小型多孔質基質、小型多孔質基質を設置する台座、小型多孔質基質を組み込んだ構造体および藻場造成方法
【課題】海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させることができ、幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質を提供する。
【解決手段】骨材2が、コンクリートモルタル3と、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバー等の接合材4とにより相互に固着され、略角錐型状に積層され、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成る多孔質ブロック体5を備える小型多孔質基質1を提供する。多孔質ブロック体5は、底面側に向かって開放する中空部6を有し、底面金具7上に積層され、底面金具7側部には取手8が取付けられ、底面金具7の下面には、底面金具7外方に両端が突出する接合金具9が固着されている。
【解決手段】骨材2が、コンクリートモルタル3と、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバー等の接合材4とにより相互に固着され、略角錐型状に積層され、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成る多孔質ブロック体5を備える小型多孔質基質1を提供する。多孔質ブロック体5は、底面側に向かって開放する中空部6を有し、底面金具7上に積層され、底面金具7側部には取手8が取付けられ、底面金具7の下面には、底面金具7外方に両端が突出する接合金具9が固着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させることができ、幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質、小型多孔質基質を設置する台座、小型多孔質基質を組み込んだ構造体および藻場造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の海藻増殖目的のブロックは規格、寸法、形状などが画一的な工業製品で、耐久性や耐波浪性、沿岸での安定性などを重視した設計から、主にコンクリート製の大型重量物が一般的であった。このため海藻ブロックは建設業者が製作し、作業船と大型機械により海域設置された。
【0003】
そして、海域設置される海藻ブロックは予め決められた工期内に設置されるため、増殖目的とする海藻類の成熟期とは無関係に施工されたり、海況条件が障害となって目的とする海藻類の成熟時期を逃す場合や、時化などで作業船が浅海漁場に係留できず、沖側に沈設することで施工水深が深すぎるなど不都合があった。こうしたことから設置後に着生する海藻は目的外の種類が生育したり、漁場が深い場合は時間経過とともに海藻類が生育しにくくなることがあった。
【0004】
一方、小型の海藻ブロックも開発・設置されているが、漁場に設置された後に波浪やうねりなどで移動、転倒、破損、砂地への埋没や、大型の海藻ブロックと同様時間経過による生物膜の優占など、小型海藻ブロックの海藻着生機能が低下または発揮されないものが多くみられた。
【0005】
また海藻ブロックは工業製品として均一な品質と作りやすさが要求され、角錐などの型枠形成がしやすい形状が採用されてきた。
然しながら、水深の深浅にかかわらず角錐ブロックを砂地に設置した場合、比重の重い角錐ブロックが波浪などの影響で砂地に埋没する洗掘が発生したり、波で舞い上げられた砂がブロックに撃ちつけられ表面に着生した生物を剥離することや、角錐ブロックの平坦な上面に砂泥が堆積するなど海藻類の着生には不利な条件と形状であることが指摘される。
【0006】
また、設置された海藻ブロックは大小にかかわらず生物膜などで海藻類の着生機能が低下しても、基質の回収や再設置などメンテナンスまでは考慮されておらず、漁場に設置された海藻ブロックの再生は自然任せにされてきた。
【0007】
一方、北日本等における磯焼けと言われる海藻類が極相を示す現象の原因は、水温上昇による栄養塩の不足やウニ、巻貝など植食性動物類の摂餌圧が主な原因と考えられている。つまり海水温上昇が進むことで水温躍層が形成され、深層の栄養塩を含む海水が表層に供給されない貧栄養状態となるため、水温が下がる冬季の沿岸でも海藻が育ち難い環境が形成される。その反面で水温上昇が植食動物類の摂餌行動を活性化するため、食圧による藻場の衰退と消滅が更に深刻になると考えられている。
【0008】
また、藻場造成を実施しても海藻類が着生、生育しない原因として、前述した海水温の上昇、海域の貧栄養、植食動物類の摂餌圧のほか、基質面を他の生物膜が優占して被覆すると加入海藻類が着生できない、工事期間が目的海藻の成熟生態に合わず幼胚や配偶体、胞子体が着生しない、沈降砂泥が付着面を被覆して幼体が窒息、流出または着生できない、基質の設置水深が深く光量が不足するなどの原因が考えられる。
【0009】
これら磯焼け現象の原因のうち人為的にコントロール不能な水温上昇と貧栄養を除くと、解決すべき課題は次の点に絞ることができる。
生物膜除去と基質更新、植食動物類の食害、海藻成熟と施工時期、基質形状の改良、設置時期と水深の調節などに整理される。
【0010】
前記基質更新と植食動物類の食害については、例えば、磯焼け漁場における大型海藻類の藻場再生方法として、食植動物であるウニ類を海藻類が着生する時期に除去する方法や、基質に付着した生物膜(雑海藻類や増殖目的とする海藻類の着生を妨げる優占生物)を除去することで、海藻類の着生場を復活させる基質更新(チェン振りや物理的な基質表面の掃除・剥離)の有効性が確認され一部地域で実施されてきた。
しかし地元が行う食害抑制のための潜水ウニ除去や、チェン振りなどの基質更新法は、作業効率が極めて悪く経費も高額であった。また雑藻駆除事業として専門業者が実施する基質更新法では、大型作業船を使用して海底の石材や海藻ブロックの付着生物を除去するが、施工から数年で元の雑海藻が繁茂する、あるいは海藻類が生育しない状態に戻る、施工経費が高額で補助事業として継続して採択されにくいなどの問題があった。
【0011】
また、食植動物の食害と基質形状については、例えば、従来の海藻ブロックはコンクリート型枠により形成されるため、ブロック表面は平坦な型枠の滑面を形成し、ここに海藻類が着生すると、これを餌料とするウニ、巻貝など植食動物類が移動、摂餌し易いため、着生した海藻類が発芽初期に食べ尽されることがあった。
さらに、海藻類の着生する有効面積を広げるため、四角錐や台形錐などの平坦な上面形状が採用され、この上面にポーラスコンクリートを板状に取り付けているものもみられる。
然しながら、海藻類が着生する時期に時化による海底土砂の巻上げや河川の出水などで沿岸水域に濁りが発生し、この濁りが波浪の沈静化とともに海底に沈降して、海藻ブロックやポーラスコンクリートの上面に砂泥粒子が堆積することがある。これら堆積砂泥は波浪によって払拭と沈降を繰り返すが、海藻ブロックの上部が平坦なポーラスコンクリートの場合、平面や空隙に砂泥が滞留しやすく払拭されにくいため、着生直後の幼芽が埋まり込んで窒息したり弱った幼芽が砂泥とともに流出するなどで、海藻類の着生が見られなくなることがあった。
【0012】
更に、コンクリートの海藻ブロックはその重さを利用して沿岸の岩礁域の藻場造成基質として採用されている。一方で砂地漁場を岩礁域化して有効利用しようとする考えがあり、岩礁に類似したコンクリート製の海藻ブロックが設置されることがあった。
しかし海藻類の増殖を目的とした浅海域では、往復波の繰り返しが水分子の移動を伴うことで、砂面上のブロック壁面に衝突してブロック基部の砂が流出するため、砂地の海藻ブロックは次第に海底に埋まりこみ、砂層厚が深い場所では徐々に埋没して海底面から消滅することがあった。
【0013】
此種、従来技術の先行文献として、例えば、特許文献1があり、特許文献1は、充実質のコンクリートからなる基盤と、その上面に着脱自在に載置される3個のポーラスコンクリートから成る着生基体とにより構成される藻場造成用構造物を提供するものである。
そして、この藻場造成用構造物をもちいた藻場造成方法は、着生する海藻の幼胚や配偶体、胞子体として天然採苗を主体としながら、着生基体に幼胚や配偶体、胞子体が着生してから移設して、次の着生基体を設置することで1シーズンに複数回の採苗を行おうとするものである。
然しながら、天然採苗により着生した胞子体を肉眼で観察できるまで少なくとも数ヶ月が必要であり、天然漁場における採苗はシーズンあたり1〜2回が限度となる可能性が高い。また海藻類の着生確認は潜水観察または重いポーラスコンクリートを引揚げて行う必要が生じるため作業効率の向上が望めない。
【0014】
更に、この技術によれば供給元と移植先に2基のコンクリート構造物が必要である。つまりポーラスコンクリートの着生元から外した着生基体はそのままで海底に沈設しても機能が保てないため、この構造物では着生元と移設先で2基の専用構造物が必要となる。従って管理費、材料費、設置費などの経費が高くなることと、移設にも専門の従事者が必要になると考えられる。
【0015】
特許文献1の図面に示されたコンクリート構造物は岩礁域に適した脚形状であり、この脚形状を砂地に設置した場合、砂地海底の洗掘が促進されやすく短時間で埋没することが予測される。また完全に埋没しないまでも一部が埋まることで、着生基体と海底面の高さが確保できず、波による砂の運搬・沈降・滞留や打ち付けが強くなり生物の増殖機能を阻害することが懸念される。
【0016】
さらに、特許文献1の図面に示されたポーラスコンクリートの着生基体はその分割数から数百kgの重量物であると推測され、小型漁船などで容易に移動ができる重量ではない。また藻場造成用構造物を設置する移設先のコンクリート構造物は、形状が複雑なため設置作業を船上だけで行うことは困難であり、施設の管理者である漁業者や一般人が施工することは難しいと見られる。
【0017】
此種、従来技術の先行文献として、更に、特許文献2があり、特許文献2は、小型基質を縦横に連結する方式である。外海岩礁域でこの方式を実施する場合、数十キロの小型基質では波浪やうねりにより施設端部からまくり上げられ、連結だけの施設固定が困難なことと、300kg以下の重い基質は底質が凸凹の岩礁域の施工で水中の連結が困難なことから、特許文献2は、実質的には砂地底質の設置を想定した方法と考えられる。
またこの小型ブロックの連結方式では基質更新の概念や、これを行うため陸上に基質回収をすることは考慮されない方式とみられる。
【0018】
以上の内容から小型漁船での設置を想定すると、連結作業がしやすい砂地海底で、数十キロの小型基質を、潜水作業により連結設置することが可能な方法であると思われる。
然しながら、角錐ブロックを砂地に設置した場合、前述したように、軽い質量であっても比重の重い角錐ブロックが砂地に埋没する洗掘が発生すること、波浪により舞い上げられた砂がブロックに撃ちつけられ表面に着生した生物を剥離することや、角錐ブロックの平坦な上面に砂泥が堆積するなど海藻類の着生には不利な条件と形状であることが指摘される。
また、設置された海藻ブロックは大小にかかわらず生物膜などで着生機能が低下しても、基質の回収や再設置は考慮されておらず、漁場に設置された海藻ブロックの再生は自然任せにされるものと思われる。
【0019】
さらに、特許文献2には、ポーラスコンクリートの立方体ブロックに固定リングおよび連結リングを介し四方に連結する方法が述べられている。ブロックの連結方法は古くから河川の護岸ブロックの連結工法が存在しており特段新規の方法とはいえない。
また小型軽量のポーラスブロックを縦横に連結、面構造を形成して全体の固定力を得ようとしているが、内湾など静穏域でなければこうした方法で固定は不可能である。外洋に面した海岸では、沖から来襲する波浪により沖陸の両側から施設が捲られるなど施設の破損を引き起こしやすい固定方法である。
簡便な方法で固定する場合は漁具で使用される錨や砂地では埋設型アンカーを、岩礁ではアンカーピンを採用することで施設を固定することができる。
【0020】
さらに、特許文献2では海水環境において各ブロックの固定リングを潜水作業により連結するための方法に連結リング(JIS規格シャックル)を採用している。
このシャックル素材はJIS Standard(JIS−B2801−1977)に該当するものと思われる。シャックルは陸上にあって使用荷重、引張強度、破断荷重などについて施工の安全性確保の点から強度が要求され、その強度が公表されている。
一方、一般的なブロック製作などで採用される鋼材はSS400鋼棒が多く、JIS−B2801に比べ形成加工を重視した軟質な素材であるため破断強度は低い数値を示している。海水中においてコード番号が相違する鋼材を連結もしくは誤って接触したままにすると、電解質の海水により電位差が生じて電食が発生する。この電食によりどちらか一方の金属腐食が進行して鋼棒でありながら痩せていき、早い場合は数年で破損することがある。
【0021】
同様にステンレス金具は表面上で錆が見られないため海水中で採用されることがあるが、例えば、アンカーブロックでSUS−304φ25mmを採用、約10年後に引き揚げた結果では丸棒内部に無数の虫食い状態の電食が観察されたため全ての養殖ブロックを廃棄した。この原因はブロック内部の補強材としてSS400鋼棒が配筋され、この一部とステンレス金具が接触することで大きな電位差が生じた結果とされている。
【0022】
こうした電位差を海中で生じさせない方法として、SS400材などの同一金属を採用する方法があるが、シャックルなど使用荷重や破断強度を求められる部材の場合、SS−400材などは特注で製作するため小ロットでは多大な経費が必要となる。
なお、電食を防ぐ簡易な方法は電位差を生じない材質例えば、ロープで金属との擦れを防止して連結固縛する方法がある。
【0023】
この特許文献2では方形ブロックが採用されているが、前述した通り上部が平面形状のブロックでは沈降した砂泥が波で払拭されにくく、従って海藻類の生育に不利な形状であることが指摘され、生物の生態や生息環境を理解、応用した方法とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2006−25720号公報
【特許文献2】特開2006−067952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前述したように、従来の技術は、種々の解決すべき問題点があり、また、特許文献1及び特許文献2についても解決すべき問題点がある。
【0026】
以上の現状に鑑み、本発明は、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させることができ、幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質、小型多孔質基質を設置する台座、小型多孔質基質を組み込んだ構造体および藻場造成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、所定範囲の大きさの複数の骨材が、コンクリートモルタルと接合材とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体を備え、前記多孔質ブロック体は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成ることを特徴とする小型多孔質基質を提供するものである。
【0028】
請求項2に係る発明は、前記接合材は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0029】
請求項3に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0030】
請求項4に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、底面側に向かって開放する中空部を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0031】
請求項5に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上、または、底面金具上に積層され、且つ、前記型枠または底面金具と固着するように形成され、前記型枠または底面金具側部に前記型枠または底面金具の外方斜め上方に突出する取手が取付けられ、前記型枠または底面金具の下面に、前記型枠または底面金具外方に両端が所定長さ突出する接合金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0032】
請求項6に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上に積層され、且つ、前記型枠と固着するように形成され、前記型枠に、他と連結するべく溶接するための溶接金具及び/または他と連結するための接合金具とが前記型枠から外方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0033】
請求項7に係る発明は、1乃至複数の前記多孔質ブロック体が基台上に固着され、前記基台の側部に、他と連結するべく溶接するための溶接金具が前記基台の側部から外方に突出して設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0034】
請求項8に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および型枠上に積層され、且つ、型枠と固着するように形成され、前記型枠に前記型枠の外方斜め上方に突出する取手が取付けられてなり、前記型枠および取手を備えた複数の多孔質ブロック体を、取り付け型枠体に取付け、前記取り付け型枠体の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0035】
請求項9に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、半円筒型に形成され、且つ、前記半円筒型の両側端部に、他と接合するための接合板が夫々固着されてなることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0036】
請求項10に係る発明は、請求項9記載の小型多孔質基質の前記接合板どうしを接合することにより対向する2つの前記半円筒型多孔質ブロック体を組み合わせて円筒型状の多孔質ブロック体を形成したことを特徴とする小型多孔質基質を提供するものである。
【0037】
請求項11に係る発明は、小型多孔質基質を載置するための載置部と、前記載置部を支持する脚部と、前記脚部の下部に設けられ、前記脚部を海底に係留するための開閉式アンカーまたは固定板式アンカーと、前記脚部に配設され、前記脚部が砂地等に於いて所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板と、波や流れを通過させる吹き抜け空間構造とを備えたことを特徴とする小型多孔質基質を設置する台座を提供するものである。
【0038】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を新設または既設構造体に組み込んだことを特徴とする小型多孔質基質を組み込んだ構造体を提供するものである。
【0039】
請求項13に係る発明は、1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を水面直下まで引き上げ、水面下を移動させ、所定場所の海中に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法を提供するものである。
【0040】
請求項14に係る発明は、1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を海中の砂地に設置した台座上に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の請求項1記載の発明によれば、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質を提供することができる。
また、多孔質ブロック体の外表面が凹凸状に形成されていることにより、着生・生育させた海藻付着器や生長点を食害動物から保護し、再生させることができる。
【0042】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、所定の接合力で骨材どうしを接合することができる。
【0043】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状などの山型形状に形成されているので、砂泥が滞留しにくく、また波により砂泥の払拭が起こりやすく、多孔質表面の機能が復活しやすいため、海藻類の着生条件を良好にすることができる。
また基質の山型形状は波浪により巻き上げられた砂が基質に打ち付けられる被害を防止することができ、山型構造の高低差により頂上部を保護する効果が得られる。
さらに、海底面から少しでも高い形状の基質は海底直上に比べ藻食性のウニや巻貝類の摂餌行動を通過する流速を利用して抑制できるため食害速度が遅くなり、また凹部の海藻付着器(根元部)をウニなど植食動物の食害から保護でき、即ち、付着器上部の成長点から葉体が伸長生長して再生する仕組みを残すことができ、結果として海藻類の生き残りと伸長生長が促進される効果が得られやすい。
【0044】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、中空部が小型動物類の住処や、隠れ家、或いは、中空部に無機肥料等を入れて藻類に栄養を与えることもできる。
【0045】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、型枠または底面金具によって多孔質ブロック体を保持することができ、また型枠または底面金具に取手を取り付けることができ、さらに多孔質ブロック体を取手を持って移動させることができ、また、取手にロープ等を固縛することによって、他のものと連結することができ、接合金具は、多孔質ブロック体を他の構造物または接合金具に取付け固着することができる。
【0046】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、型枠または底面金具は、多孔質ブロック体を保持することができ、溶接金具は、溶接により他の構造物または金具に溶接することができ、接合金具は、他の構造物または接合金具に取付け固着することができる。
【0047】
請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、基台は、1乃至複数の多孔質ブロック体を載置させて固着することができ、溶接金具は、溶接により他の基台や構造物と連結取付けすることができる。
【0048】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、取り付け型枠体によって複数の多孔質ブロック体を取付けることができ、取り付け金具によって他の構造物に連結して取り付けることができる。
【0049】
請求項9記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、魚礁など構造体等への利用が期待できる。
【0050】
請求項10記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、魚礁など構造体等への利用が期待できる。
【0051】
請求項11記載の発明によれば、砂地に小型多孔質基質を設置できると共に、軽量に製作できるため搬送が容易であり、且つ、吹き抜け空間構造により、洗掘現象の被害を受けることなく、さらに開閉式アンカーまたは固定アンカー板によって、確実に海底に係留でき、埋没防止板により、自重や洗掘で埋没することのない台座を提供することができる。
【0052】
請求項12記載の発明によれば、藻場を造成する場所にあわせた構造体を製作して、その中に請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を組み込こむことができ、藻場を造成する場所にあわせて比較的大型の藻場または多種多様の藻場を造成することができる。
【0053】
請求項13記載の発明によれば、海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ運搬して小型多孔質基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、生育させた海藻葉体を傷つけることなく所望の場所へ移設して藻場を造成することができる。
【0054】
請求項14記載の発明によれば海藻群落場所に於いて幼胚や配偶体、胞子体を確実に着生・生育させた小型多孔質基質を砂地に設置した台座上へ移設して砂地に藻場を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の角錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図2】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質の立ち上げ枠の平面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質の立ち上げ枠の側面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の平面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の側面図である。(e)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の正面図である。(f)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具に立ち上げ枠を組み合わせる状態を示す斜視図である。
【図3】(a)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図4】(a)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の平面図である。(b)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の側面図である。(c)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の正面図である。
【図5】(a)本発明の2つの角錐型小型多孔質基質を連結した状態を示す平面図である。(b)本発明の2つの角錐型小型多孔質基質を連結した状態を示す斜視図である。
【図6】(a)本発明の円錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の円錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の円錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の円錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の円錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図7】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質を岩礁域に設置固定した状態を示す斜視図である。(b)本発明の円錐型小型多孔質基質を岩礁域に設置固定した状態を示す斜視図である。
【図8】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質を作業者の手積みにより積み込んでいる状態を示す正面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質を機械積み込みしている状態を示す正面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質を連結した状態で船上から設置している状態を示す正面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質を単体ごとに船上から投入し、ダイバーが整理している状態を示す正面図である。
【図9】本発明の角錐型小型多孔質基質の移設状態を示す正面図である。
【図10】(a)本発明の引っ掛け金具の斜視図である。(b)本発明の引っ掛け金具の拡大斜視図である。(c)本発明の引っ掛け金具の正面図である。
【図11】(a)本発明の台座の正面図である。(b)本発明の台座の平面図である。(c)本発明の台座の斜視図である。
【図12】(a)本発明の台座の製作および運搬状態を示す正面図である。(b)本発明の台座の設置状態および小型多孔質基質の移設状態を示す正面図である。
【図13】(a)本発明の小型多孔質基質を設置した台座の運搬状態を示す正面図である。(b)本発明の小型多孔質基質を設置した台座を砂地設置する状態と、スポアバッグの設置状態を示す正面図である。
【図14】(a)本発明の変形例の台座の平面図である。(b)本発明の変形例の台座の設置例を示す正面図である。
【図15】(a)本発明の多孔質ブロック体を取付け型枠体に設置した小型多孔質基質の正面図、平面図および側面図である。(b)本発明の多孔質ブロック体を取付け型枠体に設置した小型多孔質基質を既存施設に取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】(a)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の側面図である。(c)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の斜視図である。
【図17】(a)本発明のピラミッド型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明のピラミッド型小型多孔質基質の側面図である。
【図18】(a)本発明の半円筒型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明の半円筒型小型多孔質基質の側面図である。(c)本発明の円筒型小型多孔質基質の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0057】
図1に於いて、1は、本発明の実施例1の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質1は、所定範囲の大きさの複数の骨材2が、コンクリートモルタル3と接合材4とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体5を備え、多孔質ブロック体5は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されている。
【0058】
前記接合材4は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むものである。
前記多孔質ブロック体5は、図1に示す如く、略四角錐状に形成されるが、略四角錐状に限定されることなく、例えば、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状等、種々の形状に形成されても良い。但し、原則的に山型形状に形成する。
そして、山型の積み上げ部分は徒手による積み上げにより行い、大きな空隙や凸凹形状を維持、確保する。
前記多孔質ブロック体5は、底面側に向かって開放する中空部6を有する。
【0059】
前記多孔質ブロック体5は、ロ字型金板に形成された底面金具7上に積層され、且つ、底面金具7と固着するように形成され、底面金具7側部に底面金具7の外方斜め上方に突出する取手8が取付けられ、底面金具7の下面に、底面金具7外方に両端が所定長さ突出する他と接合するための接合金具9が固着されている。
【0060】
而して、小型多孔質基質1の製造方法について説明すると、まず、図示しない作業台上に、図2に示す、下面に接合金具9が固着され、側部に取手8が取付けられた底面金具7を載せ、底面金具7上に、所定範囲の大きさの複数の骨材2にコンクリートモルタル3と接合材4とを混合して混練したものを積み重ねて固化させるものである。この時、多孔質ブロック体5と、底面金具7とは固着させる。
内部の中空部6は所定の容積量の砂を盛り上げ、その表面に水で濡らした新聞紙等を貼り付けて砂を包みこみ凸状に形成する。これにより小型多孔質基質1が固化したのち、脱型する際に砂が脱落して内部に中空部6が形成される。この方法により小型多孔質基質1の重量調整が容易に可能となる。また形成時の新聞紙などは中空壁面に付着して残存するが、流水で洗い流すことができ、更に残った紙片は設置する水中で分解される。
【0061】
図3は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の変形例の小型多孔質基質21を示したものであり、小型多孔質基質21は、前記底面金具(図1に於いて7)に代えて、前記底面金具(図1に於いて7)の4側辺部に立ち上げ枠を形成した形状の型枠22を設けたものである。
図4は、前記型枠22、型枠22に取り付けられた取手8及び接合金具9を示したものである。
而して、前記小型多孔質基質21の製造方法について説明すると、まず、図示しない作業台上に、図4に示す、下面に接合金具9が固着され、側部に取手8が取付けられた型枠22を載せ、型枠22内および型枠22上に、所定範囲の大きさの複数の骨材2にコンクリートモルタル3と接合材4とを混合して混練したものを積み重ねて固化させるものである。この時、多孔質ブロック体5と、型枠22とは固着させる。
【0062】
図5は、2つの前記小型多孔質基質1どうしを連結する方法を示している。小型多孔質基質1の取手8どうしは例えばロープ10で連結固縛する。同様にして、複数の小型多孔質基質1どうしを連結固縛することが可能である。ロープ10で連結することにより、従来の異なる金属部品を用いて連結する場合の電食の発生等を防止できる。
【0063】
図6に於いて、31は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質31は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の多孔質ブロック体(図1に於いて5)に代えて、略円錐型状の多孔質ブロック体32としたものである。
そして、小型多孔質基質31は、所定範囲の大きさの複数の骨材2が、コンクリートモルタル3と接合材4とにより相互に固着されて丸型の底面金具33上に積層される。
なお、前記底面金具33を、前記型枠(図3に於いて22)と同様な機能を持つ、丸型の型枠に代えることも可能である。
【0064】
図7(a)は、前記小型多孔質基質1を海底に設置・固定する方法を示している。隣接する小型多孔質基質1の取手8どうしをロープ10で連結することにより複数の小型多孔質基質1を連珠式に連結し、海底に設置すると共に、海底に設置した例えば柱状の海底固定具34に、連珠式で連結した小型多孔質基質1の両端のロープ10を夫々固定したものである。なお、図に於いては、小型多孔質基質1を用いて説明したが、小型多孔質基質1に代えて、前記小型多孔質基質21を用いることも可能である。
【0065】
図7(b)は、前記小型多孔質基質31を海底に設置・固定する方法を示している。
隣接する小型多孔質基質31の取手8どうしをロープ10で連結することにより小型多孔質基質31を連珠式で連結し、海底に設置すると共に、連珠式に連結した小型多孔質基質31の両端のロープ10を、例えば、海底に設置した漁具アンカー35によって固定したものである。
前述したように、ロープ10で連結することにより、従来の異なる金属部品を用いて連結する場合の電食の発生等を防止することができる。
【0066】
なお、漁具アンカー35の代わりに、前記海底固定具34を用いても良く、また、前記小型多孔質基質1を海底に設置・固定する方法に於いて、海底固定具34の代わりに、漁具アンカー35を用いても良い。
【0067】
図8および図9は、前記小型多孔質基質1を用いた藻場造成方法の具体例を示す。なお、小型多孔質基質1に代えて、小型多孔質基質21または31を用いることも可能である。
海藻の成熟時期に於いて、図8に示すように、先ず、小型多孔質基質1を船36に積み込む。
図8(a)は作業者37によって積み込む場合を示し、図8(b)はフォークリフト38によってパレットに積んだ小型多孔質基質1を積み込む場合を示している。
次に、図8(c)及び(d)に示すように、小型多孔質基質1を船36から母藻群落場所に投入し、必要に応じて、投入した小型多孔質基質1を修正整理する。
図8(c)は連結された小型多孔質基質1を船36から母藻群落場所に投入する例を示している。
船上で連結する場合は漁具アンカー35をロープ10の先端に連結し、適度な間隔をあけて連珠式にロープ10に小型多孔質基質1を連結し、ロープ10の後部端に漁具アンカー35を連結する。
図8(d)は船36から小型多孔質基質1を単体毎に母藻群落場所に投入し、投入された小型多孔質基質1をダイバー39が修正整理する例を示している。
【0068】
図9は、母藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育した時、磯焼け岩礁等の他の場所へ移設する例を示している。
先ず、母藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育したかを確認し、確認されたら、小型多孔質基質1を引上げる。
この引き上げを行なう道具として、例えば、図10に示す引っ掛け金具41を使用する。
引っ掛け金具41は、フック42の基端に設けたロープリング43に、引き上げロープ44の先端を結束し、フック42の基端部からフック42の先端方向に延び、フック42の先端近傍でフック42の基端側に折り曲げた係止部45の先端を引っ掛け竿46の先端に形成された引っ掛け穴(図示せず)に挿入させて係止させる。
【0069】
そして、係止部45の先端を引っ掛け穴に挿入させた状態で、係止部45の先端が引っ掛け穴から外れないように引き上げロープ44を引きながら竿端に掛け止め、引っ掛け竿46を操作してフック42を取手8に引っ掛け、係止部45の先端から、引っ掛け穴を外し引っ掛け竿46を取外し、引き上げロープ44を引上げ、または動力により巻き上げることにより小型多孔質基質1の引き上げを行なう。このとき引き上げる小型多孔質基質1に海藻類や動物類が生育するため、水面直下まで引上げ、巻き上げを停止して船36縁に固定した仮止めロープにより水面直下で小型多孔質基質1を縛り留め、引き上げロープ44を開放する(引揚げフック42と引き上げロープ44は1組で繰り返し作業できる)。
【0070】
ロープ10によって連結された小型多孔質基質1を全て所定の位置に引上げたら、船36を例えば磯焼け岩礁等となっている目標の所定位置まで移動し、このとき、小型多孔質基質1は、水面下で移動させ、図9の右側図に示すように所定位置で小型多孔質基質1を海底に沈設させる。
【0071】
前述した本発明の小型多孔質基質1,21,31は、次のような効果が期待できる。
(1)接合材として、鉄ファイバーまたは合成繊維ファイバーを混錬する場合は長期耐久性と強度を確保でき、天然素材ファイバーを混練する場合は、自己崩壊型基質に形成できる。
(2)小型軽量であるので、2人で陸上運搬が可能であり、海の静穏度が保たれる設置場所では基質単体を投入して姿勢を修正するだけで設置作業が行える。また基質を連結することで波による移動や転倒の軽減もしくは防止をする効果が得られる。
(3)山型形状に形成されているので、砂泥が波により払拭されやすい。また基質の山型形状は波浪により巻き上げられた砂が基質に打ち付けられる被害を防止して、山型構造の高低差により頂上部の生物類を生残らせる保護効果が得られる。
また、山型形状に形成されていることにより、基質が少しでも高さを持つことで光条件が有利に利用できる。
さらに、山型多孔質でやや大型の凸凹表面が形成されていることにより、海底面から少しでも高い形状の基質は海底直上に比べ流速が速いことで藻食性のウニや巻貝類の摂餌行動を抑制するため食害速度が遅くなり、凹部の海藻付着器(根元部)をウニなど植食動物の食害から保護でき、即ち、付着器上部の成長点から葉体が伸長生長して再生する仕組みを残すことができ、結果として海藻類の生き残り効果が得られやすい。
【0072】
(4)中空部を設けたことにより底生生物類の住処と施肥材を収容できる効果が得られる。
(5)基質どうしを船上や水中において結束連結する取手をもち、採苗時の設置場所が静穏であれば海底に単体もしくは複数の小型多孔質基質を連結した設置が可能である。
(6)増殖目的とする母藻(増殖対象とする海藻の親)の成熟時期に適合した水深・水温・波当りや場所を選んで、漁船により少人数の作業で設置が行えるため、海藻を確実に着生させる時期と場所を選ぶことができ、確実に目的海藻類の幼胚や配偶体、胞子体を基質表面に優占させ生育することができると共に、回収する場合は船上から取手を引っ掛けて引き上げられるため、船上における海藻の着生確認、生長量など必要な定量調査が行える。
【0073】
(7)小型軽量であり、取手8を備えているので、小型多孔質基質を海底に投入した後に取手8に引っ掛け金具41を引っ掛けて小型多孔質基質1または小型多孔質基質21の位置や姿勢を容易に修正することができる。
また、小型多孔質基質の連結作業および設置作業も容易である。
(8)船36にハコメガネと引っ掛け金具41を装備することにより、漁業者による回収や移設が容易に行なえる。
(9)沈設、移設、回収が容易であるので、目的外の生物膜や食害などで海藻が生育しない場合は、基質を回収して陸上の養生で基質更新して基質を再生した後、次の海藻成熟サイクルで再設置することが可能であり、繰り返し再利用できる。
【0074】
また、本発明の小型多孔質基質を海底に設置・固定する方法は、次のような効果が期待できる。
(1)増殖目的とする母藻(増殖対象とする海藻の親)の成熟時期に適合した水深・水温・波当りや場所を選んで、小型多孔質基質に確実に目的海藻類の幼胚や配偶体、胞子体を基質表面に優占させ生育することができ、船を磯焼け岩礁等の目標の所定位置まで移動し、小型多孔質基質を海底に沈設することにより、磯焼け岩礁等の目標の所定位置で、海藻を確実に生育させることができる。
(2)移設の際に、船上に引揚げずに水面付近に中吊りに固定することができ、移設先へは一度に複数基を移設でき、漁業者や一般人がこの作業を担うことが可能である。また、移設の際に、水中に存在させた状態で作業を行なうため着生・生育させた幼胚や配偶体、胞子体あるいは海藻葉体等の付着生物を傷つけることがない。
【0075】
なお、本発明の山型形状の小型多孔質基質は、現地実験によれば、基質周辺部の低い個所で付着物が少なく後から着生した藻類の生育が見られ、山型頂部付近では増殖目的の海藻類の優占と小型動物類の着生・生息が確認され、山型の形状が砂の撃ちつけ被害を最小限にして植生を保護・生残らせる機能が実証された。
【0076】
図11は小型多孔質基質1等を砂地へ設置するための台座51を示している。台座51は、方形の枠体51aと枠体51a内に格子状に配置される格子部51bとから成る、小型多孔質基質1を載置するための載置部52と、載置部52の四隅部から夫々垂設され、載置部52を支持する脚部53と、脚部53の下部に設けられ、開閉式によって脚部53を海底に係留するための開閉式アンカー54と、隣接する脚部53間に掛架され、平面視矩形状平板からなり、脚部53が砂地で所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板56と、載置部52と埋没防止板56の間に波や流れが吹き抜けるように構成した空間構造S1と、必要に応じて石材等を収容できる載置部直下の空間構造S2とを備えたものである。
前記空間構造S1は、前述したように、載置部52と、埋没防止板56との間に形成される空間構造であり、前記空間構造S2は、載置部52と、載置部52に対して略平行に載置部52から所定寸法下方に形成される棚部55との間に形成される空間構造である。従って、空間構造S2は、空間構造S1内に形成される。
なお、棚部55は、例えば、前記載置部52と同様に格子状に形成される。
【0077】
台座51は骨材部のみで構成され、開閉式アンカー54と脚部53は水流埋め込み補助パイプ57を埋設時に取り付けて、水流を海底の砂地面に噴射することで自重で埋没する。所定の深さまで埋没すると埋没防止板56により埋設が停止される。
【0078】
前記台座51は次のような効果が期待できる。
(1)小型軽量に設計することができ、入手しやすい一般資材を用いて各地の地元鉄工所において製作が可能である。
(2)上部に小型多孔質基質を取り付け、砂地底質までに空間が存在する構造としているので、この空間構造により、従来のコンクリート構造物を砂地に設置したときに発生する「洗掘現象」を防止することで、長期にわたり砂地を有効利用した施設を設置することが可能となる。
(3)開閉式アンカーにより波浪による転倒や移動を防止し、軽量な施設であっても、砂地を強力な固定資材として利用することができる。
【0079】
図12は、前記台座51を用いる例として、海藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育した時、小型多孔質基質1を砂地へ移設する例を示している。
先ず、前記台座51を製作して台座51を砂地に設置する。
次に、海藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育したかを確認し、確認されたら、小型多孔質基質1を前述と同様にして引上げる。
引上げた小型多孔質基質1は台座51を設置した砂地の場所まで移動させ、小型多孔質基質1を台座51上に下ろしてゆく。
そして、ダイバー29により、小型多孔質基質1を台座51上に確実に載置させ、小型多孔質基質1を台座51上に固定する。
なお、小型多孔質基質1を台座51に固定する方法は、電食を防止する観点から、従来の金属部品を用いる方法より、潜水によりロープを用いて固縛する方法が望ましい。
小型多孔質基質1の移設先は砂地海底(5〜30m前後の水深)を利用した藻場造成を実現する。
【0080】
砂地底質は海藻類の着生基質が無いためアマモなどの海草種を除き生息できない領域となっている。この条件は同時に植食動物類も生息できないことを示しており、場所にもよるが岩礁域と砂地の境界付近に存在する飛び根では、しばしば海藻類が繁茂する状況が観察される。これは、沿岸に比べ食害生物の食圧が少ないことで一度造成された藻場が長期にわたり維持されるためと考えられる。
沿岸では水深が深くなると光量が不足するため海藻類の繁殖にとって長時間を要する不利な条件となるが、あらかじめ浅海域で基質に海藻を着生し、ある程度まで中間育成した後に砂地底質に準備した本発明の台座51に移設することで、有効な質量を有する藻場を翌年に造成することができる。
【0081】
さらに沿岸表層水に比べて水深が深くなると水温低下とともに微量ながら栄養塩濃度が高くなることと、波浪の影響が少ないため海藻類の流出が防げる利点が得られる。
沖合いの砂地では深度や濁りが増すにつれて光量不足となるため、水深に適合した海藻種を選ぶ必要があるが、未利用の砂地底質を藻場として造成することで、魚介類の資源維持と増大そして再生に有効な漁場を提供することができる。
このように、本発明によると、台座を用いることにより、海藻が生育しない砂地に確実に藻場造成が可能となる。
【0082】
図13は、陸上で予め小型多孔質基質1を台座51上に設置したのち、台座51と共に小型多孔質基質1を所望の場所に設置する例を示している。
先ず、陸上で小型多孔質基質1を台座51上に設置し、台座51と共に小型多孔質基質1をユニック車58等を用いて海上に下ろし、吊り下げた状態で運搬(運搬1)、または台座51に予めフロート59等を付設したのち、フロート59によって浮力をつけた状態で曳航(運搬2)することにより所定の位置まで移送して、海底に沈設させる。
そして小型多孔質基質1近傍に母藻を収容するスポアバッグ(ネット状の種袋)60を設置し、小型多孔質基質1に海藻を生育させる。
図13に示す例は、増殖海藻の種類によるが漁場に母藻が存在しない場合の種苗を着生させる方法である。この方法は別の場所に生育する母藻を採集して前述の如くスポアバッグ60に収容して漁場に移入、フロート61等で中層に浮かせるなどの方法で幼胚や胞子体を小型多孔質基質1上に採苗することができる。
【0083】
図14(a)は小型多孔質基質1等を砂地へ設置するための前記台座(図11に於いて51)の変形例の台座62を示している。
台座62は、前記台座(図11に於いて51)の開閉式アンカー(図11に於いて54)に代えて固定板式アンカー63を設けたものである。
台座62の載置部64は、前記載置部(図11に於いて52)と同様に格子状に形成されても良く、図14(a)に示す如く、用途に合わせた適宜形状であっても良い。
なお、図14(a)に於いて、65は、水流埋め込み補助パイプ66を挿入するための孔である。
【0084】
図14(b)は、前記台座62の設置例を示し、前記孔65に挿入した水流埋め込み補助パイプ66により、台座62の固定板式アンカー63を砂地の所定深さに埋設して台座62を砂地に設置する。
載置部64には、適宜の小型多孔質基質が載置される。図14(b)に示した小型多孔質基質は、後述する半円筒型の小型多孔質基質101(図18参照)を示している。
【0085】
図15は、多孔質ブロック体5等を既存施設、例えば漁港・港湾の防波堤壁面、根固めブロック上面や魚礁ブロックなどに取付ける例を示している。
図15(a)に於いて、71は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質71は、多孔質ブロック体5が底面金具7上に積層され、且つ、底面金具7に底面金具7の外方斜め上方に突出する取手8が取付けられてなり、底面金具7および取手8を備えた複数の多孔質ブロック体5を、取り付け型枠体72に取付け、取り付け型枠体72の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具73が固着されているものである。
【0086】
図15(b)に示す如く、既存施設75に削孔したのち、削孔した穴に鋼材ピン74によって小型多孔質基質71の取り付け金具73を固定すれば、小型多孔質基質71を既存施設75に設置して藻場を形成することができる。
【0087】
また、小型多孔質基質71は、天然岩礁域などにも取り付け可能であり、同様にその他のあらゆる既存又は新設の施設、構造物、場所等にも取り付け可能である。
なお、前記鋼材ピン74に代えて、ボルトや、アンカーを使った固定も可能である。
また、前記多孔質ブロック体5に代えて前述した他の多孔質ブロック体とすることも可能である。
【0088】
図16に於いて、81は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質81は、前記小型多孔質基質(図3に於いて21)の多孔質ブロック体(図3に於いて5)に代えてブロック形状を蒲鉾型状に形成した多孔質ブロック体82とし、更に、多孔質ブロック体82の型枠83に、魚礁、増殖礁など構造体と連結するべく溶接するための溶接金具84が型枠83から外方に突出して設けられたものである。型枠83の下面には、前記接合金具(図3に於いて9)と同様の機能を有する接合金具85が固着されている。なお、小型多孔質基質81は、前記取手(図3に於いて8)は設けないが、設けることも可能である。
【0089】
図17に於いて、91は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質91は、図に示すピラミッド型、または、略山型形状、略角錐型状、略円錐型状に形成された複数の多孔質ブロック体92が基台93上に固着され、基台93の側端に、魚礁、増殖礁など構造体と連結するべく溶接するための溶接金具94が基台93側端から外方に突出して設けられたものである。
【0090】
図18(a)及び図18(b)に於いて、101は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質101は、多孔質ブロック体102が半円筒型に形成され、且つ、半円筒型の両側端部に他と接合するための接合板103が夫々固着されたものである。
魚礁や増殖礁などの構造体に接合板103を介して前記半円筒型の多孔質ブロック体101を上下左右に連接・固定することで、連続する半円型パネル構造体が得られ、魚礁など構造体で魚類の生息場、隠れ場、索餌場の造成が可能である。
そして、図18(c)に於いて、105は、更に、変形例の小型多孔質基質を示し、前記接合板103どうしを半割結合ボルト104や溶接等によって接合することにより対向する2つの半円筒型の多孔質ブロック体101を組み合わせて円筒型状の小型多孔質基質に形成したものである。
【0091】
前述した小型多孔質基質81、91、101および105は複数個を連結することで、或いは、同形状の大型基質を製作することで、多孔質との相乗効果も合わせて広大な表面積をもつ基質が形成される。この広大な表面積は水深が深い漁場においても短時間で大量の珪藻類が着生して、この珪藻類を着生場や餌料として利用する小形動物類へと食物連鎖の生態系が造成され、多種多様な付着生物の生息場が形成されると魚類には格好の食・住・隠れ場環境となる。
【0092】
また、図示は省略するが、鋼材を用いて組み立てた新設又は既設の構造体本体に、前記小型多孔質基質1,21,31,71,81,91,101,105を組み込むことも可能である。
そして、構造体本体を大型化することにより深い海中への設置が可能となると共に、構造体本体を藻場造成場所に合わせて製作することにより、多種多様な藻場を造成することができる。
なお、前記構造体本体は、鋼材に限定されるものではなく、コンクリート、樹脂、ファイバー等、その他の材料を用いて製作されたものでもよい。
【0093】
更に、前述した小型多孔質基質の多孔質ブロック体は種々の形状にすることが可能であり、また、その形状に合わせて、底面金具、型枠、接合金具、溶接金具等の形状や、取り付け方法を変化させることも可能である。
更に又、前述の説明に於いて、構造体に小型多孔質を組み込んだが、構造体が既存の施設であっても良く、或いは、新規又は既存の構造物であっても良く、天然の岩礁等であっても良い。
【0094】
また、本発明の多孔質ブロックの材料を用いた多孔質パネルや半円筒、円筒ブロックは側壁、天蓋など対象生物の嗜好性に適合する設計や応用利用ができるため、魚介類の増殖基質として広範囲に機能する構造物が形成できる。
【符号の説明】
【0095】
1,21,31,81,91,101,105 小型多孔質基質
2 骨材
3 コンクリートモルタル
4 接合材
5,32,82,92,102 多孔質ブロック体
6 中空部
7,33 底面金具
8 取手
9,85 接合金具
22,83 型枠
51,62 台座
52,64 載置部
53 脚部
54 開閉式アンカー
56 埋没防止板
63 固定板式アンカー
72 取り付け型枠体
73 取り付け金具
84,94 溶接金具
93 基台
103 接合板
S1,S2 空間構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させることができ、幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質、小型多孔質基質を設置する台座、小型多孔質基質を組み込んだ構造体および藻場造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の海藻増殖目的のブロックは規格、寸法、形状などが画一的な工業製品で、耐久性や耐波浪性、沿岸での安定性などを重視した設計から、主にコンクリート製の大型重量物が一般的であった。このため海藻ブロックは建設業者が製作し、作業船と大型機械により海域設置された。
【0003】
そして、海域設置される海藻ブロックは予め決められた工期内に設置されるため、増殖目的とする海藻類の成熟期とは無関係に施工されたり、海況条件が障害となって目的とする海藻類の成熟時期を逃す場合や、時化などで作業船が浅海漁場に係留できず、沖側に沈設することで施工水深が深すぎるなど不都合があった。こうしたことから設置後に着生する海藻は目的外の種類が生育したり、漁場が深い場合は時間経過とともに海藻類が生育しにくくなることがあった。
【0004】
一方、小型の海藻ブロックも開発・設置されているが、漁場に設置された後に波浪やうねりなどで移動、転倒、破損、砂地への埋没や、大型の海藻ブロックと同様時間経過による生物膜の優占など、小型海藻ブロックの海藻着生機能が低下または発揮されないものが多くみられた。
【0005】
また海藻ブロックは工業製品として均一な品質と作りやすさが要求され、角錐などの型枠形成がしやすい形状が採用されてきた。
然しながら、水深の深浅にかかわらず角錐ブロックを砂地に設置した場合、比重の重い角錐ブロックが波浪などの影響で砂地に埋没する洗掘が発生したり、波で舞い上げられた砂がブロックに撃ちつけられ表面に着生した生物を剥離することや、角錐ブロックの平坦な上面に砂泥が堆積するなど海藻類の着生には不利な条件と形状であることが指摘される。
【0006】
また、設置された海藻ブロックは大小にかかわらず生物膜などで海藻類の着生機能が低下しても、基質の回収や再設置などメンテナンスまでは考慮されておらず、漁場に設置された海藻ブロックの再生は自然任せにされてきた。
【0007】
一方、北日本等における磯焼けと言われる海藻類が極相を示す現象の原因は、水温上昇による栄養塩の不足やウニ、巻貝など植食性動物類の摂餌圧が主な原因と考えられている。つまり海水温上昇が進むことで水温躍層が形成され、深層の栄養塩を含む海水が表層に供給されない貧栄養状態となるため、水温が下がる冬季の沿岸でも海藻が育ち難い環境が形成される。その反面で水温上昇が植食動物類の摂餌行動を活性化するため、食圧による藻場の衰退と消滅が更に深刻になると考えられている。
【0008】
また、藻場造成を実施しても海藻類が着生、生育しない原因として、前述した海水温の上昇、海域の貧栄養、植食動物類の摂餌圧のほか、基質面を他の生物膜が優占して被覆すると加入海藻類が着生できない、工事期間が目的海藻の成熟生態に合わず幼胚や配偶体、胞子体が着生しない、沈降砂泥が付着面を被覆して幼体が窒息、流出または着生できない、基質の設置水深が深く光量が不足するなどの原因が考えられる。
【0009】
これら磯焼け現象の原因のうち人為的にコントロール不能な水温上昇と貧栄養を除くと、解決すべき課題は次の点に絞ることができる。
生物膜除去と基質更新、植食動物類の食害、海藻成熟と施工時期、基質形状の改良、設置時期と水深の調節などに整理される。
【0010】
前記基質更新と植食動物類の食害については、例えば、磯焼け漁場における大型海藻類の藻場再生方法として、食植動物であるウニ類を海藻類が着生する時期に除去する方法や、基質に付着した生物膜(雑海藻類や増殖目的とする海藻類の着生を妨げる優占生物)を除去することで、海藻類の着生場を復活させる基質更新(チェン振りや物理的な基質表面の掃除・剥離)の有効性が確認され一部地域で実施されてきた。
しかし地元が行う食害抑制のための潜水ウニ除去や、チェン振りなどの基質更新法は、作業効率が極めて悪く経費も高額であった。また雑藻駆除事業として専門業者が実施する基質更新法では、大型作業船を使用して海底の石材や海藻ブロックの付着生物を除去するが、施工から数年で元の雑海藻が繁茂する、あるいは海藻類が生育しない状態に戻る、施工経費が高額で補助事業として継続して採択されにくいなどの問題があった。
【0011】
また、食植動物の食害と基質形状については、例えば、従来の海藻ブロックはコンクリート型枠により形成されるため、ブロック表面は平坦な型枠の滑面を形成し、ここに海藻類が着生すると、これを餌料とするウニ、巻貝など植食動物類が移動、摂餌し易いため、着生した海藻類が発芽初期に食べ尽されることがあった。
さらに、海藻類の着生する有効面積を広げるため、四角錐や台形錐などの平坦な上面形状が採用され、この上面にポーラスコンクリートを板状に取り付けているものもみられる。
然しながら、海藻類が着生する時期に時化による海底土砂の巻上げや河川の出水などで沿岸水域に濁りが発生し、この濁りが波浪の沈静化とともに海底に沈降して、海藻ブロックやポーラスコンクリートの上面に砂泥粒子が堆積することがある。これら堆積砂泥は波浪によって払拭と沈降を繰り返すが、海藻ブロックの上部が平坦なポーラスコンクリートの場合、平面や空隙に砂泥が滞留しやすく払拭されにくいため、着生直後の幼芽が埋まり込んで窒息したり弱った幼芽が砂泥とともに流出するなどで、海藻類の着生が見られなくなることがあった。
【0012】
更に、コンクリートの海藻ブロックはその重さを利用して沿岸の岩礁域の藻場造成基質として採用されている。一方で砂地漁場を岩礁域化して有効利用しようとする考えがあり、岩礁に類似したコンクリート製の海藻ブロックが設置されることがあった。
しかし海藻類の増殖を目的とした浅海域では、往復波の繰り返しが水分子の移動を伴うことで、砂面上のブロック壁面に衝突してブロック基部の砂が流出するため、砂地の海藻ブロックは次第に海底に埋まりこみ、砂層厚が深い場所では徐々に埋没して海底面から消滅することがあった。
【0013】
此種、従来技術の先行文献として、例えば、特許文献1があり、特許文献1は、充実質のコンクリートからなる基盤と、その上面に着脱自在に載置される3個のポーラスコンクリートから成る着生基体とにより構成される藻場造成用構造物を提供するものである。
そして、この藻場造成用構造物をもちいた藻場造成方法は、着生する海藻の幼胚や配偶体、胞子体として天然採苗を主体としながら、着生基体に幼胚や配偶体、胞子体が着生してから移設して、次の着生基体を設置することで1シーズンに複数回の採苗を行おうとするものである。
然しながら、天然採苗により着生した胞子体を肉眼で観察できるまで少なくとも数ヶ月が必要であり、天然漁場における採苗はシーズンあたり1〜2回が限度となる可能性が高い。また海藻類の着生確認は潜水観察または重いポーラスコンクリートを引揚げて行う必要が生じるため作業効率の向上が望めない。
【0014】
更に、この技術によれば供給元と移植先に2基のコンクリート構造物が必要である。つまりポーラスコンクリートの着生元から外した着生基体はそのままで海底に沈設しても機能が保てないため、この構造物では着生元と移設先で2基の専用構造物が必要となる。従って管理費、材料費、設置費などの経費が高くなることと、移設にも専門の従事者が必要になると考えられる。
【0015】
特許文献1の図面に示されたコンクリート構造物は岩礁域に適した脚形状であり、この脚形状を砂地に設置した場合、砂地海底の洗掘が促進されやすく短時間で埋没することが予測される。また完全に埋没しないまでも一部が埋まることで、着生基体と海底面の高さが確保できず、波による砂の運搬・沈降・滞留や打ち付けが強くなり生物の増殖機能を阻害することが懸念される。
【0016】
さらに、特許文献1の図面に示されたポーラスコンクリートの着生基体はその分割数から数百kgの重量物であると推測され、小型漁船などで容易に移動ができる重量ではない。また藻場造成用構造物を設置する移設先のコンクリート構造物は、形状が複雑なため設置作業を船上だけで行うことは困難であり、施設の管理者である漁業者や一般人が施工することは難しいと見られる。
【0017】
此種、従来技術の先行文献として、更に、特許文献2があり、特許文献2は、小型基質を縦横に連結する方式である。外海岩礁域でこの方式を実施する場合、数十キロの小型基質では波浪やうねりにより施設端部からまくり上げられ、連結だけの施設固定が困難なことと、300kg以下の重い基質は底質が凸凹の岩礁域の施工で水中の連結が困難なことから、特許文献2は、実質的には砂地底質の設置を想定した方法と考えられる。
またこの小型ブロックの連結方式では基質更新の概念や、これを行うため陸上に基質回収をすることは考慮されない方式とみられる。
【0018】
以上の内容から小型漁船での設置を想定すると、連結作業がしやすい砂地海底で、数十キロの小型基質を、潜水作業により連結設置することが可能な方法であると思われる。
然しながら、角錐ブロックを砂地に設置した場合、前述したように、軽い質量であっても比重の重い角錐ブロックが砂地に埋没する洗掘が発生すること、波浪により舞い上げられた砂がブロックに撃ちつけられ表面に着生した生物を剥離することや、角錐ブロックの平坦な上面に砂泥が堆積するなど海藻類の着生には不利な条件と形状であることが指摘される。
また、設置された海藻ブロックは大小にかかわらず生物膜などで着生機能が低下しても、基質の回収や再設置は考慮されておらず、漁場に設置された海藻ブロックの再生は自然任せにされるものと思われる。
【0019】
さらに、特許文献2には、ポーラスコンクリートの立方体ブロックに固定リングおよび連結リングを介し四方に連結する方法が述べられている。ブロックの連結方法は古くから河川の護岸ブロックの連結工法が存在しており特段新規の方法とはいえない。
また小型軽量のポーラスブロックを縦横に連結、面構造を形成して全体の固定力を得ようとしているが、内湾など静穏域でなければこうした方法で固定は不可能である。外洋に面した海岸では、沖から来襲する波浪により沖陸の両側から施設が捲られるなど施設の破損を引き起こしやすい固定方法である。
簡便な方法で固定する場合は漁具で使用される錨や砂地では埋設型アンカーを、岩礁ではアンカーピンを採用することで施設を固定することができる。
【0020】
さらに、特許文献2では海水環境において各ブロックの固定リングを潜水作業により連結するための方法に連結リング(JIS規格シャックル)を採用している。
このシャックル素材はJIS Standard(JIS−B2801−1977)に該当するものと思われる。シャックルは陸上にあって使用荷重、引張強度、破断荷重などについて施工の安全性確保の点から強度が要求され、その強度が公表されている。
一方、一般的なブロック製作などで採用される鋼材はSS400鋼棒が多く、JIS−B2801に比べ形成加工を重視した軟質な素材であるため破断強度は低い数値を示している。海水中においてコード番号が相違する鋼材を連結もしくは誤って接触したままにすると、電解質の海水により電位差が生じて電食が発生する。この電食によりどちらか一方の金属腐食が進行して鋼棒でありながら痩せていき、早い場合は数年で破損することがある。
【0021】
同様にステンレス金具は表面上で錆が見られないため海水中で採用されることがあるが、例えば、アンカーブロックでSUS−304φ25mmを採用、約10年後に引き揚げた結果では丸棒内部に無数の虫食い状態の電食が観察されたため全ての養殖ブロックを廃棄した。この原因はブロック内部の補強材としてSS400鋼棒が配筋され、この一部とステンレス金具が接触することで大きな電位差が生じた結果とされている。
【0022】
こうした電位差を海中で生じさせない方法として、SS400材などの同一金属を採用する方法があるが、シャックルなど使用荷重や破断強度を求められる部材の場合、SS−400材などは特注で製作するため小ロットでは多大な経費が必要となる。
なお、電食を防ぐ簡易な方法は電位差を生じない材質例えば、ロープで金属との擦れを防止して連結固縛する方法がある。
【0023】
この特許文献2では方形ブロックが採用されているが、前述した通り上部が平面形状のブロックでは沈降した砂泥が波で払拭されにくく、従って海藻類の生育に不利な形状であることが指摘され、生物の生態や生息環境を理解、応用した方法とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2006−25720号公報
【特許文献2】特開2006−067952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前述したように、従来の技術は、種々の解決すべき問題点があり、また、特許文献1及び特許文献2についても解決すべき問題点がある。
【0026】
以上の現状に鑑み、本発明は、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させることができ、幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質、小型多孔質基質を設置する台座、小型多孔質基質を組み込んだ構造体および藻場造成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、所定範囲の大きさの複数の骨材が、コンクリートモルタルと接合材とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体を備え、前記多孔質ブロック体は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成ることを特徴とする小型多孔質基質を提供するものである。
【0028】
請求項2に係る発明は、前記接合材は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0029】
請求項3に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0030】
請求項4に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、底面側に向かって開放する中空部を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0031】
請求項5に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上、または、底面金具上に積層され、且つ、前記型枠または底面金具と固着するように形成され、前記型枠または底面金具側部に前記型枠または底面金具の外方斜め上方に突出する取手が取付けられ、前記型枠または底面金具の下面に、前記型枠または底面金具外方に両端が所定長さ突出する接合金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0032】
請求項6に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上に積層され、且つ、前記型枠と固着するように形成され、前記型枠に、他と連結するべく溶接するための溶接金具及び/または他と連結するための接合金具とが前記型枠から外方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0033】
請求項7に係る発明は、1乃至複数の前記多孔質ブロック体が基台上に固着され、前記基台の側部に、他と連結するべく溶接するための溶接金具が前記基台の側部から外方に突出して設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0034】
請求項8に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、型枠内および型枠上に積層され、且つ、型枠と固着するように形成され、前記型枠に前記型枠の外方斜め上方に突出する取手が取付けられてなり、前記型枠および取手を備えた複数の多孔質ブロック体を、取り付け型枠体に取付け、前記取り付け型枠体の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0035】
請求項9に係る発明は、前記多孔質ブロック体は、半円筒型に形成され、且つ、前記半円筒型の両側端部に、他と接合するための接合板が夫々固着されてなることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質を提供するものである。
【0036】
請求項10に係る発明は、請求項9記載の小型多孔質基質の前記接合板どうしを接合することにより対向する2つの前記半円筒型多孔質ブロック体を組み合わせて円筒型状の多孔質ブロック体を形成したことを特徴とする小型多孔質基質を提供するものである。
【0037】
請求項11に係る発明は、小型多孔質基質を載置するための載置部と、前記載置部を支持する脚部と、前記脚部の下部に設けられ、前記脚部を海底に係留するための開閉式アンカーまたは固定板式アンカーと、前記脚部に配設され、前記脚部が砂地等に於いて所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板と、波や流れを通過させる吹き抜け空間構造とを備えたことを特徴とする小型多孔質基質を設置する台座を提供するものである。
【0038】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を新設または既設構造体に組み込んだことを特徴とする小型多孔質基質を組み込んだ構造体を提供するものである。
【0039】
請求項13に係る発明は、1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を水面直下まで引き上げ、水面下を移動させ、所定場所の海中に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法を提供するものである。
【0040】
請求項14に係る発明は、1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を海中の砂地に設置した台座上に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の請求項1記載の発明によれば、増殖を目的とする海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ、漁業者や一般人が漁船により容易に運搬して基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、所望の場所へ移設して藻場を造成することができる小型多孔質基質を提供することができる。
また、多孔質ブロック体の外表面が凹凸状に形成されていることにより、着生・生育させた海藻付着器や生長点を食害動物から保護し、再生させることができる。
【0042】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、所定の接合力で骨材どうしを接合することができる。
【0043】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状などの山型形状に形成されているので、砂泥が滞留しにくく、また波により砂泥の払拭が起こりやすく、多孔質表面の機能が復活しやすいため、海藻類の着生条件を良好にすることができる。
また基質の山型形状は波浪により巻き上げられた砂が基質に打ち付けられる被害を防止することができ、山型構造の高低差により頂上部を保護する効果が得られる。
さらに、海底面から少しでも高い形状の基質は海底直上に比べ藻食性のウニや巻貝類の摂餌行動を通過する流速を利用して抑制できるため食害速度が遅くなり、また凹部の海藻付着器(根元部)をウニなど植食動物の食害から保護でき、即ち、付着器上部の成長点から葉体が伸長生長して再生する仕組みを残すことができ、結果として海藻類の生き残りと伸長生長が促進される効果が得られやすい。
【0044】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、中空部が小型動物類の住処や、隠れ家、或いは、中空部に無機肥料等を入れて藻類に栄養を与えることもできる。
【0045】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、型枠または底面金具によって多孔質ブロック体を保持することができ、また型枠または底面金具に取手を取り付けることができ、さらに多孔質ブロック体を取手を持って移動させることができ、また、取手にロープ等を固縛することによって、他のものと連結することができ、接合金具は、多孔質ブロック体を他の構造物または接合金具に取付け固着することができる。
【0046】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、型枠または底面金具は、多孔質ブロック体を保持することができ、溶接金具は、溶接により他の構造物または金具に溶接することができ、接合金具は、他の構造物または接合金具に取付け固着することができる。
【0047】
請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、基台は、1乃至複数の多孔質ブロック体を載置させて固着することができ、溶接金具は、溶接により他の基台や構造物と連結取付けすることができる。
【0048】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の発明の効果に加え、取り付け型枠体によって複数の多孔質ブロック体を取付けることができ、取り付け金具によって他の構造物に連結して取り付けることができる。
【0049】
請求項9記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、魚礁など構造体等への利用が期待できる。
【0050】
請求項10記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、魚礁など構造体等への利用が期待できる。
【0051】
請求項11記載の発明によれば、砂地に小型多孔質基質を設置できると共に、軽量に製作できるため搬送が容易であり、且つ、吹き抜け空間構造により、洗掘現象の被害を受けることなく、さらに開閉式アンカーまたは固定アンカー板によって、確実に海底に係留でき、埋没防止板により、自重や洗掘で埋没することのない台座を提供することができる。
【0052】
請求項12記載の発明によれば、藻場を造成する場所にあわせた構造体を製作して、その中に請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を組み込こむことができ、藻場を造成する場所にあわせて比較的大型の藻場または多種多様の藻場を造成することができる。
【0053】
請求項13記載の発明によれば、海藻の成熟期に水深・照度・波当りなどの着生条件を備える場所へ運搬して小型多孔質基質の沈設を行うことができると共に、確実に幼胚や配偶体、胞子体を着生・生育させた後、生育させた海藻葉体を傷つけることなく所望の場所へ移設して藻場を造成することができる。
【0054】
請求項14記載の発明によれば海藻群落場所に於いて幼胚や配偶体、胞子体を確実に着生・生育させた小型多孔質基質を砂地に設置した台座上へ移設して砂地に藻場を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の角錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図2】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質の立ち上げ枠の平面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質の立ち上げ枠の側面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の平面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の側面図である。(e)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具と接合金具の正面図である。(f)本発明の角錐型小型多孔質基質の底面金具に立ち上げ枠を組み合わせる状態を示す斜視図である。
【図3】(a)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図4】(a)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の平面図である。(b)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の側面図である。(c)本発明の変形例の角錐型小型多孔質基質の型枠と接合金具の正面図である。
【図5】(a)本発明の2つの角錐型小型多孔質基質を連結した状態を示す平面図である。(b)本発明の2つの角錐型小型多孔質基質を連結した状態を示す斜視図である。
【図6】(a)本発明の円錐型小型多孔質基質の平面図である。(b)本発明の円錐型小型多孔質基質の正面図である。(c)本発明の円錐型小型多孔質基質の底面図である。(d)本発明の円錐型小型多孔質基質の多孔質ブロック体の素材拡大図である。(e)本発明の円錐型小型多孔質基質の斜視図である。
【図7】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質を岩礁域に設置固定した状態を示す斜視図である。(b)本発明の円錐型小型多孔質基質を岩礁域に設置固定した状態を示す斜視図である。
【図8】(a)本発明の角錐型小型多孔質基質を作業者の手積みにより積み込んでいる状態を示す正面図である。(b)本発明の角錐型小型多孔質基質を機械積み込みしている状態を示す正面図である。(c)本発明の角錐型小型多孔質基質を連結した状態で船上から設置している状態を示す正面図である。(d)本発明の角錐型小型多孔質基質を単体ごとに船上から投入し、ダイバーが整理している状態を示す正面図である。
【図9】本発明の角錐型小型多孔質基質の移設状態を示す正面図である。
【図10】(a)本発明の引っ掛け金具の斜視図である。(b)本発明の引っ掛け金具の拡大斜視図である。(c)本発明の引っ掛け金具の正面図である。
【図11】(a)本発明の台座の正面図である。(b)本発明の台座の平面図である。(c)本発明の台座の斜視図である。
【図12】(a)本発明の台座の製作および運搬状態を示す正面図である。(b)本発明の台座の設置状態および小型多孔質基質の移設状態を示す正面図である。
【図13】(a)本発明の小型多孔質基質を設置した台座の運搬状態を示す正面図である。(b)本発明の小型多孔質基質を設置した台座を砂地設置する状態と、スポアバッグの設置状態を示す正面図である。
【図14】(a)本発明の変形例の台座の平面図である。(b)本発明の変形例の台座の設置例を示す正面図である。
【図15】(a)本発明の多孔質ブロック体を取付け型枠体に設置した小型多孔質基質の正面図、平面図および側面図である。(b)本発明の多孔質ブロック体を取付け型枠体に設置した小型多孔質基質を既存施設に取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】(a)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の側面図である。(c)本発明の蒲鉾型小型多孔質基質の斜視図である。
【図17】(a)本発明のピラミッド型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明のピラミッド型小型多孔質基質の側面図である。
【図18】(a)本発明の半円筒型小型多孔質基質の正面図である。(b)本発明の半円筒型小型多孔質基質の側面図である。(c)本発明の円筒型小型多孔質基質の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0057】
図1に於いて、1は、本発明の実施例1の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質1は、所定範囲の大きさの複数の骨材2が、コンクリートモルタル3と接合材4とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体5を備え、多孔質ブロック体5は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されている。
【0058】
前記接合材4は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むものである。
前記多孔質ブロック体5は、図1に示す如く、略四角錐状に形成されるが、略四角錐状に限定されることなく、例えば、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状等、種々の形状に形成されても良い。但し、原則的に山型形状に形成する。
そして、山型の積み上げ部分は徒手による積み上げにより行い、大きな空隙や凸凹形状を維持、確保する。
前記多孔質ブロック体5は、底面側に向かって開放する中空部6を有する。
【0059】
前記多孔質ブロック体5は、ロ字型金板に形成された底面金具7上に積層され、且つ、底面金具7と固着するように形成され、底面金具7側部に底面金具7の外方斜め上方に突出する取手8が取付けられ、底面金具7の下面に、底面金具7外方に両端が所定長さ突出する他と接合するための接合金具9が固着されている。
【0060】
而して、小型多孔質基質1の製造方法について説明すると、まず、図示しない作業台上に、図2に示す、下面に接合金具9が固着され、側部に取手8が取付けられた底面金具7を載せ、底面金具7上に、所定範囲の大きさの複数の骨材2にコンクリートモルタル3と接合材4とを混合して混練したものを積み重ねて固化させるものである。この時、多孔質ブロック体5と、底面金具7とは固着させる。
内部の中空部6は所定の容積量の砂を盛り上げ、その表面に水で濡らした新聞紙等を貼り付けて砂を包みこみ凸状に形成する。これにより小型多孔質基質1が固化したのち、脱型する際に砂が脱落して内部に中空部6が形成される。この方法により小型多孔質基質1の重量調整が容易に可能となる。また形成時の新聞紙などは中空壁面に付着して残存するが、流水で洗い流すことができ、更に残った紙片は設置する水中で分解される。
【0061】
図3は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の変形例の小型多孔質基質21を示したものであり、小型多孔質基質21は、前記底面金具(図1に於いて7)に代えて、前記底面金具(図1に於いて7)の4側辺部に立ち上げ枠を形成した形状の型枠22を設けたものである。
図4は、前記型枠22、型枠22に取り付けられた取手8及び接合金具9を示したものである。
而して、前記小型多孔質基質21の製造方法について説明すると、まず、図示しない作業台上に、図4に示す、下面に接合金具9が固着され、側部に取手8が取付けられた型枠22を載せ、型枠22内および型枠22上に、所定範囲の大きさの複数の骨材2にコンクリートモルタル3と接合材4とを混合して混練したものを積み重ねて固化させるものである。この時、多孔質ブロック体5と、型枠22とは固着させる。
【0062】
図5は、2つの前記小型多孔質基質1どうしを連結する方法を示している。小型多孔質基質1の取手8どうしは例えばロープ10で連結固縛する。同様にして、複数の小型多孔質基質1どうしを連結固縛することが可能である。ロープ10で連結することにより、従来の異なる金属部品を用いて連結する場合の電食の発生等を防止できる。
【0063】
図6に於いて、31は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質31は、前記小型多孔質基質(図1に於いて1)の多孔質ブロック体(図1に於いて5)に代えて、略円錐型状の多孔質ブロック体32としたものである。
そして、小型多孔質基質31は、所定範囲の大きさの複数の骨材2が、コンクリートモルタル3と接合材4とにより相互に固着されて丸型の底面金具33上に積層される。
なお、前記底面金具33を、前記型枠(図3に於いて22)と同様な機能を持つ、丸型の型枠に代えることも可能である。
【0064】
図7(a)は、前記小型多孔質基質1を海底に設置・固定する方法を示している。隣接する小型多孔質基質1の取手8どうしをロープ10で連結することにより複数の小型多孔質基質1を連珠式に連結し、海底に設置すると共に、海底に設置した例えば柱状の海底固定具34に、連珠式で連結した小型多孔質基質1の両端のロープ10を夫々固定したものである。なお、図に於いては、小型多孔質基質1を用いて説明したが、小型多孔質基質1に代えて、前記小型多孔質基質21を用いることも可能である。
【0065】
図7(b)は、前記小型多孔質基質31を海底に設置・固定する方法を示している。
隣接する小型多孔質基質31の取手8どうしをロープ10で連結することにより小型多孔質基質31を連珠式で連結し、海底に設置すると共に、連珠式に連結した小型多孔質基質31の両端のロープ10を、例えば、海底に設置した漁具アンカー35によって固定したものである。
前述したように、ロープ10で連結することにより、従来の異なる金属部品を用いて連結する場合の電食の発生等を防止することができる。
【0066】
なお、漁具アンカー35の代わりに、前記海底固定具34を用いても良く、また、前記小型多孔質基質1を海底に設置・固定する方法に於いて、海底固定具34の代わりに、漁具アンカー35を用いても良い。
【0067】
図8および図9は、前記小型多孔質基質1を用いた藻場造成方法の具体例を示す。なお、小型多孔質基質1に代えて、小型多孔質基質21または31を用いることも可能である。
海藻の成熟時期に於いて、図8に示すように、先ず、小型多孔質基質1を船36に積み込む。
図8(a)は作業者37によって積み込む場合を示し、図8(b)はフォークリフト38によってパレットに積んだ小型多孔質基質1を積み込む場合を示している。
次に、図8(c)及び(d)に示すように、小型多孔質基質1を船36から母藻群落場所に投入し、必要に応じて、投入した小型多孔質基質1を修正整理する。
図8(c)は連結された小型多孔質基質1を船36から母藻群落場所に投入する例を示している。
船上で連結する場合は漁具アンカー35をロープ10の先端に連結し、適度な間隔をあけて連珠式にロープ10に小型多孔質基質1を連結し、ロープ10の後部端に漁具アンカー35を連結する。
図8(d)は船36から小型多孔質基質1を単体毎に母藻群落場所に投入し、投入された小型多孔質基質1をダイバー39が修正整理する例を示している。
【0068】
図9は、母藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育した時、磯焼け岩礁等の他の場所へ移設する例を示している。
先ず、母藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育したかを確認し、確認されたら、小型多孔質基質1を引上げる。
この引き上げを行なう道具として、例えば、図10に示す引っ掛け金具41を使用する。
引っ掛け金具41は、フック42の基端に設けたロープリング43に、引き上げロープ44の先端を結束し、フック42の基端部からフック42の先端方向に延び、フック42の先端近傍でフック42の基端側に折り曲げた係止部45の先端を引っ掛け竿46の先端に形成された引っ掛け穴(図示せず)に挿入させて係止させる。
【0069】
そして、係止部45の先端を引っ掛け穴に挿入させた状態で、係止部45の先端が引っ掛け穴から外れないように引き上げロープ44を引きながら竿端に掛け止め、引っ掛け竿46を操作してフック42を取手8に引っ掛け、係止部45の先端から、引っ掛け穴を外し引っ掛け竿46を取外し、引き上げロープ44を引上げ、または動力により巻き上げることにより小型多孔質基質1の引き上げを行なう。このとき引き上げる小型多孔質基質1に海藻類や動物類が生育するため、水面直下まで引上げ、巻き上げを停止して船36縁に固定した仮止めロープにより水面直下で小型多孔質基質1を縛り留め、引き上げロープ44を開放する(引揚げフック42と引き上げロープ44は1組で繰り返し作業できる)。
【0070】
ロープ10によって連結された小型多孔質基質1を全て所定の位置に引上げたら、船36を例えば磯焼け岩礁等となっている目標の所定位置まで移動し、このとき、小型多孔質基質1は、水面下で移動させ、図9の右側図に示すように所定位置で小型多孔質基質1を海底に沈設させる。
【0071】
前述した本発明の小型多孔質基質1,21,31は、次のような効果が期待できる。
(1)接合材として、鉄ファイバーまたは合成繊維ファイバーを混錬する場合は長期耐久性と強度を確保でき、天然素材ファイバーを混練する場合は、自己崩壊型基質に形成できる。
(2)小型軽量であるので、2人で陸上運搬が可能であり、海の静穏度が保たれる設置場所では基質単体を投入して姿勢を修正するだけで設置作業が行える。また基質を連結することで波による移動や転倒の軽減もしくは防止をする効果が得られる。
(3)山型形状に形成されているので、砂泥が波により払拭されやすい。また基質の山型形状は波浪により巻き上げられた砂が基質に打ち付けられる被害を防止して、山型構造の高低差により頂上部の生物類を生残らせる保護効果が得られる。
また、山型形状に形成されていることにより、基質が少しでも高さを持つことで光条件が有利に利用できる。
さらに、山型多孔質でやや大型の凸凹表面が形成されていることにより、海底面から少しでも高い形状の基質は海底直上に比べ流速が速いことで藻食性のウニや巻貝類の摂餌行動を抑制するため食害速度が遅くなり、凹部の海藻付着器(根元部)をウニなど植食動物の食害から保護でき、即ち、付着器上部の成長点から葉体が伸長生長して再生する仕組みを残すことができ、結果として海藻類の生き残り効果が得られやすい。
【0072】
(4)中空部を設けたことにより底生生物類の住処と施肥材を収容できる効果が得られる。
(5)基質どうしを船上や水中において結束連結する取手をもち、採苗時の設置場所が静穏であれば海底に単体もしくは複数の小型多孔質基質を連結した設置が可能である。
(6)増殖目的とする母藻(増殖対象とする海藻の親)の成熟時期に適合した水深・水温・波当りや場所を選んで、漁船により少人数の作業で設置が行えるため、海藻を確実に着生させる時期と場所を選ぶことができ、確実に目的海藻類の幼胚や配偶体、胞子体を基質表面に優占させ生育することができると共に、回収する場合は船上から取手を引っ掛けて引き上げられるため、船上における海藻の着生確認、生長量など必要な定量調査が行える。
【0073】
(7)小型軽量であり、取手8を備えているので、小型多孔質基質を海底に投入した後に取手8に引っ掛け金具41を引っ掛けて小型多孔質基質1または小型多孔質基質21の位置や姿勢を容易に修正することができる。
また、小型多孔質基質の連結作業および設置作業も容易である。
(8)船36にハコメガネと引っ掛け金具41を装備することにより、漁業者による回収や移設が容易に行なえる。
(9)沈設、移設、回収が容易であるので、目的外の生物膜や食害などで海藻が生育しない場合は、基質を回収して陸上の養生で基質更新して基質を再生した後、次の海藻成熟サイクルで再設置することが可能であり、繰り返し再利用できる。
【0074】
また、本発明の小型多孔質基質を海底に設置・固定する方法は、次のような効果が期待できる。
(1)増殖目的とする母藻(増殖対象とする海藻の親)の成熟時期に適合した水深・水温・波当りや場所を選んで、小型多孔質基質に確実に目的海藻類の幼胚や配偶体、胞子体を基質表面に優占させ生育することができ、船を磯焼け岩礁等の目標の所定位置まで移動し、小型多孔質基質を海底に沈設することにより、磯焼け岩礁等の目標の所定位置で、海藻を確実に生育させることができる。
(2)移設の際に、船上に引揚げずに水面付近に中吊りに固定することができ、移設先へは一度に複数基を移設でき、漁業者や一般人がこの作業を担うことが可能である。また、移設の際に、水中に存在させた状態で作業を行なうため着生・生育させた幼胚や配偶体、胞子体あるいは海藻葉体等の付着生物を傷つけることがない。
【0075】
なお、本発明の山型形状の小型多孔質基質は、現地実験によれば、基質周辺部の低い個所で付着物が少なく後から着生した藻類の生育が見られ、山型頂部付近では増殖目的の海藻類の優占と小型動物類の着生・生息が確認され、山型の形状が砂の撃ちつけ被害を最小限にして植生を保護・生残らせる機能が実証された。
【0076】
図11は小型多孔質基質1等を砂地へ設置するための台座51を示している。台座51は、方形の枠体51aと枠体51a内に格子状に配置される格子部51bとから成る、小型多孔質基質1を載置するための載置部52と、載置部52の四隅部から夫々垂設され、載置部52を支持する脚部53と、脚部53の下部に設けられ、開閉式によって脚部53を海底に係留するための開閉式アンカー54と、隣接する脚部53間に掛架され、平面視矩形状平板からなり、脚部53が砂地で所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板56と、載置部52と埋没防止板56の間に波や流れが吹き抜けるように構成した空間構造S1と、必要に応じて石材等を収容できる載置部直下の空間構造S2とを備えたものである。
前記空間構造S1は、前述したように、載置部52と、埋没防止板56との間に形成される空間構造であり、前記空間構造S2は、載置部52と、載置部52に対して略平行に載置部52から所定寸法下方に形成される棚部55との間に形成される空間構造である。従って、空間構造S2は、空間構造S1内に形成される。
なお、棚部55は、例えば、前記載置部52と同様に格子状に形成される。
【0077】
台座51は骨材部のみで構成され、開閉式アンカー54と脚部53は水流埋め込み補助パイプ57を埋設時に取り付けて、水流を海底の砂地面に噴射することで自重で埋没する。所定の深さまで埋没すると埋没防止板56により埋設が停止される。
【0078】
前記台座51は次のような効果が期待できる。
(1)小型軽量に設計することができ、入手しやすい一般資材を用いて各地の地元鉄工所において製作が可能である。
(2)上部に小型多孔質基質を取り付け、砂地底質までに空間が存在する構造としているので、この空間構造により、従来のコンクリート構造物を砂地に設置したときに発生する「洗掘現象」を防止することで、長期にわたり砂地を有効利用した施設を設置することが可能となる。
(3)開閉式アンカーにより波浪による転倒や移動を防止し、軽量な施設であっても、砂地を強力な固定資材として利用することができる。
【0079】
図12は、前記台座51を用いる例として、海藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育した時、小型多孔質基質1を砂地へ移設する例を示している。
先ず、前記台座51を製作して台座51を砂地に設置する。
次に、海藻群落場所に設置された小型多孔質基質1に海藻の幼胚や配偶体、胞子体が着生し、生育したかを確認し、確認されたら、小型多孔質基質1を前述と同様にして引上げる。
引上げた小型多孔質基質1は台座51を設置した砂地の場所まで移動させ、小型多孔質基質1を台座51上に下ろしてゆく。
そして、ダイバー29により、小型多孔質基質1を台座51上に確実に載置させ、小型多孔質基質1を台座51上に固定する。
なお、小型多孔質基質1を台座51に固定する方法は、電食を防止する観点から、従来の金属部品を用いる方法より、潜水によりロープを用いて固縛する方法が望ましい。
小型多孔質基質1の移設先は砂地海底(5〜30m前後の水深)を利用した藻場造成を実現する。
【0080】
砂地底質は海藻類の着生基質が無いためアマモなどの海草種を除き生息できない領域となっている。この条件は同時に植食動物類も生息できないことを示しており、場所にもよるが岩礁域と砂地の境界付近に存在する飛び根では、しばしば海藻類が繁茂する状況が観察される。これは、沿岸に比べ食害生物の食圧が少ないことで一度造成された藻場が長期にわたり維持されるためと考えられる。
沿岸では水深が深くなると光量が不足するため海藻類の繁殖にとって長時間を要する不利な条件となるが、あらかじめ浅海域で基質に海藻を着生し、ある程度まで中間育成した後に砂地底質に準備した本発明の台座51に移設することで、有効な質量を有する藻場を翌年に造成することができる。
【0081】
さらに沿岸表層水に比べて水深が深くなると水温低下とともに微量ながら栄養塩濃度が高くなることと、波浪の影響が少ないため海藻類の流出が防げる利点が得られる。
沖合いの砂地では深度や濁りが増すにつれて光量不足となるため、水深に適合した海藻種を選ぶ必要があるが、未利用の砂地底質を藻場として造成することで、魚介類の資源維持と増大そして再生に有効な漁場を提供することができる。
このように、本発明によると、台座を用いることにより、海藻が生育しない砂地に確実に藻場造成が可能となる。
【0082】
図13は、陸上で予め小型多孔質基質1を台座51上に設置したのち、台座51と共に小型多孔質基質1を所望の場所に設置する例を示している。
先ず、陸上で小型多孔質基質1を台座51上に設置し、台座51と共に小型多孔質基質1をユニック車58等を用いて海上に下ろし、吊り下げた状態で運搬(運搬1)、または台座51に予めフロート59等を付設したのち、フロート59によって浮力をつけた状態で曳航(運搬2)することにより所定の位置まで移送して、海底に沈設させる。
そして小型多孔質基質1近傍に母藻を収容するスポアバッグ(ネット状の種袋)60を設置し、小型多孔質基質1に海藻を生育させる。
図13に示す例は、増殖海藻の種類によるが漁場に母藻が存在しない場合の種苗を着生させる方法である。この方法は別の場所に生育する母藻を採集して前述の如くスポアバッグ60に収容して漁場に移入、フロート61等で中層に浮かせるなどの方法で幼胚や胞子体を小型多孔質基質1上に採苗することができる。
【0083】
図14(a)は小型多孔質基質1等を砂地へ設置するための前記台座(図11に於いて51)の変形例の台座62を示している。
台座62は、前記台座(図11に於いて51)の開閉式アンカー(図11に於いて54)に代えて固定板式アンカー63を設けたものである。
台座62の載置部64は、前記載置部(図11に於いて52)と同様に格子状に形成されても良く、図14(a)に示す如く、用途に合わせた適宜形状であっても良い。
なお、図14(a)に於いて、65は、水流埋め込み補助パイプ66を挿入するための孔である。
【0084】
図14(b)は、前記台座62の設置例を示し、前記孔65に挿入した水流埋め込み補助パイプ66により、台座62の固定板式アンカー63を砂地の所定深さに埋設して台座62を砂地に設置する。
載置部64には、適宜の小型多孔質基質が載置される。図14(b)に示した小型多孔質基質は、後述する半円筒型の小型多孔質基質101(図18参照)を示している。
【0085】
図15は、多孔質ブロック体5等を既存施設、例えば漁港・港湾の防波堤壁面、根固めブロック上面や魚礁ブロックなどに取付ける例を示している。
図15(a)に於いて、71は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質71は、多孔質ブロック体5が底面金具7上に積層され、且つ、底面金具7に底面金具7の外方斜め上方に突出する取手8が取付けられてなり、底面金具7および取手8を備えた複数の多孔質ブロック体5を、取り付け型枠体72に取付け、取り付け型枠体72の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具73が固着されているものである。
【0086】
図15(b)に示す如く、既存施設75に削孔したのち、削孔した穴に鋼材ピン74によって小型多孔質基質71の取り付け金具73を固定すれば、小型多孔質基質71を既存施設75に設置して藻場を形成することができる。
【0087】
また、小型多孔質基質71は、天然岩礁域などにも取り付け可能であり、同様にその他のあらゆる既存又は新設の施設、構造物、場所等にも取り付け可能である。
なお、前記鋼材ピン74に代えて、ボルトや、アンカーを使った固定も可能である。
また、前記多孔質ブロック体5に代えて前述した他の多孔質ブロック体とすることも可能である。
【0088】
図16に於いて、81は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質81は、前記小型多孔質基質(図3に於いて21)の多孔質ブロック体(図3に於いて5)に代えてブロック形状を蒲鉾型状に形成した多孔質ブロック体82とし、更に、多孔質ブロック体82の型枠83に、魚礁、増殖礁など構造体と連結するべく溶接するための溶接金具84が型枠83から外方に突出して設けられたものである。型枠83の下面には、前記接合金具(図3に於いて9)と同様の機能を有する接合金具85が固着されている。なお、小型多孔質基質81は、前記取手(図3に於いて8)は設けないが、設けることも可能である。
【0089】
図17に於いて、91は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質91は、図に示すピラミッド型、または、略山型形状、略角錐型状、略円錐型状に形成された複数の多孔質ブロック体92が基台93上に固着され、基台93の側端に、魚礁、増殖礁など構造体と連結するべく溶接するための溶接金具94が基台93側端から外方に突出して設けられたものである。
【0090】
図18(a)及び図18(b)に於いて、101は、変形例の小型多孔質基質を示し、小型多孔質基質101は、多孔質ブロック体102が半円筒型に形成され、且つ、半円筒型の両側端部に他と接合するための接合板103が夫々固着されたものである。
魚礁や増殖礁などの構造体に接合板103を介して前記半円筒型の多孔質ブロック体101を上下左右に連接・固定することで、連続する半円型パネル構造体が得られ、魚礁など構造体で魚類の生息場、隠れ場、索餌場の造成が可能である。
そして、図18(c)に於いて、105は、更に、変形例の小型多孔質基質を示し、前記接合板103どうしを半割結合ボルト104や溶接等によって接合することにより対向する2つの半円筒型の多孔質ブロック体101を組み合わせて円筒型状の小型多孔質基質に形成したものである。
【0091】
前述した小型多孔質基質81、91、101および105は複数個を連結することで、或いは、同形状の大型基質を製作することで、多孔質との相乗効果も合わせて広大な表面積をもつ基質が形成される。この広大な表面積は水深が深い漁場においても短時間で大量の珪藻類が着生して、この珪藻類を着生場や餌料として利用する小形動物類へと食物連鎖の生態系が造成され、多種多様な付着生物の生息場が形成されると魚類には格好の食・住・隠れ場環境となる。
【0092】
また、図示は省略するが、鋼材を用いて組み立てた新設又は既設の構造体本体に、前記小型多孔質基質1,21,31,71,81,91,101,105を組み込むことも可能である。
そして、構造体本体を大型化することにより深い海中への設置が可能となると共に、構造体本体を藻場造成場所に合わせて製作することにより、多種多様な藻場を造成することができる。
なお、前記構造体本体は、鋼材に限定されるものではなく、コンクリート、樹脂、ファイバー等、その他の材料を用いて製作されたものでもよい。
【0093】
更に、前述した小型多孔質基質の多孔質ブロック体は種々の形状にすることが可能であり、また、その形状に合わせて、底面金具、型枠、接合金具、溶接金具等の形状や、取り付け方法を変化させることも可能である。
更に又、前述の説明に於いて、構造体に小型多孔質を組み込んだが、構造体が既存の施設であっても良く、或いは、新規又は既存の構造物であっても良く、天然の岩礁等であっても良い。
【0094】
また、本発明の多孔質ブロックの材料を用いた多孔質パネルや半円筒、円筒ブロックは側壁、天蓋など対象生物の嗜好性に適合する設計や応用利用ができるため、魚介類の増殖基質として広範囲に機能する構造物が形成できる。
【符号の説明】
【0095】
1,21,31,81,91,101,105 小型多孔質基質
2 骨材
3 コンクリートモルタル
4 接合材
5,32,82,92,102 多孔質ブロック体
6 中空部
7,33 底面金具
8 取手
9,85 接合金具
22,83 型枠
51,62 台座
52,64 載置部
53 脚部
54 開閉式アンカー
56 埋没防止板
63 固定板式アンカー
72 取り付け型枠体
73 取り付け金具
84,94 溶接金具
93 基台
103 接合板
S1,S2 空間構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の大きさの複数の骨材が、コンクリートモルタルと接合材とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体を備え、前記多孔質ブロック体は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成ることを特徴とする小型多孔質基質。
【請求項2】
前記接合材は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の小型多孔質基質。
【請求項3】
前記多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質。
【請求項4】
前記多孔質ブロック体は、底面側に向かって開放する中空部を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項5】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上、または、底面金具上に積層され、且つ、前記型枠または底面金具と固着するように形成され、前記型枠または底面金具側部に前記型枠または底面金具の外方斜め上方に突出する取手が取付けられ、前記型枠または底面金具の下面に、前記型枠または底面金具外方に両端が所定長さ突出する接合金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項6】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上に積層され、且つ、前記型枠と固着するように形成され、前記型枠に、他と連結するべく溶接するための溶接金具及び/または他と連結するための接合金具が前記型枠から外方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項7】
1乃至複数の前記多孔質ブロック体が基台上に固着され、前記基台の側部に、他と連結するべく溶接するための溶接金具が前記基台の側部から外方に突出して設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項8】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および型枠上に積層され、且つ、型枠と固着するように形成され、前記型枠に前記型枠の外方斜め上方に突出する取手が取付けられてなり、前記型枠および取手を備えた複数の多孔質ブロック体を、取り付け型枠体に取付け、前記取り付け型枠体の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項9】
前記多孔質ブロック体は、半円筒型に形成され、且つ、前記半円筒型の両側端部に、他と接合するための接合板が夫々固着されてなることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質。
【請求項10】
請求項9記載の小型多孔質基質の前記接合板どうしを接合することにより対向する2つの前記半円筒型多孔質ブロック体を組み合わせて円筒型状の多孔質ブロック体を形成したことを特徴とする小型多孔質基質。
【請求項11】
小型多孔質基質を載置するための載置部と、前記載置部を支持する脚部と、前記脚部の下部に設けられ、前記脚部を海底に係留するための開閉式アンカーまたは固定板式アンカーと、前記脚部に配設され、前記脚部が砂地等に於いて所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板と、波や流れを通過させる吹き抜け空間構造とを備えたことを特徴とする小型多孔質基質を設置する台座。
【請求項12】
請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を新設または既設構造体に組み込んだことを特徴とする小型多孔質基質を組み込んだ構造体。
【請求項13】
1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を水面直下まで引き上げ、水面下を移動させ、所定場所の海中に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法。
【請求項14】
1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を海中の砂地に設置した台座上に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法。
【請求項1】
所定範囲の大きさの複数の骨材が、コンクリートモルタルと接合材とにより相互に固着され積層されて形成される多孔質ブロック体を備え、前記多孔質ブロック体は、外表面が凹凸状に形成され、通水性を有するように形成されて成ることを特徴とする小型多孔質基質。
【請求項2】
前記接合材は、鉄ファイバー、合成繊維ファイバーまたは天然素材ファイバーのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の小型多孔質基質。
【請求項3】
前記多孔質ブロック体は、略角錐型状、または、略円錐型状、蒲鉾型状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質。
【請求項4】
前記多孔質ブロック体は、底面側に向かって開放する中空部を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項5】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上、または、底面金具上に積層され、且つ、前記型枠または底面金具と固着するように形成され、前記型枠または底面金具側部に前記型枠または底面金具の外方斜め上方に突出する取手が取付けられ、前記型枠または底面金具の下面に、前記型枠または底面金具外方に両端が所定長さ突出する接合金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項6】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および前記型枠上に積層され、且つ、前記型枠と固着するように形成され、前記型枠に、他と連結するべく溶接するための溶接金具及び/または他と連結するための接合金具が前記型枠から外方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項7】
1乃至複数の前記多孔質ブロック体が基台上に固着され、前記基台の側部に、他と連結するべく溶接するための溶接金具が前記基台の側部から外方に突出して設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項8】
前記多孔質ブロック体は、型枠内および型枠上に積層され、且つ、型枠と固着するように形成され、前記型枠に前記型枠の外方斜め上方に突出する取手が取付けられてなり、前記型枠および取手を備えた複数の多孔質ブロック体を、取り付け型枠体に取付け、前記取り付け型枠体の外側部には外方に所定長さ突出する複数の取り付け金具が固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の小型多孔質基質。
【請求項9】
前記多孔質ブロック体は、半円筒型に形成され、且つ、前記半円筒型の両側端部に、他と接合するための接合板が夫々固着されてなることを特徴とする請求項1または2記載の小型多孔質基質。
【請求項10】
請求項9記載の小型多孔質基質の前記接合板どうしを接合することにより対向する2つの前記半円筒型多孔質ブロック体を組み合わせて円筒型状の多孔質ブロック体を形成したことを特徴とする小型多孔質基質。
【請求項11】
小型多孔質基質を載置するための載置部と、前記載置部を支持する脚部と、前記脚部の下部に設けられ、前記脚部を海底に係留するための開閉式アンカーまたは固定板式アンカーと、前記脚部に配設され、前記脚部が砂地等に於いて所定の深さまで埋没すると埋没を停止させる埋没防止板と、波や流れを通過させる吹き抜け空間構造とを備えたことを特徴とする小型多孔質基質を設置する台座。
【請求項12】
請求項1乃至10のうちいずれか一に記載された小型多孔質基質を新設または既設構造体に組み込んだことを特徴とする小型多孔質基質を組み込んだ構造体。
【請求項13】
1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を水面直下まで引き上げ、水面下を移動させ、所定場所の海中に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法。
【請求項14】
1乃至複数の小型多孔質基質を海藻の成熟時期に海藻群落場所に単体または相互に連結して海中投入し、前記小型多孔質基質に海藻の幼胚や配偶体、胞子体を着生・成育させた後、前記小型多孔質基質を海中の砂地に設置した台座上に移設して前記小型多孔質基質に海藻を生育させる小型多孔質基質を用いた藻場造成方法。
【図2】
【図4】
【図10】
【図15】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図10】
【図15】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−24541(P2011−24541A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176457(P2009−176457)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(593077010)株式会社海洋探査 (3)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(593077010)株式会社海洋探査 (3)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]