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブなどであるがこれに限定されないチロシンキナーゼ阻害剤とPOSH阻害剤との併用療法が、長期の血液学的寛解を有意に改善する可能性を高めるものである。また、VEGF経路を標的とする血管新生阻害剤が様々なモデルで抗腫瘍作用を示すものの、それと同時に、主として浸潤性ならびにリンパ腺転移および遠隔転移を増大させることによって、腫瘍の適応および悪性度の進行を招くことが最近になって明らかにされている(Paez−Ribes, Allen et al. 2009)。さらに、VEGFR/PDGFRキナーゼ阻害剤であるスニチニブ/SU11248は、各種の転移分析において、短期療法を受けるマウスの転移性腫瘍の増殖を加速させ、全生存率を低下させることがある(Ebos, Lee et al. 2009)。総合すると、POSHとRac1との物理的および機能的な相互作用、およびPOSH阻害剤が細胞の移動および浸潤に及ぼす阻害効果は、POSH阻害剤と、イマチニブ、ダサチニブ、およびその他のチロシンキナーゼ阻害剤およびスニチニブ、抗VEGFR遮断抗体などのVEGFR/PDGFR経路を標的とする血管新生阻害剤との併用療法が、様々な種類の癌の治療による臨床転帰を改善する可能性があることを示している。
【0056】
用語「ユビキチン化阻害剤」、「POSH阻害剤」、または「POSHタンパク質阻害剤」は互換可能に用いられ、参照により本明細書に完全に開示されているかのように全体が本明細書に組み込まれるPCT/US02/36366 (WO03/095972)に定義されたPOSHタンパク質介在性ユビキチン化をはじめとするPOSH活性を阻害する本明細書の式Iのピリミジン誘導体を指す。
【0057】
作用物質は、好ましくは治療的有効量で投与される。本明細書において、用語「安全かつ有効な量」は、本明細書に説明するやり方で用いた場合の合理的なリスク・ベネフィット比に釣り合い、不当な有害副作用(毒性、刺激、またはアレルギー性反応など)なしに所望の治療反応を生じさせるのに十分な、ある成分の量を指す。本明細書で用いられる語句「治療的有効量」は、所望の治療反応を生じさせるために有効な、本明細書に記載の活性物質の量を指す。実際の投与量、ならびに投与率および時間的投与経過は、治療する状態の性質および重症度によって異なるであろう。治療の処方、例えば投与量、タイミング等に関する決定は、一般の医師または専門家の責任の範囲内であり、通常は治療する障害、個々の患者の状態、投与部位、投与方法、およびその他の医師に公知の要因を考慮に入れる。技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見ることができる。
【0058】
本明細書において、用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に哺乳類の対象、例えばヒトを指す。
本明細書において、疾患、障害、もしくは状態の「治療」またはそれを「治療すること」という用語は、その少なくとも1つの症状の緩和、その重症度の低下、またはその進行の遅延、予防、もしくは阻害を包含する。治療は、疾患、障害、もしくは状態が完全に治癒することを意味する必要はない。有効な治療であるためには、本明細書の有用な組成物は、疾患、障害、もしくは状態の重症度を低下させ、これらに伴う症状の重症度を低下させ、患者もしくは対象の生活の質を向上させ、または疾患、障害、もしくは状態の発症を遅延し、予防し、もしくは阻害するだけでよい。
【0059】
本明細書に記載されるいずれの濃度範囲、パーセンテージ範囲、または比率の範囲も、別の指示がない限り、当該範囲のあらゆる整数およびその端数、例えば整数の十分の一および百分の一などの濃度、パーセンテージ、または比率を含むと理解されなければならない。
【0060】
本明細書に列挙される高分子サブユニット、大きさまたは厚さなどの物理的特徴に関わるいかなる数値範囲も、別の指示がない限り、記載された範囲内のあらゆる整数を含むものと理解されなければならない。
【0061】
本明細書で上記および他の箇所に使用される用語「ある(a)」および「ある(an)」は、列挙された成分の「1以上」を指すと理解されなければならない。当業者であれば、単数の使用は、特に別の記載がない限り、複数をも含むことが明らかであろう。したがって、用語「ある(a)」、「ある(an)」、および「少なくとも1つ」は、本出願において互換可能に用いられる。
【0062】
本出願の全体を通じて、様々な実施態様の記述は「含む(comprising)」という言い回しを用いるが、いくつかの特定の場合には、これに代えて「基本的に〜からなる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という言い回しを用いて実施態様を記述することが可能であることは、当業者には理解されるであろう。
【0063】
本教示をいっそうよく理解し、該教示の範囲を全く制限しないために、別の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる量、パーセンテージ、または割合を表すすべての数、およびその他の数値は、どの場合にも用語「約」で修飾されたものと理解されなければならない。したがって、逆の指示がない限り、以下の明細書および添付された特許請求の範囲に記載される数値的パラメーターは、求めようとする所望の特性によって変動しうる近似値である。最低限でも、各々の数値的パラメーターは、少なくとも、報告される有意数(signification digits)に照らし、通常の丸めの手法を適用して解釈するべきである。
【0064】
本明細書に用いられる他の用語は、当分野で周知のその意味によって定義しなければならない。
【0065】
ある実施態様では、本明細書に説明する主題は、対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、式Iの化合物、または式Iの化合物またはエナンチオマーまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物の、治療的有効量を対象に投与することを含む:
【化1】
ここで、
R1はアルキル、アリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはHまたは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8より選択される1から3の基を表し、ただし、R3aおよびR3bはともにHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;またはR4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員の複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはR7およびR8はその結合する窒素原子と共に5〜6飽和複素環を形成し、これはS、N、および/またはOより選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子が低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換される;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そして
R10はアリールまたはヘテロアリールであり;
ここで、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールはそれぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6より選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8が上記のように定義される。
【0066】
追加の実施態様では、前記少なくとも一つの本明細書に記載の化合物、ならびに抗癌剤;血管新生阻害剤;抗炎症剤;および化学療法剤からなる群より選択される1以上の員を含む医薬組成物が提供される。
【0067】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態の治療方法を対象とし、ここで、該追加のN原子は、ピロリジノ、ピぺリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノからなる群より選択される員によって任意に置換される。
【0068】
さらに追加の実施態様では、本明細書に説明する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、R1は−NR9COR10であり;R2は任意に置換されるヘテロアリールであり;R3、R3a、およびR3bはHまたは1から3のアルキル基であり;ただし、R3a、およびR3bは共にHであることはできず;R4はH、アルキル、カルボシクリル、アリール、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;またはR4、その結合する窒素原子、およびR5は5〜6員の複素環を形成し;R6はH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり;R7およびR8はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、またはR7およびR8はその結合する窒素原子と共に、N、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和5〜6複素環を形成し、ここで、前記追加のN原子は任意に低級アルキルで置換され、任意にフェニル、ハロゲン、またはヒドロキシで置換され;R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そしてR10はアリールまたはヘテロアリールであり;ここで、該アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立してハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rから選択される1以上の基で任意に置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、Sおよび/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和複素環を形成し、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルで任意に置換される。
【0069】
ある実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は医薬的に許容できる担体を任意に含む。
【0070】
別の実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該追加のN原子はピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノから選択される員で任意に置換される。
【0071】
別の実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
(i)ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、またはアラルキル基から選択される1〜20の炭素原子の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビルであり;
アルキルは、1から10の炭素原子の直鎖または分岐アルキル(C1−C10アルキル)であり、任意にO、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断され、および/またはハロゲン、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基で置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、Sおよび/またはOから選択される1又は2の追加のヘテロ原子を任意に含む5〜7員の複素環を形成し、該追加のN原子はヒドロカルビルによって任意に置換され;
カルボシクリルは、飽和したC5−C6のシクロアルキル、またはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルから選択される部分的に不飽和のC5−C6のシクロアルケニル基であり、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基により任意に置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、もしくはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子はヒドロカルビルにより任意に置換され;
アリールは、炭素原子6〜14個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式の芳香族炭素環式基であり、フェニル、ビフェニル、ナフチル、またはアントラセニルより選択され;
(ii)ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の、任意に置換された環員3〜12の単環式、二環式、または三環式の複素環であり、このうち1〜3個の原子はO、S、および/またはNより選択されるヘテロ原子であり;
(iii)ヘテロアリールは、置換された、または置換されない単環式または多環式の複素芳香環であり、O、Sおよび/またはNより選択される1〜3個のヘテロ原子を含む。
【0072】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族の、炭素原子1〜10個のヒドロカルビル基であり;および/または
アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、またはtert−ブチルより選択される炭素原子1〜4個のアルキルであり;および/または
アリールは、置換された、または置換されない単環式、二環式、または三環式、炭素原子6〜10個の芳香族炭素環式基であり;および/または
ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された環員5〜10の単環式、二環式、または三環式複素環であり、このうち1〜3個の原子はO、Sおよび/またはNより選択されるヘテロ原子であり;および/または
ヘテロアリールは、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、およびベンゾジアゼピニルからなる群より選択される。
【0073】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子1〜6個であり;および/または
アルキルはメチルであり;および/または
ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、環員5〜6であり、そのうち1〜3個の原子はO、S、および/またはNより選択されるヘテロ原子であり;および/または
ヘテロアリールはチエニルである。
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族の、炭素原子2〜3個のヒドロカルビル基であり;および/または
ヘテロシクリルは、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピぺラジニル、モルホリノ、および1,3−ジオキサニルからなる群より選択される。
【0074】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Iの化合物は式IaまたはIbの化合物である:
【化2】
【化3】
ここで
XはO、S、またはNHであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または1〜4個の炭素原子の1〜3のアルキルであり;ただし、R3aおよびR3bが共にHであることはできず;
R4はH、または1〜4個の炭素原子のアルキルであり;
R5はH、または任意に置換された1〜6個の炭素原子のアルキルであり;
そしてR11〜R19は、それぞれ独立してH、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択され、ここで、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和複素環式を形成し、これはN、S、および/またはOより選択される追加のヘテロ原子1〜2個を任意に含み、ここで、該追加のN原子は低級アルキルにより任意に置換され、これはフェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換され;そして
式Ibの点線は、任意の二重結合を表す。
【0075】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Iaの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH、または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bが共にHであることはできず、R4はHであり、R5はHまたはメチルであり、そしてR11〜R16はHである。
【0076】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで式Iaの化合物は、本明細書で以下のように同定される化合物より選択される:
化合物1:
【0077】
【化4】
化合物2:
【化5】
化合物3:
【化6】
;および
化合物4:
【化7】
【0078】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Ibの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH、または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bがともにHであることはできず、R11〜R19はHである。
【0079】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Ibの化合物は以下のように同定される化合物より選択される:
化合物5:
【化8】
化合物6:
【化9】
;および
化合物7:
【化10】
【0080】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該疾患、障害、または状態は癌である。
【0081】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、肛門癌;星状細胞腫;白血病;リンパ腫;頭頸部癌;肝臓癌;睾丸癌;頚部癌;肉腫;血管腫;食道癌;眼癌;喉頭癌;口癌;中皮腫;骨髄腫;口腔癌;直腸癌;咽喉癌;膀胱癌;乳癌;子宮癌;卵巣癌;前立腺癌;肺癌;結腸癌;膵臓癌;腎細胞癌;胃癌;皮膚癌;基底細胞癌;メラノーマ;扁平上皮癌;口腔扁平上皮癌;大腸癌;多形膠芽腫;子宮内膜癌;および悪性膠腫からなる群より選択される癌を治療する方法を対象とする。
【0082】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は少なくとも1つの抗癌剤の有効量をさらに含む。
【0083】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの抗癌剤は、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウリチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブからなる群より選択される。
【0084】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの抗癌剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0085】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの抗癌剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0086】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量をさらに含む。
【0087】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの癌化学療法剤は、メクロレタミン;シクロホスファミド;イソスファミド;メルファラン;クロランブシル;ジカルバジン;ストレプトゾシン;カルムスチン;ロムスチン;セムスチン;クロロゾトシン;ブスルファン;トリエチレンメラミン;チオテパ;ヘキサメチルメラミン;代謝拮抗剤;メトトレキサート;フルオロウラシル;5−フルオロウラシル;フロクスウリジン;(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン);イドキシウリジン;シタラビン;N−ホスホノアセチル−L−アスパラテート;5−アザシチジン;アザリビン;6−アザウリジン;ピラゾフラン;3−デアザウリジン;アシビシン;プリン類似体;チオグアニン;メルカプトプリン;アザチオプリン;ペントスタチン;エリスロヒドロキシノニルアデニン;ビンカアルカロイド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;エピポドフィロトキシン;エトポシド;テニポシド;抗生物質;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;ドキソルビシン;硫酸ブレオマイシン;プリカマイシン;ミトマイシン;酵素;L−アスパラギナーゼ;白金配位錯体;シスプラチン;カルボプラチン;ヒドロキシウレア;プロカルバジン;ミトタン;ホルモン;アドレノコルチコステロイド;プレドニソン;プレドニソロン;アミノグルテチミド;プロゲスチン;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン;酢酸メドロキシプロゲステロン;メゲストロールアセテート;エストロゲン;アンドロゲン;ジエチルスチルベストロール;フルオキシメステロン;エチニルエストラジオール;抗エストロゲン;タモキシフェン;ゴナドトロピン放出ホルモン類似体;およびロイプロリドからなる群より選択される。
【0088】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0089】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの癌化学療法剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0090】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、放射線治療を対象に実施することをさらに含む。
【0091】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、放射線治療は医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に実施される。
【0092】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該細胞移動疾患、障害、または状態は炎症状態である。
【0093】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、肺線維症;虚血性心疾患;クローン病;皮膚筋炎;糖尿病;ギラン・バレー症候群;橋本病;特発性血小板減少性紫斑病;混合結合組織病;重症性筋無力症;睡眠発作病;尋常性天疱瘡;悪性貧血;多発性筋炎;原発性胆汁性肝硬変;シェーグレン症候群;側頭動脈炎;潰瘍性大腸炎;脈管炎;ヴェゲナー肉芽腫症;全身性エリテマトーデス;ループス腎炎;グッドパスチャー症候群;溶血性貧血;甲状腺中毒症;強皮症;喘息;慢性関節リウマチ;変形性関節症;敗血症;関節硬化症;慢性腎疾患;炎症性腸疾患;脈管炎;腹膜炎;巨乳頭結膜炎;ブドウ膜炎;季節性アレルギー性結膜炎;慢性前立腺炎;糸球体腎炎;過敏症;炎症性腸疾患;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植拒絶反応;チェジアック・東症候群;慢性肉芽腫性疾患;尿管炎症状態;間質性膀胱炎;潰瘍性大腸炎;全身性硬化症;皮膚筋炎;多発性筋炎;および封入体性筋炎からなる群より選択される炎症状態を治療する方法を対象とする。
【0094】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、少なくとも1つの抗炎症剤をさらに含む。
【0095】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで該抗炎症剤は、コルチコステロイド;コルチゾール;アルドステロン;ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンアセテート;コルチゾンアセテート;チキソコルトールピバレート;プレドニソロン;メチルプレドニソロン;プレドニソン;トリアムシノロンアセトニド;トリアムシノロンアルコール;モメタソン;アムシノニド;ブデソニド;デソニド;フルシノニド;フルオシノロンアセトニド;ハルシノニド;ベタメタゾン;リン酸ベタメタゾンナトリウム;デキサメタゾン;リン酸デキサメタゾンナトリウム;フルコルトロン;ヒドロコルチゾン−17−ブチレート;ヒドロコルチゾン−17−バレレート;アクロメタゾンジプロピオナート:ベタメタゾンバレレート;ベタメタゾンジプロピオナート;プレドニカルバート;クロベタゾン−17−ブチレート;クロベタゾール−17−プロピオナート;フルコルトロンカプロエート;フルコルトロンピバレート;フルプレドニデンアセテート;非ステロイド系抗炎症剤;cox−2阻害剤;ニメスリド;ジクロフェナック;リコフェロン;アスピリン;イブプロフェン;ナプロキセン;免疫選択的抗炎症性誘導体;フェニルアラニン−グルタミン−グリシン;ハーブ;ハルパゴフィツム;ヒソップ;ジンジャー;ターメリック;アルニカ・モンタナ;柳樹皮;およびカンナビスからなる群より選択される。
【0096】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの抗炎症剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0097】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで該少なくとも1つの抗炎症剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0098】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで該細胞移動疾患、障害、または状態は、過剰な血管新生状態である。
【0099】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、糖尿病性失明;慢性炎症;関節炎;老人性黄斑変性症;網膜症;慢性関節リウマチ;変形性関節症;クローン病;乾癬;癌;アルツハイマー病;再狭窄;肺線維症;喘息;血管線維腫;血管新生緑内障;動静脈奇形;偽関節骨折;ループスおよび結合組織障害;オスラー・ウェバー症候群;アテローム硬化性プラーク;角膜移植血管新生;化膿性肉芽腫;水晶体後方線維増殖症;強皮症;肉芽形成;血管腫;トラコーマ;血友病性関節症;腹腔内子宮内膜症;脂肪過多症;および血管癒着からなる群より選択される過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とする。
【0100】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、少なくとも1つの血管新生阻害剤をさらに含む。
【0101】
ある実施態様では、本明細書で記述する主題は過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とし、ここで該少なくとも1つの血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドミド、パニツムマブ、セツキシマブ、およびエルロチニブからなる群より選択される。
【0102】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療することを対象とし、これは、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0103】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療することを対象とし、これは、有効量の抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤を、対象に投与することをさらに含む。
【0104】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、有効量の抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤を、対象に投与することを含む。該抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤は、本明細書に記述する化合物と共に単一の医薬組成物として投与してもよく、または本明細書の化合物とは別に投与してもよい。このような個別の投与は、それぞれの薬剤または阻害剤について、本明細書の化合物の投与と同時に、またはその後で実施することができる。
【0105】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の有効量をさらに含む。
【0106】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、上記式Iの化合物の乳癌、結腸癌、前立腺癌、および膵臓癌への使用に関する。
【0107】
本明細書に記述する化合物は、不必要な実験をすることなく当業者に周知の方法で容易に作製することができる。
【0108】
本明細書に記述する主題に従って使用するための医薬組成物は、生理学的に許容できる1以上の担体または賦形剤を用いて製剤化してよい。したがって、該化合物およびその生理学的に許容できる塩および溶媒和物は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PA.に記述されたような従来の方法で製剤化し、全身的、局所的、または局在的投与をはじめとする多様な投与経路によって投与してよい。
【0109】
全身的投与には、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下をはじめとする注射が好ましい。注射の場合、本明細書に記述する主題の化合物は、例えばハンクス液またはリンゲル液をはじめとする生理学的に適合する緩衝液などの溶液で製剤化することができる。さらに、本化合物は、固形に製剤化し、使用直前に再び溶解させるか懸濁させてもよい。また、凍結乾燥した形態も含まれる。
【0110】
経口投与の場合、本医薬組成物は、結合剤などの医薬的に許容できる賦形剤;充填剤(例えばラクトース、微晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)と共に従来の方法で、例えば錠剤またはカプセルなどの形にしてもよい。錠剤は、当分野で周知の方法でコーティングしてよい。経口投与する液体製剤は、例えば溶液、シロップ、または懸濁液などの形にしてもよく、または乾燥品にして、使用前に水またはその他の適切なビヒクルで調製してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素添加食用油);乳化剤(例えばレシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えばationd oil、油状エステル、エチルアルコール、または分別植物油);および保存料(例えばメチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸、またはソルビン酸)などの医薬的に許容できる添加剤を用いて、従来の方法で調製してよい。また、製剤は、緩衝塩、香料、着色料、および甘味料を含んでもよい。
【0111】
経口投与のための製剤は、活性化合物の放出が制御されるように適切に製剤化してよい。口腔投与の場合、本組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形にしてよい。吸入による投与では、本明細書に記述する主題に従って用いるための本化合物は、加圧パックからエアゾール・スプレー式に、または、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切な気体の適切な噴霧体を用いて噴霧器で投与するとうまく送達される。加圧されたエアゾールの場合は、弁をつけて計量することにより投与量を決定してもよい。吸入器または散布器に用いる例えばゼラチンなどのカプセルおよび薬包には、本化合物とラクトースまたはスターチなどの適切な粉末ベースとの粉末混合を入れて製剤化してもよい。
【0112】
本化合物は、注射による非経口投与、例えばボーラス注射または持続点滴用に製剤化してもよい。注射のための製剤は、例えばアンプルまたは多回投与容器などの単位投与量の形にして保存料を添加して提示してもよい。本化合物は、油性または水性のビヒクルに入れて懸濁液、溶液、または乳剤などの形にしてもよく、また懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化物質を含んでもよい。あるいは、活性成分を粉末状にして、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌精製水で調製してもよい。
【0113】
本化合物は、例えばココア脂またはその他のグリセリドをはじめとする通常の坐薬基剤を含む坐薬または浣腸剤など、直腸用組成物に製剤化してもよい。
【0114】
これまでに述べた剤形に加えて、本化合物はまたデポー製剤に製剤化してもよい。このような長期作用型の製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内に)または筋肉内注射により投与してよい。したがって、例えば本化合物は、適切な高分子材料または疎水性材料(例えば、許容できる油脂に入れた乳剤)またはイオン交換樹脂を用いるか、またはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩の形で製剤化してもよい。
【0115】
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的な手段で行ってもよい。経粘膜的または経皮的投与の場合、透過する障壁に適した浸透剤が製剤化に用いられる。このような浸透剤は一般に当分野で公知のものであり、例えば経粘膜的投与の場合では、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体などが挙げられる。さらに、浸透を促進するために洗剤を用いてもよい。経粘膜的投与は、鼻内噴霧するかまたは坐薬を使って行ってもよい。局所投与の場合は、本明細書に記述する化合物は当分野で一般に公知の通り、軟膏、蝋膏、ゲル、またはクリームに製剤化される。洗液を局所的に用いて傷害または炎症を治療すると、治癒が加速し得る。
本組成物は、所望であれば、活性成分を含む単位剤形を1以上含み得るパックまたはディスペンサー装置で提供してもよい。パックは、例えばブリスターパックのように、金属箔またはプラスチック箔を含んでよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与指示書が添付されてもよい。
【0116】
現在本明細書に一般的に記述する主題は、以下の例を参照すればさらに容易に理解されるであろう。これは、単に本主題の特定の態様および実施形態を例示する目的で掲載されるだけであり、本主題を制限することを意図するものではない
【実施例】
【0117】
実施例1 化合物1の合成(PRT7000467)
【化11】
グリシン(7.0 g, 93 mmol)および炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)を水(100 mL)に溶かした溶液に、チオフェン−2−カルボニルクロリド(7.3 g, 50 mmol)を撹拌しながら30分間にわたって添加した。結果として得られた溶液を1時間撹拌し、ジエチルエーテル(2 x 30 mL)で洗浄し、濃塩酸で酸性にした。氷浴で1時間冷却した後、沈殿物をフィルターで分離し、氷水で洗浄し、空気中で乾燥して以下に示す酸を7.0 g (76%)得た。
【化12】
前の工程で得た酸の懸濁液(7.0 g, 38 mmol)、酢酸ナトリウム(3.1 g, 38 mmol)、および無水酢酸(11.6 g, 114 mmol)を、撹拌しながら水蒸気浴で1時間加熱した。混合物は反応している間にオレンジ色になり、凝固した。冷却した固体を水(50 mL)と共に15分間撹拌し、生じた沈殿物をフィルターで分離し、氷水および冷たく冷やしたエタノールで洗浄し、空気中で乾燥して以下に示すアズラクトン6.2 g(63%)をオレンジ色固体の形で得た。
【化13】
前の工程から得たアズラクトン(2.8 g, 11 mmol)および4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8 g, 10 mmol)の氷酢酸(40 mL)との懸濁液を、還流下で1時間撹拌した。固体は溶解し、次に黄色の沈殿物となった。冷却した後、後者をフィルターで分離し、氷酢酸、エタノール、そしてジエチルエーテルで次々に洗浄し、空気中で乾燥させ、化合物1のアミド3.7 g(69%)を淡黄色の粉末状で得た。
【0118】
実施例2 化合物3(PRT7081582)の合成
【化14】
グリシン溶液(7.0 g, 93 mmol)および炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)を水(100 mL)に入れた水溶液に、チオフェン−2−カルボニルクロリド(7.3 g, 50 mmol)を撹拌しながら30分間添加した。生じた水溶液を1時間撹拌し、ジエチルエーテル(2 x 30 mL)で洗浄し、濃塩酸で酸性にした。氷浴で1時間冷却した後、沈殿物をフィルターで分離し、氷水で洗浄し、空気中で乾燥させて以下に示す酸を7.0 g (76%) 得た。
【化15】
前の工程で得た酸(7.0 g, 38 mmol)、酢酸ナトリウム(3.1 g, 38 mmol)、および無水酢酸(11.6 g, 114 mmol)の懸濁液を、撹拌しながら1時間水蒸気浴で加熱した。混合物は反応の間にオレンジ色になり、凝固した。冷却した固体を水(50 mL)と共に15分間撹拌し、生じた沈殿物をフィルターで分離し、氷水および冷たく冷やしたエタノールで洗浄し、空気中で乾燥させて以下に示すアズラクトンを6.2 g(63%)オレンジ色の固体として得た。
【化16】
前の工程で得たアズラクトン(2.8 g, 11 mmol)および4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8 g, 10 mmol)の氷酢酸中懸濁液(氷酢酸40 mL)を、還流下で1時間撹拌した。固体は溶解し、次に黄色の沈殿物が生じた。冷却後、後者をフィルターで分離し、氷酢酸、エタノール、およびジエチルエーテルで次々と洗浄し、空気中で乾燥して化合物3のアミド3.7 g(69%)を淡黄色の粉末状で得た。
【0119】
実施例3 POSH阻害剤が細胞移動および軟寒天コロニー形成を阻害する
FBSを10%補足したRPMI培地で培養したA375メラノーマ細胞(CRL−1619, American Type Culture Collection (“ATCC”), Manassas VA, USA)を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。24時間の飢餓状態の後、無FBS培地の細胞5x104を、溶媒(DMSO/PEG400)または様々な濃度の化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、または化合物3(PRT7081582)とともに、24ウェルのTranswell装置 (CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、孔径5 μm)の上方室に配置した。FBSと化合物とを含む培地を下方室に追加した。24時間後、上方室のメラノーマ細胞を綿棒で除去した。膜の下方側に移動した細胞をCalcein−AM(Sigma)で着色し、蛍光顕微鏡で撮像した。ImageJソフトウェアにより移動細胞数を定量し、Prismソフトウェアを用いてIC50値を算出した。
化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、または化合物3(PRT7081582)は、二次元に増殖した細胞に対しては毒性がなかった。A375細胞をRPMIおよび10%FBSで培養した。該細胞を様々な濃度の化合物1(PRT7000467)および化合物2(PRT7041128)で処理し、処理の72時間後にWST−1試薬(Roche)を用いてその生死を判別した(図1B)。
化合物1(PRT7000467)は、A375メラノーマ細胞およびMDA−MB231乳癌細胞の軟寒天コロニー形成を阻害する。分析は、Cell Biolabs, Inc. (San−Diego, CA)のCYTOSELECT(商標)96−Well In Vitro Tumor Sensitivity Assayキットを用いて実施した。細胞は、指示濃度の化合物1(PRT7000467)の存在下で、RPMIおよび10%のFBS培地を用いて14日間培養した。軟寒天上のコロニー形成は、寒天を可溶化した後にMTT試薬を用いて定量化した(材料は全てキットに入っている)。IC50値は、Prismソフトウェアを用いて算出した。Transwell分析でのA375メラノーマ細胞の移動は、POSH阻害剤、化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、および化合物3(PRT7081582)によって阻害され、移動分析でのIC50はそれぞれ5.7 μM、9.2μM、および1.409μMであった(図1Aおよび1E)。これらの化合物は細胞に対して毒性ではなく、そのLD50は150μMより高いのであるから(図1B)、細胞移動に対するこの効果は毒性に起因するものではない。化合物1(PRT7000467)および化合物3(PRT7081582)は、A375メラノーマ細胞の軟寒天コロニー形成を阻害する(それぞれ、図1Cおよび1F)。また、化合物1はMDA−MB231乳癌細胞のコロニー形成を阻害することが分かる(図1D)。軟寒天コロニー形成分析におけるこの化合物のLD50は、MDA−MB231に関しては13.08μMであり、A375細胞に関しては2.8〜5.6μMであった。
この実験結果は、化合物1および化合物3が、その毒性濃度より十分低い濃度で、A375細胞に対する抗移動活性を有することを示すものである。さらに、化合物2もまたその毒性濃度より十分低い濃度で、A375細胞に対する抗移動活性を有する。この一連の結果は、化合物1、2、および3が、例えば癌、血管新生の兆候、および炎症状態などの細胞移動を伴う適応症に、有意な細胞毒性を生じさせることなく用いることができるものであることを示している。
【0120】
実施例4 化合物1が様々な癌細胞系の移動を阻害する
10%FBSを添加したRPMI培地で培養したMDA−MB−231(HTB−26, ATCC, Manassas, VA, USA)およびMDA−MB−468 (HTB−132, ATCC, Manassas, VA, USA)乳癌細胞系並びにDU 145 (HTB−81, ATCC, Manassas, VA, USA)前立腺癌細胞系を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。24時間後、無FBS培地の細胞5x104を24ウェルのTranswell装置(CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、孔径8 μm)の上方室に配置した。FBSおよび化合物1を含む溶媒を、下方室に追加した。24時間後、上方室の細胞を綿棒で除去した。膜の下側に移動した細胞を、Calcein−AM (Sigma)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。結果は、細胞移動に対するPOSH阻害剤の阻害作用がA375細胞に限定されるものではないことを示している。また化合物1(PRT7000467)も、MDA−MB−231、MDA−MB−468の各乳癌細胞およびDU145前立腺癌細胞系をはじめとする他の癌細胞の移動を阻害する(図2)。
化合物1の阻害作用を、様々な細胞系で再検討し、Transwell分析で測定した。
A375 (メラノーマ)(CRL−1619, ATCC, Manassas, VA, USA)、A431 (メラノーマ)(CRL−2592, ATCC, Manassas, VA, USA)、A2058 (メラノーマ)(CRL−11147, ATCC, Manassas, VA, USA)、MDA−MB−231 (乳癌)(HTB−26, ATCC, Manassas, VA, USA)、LS175T(結腸癌)(ATCC, Manassas, VA, USA)、HT29 (結腸癌)(HTB−38, ATCC, Manassas, VA, USA)、PC3 (前立腺癌)(CRL−1435, ATCC, Manassas, VA, USA)、Panc03.27 (ATCC, Manassas, VA, USA)、4T1 (乳癌−マウス)(CRL−2539,ATCC, Manassas, VA, USA)、D122 (肺癌−マウス)(the Weizmann Institute of Science)、D122−luc (肺癌−マウス)(the Weizmann Institute of Science)、およびB16 F10.9 (メラノーマ−マウス)の各細胞(Caliper Life Sciences, Hopkinton MA)を、10%FBSを添加したRPMI培地で培養した。HUVEC細胞をEndothelial Cell Growth Medium 2で培養し、またTHP1細胞を、10%FBS、2mM L−Glutamine、1.5g/L重炭酸ナトリウム、10mM Hepes、1mMピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、および0.05mM 2−メルカプトエタノールを添加したRPMI培地で培養した。これらの細胞を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。飢餓状態の最後に無FBS培地の細胞5x104を、24ウェルのTranswell装置(CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、A365およびTHP1の各細胞では孔径5μm、その他の細胞ではいずれも孔径8μm)の上方室に、溶媒(DMSO/PEG400)または様々な濃度の化合物1(PRT7000467)と共に配置した。FBSおよび化合物入りの培地を、下方室に追加した。24時間後、上方室の細胞を綿棒で除去した。膜の下側に移動した細胞を、Calcein−AM (Sigma)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。移動細胞数をImageJソフトウェアで定量し、Prismソフトウェア(Graphpad)を使ってIC50値を算出した。結果を表1に示すが、化合物1が試験したすべての細胞に対して活性であることを示している。ただし、THP1単球ではその作用がはるかに弱く、例外となった。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例5 化合物1(PRT7000467)がHUVEC細胞の管形成を阻害する
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、15%ウシ胎仔血清を含むSupplementMix (PromoCell, Germany)を入れたEndothelial Cell Growth Medium 2で通常通りに培養した。管形成アッセイには、5%ウシ胎仔血清を含んだ上記培地の1x104細胞を、50ng/ml VEGF (Prospec, Israel)を添加したCultrex減少増殖因子Basement Membrane Extract (BME)(R&D Systems, Minneapolis, MN)の上に散布した。この細胞を、指示通りに、溶媒(50% DMSO/50% PEG400)、25μM化合物1(PRT7000467)、10μM LY294004 (Cayman Chemical, Ann Arbor, Michigan)、または3μM FTY720 (Cayman Chemical, Ann Arbor, Michigan)のいずれかで処理した。LY294004はPI3K阻害剤、FTY720はスフィンゴシン−1−リン酸受容体の調節物質であり、そのどちらも陽性対照として供給された。6時間後に、細胞をCalcein−AM (Sigma, Israel)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。結果から、化合物1(PRT7000467)が、生体内の血管新生をまねた生体外アッセイであるHUVEC細胞による管状構造の形成を阻害することが分かる(図3)。
【0123】
実施例6 抗転移移動アッセイ
B16F10ネズミのメラノーマ細胞を植え込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移阻害効果について、化合物1および化合物3を試験した。1日目(D1)に、被験マウスの尾静脈に1×105 B16F10腫瘍細胞を静脈内(i.v.)注射することによって腫瘍を創出した。マウスはビヒクル処理対照群3群(n = 20または10/群)と、治療群9群(n = 10/群)とに選別した。化合物1および化合物3を単剤療法により、D3から1日10 mg/kg(5 mL/kgで2 mg/mL)および20 mg/kg(5 mL/kgで4 mg/mL)の用量を、14回にわたり腹腔内(i.p.)投与した(qd x 14(D3開始))。また、化合物1および化合物3の単剤療法は、20 mg/kg (5 mL/kgで4 mg/mL)をD3から1日2回ずつ、29回分i.p.投与することによっても実施した(bid x 14.5 (D3開始))。被験物質のビヒクルを5 mL/kgの用量でi.p.投与した(qd x 14(D3開始))ある対照群は、上記の治療群に対する「疑似治療」対照群の役目を果たした。被験物質のビヒクルを10 mL/kgの用量でi.p.投与した(qd x 14(D3開始))ある対照群は、上記の治療群に対する「疑似治療」対照群の役目を果たした。ある陽性対照群には、300 mg/kgのシクロホスファミドをD3に1回i.p.投与した。ある対照群には、D3に生理的食塩水を1回分腹腔内(i.p.)投与し、「疑似治療」対照群および陽性対照群に対する対照となった。
試験のエンドポイントは、生理的食塩水対照群から定期的に任意抽出した動物に確認される1匹当たり100の肺転移と定義した。本試験は、D17に任意抽出した「点検用」動物に、平均77ヵ所の転移巣が認められた時点で終了した。試験に残った動物はすべて安楽死させ、その転移を数え、各群の平均±SEM巣数を算出した。治療マウスと対照マウスについて、D17の平均巣数の阻害率、変化率を比較分析し、また両者の巣数の差を統計的に評価することによって、有効性の判定を行った。
B16F10ネズミのメラノーマ細胞を植え込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえで、化合物1および化合物3はそれぞれ51%および45%の有効性を示した(図4AおよびB)。
【0124】
実施例7 抗炎症分析
遅延型過敏(DTH)反応は細胞性免疫の発現であり、多くの炎症性障害の病理および慢性に大きな役割を果たしている。遅延型過敏(DTH)反応は、オキサゾロン、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、およびヒツジ赤血球(SRBC)をはじめとする様々なアレルゲンによって引き起こされる可能性がある。最も特徴的なDTH現象の一つが接触過敏症であり、これは腫れ、およびサイトカインの組織内濃度の上昇を特徴とする。接触過敏症(CHS)は、皮膚感作、および可溶性の細胞内タンパク質と直接結合し得、自己MHC生成物との関連でT細胞に認識される反応性ハプテンの攻撃に対するT細胞媒介性免疫反応である。皮膚内で抗原−タンパク質複合体を認識する細胞はランゲルハンス細胞(LC)である。アレルゲンを局所適用すると、皮膚の免疫反応を誘導する主要な抗原提示細胞(APC)のランゲルハンス細胞(LC)が、表面のMHCクラスII抗原の発現を上昇させ、皮膚から局部のリンパ節へと移動を始め、ここで特定のリンパ節が活性化されると考えられる。ハプテンとの2度目の接触が起きると、T細胞はまず組織へと動員され、次に抗原提示細胞によって活性化され、局所的炎症を媒介するサイトカインを産生する。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、顆粒球浸潤の指数としてよく用いられる中性親和性顆粒に専ら存在する酵素であり、その阻害が抗炎症作用の目安となる。
本試験の目的は、オキサゾロン誘導性DTHに対する化合物1および3の作用を検討することである。
動物:
動物の種および系統:50 BALB/cマウス
性別、年齢、および体重:雌、19〜21g、6〜8週間
育種家/供給業者:Shanghai SLAC Laboratory Animal Co. Ltd.
動物の居住区および畜産:
試験施設 PharmaLegacy Laboratories Vivarium
環境適応 7日以上
部屋 通常の部屋
室内温度 (19〜26)℃
室内相対湿度 40〜70%
光周期 蛍光灯で明12時間(8:00〜20:00)、暗12時間
動物舎 治療群では5匹/ケージ
飼料 飼料摂取自由(照射物、Shanghai SLAC Laboratory Animal Co. Ltd.,Chaina)
水 水摂取自由(Molanimal Ultrapure Water Systemで濾過される都市水道)
試薬:
オキサゾロン:Sigma−Aldrich. (St. Louis, MO, USA), Cat: E0753, Lot: 124K3690
ペントバルビタールソーダ:Shanghai Western Biotech Co., Ltd (Shanghai, P.R.China), Lot: WS20090520
イソフルラン:He Bei Jiu Pai Biotech Co., Ltd, Cat: H19980141
アセトン:Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd, Cat: 10000418
オリーブ油:Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd. Cat: 69018028
生理的食塩水:Anhui double−crane Pharmaceutical Co., Ltd, Cat: H34023609
関連作用薬:デキサメタゾン:Sigma−Aldrich, Cat: D1756−1G
試験物質およびビヒクル:TBD
設備:
マイクロメーター:Mitsutoyo (No.045−020, 0−25mm, 0.001mm, Japan)
手順:
試薬の準備:
オキサゾロン溶液:オキサゾロンを4:1のアセトン/オリーブ油に10 mg/mLで溶解する
関連作用薬溶液:デキサメタゾンをアセトンに2.5 mg/mLで溶解する
免疫化および抗原投与:
動物50匹を5群に無作為化する(n=10)
マウスを1.0%のペントバルビタールソーダ(60 mg/kg)で麻酔し、腹部を剃る。0日目に、4:1のアセトン/オリーブ油に入れた3%オキサゾロン150μLを各マウスの腹部に塗る。
5日目に、マウス全匹に対し、4:1のアセトン/オリーブ油に入れた1%オキサゾロン20μLを、右耳の両側に局所塗布(10μL/片側)することにより投与する。
処置:
化合物1、3、および関連作用薬を、異なる用量プロトコールに従って投与する:a)第1群(ビヒクル群):生理的食塩水を、オキサゾロン投与の1時間前に経口投与する。b)関連作用薬群:アセトンに入れたデキサメタゾン(0.05 mg/耳)を、第2群のオキサゾロン投与の1時間後および6時間後に、右耳の両側に局所投与する(20 μL/耳、10μL/片側)。c)異なる用量の3種の試験物質を生理的食塩水に入れ、第3、4、および5群のオキサゾロン投与の1時間前に経口投与する。
測定:
マウス全匹の体重を、0日目から6日目まで毎日記録する。
オキサゾロン投与の前および24時間後に耳厚をマイクロメーターで測定し、平均耳厚変化として報告することによって、耳の腫脹反応を判定する(ΔT±S.E.M.)。耳の腫脹反応の抑制割合を、%抑圧=[1−(実験治療に暴露した感作マウスのΔT/ビヒクル治療に暴露した感作マウスのΔT]x100として計算する。
最後の耳厚測定を行った後(オキサゾロン投与の24時間後)、95%CO2でマウスを屠殺する。
各群の耳翼を、屠殺後直ちに10mm径のパンチで穿孔して回収し、その重さをはかる。第1群については左右両耳を回収し、第2〜5群については右耳だけを回収する。耳試料を液体窒素で凍結させる。これ以外の群にMPO活性試験を実施するかどうかについて、生データ受領の45日後に試験委託者が決定する。
化合物1および3は、対照群と同じ抗炎症活性を有する(図5)。
統計:
結果を平均±S.E.M.の形で提示する。一元配置分散分析に続き、ダネット事後テストを用いて群間差を判定する。P<0.05を統計的有意とする。
【0125】
実施例8 化合物1の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物1の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0126】
実施例9 化合物2の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物2の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0127】
実施例10 化合物3の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0128】
実施例11 化合物1の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物1の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0129】
実施例12 化合物2の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物2の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0130】
実施例13 化合物3の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0131】
実施例14 化合物1の使用
患者が乳癌を患っている。化合物11の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0132】
実施例15 化合物2の使用
患者が乳癌を患っている。化合物22の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0133】
実施例16 化合物3の使用
患者が乳癌を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0134】
本明細書全体を通じて、様々な科学出版物および特許、または公開特許出願が参照されている。本明細書に述べた主題が係る技術の現状を一層詳しく説明するために、このすべての特許、公開出願、および科学出版物の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書のこの条項、または他の部分におけるいかなる参考文献の引用または認知であれ、かかる参考文献が、本明細書に記述された主題の先行技術として利用可能であることを認めたものと解釈されてはならない。
【0135】
本主題の本質から逸れることなく様々な修正が可能であることは、本主題が係る技術の当業者には理解されるであろう。本明細書に添付した特許請求の範囲の中に、かかる修正をすべて含めることを意図するものである。
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述する主題は、ヒトポリペプチドのユビキチンリガーゼ活性の阻害剤である小型ピリミジン誘導体に関するものであり、具体的には、POSH阻害剤、ならびに細胞移動に起因する病状、障害、又は疾患の治療のための組成物および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜在的な医薬品ターゲットのバリデーションには、あるDNA、RNA、又はタンパク質分子がある疾患のプロセスに関係しており、それゆえ新たな治療薬の開発に適した標的であるかどうかということに対する判定が含まれる。生物活性化合物を同定し、特性を明らかにするためのプロセスである創薬は、ヒト疾患の新たな治療法を開発するうえできわめて重要な手順である。創薬の状況は、ゲノミクス革命によって劇的に変化した。DNAおよびタンパク質配列が、多数の新たな創薬標的および関連する膨大な量の情報を生み出している。
【0003】
炎症および免疫反応など、多様な病的状態または重要な生物過程に関与する遺伝子およびタンパク質の同定は、薬物設計プロセスの手順の欠くべからざる要素である。適切な分子標的が同定され、適切な拮抗薬が開発されれば、病状の分子的発症要因に関与する1以上の遺伝子の発現を低下させることによって、多くの疾患および障害を治療または予防することができる。例えば、癌は、1以上の細胞性癌遺伝子が活性化されて細胞周期プロセスに歯止めの効かない進行をもたらすのであるが、適切な細胞周期制御遺伝子を拮抗させることによってこれを治療することができる。また、遺伝因子にもエピジェネティック因子にも影響されるハンチントン舞踏病をはじめとする多くのヒト遺伝子疾患およびプリオン病の特定の病状は、あるポリペプチドの、完全な機能喪失の対極にある不適切な活性によって発症する。したがって、このような突然変異遺伝子の異常機能の拮抗が、ひとつの治療手段を提供すると考えられる。このような疾患および障害を治療するための薬物治療戦略は、疾患遺伝子のポリペプチド産物を標的とする分子的拮抗薬を採用することが多かった。しかし、適切な遺伝子またはタンパク質の標的を発見することは多くの場合困難であり、かつ多大な時間を必要とした。
【0004】
ユビキチン依存性プロテオソームの作用によるものと考えられる選択的分解が行われている標的タンパク質は、ユビキチンのC末端グリシル残基と基質タンパク質の特定のリジル残基との間のイソペプチド結合の形成によって、共有結合でユビキチンにより標識される。このプロセスはユビキチン活性化酵素(E1)およびユビキチン包合酵素(E2)によって触媒され、場合によっては補助的な基質認識タンパク質(E3)が必要となる。最初のユビキチン鎖の結合に続き、前に包合された部分のリジン側鎖にユビキチン分子がさらに結合し、分岐マルチユビキチン鎖を形成することもある。
【0005】
タンパク質基質へのユビキチンの包合は、多段階プロセスである。ATPを必要とする最初のステップでは、ユビキチンのC末端とE1酵素の内部システイン残基との間にチオエステルが形成される。活性化されたユビキチンが、次にいくつかのE2酵素のひとつにある特異的なシステインに転移することもある。最後に、これらのE2酵素が、一般にユビキチンリガーゼ酵素とも呼ばれるE3タンパク質の補助を得て、タンパク質基質にユビキチンを提供する。場合によっては、基質が直接ユビキチン包合E2酵素に認識される。ユビキチン(ub)タンパク質リガーゼ(E3)は、機能的に、E1(ub活性化酵素)およびE2(ub担体タンパク質)の存在下における1または複数のユビキチン分子と基質タンパク質との共有結合(包合)と定義される。タンパク質基質の不在下では、E3が自己ユビキチン化、すなわち自己ユビキチン化と呼ばれる反応である活性化ユビキチンのE2からE3ポリペプチド上のリジン残基受容体部位への転移、を触媒する可能性がある。自己ユビキチン化は、トランスユビキチン化と同じく、E1、E2、およびE3の無傷の機能モジュールすなわちRINGフィンガーまたはHECTドメインによって左右される(非特許文献1;非特許文献2)。
【0006】
また、ユビキチン系が、細胞内輸送、細胞周期の進行、アポトーシス、および多数の膜受容体の、代謝回転をはじめとする広範囲の細胞過程の一翼を担っていることも公知である。ウイルス感染の場合、ユビキチン系は、集合、出芽、および放出のみならず、ウイルス誘発性新生物を生じさせる可能性のあるp53などの宿主タンパク質の抑制にも関与する。HIV Vpuタンパク質は、IκBの分解を調節するE3タンパク質と相互作用し、またNFκB活性を間接的に阻害することによって感染した細胞のアポトーシスを促進させると考えられている(非特許文献3)。ユビキチン系は、モノユビキチン化とポリユビキチン化との両方によってタンパク質機能を調節する。ポリユビキチン化は、主としてタンパク質分解に伴って起こる。
【0007】
細胞移動は、胎発育、創傷治癒、および免疫反応をはじめとする多様な生物過程にとってきわめて重要である。また異常な細胞移動も、癌細胞の浸潤、血管新生、および転移などの多くの病態(Chiang and Massague, 2008)、炎症性疾患(Mackay, 2008)、老人性黄斑変性(AMD)などの網膜症(Das and McGuire, 2003)などに共通の特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,932,425号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lorickら、Proc Natl Acad Sci USA.、1999年、第96巻、11364−9頁
【非特許文献2】Kao WHら、J Virol.、2000年、第74巻、6408−6417頁
【非特許文献3】Bourら、J Exp Med、2001年、第194巻、1299−311頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記述する主題によれば、特定のピリミジン誘導体はユビキチン化阻害剤として作用し、POSHタンパク質に媒介されるユビキチン化を阻害することによって細胞移動を遮断することができることが明らかになった。
【0011】
本明細書に記述する主題は、細胞移動を強力に阻害する小分子を対象とする。本主題はさらに、病的な細胞移動を伴う癌などの様々な適応症、炎症に起因する様々な適応症、ならびに老人性黄斑変成症(AMD)、網膜症などの血管新生に起因する適応症の治療薬としての阻害分子の可能性について説明する。
【0012】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に起因する疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、治療的有効量の本明細書に記述する化合物を患者に投与することを含む。
【0013】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に起因する疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、これには治療的有効量の本明細書に記載の式Iの化合物を含む医薬組成物を、患者に投与することが含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に記述する主題は、後述する式Iのピリミジン誘導体である小分子の、細胞移動に起因するまたは細胞移動に伴う疾患、障害、または状態の治療のための使用を対象とする。いくつかの実施態様において、本明細書に記述する主題は、本明細書で指定される化合物1、2、3、4、5、6、および7の化合物である式Iの化合物の、細胞移動に起因するまたは細胞移動に伴う疾患、障害、または状態、すなわち細胞移動疾患、障害、または状態の治療のための使用に関する。
【0015】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、患者の細胞移動疾患、障害、もしくは状態、または細胞移動に伴う疾患、障害、もしくは状態を治療するための方法を対象とし、ここで、細胞移動疾患、障害、もしくは状態は、癌、炎症状態、もしくは血管新生に起因する状態である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、細胞移動に対する化合物1および化合物2の阻害効果を示す図式表示である。
【図1B】図1Bは、細胞移動に対する化合物1および化合物2の阻害効果を示す図式表示である。
【図1C】図1Cは、軟寒天コロニー形成(MDA−MB231細胞)に対する化合物1の効果を示す図式表示である。
【図1D】図1Dは、軟寒天コロニー形成(A375細胞)に対する化合物1の効果を示す図式表示である。
【図1E】図1Eは、細胞移動に対する化合物3の阻害効果を示す図式表示である。
【図1F】図1Fは、軟寒天コロニー形成(MDA−MB231細胞)に対する化合物3の効果を示す図式表示である。
【図2】図2は、様々な細胞系の細胞移動に対する化合物1の阻害効果の写真表示である。
【図3】図3は、HUVEC細胞の管形成に対する化合物1の阻害効果の写真表示である。
【図4A】図4Aは、B16F10ネズミのメラノーマ細胞を埋め込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえでの化合物1の有効性を示す図式表示である。
【図4B】図4Bは、B16F10ネズミのメラノーマ細胞を埋め込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえでの化合物3の有効性を示す図式表示である。
【図5】図5は、化合物1および3が、対照と同じ抗炎症活性を有することを示す図式表示である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
考えうる追加の定義に対して範囲を制限することなく、本明細書で使用する以下の用語を下記の通り定義する。
【0018】
用語「ヒドロカルビル」は、1〜20個の炭素原子、1〜10個、1〜6個、または2〜3個の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、およびアリールを含む非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族でありうる炭化水素由来の基、ヒドロカルビル基を意味する。
【0019】
「アルキル」、「アルケニル」、または「アルキニル」基は、それぞれ「C1−C10アルキル」または「C1−C4アルキル」、「C2−C10アルケニル」または「C2−C4アルケニル」、「C2−C10アルキニル」または「C2−C4アルキニル」であり、直鎖でも分岐でもよく、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断されてもよく、および/または、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって置換されてもよく、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子とともに、N、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む5〜7員の飽和複素環を形成し、またここで、前記追加のN原子がヒドロカルビルにより任意に置換される。
【0020】
用語「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖であっても分岐でもあってもよいアルキル基であり、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断されてもよく、および/または、上に定義されたように置換されてもよい「C1−C4アルキル」を指す。低級アルキルには、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルがある。一実施態様では、低級アルキルはメチルである。
【0021】
いずれの「C2−C4アルケニル」も、2〜4個の炭素原子および1または2の二重結合を有する直鎖または分岐不飽和基、例えばアルカジエニル基であり、ここで、アルケニル基は任意で末端二重結合を有することができ、例えばビニル、プロパ−2−エン−1−イル、ブタ−3−エン−1−イルを含む。いずれの「C2−C4アルキニル」も、2〜4個の炭素原子および1以上の三重結合を有する直鎖または分岐不飽和基であり、例えばエチニル、プロピニル、ブチニルを含む。いずれのアルキル、アルケニル、およびアルキニル基も、本明細書に定義されるように置換されることができる。
【0022】
用語「カルボシクリル」は、本明細書において、用語「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」を含み、これはそれぞれ「C5−C6シクロアルキル」または「C5−C6シクロアルケニル」、すなわち完全に飽和または部分的に不飽和の5〜6の炭素原子のカルボサイクリック基を指し、さらにシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニルを含み、これはハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基により置換されてもよく、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、もしくはヘテロシクリルであり、またはR’およびR’’がその結合する窒素原子と共に、N、S、および/もしくはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和複素環を形成し、またここで、該追加のN原子がヒドロカルビルによって任意に置換される。
【0023】
用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルのような単環式、二環式、または三環式の環からなり、6〜14個の炭素原子、もしくは6〜10個の炭素原子を有する「C6−C14」の芳香族カルボサイクリック基を指し、これは本明細書で上記に定義された1以上の基で置換されうる。
【0024】
用語「ヘテロシクリル」は、飽和または部分的に不飽和の(非芳香族の)3〜12、5〜10、または5〜6環員の単環式、二環式、または三環式の複素環に由来する基を意味し、該環員のうち1から3がO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子である。非芳香族ヘテロシクリルの限定されない例としては、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピぺリジニル、ピぺラジニル、モルホリノ、1,3−ジオキサニルなどが挙げられる。ヘテロシクリル基は、本明細書で上記に定義された1以上の基によって置換されてもよい。多環式ヘテロシクリル環が置換される場合は、該置換が炭素環および/または複素環のいずれであってもよいことは、理解されなければならない。
【0025】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書において、O、S、およびNからなる群より選択される1から3のヘテロ原子を含む単環式または多環式の芳香族複素環に由来する基を意味する。具体例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジアゼピニル、および追加の多環式芳香族複素環に由来するその他の基が挙げられる。ヘテロアリール基は、本明細書で上記に定義された1以上の基によって置換されてもよい。多環式のヘテロアリール環が置換される場合は、該置換が炭素環式および/または複素環式環のいずれであってもよいことは、理解されなければならない。一実施態様では、ヘテロアリールはチエニルである。
【0026】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。いくつかの実施態様では、ハロゲンはクロロである。
【0027】
−NR7R8もしくは−NRR’の各基は、R7(またはR)およびR8(またはR’)がいずれも水素の場合は−NH2であってもよく、またはR7(またはR)がHであり、かつR8(またはR’)がC1−C4アルキルである場合は第2級アミノであってもよく、またはR7(またはR)およびR8(またはR’)がそれぞれC1−C4アルキルである場合は第3級アミノであってもよく、またはR7もしくはR8(それぞれRおよびR’)がその結合する窒素とともに、窒素、酸素、および/もしくは硫黄より選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含む、例えば5または6員環の飽和複素環式を形成してもよい。このような環は、例えば追加のNにおいて、低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって置換されてもよい。このような環の例としては、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノ、N−アルキルピぺラジノ、例えばN−メチルピペラジノ、およびジアゼピノが挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
R6(またはR)がアルキルの場合にOR6(またはOR)基、SR6(またはSR)基、COR6(またはCOR)基によって形成されるいずれのアルコキシ基、アルキルチオ基、またはアルカノイル基も、それぞれC1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルチオ基、およびC2−C4アルカノイル基である。アルコキシの例としてはメトキシ、エトキシ、プロピロキシ、ブトキシ等が挙げられ、アルキルチオの例も同じであるが、−O−を−S−によって置き換え、またアルカノイルの例としては、アセチル、プロパノイル、ブタノイル等が挙げられる。すべてのアルコキシ基、チオアルキル基、およびアルカノイル基が、上記に定義されたように置換されてもよい。一実施態様では、C1−C4アルコキシはメトキシである。
【0029】
本明細書において、用語「投与する」、「投与」等の用語は、健全な医療行為において対象に対し、治療効果を提供するようなやり方で組成物を投与する任意の方法を指す。本主題の一態様では、治療的有効量の本主題の組成物の、それを必要とする患者への経口投与を提供する。他の適切な投与経路には、非経口経路、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口腔内、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、または局所的経路を含むことができる。これに代えて、または併用で、経口的経路による投与でもよい。投与する用量は、受容者の年齢、健康、および体重、併用療法があればその種類、治療の頻度、ならびに所望される効果の性質によって異なるであろう。
【0030】
「血管新生に起因する適応症」という語句は、血管新生に起因し、異常な細胞移動を特徴とする任意の状態を意味する。このような血管新生に起因する状態には、糖尿病性失明;慢性炎症;関節炎;老人性黄斑変性症;網膜症;慢性関節リウマチ;骨関節炎;クローン病;乾癬;癌;アルツハイマー病;再狭窄;肺線維症;喘息;血管線維腫;血管新生緑内障;動静脈奇型;偽関節骨折;ループスおよびその他の結合組織障害;オスラー・ウェーバー・ランドゥ症候群;アテローム硬化性プラーク;角膜移植片の血管新生;化膿性肉芽腫;水晶体後方繊維増殖症;強皮症;肉芽形成;血管腫;トラコーマ;血友病性関節;腹腔内子宮内膜症;脂肪過多症;および血管癒着など、過剰または不要の血管新生に起因する任意の状態を意味する。
【0031】
「血管新生阻害剤」という語句は、血管新生を阻害する任意の物質を意味する。適切な血管新生阻害剤としては、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、スニチニブ(SUTENT(商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(商標))、サリドマイド(THALOMID(商標))、レナリドマイド(REVLIMID(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、およびエルロチニブ(TARCEVA(商標))が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
「抗癌剤」という語句は、癌の治療に有効な任意の物質を意味する。このような物質としては、例えばキナーゼ阻害剤、例えば1以上のチロシンキナーゼ阻害剤を挙げることができる。適切なチロシンキナーゼ阻害剤としては、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セディラニブ(cediranib)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブを挙げることができるが、これに限定されない。
【0033】
「抗炎症剤」という語句は、炎症を減少させるか鎮静する任意の物質を意味する。適切な抗炎症剤としては、例えばコルチゾール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、コルチゾンアセテート、チキソコルトールピバレート、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、プレドニソン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾン・ジプロピオネート、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、フルコルトロンカプロエート、フルオコルトロンピバレート、およびフルプレドニデンアセテートをはじめとするコルチコステロイド、例えばcox−2阻害剤、ニメスリデ、ジクロフェナク、リコフェロン、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬、フェニルアラニン−グルタミン−グリシンおよびそのD−異性体をはじめとする免疫選択的抗炎症性誘導体、ならびに、例えばハルパゴフィツム、ヒソップ、ジンジャー、ターメリック、アルニカ、柳樹皮、およびカンナビスなどのハーブが挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
「癌」という用語は、異常で歯止めのない細胞分裂、正常な組織に浸潤する能力、および身体のほかの部分に拡大する能力を特徴とする疾患群の一般名である。このような癌としては、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭頸部腫瘍、肝臓癌、睾丸癌、子宮頸癌、肉腫、血管腫、食道癌、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽喉癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、胃癌、基底細胞癌、悪性黒色種、および扁平上皮癌をはじめとする皮膚癌、口腔扁平上皮癌、大腸癌、多形膠芽腫、子宮内膜癌、および悪性神経膠腫を挙げることができる。
【0035】
「癌化学療法剤」という語句は、本明細書に記述する主題との併用療法に用いてもよい任意の公知の化学療法剤を意味し、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロランブシル、ジカルバジン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、ブスルファン、トリエチレンメラミン、チオテパ、ヘキサメチルメラミンをはじめとするアルキル化剤;メトトレキサートなどの代謝拮抗物質;フルオロウラシル;5−フルオロウラシル;フロクスリジン(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン);イドキシウリジン;シタラビン;N−ホスホノアセチル−L−アスパルテート;5−アザシチジン;アザリビン;6−アザウリジン;ピラゾフラン;3−デアザウリジン;アシビシン;チオグアニン、メルカプトプリン、アザチオプリン、ペントスタチン、エリトロヒドロキシノニルアデニンなどのプリン類似体;ビンクリスチンおよびビンブラスチンをはじめとするビンカアルカロイド;エトポシドおよびテニポシドをはじめとするエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトマイシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼをはじめとする酵素;シスプラチン、カルボプラチンをはじめとする白金配位錯体;ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン;ならびにプレドニソンおよびプレドニソロンなどのアドレノコルチコステロイドをはじめとするホルモンまたは関連物質;アミノグルテチミド;ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲステロールアセテートなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロン、エチニルエストラジオールなどのエストロゲンおよびアンドロゲン、タモキシフェンなどの抗エストロゲン、ならびにリュープロリドなどのゴナドプロピン放出ホルモン類似体が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
本明細書に説明する癌の治療方法を実施する際には、本化合物を、単一の医薬組成物の一部として少なくとも1の公知の化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤とともに投与してもよい。あるいは、本化合物を、少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤とは別に投与してもよい。ある実施態様では、本化合物および少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤が実質的に同時に投与される、つまり化合物が血中で同時に治療レベルに達する限り、同時または相次いで投与される。別の実施態様では、本化合物および少なくとも1の公知の癌化学療法剤および/または少なくとも1の抗癌剤は、化合物が血中で治療レベルに達する限り、その個別の投与計画に従って投与される。
【0037】
同様に、本明細書に説明する主題の別の実施態様は、本明細書に記述する化合物を放射線療法と組み合わせて投与することによる癌の治療方法を対象とする。この実施態様では、本化合物は放射線療法の実施と同時に投与されても、別の時間に投与されてもよい。
【0038】
「細胞移動に起因する疾患、障害、または状態」という語句は、異常な細胞移動を特徴とする任意の疾患、障害、または状態を意味する。このような疾患、障害、または状態としては、癌、炎症に起因する種々の適応症、および老人性黄斑変性症(AMD)、網膜症およびその他の血管新生に起因する適応症が挙げられ得る。
【0039】
本明細書において、用語「担体」、「賦形剤」、または「アジュバント」は、医薬組成物の原薬ではない任意の成分を指す。
【0040】
本明細書において、語句「医薬品製剤」、「医薬品の剤形」、「最終剤形」等は、治療を必要とする患者に投与される1以上の原薬と1以上の賦形剤との組み合わせ(すなわち、医薬組成物)を指し、溶液、水溶液、乳剤、懸濁液、錠剤、カプセル、貼剤、坐剤、クリーム、ゲル、ローション等の形態をとることができる。
【0041】
本明細書に記述する化合物またはその医薬的に許容できる塩を活性成分として含む医薬組成物は、通常の薬剤配合技術に従って調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)を参照されたい。
【0042】
語句「炎症に起因する適応症」は、異常な細胞移動を特徴とする任意の炎症状態を意味する。このような炎症状態として、肺線維症;虚血性心疾患;クローン病、皮膚筋炎、糖尿病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、混合結合組織病、重症筋無力症、睡眠発作病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、ヴェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性貧血、甲状腺中毒症、多発性硬化症、および強皮症などの自己免疫疾患;喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、関節硬化症、慢性腎臓病、炎症性腸疾患、および脈管炎などの慢性炎症状態;腹膜炎;巨乳頭結膜炎、ブドウ膜炎、および季節性アレルギー性結膜炎などの炎症性眼疾患;慢性前立腺炎;糸球体腎炎;過敏症;炎症性腸疾患;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植拒絶反応;チェジアック・東症候群;慢性肉芽腫性疾患;尿管炎症状態;間質性膀胱炎;潰瘍性大腸炎;全身性硬化症;皮膚筋炎;多発性筋炎;および封入体性筋炎を挙げることができる。
【0043】
本明細書において、用語「医薬的に許容できる担体」は、あらゆる種類の非毒性、不活性固体、半固体の充填液、希釈剤、封入材、助剤、または、単に塩水などの滅菌水性媒質を指す。医薬的に許容できる担体として役立つことのできる材料の例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉などの澱粉;セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテートをはじめとするその誘導体;トラガカント末;麦芽、ゼラチン、タルク;カカオ脂および坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油脂;プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;精製水;等張食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬調合物に用いるその他の非毒性の適合物質が挙げられる。
【0044】
本明細書で担体として役立つことのできる物質の限定されないいくつかの例としては、糖、澱粉、セルロースおよびその誘導体、トラガカント末、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、精製水、等張食塩水、リン酸緩衝液、カカオ脂(坐剤基剤)、乳化剤、ならびに他の医薬調合物に用いられる他の医薬的に適合する非毒性の物質が挙げられる。湿潤剤および硫酸ラウリルナトリウムなどの潤滑剤、ならびに着色剤、香料、賦形剤、成形剤、安定剤、酸化防止剤、および防腐剤も存在してよい。任意の非毒性、不活性、および有効な担体が、本明細書で意図される組成物の製剤化に用いられてよい。この点で、医薬的に許容できる適切な担体、賦形剤、および希釈剤は、The Merck Index, Thirteenth Edition, Budavari et al., Eds., Merck & Co., Inc., Rahway, N.J. (2001); the CTFA (Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association) International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Tenth Edition (2004); およびthe “Inactive Ingredient Guide”, U.S. Food and Drug Administration (FDA) Center for Drug Evaluation and Research (CEDR) Office of Managementに記載されたものをはじめとしてこの分野の当業者に周知のものであり、そのすべての内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。本組成物に有用な医薬的に許容できる賦形剤、担体、および希釈剤の例としては、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびDMSOが挙げられる。
【0045】
この一連の追加の不活性成分、ならびに有効な製剤および投与手順は当分野で周知であり、Goodman and Gillman’s: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Gilman et al. Eds. Pergamon Press (1990)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)などの標準的な教科書に記載されており、その2冊とも、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
担体は、合計で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%から約99.99999重量%までを構成してよい。
【0047】
本明細書に記述される医薬組成物は、経口組成物の形態をとることができる。本明細書で検討される経口組成物は、錠剤、カプセル、ソフトゲル、ハードゲル、溶液、懸濁液、粉末、分散性顆粒、カシェ剤、その組み合わせ、または当技術分野で通常は公知と考えられる他の任意の経口製剤の形態をとることができる。
【0048】
固形担体は、希釈剤、香料、溶解補助剤、潤滑剤、沈殿防止剤、結合剤、または錠剤崩壊剤の役割も果たす1以上の物質でもよく、また封入材料でもよい。散剤では、担体は活性化合物との混合剤に入れた微粉固体であってもよい。錠剤では、活性化合物は必要な結着性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の大きさと形状に成形されてもよい。適切な固形担体の限定されない例としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、他のセルロース誘導体、低融点ワックス、カカオ脂等が挙げられる。
【0049】
本明細書において、語句「医薬的に許容できる塩」は、本未変性の化合物(複数可)と同じ活性を保有し、生物学的にもその他の点でも有害ではない特定成分(複数可)の塩を指す。塩は、例えば有機酸または無機酸で作ることができる。適切な酸の限定されない例としては、酢酸、アセチルサリチル酸、アジピン酸、アルギニン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、ホウ酸、酪酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、炭酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシルスルホン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、グリセリン酸、グリセロ燐酸、グリシン、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタール酸、グリコール酸、ヘミ硫酸、へプタン酸、ヘキサン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフチレンスルホン酸、ナフチル酸、ニコチン酸、亜硝酸、シュウ酸、ペラルゴン酸、リン酸、プロピオン酸、サッカリン、サリチル酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、チオグリコール酸、チオ硫酸、トシル酸、ウンデシレン酸、および天然および合成のアミノ酸が挙げられる。
【0050】
有機塩基を用いる場合は、好ましくは揮発性の低い塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−n−プロパノール、ジメチルアミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパンジオール、およびトリイソプロパノールアミンなどの低分子量アルカノールアミンを採用する。エタノールアミンがこの点で適切である。挙げることのできる別の低揮発性塩基としては、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ドデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、ジメチルステアリルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペラジン、4−メチルシクロヘキシルアミン、およびN−ヒドロキシエチルモルホリンがある。
【0051】
また、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、または水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムの塩も用いることができ、同じくグアニジンおよびその誘導体、特にそのアルキル化生成物も用いることができる。しかし、造塩剤として、例えば、メチルアミン、エチルアミン、またはトリエチルアミンなどの低分子量アルキルアミンを採用することもできる。本明細書の主題に従って成分に採用するべき適切な塩としては無機カチオンを有するものもあり、例えばアルカリ金属塩、特にナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩またはカルシウム塩など、ならびに二価または四価のカチオン、例えば亜鉛塩、アルミニウム塩、またはジルコニウム塩が挙げられる。これ以外にも考えられるのは、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基を有する塩;メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩である。また、窒素含有塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物をはじめとするハロゲン化低級アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸化物をはじめとする硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物をはじめとする長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよびフェネチルの臭化物をはじめとする喘息用ハロゲン化物、およびその他の作用物質を用いて四級化することも可能である。これによって、水または油脂に溶解性または分散性の生成物が得られる。
【0052】
本明細書において、用語「POSH」、「POSHタンパク質」、または「POSHポリペプチド」は互いに互換可能に用いられ、アミノ酸配列にRINGドメインおよび少なくとも1のSH3ドメインを含むポリペプチドを指す。場合によって、POSHタンパク質は3または4のSH3ドメインを有することがある。
用語「POSH介在性ユビキチン化」または「POSHタンパク質介在性ユビキチン化」は互いに互換可能に用いられ、POSHタンパク質の関与を必要とするあらゆるユビキチン化プロセスを指す。
【0053】
POSHは、POSHポリペプチドまたはPOSH−APポリペプチドのレベルおよび/または活性に影響を及ぼすことによって操作されると思われる、広範囲にわたる重要な細胞機能と交わり、調節する。POSH、特にヒトのPOSHの多くの特徴が、PCT特許公開公報WO03/095971A2およびWO03/078601A2に記載されており、その教示する内容の全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0054】
上記の公報に記載されている通り、ヒトの天然のPOSHはRINGドメインおよび4つのSH3ドメインを含む大型ポリペプチドである。POSHはユビキチンリガーゼ(「E3」酵素とも称される)であり、RINGドメインは、例えばPOSHポリペプチド自体のユビキチン化を仲介する。POSHは、多数のタンパク質と相互作用し、多くの異なる生物プロセスに参加する。本開示に示される通り、POSHは細胞内の異なるいくつかのタンパク質と結合する。POSHはトランスゴルジ網に位置することが公知のタンパク質と共局在化しており、分泌系のタンパク質輸送にPOSHが参加していることがうかがわれる。用語「分泌系」は、膜コンパートメントならびに結合するタンパク質およびその他の分子、該分子は翻訳箇所から分泌系自体のコンパートメントである液胞リソソームまたはエンドソーム内の場所へ、または形質膜もしくは細胞外の場所へのタンパク質の移動に関与する、を指すものと理解されなければならない。よく言及される分泌系のコンパートメントとしては、内質網状組織、ゴルジ体、ならびにシスゴルジ網およびトランスゴルジ網が挙げられる。
【0055】
加えて、POSHの相互作用因子Rac 1は様々な癌で上昇し、細胞移動及び細胞浸潤に関与する(Bosco, Mulloy et al. 2009)。Racは、慢性骨髄性白血病(CML)などBCR−ABLチロシンキナーゼ誘導性の骨髄増殖性疾患の治療標的である(Thomas, Cancelas et al. 2007; Thomas, Cancelas et al. 2008)。CML患者は、構成的に活性化したチロシンキナーゼであるp210−BCR−ABLを標的とするイマチニブ(Gleevec)などのチロシンキナーゼ阻害剤で治療される。POSHとRac 1との相互作用は、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブなどであるがこれに限定されないチロシンキナーゼ阻害剤とPOSH阻害剤との併用療法が、長期の血液学的寛解を有意に改善する可能性を高めるものである。また、VEGF経路を標的とする血管新生阻害剤が様々なモデルで抗腫瘍作用を示すものの、それと同時に、主として浸潤性ならびにリンパ腺転移および遠隔転移を増大させることによって、腫瘍の適応および悪性度の進行を招くことが最近になって明らかにされている(Paez−Ribes, Allen et al. 2009)。さらに、VEGFR/PDGFRキナーゼ阻害剤であるスニチニブ/SU11248は、各種の転移分析において、短期療法を受けるマウスの転移性腫瘍の増殖を加速させ、全生存率を低下させることがある(Ebos, Lee et al. 2009)。総合すると、POSHとRac1との物理的および機能的な相互作用、およびPOSH阻害剤が細胞の移動および浸潤に及ぼす阻害効果は、POSH阻害剤と、イマチニブ、ダサチニブ、およびその他のチロシンキナーゼ阻害剤およびスニチニブ、抗VEGFR遮断抗体などのVEGFR/PDGFR経路を標的とする血管新生阻害剤との併用療法が、様々な種類の癌の治療による臨床転帰を改善する可能性があることを示している。
【0056】
用語「ユビキチン化阻害剤」、「POSH阻害剤」、または「POSHタンパク質阻害剤」は互換可能に用いられ、参照により本明細書に完全に開示されているかのように全体が本明細書に組み込まれるPCT/US02/36366 (WO03/095972)に定義されたPOSHタンパク質介在性ユビキチン化をはじめとするPOSH活性を阻害する本明細書の式Iのピリミジン誘導体を指す。
【0057】
作用物質は、好ましくは治療的有効量で投与される。本明細書において、用語「安全かつ有効な量」は、本明細書に説明するやり方で用いた場合の合理的なリスク・ベネフィット比に釣り合い、不当な有害副作用(毒性、刺激、またはアレルギー性反応など)なしに所望の治療反応を生じさせるのに十分な、ある成分の量を指す。本明細書で用いられる語句「治療的有効量」は、所望の治療反応を生じさせるために有効な、本明細書に記載の活性物質の量を指す。実際の投与量、ならびに投与率および時間的投与経過は、治療する状態の性質および重症度によって異なるであろう。治療の処方、例えば投与量、タイミング等に関する決定は、一般の医師または専門家の責任の範囲内であり、通常は治療する障害、個々の患者の状態、投与部位、投与方法、およびその他の医師に公知の要因を考慮に入れる。技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見ることができる。
【0058】
本明細書において、用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に哺乳類の対象、例えばヒトを指す。
本明細書において、疾患、障害、もしくは状態の「治療」またはそれを「治療すること」という用語は、その少なくとも1つの症状の緩和、その重症度の低下、またはその進行の遅延、予防、もしくは阻害を包含する。治療は、疾患、障害、もしくは状態が完全に治癒することを意味する必要はない。有効な治療であるためには、本明細書の有用な組成物は、疾患、障害、もしくは状態の重症度を低下させ、これらに伴う症状の重症度を低下させ、患者もしくは対象の生活の質を向上させ、または疾患、障害、もしくは状態の発症を遅延し、予防し、もしくは阻害するだけでよい。
【0059】
本明細書に記載されるいずれの濃度範囲、パーセンテージ範囲、または比率の範囲も、別の指示がない限り、当該範囲のあらゆる整数およびその端数、例えば整数の十分の一および百分の一などの濃度、パーセンテージ、または比率を含むと理解されなければならない。
【0060】
本明細書に列挙される高分子サブユニット、大きさまたは厚さなどの物理的特徴に関わるいかなる数値範囲も、別の指示がない限り、記載された範囲内のあらゆる整数を含むものと理解されなければならない。
【0061】
本明細書で上記および他の箇所に使用される用語「ある(a)」および「ある(an)」は、列挙された成分の「1以上」を指すと理解されなければならない。当業者であれば、単数の使用は、特に別の記載がない限り、複数をも含むことが明らかであろう。したがって、用語「ある(a)」、「ある(an)」、および「少なくとも1つ」は、本出願において互換可能に用いられる。
【0062】
本出願の全体を通じて、様々な実施態様の記述は「含む(comprising)」という言い回しを用いるが、いくつかの特定の場合には、これに代えて「基本的に〜からなる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という言い回しを用いて実施態様を記述することが可能であることは、当業者には理解されるであろう。
【0063】
本教示をいっそうよく理解し、該教示の範囲を全く制限しないために、別の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる量、パーセンテージ、または割合を表すすべての数、およびその他の数値は、どの場合にも用語「約」で修飾されたものと理解されなければならない。したがって、逆の指示がない限り、以下の明細書および添付された特許請求の範囲に記載される数値的パラメーターは、求めようとする所望の特性によって変動しうる近似値である。最低限でも、各々の数値的パラメーターは、少なくとも、報告される有意数(signification digits)に照らし、通常の丸めの手法を適用して解釈するべきである。
【0064】
本明細書に用いられる他の用語は、当分野で周知のその意味によって定義しなければならない。
【0065】
ある実施態様では、本明細書に説明する主題は、対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、式Iの化合物、または式Iの化合物またはエナンチオマーまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物の、治療的有効量を対象に投与することを含む:
【化1】
ここで、
R1はアルキル、アリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはHまたは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8より選択される1から3の基を表し、ただし、R3aおよびR3bはともにHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;またはR4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員の複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはR7およびR8はその結合する窒素原子と共に5〜6飽和複素環を形成し、これはS、N、および/またはOより選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子が低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換される;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そして
R10はアリールまたはヘテロアリールであり;
ここで、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールはそれぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6より選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8が上記のように定義される。
【0066】
追加の実施態様では、前記少なくとも一つの本明細書に記載の化合物、ならびに抗癌剤;血管新生阻害剤;抗炎症剤;および化学療法剤からなる群より選択される1以上の員を含む医薬組成物が提供される。
【0067】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態の治療方法を対象とし、ここで、該追加のN原子は、ピロリジノ、ピぺリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノからなる群より選択される員によって任意に置換される。
【0068】
さらに追加の実施態様では、本明細書に説明する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、R1は−NR9COR10であり;R2は任意に置換されるヘテロアリールであり;R3、R3a、およびR3bはHまたは1から3のアルキル基であり;ただし、R3a、およびR3bは共にHであることはできず;R4はH、アルキル、カルボシクリル、アリール、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;またはR4、その結合する窒素原子、およびR5は5〜6員の複素環を形成し;R6はH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり;R7およびR8はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、またはR7およびR8はその結合する窒素原子と共に、N、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和5〜6複素環を形成し、ここで、前記追加のN原子は任意に低級アルキルで置換され、任意にフェニル、ハロゲン、またはヒドロキシで置換され;R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そしてR10はアリールまたはヘテロアリールであり;ここで、該アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立してハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rから選択される1以上の基で任意に置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、Sおよび/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含む飽和複素環を形成し、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルで任意に置換される。
【0069】
ある実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は医薬的に許容できる担体を任意に含む。
【0070】
別の実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該追加のN原子はピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノから選択される員で任意に置換される。
【0071】
別の実施態様では、現在記述される主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
(i)ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、またはアラルキル基から選択される1〜20の炭素原子の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビルであり;
アルキルは、1から10の炭素原子の直鎖または分岐アルキル(C1−C10アルキル)であり、任意にO、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって分断され、および/またはハロゲン、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基で置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、Sおよび/またはOから選択される1又は2の追加のヘテロ原子を任意に含む5〜7員の複素環を形成し、該追加のN原子はヒドロカルビルによって任意に置換され;
カルボシクリルは、飽和したC5−C6のシクロアルキル、またはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルから選択される部分的に不飽和のC5−C6のシクロアルケニル基であり、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基により任意に置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、もしくはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に、N、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子はヒドロカルビルにより任意に置換され;
アリールは、炭素原子6〜14個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式の芳香族炭素環式基であり、フェニル、ビフェニル、ナフチル、またはアントラセニルより選択され;
(ii)ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の、任意に置換された環員3〜12の単環式、二環式、または三環式の複素環であり、このうち1〜3個の原子はO、S、および/またはNより選択されるヘテロ原子であり;
(iii)ヘテロアリールは、置換された、または置換されない単環式または多環式の複素芳香環であり、O、Sおよび/またはNより選択される1〜3個のヘテロ原子を含む。
【0072】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族の、炭素原子1〜10個のヒドロカルビル基であり;および/または
アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、またはtert−ブチルより選択される炭素原子1〜4個のアルキルであり;および/または
アリールは、置換された、または置換されない単環式、二環式、または三環式、炭素原子6〜10個の芳香族炭素環式基であり;および/または
ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された環員5〜10の単環式、二環式、または三環式複素環であり、このうち1〜3個の原子はO、Sおよび/またはNより選択されるヘテロ原子であり;および/または
ヘテロアリールは、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、およびベンゾジアゼピニルからなる群より選択される。
【0073】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子1〜6個であり;および/または
アルキルはメチルであり;および/または
ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、環員5〜6であり、そのうち1〜3個の原子はO、S、および/またはNより選択されるヘテロ原子であり;および/または
ヘテロアリールはチエニルである。
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで
ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和または芳香族の、炭素原子2〜3個のヒドロカルビル基であり;および/または
ヘテロシクリルは、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピぺラジニル、モルホリノ、および1,3−ジオキサニルからなる群より選択される。
【0074】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Iの化合物は式IaまたはIbの化合物である:
【化2】
【化3】
ここで
XはO、S、またはNHであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または1〜4個の炭素原子の1〜3のアルキルであり;ただし、R3aおよびR3bが共にHであることはできず;
R4はH、または1〜4個の炭素原子のアルキルであり;
R5はH、または任意に置換された1〜6個の炭素原子のアルキルであり;
そしてR11〜R19は、それぞれ独立してH、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択され、ここで、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和複素環式を形成し、これはN、S、および/またはOより選択される追加のヘテロ原子1〜2個を任意に含み、ここで、該追加のN原子は低級アルキルにより任意に置換され、これはフェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換され;そして
式Ibの点線は、任意の二重結合を表す。
【0075】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Iaの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH、または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bが共にHであることはできず、R4はHであり、R5はHまたはメチルであり、そしてR11〜R16はHである。
【0076】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで式Iaの化合物は、本明細書で以下のように同定される化合物より選択される:
化合物1:
【0077】
【化4】
化合物2:
【化5】
化合物3:
【化6】
;および
化合物4:
【化7】
【0078】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Ibの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH、または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bがともにHであることはできず、R11〜R19はHである。
【0079】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、式Ibの化合物は以下のように同定される化合物より選択される:
化合物5:
【化8】
化合物6:
【化9】
;および
化合物7:
【化10】
【0080】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該疾患、障害、または状態は癌である。
【0081】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、肛門癌;星状細胞腫;白血病;リンパ腫;頭頸部癌;肝臓癌;睾丸癌;頚部癌;肉腫;血管腫;食道癌;眼癌;喉頭癌;口癌;中皮腫;骨髄腫;口腔癌;直腸癌;咽喉癌;膀胱癌;乳癌;子宮癌;卵巣癌;前立腺癌;肺癌;結腸癌;膵臓癌;腎細胞癌;胃癌;皮膚癌;基底細胞癌;メラノーマ;扁平上皮癌;口腔扁平上皮癌;大腸癌;多形膠芽腫;子宮内膜癌;および悪性膠腫からなる群より選択される癌を治療する方法を対象とする。
【0082】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は少なくとも1つの抗癌剤の有効量をさらに含む。
【0083】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの抗癌剤は、イマチニブ、ダサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウリチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブからなる群より選択される。
【0084】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの抗癌剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0085】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの抗癌剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0086】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、医薬組成物は少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量をさらに含む。
【0087】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの癌化学療法剤は、メクロレタミン;シクロホスファミド;イソスファミド;メルファラン;クロランブシル;ジカルバジン;ストレプトゾシン;カルムスチン;ロムスチン;セムスチン;クロロゾトシン;ブスルファン;トリエチレンメラミン;チオテパ;ヘキサメチルメラミン;代謝拮抗剤;メトトレキサート;フルオロウラシル;5−フルオロウラシル;フロクスウリジン;(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン);イドキシウリジン;シタラビン;N−ホスホノアセチル−L−アスパラテート;5−アザシチジン;アザリビン;6−アザウリジン;ピラゾフラン;3−デアザウリジン;アシビシン;プリン類似体;チオグアニン;メルカプトプリン;アザチオプリン;ペントスタチン;エリスロヒドロキシノニルアデニン;ビンカアルカロイド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;エピポドフィロトキシン;エトポシド;テニポシド;抗生物質;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;ドキソルビシン;硫酸ブレオマイシン;プリカマイシン;ミトマイシン;酵素;L−アスパラギナーゼ;白金配位錯体;シスプラチン;カルボプラチン;ヒドロキシウレア;プロカルバジン;ミトタン;ホルモン;アドレノコルチコステロイド;プレドニソン;プレドニソロン;アミノグルテチミド;プロゲスチン;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン;酢酸メドロキシプロゲステロン;メゲストロールアセテート;エストロゲン;アンドロゲン;ジエチルスチルベストロール;フルオキシメステロン;エチニルエストラジオール;抗エストロゲン;タモキシフェン;ゴナドトロピン放出ホルモン類似体;およびロイプロリドからなる群より選択される。
【0088】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0089】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、該少なくとも1つの癌化学療法剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0090】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、放射線治療を対象に実施することをさらに含む。
【0091】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、ここで、放射線治療は医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に実施される。
【0092】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで、該細胞移動疾患、障害、または状態は炎症状態である。
【0093】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は、肺線維症;虚血性心疾患;クローン病;皮膚筋炎;糖尿病;ギラン・バレー症候群;橋本病;特発性血小板減少性紫斑病;混合結合組織病;重症性筋無力症;睡眠発作病;尋常性天疱瘡;悪性貧血;多発性筋炎;原発性胆汁性肝硬変;シェーグレン症候群;側頭動脈炎;潰瘍性大腸炎;脈管炎;ヴェゲナー肉芽腫症;全身性エリテマトーデス;ループス腎炎;グッドパスチャー症候群;溶血性貧血;甲状腺中毒症;強皮症;喘息;慢性関節リウマチ;変形性関節症;敗血症;関節硬化症;慢性腎疾患;炎症性腸疾患;脈管炎;腹膜炎;巨乳頭結膜炎;ブドウ膜炎;季節性アレルギー性結膜炎;慢性前立腺炎;糸球体腎炎;過敏症;炎症性腸疾患;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植拒絶反応;チェジアック・東症候群;慢性肉芽腫性疾患;尿管炎症状態;間質性膀胱炎;潰瘍性大腸炎;全身性硬化症;皮膚筋炎;多発性筋炎;および封入体性筋炎からなる群より選択される炎症状態を治療する方法を対象とする。
【0094】
さらに別の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、少なくとも1つの抗炎症剤をさらに含む。
【0095】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで該抗炎症剤は、コルチコステロイド;コルチゾール;アルドステロン;ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンアセテート;コルチゾンアセテート;チキソコルトールピバレート;プレドニソロン;メチルプレドニソロン;プレドニソン;トリアムシノロンアセトニド;トリアムシノロンアルコール;モメタソン;アムシノニド;ブデソニド;デソニド;フルシノニド;フルオシノロンアセトニド;ハルシノニド;ベタメタゾン;リン酸ベタメタゾンナトリウム;デキサメタゾン;リン酸デキサメタゾンナトリウム;フルコルトロン;ヒドロコルチゾン−17−ブチレート;ヒドロコルチゾン−17−バレレート;アクロメタゾンジプロピオナート:ベタメタゾンバレレート;ベタメタゾンジプロピオナート;プレドニカルバート;クロベタゾン−17−ブチレート;クロベタゾール−17−プロピオナート;フルコルトロンカプロエート;フルコルトロンピバレート;フルプレドニデンアセテート;非ステロイド系抗炎症剤;cox−2阻害剤;ニメスリド;ジクロフェナック;リコフェロン;アスピリン;イブプロフェン;ナプロキセン;免疫選択的抗炎症性誘導体;フェニルアラニン−グルタミン−グリシン;ハーブ;ハルパゴフィツム;ヒソップ;ジンジャー;ターメリック;アルニカ・モンタナ;柳樹皮;およびカンナビスからなる群より選択される。
【0096】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、これは、少なくとも1つの抗炎症剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0097】
さらに追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は炎症状態を治療する方法を対象とし、ここで該少なくとも1つの抗炎症剤は、医薬組成物の投与と同時に、その前に、または後に投与される。
【0098】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで該細胞移動疾患、障害、または状態は、過剰な血管新生状態である。
【0099】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は、糖尿病性失明;慢性炎症;関節炎;老人性黄斑変性症;網膜症;慢性関節リウマチ;変形性関節症;クローン病;乾癬;癌;アルツハイマー病;再狭窄;肺線維症;喘息;血管線維腫;血管新生緑内障;動静脈奇形;偽関節骨折;ループスおよび結合組織障害;オスラー・ウェバー症候群;アテローム硬化性プラーク;角膜移植血管新生;化膿性肉芽腫;水晶体後方線維増殖症;強皮症;肉芽形成;血管腫;トラコーマ;血友病性関節症;腹腔内子宮内膜症;脂肪過多症;および血管癒着からなる群より選択される過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とする。
【0100】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、少なくとも1つの血管新生阻害剤をさらに含む。
【0101】
ある実施態様では、本明細書で記述する主題は過剰な血管新生状態を治療する方法を対象とし、ここで該少なくとも1つの血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドミド、パニツムマブ、セツキシマブ、およびエルロチニブからなる群より選択される。
【0102】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療することを対象とし、これは、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0103】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療することを対象とし、これは、有効量の抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤を、対象に投与することをさらに含む。
【0104】
追加の実施態様では、本明細書に記述する主題は癌を治療する方法を対象とし、これは、有効量の抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤を、対象に投与することを含む。該抗癌剤および血管新生阻害剤、ならびに任意で抗炎症剤は、本明細書に記述する化合物と共に単一の医薬組成物として投与してもよく、または本明細書の化合物とは別に投与してもよい。このような個別の投与は、それぞれの薬剤または阻害剤について、本明細書の化合物の投与と同時に、またはその後で実施することができる。
【0105】
ある実施態様では、本明細書に記述する主題は細胞移動疾患、障害、または状態を治療する方法を対象とし、ここで医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の有効量をさらに含む。
【0106】
別の実施態様では、本明細書に記述する主題は、上記式Iの化合物の乳癌、結腸癌、前立腺癌、および膵臓癌への使用に関する。
【0107】
本明細書に記述する化合物は、不必要な実験をすることなく当業者に周知の方法で容易に作製することができる。
【0108】
本明細書に記述する主題に従って使用するための医薬組成物は、生理学的に許容できる1以上の担体または賦形剤を用いて製剤化してよい。したがって、該化合物およびその生理学的に許容できる塩および溶媒和物は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PA.に記述されたような従来の方法で製剤化し、全身的、局所的、または局在的投与をはじめとする多様な投与経路によって投与してよい。
【0109】
全身的投与には、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下をはじめとする注射が好ましい。注射の場合、本明細書に記述する主題の化合物は、例えばハンクス液またはリンゲル液をはじめとする生理学的に適合する緩衝液などの溶液で製剤化することができる。さらに、本化合物は、固形に製剤化し、使用直前に再び溶解させるか懸濁させてもよい。また、凍結乾燥した形態も含まれる。
【0110】
経口投与の場合、本医薬組成物は、結合剤などの医薬的に許容できる賦形剤;充填剤(例えばラクトース、微晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)と共に従来の方法で、例えば錠剤またはカプセルなどの形にしてもよい。錠剤は、当分野で周知の方法でコーティングしてよい。経口投与する液体製剤は、例えば溶液、シロップ、または懸濁液などの形にしてもよく、または乾燥品にして、使用前に水またはその他の適切なビヒクルで調製してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素添加食用油);乳化剤(例えばレシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えばationd oil、油状エステル、エチルアルコール、または分別植物油);および保存料(例えばメチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸、またはソルビン酸)などの医薬的に許容できる添加剤を用いて、従来の方法で調製してよい。また、製剤は、緩衝塩、香料、着色料、および甘味料を含んでもよい。
【0111】
経口投与のための製剤は、活性化合物の放出が制御されるように適切に製剤化してよい。口腔投与の場合、本組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形にしてよい。吸入による投与では、本明細書に記述する主題に従って用いるための本化合物は、加圧パックからエアゾール・スプレー式に、または、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切な気体の適切な噴霧体を用いて噴霧器で投与するとうまく送達される。加圧されたエアゾールの場合は、弁をつけて計量することにより投与量を決定してもよい。吸入器または散布器に用いる例えばゼラチンなどのカプセルおよび薬包には、本化合物とラクトースまたはスターチなどの適切な粉末ベースとの粉末混合を入れて製剤化してもよい。
【0112】
本化合物は、注射による非経口投与、例えばボーラス注射または持続点滴用に製剤化してもよい。注射のための製剤は、例えばアンプルまたは多回投与容器などの単位投与量の形にして保存料を添加して提示してもよい。本化合物は、油性または水性のビヒクルに入れて懸濁液、溶液、または乳剤などの形にしてもよく、また懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化物質を含んでもよい。あるいは、活性成分を粉末状にして、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌精製水で調製してもよい。
【0113】
本化合物は、例えばココア脂またはその他のグリセリドをはじめとする通常の坐薬基剤を含む坐薬または浣腸剤など、直腸用組成物に製剤化してもよい。
【0114】
これまでに述べた剤形に加えて、本化合物はまたデポー製剤に製剤化してもよい。このような長期作用型の製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内に)または筋肉内注射により投与してよい。したがって、例えば本化合物は、適切な高分子材料または疎水性材料(例えば、許容できる油脂に入れた乳剤)またはイオン交換樹脂を用いるか、またはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩の形で製剤化してもよい。
【0115】
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的な手段で行ってもよい。経粘膜的または経皮的投与の場合、透過する障壁に適した浸透剤が製剤化に用いられる。このような浸透剤は一般に当分野で公知のものであり、例えば経粘膜的投与の場合では、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体などが挙げられる。さらに、浸透を促進するために洗剤を用いてもよい。経粘膜的投与は、鼻内噴霧するかまたは坐薬を使って行ってもよい。局所投与の場合は、本明細書に記述する化合物は当分野で一般に公知の通り、軟膏、蝋膏、ゲル、またはクリームに製剤化される。洗液を局所的に用いて傷害または炎症を治療すると、治癒が加速し得る。
本組成物は、所望であれば、活性成分を含む単位剤形を1以上含み得るパックまたはディスペンサー装置で提供してもよい。パックは、例えばブリスターパックのように、金属箔またはプラスチック箔を含んでよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与指示書が添付されてもよい。
【0116】
現在本明細書に一般的に記述する主題は、以下の例を参照すればさらに容易に理解されるであろう。これは、単に本主題の特定の態様および実施形態を例示する目的で掲載されるだけであり、本主題を制限することを意図するものではない
【実施例】
【0117】
実施例1 化合物1の合成(PRT7000467)
【化11】
グリシン(7.0 g, 93 mmol)および炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)を水(100 mL)に溶かした溶液に、チオフェン−2−カルボニルクロリド(7.3 g, 50 mmol)を撹拌しながら30分間にわたって添加した。結果として得られた溶液を1時間撹拌し、ジエチルエーテル(2 x 30 mL)で洗浄し、濃塩酸で酸性にした。氷浴で1時間冷却した後、沈殿物をフィルターで分離し、氷水で洗浄し、空気中で乾燥して以下に示す酸を7.0 g (76%)得た。
【化12】
前の工程で得た酸の懸濁液(7.0 g, 38 mmol)、酢酸ナトリウム(3.1 g, 38 mmol)、および無水酢酸(11.6 g, 114 mmol)を、撹拌しながら水蒸気浴で1時間加熱した。混合物は反応している間にオレンジ色になり、凝固した。冷却した固体を水(50 mL)と共に15分間撹拌し、生じた沈殿物をフィルターで分離し、氷水および冷たく冷やしたエタノールで洗浄し、空気中で乾燥して以下に示すアズラクトン6.2 g(63%)をオレンジ色固体の形で得た。
【化13】
前の工程から得たアズラクトン(2.8 g, 11 mmol)および4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8 g, 10 mmol)の氷酢酸(40 mL)との懸濁液を、還流下で1時間撹拌した。固体は溶解し、次に黄色の沈殿物となった。冷却した後、後者をフィルターで分離し、氷酢酸、エタノール、そしてジエチルエーテルで次々に洗浄し、空気中で乾燥させ、化合物1のアミド3.7 g(69%)を淡黄色の粉末状で得た。
【0118】
実施例2 化合物3(PRT7081582)の合成
【化14】
グリシン溶液(7.0 g, 93 mmol)および炭酸カリウム(13.8 g, 100 mmol)を水(100 mL)に入れた水溶液に、チオフェン−2−カルボニルクロリド(7.3 g, 50 mmol)を撹拌しながら30分間添加した。生じた水溶液を1時間撹拌し、ジエチルエーテル(2 x 30 mL)で洗浄し、濃塩酸で酸性にした。氷浴で1時間冷却した後、沈殿物をフィルターで分離し、氷水で洗浄し、空気中で乾燥させて以下に示す酸を7.0 g (76%) 得た。
【化15】
前の工程で得た酸(7.0 g, 38 mmol)、酢酸ナトリウム(3.1 g, 38 mmol)、および無水酢酸(11.6 g, 114 mmol)の懸濁液を、撹拌しながら1時間水蒸気浴で加熱した。混合物は反応の間にオレンジ色になり、凝固した。冷却した固体を水(50 mL)と共に15分間撹拌し、生じた沈殿物をフィルターで分離し、氷水および冷たく冷やしたエタノールで洗浄し、空気中で乾燥させて以下に示すアズラクトンを6.2 g(63%)オレンジ色の固体として得た。
【化16】
前の工程で得たアズラクトン(2.8 g, 11 mmol)および4−アミノ−N−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(2.8 g, 10 mmol)の氷酢酸中懸濁液(氷酢酸40 mL)を、還流下で1時間撹拌した。固体は溶解し、次に黄色の沈殿物が生じた。冷却後、後者をフィルターで分離し、氷酢酸、エタノール、およびジエチルエーテルで次々と洗浄し、空気中で乾燥して化合物3のアミド3.7 g(69%)を淡黄色の粉末状で得た。
【0119】
実施例3 POSH阻害剤が細胞移動および軟寒天コロニー形成を阻害する
FBSを10%補足したRPMI培地で培養したA375メラノーマ細胞(CRL−1619, American Type Culture Collection (“ATCC”), Manassas VA, USA)を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。24時間の飢餓状態の後、無FBS培地の細胞5x104を、溶媒(DMSO/PEG400)または様々な濃度の化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、または化合物3(PRT7081582)とともに、24ウェルのTranswell装置 (CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、孔径5 μm)の上方室に配置した。FBSと化合物とを含む培地を下方室に追加した。24時間後、上方室のメラノーマ細胞を綿棒で除去した。膜の下方側に移動した細胞をCalcein−AM(Sigma)で着色し、蛍光顕微鏡で撮像した。ImageJソフトウェアにより移動細胞数を定量し、Prismソフトウェアを用いてIC50値を算出した。
化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、または化合物3(PRT7081582)は、二次元に増殖した細胞に対しては毒性がなかった。A375細胞をRPMIおよび10%FBSで培養した。該細胞を様々な濃度の化合物1(PRT7000467)および化合物2(PRT7041128)で処理し、処理の72時間後にWST−1試薬(Roche)を用いてその生死を判別した(図1B)。
化合物1(PRT7000467)は、A375メラノーマ細胞およびMDA−MB231乳癌細胞の軟寒天コロニー形成を阻害する。分析は、Cell Biolabs, Inc. (San−Diego, CA)のCYTOSELECT(商標)96−Well In Vitro Tumor Sensitivity Assayキットを用いて実施した。細胞は、指示濃度の化合物1(PRT7000467)の存在下で、RPMIおよび10%のFBS培地を用いて14日間培養した。軟寒天上のコロニー形成は、寒天を可溶化した後にMTT試薬を用いて定量化した(材料は全てキットに入っている)。IC50値は、Prismソフトウェアを用いて算出した。Transwell分析でのA375メラノーマ細胞の移動は、POSH阻害剤、化合物1(PRT7000467)、化合物2(PRT7041128)、および化合物3(PRT7081582)によって阻害され、移動分析でのIC50はそれぞれ5.7 μM、9.2μM、および1.409μMであった(図1Aおよび1E)。これらの化合物は細胞に対して毒性ではなく、そのLD50は150μMより高いのであるから(図1B)、細胞移動に対するこの効果は毒性に起因するものではない。化合物1(PRT7000467)および化合物3(PRT7081582)は、A375メラノーマ細胞の軟寒天コロニー形成を阻害する(それぞれ、図1Cおよび1F)。また、化合物1はMDA−MB231乳癌細胞のコロニー形成を阻害することが分かる(図1D)。軟寒天コロニー形成分析におけるこの化合物のLD50は、MDA−MB231に関しては13.08μMであり、A375細胞に関しては2.8〜5.6μMであった。
この実験結果は、化合物1および化合物3が、その毒性濃度より十分低い濃度で、A375細胞に対する抗移動活性を有することを示すものである。さらに、化合物2もまたその毒性濃度より十分低い濃度で、A375細胞に対する抗移動活性を有する。この一連の結果は、化合物1、2、および3が、例えば癌、血管新生の兆候、および炎症状態などの細胞移動を伴う適応症に、有意な細胞毒性を生じさせることなく用いることができるものであることを示している。
【0120】
実施例4 化合物1が様々な癌細胞系の移動を阻害する
10%FBSを添加したRPMI培地で培養したMDA−MB−231(HTB−26, ATCC, Manassas, VA, USA)およびMDA−MB−468 (HTB−132, ATCC, Manassas, VA, USA)乳癌細胞系並びにDU 145 (HTB−81, ATCC, Manassas, VA, USA)前立腺癌細胞系を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。24時間後、無FBS培地の細胞5x104を24ウェルのTranswell装置(CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、孔径8 μm)の上方室に配置した。FBSおよび化合物1を含む溶媒を、下方室に追加した。24時間後、上方室の細胞を綿棒で除去した。膜の下側に移動した細胞を、Calcein−AM (Sigma)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。結果は、細胞移動に対するPOSH阻害剤の阻害作用がA375細胞に限定されるものではないことを示している。また化合物1(PRT7000467)も、MDA−MB−231、MDA−MB−468の各乳癌細胞およびDU145前立腺癌細胞系をはじめとする他の癌細胞の移動を阻害する(図2)。
化合物1の阻害作用を、様々な細胞系で再検討し、Transwell分析で測定した。
A375 (メラノーマ)(CRL−1619, ATCC, Manassas, VA, USA)、A431 (メラノーマ)(CRL−2592, ATCC, Manassas, VA, USA)、A2058 (メラノーマ)(CRL−11147, ATCC, Manassas, VA, USA)、MDA−MB−231 (乳癌)(HTB−26, ATCC, Manassas, VA, USA)、LS175T(結腸癌)(ATCC, Manassas, VA, USA)、HT29 (結腸癌)(HTB−38, ATCC, Manassas, VA, USA)、PC3 (前立腺癌)(CRL−1435, ATCC, Manassas, VA, USA)、Panc03.27 (ATCC, Manassas, VA, USA)、4T1 (乳癌−マウス)(CRL−2539,ATCC, Manassas, VA, USA)、D122 (肺癌−マウス)(the Weizmann Institute of Science)、D122−luc (肺癌−マウス)(the Weizmann Institute of Science)、およびB16 F10.9 (メラノーマ−マウス)の各細胞(Caliper Life Sciences, Hopkinton MA)を、10%FBSを添加したRPMI培地で培養した。HUVEC細胞をEndothelial Cell Growth Medium 2で培養し、またTHP1細胞を、10%FBS、2mM L−Glutamine、1.5g/L重炭酸ナトリウム、10mM Hepes、1mMピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、および0.05mM 2−メルカプトエタノールを添加したRPMI培地で培養した。これらの細胞を、無FBS培地で24時間飢餓状態にした。飢餓状態の最後に無FBS培地の細胞5x104を、24ウェルのTranswell装置(CORNING TRANSWELL(登録商標)ポリカーボネート膜インサート、A365およびTHP1の各細胞では孔径5μm、その他の細胞ではいずれも孔径8μm)の上方室に、溶媒(DMSO/PEG400)または様々な濃度の化合物1(PRT7000467)と共に配置した。FBSおよび化合物入りの培地を、下方室に追加した。24時間後、上方室の細胞を綿棒で除去した。膜の下側に移動した細胞を、Calcein−AM (Sigma)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。移動細胞数をImageJソフトウェアで定量し、Prismソフトウェア(Graphpad)を使ってIC50値を算出した。結果を表1に示すが、化合物1が試験したすべての細胞に対して活性であることを示している。ただし、THP1単球ではその作用がはるかに弱く、例外となった。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例5 化合物1(PRT7000467)がHUVEC細胞の管形成を阻害する
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、15%ウシ胎仔血清を含むSupplementMix (PromoCell, Germany)を入れたEndothelial Cell Growth Medium 2で通常通りに培養した。管形成アッセイには、5%ウシ胎仔血清を含んだ上記培地の1x104細胞を、50ng/ml VEGF (Prospec, Israel)を添加したCultrex減少増殖因子Basement Membrane Extract (BME)(R&D Systems, Minneapolis, MN)の上に散布した。この細胞を、指示通りに、溶媒(50% DMSO/50% PEG400)、25μM化合物1(PRT7000467)、10μM LY294004 (Cayman Chemical, Ann Arbor, Michigan)、または3μM FTY720 (Cayman Chemical, Ann Arbor, Michigan)のいずれかで処理した。LY294004はPI3K阻害剤、FTY720はスフィンゴシン−1−リン酸受容体の調節物質であり、そのどちらも陽性対照として供給された。6時間後に、細胞をCalcein−AM (Sigma, Israel)で染色し、蛍光顕微鏡で撮像した。結果から、化合物1(PRT7000467)が、生体内の血管新生をまねた生体外アッセイであるHUVEC細胞による管状構造の形成を阻害することが分かる(図3)。
【0123】
実施例6 抗転移移動アッセイ
B16F10ネズミのメラノーマ細胞を植え込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移阻害効果について、化合物1および化合物3を試験した。1日目(D1)に、被験マウスの尾静脈に1×105 B16F10腫瘍細胞を静脈内(i.v.)注射することによって腫瘍を創出した。マウスはビヒクル処理対照群3群(n = 20または10/群)と、治療群9群(n = 10/群)とに選別した。化合物1および化合物3を単剤療法により、D3から1日10 mg/kg(5 mL/kgで2 mg/mL)および20 mg/kg(5 mL/kgで4 mg/mL)の用量を、14回にわたり腹腔内(i.p.)投与した(qd x 14(D3開始))。また、化合物1および化合物3の単剤療法は、20 mg/kg (5 mL/kgで4 mg/mL)をD3から1日2回ずつ、29回分i.p.投与することによっても実施した(bid x 14.5 (D3開始))。被験物質のビヒクルを5 mL/kgの用量でi.p.投与した(qd x 14(D3開始))ある対照群は、上記の治療群に対する「疑似治療」対照群の役目を果たした。被験物質のビヒクルを10 mL/kgの用量でi.p.投与した(qd x 14(D3開始))ある対照群は、上記の治療群に対する「疑似治療」対照群の役目を果たした。ある陽性対照群には、300 mg/kgのシクロホスファミドをD3に1回i.p.投与した。ある対照群には、D3に生理的食塩水を1回分腹腔内(i.p.)投与し、「疑似治療」対照群および陽性対照群に対する対照となった。
試験のエンドポイントは、生理的食塩水対照群から定期的に任意抽出した動物に確認される1匹当たり100の肺転移と定義した。本試験は、D17に任意抽出した「点検用」動物に、平均77ヵ所の転移巣が認められた時点で終了した。試験に残った動物はすべて安楽死させ、その転移を数え、各群の平均±SEM巣数を算出した。治療マウスと対照マウスについて、D17の平均巣数の阻害率、変化率を比較分析し、また両者の巣数の差を統計的に評価することによって、有効性の判定を行った。
B16F10ネズミのメラノーマ細胞を植え込まれた雌B6D2F1マウスの肺転移を阻害するうえで、化合物1および化合物3はそれぞれ51%および45%の有効性を示した(図4AおよびB)。
【0124】
実施例7 抗炎症分析
遅延型過敏(DTH)反応は細胞性免疫の発現であり、多くの炎症性障害の病理および慢性に大きな役割を果たしている。遅延型過敏(DTH)反応は、オキサゾロン、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、およびヒツジ赤血球(SRBC)をはじめとする様々なアレルゲンによって引き起こされる可能性がある。最も特徴的なDTH現象の一つが接触過敏症であり、これは腫れ、およびサイトカインの組織内濃度の上昇を特徴とする。接触過敏症(CHS)は、皮膚感作、および可溶性の細胞内タンパク質と直接結合し得、自己MHC生成物との関連でT細胞に認識される反応性ハプテンの攻撃に対するT細胞媒介性免疫反応である。皮膚内で抗原−タンパク質複合体を認識する細胞はランゲルハンス細胞(LC)である。アレルゲンを局所適用すると、皮膚の免疫反応を誘導する主要な抗原提示細胞(APC)のランゲルハンス細胞(LC)が、表面のMHCクラスII抗原の発現を上昇させ、皮膚から局部のリンパ節へと移動を始め、ここで特定のリンパ節が活性化されると考えられる。ハプテンとの2度目の接触が起きると、T細胞はまず組織へと動員され、次に抗原提示細胞によって活性化され、局所的炎症を媒介するサイトカインを産生する。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、顆粒球浸潤の指数としてよく用いられる中性親和性顆粒に専ら存在する酵素であり、その阻害が抗炎症作用の目安となる。
本試験の目的は、オキサゾロン誘導性DTHに対する化合物1および3の作用を検討することである。
動物:
動物の種および系統:50 BALB/cマウス
性別、年齢、および体重:雌、19〜21g、6〜8週間
育種家/供給業者:Shanghai SLAC Laboratory Animal Co. Ltd.
動物の居住区および畜産:
試験施設 PharmaLegacy Laboratories Vivarium
環境適応 7日以上
部屋 通常の部屋
室内温度 (19〜26)℃
室内相対湿度 40〜70%
光周期 蛍光灯で明12時間(8:00〜20:00)、暗12時間
動物舎 治療群では5匹/ケージ
飼料 飼料摂取自由(照射物、Shanghai SLAC Laboratory Animal Co. Ltd.,Chaina)
水 水摂取自由(Molanimal Ultrapure Water Systemで濾過される都市水道)
試薬:
オキサゾロン:Sigma−Aldrich. (St. Louis, MO, USA), Cat: E0753, Lot: 124K3690
ペントバルビタールソーダ:Shanghai Western Biotech Co., Ltd (Shanghai, P.R.China), Lot: WS20090520
イソフルラン:He Bei Jiu Pai Biotech Co., Ltd, Cat: H19980141
アセトン:Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd, Cat: 10000418
オリーブ油:Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd. Cat: 69018028
生理的食塩水:Anhui double−crane Pharmaceutical Co., Ltd, Cat: H34023609
関連作用薬:デキサメタゾン:Sigma−Aldrich, Cat: D1756−1G
試験物質およびビヒクル:TBD
設備:
マイクロメーター:Mitsutoyo (No.045−020, 0−25mm, 0.001mm, Japan)
手順:
試薬の準備:
オキサゾロン溶液:オキサゾロンを4:1のアセトン/オリーブ油に10 mg/mLで溶解する
関連作用薬溶液:デキサメタゾンをアセトンに2.5 mg/mLで溶解する
免疫化および抗原投与:
動物50匹を5群に無作為化する(n=10)
マウスを1.0%のペントバルビタールソーダ(60 mg/kg)で麻酔し、腹部を剃る。0日目に、4:1のアセトン/オリーブ油に入れた3%オキサゾロン150μLを各マウスの腹部に塗る。
5日目に、マウス全匹に対し、4:1のアセトン/オリーブ油に入れた1%オキサゾロン20μLを、右耳の両側に局所塗布(10μL/片側)することにより投与する。
処置:
化合物1、3、および関連作用薬を、異なる用量プロトコールに従って投与する:a)第1群(ビヒクル群):生理的食塩水を、オキサゾロン投与の1時間前に経口投与する。b)関連作用薬群:アセトンに入れたデキサメタゾン(0.05 mg/耳)を、第2群のオキサゾロン投与の1時間後および6時間後に、右耳の両側に局所投与する(20 μL/耳、10μL/片側)。c)異なる用量の3種の試験物質を生理的食塩水に入れ、第3、4、および5群のオキサゾロン投与の1時間前に経口投与する。
測定:
マウス全匹の体重を、0日目から6日目まで毎日記録する。
オキサゾロン投与の前および24時間後に耳厚をマイクロメーターで測定し、平均耳厚変化として報告することによって、耳の腫脹反応を判定する(ΔT±S.E.M.)。耳の腫脹反応の抑制割合を、%抑圧=[1−(実験治療に暴露した感作マウスのΔT/ビヒクル治療に暴露した感作マウスのΔT]x100として計算する。
最後の耳厚測定を行った後(オキサゾロン投与の24時間後)、95%CO2でマウスを屠殺する。
各群の耳翼を、屠殺後直ちに10mm径のパンチで穿孔して回収し、その重さをはかる。第1群については左右両耳を回収し、第2〜5群については右耳だけを回収する。耳試料を液体窒素で凍結させる。これ以外の群にMPO活性試験を実施するかどうかについて、生データ受領の45日後に試験委託者が決定する。
化合物1および3は、対照群と同じ抗炎症活性を有する(図5)。
統計:
結果を平均±S.E.M.の形で提示する。一元配置分散分析に続き、ダネット事後テストを用いて群間差を判定する。P<0.05を統計的有意とする。
【0125】
実施例8 化合物1の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物1の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0126】
実施例9 化合物2の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物2の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0127】
実施例10 化合物3の使用
患者が炎症症状を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0128】
実施例11 化合物1の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物1の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0129】
実施例12 化合物2の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物2の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0130】
実施例13 化合物3の使用
患者が老人性黄班変性症(AMD)を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0131】
実施例14 化合物1の使用
患者が乳癌を患っている。化合物11の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0132】
実施例15 化合物2の使用
患者が乳癌を患っている。化合物22の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0133】
実施例16 化合物3の使用
患者が乳癌を患っている。化合物3の治療的有効量を、許容できる剤形で患者に投与する。患者の症状の改善、または回復が予想される。
【0134】
本明細書全体を通じて、様々な科学出版物および特許、または公開特許出願が参照されている。本明細書に述べた主題が係る技術の現状を一層詳しく説明するために、このすべての特許、公開出願、および科学出版物の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書のこの条項、または他の部分におけるいかなる参考文献の引用または認知であれ、かかる参考文献が、本明細書に記述された主題の先行技術として利用可能であることを認めたものと解釈されてはならない。
【0135】
本主題の本質から逸れることなく様々な修正が可能であることは、本主題が係る技術の当業者には理解されるであろう。本明細書に添付した特許請求の範囲の中に、かかる修正をすべて含めることを意図するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、式Iの化合物:
(式I)
【化1】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6−
−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8から選択される1から3の基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員の複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビルまたはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、ここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキルまたはフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記のように定義される、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容できる塩の治療的有効量を、該対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、式Iの化合物:
(式I)
【化2】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、もしくは−CONR7R8から選択される1から3の基を表し、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5−6員複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、又はフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記のように定義される、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物の治療的有効量を、該対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記追加のN原子が、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノから選択される員によって任意に置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、ここで
R1はNR9COR10であり;
R2は任意に置換されたヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはHまたは1から3のアルキル基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、カルボシクリル、アリール、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4、その結合する窒素原子、およびR5は5−6員複素環を形成し;
R6はH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、前記追加のN原子は、フェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換される低級アルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そして
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rから選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、RおよびR’は、それぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換される、方法。
【請求項5】
前記追加のN原子は、ピロリジノ、ピぺリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノからなる群より選択される一員によって任意に置換される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、またはアラルキル基から選択される、炭素原子1〜20個の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり;
前記アルキルは、炭素原子1から10個の直鎖または分岐アルキル(C1−C10アルキル)であり、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって任意に分断され、および/または、ハロゲン、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和5−7員複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、該追加のN原子はヒドロカルビルにより任意に置換され;
前記カルボシクリルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルから選択される飽和C5−C6シクロアルキル基または部分的に不飽和のC5−C6シクロアルケニル基であり、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって任意に置換され、ここでRおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子はヒドロカルビルによって任意に置換され;
前記アリールは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、またはアントラセニルから選択される、炭素原子6から14個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式の芳香族炭素環式基であり;
(ii)前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、3から12環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;そして
(iii)前記ヘテロアリールは、O、S、および/またはNから選択される1から3個のヘテロ原子を含む置換または非置換の単環式または多環式芳香族複素環である
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドロカルビルは、炭素原子1〜10個の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり;および/または
前記アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、またはtert−ブチルから選択されるC1−C4アルキルであり;および/または
前記アリールは、炭素原子6〜10個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式芳香族炭素環式基であり;および/または
前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、5〜10環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;および/または
前記ヘテロアリールは、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、およびベンゾジアゼピニルからなる群より選択される
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式又は環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子1〜6個であり;および/または
前記アルキルはメチルであり;および/または
前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式の複素環であり、5〜6環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;および/または
前記ヘテロアリールはチエニルである
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子2〜3個であり;および/または
前記ヘテロシクリルは、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、および1,3−ジオキサニルからなる群より選択される員である
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記式Iの化合物は、式IaまたはIbの化合物:
(式Ia)
【化3】
(式Ib)
【化4】
ここで
XはO、S、またはNHであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または1から3の(C1−C4)アルキルであり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、または(C1−C4)アルキルであり;
R5はH、または任意に置換された(C1−C6)アルキルであり;
そしてR11からR19はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択され、ここでR6、R7、およびR8は、それぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、そして
ここで、前記追加のN原子は、フェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換される低級アルキルによって任意に置換され;そして
式Ibの点線は、任意の二重結合を表す
である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記式Iaの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH
または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず、R4はHであり、R5はHまたはメチルであり、そしてR11からR16はHである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記式Iaの化合物は、
化合物1
【化5】
化合物2
【化6】
化合物3
【化7】
および
化合物4
【化8】
からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記式Ibの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH
または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず、R11からR19はHである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記式Ibの化合物は、
化合物5
【化9】
化合物6
【化10】
および
化合物7
【化11】
からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患、障害、または状態は癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記癌は、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭頸部癌、肝臓癌、精巣癌、子宮頚癌、肉腫、血管腫、食道がん、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽頭癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、胃癌、皮膚癌、基底細胞癌、メラノーマ、扁平上皮癌、口腔扁平上皮癌、大腸癌、多形膠芽腫、子宮内膜癌、および悪性膠腫からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物は少なくとも1つの抗癌剤の有効量をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの抗癌剤は、イマチニブ、デサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に、少なくとも1つの抗癌剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの抗癌剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの癌化学療法剤は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イソファミド、メルファラン、クロランブシル、ジカルバジン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、ブスルファン、トリエチレンメラミン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、代謝拮抗剤、メトトレキサート、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン)、イドキシウリジン、シタラビン、N−ホスホノアセチル−L−アスパルテート、5−アザシチジン、アザリビン、6−アザウリジン、ピラゾフラン、3−デアザウリジン、アシビシン、プリン類似体、チオグアニン、メルカトプリン、アザチオプリン、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、ビンカアルカロイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、抗生物質、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトマイシン、酵素、L−アスパラギナーゼ、白金配位錯体、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、ホルモン、アドレノコルチコステロイド、プレドニソン、プレドニソロン、アミノグルテチミド、プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストロゲン、アンドロゲン、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロン、エチニルエストラジオオール、抗エストロゲン剤、タモキシフェン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、およびリュープロリドからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象に、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの癌化学療法剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象に放射線療法を実施することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
放射線療法は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患、障害、または状態は炎症状態である、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症状態は、肺線維症、虚血性心疾患、クローン病、皮膚筋炎、糖尿病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、混合結合組織病、重症筋無力症、睡眠発作病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性貧血、甲状腺中毒症、多発性硬化症、強皮症、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、関節硬化症、慢性腎疾患、炎症性腸疾患、脈管炎、腹膜炎、巨乳頭結膜炎、ブドウ膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、移植拒絶反応、チェジアック・東症候群、慢性肉芽腫症、尿管炎症状態、間質性膀胱炎、潰瘍性大腸炎、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、および封入体性筋炎からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの抗炎症剤をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗炎症剤は、コルチコステロイド、コルチゾール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チキソコルトールプリバレート、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、プレドニソン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタソン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、フルコルトロンカプロエート、フルコルトロンピバレート、酢酸フルプレドニデン、非ステロイド系抗炎症剤、cox−2阻害剤、ニメスリド、ジクロフェナク、リコフェロン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、免疫選択的抗炎症性誘導体、フェニルアラニン−グルタミン−グリシン、ハーブ、ハルパゴフィツム、ヒソップ、ジンジャー、ターメリック、アルニカ、柳樹皮、およびカンナビスからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象に、少なくとも1つの抗炎症剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの抗炎症剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞移動疾患、障害、または状態は、過剰な血管新生状態である、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記過剰な血管新生状態は、糖尿病性失明、慢性炎症、関節炎、老人性黄班変性症、網膜症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、乾癬、癌、アルツハイマー病、再狭窄、肺線維症、喘息、血管線維腫、血管新生緑内障、動静脈奇形、偽骨骨折、狼瘡、結合組織障害、オスラー・ウェバー症候群、アテローム性プラーク、角膜移植、血管新生、炎症性肉芽腫、水晶体後方線維増殖症、強皮症、肉芽、血管腫、トラコーマ、血友病性関節、腹腔内子宮内膜症、脂肪過多症、および血管癒着からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの血管新生阻害剤をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドミド、パニツムマブ、セツキシマブ、およびエルロチニブからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象に、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1員の治療的有効量を投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1員の有効量をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および任意に抗炎症剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項40】
細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための式Iの化合物の使用であって、該式Iの化合物
(式I)
【化12】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8から選択される1から3の基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に、飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基により任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記の定義の通りである、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容される塩の、使用。
【請求項1】
対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、式Iの化合物:
(式I)
【化1】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6−
−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8から選択される1から3の基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員の複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビルまたはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、ここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキルまたはフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記のように定義される、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容できる塩の治療的有効量を、該対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
対象の細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、式Iの化合物:
(式I)
【化2】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、もしくは−CONR7R8から選択される1から3の基を表し、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5−6員複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、又はフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記のように定義される、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物の治療的有効量を、該対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記追加のN原子が、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノから選択される員によって任意に置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、ここで
R1はNR9COR10であり;
R2は任意に置換されたヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはHまたは1から3のアルキル基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、カルボシクリル、アリール、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4、その結合する窒素原子、およびR5は5−6員複素環を形成し;
R6はH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、前記追加のN原子は、フェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換される低級アルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;そして
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rから選択される1以上の基によって任意に置換され、ここで、RおよびR’は、それぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換される、方法。
【請求項5】
前記追加のN原子は、ピロリジノ、ピぺリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン、およびN−メチルピペラジノからなる群より選択される一員によって任意に置換される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、またはアラルキル基から選択される、炭素原子1〜20個の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり;
前記アルキルは、炭素原子1から10個の直鎖または分岐アルキル(C1−C10アルキル)であり、O、S、および/またはNから選択される1以上のヘテロ原子によって任意に分断され、および/または、ハロゲン、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって置換され、ここで、RおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、RおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和5−7員複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、該追加のN原子はヒドロカルビルにより任意に置換され;
前記カルボシクリルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニルから選択される飽和C5−C6シクロアルキル基または部分的に不飽和のC5−C6シクロアルケニル基であり、ハロゲン、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ニトロ、エポキシ、エピチオ、OR、−SR、−COR、−COOR、−NRR’、−CONRR’、−NRCOR’、−SO3R、−SO2R、−SO2NRR’、および−NRSO2Rからなる群より選択される1以上の基によって任意に置換され、ここでRおよびR’はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、またはRおよびR’はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子はヒドロカルビルによって任意に置換され;
前記アリールは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、またはアントラセニルから選択される、炭素原子6から14個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式の芳香族炭素環式基であり;
(ii)前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的に不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、3から12環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;そして
(iii)前記ヘテロアリールは、O、S、および/またはNから選択される1から3個のヘテロ原子を含む置換または非置換の単環式または多環式芳香族複素環である
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドロカルビルは、炭素原子1〜10個の直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり;および/または
前記アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、またはtert−ブチルから選択されるC1−C4アルキルであり;および/または
前記アリールは、炭素原子6〜10個の置換または非置換の単環式、二環式、または三環式芳香族炭素環式基であり;および/または
前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式複素環であり、5〜10環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;および/または
前記ヘテロアリールは、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、およびベンゾジアゼピニルからなる群より選択される
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式又は環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子1〜6個であり;および/または
前記アルキルはメチルであり;および/または
前記ヘテロシクリルは、飽和または部分的不飽和の任意に置換された単環式、二環式、または三環式の複素環であり、5〜6環員であり、そのうち1から3個の原子はO、S、および/またはNから選択されるヘテロ原子であり;および/または
前記ヘテロアリールはチエニルである
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロカルビルは、直鎖または分岐、非環式または環式、飽和、不飽和、または芳香族のヒドロカルビル基であり、炭素原子2〜3個であり;および/または
前記ヘテロシクリルは、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリニル、ジヒドロピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、および1,3−ジオキサニルからなる群より選択される員である
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記式Iの化合物は、式IaまたはIbの化合物:
(式Ia)
【化3】
(式Ib)
【化4】
ここで
XはO、S、またはNHであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または1から3の(C1−C4)アルキルであり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、または(C1−C4)アルキルであり;
R5はH、または任意に置換された(C1−C6)アルキルであり;
そしてR11からR19はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択され、ここでR6、R7、およびR8は、それぞれ独立してH、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に飽和複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2個の追加のヘテロ原子を任意に含み、そして
ここで、前記追加のN原子は、フェニル、ハロゲン、またはヒドロキシにより任意に置換される低級アルキルによって任意に置換され;そして
式Ibの点線は、任意の二重結合を表す
である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記式Iaの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH
または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず、R4はHであり、R5はHまたはメチルであり、そしてR11からR16はHである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記式Iaの化合物は、
化合物1
【化5】
化合物2
【化6】
化合物3
【化7】
および
化合物4
【化8】
からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記式Ibの化合物において、XはSであり、R3、R3a、およびR3bはH
または1〜3のメチル基であり;ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず、R11からR19はHである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記式Ibの化合物は、
化合物5
【化9】
化合物6
【化10】
および
化合物7
【化11】
からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患、障害、または状態は癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記癌は、肛門癌、星状細胞腫、白血病、リンパ腫、頭頸部癌、肝臓癌、精巣癌、子宮頚癌、肉腫、血管腫、食道がん、眼癌、喉頭癌、口癌、中皮腫、骨髄腫、口腔癌、直腸癌、咽頭癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、胃癌、皮膚癌、基底細胞癌、メラノーマ、扁平上皮癌、口腔扁平上皮癌、大腸癌、多形膠芽腫、子宮内膜癌、および悪性膠腫からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物は少なくとも1つの抗癌剤の有効量をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの抗癌剤は、イマチニブ、デサチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、およびバタラニブからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に、少なくとも1つの抗癌剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの抗癌剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの癌化学療法剤は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イソファミド、メルファラン、クロランブシル、ジカルバジン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、ブスルファン、トリエチレンメラミン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、代謝拮抗剤、メトトレキサート、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、(5’−フルオロ−2’−デオキシウリジン)、イドキシウリジン、シタラビン、N−ホスホノアセチル−L−アスパルテート、5−アザシチジン、アザリビン、6−アザウリジン、ピラゾフラン、3−デアザウリジン、アシビシン、プリン類似体、チオグアニン、メルカトプリン、アザチオプリン、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、ビンカアルカロイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、抗生物質、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、硫酸ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトマイシン、酵素、L−アスパラギナーゼ、白金配位錯体、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、ホルモン、アドレノコルチコステロイド、プレドニソン、プレドニソロン、アミノグルテチミド、プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストロゲン、アンドロゲン、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロン、エチニルエストラジオオール、抗エストロゲン剤、タモキシフェン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、およびリュープロリドからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象に、少なくとも1つの癌化学療法剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの癌化学療法剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象に放射線療法を実施することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
放射線療法は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患、障害、または状態は炎症状態である、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症状態は、肺線維症、虚血性心疾患、クローン病、皮膚筋炎、糖尿病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、混合結合組織病、重症筋無力症、睡眠発作病、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性貧血、甲状腺中毒症、多発性硬化症、強皮症、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、敗血症、関節硬化症、慢性腎疾患、炎症性腸疾患、脈管炎、腹膜炎、巨乳頭結膜炎、ブドウ膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、移植拒絶反応、チェジアック・東症候群、慢性肉芽腫症、尿管炎症状態、間質性膀胱炎、潰瘍性大腸炎、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、および封入体性筋炎からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの抗炎症剤をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗炎症剤は、コルチコステロイド、コルチゾール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チキソコルトールプリバレート、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、プレドニソン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタソン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、フルコルトロンカプロエート、フルコルトロンピバレート、酢酸フルプレドニデン、非ステロイド系抗炎症剤、cox−2阻害剤、ニメスリド、ジクロフェナク、リコフェロン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、免疫選択的抗炎症性誘導体、フェニルアラニン−グルタミン−グリシン、ハーブ、ハルパゴフィツム、ヒソップ、ジンジャー、ターメリック、アルニカ、柳樹皮、およびカンナビスからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象に、少なくとも1つの抗炎症剤の有効量を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの抗炎症剤は、前記医薬組成物の投与と同時に、その前に、またはその後に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞移動疾患、障害、または状態は、過剰な血管新生状態である、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記過剰な血管新生状態は、糖尿病性失明、慢性炎症、関節炎、老人性黄班変性症、網膜症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、乾癬、癌、アルツハイマー病、再狭窄、肺線維症、喘息、血管線維腫、血管新生緑内障、動静脈奇形、偽骨骨折、狼瘡、結合組織障害、オスラー・ウェバー症候群、アテローム性プラーク、角膜移植、血管新生、炎症性肉芽腫、水晶体後方線維増殖症、強皮症、肉芽、血管腫、トラコーマ、血友病性関節、腹腔内子宮内膜症、脂肪過多症、および血管癒着からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物は、少なくとも1つの血管新生阻害剤をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの血管新生阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドミド、パニツムマブ、セツキシマブ、およびエルロチニブからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象に、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1員の治療的有効量を投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される少なくとも1員の有効量をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物は、抗癌剤、血管新生阻害剤、および任意に抗炎症剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項40】
細胞移動疾患、障害、または状態を治療するための式Iの化合物の使用であって、該式Iの化合物
(式I)
【化12】
ここで
R1はアルキル、アリール、ヘテロアリール、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;
R2はアリールまたはヘテロアリールであり;
R3、R3a、およびR3bはH、または、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、−NR7R8、−COOR6、または−CONR7R8から選択される1から3の基であり、ただし、R3aおよびR3bは共にHであることはできず;
R4はH、アルキル、アリール、カルボシクリル、アシル、−O、またはヘテロシクリルであり;
R5はH、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、または−NR9COR10であり;または、R4およびR5はその結合する炭素原子および窒素原子と共に、追加の二重結合を任意に含む5〜6員複素環を形成し;
R6はH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり;
R7およびR8はそれぞれ独立してH、ヒドロカルビル、またはヘテロシクリルであり、または、R7およびR8はその結合する窒素原子と共に、飽和5−6複素環を形成し、これはN、S、および/またはOから選択される1または2の追加のヘテロ原子を任意に含み、またここで、該追加のN原子は低級アルキル、アラルキル、ハロアルキル、またはヒドロキシアルキルによって任意に置換され;
R9はH、低級アルキル、またはフェニルであり;
R10はアリールまたはヘテロアリールであり、
ここで、前記ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、それぞれ独立して、低級アルキル、ハロゲン、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ニトロ、エポキシ、エピチオ、−OR6、−SR6、−COR6、−COOR6、−NR7R8、−CONR7R8、−NR7−COR6、−SO3R6、−SO2R6、−SO2NR7R8、および−NR7SO2R6から選択される1以上の基により任意に置換され、ここで、R6、R7、およびR8は上記の定義の通りである、
またはそのエナンチオマーもしくは医薬的に許容される塩の、使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【公表番号】特表2013−512234(P2013−512234A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540509(P2012−540509)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003070
【国際公開番号】WO2011/064661
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509125693)プロテオロジクス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003070
【国際公開番号】WO2011/064661
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509125693)プロテオロジクス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]