説明

小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法

【課題】食塩や希塩酸などの塩化物の電解質を原料とし、それを直流もしくは交流電気にて電気分解し得られた電解水を用いて、小型古紙再生装置内の洗浄水やそれによって再生される紙の衛生度を向上させることを目的とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法を開発・提供することにある。
【解決手段】古紙を原料として再生紙を生成する小型古紙再生装置において、再生の作業工程に使用する洗浄水と被処理物とを、酸性電解水で除菌することを特徴とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、古新聞等の古紙を再生処理する小型の装置を、本願出願人が開発し、特許出願をしているが、その内容を簡単に説明すると、図3に示したように、製造工程において、大きく分けると、古紙パルプ製造工程と抄紙工程とに大きくわかれ、先ず、原料となる古紙を得るために、古新聞を破砕したもの、あるいは、シュレッダーされた古紙を用い、これらを離解・叩解する工程や除塵・脱墨する工程において水を使用するが、この水は、節水及び排水設備を省略するため、ろ過され、循環・使用されている。
【0003】
しかし、この循環使用されている水は、残留塩素の管理はなされないため、レジオネラ菌等の人体に有害な影響を及ぼす恐れのある微生物の発生が懸念されている。
【0004】
そして、それらの微生物が繁殖した装置から生成される再生紙は、乾燥工程での除菌効果は期待できるものの、該乾燥工程での換気を介して装置内部の菌が拡散する可能性が高い。そのため、再生紙自体の衛生管理だけでなく、使用する洗浄水の衛生管理にも配慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−218356号公報
【特許文献2】特開平03−19656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、小型古紙再生装置の離解・叩解する工程において、酸性電解水・アルカリ性電解水(電解水生成装置より生成される)を生成する際に塩化物を電解質として用いる方法を開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、食塩や希塩酸などの塩化物の電解質を原料とし、それを直流もしくは交流電気にて電気分解し得られた電解水を用いて、小型古紙再生装置内の洗浄水やそれによって再生される紙の衛生度を向上させることを目的とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法を開発・提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、小型古紙再生装置における再生紙の作業工程において、洗浄水と被処理物とを酸性電解水を用いて除菌することにより、下記の効果を有する。
即ち,この酸性電解水は、塩化物を電解質として電気分解を行って得られるものであり、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンなど塩化化合物が含まれる結果、これらを離解・叩解工程にて使用水に添加することにより、洗浄水に殺菌効果を加え、被洗浄物であるパルプを除菌することができ、その効果は図1〜3に示すように、2ppm〜20ppmの範囲で極めて有益なる効果を奏する。
【0009】
【表1】

【0010】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に使用する塩素濃度別比較を示すグラフ図である。
【図2】この発明に使用するALW配合率による菌数比較(2分攪拌)のグラフ図である。
【図3】この発明に使用するALW配合率による菌数比較(5分攪拌)のグラフ図である。
【図4】この発明に使用する小型古紙再生装置の作業工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の好適な実施の形態について述べると、食塩や希塩酸などの塩化物の電解質を原料とし、それを直流もしくは交流電気にて電気分解し得られた電解水を用いて、小型古紙再生装置内の洗浄水やそれによって再生される紙の衛生度を向上させることを目的とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法を開発・提供するものである。
【実施例】
【0013】
そこで、この発明の一実施例を詳述すると、古紙を原料として再生紙を生成する小型古紙再生装置において、再生の作業工程に使用する洗浄水と被処理物とを、酸性電解水で除菌することを特徴とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法から構成される。
【0014】
また、酸性電解水は、塩化物を電解質として作られることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、小型古紙再生装置の作業工程である,離解・叩解工程で酸性電解水を添加することを特徴とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法である。
【0016】
そして、酸性電解水を添加したときの洗浄水の残留塩素濃度が、約2〜20ppmである。
【0017】
塩化物を電解質として使用する電解水生成装置は、イオン交換膜を有し、複数の槽と陰陽一対以上の電極にて構成される有隔膜電解槽に通水・通電し陰極側の槽からは、アルカリ性電解水を、陽極側の槽からは酸性電解水を生成する方法と、希塩酸や食塩などの塩化物を電解質として単槽で陰陽一対以上の電極を有する無隔膜電解槽に通水・通電し電解する方法とがあり、これらのうちいずれかの方法を使用し、酸性電解水を生成するものである。
【0018】
酸性電解水は電気分解により、以下の化学反応が起こることが知られている。
【0019】
2HO → 2H+ O
2Cl → Cl
Cl + H O → HClO + HCl
【0020】
また、塩化物を電解水として電気分解を行い、得られる酸性電解水には、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンなど塩素化合物が含まれる。これらは高い殺菌効果を有することが知られており、これらを離解・叩解工程にて使用水に添加することにより、効果を奏するものである。
【0021】
次に、この発明の殺菌効果試験により、電解水の古紙(シュレッダー紙)への殺菌効果を検証するため、以下の試験を行った。
試験日 : 平成22年11月15日〜27日
試験場所: 広島県廿日市市の本願出願人の廿日市開発センター
使用したシュレダー : RICOH RICUT 2221PS生成 クロスカット方式
検体 : 上水(廿日市水道水)〔以下、TWと称する pH7.78〜8.10〕
アルカリ性電解水〔以下、TLWと称する pH11.57〜11.76〕 酸性電解水〔以下、AEWと称する)pH2.68〜2.75 有効塩素
37〜42ppm〕
使用培地及び培養条件 :
3M(商標)ペトリフィルム(商標)、培地生菌数測定用ACプレート住友スリーエム(株)製
35°C±1°C、48°C±3時間、培養方法はメーカー推奨方法に基づく。「食品衛生検査指針 微生物編」(厚生労働省監修 収載)
試験項目 : 一般生成菌
検査基準 : 製品のコロニー測定値正数は、25〜250。よって24以下は検出不可とする。
試験概要 : 上記3検体をブレンドして試験液を100mlで均一になるよう調整する。指定した有効塩素濃度(約2〜20ppm)及びALWの比率(0〜10%)にして、どの濃度が優位に殺菌効果を有するか、検討したものである。
調整した検体(100ml)にシュレッダー紙を定量(0.1g)混ぜ、攪拌する(2分、5分)。攪拌後の試験液から1ml 接種し、ペトフィルムで培養する。 試験結果 : クロスカット方式のシュレッダー紙から検出される一般生成菌数は1000個前後であった。
有効塩素濃度20ppm5分攪拌条件においては、菌は検出されなかった。また、最も菌の減少が見られた。
攪拌時間を増やすことで、菌の減少も確認された。8ppmと2ppmの減少度合いは、2分では8ppmに優位性が見られたが、5分では略同じ数値となっていた。
アルカリ性電解水をブレンドすることによる殺菌効果の向上は、一部見られたが、有効塩素が低濃度の時は、有意差は確認できなかった。
考察 : 電解水によるシュレッダー紙殺菌効果は充分確認された。
試験使用機材: pHメーターD−53〔(株)堀場製作所製〕
高濃度有効塩素濃度計 RC−2Z〔笠原理化工業(株)製〕
ORP計 ORP Testr10〔アズワン(株)製〕
導電率計 ES−51〔(株)堀場製作所製〕
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明の小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法の技術を確立し、該技術を実施・販売することにより、産業上利用可能性があるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を原料として再生紙を生成する小型古紙再生装置において、再生紙の作業工程に使用する洗浄水と被処理物とを、酸性電解水で除菌することを特徴とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法。
【請求項2】
酸性電解水は、塩化物を電解質として作られることを特徴とする請求項1記載の小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法。
【請求項3】
小型古紙再生装置の作業工程である,離解・叩解工程で酸性電解水を添加することを特徴とする小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法。
【請求項4】
酸性電解水を添加したときの洗浄水の残留塩素濃度が、約2〜20ppmであることを特徴とする請求項1または2または3記載の小型古紙再生装置における洗浄水及び被洗浄物の除菌方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−152510(P2012−152510A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16590(P2011−16590)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(592250414)株式会社テックコーポレーション (24)
【出願人】(510241339)秋山建材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】