説明

小型圧電発振器、小型圧電発振器の製造方法

【課題】小型化、薄型化と低コストの実現が可能な水晶発振器を実現する。
【解決手段】小型水晶発振器10は、少なくとも発振回路を含むICチップ30と、ICチップ30の裏面30bに接合される水晶振動片21と、ICチップ30の表面30aに設けられ、水晶振動片21の励振電極と前記発振回路とを接続する層間配線41〜43,46〜48及び外部接続電極45,49を有する再配線層40と、ICチップ30と略同じ平面形状を有し、前記圧電振動片を収容するキャビティ51を有し、水晶振動片21を密閉封止する蓋体50と、を備えている。また、小型水晶発振器10は、ICチップ30を半導体ウエハ3の状態で水晶振動片21を接合し、半導体ウエハサイズの蓋体基板5の状態を半導体ウエハ3に接合した後、分割し個片化して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型圧電発振器に関する。詳しくは、圧電振動片と半導体装置を一体とした小型圧電発振器と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発振回路を集積して一主面に一対の水晶端子を含む回路端子を有するICチップと、ICチップ上に搭載されて励振電極から外周部に引出電極の延在した水晶片と、ICチップと水晶片とを収容した密閉容器とを備えてなる表面実装用の水晶発振器において、ICチップの他主面にICチップの側面に設けた導電路によって電気的に接続する搭載用水晶端子を設けた水晶発振器というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、圧電発振器を小型化する構造として、少なくとも発振回路が形成されたICチップを有して形成され、上面電極と下面電極とが形成された発振回路部品と、底面に接続電極が形成された容器に圧電片を収容して構成される圧電振動部品(圧電振動子)からなり、発振回路部品の上面電極に圧電振動部品の接続電極を接合してなる圧電発振器というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−123904号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2004−228895号公報(第4,5頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1では、水晶発振器が、密閉容器内にICチップと水晶片とを収容していることから小型化ができないという課題を有している。
また、密閉容器を備えることから部品数が増加することに加え、水晶片が実装されたICチップを容器本体に実装する工程を有することからコスト増の要因となっている。
【0006】
また、上述した特許文献2によれば、容器内に圧電片を収容しパッケージされた圧電振動子をICチップに実装し、さらに、その状態でベース基板に実装していることから、薄型の圧電発振器の実現は困難である。
さらに、圧電振動子が容器内にパッケージングされていること、ベース基板を用いていることから部品数が増加し、また実装工程が多いことからコスト低減は困難と考えられる。
【0007】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、小型化、薄型化と低コスト化の実現が可能な圧電発振器と、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の小型圧電発振器は、少なくとも発振回路を含む半導体装置と、前記半導体装置の一方の表面側に接合される圧電振動片と、前記半導体装置の他方の表面側に設けられ、前記圧電振動片の励振電極と前記発振回路とを接続する層間配線及び外部接続電極を有する再配線層と、前記半導体装置と略同じ片面形状を有し、前記圧電振動片を封止する前記半導体装置とほぼ同じ形状を有する蓋体と、を備えていることを特徴とする。
ここで、半導体装置としては、例えば、発振回路や他の能動素子を含むICチップを意味する。また、半導体装置の他方の表面は能動面側表面を、一方の表面は能動面側表面に対向する面を表している。
【0009】
この発明による小型圧電発振器は、半導体装置と蓋体と、半導体装置に接合される圧電振動片によって構成されているため、前述した特許文献1、特許文献2のような密閉容器、圧電振動子の容器やベース基板が不要となり、構成部品数を格段に減らすことができる。
【0010】
また、密閉容器内またはベース基板への半導体装置の実装、圧電振動片のパッケージ実装等の工程が必要ないことに加え、上述したように部品数が少ない構成であることからコストの大幅な低減を実現できる。
【0011】
また、半導体装置と蓋体とがほぼ同じ形状であることから小型化を実現することができるうえ、従来技術のような密閉容器や圧電振動子のパッケージが不要なため、薄型化も実現できる。
【0012】
さらに、半導体装置の表面には再配線層を設けており、この再配線層により圧電振動片と発振回路とを接続する層間配線及び外部接続電極とを形成していることから、ユーザーの所望する位置に外部接続電極を配設することができる。
【0013】
また、前記蓋体の前記半導体装置に対向する表面にキャビティが形成され、前記キャビティの内部に前記圧電振動片が配設されるとともに、前記半導体装置の一方の表面に接合されていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、圧電振動片を蓋体の厚さの範囲内に収容することができるため、薄型化を実現できる。また、圧電振動片が接合される側の半導体装置表面は、フラットのままでよいので、半導体装置については特別な加工を必要としないという効果を有する。
【0015】
また、前記半導体装置の一方の表面にキャビティが形成され、前記圧電振動片が、前記キャビティの底面に接合されていることが好ましい。
【0016】
このように、圧電振動片を半導体装置の厚さの範囲内に収容することにより、蓋体はフラットな平板でよいため、一層薄型化を図ることができる。
【0017】
さらに、前記圧電振動片が、振動部と該振動部の周囲に形成される枠部とを有し、前記枠部が、前記半導体装置と前記蓋体との間に積層接合されていることが望ましい。
【0018】
詳しくは、後述する実施の形態にて説明するが、このような構造によれば、圧電振動片を個片化せずに大判のウエハに複数個形成し、同様に大判の蓋体基板及び半導体ウエハの状態で接合した後、個片化して小型圧電発振器を形成することができるため、製造工程を格段に簡単にすることができる。
【0019】
本発明の小型圧電発振器の製造方法は、圧電振動片を形成する工程と、少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、前記半導体ウエハの一方の表面に再配線層を形成する工程と、前記半導体ウエハの他方の表面に前記圧電振動片を接合する工程と、前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板の表面に前記圧電振動片を収容するキャビティを形成する工程と、前記圧電振動片が接合された状態の半導体ウエハと前記蓋体基板とを接合する工程と、前記半導体ウエハと前記蓋体基板とが接合された形態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
このような製造方法によれば、大判の半導体ウエハに圧電振動片を複数個整列配置し接合した後、やはり大判の蓋体基板を接合し、この状態で分割して個片化し圧電発振器を形成するため、圧電発振器を一つずつ形成する方法にくらべ、格段に製造効率を高めることができる。
【0021】
また、本発明の小型圧電発振器の製造方法は、圧電振動片を形成する工程と、少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、前記半導体ウエハの一方の表面に前記圧電振動片を収容するキャビティを穿設する工程と、前記半導体ウエハの他方の表面に再配線層を形成する工程と、前記キャビティの底部に前記圧電振動片を接合する工程と、前記圧電振動片が接合された状態の半導体ウエハとが接合された形態にて前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板とを接合する工程と、前記半導体ウエハと前記蓋体基板とが接合された形態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
このような製造方法によれば、圧電振動片が収容されるキャビティを半導体製造プロセスにて一貫して形成することができる。従って、蓋体基板は、フラットな平板でよいのでキャビティ形成工程が不要であり、製造工程を一層短縮することができることからコスト低減を実現できる。
【0023】
また、圧電振動片を半導体ウエハに形成されるキャビティ内に接合してから蓋体接合をするため、圧電振動片が半導体ウエハの表面に突出しないので、蓋体基板接合工程において圧電振動片に接触する機会を減じ、歩留り向上を実現できる。
【0024】
また、本発明の小型圧電発振器の製造方法は、振動部と該振動部の周囲に形成される枠部とを有する圧電振動片が複数個配設された圧電ウエハを形成する工程と、少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、前記半導体ウエハの一方の表面に再配線層を形成する工程と、前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板と前記半導体ウエハの他方の表面との間に前記圧電振動片の枠部を積層接合する工程と、前記半導体ウエハと前記圧電ウエハと前記蓋体基板とが積層接合された状態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
このような製造方法によれば、半導体ウエハと圧電ウエハと蓋体基板とを積層接合し、その後、分割し個片化するため、製造プロセスを格段に短縮化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明の実施形態1に係る小型圧電発振器の構造及び製造方法を示し、図4は実施形態2、図5は実施形態3を示している。
(実施形態1)
【0027】
図1は、実施形態1に係る小型圧電発振器を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態では圧電振動片として水晶振動片を用いる小型水晶発振器を例示して説明する。図1において、本実施形態による小型水晶発振器10は、基本構成としてシリコンを基材とする半導体装置としてのICチップ30と、ICチップ30の他方の表面としての裏面30bに接合される水晶振動片21と、水晶振動片21を密閉封止する蓋体50とから構成されている。
【0028】
ICチップ30には、少なくとも、図示しない発振回路が形成されており、発振回路を構成する回路素子や他の能動素子を電気的に接続するための層間配線33,35が形成されている。図1では層間配線の一部を図示している。層間配線33,35は、それぞれビアホール34,36に接続され、ビアホール34,36はICチップ30の一方の表面としての表面30aまで延在されている。
【0029】
ICチップ30には、さらに、裏面30bから表面30aまでを貫通する貫通電極32が形成されている。貫通電極32は、水晶振動片21の少なくとも2本の励振電極(図示せず)に接続している(図1では、貫通電極は1本のみを図示している)。貫通電極32の一方の端部は、裏面30b側に設けられる電極ランド31に接続している。この電極ランド31に水晶振動片21の基部22が接続されている。
【0030】
水晶振動片21とICチップ30との接合は、基部22に設けられる励振電極が延在された接続部において、導電性接着剤等の固着手段25を用いて電極ランド31と電気的及び機械的に接合される。水晶振動片21とICチップ30の裏面30bとは空隙が設けられる。なお、電極ランド31は、必ずしも設けなくてもよい。
水晶振動片21は、蓋体50によって密閉封止されている。
【0031】
蓋体50は、材料としてガラス、シリコン、水晶等を採用し、中央部に水晶振動片21を収容するキャビティ51が穿設されており、このキャビティ51の周縁部52がICチップ30の裏面30bに接合されている。キャビティ51の内部は真空とされる。
【0032】
ICチップ30の表面30aは、本実施形態では能動面であり、この能動面の表面に再配線層40が形成されている。再配線層40は、Cuからなる層間配線とポリイミド、シリコン等からなる絶縁層から構成されている。層間配線は、ICチップ30の表面30aに露出される第1層41、46と、第2層(中間層)42,47と、再配線層40の表面に露出される第3層43,48とからなり、さらに第3層43,48の表面には外部接続電極45,49が形成されている。
【0033】
ICチップ30の内部に形成される発振回路は、複数のコンデンサ、抵抗、増幅器等から構成されており、水晶振動片21の励振電極が接続されるとともに、少なくともICチップの外部にVcc端子、GND端子、出力端子(ともに図示せず)が層間配線33、35、ビアホール34、36等により外部接続電極45,49まで引き出されている。外部接続電極は、図1では、2個のみ図示しているが、上述した端子に対応する外部接続電極が設けられている。これら外部接続電極45,49には表面には、図示しない外部基板との接合のためのはんだボール60が形成されている。
なお、ICチップ30に再配線層40及びはんだボール60が形成された形態をCSP(チップサイズパッケージ)−ICと呼称することがある。
【0034】
再配線層40は、ICチップ30の上述した各端子位置に対して、外部接続電極45,49等を図示しない外部基板の所望位置に対応した位置に配設するために設けられる。
上述したように構成される小型水晶発振器10は、平面形状がICチップ30と同じ形状である。このような形態をCSPと呼ぶ。
【0035】
小型水晶発振器10が温度補償型水晶発振器(TCXO)の場合は、ICチップ30には、上述した発振回路に加えて温度補償回路が含まれ、この場合には、ICチップ30内の出入力端子数及び外部接続電極数が増加するが、前述した構造に準じて応用が可能なため説明を省略する。
【0036】
なお、本実施形態による小型水晶発振器は、具体的には、再配線層40の厚さ0.1mm、ICチップ30の厚さ0.3mm、蓋体50の厚さ0.3mm、総厚さ0.7mmの薄型化を実現し、また、平面サイズは2mm×1.6mmの小型化を実現している。
【0037】
続いて、本実施形態による小型水晶発振器10の製造方法の1例を図面を参照して説明する。
図2は、小型水晶発振器10の製造方法を模式的に示す平面図、図3は、図2のA−A切断面を模式的に示す部分断面図である。図2,3(図1も参照する)において、小型水晶発振器10は、ICチップ30を半導体ウエハ3、蓋体50を蓋体基板5の状態で接合した後、切断して個片化して製造される。
【0038】
まず、水晶振動片21を形成する。水晶振動片21には励振電極を形成し、基部22に図示しない励振電極を延在する。
半導体ウエハ3には、図2に示すように複数のICチップ10が整列配設されるが、一括して発振回路等の機能素子を形成すると共に、貫通電極32及び電極ランド31を形成する(図1、参照)。
【0039】
そして、半導体ウエハ3の表面3a(つまり能動面側)の全面に再配線層4を形成する。この再配線層4は、個片化された際のICチップ30に対応した再配線層40を複数個分配設して形成する。上述したように半導体ウエハ3に再配線層4を形成した形態をWL−CSP(ウエハレベル−チップサイズパッケージ)−ICと呼称する。
【0040】
蓋体基板5は、半導体ウエハ3と平面形状が略同じであり、半導体ウエハ3に対向する表面に、キャビティ51となる水晶振動片21が収容可能な大きさの凹部をハーフエッチング、サンドブラスト等の手段によって形成する。
【0041】
上述したような半導体ウエハ3に再配線層4が形成された半導体基板2、キャビティ51が形成された蓋体基板5、水晶振動片21を準備し、それぞれを接合する。
まず、水晶振動片21の基部22に延在された励振電極の接続部を半導体基板2(半導体ウエハ3)に設けられた電極ランド31(図1、参照)の位置に合わせて導電接着剤等を用いて接合する。
【0042】
続いて、水晶振動片21の位置と蓋体基板5のキャビティ51の位置を合わせて、キャビティ51の周縁部52を半導体ウエハ3の裏面3b(再配線層4と対向する面)に陽極接合、プラズマ接合等の接合手段を用いて接合する。なお、キャビティ51内を真空にするためには、接合工程を真空環境において行う。
【0043】
半導体基板2と蓋体基板5とを接合した後、再配線層4の最上層に設けられる外部接続電極45,49にはんだボール60を形成する。このはんだボール60の形成工程は、再配線層4を形成した直後に行ってもよい。
【0044】
上述したように、半導体基板2と水晶振動片21と蓋体基板5とが接合された形態をWL−CSP(ウエハレベル−チップサイズパッケージ)と呼称し符号1を付している。続いて、分割線80に沿って分割し、個片化することで図1に示す小型水晶発振器10を形成する。分割手段としては、切削、研削、レーザーカット等の分割手段が用いられる。
【0045】
従って、前述した実施形態1によれば、小型水晶発振器10が、ICチップ30と蓋体50と、ICチップ30に接合される水晶振動片21によって構成されているため、前述した特許文献1、特許文献2のような密閉容器、圧電振動子の容器やベース基板が不要となり、構成部品数を格段に減らすことができる。
【0046】
また、密閉容器内またはベース基板への半導体装置の実装、水晶振動片のパッケージ実装等の工程が必要ないことに加え、上述したように部品数が少ない構成であることからコストの大幅な低減を実現できる。
【0047】
また、ICチップ30と蓋体50とがほぼ同じ形状のCSP化ができていることから小型化を実現することができるうえ、従来技術のような密閉容器や圧電振動子の容器が不要なため、薄型化も実現できる。
【0048】
さらに、ICチップ30の表面30aには再配線層40を設けており、この再配線層40を設け、水晶振動片21と発振回路とを接続する層間配線41〜43及び層間配線46〜48と、外部接続電極45,49とを形成していることにより、ユーザーが所望する位置に外部接続電極45,49を配設することができる。
【0049】
また、水晶振動片21が蓋体50の厚さの範囲内に収容することができるため、薄型化を実現できる。また、水晶振動片21が接合されるICチップ30の裏面30bは、フラットのままでよいので、ICチップ30については特別な加工を必要としないという効果を有する。
【0050】
さらに、大判の半導体ウエハ3に水晶振動片21を接合した後、半導体ウエハ3と略同じ形状の蓋体基板5を接合しWL−CSP1を形成し、この形態で分割して個片化し小型水晶発振器10を形成するため、水晶発振器10を一つ一つ形成する方法にくらべ、格段に製造効率を高めることができる。
(実施形態2)
【0051】
次に、本発明の実施形態2に係る水晶発振器について図面を参照して説明する。実施形態2は、水晶振動片を収容するキャビティがICチップに形成されていることに特徴を有しているため、前述した実施形態1との相違個所を中心に説明する。なお、同じ機能部位には、実施形態1と同じ符号を付している。
【0052】
図4は、実施形態2に係る水晶発振器の構造を模式的に示す断面図である。図4において、小型水晶発振器10は、基本構成としてICチップ30と、ICチップ30のキャビティ70内に接合される水晶振動片21と、水晶振動片21を密閉封止する蓋体50とから構成されている。
【0053】
ICチップ30の表面30aは、本実施形態では能動面であり、この能動面の表面に再配線層40が形成されている。再配線層40の構成は、前述した実施形態1(図1、参照)と同じである。また、ICチップ30の裏面30bの中央部には凹部が穿設されている。この凹部が、水晶振動片21を収容するキャビティ70である。
このキャビティ70の底面に水晶振動片21が接合されている。
【0054】
水晶振動片21とICチップ30との接合は、水晶振動片21の基部22に延在される励振電極の接続部(図示せず)において、導電性接着剤等の固着手段25を用いて電極ランド31と電気的及び機械的に接合される。水晶振動片21とICチップ30のキャビティ底面とは空隙が設けられる。なお、電極ランド31は、必ずしも設けなくてもよい。
水晶振動片21は、蓋体50によって密閉封止されている。
【0055】
蓋体50は、フラットな平板から形成されており、ICチップ30に設けられるキャビティ70の周縁部30cに接合されて、キャビティ70内を真空封止している。
【0056】
続いて、実施形態2による小型水晶発振器10の製造方法の1例を図2、図3を参照して説明する。図2に示すように小型水晶発振器10は、ICチップ30を半導体ウエハ3、蓋体50を蓋体基板5の状態で接合した後、切断して個片化して製造される。
【0057】
半導体ウエハ3には、図2に示すように複数のICチップ30の能動素子を整列配設して形成する。そして、裏面3b側にキャビティ70をハーフエッチング等の手段で穿設する。次に、半導体ウエハ3の表面3a(図3、参照)の全面に再配線層4を形成し、半導体基板2を形成する。
【0058】
続いて、キャビティ70の底面に水晶振動片21を接合する。水晶振動片21の接合は、水晶振動片21の基部22に延在された励振電極の接続部を半導体基板2(半導体ウエハ3)に設けられた電極ランド31の位置に合わせて導電接着剤等を用いて行う。
【0059】
そして、蓋体基板5をキャビティ70の周縁部30cに陽極接合、プラズマ接合、接着等の接合手段を用いて接合する。なお、キャビティ70内を真空にするためには、接合工程を真空環境において行う。
【0060】
半導体基板2と蓋体基板5とを接合した後、再配線層4の最上層に設けられる外部接続電極45,49にはんだボール60を形成する。このはんだボール60の形成工程は、再配線層4を形成した直後に行ってもよい。
【0061】
上述したように、半導体基板2と水晶振動片21と蓋体基板5とが接合してWL−CSP1が形成される、続いて、分割線80に沿って分割し、個片化することで図4に示す小型水晶発振器10を形成する。
【0062】
なお、本実施形態の具体例としては、再配線層40の厚さ0.1mm、ICチップ30の厚さ0.3mm、蓋体50の厚さ0.1mm、総厚さ0.5mmという薄型化を実現している。
【0063】
従って、上述した実施形態2によれば、水晶振動片21が、ICチップ30に形成されキャビティ70の内部に配設され、キャビティ70の底部に接合されていることから、水晶振動片21がICチップの厚さの範囲内に収容され、蓋体50はフラットな平板でよいため、一層薄型化を図ることができる。
【0064】
また、実施形態2の製造方法によれば、水晶振動片21が収容されるキャビティ70を半導体製造プロセスにて一貫して形成する。従って、蓋体基板5は、フラットな平板でよいのでキャビティ形成工程が不要であり、製造工程を一層短縮することができることからコスト低減を実現できる。
【0065】
また、水晶振動片21を半導体ウエハ3に形成されるキャビティ70内に接合してから蓋体基板5を接合するため、水晶振動片21が半導体ウエハ3の表面に突出しないので、蓋体基板接合工程において水晶振動片21に接触する機会を減じ、歩留り向上を実現できる。
(実施形態3)
【0066】
続いて、本発明の実施形態3に係る水晶発振器について図面を参照して説明する。実施形態3は、水晶振動片が、ICチップと蓋体との間に積層接合されていることに特徴を有しているため、前述した実施形態1及び実施形態2との相違個所を中心に説明する。なお、同じ機能部位には、実施形態1と同じ符号を付している。
【0067】
図5は、実施形態3に係る水晶発振器の構造を模式的に示す断面図である。図5において、小型水晶発振器10は、基本構成としてICチップ30と、蓋体50と、ICチップ30と蓋体50との間に積層接合される水晶振動片21と、から構成されている。
【0068】
ICチップ30の表面30aは、本実施形態では能動面であり、この能動面の表面に再配線層40が形成されている。再配線層40の構成は、前述した実施形態1(図1、参照)と同じである。
【0069】
水晶振動片21は、中央の振動部23と、振動部23の周縁全周に、振動部23とは基部を除いて離間して設けられる枠部24とから構成されている(平面図は省略する)。枠部24の表裏両面それぞれには、接合電極26,27が形成されている。この接合電極26,27は、励振電極を枠部24の表裏まで延在して形成してもよく、励振電極の延在部の外側に独立した接合電極を形成してもよい。
【0070】
このように形成された水晶振動片21は、ICチップ30と蓋体50との間に積層接合されている。この際、水晶振動片21とICチップ30及び蓋体50との間にはそれぞれ空隙が設けらている。
【0071】
次に、実施形態3による小型水晶発振器10の製造方法の1例を図2、図3、図5を参照して説明する。図2に示すように小型水晶発振器10は、ICチップ30を半導体基板2、水晶振動片21を水晶ウエハ20、蓋体50を蓋体基板5の状態で接合した後、分割し個片化して製造される。
【0072】
半導体ウエハ3には、図2に示すように複数のICチップ30の能動素子を整列配設して形成し、半導体ウエハ3の表面3a(図3、参照)の全面に再配線層4を形成し、半導体基板2を形成する。
【0073】
続いて、水晶振動片21が形成された水晶ウエハ20を半導体ウエハ3の裏面3b(図3、参照)に接合する。水晶ウエハ20の接合は、接合電極26を半導体基板2(半導体ウエハ3)に設けられた電極ランド31の位置に合わせて導電接着剤等を用いて行う。
【0074】
そして、蓋体基板5を水晶ウエハ20の表面に陽極接合、プラズマ接合、接着、金属溶着等の接合手段を用いて接合する。接合にあたっては、振動部23が蓋体50及びICチップ30に接触しないように、接合電極26,27や、接着層、溶着金属層の厚さを調整する。
【0075】
半導体基板2と蓋体基板5とを接合した後、再配線層4の最上層に設けられる外部接続電極45,49にはんだボール60を形成する。このはんだボール60の形成工程は、再配線層4を形成した直後に行ってもよい。
【0076】
上述したように、半導体基板2と水晶ウエハと蓋体基板5とを接合してWL−CSP1が形成される、続いて、図2に示す分割線80に沿って分割、個片化することで図5に示す小型水晶発振器10を形成する。
【0077】
なお、本実施形態の具体例としては、再配線層40の厚さ0.1mm、ICチップ30の厚さ0.3mm、蓋体50の厚さ0.1mm、水晶振動片の厚さ0.1mmとする総厚さ0.6mmという薄型化を実現している。
【0078】
従って、上述した実施形態3によれば、水晶振動片21が、振動部23と振動部23の周囲に形成される枠部24とを有し、枠部24が、ICチップ30と蓋体50との間に積層接合されているために、水晶振動片21を単品化せずに大判の水晶ウエハ20に複数個形成し、同様に大判の蓋体基板5及び半導体ウエハ3とを積層接合した後、個片化して小型水晶発振器10を形成することができるのため、製造工程を格段に簡単にすることができる。
【0079】
なお、上述した実施形態3では、フラットな平板に振動部23と枠部24とを形成しているが、枠部24の厚さを振動部23の厚さよりも厚くして、ICチップ30と蓋体50との空隙を形成する構造としてもよい。
【0080】
さらには、水晶振動片21をフラットな平板から構成し、蓋体50及びICチップ30の接合方向の表面の一方、または両方に浅いキャビティを形成する構造としてもよい。
【0081】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態1、実施形態3では、再配線層40は、ICチップ30の能動面(表面30a)に形成しているが、再配線層40を裏面30b側に形成し、水晶振動片21を表面30a側に接合する構造を採用することができる。
【0082】
また、前述の実施形態1〜実施形態3では、ICチップ30に貫通電極32を設けているが、必ずしも貫通させずに、水晶振動片21の励振電極をICチップ30内の層間配線に接続するビアホールを設け、その層間配線から外部接続電極に接続する構造としてもよい。
【0083】
また、前述した本発明の小型水晶発振器10の製造方法では、半導体ウエハ3は蓋体基板5とを接合した後、分割して個片化しているが、ICチップ30、水晶振動片21、蓋体50それぞれを個片化して接合する方法でも、本発明の小型水晶発振器を実現することができる。
【0084】
また、小型水晶発振器10を外部基板に接続するためのはんだボール60を形成しているが、はんだボール60は必ずしも備えなくてもよく、接続時に導電性接着剤を用いる、外部基板側にはんだボールを設ける構造としてもよい。
【0085】
従って、前述の実施形態1〜実施形態3によれば、小型化、薄型化と低コストの実現が可能な水晶発振器と、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態1に係る小型圧電発振器を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る小型圧電発振器の製造方法を示す平面図。
【図3】図2のA−A切断面を示す断面図。
【図4】本発明の実施形態2に係る小型圧電発振器を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の実施形態3に係る小型圧電発振器を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0087】
10…小型水晶発振器、21…水晶振動片、30…ICチップ、30a…ICチップの表面、30b…ICチップの裏面、40…再配線層、41〜43,46〜48…層間配線、45,49…外部接続電極、50…蓋体、51…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発振回路を含む半導体装置と、
前記半導体装置の一方の表面側に接合される圧電振動片と、
前記半導体装置の他方の表面側に設けられ、前記圧電振動片の励振電極と前記発振回路とを接続する層間配線及び外部接続電極を有する再配線層と、
前記半導体装置と略同じ平面形状を有し、前記圧電振動片を封止する蓋体と、
を備えていることを特徴とする小型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の小型圧電発振器において、
前記蓋体の前記半導体装置に対向する表面にキャビティが形成され、
前記キャビティの内部に前記圧電振動片が配設されるとともに、前記半導体装置の一方の表面に接合されていることを特徴とする小型圧電発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の小型圧電発振器において、
前記半導体装置の一方の表面にキャビティが形成され、
前記圧電振動片が、前記キャビティの底面に接合されていることを特徴とする小型圧電発振器。
【請求項4】
請求項1に記載の小型圧電発振器において、
前記圧電振動片が、振動部と該振動部の周囲に形成される枠部とを有し、
前記枠部が、前記半導体装置と前記蓋体との間に積層接合されていることを特徴とする小型圧電発振器。
【請求項5】
圧電振動片を形成する工程と、
少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、
前記半導体ウエハの一方の表面に再配線層を形成する工程と、
前記半導体ウエハの他方の表面に前記圧電振動片を接合する工程と、
前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板の表面に前記圧電振動片を収容するキャビティを形成する工程と、
前記圧電振動片が接合された状態の半導体ウエハと前記蓋体基板とを接合する工程と、
前記半導体ウエハと前記蓋体基板とが接合された形態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、
を含むことを特徴とする小型圧電発振器の製造方法。
【請求項6】
圧電振動片を形成する工程と、
少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、
前記半導体ウエハの一方の表面に前記圧電振動片を収容するキャビティを穿設する工程と、
前記半導体ウエハの他方の表面に再配線層を形成する工程と、
前記キャビティの底部に前記圧電振動片を接合する工程と、
前記圧電振動片が接合された状態の半導体ウエハと前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板とを接合する工程と、
前記半導体ウエハと前記蓋体基板とが接合された形態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、
を含むことを特徴とする小型圧電発振器の製造方法。
【請求項7】
振動部と該振動部の周囲に形成される枠部とを有する圧電振動片が複数個配設された圧電ウエハを形成する工程と、
少なくとも発振回路を含む半導体装置が複数個配設された半導体ウエハを形成する工程と、
前記半導体ウエハの一方の表面に再配線層を形成する工程と、
前記半導体ウエハと略同じ平面形状の蓋体基板と前記半導体ウエハの他方の表面との間に前記圧電振動片の枠部を積層接合する工程と、
前記半導体ウエハと前記圧電ウエハと前記蓋体基板とが積層接合された状態にて分割し圧電発振器を個片化する工程と、
を含むことを特徴とする小型圧電発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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