説明

小型実験動物用体重測定及び記録装置

【課題】個々の小型実験動物を特定し、スピーディ且つ正確にその体重の測定を行い、かつ体重の値を特定された小型実験動物のデータとして正確に保存すること。
【解決手段】ICタグ6を埋め込んだマウス7の体重を測定する電子天秤1と、電子天秤1の筐体12に磁気シールド板で被覆して配した、ICタグ6との通信でその識別符号(UID)を読み取るリーダ・ライタ2と、そのICタグ6との通信用のアンテナコイル21であって、電子天秤1の重量測定面11に保持具4を介して配された受皿3の周囲に荷重を掛けないように配したアンテナコイル21と、マウス7を入れてその体重を測定するための受皿3であって、保持具4を介して電子天秤1の重量測定面11上に配した受皿3と、電子天秤1が測定したマウス7の体重の値をマウス7を特定する識別符号に関連づけて保存し、かつ表示するPC5とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体の識別のためにICタグを埋め込んだ多数の小型実験動物の体重の測定及び記録の正確性を期するための小型実験動物用体重測定及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マウス等の小型実験動物の管理のために固体識別の手段としてICタグを採用し、これを身体の一部に取り付け、或いは身体の一部に埋め込んでいる例は多数ある。
一方、マウス等の小型実験動物の管理内容の一つとして、毎日それらの体重を測定し、測定値をノートに記録し、或いはPC(パーソナルコンピュータ)に手入力で入力して保存し、管理することが行われている。
しかしこれらの従来の体重測定及び記録作業では、ICタグにより個々の小型実験動物を確認しても、体重測定の際に取り違えたり、ノートやPCへの測定値の記録乃至入力の際に間違った欄に記入したり、転記ミスをしたり等の危険があり、更にこの作業に費やされる労力も大きなものとなっている。
【0003】
特許文献1は、家禽個体管理システムに関するものであり、これは、複数羽の家禽にそれぞれ付着可能で、家禽毎に異なる識別コードを記載可能で、且つ、非接触方式によるデータ通信が可能な記憶タグと、その記憶タグから非接触方式により識別コードを読み取ることが可能で且つその読み取った識別コードを提示可能なリーダ手段と、そのリーダ手段により読み取られる識別コードに対応つけて家禽毎の成長過程に関する家禽管理情報を記憶する記憶手段と、その記憶手段への識別コードに対応つけて家禽管理情報を入力する入力手段と、その入力手段により前記記憶手段へ記憶された家禽管理情報を管理者に提示する出力手段とを備えている家禽個体管理システムであって、識別コードに対応つけて前記記憶手段に記憶される家禽管理情報が、家禽の体重値等である家禽個体管理システムである。
【0004】
この家禽個体管理システムは、個々の家禽に付着させた記憶タグを用いて、その保持する識別コードにより個々の家禽を識別するものであるが、識別コードによって家禽を特定した上で、装置外の体重測定手段で該家禽の体重を測定し、その値を、キーボードやマウス等の入力手段を用いて手入力するものである。それ故、最初に説明した例と同様に、家禽を取り違えるおそれや、体重の値の入力時に入力欄を誤るおそれ等もあり、最初に説明した例と同様の問題がある。
【0005】
特許文献2は、動物健康管理装置に関するものであり、これは、動物の体重値を入力する体重値入力手段と、動物の四肢の付け根にインピーダンス測定電極を接触させ、前後脚間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、動物の前後脚付け根間の距離を入力する脚間距離入力手段と、前記体重値と、前記前後脚間インピーダンス値と、前記前後脚付け根間の距離とから、健康評価データを算出する健康評価データ算出手段とを有する動物健康管理装置である。
【0006】
この動物健康管理装置は、その体重値入力手段が、動物の胸部、腹部、両脚部又は四肢の付け根の内少なくとも一箇所を載置し保定する保定手段を更に有し、動物の脚を前記保定手段以外に接触させない状態で保定することにより、保定された動物の体重を測定し入力するように構成されているものであり、対象の動物を保定手段に保定させれば、自動的に体重を測定し、その値を入力するもののようである。従ってその限りでは間違いが生じることはなさそうであるが、対象動物を特定するための手段が存在していないので、その取り違えの問題があり、これを何らかの手段で特定したとしても、その入力は手入力に成らざるを得ず、厄介であると共に、誤った入力を完全には回避できない問題がある。また前記保定手段は、マウス等の動作が敏捷な小型実験動物の保定の手段としては適切とは思われない。
【0007】
特許文献3は、動物の体重測定装置に関するものであり、これは、体重測定中のアナログ実測信号に対して一定時間間隔置きにサンプリングした実測体重データを時系列的に出力する電子天秤部と、相前後する実測体重データを比較してその偏差値を求める偏差値検出機能部と、前記偏差値が予め設定した設定値以下か否かを判定する偏差値判定機能部と、前記偏差値が設定値以下になったときの実測体重データを正規体重データとして読み取るデータ読取機能部を備えた動物の体重測定装置である。
【0008】
この動物の体重測定装置は、測定対象の動物が測定中に動き回って実測体重値が変動しても、より正確な値をスピーディに読み取ることが可能なものであると思われる。しかしそれに限定され、測定対象を特定する手段等が備えられていないため、他の何らかの手段でそれを特定し、記録する際には、人手によりその入力を行う他ない。その点では最初の例及び特許文献1、2の例と同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−81495号公報
【特許文献2】特開2004−254616号公報
【特許文献3】実用新案登録第3007595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の従来技術の問題点を解消し、マウス等の小型実験動物の管理に於いて、個々の小型実験動物を正確に特定した上で、スピーディ且つ正確にそれらの体重の測定を行い、更に得られた体重の値を特定された小型実験動物のデータとして正確にPCのデータベースに登録することのできる小型実験動物用体重測定及び記録装置を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1は、個体を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部のリーダ・ライタと該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグを埋め込んだ小型実験動物について、その体重を測定し、得られた体重測定値を、該ICタグとの通信で得た該小型実験動物の識別符号と対応させて保存し、該小型実験動物の体重の管理を行うことができるようにした小型実験動物用体重測定及び記録装置であって、
小型実験動物の体重を、受皿及び保持部材の重量と共に、全部又は一部が金属で構成された重量測定面で受けて測定する電子天秤と、
小型実験動物に埋め込まれたICタグとその保持する識別符号を含むデータの通信を行うべく、前記電子天秤に付設し、通信用のアンテナコイルを前記電子天秤の重量測定面に加重しない状態に配したリーダ・ライタと、
小型実験動物に埋め込まれているICタグと前記リーダ・ライタとの電磁波を用いた通信を妨げない材質で構成して前記電子天秤の重量測定面に前記保持部材を介して配し、その中に小型実験動物を入れてその体重を測定するために使用する前記受皿と、
前記受皿を、前記電子天秤の所定の位置に位置決めすべく、該電子天秤の重量測定面の所定の位置に固設し、該受皿に入れた小型実験動物に埋め込まれているICタグと前記リーダ・ライタとの間の電磁波を用いた通信を妨げない材質で構成した保持部材と、
前記電子天秤の測定した個々の小型実験動物の体重の値及び前記リーダ・ライタを介して受け取る該小型実験動物に埋め込まれたICタグの保持する識別符号の各々を受け取り、該識別符号と関連づけて該体重の値を記憶保持する記憶手段、並びに該識別符号と関連づけて該体重の値を表示するモニタを備えたコンピュータと、
で構成した小型実験動物用体重測定及び記録装置である。
【0012】
本発明の2は、本発明の1の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記リーダ・ライタの通信用のアンテナコイルに電磁気的に結合した補助アンテナコイルを付設したものである。
【0013】
本発明の3は、本発明の1又は2の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記受皿を、プラスチック、木材及びセラミックのいずれか、又はこれらのいずれか及び前記ICタグと前記リーダ・ライタとの電磁波を用いた通信の妨げにならない範囲の金属を組み合わせたものの、いずれかを用いて構成したものである。
【0014】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記受皿を、前記保持部材に着脱自在に結合するものとしたものである。
【0015】
本発明の5は、本発明の1、2、3又は4の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記受皿の底面と前記電子天秤の重量測定面との間隔を、該受皿に入れる小型実験動物に埋め込まれている前記ICタグと前記リーダ・ライタとの間の電磁波を用いた通信を妨げない間隔に設定したものである。
【0016】
本発明の6は、本発明の5の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記受皿の底面と前記電子天秤の重量測定面との間隔を50mm以上に設定したものである。
【0017】
本発明の7は、本発明の1、2、3、4、5又は6の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記受皿に底部周側から垂下する円筒状接続部を構成し、前記保持部材の上部に、該円筒状接続部を挿脱自在に挿入可能な、上開きの環状係止溝を構成したものである。
【0018】
本発明の8は、本発明の1、2、3、4、5、6又は7の小型実験動物用体重測定及び記録装置に於いて、前記リーダ・ライタの通信用のアンテナコイルを、前記電子天秤の筐体に結合した支持体又は独立の支持体で支持することとしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、その受皿に小型実験動物を入れると、これに埋め込まれているICタグの保持する識別符号が電磁波を介してリーダ・ライタにより読み取られ、該識別符号がデータ伝送路を通じてコンピュータに伝送され、その記憶手段に保存され、他方、受皿に入れられた小型実験動物は、電子天秤でその体重が測定され、その値が、同様にデータ伝送路を通じてコンピュータに伝送され、その記憶手段に該識別符号と関連づけられて保存される。また同時に該コンピュータのモニタで識別符号に関連づけられて体重の値が表示される。なお、この装置は、計測開始に当たって、前記電子天秤の読みをゼロに調整する操作、即ち、その体重測定面に配された保持部材と受皿の重量分をリセットするゼロ設定を予め行っておくものとする。
【0020】
こうして、装置の受皿に許容されるタイミングで順次小型実験動物を入れるだけで、自動的に、該小型実験動物を特定する識別符号が読み取られ、かつ体重が測定されて、該識別符号に関連づけてコンピュータの記憶手段に保存され、同時にモニタでもそれが表示される。手作業による厄介な入力がなくなり、かつその過程で生じるおそれのある誤入力等を確実に回避することができる。
【0021】
なお、以上の装置の動作過程に於いて、前記受皿と前記保持部材を、ICタグとリーダ・ライタとの電磁波を用いた通信に悪影響を与えない材質で構成したので、前記識別符号の読み取りは確実に行い得るものとなる。また前記リーダ・ライタもその通信用のアンテナコイルも電子天秤の重量測定機能に影響を与えないように設置してあるので、得られる小型実験動物の体重の値は正確なものとなる。
【0022】
本発明の2の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、受皿に入れられた小型実験動物中のICタグと電子天秤に付設されたリーダ・ライタとの電波を用いた通信がより確実に行われうるものとなる。
【0023】
本発明の3の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、前記受皿と前記保持部材が、ICタグとリーダ・ライタとの電磁波を用いた通信に悪影響を与えない材質で構成されているので、前記識別符号の読み取りが確実に行い得られる。
【0024】
本発明の4の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、受皿が保持部材に着脱自在になっているため、必要に応じてこれを取り外して洗浄したり消毒したりすることが容易にできる。
【0025】
本発明の5又は6の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、受皿に入れられた小型実験動物中のICタグと電子天秤に付設されたリーダ・ライタとの電波を用いた通信が、電子天秤の重量測定面の金属による電磁波の反射等に起因する悪影響を回避して、より確実に行われ得るものとなる。
【0026】
本発明の7の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、前記受皿の前記保持部材への着脱が容易であるため、必要に応じて該受皿を該保持部材から取り外してその洗浄や消毒を行うことが可能である。またその構成が簡単であり、容易に作成できるものでもある。
【0027】
本発明の8の小型実験動物用体重測定及び記録装置によれば、前記リーダ・ライタの通信用のアンテナコイルを前記電子天秤の重量測定面に加重するおそれのない状態で支持することが可能であり、それ故、正確な小型実験動物の体重測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1を示す模式図(筐体内の電源コードは省略)。
【図2】実施例1のPCのモニタに表示されたデータベースソフトの画面を示す図。
【図3】実施例2を示す模式図(筐体内の電源コードは省略)。
【図4】実施例3を示す模式図(筐体内の電源コードは省略)。
【図5】実施例3の一次アンテナコイル、二次アンテナコイルを示す断面図。
【図6】実施例1、2、3の受皿及び保持具の説明用の断面図。
【図7】電子天秤重量測定面と受皿底面との距離との関係に於けるUID読み取り確率を示す表図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明を実施するための形態を、図面を参照しながら実施例1〜3に基づいて説明する。
【0030】
<実施例1>
この実施例1の小型実験動物用体重測定及び記録装置は、図1に示すように、マウス用体重測定及び記録装置に構成したものであり、基本的に、マウス7の体重を測定する電子天秤1と、該電子天秤1に付設したリーダ・ライタ2と、マウス7を入れてその体重を測定するための受皿3と、該受皿3を前記電子天秤1の重量測定面11上に設置するための保持具(保持部材)4と、測定して得たマウス7の体重の値を該マウス7に埋め込んであるICタグ6との通信で得た該マウス7を特定する識別符号に関連づけて保存し、かつ表示するポータブル型のパーソナルコンピュータ(コンピュータ、以下PCと表示する)5とで構成したものである。
【0031】
前記電子天秤1は、図1に示すように、薄型でほぼ直方体状の筐体12の天板部にステンレス製の重量測定面11を構成し、内部に体重測定部13を収容し、かつ下面の四隅付近に高さ調整自在な調節脚14、14…を配して構成したものであり、重量測定面11及び体重測定部13の構成は、ロードセル式による公知の構成を採用している。この電子天秤1は、図示していないが、測定重量の値を較正するための較正部を備えている。この較正部は前記受皿3及び保持具4の重量分をリセットするゼロ設定部としても機能することができる。
【0032】
前記リーダ・ライタ2は、図1に示すように、前記電子天秤1の筐体12の空きスペース内に、図示しない磁気シールド板で被覆した上で、配置し、該リーダ・ライタ2の通信用のアンテナコイル21は、前記保持具4に装着された受皿3の周囲にその軸心を相互にほぼ一致させた状態に配する。該リーダ・ライタ2と該アンテナコイル21とは、前記電子天秤1の筐体12の一側に配してある入出力端子部15及びアンテナ用配線17を介して接続する。このアンテナ用配線17には同軸ケーブルを用いている。
【0033】
該リーダ・ライタ2は、測定対象のマウス7に埋め込むICタグ6に対応するそれであり、前記通信用のアンテナコイル21を介して該ICタグ6の保持する識別符号及びその他のデータを電磁波を用いてやり取りするものである。この実施例1では、該リーダ・ライタ2のキャリア周波数は13.56MHz、出力は1Wである。
【0034】
前記アンテナコイル21は、ループアンテナで、前記のように、その中心を前記受皿3の中心にほぼ一致させてその周囲に配置する。その高さは、実験的に最も感度の良いそれを見出して決定するが、この実施例1では、該受皿3の底面33より僅かに上方の位置に位置決めしている。これは前記電子天秤1の重量測定面11から50mmを若干越える高さ位置である。該アンテナコイル21は、この実施例1では、図1に示すように、電子天秤1とは独立したアンテナ支持体22で支持したものである。このアンテナ支持体22は、アクリル樹脂で作成した部材であり、同図に示すように、下部の拡大した支持体基部221と、該支持体基部221から直立する支柱部222と、該支柱部222から側方に延長する支持腕部223とからなり、該アンテナコイル21は、塩化ビニルの円環状支持パイプ224中に配された状態で、該円環状支持パイプ224を介して該支持腕部223の先端で支持されるようになっている。
【0035】
前記ICタグ6は、前記のように、前記リーダ・ライタ2と対応するものであり、ICチップ及びアンテナコイルからなるインレットをウレタンシートで挟持状に被覆した短冊状(長さ12mmラ幅2mmラ厚さ0.6mm)のものであり、共振周波数13.56MHzの近接型RFIDである。ICチップは、この実施例1では、UIDと称する識別符号及びその他の種々のデータを125バイトまで保存可能な記憶手段を有し、かつ演算機能をも備えたそれを採用している。UID以外のデータとしては、マウス7の血統、生年月日、飼育歴、体重、体温等を保持するものである。
【0036】
前記受皿3は、図1及び図6に示すように、この実施例1では、その上部を上広がり円筒状の受皿本体31に構成し、下部を、該受皿本体31の底部周側からストレートに垂下する円筒状接続部32に構成したものである。図1及び図6中、33は、受皿3の底面である。またこの受皿3は、この実施例1では、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)で成形したものであり、サイズは、上端開口部の内径D3は190mm、受皿本体31の高さH2は100mm、下部の円筒状接続部32の内径D4は100mm、高さH3は40mmである。なお、この受皿3は、その内面をできるだけ滑らかに加工して、マウス7が爪を立てて逃げ出すことができないようにする。その観点で、前記ABS樹脂でも十分有効であるが、より硬質のプラスチックで作成すれば更に好ましい。
【0037】
前記保持具4は、図1及び図6に示すように、この実施例1では、前記電子天秤1の重量測定面11にその下面を接合固着する円盤状の保持具基部41と、該保持具基部41の周縁から立ち上がる円筒部42と、該円筒部42の上端に開口させた環状係止溝43とで構成したものである。該環状係止溝43は、同図に示すように、前記受皿3の下部の円筒状接続部32をスムーズに、しかし相互間に無用な隙間の生じないように挿入可能に構成する。該保持具4に、前記受皿3を、前者の環状係止溝43に後者の下部の円筒状接続部32を挿脱自在に挿入可能とすることにより、着脱自在に結合可能としたものである。またこの保持具4は、該受皿3と同様に、ABS樹脂で成形したものであり、そのサイズは、高さH4:40mm、外径D6:112mm、内径D5:94mm、その環状係止溝43の溝幅Wは約3mmで、前記受皿3の円筒状接続部32を滑らかに挿入可能な寸法であり、かつその深さH5は30mmとなっている。
【0038】
なお、この保持具4は、前記のように、保持具基部41の下面を前記電子天秤1の重量測定面11に接合固着するものであるが、この実施例1では、接着剤を用いて接着固定した。またこの接着固定は、保持具基部41の中心と該重量測定面11の中心とを一致させて行ったものである。
【0039】
前記PC5は、前記したように、ポータブル型のそれであり、この実施例1では、市販の一般的なそれを採用した。該PC5は、図1に示すように、前記電子天秤1の体重測定部13及び前記リーダ・ライタ2と、該電子天秤1の入出力端子部15を介して接続してある。これらの接続はいずれもRS232Cインターフェースによる。入出力端子部15には、電子天秤1用及びリーダ・ライタ2用の電源ラインも延長してあり、その接続部から電源コード16が引き出されている。
【0040】
該PC5は、この実施例1では、測定対象のマウス7の識別符号であるUID、測定値である体重の値及び計測日時を登録し、その他の種々の処理を行うことのできるデータベースを構成するプログラムがインストールしてあり、これによって、それらのデータが該PC5の備える記憶手段である内蔵ハードディスクに保存され、モニタ51に、図2に示すように、表形式で表示されるようになっている。
【0041】
またこの実施例1では、該PC5は、これにインストールしてあるプログラムにより、計測開始操作をすると、前記電子天秤1の体重測定部13及びリーダ・ライタ2との間で前記RS232Cインターフェースを介して信号のやり取りを行うようになっている。
【0042】
詳細には、モニタ51に表示されている計測開始ボタン511をクリックし、データの受け入れが可能になると、PC5は、その旨の信号を電子天秤1の体重測定部13及びリーダ・ライタ2に送出する。この後、これを受け取った体重測定部13及びリーダ・ライタ2から、これに応じて体重値データ及びUIDデータが発せられると、これらを受け取り、更に該PC5の有する時計機能から日時データを読み取って、該体重値データ、UIDデータ及び日時データを相互に関連づけて登録すると共に、該体重値データを計測データ欄512に表示し、関連づけた上記データをデータ表示欄513に表示する。またこの時点での計測件数を計測件数欄514に表示する。該計測件数は、受け取った体重値データの数を計数してその数値データを表示する。
【0043】
以上の動作が完了すると、PC5は、データの受け入れが可能になった旨の信号を送出し、以上の動作を繰り返すことになる。こうして必要数のマウス7、7…の体重測定及び記録が完了した後、終了ボタン515をクリックすると、この実施例1では、登録された以上の全データが、PC5に内蔵されている記憶手段であるハードディスクに保存され、その後、このデータベースソフトの動作が終了するようになっている。その他、この実施例1では、以上の全データを、CSV保存のボタン516をクリックすることで、CSV形式で保存することも可能になっている。
【0044】
なお、既に保存されているUIDについての新たな体重値データを保存することになる場合には、対応するUIDの記憶領域に新たな体重値データ及び日時データが追記されるようになっている。
【0045】
なおまた、図中、52は、PC5の入力手段であるキーボードである。
【0046】
従ってこの実施例1のマウス用体重測定及び記録装置は次のように使用する。
まず、洗浄し、消毒した清潔な受皿3を、電子天秤1の重量測定面11上に固設した保持具4に、先に説明したように、前者の円筒状接続部32を環状係止溝43に挿入することによりセットする。また前記PC5を前記RS232Cインターフェースによるケーブルで接続し、電源コード16のプラグをコンセント等に接続し、電子天秤1及びリーダ・ライタ2のメインスイッチをオンにし、更にPC5の電源をオンとし、PC5にインストールしてある前記データベースソフトを立ち上げる。
【0047】
なお、以上の準備操作に前後して、前記電子天秤1の読みをゼロに調整する操作、即ち、その体重測定面11に配された保持具4と受皿3の重量分をリセットするゼロ設定を予め行っておくこととする。また電子天秤1の筐体12の下面に配してある調節脚14、14…を調節して該筐体12の上面が水平になるようにしておく。
【0048】
その後、使用者が、PC5のモニタ51に表示される前記計測開始ボタン511をクリックして動作を開始させる。この後、PC5側でデータの受け入れが可能になると、その旨の信号が電子天秤1の体重測定部13及びリーダ・ライタ2に送出され、これを受け取った体重測定部13及びリーダ・ライタ2から、それに応じて体重値データ及びUIDデータが発せられる。PC5は、これらを受け取ると、更に該PC5の有する時計機能から日時データを読み取って、該体重値データ、UIDデータ及び日時データを相互に関連づけて該データベースに登録すると共に、該体重値データを計測データ欄512に表示し、関連づけた以上のデータをデータ表示欄513に表示する。またこの時点での計測件数を計測件数欄514に表示する。該計測件数は、受け取った体重値データの数を順次計数してその数値データを表示する。
【0049】
以上の一サイクルの動作が完了すると、PC5は、データの受け入れが可能になった旨の信号を順次電子天秤1及びリーダ・ライタ2に送出し、以上の動作サイクルを繰り返すことになる。こうして必要数のマウス7、7…の体重測定及び記録が完了した後、終了ボタン515をクリックすると、この実施例1では、データベースに登録された以上の全データが、PC5に内蔵されている記憶手段であるハードディスクに保存され、その後、このデータベースソフトの動作が終了する。
【0050】
以上に於いて、マウス7の特定は、該マウス7に埋め込んであるICタグ6と前記リーダ・ライタ2とが電磁波を介した通信を行うことによって、前者が保持する識別符号であるUIDを読み取ることによって行う。リーダ・ライタ2は、UIDデータをPC5に前記の手順で送り、PC5では、新たなUIDであれば、データベースに新たに登録し、別に読み込む電子天秤1からの体重値データを当該のUIDの所定の記入欄に記入登録する。前記のように、対応する所定の記入欄に測定日時も記入登録する。
【0051】
このように、マウス7を特定するUIDデータと当該のマウス7の体重値データとは、自動的に関連づけて登録されるので、手作業で行う場合のような取り違え等が起こるおそれがない。
【0052】
UIDが登録済みのそれであれば、データベース中の当該のUIDが検索され、別に電子天秤1から読み込む体重値データは当該のUIDの所定の記入欄に追記登録されることになる。この場合も、自動的に所定のUIDと関連づけられるので、これを人手で行う場合のように誤るおそれは全くない。
【0053】
前記マウス7の体重測定は、対象のマウス7を前記受皿3に入れることにより、自動的に行うものであるが、このとき、前記リーダ・ライタ2の通信用のアンテナコイル21は、電子天秤1から独立した前記アンテナ支持体22で支持されており、受皿3や保持具4に全く接触しておらず、電子天秤1の重量測定面11に荷重を掛けるおそれが全くないので、測定対象のマウス7の体重測定を正確に行うことができる。
【0054】
また前記受皿3は、その円筒状接続部32の高さH3を40mmとし、これを挿入接続する保持具4の高さH4を40mmに、そしてその環状係止溝43の深さH5を30mmとしたため、該受皿3の底面33の高さは、電子天秤1の重量測定面11から50mmとなる。他方、リーダ・ライタ2のアンテナコイル21も該重量測定面11から50mmを若干越える高さ位置に配してある。従って受皿3に入れられたマウス7のICタグ6との電磁波による通信は該重量測定面11から50mmを越える高さで行われ、該重量測定面11からの電磁波の反射による悪影響を回避することができる。そのため、UIDデータ等のデータの読み取りエラー等の問題の生じるおそれは殆どない。
【0055】
前記受皿3と前記保持具4とは、ABS樹脂で構成されているため、この面でも、ICタグ6とリーダ・ライタ2との電磁波を用いた通信に悪影響を与えない。
更にまた前記受皿3は、保持具4に着脱自在に配したものであるため、必要に応じて取り外して、洗浄や消毒を行うことができる利点を有する。
【0056】
測定対象の全てのマウス7、7…の測定及びそのデータベースへの登録が完了した後、終了ボタン515をクリックすると、この実施例1では、登録された以上の全データが、PC5に内蔵されている記憶手段であるハードディスクに保存され、その後、このデータベースソフトの動作が終了する。またこの実施例1では、以上の全データを、必要があれば、CSV保存のボタン516をクリックすることで、CSV形式で保存することも可能である。
【0057】
この実施例1の小型実験動物用体重測定及び記録装置で600匹のマウス7、7…の体重測定及び記録を行ったところ、体重測定及び記録は良好に行われ、ICタグ6とリーダ・ライタ2間の通信エラーは1件も生じなかった。図7に示すように、受皿3の底面33及びアンテナコイル21の電子天秤1の重量測定面からの高さが50mmを越えていれば、UIDの読み取りは100%成功するものとなった。これに対して、受皿3及び保持具4のみを交換し、受皿の底面を電子天秤1の重量測定面から40mmの高さにし、前記アンテナコイル21の高さも該重量測定面から40mmの高さに設置したところ、同図に示すように、UIDの読み取りエラーが約7%発生する結果となった。もっともこの程度の高さの場合は、一度の読み取りでエラーとなっても、受皿内のマウス7の向きを変えると、読み取りは成功した。なお、図7中の平行斜線部分は、UID読み取り可否のばらつきを示している。
【0058】
<実施例2>
この実施例2の小型実験動物用体重測定及び記録装置は、実施例1と同様に、マウス用体重測定及び記録装置に構成したものであり、図3に示すように、基本的に、マウス7の体重を測定する電子天秤1と、該電子天秤1に、これとは別の筐体2a2に収容して付設したリーダ・ライタ2aと、マウス7を入れてその体重を測定するための受皿3aと、該受皿3aを前記電子天秤1の重量測定面11上に設置するための保持具4aと、測定して得たマウス7の体重の値を該マウス7に埋め込んであるICタグ6aとの通信で得た該マウス7を特定する識別符号であるUIDに関連づけて保存し、かつ表示するポータブル型のPC5とで構成したものである。
【0059】
この実施例2では、電子天秤1及びPC5は、各々実施例1のそれらと全く同様の構成である。PC5は、それにインストールされているデータベースソフトも同様である。
前記リーダ・ライタ2aは、それ自体の構成としては、出力が300mWであること及びその通信用のアンテナコイル2a1の内径が99mmであって若干小径であることを除いては、実施例1のリーダ・ライタ2と全く同様である。もっとも、このリーダ・ライタ2aは、実施例1のリーダ・ライタ2のように電子天秤1の筐体12中に配するのではなく、独自の筐体2a2中に、電子天秤1からの影響を回避するために磁気シールド板で被覆して配したものである。この筐体2a2は、同図に示すように、電子天秤1の筐体12と全く同様の寸法形状であり、下面の四隅付近に、電子天秤1の筐体12の調節脚14、14…と同様の調節脚2a3、2a3…が配してあるものである。前記電子天秤1は、このリーダ・ライタ2aの筐体2a2上に載せた状態に配置する。
【0060】
該リーダ・ライタ2aのアンテナコイル2a1は、図3に示すように、該リーダ・ライタ2aの筐体2a2の側部から立ち上げたアンテナ支持体2a4で支持する。該アンテナコイル2a1は、同図に示すように、前記保持具4aに装着された受皿3aの周囲にその軸心を相互にほぼ一致させた状態に配する。該リーダ・ライタ2aと該アンテナコイル2a1とは、該リーダ・ライタ2a用の筐体2a2の一側部に配してある入出力端子部及びアンテナ用配線2a6を介して接続する。このアンテナ用配線2a6には同軸ケーブルを用いている。またリーダ・ライタ2aから延びる電源コード2a5が筐体2a2から延長状態になっている。
【0061】
前記アンテナコイル2a1は、前記のように、その中心を前記受皿3aの中心にほぼ一致させてその周囲に配置する。その高さは、当然、実験的に最も感度の良いそれを見出して決定するが、この実施例1では、該受皿3aの底面3a3より僅かに上方の位置に位置決めしている。これは前記電子天秤1の重量測定面11から50mmを若干越える高さ位置である。該アンテナコイル2a1は、この実施例2では、図3に示すように、リーダ・ライタ2aの筐体2a2の側部から立ち上げたアンテナ支持体2a4で支持したものである。このアンテナ支持体2a4は、アクリル樹脂製の部材であり、同図に示すように、下部の横方向に延びる水平基部2a41と、該水平基部2a41から直立する支柱部2a42と、該支柱部2a42の上端から側方に延長する支持腕部2a43とからなり、該アンテナコイル2a1は、該支持腕部2a43の先端で支持されるようになっている。該アンテナコイル2a1は、詳細には、塩化ビニル製の円環状支持パイプ2a44に挿入した上で、該円環状支持パイプ2a44を介して前記アンテナ支持体2a4の支持腕部2a43で支持するものである。
【0062】
前記受皿3aは、実施例1の受皿3と基本構成が同様であり、同様の材質で構成し、同様の構成要素からなる。即ち、上部の上広がり円筒状の受皿本体3a1と下部のストレートな円筒状接続部3a2とで構成したものである。図3及び図6中、3a3は、受皿3aの底面である。この受皿3aは、サイズのみが実施例1の受皿3と異なり、上端開口部の内径D3は175mm、受皿本体3a1の高さH2は100mm、下部の円筒状接続部3a2の内径D4は92mm、高さH3は40mmである。
【0063】
前記保持具4aは、図3及び図6に示すように、この実施例1の保持具4とほぼ同様であり、同様の材質で、同様の機能を有する構成要素からなる。具体的には、円盤状の保持具基部4a1と、円筒部4a2と、該円筒部4a2の上端に開口させた環状係止溝4a3とからなる。云うまでもなく、該環状係止溝4a3は、前記受皿3aの円筒状接続部3a2をスムーズに、しかし相互間に無用な隙間の生じないように挿入可能に構成したものである。該保持具4aに、前記受皿3aを、前者の環状係止溝4a2に後者の下部の円筒状接続部3a2を挿脱自在に挿入可能とすることにより、着脱自在に結合可能としたものである。またこの保持具4aは、該受皿3aと同様にの材質で成形したものであり、そのサイズは、高さH4:40mm、外径D6:104mm、内径D5:86mm、その環状係止溝4a3の溝幅Wは3mm、深さH5は30mmである。
【0064】
なお、この保持具4aは、前記のように、保持具基部4a1の下面を前記電子天秤1の重量測定面11に接合固着するものであるが、この実施例2でも、実施例1と同様に、接着剤を用いて接着固定した。またこの接着固定は、保持具基部4a1の中心と該重量測定面11の中心とを一致させて行ったものである。
【0065】
前記ICタグ6aは、実施例1のICタグ6とほとんど同様の構成であり、同様の通信機能、データ記憶機能及び演算機能を有しており、マウス7に埋め込んで使用するものである。前記リーダ・ライタ2aに対応しており、これと良好に通信可能なものでもある。
【0066】
従ってこの実施例2のマウス用体重測定及び記録装置は実施例1のそれと全く同様に使用可能であり、同様の効果を有する。
【0067】
若干異なる部分に関して以下に述べる。
この実施例2のリーダ・ライタ2aは、実施例1のリーダ・ライタ2の出力が1Wであるのに対して、300mWであるが、マウス7中に埋め込まれたICタグ6aとの通信はほぼ不都合なく行い得られた。600匹のマウス7、7…の測定・記録を連続的に行ってみたが、その内、3匹についてUIDの読み取りが直ちにできないことがあり、そのときは、マウス7の位置を少し変えることにより、いずれも直ちに通信に成功した。従ってリーダ・ライタ2aは、マウス7、7…を特定する識別符号であるUIDをICタグ6aからほとんど不都合無く読み込むことができたと云える。
【0068】
またこの実施例2のリーダ・ライタ2aの通信用のアンテナコイル2a1の有効内径も実施例1のアンテナコイル21より小さいが、これも、以上のように、全く問題とならなかった。確実なリーダ・ライタ2aとICタグ6aとの通信が確保し得ている。
【0069】
更に又この実施例2の受皿3aは、実施例1の受皿3より若干径が小さいが、使い勝手上はそれ程問題にはならなかった。
リーダ・ライタ2aの筐体2a2を別に構成した点も、この筐体2a2と電子天秤1の筐体12との二つの筐体2a2、12を重ねる点、及び両者の調節脚14、14…、2a3、2a3…を調節するのが若干煩わしいかもしれないが、一度調節するだけで、長期間安定に維持可能であり、それ程手間の掛かる作業でもない。
更には、前記アンテナ支持体2a4がリーダ・ライタ2aの筐体2a2の側部から立ち上げてあるため、該筐体2a2の上の予め定められた位置に、電子天秤1の筐体12を正確に重ねれば、自ずと該アンテナ支持体2a4が支持するアンテナコイル2a1の正確な位置決めがなされることになる。それ故、アンテナコイル2a1の位置決めが容易になる利点がある。勿論、アンテナ支持体2a4それ自体の安定性も高まっている。
【0070】
<実施例3>
この実施例3の小型実験動物用体重測定及び記録装置は、実施例1及び2と同様に、マウス用体重測定及び記録装置に構成したものであり、図4に示すように、基本的に、マウス7の体重を測定する電子天秤1と、該電子天秤1に、これとは別の筐体2a2に収容して付設したリーダ・ライタ2と、マウス7を入れてその体重を測定するための受皿3bと、該受皿3bを前記電子天秤1の重量測定面11上に設置するための保持具4と、測定して得たマウス7の体重の値を該マウス7に埋め込んであるICタグ6との通信で得た該マウス7を特定する識別符号であるUIDに関連づけて保存し、かつ表示するポータブル型のPC5とで構成したものである。
【0071】
この実施例3では、電子天秤1、リーダ・ライタ2、ICタグ6、PC5及び保持具4は、各々実施例1のそれらと全く同様の構成である。PC5は、それにインストールされているデータベースソフトも同様である。またリーダ・ライタ2を収容する筐体2a2は、実施例2の筐体2a2と同様である。それ故、これらに関しては、特に説明をせず、これ以外の要素に関してのみ説明する。
【0072】
前記リーダ・ライタ2は、実施例1のリーダ・ライタ2と全く同様の構成であるが、その通信用のアンテナコイル24は実施例1のアンテナコイル21とは異なる。そこでこのアンテナコイル24に関して説明する。このアンテナコイル24は、一次アンテナコイル(アンテナコイル)241と電磁的に結合した二次アンテナコイル(補助アンテナコイル)242とで構成したものである。
【0073】
該一次アンテナコイル241は、図5に示すように、径d1が3mmの導体によって作成したループ径D1が150mmのループアンテナであり、該二次アンテナコイル242は、円筒状アンテナであり、ループ径D2が110mmで、厚さT2が0.08mm、幅W2が35mmのアンテナコイルである。図4に示すように、該一次アンテナコイル241及び該2次アンテナコイル242は、アンテナ支持体25の上下の支持腕253、254で、後述するように、各々支持され、該一次アンテナコイル241は、同軸ケーブルを介して前記リーダ・ライタ2に接続しているものである。
【0074】
該一次アンテナコイル241は、前記受皿3bの中心を中心とする状態でその周囲に配し、該二次アンテナコイル242は、該一次アンテナコイル241の下方で、同様に該受皿3bの中心を中心とする状態でその周囲に配する。前者の電子天秤1の重量測定面11からの高さは約100mmとし、後者の下端の該重量測定面11からの高さは60mmとしたものである。
【0075】
該二次アンテナコイル242は、該一次アンテナコイル241と電磁的に結合しており、同時にICタグ6から受け取る電磁波による該一次アンテナコイル241の起電力を強化する作用を果たすものである。
【0076】
なお、前記アンテナ支持体25は、図4に示すように、アクリル樹脂製の部材であり、その下部の前記リーダ・ライタ2の筐体2a2の側部から横方向に延びる水平基部251と、該水平基部251の外端から直立する支柱部252と、該支柱部252の上端から逆の横方向に延長する上下二つの支持腕部253、254とからなり、前記したように、前記一次アンテナコイル241は、上方の支持腕部253の先端に結合された塩化ビニル製の円環状支持パイプ255に内装状態で支持される。該一次アンテナコイル241は、詳細には、支持腕部253内に配された整合回路を介して前記同軸ケーブルに結合し、該同軸ケーブルを介して前記リーダ・ライタ2に結合している。二次アンテナコイル242は、下方の支持腕部254の先端に固設されている。なおまた以上の二次アンテナコイル242は受皿3bの後記受皿本体3b1又は後記円筒状接続部3b2に取り付けて、アンテナ支持体25とは切り離しても良い。もっともこのようにした場合は、前記電子天秤1の較正部で行うゼロ設定の幅が若干大きくなる。
【0077】
以上のごとくして該一次アンテナコイル241及び二次アンテナコイル242は、前記のように、所定の位置に保持される状態になる。
【0078】
なお、図4中、243はアンテナ用配線である。
なおまた、前記リーダ・ライタ2に電力を供給する電源コード2a5は、実施例2と同様に、前記筐体2a2の入出力端子部を介して外部に引き出してある。
【0079】
前記受皿3bは、図4及び図6に示すように、実施例1の受皿3と基本構成が同様であり、同様の材質で構成し、同様の構成要素からなる。即ち、上部の上広がり円筒状の受皿本体3b1と下部のストレートな円筒状接続部3b2とで構成したものである。図4及び図6中、3b3は、受皿3bの底面である。この受皿3bは、サイズのみが実施例1の受皿3と異なり、上端開口部の内径D3は190mm、受皿本体3b1の高さH2は100mm、下部の円筒状接続部3b2の内径D4は100mm、高さH3は50mmである。
【0080】
前記保持具4は、前記したように、実施例1の保持具4と全く同様材質、同様の構成である。
該保持具4は、前記のように、保持具基部41の下面を前記電子天秤1の重量測定面11に接合固着するものであるが、この実施例3でも、実施例1と同様に、接着剤を用いて接着固定した。またこの接着固定は、保持具基部41の中心と該重量測定面11の中心とを一致させて行ったものである。
【0081】
従ってこの実施例3のマウス用体重測定及び記録装置は実施例1、2のそれと全く同様に使用可能であり、同様の効果を有する。
【0082】
若干異なる部分に関してのみ以下に述べる。
この実施例3では、リーダ・ライタ2の通信用のアンテナコイルとして、前記一次アンテナコイル241及び二次アンテナコイル242を採用し、前記のように配したため、一層、マウス7中に埋め込んだICタグ6との通信が安定して行われるようになり、1000匹の体重測定及び記録を行ったが、通信エラーは一度も起こさなかった。
【0083】
また前記アンテナ支持体25は、実施例2のアンテナ支持体2a4と同様に、リーダ・ライタ2の筐体2a2の側部から立ち上げてあるため、該筐体2a2の上に、電子天秤1の筐体12を正確に重ねれば、自ずと該アンテナ支持体25が支持する一次アンテナコイル241及び二次アンテナコイル242の正確な位置決めがなされることになる。それ故、一次アンテナコイル241及び二次アンテナコイル242の位置決めが容易になる利点がある。勿論、アンテナ支持体25それ自体の安定性も実施例1のアンテナ支持体22より高まっている。
【0084】
なお、前記二次アンテナコイル242を取り外してテストしてみたところ、約50%の通信エラーが生じる結果となった。もっともこれは、二次アンテナコイル242の存在を前提とした高い位置に一次アンテナコイル241が位置するために生じた結果であり、該一次アンテナコイル241を前記受皿3bの底面3b3より僅かに高い程度の高さ位置に配するものとすれば、実施例1と同等程度の結果が得られるものと予測される。
【符号の説明】
【0085】
1 電子天秤
11 電子天秤の重量測定面
12 電子天秤の筐体
13 体重測定部
14 調節脚
15 入出力端子部
16 電源コード
17 アンテナ用配線
2 リーダ・ライタ
21 アンテナコイル
22 アンテナ支持体
221 支持体基部
222 支柱部
223 支持腕部
224 円環状支持パイプ
24 アンテナコイル
241 一次アンテナコイル(アンテナコイル)
242 二次アンテナコイル(補助アンテナコイル)
243 アンテナ用配線
25 アンテナ支持体
251 水平基部
252 支柱部
253 上の支持腕
254 下の支持腕
255 円環状支持パイプ
2a リーダ・ライタ
2a1 アンテナコイル
2a2 リーダ・ライタの筐体
2a3 リーダ・ライタの筐体の調節脚
2a4 アンテナ支持体
2a41 水平基部
2a42 支柱部
2a43 支持腕部
2a44 円環状支持パイプ
2a5 電源コード
2a6 アンテナ用配線
3 受皿
31 受皿本体
32 円筒状接続部
33 受皿の底面
3a 受皿
3a1 受皿本体
3a2 円筒状接続部
3a3 受皿の底面
3b 受皿
3b1 受皿本体
3b2 円筒状接続部
3b3 受皿の底面
4 保持具(保持部材)
41 保持具基部
42 円筒部
43 環状係止溝
4a 保持具
4a1 保持具基部
4a2 円筒部
4a3 環状係止溝
5 パーソナルコンピュータ(コンピュータ、PC)
51 モニタ
511 計測開始ボタン
512 計測データ欄
513 データ表示欄
514 計測件数欄
515 終了ボタン
516 CSV保存のボタン
52 PCのキーボード
6 ICタグ
6a ICタグ
7 マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部のリーダ・ライタと該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグを埋め込んだ小型実験動物について、その体重を測定し、得られた体重測定値を、該ICタグとの通信で得た該小型実験動物の識別符号と対応させて保存し、該小型実験動物の体重の管理を行うことができるようにした小型実験動物用体重測定及び記録装置であって、
小型実験動物の体重を、受皿及び保持部材の重量と共に、全部又は一部が金属で構成された重量測定面で受けて測定する電子天秤と、
小型実験動物に埋め込まれたICタグとその保持する識別符号を含むデータの通信を行うべく、前記電子天秤に付設し、通信用のアンテナコイルを前記電子天秤の重量測定面に加重しない状態に配したリーダ・ライタと、
小型実験動物に埋め込まれているICタグと前記リーダ・ライタとの電磁波を用いた通信を妨げない材質で構成して前記電子天秤の重量測定面に前記保持部材を介して配し、その中に小型実験動物を入れてその体重を測定するために使用する前記受皿と、
前記受皿を、前記電子天秤の所定の位置に位置決めすべく、該電子天秤の重量測定面の所定の位置に固設し、該受皿に入れた小型実験動物に埋め込まれているICタグと前記リーダ・ライタとの間の電磁波を用いた通信を妨げない材質で構成した保持部材と、
前記電子天秤の測定した個々の小型実験動物の体重の値及び前記リーダ・ライタを介して受け取る該小型実験動物に埋め込まれたICタグの保持する識別符号の各々を受け取り、該識別符号と関連づけて該体重の値を記憶保持する記憶手段、並びに該識別符号と関連づけて該体重の値を表示するモニタを備えたコンピュータと、
で構成した小型動物用体重測定及び記録装置。
【請求項2】
前記リーダ・ライタの通信用のアンテナコイルに電磁気的に結合した補助アンテナコイルを付設した請求項1の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項3】
前記受皿を、プラスチック、木材及びセラミックのいずれか、又はこれらのいずれか及び前記ICタグと前記リーダ・ライタとの電磁波を用いた通信の妨げにならない範囲の金属を組み合わせたものの、いずれかを用いて構成した請求項1又は2の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項4】
前記受皿を、前記保持部材に着脱自在に結合した請求項1、2又は3の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項5】
前記受皿の底面と前記電子天秤の重量測定面との間隔を、該受皿に入れる小型実験動物に埋め込まれている前記ICタグと前記リーダ・ライタとの間の電磁波を用いた通信を妨げない間隔に設定した請求項1、2、3又は4の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項6】
前記受皿の底面と前記電子天秤の重量測定面との間隔を50mm以上に設定した請求項5の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項7】
前記受皿に底部周側から垂下する円筒状接続部を構成し、前記保持部材の上部に、該円筒状接続部を挿脱自在に挿入可能な、上開きの環状係止溝を構成した請求項1、2、3、4、5又は6の小型実験動物用体重測定及び記録装置。
【請求項8】
前記リーダ・ライタの通信用のアンテナコイルを、前記電子天秤の筐体に結合した支持体又は独立の支持体で支持することとした請求項1、2、3、4、5、6又は7の小型実験動物用体重測定及び記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−266289(P2010−266289A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116841(P2009−116841)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【出願人】(391033137)日本クレア株式会社 (7)
【Fターム(参考)】