小型容器及びそれを有する同時ガス分析システム
【課題】 計測準備にかかる時間を短縮して揮発ガス成分を効率良く測定できる小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 小型容器10は、ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体12と、ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋14と、で構成される。蓋14には、ガス導入管及びカートリッジにそれぞれ接続する2つの接続部18が設けられている。この接続部18には、蓋14を貫通する貫通孔20と、貫通孔20を封止するように貫通孔内に形成され、ガス導入管の先端で突き破られ得る遮蔽板22と、が設けられている。
【解決手段】 小型容器10は、ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体12と、ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋14と、で構成される。蓋14には、ガス導入管及びカートリッジにそれぞれ接続する2つの接続部18が設けられている。この接続部18には、蓋14を貫通する貫通孔20と、貫通孔20を封止するように貫通孔内に形成され、ガス導入管の先端で突き破られ得る遮蔽板22と、が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生源となる試料を収容する小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、住宅などの室内空間の炭化水素(HC)を低減させるには(特に揮発性有機化合物(VOC)を低減するには)、室内空間に存在する部品、材料からの揮発成分を低減させることが必要になっている。このため、この揮発成分を測定することは益々重要になってきている。
【0003】
この揮発成分を測定する手法としては、(1)簡易な手法として知られているガスバッグ法と、(2)市販の揮発成分評価装置を用いて精密分析を行うチャンバ法とが知られている(非特許文献1参照)。いずれの手法であっても、試料を加熱して発生した揮発ガス成分をガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフなどで分析して評価している。
【0004】
しかし、以下の問題があった。(1)ガスバック法では、ガスバッグと呼ばれる袋に試料を入れて加熱し、揮発した成分を採取している。この方法では、ガスバッグ自体からの揮発成分や気化した成分により定量感度、定量精度が悪く、しかも、清浄空気による2時間以上のバッグ内壁の洗浄作業が必要である。更に、袋が使い捨て(1枚あたり3,000円程度)であり、コストが嵩む。また、加熱する際、乾燥器などを用いて加熱するため、多数の袋を同時に加熱可能であるが、袋毎に、採取用の流量計およびポンプが必要になり、準備すべき機器数が増大する。
【0005】
(2)のチャンバ法では、容器内部に試料を設置して加熱し、気化した成分を採取、分析している。このチャンバ法では、容器からの揮発成分は少ないが、一般的に、一試料につき一装置で処理するため、多数の試料について分析する場合に時間がかかり、効率が悪い。また、装置コストが高い。
【非特許文献1】日本工業規格(JIS) JIS A1901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、計測準備にかかる時間を短縮して揮発ガス成分を効率良く測定できる小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体と、前記ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋と、前記蓋又は前記ガス分析用容器本体に設けられ、ガス導入ライン及びガス導出ラインにそれぞれ接続する少なくとも2つの接続部と、を備え、前記接続部には、前記蓋を貫通する貫通孔と、前記貫通孔を封止するように前記貫通孔内に形成され、前記ガス導入ラインの先端で突き破られ得る遮蔽板と、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
蓋及びガス分析用容器本体の材質は、試料からの揮発ガス成分を評価する上で、内壁からのガス発生量が少ない材質であることが好ましい。たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とする。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの揮発ガス量が少ない材質としては、例えばポリプロピレン(PP)である。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドに加え、炭化水素の揮発ガス量も少ない材質としては、例えばガラスである。
【0009】
遮蔽板も含めた接続部も、内壁からのガス発生量が少ない材質か、たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とすることが好ましい。また、遮蔽板の形状を、ガス導入ラインの先端により突き破られ易い形状にしてもよい。
【0010】
また、蓋はガス分析用容器本体に着脱自在になっているので、小型容器への試料の収容、取出しが容易である。
【0011】
コスト低減の観点から、接続部と蓋とは一体成型品であることが望ましい。なお、温度計測用の熱電対などの検出部を挿入したり、水を入れる導水配管を挿入したりするための接続部を更に設けてもよい。検出部を挿入する場合には、遮蔽板を破るための針などを検出部の先端に設けてもよい。
【0012】
請求項1に記載の発明では、このように、ガスバッグではなく小型容器なので、容器内に洗浄用のガス(置換用のガス)や溶剤を流すことにより、容器内壁に付着しているガス成分を容易に除去することが可能である。従って、小型容器のリサイクル使用が可能であり、低コスト化を図ることができる。その上、使用前にガス流動による容器内壁のクリーニングを短時間で行うことが可能であり、測定する上で効率が良い。
【0013】
また、従来のガスバッグに比べ、加熱しても容器内壁からのガス発生量を少なくし易い。従って、測定する際の前処理にかかる時間を削減し易い。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記貫通孔の孔壁は、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面を有し、前記テーパ面に面接触又は線接触してシールするシール面が形成された栓を前記ガス導入ラインに貫通させて設けておくことにより、前記ガス分析用容器本体内へ前記ガス導入ラインを進入させて前記シール面と前記テーパ面とによるシールが可能にされていることを特徴とする。これにより、接続部と栓とを、ガス漏れがないようにワンタッチで接続させることが可能になる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記ガス分析用容器本体が耐圧構造にされ、容器内圧が外圧よりも高くなっても前記栓が前記接続部から抜けることを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする。これにより、圧力差があってもガスの漏れが無い構造にすることができる。
【0016】
なお、上記防止手段としてロック機構などを設け、ガス導入ライン、ガス導出ライン、検出部などを容易に接続可能としてもよい。ロック機構としては、めすルアー(ロック型)などのワンタッチで接続できる機構としてもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記接続部がパイプ状部材で構成されることを特徴とする。これにより、接続部を量産しておくことができ、小型容器の製造時間、製造コストの低減を図ることができる。また、蓋と接続部とを一体成形することによって、よりコスト低減を図ることが可能になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ガス分析用容器本体の内壁面側、及び、前記蓋の内壁面側の少なくとも一方に、ガス放出防止対策が施されていることを特徴とする。
【0019】
ガス放出防止対策としては、エージング処理してもよいし、ガス分析用容器本体や蓋の内側に、発生する揮発ガス量が少ない部材で覆ってもよい。発生する揮発ガス量が少ない部材としては、例えばデュポン社の商品名「テフロン(登録商標)」である。
【0020】
請求項5に記載の発明により、ガス揮発量が多い材質からなる部材であってもガス分析用容器本体や蓋の構成部材として用いることが可能になる。従って、他に要求される機能(強度など)を備えた小型容器とし易い。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の小型容器を複数備えているとともに、
複数の前記小型容器にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ラインと、複数の前記ガス供給ラインの上流側に接続されたガス供給本流ラインと、を備え、前記複数のガス供給支流ラインには、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化する一定化手段が設けられていることにより、ガス流量が一定にされていることを特徴とする。
【0022】
これにより、小型容器が1つであっても複数であっても、小型容器に流すガス流量を一定にすることができる。そして、複数の小型容器にそれぞれ試料を入れてガスを供給することにより、測定する際の前処理にかかる時間を削減するとともに、多種・多数の試料について揮発ガス量を同時に計測することができる。更に、小型容器が密閉式で、ガス供給支流ラインからの供給ガスによって小型容器内のガスが送り出されており、従来のガスバッグを使用したときのように、ガス採取の後にガスバッグにポンプなどを取り付けて吸引採取する必要がない。従って、測定にかかる時間を大幅に短縮して効率良く測定するシステムとすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、前記一定化手段として、オリフィス及び抵抗管の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。これにより、一定化手段の構成を著しく簡素にすることができる。なお、抵抗管とは、ガスの流体摩擦抵抗が大きいガス配管のことである。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記複数の小型容器を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする。これにより、試料を加温状態にする必要がある場合、小型容器を加熱する機構を別に準備しておく必要がないので、作業性が向上する。また、複数の小型容器を共通の加熱手段で加熱する構成にしてもよく、これにより、小型容器毎に加熱手段を設けなくても済むので、装置構成を簡素にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計測準備にかかる時間を短縮して揮発ガス成分を効率良く測定できる小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムを実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1、図2に示すように、本実施形態に係る小型容器10は、ガス発生源となる試料Sを収容するガス分析用容器本体12と、ガス分析用容器本体12に着脱自在な密閉用の蓋14とを備えている。このように蓋14がガス分析用容器本体12に着脱自在になっているので、小型容器10への試料の収容、取出しが容易になっている。
【0028】
蓋14及びガス分析用容器本体12の材質は、内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とする。本実施形態では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの揮発ガス量が少ない材質としては、低コストであるポリプロピレン(PP)を選定する。
【0029】
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドに加え、炭化水素の揮発ガス量も少ない材質としては、ガラスやテフロン(登録商標)などを用いる。なお、ガラスやテフロン(登録商標)で被覆してもよい。
【0030】
蓋14には、ガス導入管16と接続する2つの接続部18が設けられている。この接続部18は蓋14を貫通しているパイプ状の部材であり、外側が蓋14の孔壁にシールされている。この接続部18には、貫通孔(パイプ孔)20と、貫通孔20を封止するように貫通孔20内に形成された遮蔽板22と、が設けられている。遮蔽板22は、ガス導入管16の先端で突き破られ得るように、薄厚に形成されている。
【0031】
本実施形態では、遮蔽板22も含めた接続部18も、内壁からのガス発生量が少ない材質か、たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質としている。
【0032】
また、接続部18の貫通孔20の孔壁のうち遮蔽板22よりも容器外側には、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面20Tが形成されている。なお、図示しないが、必要に応じ温度計測用の熱電対を挿入する接続部が蓋14に更に設けられている。
【0033】
ガス分析用容器本体12は耐圧構造にされ、容器内圧が外圧よりも高くなっても後述の栓22が接続部18から抜けることを防止する防止手段が設けられている。これにより、圧力差があってもガスの漏れが無い構造にすることができる。防止手段としては、一般的に使用されているロック機構などである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、試料からの揮発ガス成分を計測するための試料収容手段がガスバッグではなく小型容器10であり、材質としてはポリプロピレン又はガラスを選定している。従って、容器内に置換用のガスを流すことにより、容器内壁に付着しているガス成分を容易に除去することができる。よって、小型容器10のリサイクルを実施でき、低コスト化を図ることができる。
【0035】
その上、使用前にガス流動による容器内壁のクリーニングがほとんどの場合で不要であり、短時間(5分間)の準備で実施できる。すなわち、従来のガスバッグで内壁洗浄に2時間かかっていたことに比べ、測定する上で遥かに効率が良い。更に、ガスバッグに比べ、加熱しても容器内壁からのガス発生量が少ない。従って、測定する際の前処理にかかる時間を削減することができる。
【0036】
また、接続部18には上記のようなテーパ面20Tが形成されている。従って、テーパ面20Tに面接触してシールするシール面22Sが形成された栓22をガス導入管16に貫通させて設けておくことにより、ガス分析用容器本体21の中へガス導入管16を進入させてシール面22Sとテーパ面20Tとを面接触させることによってシールすることができる。更に、揮発ガス量(又は揮発ガス濃度)を測定又は捕集するカートリッジ26の上流端部がテーパ面20Tに線接触して、同様にシールすることができる。これにより、ロック型のめすルアーなどを用い、接続部18と栓22やカートリッジ26とを、ガス漏れがないようにワンタッチで接続させることができる。
【0037】
また、接続部18がパイプ状の部材であるので、これにより、接続部18を量産、又は、蓋と一体成形することができ、小型容器10の製造時間、製造コストの低減(ガスバッグに比べて1/10以下のコストになる)を図ることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る小型容器30は、第1実施形態に比べ、蓋14の内側に内蓋34が設けられ、ガス分析用容器本体12の内側に内容器32が設けられている。内蓋34及び内容器32の材質は、いずれも、揮発ガス量が少ない材質(例えばテフロン(登録商標))である。
【0039】
このように、本実施形態では、内蓋34及び内容器32によって、容器内へのガス放出防止対策が施されている。これにより、蓋14やガス分析用容器本体12の材質が、測定対象のガス成分の揮発量が多い材質であっても、蓋14やガス分析用容器本体12からこのガス成分が容器内に漏出することを防止できる。従って、蓋14やガス分析用容器本体12の材質を通常の材質(樹脂など)にすることができるので、他の機能を蓋14やガス分析用容器本体12に持たせた小型容器30とすることができる。
【0040】
なお、容器内へのガス放出防止対策として、エージングを行ってもよいし、内蓋34や内容器32を設ける代わりに、蓋14の内側やガス分析用容器本体12の内側にテフロン(登録商標)でコーティングしてもよい。
【0041】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図4に示すように、本実施形態に係る小型容器40は、第2実施形態に比べ、ガス分析用容器本体42の材質がガラスにされ、内容器32が設けられていない。
【0042】
このように内容器32が設けられていない簡素な構成にしても、ガス分析用容器本体42の材質がガラスなので、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドのみならず、炭化水素の揮発ガス量も少ない。
【0043】
なお、耐圧性や耐衝撃性を上げるために、ガス分析用容器本体42の外側に補強用のコーティングを行ってもよい。
【0044】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図5、図6に示すように、本実施形態に係る小型容器50は、ガス発生源となる試料Sを収容するガス分析用容器本体52と、ガス分析用容器本体52に着脱自在な密閉用の蓋54とを備えている。
【0045】
ガス分析用容器本体52は、試料を載せる試料保持部56と、試料保持部56から上方へ延びて蓋54に接続し小型容器50内を密閉している側壁部60と、で構成される。
【0046】
蓋54の材質は例えば樹脂である。試料保持部56の材質は、耐熱用の樹脂、ガラス、金属などである。側壁部60の材質は、樹脂、ガラスなどである。
【0047】
本実施形態では、試料保持部56の底面側に、ガス導入ラインと接続する下側接続部58Lが形成され、蓋54には、カートリッジ26と接続する上側接続部58Uが形成されており、供給ガス及び揮発成分ガスが容器下方から容器上方へ流動可能になっている。
【0048】
更に、本実施形態では、小型容器50を加熱する加熱装置62を用いる。この加熱装置62は、側壁部60から小型容器50へ熱を与えるヒートブロック64を備えている。ヒートブロック64には、下側接続部58Lが挿通する挿通孔66が形成された小型容器保持部68が形成されており、上方から小型容器50を入れると、下側接続部58Lが挿通孔66を挿通するとともに小型容器保持部68に試料保持部56が当接して保持されるようになっている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、小型容器50を加熱装置62に上方から入れて、小型容器50内を加熱すること可能になっている。これにより、小型容器50内を加熱して、小型容器50からガスをカートリッジを経由させて排出させることを容易に実施することができる。
【0050】
なお、この加熱装置62が後述の第5実施形態で説明する容器保持体90に設けられていてもよい。
【0051】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態に係る同時ガス分析システム70は、第1実施形態で説明した複数の小型容器10と、複数の小型容器10にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ライン74と(図7では、簡略のために、1本のガス供給支流ラインから1つの小型容器にガスを供給することを描画している)、複数のガス供給支流ライン74の上流端に接続された一本のガス供給本流ライン76と、を備えている。本実施形態では、ガス供給本流ライン76からガス供給支流ライン74に供給されるガスは、清浄な空気である。
【0052】
複数のガス供給支流ライン74には、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化してガス流量を一定(例えば20ml/min)にするためにオリフィス78と抵抗管80とが設けられている。すなわち、カートリッジ26における流体抵抗が変化しても、その影響を軽減してガス流量を一定にすることが可能になっている。図7ではオリフィス78が抵抗管80よりも上流側に設置されているが、オリフィス78が抵抗管80の下流側に設置されていてもよい。なお、カートリッジ26に代えて捕集管、センサー、官能評価を行う配管などを取付けてもよい。
【0053】
なお、複数のガス供給支流ライン74に開閉バルブ82を設けておいてもよい。これにより、ガスの供給を一時的に停止する必要があるとき(例えば官能評価を行うときなど)、そのガス供給支流ラインのみガスの供給を停止することができる。
【0054】
ガス供給本流ライン76は、圧力レギュレータ84、空気清浄器86、加湿装置88が上流側から順次接続されている。圧力レギュレータ84ではガス圧を0.05〜0.1MPaの範囲内にしている。加湿装置88では、必要に応じて加湿しており、湿度制御が可能になっている。
【0055】
更に、同時ガス分析システム70には、複数の小型容器10を保持する容器保持体90が設けられている。この容器保持体90は、アルミブロックに、小型容器10を保持する凹部92が形成され、しかも、この凹部92に保持された小型容器10を同時に同温度となるように加熱する加熱機構(ヒータ、温浴機構など)がアルミブロック内に設けられたものである。本実施形態では、加熱によって、小型容器10内の温度が100℃以下の設定温度になるように構成されている。
【0056】
本実施形態により、小型容器10が1つであっても複数であっても、小型容器10に流すガス流量を一定にすることができる。そして、複数の小型容器10にそれぞれ試料を入れてガス(清浄な空気)を供給することにより、測定する際の前処理にかかる時間を削減するとともに、多種・多数の試料について揮発ガス量を同時に計測することができる。更に、小型容器10が密閉式で、ガス供給支流ライン74からの供給ガスによって小型容器10内のガスが送り出されており、従来のガスバッグを使用したときのように、ガス採取後にガスバッグにポンプを取り付けて吸引採取する必要がない。従って、測定にかかる時間を大幅に短縮して効率良く測定する同時ガス分析システム70とすることができる。
【0057】
更に、オリフィス78及び抵抗管80による極めて簡素な構成によってガスの流体抵抗を一定化してガス流量を一定にしている。
【0058】
また、容器保持体90は、複数の小型容器10を同時に同温度となるように加熱できる。これにより、試料を加温状態にする必要がある場合、小型容器10を加熱する機構を別に準備しておく必要がないので、作業性が向上する。また、複数の小型容器10を共通の加熱機構で加熱する構成にしてもよく、これにより、小型容器毎に加熱機構を設けなくても済むので、装置構成を簡素にすることができる。
【0059】
<実験例1>
本発明者は、第1実施形態に係る小型容器10の一例(以下、実施例の小型容器という)と、従来のガスバッグの一例とを用い、ホルムアルデヒド、及び、アセトアルデヒドの揮発ガス量がどの程度であるかを測定する実験を行った。
【0060】
本実験例では、(1)カートリッジ26としてA社のカートリッジ(日本製)を用い、カートリッジから排出される揮発ガス量を測定した。更に、(2)このA社のカートリッジを実施例の小型容器に取付け、A社のカートリッジと実施例の小型容器とからの合計の揮発ガス量を測定した。測定結果を図8に示す。
【0061】
次に、(3)カートリッジ26としてB社のカートリッジ(外国製)を用い、カートリッジから排出される揮発ガス量を測定した。更に、(4)このB社のカートリッジを従来のガスバッグ(外国製)に取付け、B社のカートリッジとガスバッグとの合計の揮発ガス量を測定した。測定結果を図8に併せて示す。
【0062】
図8から判るように、(2)と(1)との揮発ガス量の差(すなわち実施例の小型容器から排出される揮発ガス量)は、(4)と(3)との揮発ガス量の差(すなわちガスバッグからの揮発ガス量)に比べ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの両者とも著しく少なかった。
【0063】
<実験例2>
また、本発明者は、実施例の小型容器を加熱し、容器内の温度分布がどのようになるかを測定する実験を行った。
【0064】
本実験例では、実施例の小型容器のうち、その底面から40mmの高さ位置までの部分を容器外部から加熱(加温)した。この加熱による容器内の目標温度は65℃である。
【0065】
本実験例では、加熱する際、小型容器内の温度を、(1)容器底面、(2)容器底面から30mm、(3)容器底面から50mm、(4)容器上面、の4ヶ所で測定した。なお、本実験例では、加熱を終了した後も室温に戻るまで計測し続けた。測定結果を図9に示す。
【0066】
図9から判るように、(3)と(4)では、(1)や(2)に比べ、温度が大幅に低いことが判った。また、小型容器内に収容する試料を加熱しているゾーン内に位置させておくと、意図する温度に加熱できることが判った。
【0067】
<実験例3>
更に、本発明者は、実施例の小型容器を用い、図10(A)から(C)に示すように、ガス導入管16の導入端の高さ位置、すなわちガス注入位置を、容器内の上、中、下にした場合について、それぞれ、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度を測定する実験を行った。測定結果を図11に示す。(1)〜(3)では、それぞれ、測定を複数回にわたって行った。
【0068】
図11から判るように、(1)〜(3)で、ガス5gあたりに含まれるホルムアルデヒド量及びアセトアルデヒド量の両者とも、測定された濃度はほとんど同じであった。
【0069】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態に係る小型容器の側面断面図である。
【図2】第1実施形態に係る小型容器の側面断面図である(シールする部位を明確にするために栓を小さく描画)。
【図3】第2実施形態に係る小型容器の展開図である。
【図4】第3実施形態に係る小型容器の側面断面図である。
【図5】第4実施形態で、小型容器をヒートブロックに保持させることを示す側面図である(ヒートブロック及び試料を側面断面図として示す)。
【図6】第4実施形態で、小型容器をヒートブロックに保持させたことを示す側面図である(ヒートブロック及び試料を側面断面図として示す)。
【図7】第5実施形態に係る同時ガス分析システムの構成を示す模式図である。
【図8】実験例1で、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度の測定結果を示すグラフ図である。
【図9】実験例2で、小型容器内の温度分布の計測結果を示すグラフ図である。
【図10】図10(A)から(C)は、それぞれ、実験例3で、ガス導入管の先端の高さ位置を示す側面断面図である。
【図11】実験例3で、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度の測定結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0071】
10 小型容器
12 ガス分析用容器本体
14 蓋
16 ガス導入管(ガス導入ライン)
18 接続部
20 貫通孔
22 遮蔽板
20T テーパ面
22 栓
22S シール面
26 カートリッジ
30 小型容器
34 内蓋
40 小型容器
42 ガス分析用容器本体
50 小型容器
52 ガス分析用容器本体
54 蓋
58U 上側接続部(接続部)
58L 下側接続部(接続部)
62 加熱装置(加熱手段)
70 同時ガス分析システム
74 ガス供給支流ライン
76 ガス供給本流ライン
78 オリフィス
80 抵抗管
90 容器保持体(加熱手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生源となる試料を収容する小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、住宅などの室内空間の炭化水素(HC)を低減させるには(特に揮発性有機化合物(VOC)を低減するには)、室内空間に存在する部品、材料からの揮発成分を低減させることが必要になっている。このため、この揮発成分を測定することは益々重要になってきている。
【0003】
この揮発成分を測定する手法としては、(1)簡易な手法として知られているガスバッグ法と、(2)市販の揮発成分評価装置を用いて精密分析を行うチャンバ法とが知られている(非特許文献1参照)。いずれの手法であっても、試料を加熱して発生した揮発ガス成分をガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフなどで分析して評価している。
【0004】
しかし、以下の問題があった。(1)ガスバック法では、ガスバッグと呼ばれる袋に試料を入れて加熱し、揮発した成分を採取している。この方法では、ガスバッグ自体からの揮発成分や気化した成分により定量感度、定量精度が悪く、しかも、清浄空気による2時間以上のバッグ内壁の洗浄作業が必要である。更に、袋が使い捨て(1枚あたり3,000円程度)であり、コストが嵩む。また、加熱する際、乾燥器などを用いて加熱するため、多数の袋を同時に加熱可能であるが、袋毎に、採取用の流量計およびポンプが必要になり、準備すべき機器数が増大する。
【0005】
(2)のチャンバ法では、容器内部に試料を設置して加熱し、気化した成分を採取、分析している。このチャンバ法では、容器からの揮発成分は少ないが、一般的に、一試料につき一装置で処理するため、多数の試料について分析する場合に時間がかかり、効率が悪い。また、装置コストが高い。
【非特許文献1】日本工業規格(JIS) JIS A1901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、計測準備にかかる時間を短縮して揮発ガス成分を効率良く測定できる小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体と、前記ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋と、前記蓋又は前記ガス分析用容器本体に設けられ、ガス導入ライン及びガス導出ラインにそれぞれ接続する少なくとも2つの接続部と、を備え、前記接続部には、前記蓋を貫通する貫通孔と、前記貫通孔を封止するように前記貫通孔内に形成され、前記ガス導入ラインの先端で突き破られ得る遮蔽板と、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
蓋及びガス分析用容器本体の材質は、試料からの揮発ガス成分を評価する上で、内壁からのガス発生量が少ない材質であることが好ましい。たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とする。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの揮発ガス量が少ない材質としては、例えばポリプロピレン(PP)である。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドに加え、炭化水素の揮発ガス量も少ない材質としては、例えばガラスである。
【0009】
遮蔽板も含めた接続部も、内壁からのガス発生量が少ない材質か、たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とすることが好ましい。また、遮蔽板の形状を、ガス導入ラインの先端により突き破られ易い形状にしてもよい。
【0010】
また、蓋はガス分析用容器本体に着脱自在になっているので、小型容器への試料の収容、取出しが容易である。
【0011】
コスト低減の観点から、接続部と蓋とは一体成型品であることが望ましい。なお、温度計測用の熱電対などの検出部を挿入したり、水を入れる導水配管を挿入したりするための接続部を更に設けてもよい。検出部を挿入する場合には、遮蔽板を破るための針などを検出部の先端に設けてもよい。
【0012】
請求項1に記載の発明では、このように、ガスバッグではなく小型容器なので、容器内に洗浄用のガス(置換用のガス)や溶剤を流すことにより、容器内壁に付着しているガス成分を容易に除去することが可能である。従って、小型容器のリサイクル使用が可能であり、低コスト化を図ることができる。その上、使用前にガス流動による容器内壁のクリーニングを短時間で行うことが可能であり、測定する上で効率が良い。
【0013】
また、従来のガスバッグに比べ、加熱しても容器内壁からのガス発生量を少なくし易い。従って、測定する際の前処理にかかる時間を削減し易い。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記貫通孔の孔壁は、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面を有し、前記テーパ面に面接触又は線接触してシールするシール面が形成された栓を前記ガス導入ラインに貫通させて設けておくことにより、前記ガス分析用容器本体内へ前記ガス導入ラインを進入させて前記シール面と前記テーパ面とによるシールが可能にされていることを特徴とする。これにより、接続部と栓とを、ガス漏れがないようにワンタッチで接続させることが可能になる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記ガス分析用容器本体が耐圧構造にされ、容器内圧が外圧よりも高くなっても前記栓が前記接続部から抜けることを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする。これにより、圧力差があってもガスの漏れが無い構造にすることができる。
【0016】
なお、上記防止手段としてロック機構などを設け、ガス導入ライン、ガス導出ライン、検出部などを容易に接続可能としてもよい。ロック機構としては、めすルアー(ロック型)などのワンタッチで接続できる機構としてもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記接続部がパイプ状部材で構成されることを特徴とする。これにより、接続部を量産しておくことができ、小型容器の製造時間、製造コストの低減を図ることができる。また、蓋と接続部とを一体成形することによって、よりコスト低減を図ることが可能になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ガス分析用容器本体の内壁面側、及び、前記蓋の内壁面側の少なくとも一方に、ガス放出防止対策が施されていることを特徴とする。
【0019】
ガス放出防止対策としては、エージング処理してもよいし、ガス分析用容器本体や蓋の内側に、発生する揮発ガス量が少ない部材で覆ってもよい。発生する揮発ガス量が少ない部材としては、例えばデュポン社の商品名「テフロン(登録商標)」である。
【0020】
請求項5に記載の発明により、ガス揮発量が多い材質からなる部材であってもガス分析用容器本体や蓋の構成部材として用いることが可能になる。従って、他に要求される機能(強度など)を備えた小型容器とし易い。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の小型容器を複数備えているとともに、
複数の前記小型容器にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ラインと、複数の前記ガス供給ラインの上流側に接続されたガス供給本流ラインと、を備え、前記複数のガス供給支流ラインには、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化する一定化手段が設けられていることにより、ガス流量が一定にされていることを特徴とする。
【0022】
これにより、小型容器が1つであっても複数であっても、小型容器に流すガス流量を一定にすることができる。そして、複数の小型容器にそれぞれ試料を入れてガスを供給することにより、測定する際の前処理にかかる時間を削減するとともに、多種・多数の試料について揮発ガス量を同時に計測することができる。更に、小型容器が密閉式で、ガス供給支流ラインからの供給ガスによって小型容器内のガスが送り出されており、従来のガスバッグを使用したときのように、ガス採取の後にガスバッグにポンプなどを取り付けて吸引採取する必要がない。従って、測定にかかる時間を大幅に短縮して効率良く測定するシステムとすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、前記一定化手段として、オリフィス及び抵抗管の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。これにより、一定化手段の構成を著しく簡素にすることができる。なお、抵抗管とは、ガスの流体摩擦抵抗が大きいガス配管のことである。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記複数の小型容器を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする。これにより、試料を加温状態にする必要がある場合、小型容器を加熱する機構を別に準備しておく必要がないので、作業性が向上する。また、複数の小型容器を共通の加熱手段で加熱する構成にしてもよく、これにより、小型容器毎に加熱手段を設けなくても済むので、装置構成を簡素にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計測準備にかかる時間を短縮して揮発ガス成分を効率良く測定できる小型容器及びそれを有する同時ガス分析システムを実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1、図2に示すように、本実施形態に係る小型容器10は、ガス発生源となる試料Sを収容するガス分析用容器本体12と、ガス分析用容器本体12に着脱自在な密閉用の蓋14とを備えている。このように蓋14がガス分析用容器本体12に着脱自在になっているので、小型容器10への試料の収容、取出しが容易になっている。
【0028】
蓋14及びガス分析用容器本体12の材質は、内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質とする。本実施形態では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの揮発ガス量が少ない材質としては、低コストであるポリプロピレン(PP)を選定する。
【0029】
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドに加え、炭化水素の揮発ガス量も少ない材質としては、ガラスやテフロン(登録商標)などを用いる。なお、ガラスやテフロン(登録商標)で被覆してもよい。
【0030】
蓋14には、ガス導入管16と接続する2つの接続部18が設けられている。この接続部18は蓋14を貫通しているパイプ状の部材であり、外側が蓋14の孔壁にシールされている。この接続部18には、貫通孔(パイプ孔)20と、貫通孔20を封止するように貫通孔20内に形成された遮蔽板22と、が設けられている。遮蔽板22は、ガス導入管16の先端で突き破られ得るように、薄厚に形成されている。
【0031】
本実施形態では、遮蔽板22も含めた接続部18も、内壁からのガス発生量が少ない材質か、たとえ内壁からのガス発生量が比較的多くても、測定対象のガス成分の発生量が少ない材質としている。
【0032】
また、接続部18の貫通孔20の孔壁のうち遮蔽板22よりも容器外側には、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面20Tが形成されている。なお、図示しないが、必要に応じ温度計測用の熱電対を挿入する接続部が蓋14に更に設けられている。
【0033】
ガス分析用容器本体12は耐圧構造にされ、容器内圧が外圧よりも高くなっても後述の栓22が接続部18から抜けることを防止する防止手段が設けられている。これにより、圧力差があってもガスの漏れが無い構造にすることができる。防止手段としては、一般的に使用されているロック機構などである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、試料からの揮発ガス成分を計測するための試料収容手段がガスバッグではなく小型容器10であり、材質としてはポリプロピレン又はガラスを選定している。従って、容器内に置換用のガスを流すことにより、容器内壁に付着しているガス成分を容易に除去することができる。よって、小型容器10のリサイクルを実施でき、低コスト化を図ることができる。
【0035】
その上、使用前にガス流動による容器内壁のクリーニングがほとんどの場合で不要であり、短時間(5分間)の準備で実施できる。すなわち、従来のガスバッグで内壁洗浄に2時間かかっていたことに比べ、測定する上で遥かに効率が良い。更に、ガスバッグに比べ、加熱しても容器内壁からのガス発生量が少ない。従って、測定する際の前処理にかかる時間を削減することができる。
【0036】
また、接続部18には上記のようなテーパ面20Tが形成されている。従って、テーパ面20Tに面接触してシールするシール面22Sが形成された栓22をガス導入管16に貫通させて設けておくことにより、ガス分析用容器本体21の中へガス導入管16を進入させてシール面22Sとテーパ面20Tとを面接触させることによってシールすることができる。更に、揮発ガス量(又は揮発ガス濃度)を測定又は捕集するカートリッジ26の上流端部がテーパ面20Tに線接触して、同様にシールすることができる。これにより、ロック型のめすルアーなどを用い、接続部18と栓22やカートリッジ26とを、ガス漏れがないようにワンタッチで接続させることができる。
【0037】
また、接続部18がパイプ状の部材であるので、これにより、接続部18を量産、又は、蓋と一体成形することができ、小型容器10の製造時間、製造コストの低減(ガスバッグに比べて1/10以下のコストになる)を図ることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る小型容器30は、第1実施形態に比べ、蓋14の内側に内蓋34が設けられ、ガス分析用容器本体12の内側に内容器32が設けられている。内蓋34及び内容器32の材質は、いずれも、揮発ガス量が少ない材質(例えばテフロン(登録商標))である。
【0039】
このように、本実施形態では、内蓋34及び内容器32によって、容器内へのガス放出防止対策が施されている。これにより、蓋14やガス分析用容器本体12の材質が、測定対象のガス成分の揮発量が多い材質であっても、蓋14やガス分析用容器本体12からこのガス成分が容器内に漏出することを防止できる。従って、蓋14やガス分析用容器本体12の材質を通常の材質(樹脂など)にすることができるので、他の機能を蓋14やガス分析用容器本体12に持たせた小型容器30とすることができる。
【0040】
なお、容器内へのガス放出防止対策として、エージングを行ってもよいし、内蓋34や内容器32を設ける代わりに、蓋14の内側やガス分析用容器本体12の内側にテフロン(登録商標)でコーティングしてもよい。
【0041】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図4に示すように、本実施形態に係る小型容器40は、第2実施形態に比べ、ガス分析用容器本体42の材質がガラスにされ、内容器32が設けられていない。
【0042】
このように内容器32が設けられていない簡素な構成にしても、ガス分析用容器本体42の材質がガラスなので、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドのみならず、炭化水素の揮発ガス量も少ない。
【0043】
なお、耐圧性や耐衝撃性を上げるために、ガス分析用容器本体42の外側に補強用のコーティングを行ってもよい。
【0044】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図5、図6に示すように、本実施形態に係る小型容器50は、ガス発生源となる試料Sを収容するガス分析用容器本体52と、ガス分析用容器本体52に着脱自在な密閉用の蓋54とを備えている。
【0045】
ガス分析用容器本体52は、試料を載せる試料保持部56と、試料保持部56から上方へ延びて蓋54に接続し小型容器50内を密閉している側壁部60と、で構成される。
【0046】
蓋54の材質は例えば樹脂である。試料保持部56の材質は、耐熱用の樹脂、ガラス、金属などである。側壁部60の材質は、樹脂、ガラスなどである。
【0047】
本実施形態では、試料保持部56の底面側に、ガス導入ラインと接続する下側接続部58Lが形成され、蓋54には、カートリッジ26と接続する上側接続部58Uが形成されており、供給ガス及び揮発成分ガスが容器下方から容器上方へ流動可能になっている。
【0048】
更に、本実施形態では、小型容器50を加熱する加熱装置62を用いる。この加熱装置62は、側壁部60から小型容器50へ熱を与えるヒートブロック64を備えている。ヒートブロック64には、下側接続部58Lが挿通する挿通孔66が形成された小型容器保持部68が形成されており、上方から小型容器50を入れると、下側接続部58Lが挿通孔66を挿通するとともに小型容器保持部68に試料保持部56が当接して保持されるようになっている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、小型容器50を加熱装置62に上方から入れて、小型容器50内を加熱すること可能になっている。これにより、小型容器50内を加熱して、小型容器50からガスをカートリッジを経由させて排出させることを容易に実施することができる。
【0050】
なお、この加熱装置62が後述の第5実施形態で説明する容器保持体90に設けられていてもよい。
【0051】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態に係る同時ガス分析システム70は、第1実施形態で説明した複数の小型容器10と、複数の小型容器10にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ライン74と(図7では、簡略のために、1本のガス供給支流ラインから1つの小型容器にガスを供給することを描画している)、複数のガス供給支流ライン74の上流端に接続された一本のガス供給本流ライン76と、を備えている。本実施形態では、ガス供給本流ライン76からガス供給支流ライン74に供給されるガスは、清浄な空気である。
【0052】
複数のガス供給支流ライン74には、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化してガス流量を一定(例えば20ml/min)にするためにオリフィス78と抵抗管80とが設けられている。すなわち、カートリッジ26における流体抵抗が変化しても、その影響を軽減してガス流量を一定にすることが可能になっている。図7ではオリフィス78が抵抗管80よりも上流側に設置されているが、オリフィス78が抵抗管80の下流側に設置されていてもよい。なお、カートリッジ26に代えて捕集管、センサー、官能評価を行う配管などを取付けてもよい。
【0053】
なお、複数のガス供給支流ライン74に開閉バルブ82を設けておいてもよい。これにより、ガスの供給を一時的に停止する必要があるとき(例えば官能評価を行うときなど)、そのガス供給支流ラインのみガスの供給を停止することができる。
【0054】
ガス供給本流ライン76は、圧力レギュレータ84、空気清浄器86、加湿装置88が上流側から順次接続されている。圧力レギュレータ84ではガス圧を0.05〜0.1MPaの範囲内にしている。加湿装置88では、必要に応じて加湿しており、湿度制御が可能になっている。
【0055】
更に、同時ガス分析システム70には、複数の小型容器10を保持する容器保持体90が設けられている。この容器保持体90は、アルミブロックに、小型容器10を保持する凹部92が形成され、しかも、この凹部92に保持された小型容器10を同時に同温度となるように加熱する加熱機構(ヒータ、温浴機構など)がアルミブロック内に設けられたものである。本実施形態では、加熱によって、小型容器10内の温度が100℃以下の設定温度になるように構成されている。
【0056】
本実施形態により、小型容器10が1つであっても複数であっても、小型容器10に流すガス流量を一定にすることができる。そして、複数の小型容器10にそれぞれ試料を入れてガス(清浄な空気)を供給することにより、測定する際の前処理にかかる時間を削減するとともに、多種・多数の試料について揮発ガス量を同時に計測することができる。更に、小型容器10が密閉式で、ガス供給支流ライン74からの供給ガスによって小型容器10内のガスが送り出されており、従来のガスバッグを使用したときのように、ガス採取後にガスバッグにポンプを取り付けて吸引採取する必要がない。従って、測定にかかる時間を大幅に短縮して効率良く測定する同時ガス分析システム70とすることができる。
【0057】
更に、オリフィス78及び抵抗管80による極めて簡素な構成によってガスの流体抵抗を一定化してガス流量を一定にしている。
【0058】
また、容器保持体90は、複数の小型容器10を同時に同温度となるように加熱できる。これにより、試料を加温状態にする必要がある場合、小型容器10を加熱する機構を別に準備しておく必要がないので、作業性が向上する。また、複数の小型容器10を共通の加熱機構で加熱する構成にしてもよく、これにより、小型容器毎に加熱機構を設けなくても済むので、装置構成を簡素にすることができる。
【0059】
<実験例1>
本発明者は、第1実施形態に係る小型容器10の一例(以下、実施例の小型容器という)と、従来のガスバッグの一例とを用い、ホルムアルデヒド、及び、アセトアルデヒドの揮発ガス量がどの程度であるかを測定する実験を行った。
【0060】
本実験例では、(1)カートリッジ26としてA社のカートリッジ(日本製)を用い、カートリッジから排出される揮発ガス量を測定した。更に、(2)このA社のカートリッジを実施例の小型容器に取付け、A社のカートリッジと実施例の小型容器とからの合計の揮発ガス量を測定した。測定結果を図8に示す。
【0061】
次に、(3)カートリッジ26としてB社のカートリッジ(外国製)を用い、カートリッジから排出される揮発ガス量を測定した。更に、(4)このB社のカートリッジを従来のガスバッグ(外国製)に取付け、B社のカートリッジとガスバッグとの合計の揮発ガス量を測定した。測定結果を図8に併せて示す。
【0062】
図8から判るように、(2)と(1)との揮発ガス量の差(すなわち実施例の小型容器から排出される揮発ガス量)は、(4)と(3)との揮発ガス量の差(すなわちガスバッグからの揮発ガス量)に比べ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの両者とも著しく少なかった。
【0063】
<実験例2>
また、本発明者は、実施例の小型容器を加熱し、容器内の温度分布がどのようになるかを測定する実験を行った。
【0064】
本実験例では、実施例の小型容器のうち、その底面から40mmの高さ位置までの部分を容器外部から加熱(加温)した。この加熱による容器内の目標温度は65℃である。
【0065】
本実験例では、加熱する際、小型容器内の温度を、(1)容器底面、(2)容器底面から30mm、(3)容器底面から50mm、(4)容器上面、の4ヶ所で測定した。なお、本実験例では、加熱を終了した後も室温に戻るまで計測し続けた。測定結果を図9に示す。
【0066】
図9から判るように、(3)と(4)では、(1)や(2)に比べ、温度が大幅に低いことが判った。また、小型容器内に収容する試料を加熱しているゾーン内に位置させておくと、意図する温度に加熱できることが判った。
【0067】
<実験例3>
更に、本発明者は、実施例の小型容器を用い、図10(A)から(C)に示すように、ガス導入管16の導入端の高さ位置、すなわちガス注入位置を、容器内の上、中、下にした場合について、それぞれ、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度を測定する実験を行った。測定結果を図11に示す。(1)〜(3)では、それぞれ、測定を複数回にわたって行った。
【0068】
図11から判るように、(1)〜(3)で、ガス5gあたりに含まれるホルムアルデヒド量及びアセトアルデヒド量の両者とも、測定された濃度はほとんど同じであった。
【0069】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態に係る小型容器の側面断面図である。
【図2】第1実施形態に係る小型容器の側面断面図である(シールする部位を明確にするために栓を小さく描画)。
【図3】第2実施形態に係る小型容器の展開図である。
【図4】第3実施形態に係る小型容器の側面断面図である。
【図5】第4実施形態で、小型容器をヒートブロックに保持させることを示す側面図である(ヒートブロック及び試料を側面断面図として示す)。
【図6】第4実施形態で、小型容器をヒートブロックに保持させたことを示す側面図である(ヒートブロック及び試料を側面断面図として示す)。
【図7】第5実施形態に係る同時ガス分析システムの構成を示す模式図である。
【図8】実験例1で、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度の測定結果を示すグラフ図である。
【図9】実験例2で、小型容器内の温度分布の計測結果を示すグラフ図である。
【図10】図10(A)から(C)は、それぞれ、実験例3で、ガス導入管の先端の高さ位置を示す側面断面図である。
【図11】実験例3で、ホルムアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド濃度の測定結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0071】
10 小型容器
12 ガス分析用容器本体
14 蓋
16 ガス導入管(ガス導入ライン)
18 接続部
20 貫通孔
22 遮蔽板
20T テーパ面
22 栓
22S シール面
26 カートリッジ
30 小型容器
34 内蓋
40 小型容器
42 ガス分析用容器本体
50 小型容器
52 ガス分析用容器本体
54 蓋
58U 上側接続部(接続部)
58L 下側接続部(接続部)
62 加熱装置(加熱手段)
70 同時ガス分析システム
74 ガス供給支流ライン
76 ガス供給本流ライン
78 オリフィス
80 抵抗管
90 容器保持体(加熱手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体と、
前記ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋と、
前記蓋又は前記ガス分析用容器本体に設けられ、ガス導入ライン及びガス導出ラインにそれぞれ接続する少なくとも2つの接続部と、
を備え、
前記接続部には、前記蓋を貫通する貫通孔と、
前記貫通孔を封止するように前記貫通孔内に形成され、前記ガス導入ラインの先端で突き破られ得る遮蔽板と、が設けられていることを特徴とする小型容器。
【請求項2】
前記貫通孔の孔壁は、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面を有し、
前記テーパ面に面接触又は線接触してシールするシール面が形成された栓を前記ガス導入ラインに貫通させて設けておくことにより、前記ガス分析用容器本体内へ前記ガス導入ラインを進入させて前記シール面と前記テーパ面とによるシールが可能にされていることを特徴とする請求項1に記載の小型容器。
【請求項3】
前記ガス分析用容器本体が耐圧構造にされ、
容器内圧が外圧よりも高くなっても前記栓が前記接続部から抜けることを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の小型容器。
【請求項4】
前記接続部がパイプ状部材で構成されることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の小型容器。
【請求項5】
前記ガス分析用容器本体の内壁面側、及び、前記蓋の内壁面側の少なくとも一方に、ガス放出防止対策が施されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれかに記載の小型容器。
【請求項6】
請求項1に記載の小型容器を複数備えているとともに、
複数の前記小型容器にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ラインと、複数の前記ガス供給ラインの上流側に接続されたガス供給本流ラインと、を備え、
前記複数のガス供給支流ラインには、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化する一定化手段が設けられていることにより、ガス流量が一定にされていることを特徴とする同時ガス分析システム。
【請求項7】
前記一定化手段として、オリフィス及び抵抗管の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の同時ガス分析システム。
【請求項8】
前記複数の小型容器を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の同時ガス分析システム。
【請求項1】
ガス発生源となる試料を収容するガス分析用容器本体と、
前記ガス分析用容器本体に着脱自在な密閉用の蓋と、
前記蓋又は前記ガス分析用容器本体に設けられ、ガス導入ライン及びガス導出ラインにそれぞれ接続する少なくとも2つの接続部と、
を備え、
前記接続部には、前記蓋を貫通する貫通孔と、
前記貫通孔を封止するように前記貫通孔内に形成され、前記ガス導入ラインの先端で突き破られ得る遮蔽板と、が設けられていることを特徴とする小型容器。
【請求項2】
前記貫通孔の孔壁は、容器外方へテーパ状に広がるテーパ面を有し、
前記テーパ面に面接触又は線接触してシールするシール面が形成された栓を前記ガス導入ラインに貫通させて設けておくことにより、前記ガス分析用容器本体内へ前記ガス導入ラインを進入させて前記シール面と前記テーパ面とによるシールが可能にされていることを特徴とする請求項1に記載の小型容器。
【請求項3】
前記ガス分析用容器本体が耐圧構造にされ、
容器内圧が外圧よりも高くなっても前記栓が前記接続部から抜けることを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の小型容器。
【請求項4】
前記接続部がパイプ状部材で構成されることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の小型容器。
【請求項5】
前記ガス分析用容器本体の内壁面側、及び、前記蓋の内壁面側の少なくとも一方に、ガス放出防止対策が施されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれかに記載の小型容器。
【請求項6】
請求項1に記載の小型容器を複数備えているとともに、
複数の前記小型容器にそれぞれ接続された複数のガス供給支流ラインと、複数の前記ガス供給ラインの上流側に接続されたガス供給本流ラインと、を備え、
前記複数のガス供給支流ラインには、それぞれ、ガスの流体抵抗を一定化する一定化手段が設けられていることにより、ガス流量が一定にされていることを特徴とする同時ガス分析システム。
【請求項7】
前記一定化手段として、オリフィス及び抵抗管の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の同時ガス分析システム。
【請求項8】
前記複数の小型容器を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の同時ガス分析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−101337(P2007−101337A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290920(P2005−290920)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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