説明

小型散布装置

【課題】構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることができるとともに、作業者に対する安全性を十分に確保することができる小型散布装置を提供すること。
【解決手段】回転可能に設けられその回転により散布物を散布させるインペラ22(散布回転体)と、このインペラ22を収容するインペラケース25(ケース部材)とを備え、インペラ22の回転を用いて散布物を散布する小型散布装置3であって、インペラケース25は、インペラ22の回転軸方向と略同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられ、インペラ22を収容する空間部分と連通するとともにインペラ22の回転によって付勢される散布物が吐出される開口部である散布口21を形成するものであり、インペラケース25の回動により、散布口21から吐出される散布物の散布方向が複数の方向に切り替えられる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するために用いられる小型散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するため、所定の駆動源を有する動力散布装置が用いられている。動力散布装置は、概略的には次のような構成を有する。すなわち、動力散布装置は、散布物を散布するための散布部と、この散布部に供給される散布物を繰り出すための繰出部とを有する。散布部においては、所定のケースに内装され、モータやエンジン等を駆動源として機体前後方向を回転軸方向として回転可能に設けられるファンやスピンナーやインペラ等と称される回転体が備えられる。そして、この回転体の回転による送風や遠心力が用いられることにより、散布物が所定の散布口(吐出口)から散布される。
【0003】
このような動力散布装置に関しては、走行車輪等を有する移動台車に搭載された状態で用いられるもののほか、作業者に持たれた状態(身に付けられた状態)で用いられるものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、背負式の動力散布装置が記載されている。特許文献1の動力散布装置においては、薬剤が吐出される散布口が、ファン等の回転体を収容するケースの一端側(左右一側)に形成される開口部に管状の部材が接続されることにより構成されている。かかる構成においては、散布口が左右一側に設けられることとなるため、散布方向が大きく変えられるためには、装置を背負う作業者の向き(歩く向き等)が変えられる必要等が生じる。
【0004】
そこで、動力散布装置の構成として、機体前後方向に対する左右方向の両側に開口する散布口を有するものがある。かかる構成においては、散布口が、ファン等の回転体を収容するケースの内部と連通する部分に対して左右両側に設けられる。そして、左側の散布口からの散布と右側の散布口からの散布との切替えが、ケースの内部から左右の散布口までの経路(吐出経路)の切替えや回転体の回転方向の切替えをともなって行われる。
【0005】
確かに、左右両側に散布口を有する構成によれば、散布管が用いられる構成との比較において、散布物の散布量の均一性の向上や機体のコンパクト化を図ることができ、散布管の向きの変更作業等が省略できることから、作業性の向上を図ることができる。しかし、左右両側に散布口を有する構成においては、複数の(二つの)散布口や、左右の散布口に対する散布物の吐出経路を切り替えるための機構が必要となる。このため、動力散布装置の構造が複雑となり、コストダウンを図ることが困難となる。
【0006】
また、動力散布装置には、ファン等の回転体を収容するケースが回転体の回転軸の方向と同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられることにより、散布口の向き(散布方向)が変えられる構成を有するものがある(例えば、特許文献2参照。)。つまり、かかる構成においては、ケースが左右方向に回動させられることにより、ケースの内部と連通するようにケースに対して一体的に設けられる散布口の向きが変えられる。
【0007】
一方で、作業者に持たれた状態で用いられる動力散布装置として、特許文献1に記載されているような背負式のものに対して、作業者の前に掛けられた状態で用いられる前掛け方式のものが検討されている。つまり、前掛け方式の動力散布装置は、バンド等が用いられることによって作業者の前側にて吊り下げられ抱えられたような状態で用いられる。
【0008】
このような前掛け方式の動力散布装置において、前記のように散布口の向きがケースの左右方向の回動によって変えられる構成が採用された場合、次のような問題が生じると考えられる。すなわち、前掛け方式の動力散布装置においては、散布口は、作業者の前側に位置することとなる。そして、かかる散布口は、その左右方向の回動範囲において上側を向く状態が存在する。このため、散布口が上側を向いた状態で散布口から散布物が吐出された場合、その散布物が作業者に当たる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−4762号公報
【特許文献2】特開2005−803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることができるとともに、作業者に対する安全性を十分に確保することができる小型散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
すなわち、請求項1においては、回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体と、該散布回転体を収容するケース部材とを備え、前記散布回転体の回転を用いて散布物を散布する小型散布装置であって、前記ケース部材は、前記散布回転体の回転軸方向と略同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられ、前記散布回転体を収容する空間部分と連通するとともに前記散布回転体の回転によって付勢される散布物が吐出される開口部である散布口を形成するものであり、前記ケース部材の回動により、前記散布口から吐出される散布物の散布方向が複数の方向に切り替えられるものである。
【0013】
請求項2においては、請求項1に記載の小型散布装置において、前記小型散布装置は、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体を備えるものであり、前記ケース部材の回動位置について、前記散布口が所定の方向を向く回動位置を中心位置として互いに反対となる両回動方向側の所定の回動位置を、前記散布口からの散布物の散布が行われる散布位置とし、前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知する検知手段を備え、該検知手段によって前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることが検知されていない状態では、前記散布回転体および前記繰出回転体の少なくともいずれかの回転が停止するように構成されているものである。
【0014】
請求項3においては、請求項1に記載の小型散布装置において、前記小型散布装置は、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体を備えるものであり、前記ケース部材の回動位置について、前記散布口が所定の方向を向く回動位置を中心位置として互いに反対となる両回動方向側の所定の回動位置を、前記散布口からの散布物の散布が行われる散布位置とし、前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知するとともに、前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知した状態でのみ、前記散布回転体および前記繰出回転体の回転を許容する許容手段を備えるものである。
【0015】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれか一項に記載の小型散布装置において、前記ケース部材は、該ケース部材の回動軸方向視で、前記散布回転体の回転形状に沿う円弧状の部分と、該円弧状の部分に対してその中心位置を介して対向する位置から略接線方向に延出する互いに略平行な直線状の部分とからなる略U字状の外形を有し、前記散布口を、前記直線状の部分の延出方向先端同士を結ぶ直線状の部分として表される面部に対して開口するように形成するものである。
【0016】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれか一項に記載の小型散布装置において、前記小型散布装置は、前記散布回転体に向けて散布物を繰り出す繰出部を有し、該繰出部は、回転可能に設けられその回転数によって前記散布回転体に対する散布物の繰出量を調整するための繰出回転体と、該繰出回転体を回転させるための繰出駆動源とを含み、前記回転駆動源および前記繰出駆動源は、それぞれ電動モータにより構成され、前記回転駆動源の回転始動時に、前記回転駆動源に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される前記散布回転体の回転数が、予め設定される所定の回転数に達するまで、前記繰出回転体の回転が停止させられ、前記測定値に基づいて検知される前記散布回転体の回転数が、前記所定の回転数に達すると、前記繰出駆動源に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される前記繰出部における散布物の繰出量が、所定の量になるように、前記繰出駆動源が制御されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることができるとともに、作業者に対する安全性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る小型散布装置の全体構成を示す正面図。
【図2】同じく背面図。
【図3】同じく左側面図。
【図4】同じく右側面図。
【図5】同じく上方斜視図。
【図6】小型散布装置の内部構造を示す側面一部切欠断面図。
【図7】散布部の構成を示す図。
【図8】散布方向の切替えについての説明図。
【図9】本発明の一実施形態に係る小型散布装置の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る小型散布装置の全体構成を示す正面図、図2は同じく背面図、図3は同じく左側面図、図4は同じく右側面図、図5は同じく上方斜視図、図6は小型散布装置の内部構造を示す側面一部切欠断面図、図7は散布部の構成を示す図、図8は散布方向の切替えについての説明図、図9は本発明の一実施形態に係る小型散布装置の制御ブロック図である。
【0020】
本実施形態に係る小型散布装置3は、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するための動力散布装置である。本実施形態に係る小型散布装置3は、作業者の前に掛けられた状態で用いられる前掛け方式のものである。すなわち、小型散布装置3は、バンド等が用いられることによって作業者の前側にて吊り下げられ抱えられたような状態で用いられ、作業者による歩行によって移動させられながら散布物を散布する。なお、以下の説明においては、小型散布装置3が散布する散布物を粒状の薬剤とし、図3における左方向を前方向として、小型散布装置3における前後方向および左右方向を定義する。したがって図2における左右方向が、小型散布装置3における左右方向に対応することとなる。また、図1等における上下方向を、小型散布装置3における上下方向とする。
【0021】
小型散布装置3は、散布する薬剤を吐出するための散布口21を有する。小型散布装置3は、薬剤を散布する散布部20と、この散布部20に供給される薬剤を繰り出すための繰出部30とを有する。散布部20は、所定の回転駆動源により回転させられるインペラ22を有し、このインペラ22の回転を用いて薬剤を散布口21から散布する。繰出部30は、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤を、所定の繰出機構を介して、散布部20のインペラ22の部分に供給する。すなわち、小型散布装置3においては、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤が、所定の繰出機構を介して薬剤の吐出経路に繰り出される。この吐出経路は、散布部20においてインペラ22が収容される空間に連通する。そして、吐出経路を介してインペラ22の部分に供給された薬剤が、インペラ22の回転による送風と遠心力によって散布口21から放出されることで散布される。
【0022】
以下では、本実施形態の小型散布装置3の詳細構成について説明する。前述したように、小型散布装置3は、散布部20と繰出部30とを有する。散布部20は、インペラ22と、このインペラ22を回転させる所定の回転駆動源としての散布モータ23とを有する。
【0023】
散布モータ23は、散布部20が有する散布部ハウジング24内に収容された状態で設けられる。散布モータ23は、散布部ハウジング24内において、出力軸(回転軸)の軸方向が前後水平方向となる姿勢で支持される。
【0024】
インペラ22は、インペラケース25に内装された状態で設けられる。インペラ22は、前後水平方向を回転軸方向として回転可能に設けられる。インペラ22は、複数枚(本実施形態では六枚)の拡散羽根22aを有する。拡散羽根22aは、前後方向およびインペラ22の径方向に略平行となる薄板状の部分である。六枚の拡散羽根22aは、インペラ22の円周方向に等角度間隔を隔てた状態で設けられ、正面視等において放射状となるように配される。なお、インペラ22が有する拡散羽根22aの枚数や形状等は、特に本実施形態に限定されるものではない。
【0025】
インペラ22は、散布部ハウジング24内に収容された状態の散布モータ23において前方に向けて突出する出力軸に対して固定されることにより、散布モータ23に連結される。つまり、散布部20においては、散布モータ23の前方にインペラ22が設けられる。したがって、インペラ22を内装するインペラケース25は、散布モータ23を収容する散布部ハウジング24の前側に設けられることとなる。インペラケース25は、インペラ22を収容する内部空間に対する開口部を有し、この開口部が、散布される薬剤が吐出される散布口21となる。
【0026】
インペラ22は、その回転方向が切り替えられるように設けられる。つまり、インペラ22を回転駆動させる散布モータ23の回転方向の切替えにより、インペラ22の回転方向が切り替えられる構成となっている。
【0027】
このような構成を備える散布部20においては、回転するインペラ22の中心部に向けて繰出部30から落下させられた粒状の薬剤が、拡散羽根22aの移動によりインペラケース25の内周面に沿って上方に向けて搬送され、インペラ22の回転による送風と遠心力によって付勢されて散布口21からインペラケース25外に放出されることで散布される。ここで、インペラ22の回転数、つまり散布モータ23の回転数(回転速度)の調整により、薬剤の散布距離が調整される。例えば、インペラ22の回転数(散布モータ23の回転数)が増加することにより、送風量および遠心力が増加し、散布距離が長くなる。このように、散布部20においては、インペラ22の回転による送風と遠心力が用いられることにより、薬剤が所定の散布口21から散布される。
【0028】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体としてのインペラ22と、このインペラ22を収容するケース部材としてのインペラケース25とが備えられる。
【0029】
繰出部30は、インペラ22に向けて薬剤を繰り出す。繰出部30は、散布部20の上方に構成される。繰出部30は、薬剤を貯溜する薬剤タンク31と、薬剤タンク31内の薬剤を散布部20に対して繰り出すためのメザラシャッター32と、メザラシャッター32を駆動するための繰出モータ33とを有する。
【0030】
繰出モータ33は、繰出部30が有する繰出部ハウジング34内に収容された状態で設けられる。繰出モータ33は、繰出部ハウジング34内において、出力軸(回転軸)の軸方向が左右水平方向となる姿勢で支持される。具体的には、本実施形態では、繰出部ハウジング34は、正面視等において略十字形状に形成される。そして、その繰出部ハウジング34の略十字形状における左側の部分に、繰出モータ33が内装される。また、本実施形態では、繰出部ハウジング34は、散布部ハウジング24と一体的に構成されている。つまり、繰出部ハウジング34に対して、その下方に散布部ハウジング24が一体的に存在する。
【0031】
メザラシャッター32は、繰出部ハウジング34に内装された状態で設けられる。メザラシャッター32は、左右水平方向を回転軸方向として回転可能に設けられる。図6に示すように、メザラシャッター32は、略紡錘形状の本体部32aと、この本体部32aの周囲に形成される複数枚(本実施形態では八枚)の繰出羽根32bとを有する。繰出羽根32bは、左右方向およびメザラシャッター32の径方向に略平行となる薄板状の部分である。八枚の繰出羽根32bは、メザラシャッター32の周方向に等角度間隔を隔てた状態で設けられ、側面視において放射状となるように配される。なお、メザラシャッター32が有する繰出羽根32bの枚数や形状等は、特に本実施形態に限定されるものではない。
【0032】
メザラシャッター32は、繰出部ハウジング34内に収容された状態の繰出モータ33において側方(右方)に向けて突出する出力軸に対して固定されることにより、繰出モータ33に連結される。つまり、繰出部30においては、繰出モータ33の右方にメザラシャッター32が設けられる。メザラシャッター32は、繰出部ハウジング34内に形成されるシャッター収容部34aに設けられる(図6参照)。
【0033】
シャッター収容部34aは、繰出部ハウジング34においてその略十字形状における中央部分に形成される空間部分である。図6に示すように、メザラシャッター収容部34aは、メザラシャッター32の回転形状に沿うような形状を有する。また、繰出部ハウジング34の略十字形状における上側の部分は、繰出ケース部35として構成されている。繰出ケース部35は、上側に向けて開口する略円筒形状の部分である。つまり、繰出ケース部35により形成される空間(繰出ケース部35の内部空間)は、上側が開口する略円柱形状を有する。また、繰出ケース部35の内部空間は、下方にかけて円錐状(漏斗状)に縮径するとともにシャッター収容部34aに連通する。シャッター収容部34aは、繰出ケース部35の内部空間に臨んだ状態で開口することにより、繰出ケース部35の内部空間と連通する。
【0034】
シャッター収容部34aにおける繰出ケース部35側と反対側、つまり下側には、繰出通路34bが形成されている。繰出通路34bは、シャッター収容部34aから、斜め前下方に向けて形成される。繰出通路34bは、前記のとおり一体的に構成される繰出部ハウジング34および散布部ハウジング24にわたって形成され、インペラ22の中心部近傍に向けてインペラケース25の内部空間に開口する。つまり、繰出通路34bは、上端側がシャッター収容部34aを介して繰出ケース部35の内部空間に連通するとともに、下端側がインペラケース25の内部空間に連通するように形成される。
【0035】
薬剤タンク31は、繰出部ハウジング34の上側に設けられる。薬剤タンク31は、繰出部ハウジング34を構成する繰出ケース部35に取り付けられた状態で設けられる。具体的には、薬剤タンク31の一端部には、繰出ケース部35の内部空間に沿う形状を有する円筒形状を有する接続部31b(図6参照)が形成されている。薬剤タンク31は、その接続部31bが繰出ケース部35に対して上方から挿入されることにより、繰出ケース部35に対して取り付けられる。薬剤タンク31は、繰出ケース部35に取り付けられた状態で、繰出ケース部35の内部空間と連通した状態となる。かかる構成により、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤が、重力によって繰出ケース部35内に導かれる。また、薬剤タンク31は、繰出ケース部35に取り付けられた状態において上側となる位置に形成される開口部を有し、この開口部が、蓋31aの着脱によって開閉される構成となっている。つまり、薬剤タンク31に対する薬剤の補給は、蓋31aが取り付けられる開口部を介して行われる。
【0036】
このような構成を有する繰出部30においては、薬剤タンク31から繰出ケース部35内に導かれた薬剤が、メザラシャッター32の回転によって、所定量ずつ繰出通路34bに送り出される。すなわち、メザラシャッター32を収容するシャッター収容部34aは、前記のとおりメザラシャッター32の回転形状に沿うような形状を有するとともに繰出ケース部35に向けて開口する。このため、メザラシャッター32が回転していない状態では、繰出ケース部35から繰出通路34bへの薬剤の落下が規制される。一方、メザラシャッター32が回転することにより、隣り合う繰出羽根32b間において受けられている薬剤が、繰出通路34bに対して送り出される。これにより、薬剤タンク31内の薬剤が、メザラシャッター32の回転によって、繰出通路34bに対して所定量ずつ繰り出される。そして、メザラシャッター32の回転により繰り出された薬剤は、繰出通路34bを介してインペラ22の中心部に導かれる。
【0037】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部である薬剤タンク31に貯溜されている薬剤をインペラ22に向けて繰り出す繰出回転体としてのメザラシャッター32が備えられる。そして、小型散布装置3における薬剤の繰出機構においては、メザラシャッター32の回転数が変更されることにより、繰出ケース部35からの薬剤の繰出量が調整される。このように、メザラシャッター32は、繰出部30が有する繰出量調整部材として機能する。また、メザラシャッター32については、繰出羽根32bの形状や大きさや数等が互いに異なるものとの交換により、粒の大きさや形状の異なる複数種類の薬剤の散布が可能となる。
【0038】
以上のように、本実施形態の小型散布装置3においては、繰出部30は、回転可能に設けられその回転数によってインペラ22に対する薬剤の繰出量を調整するための繰出量調整部材としてのメザラシャッター32と、このメザラシャッター32を回転させるための繰出駆動源としての繰出モータ33とを含む。そして、繰出部30から繰出通路34bを介して散布部20のインペラ22の中心部に導かれた薬剤、つまり繰出部30から散布部20に対して繰り出された薬剤は、散布部20において、前述したようにインペラ22の回転による送風と遠心力が用いられることにより、散布口21から散布される。
【0039】
なお、本実施形態においては、繰出部30における薬剤の繰出方法として、繰出量調整部材としてメザラシャッター32が用いられる構成が採用されているが、これに限定されるものではない。繰出部30における薬剤の繰出方法としては、例えば、複数の切欠きや孔等として形成される連通部を有し水平に配される水平目皿が繰出量調整部材として用いられ、この水平目皿の回転数等によって薬剤の繰出量が調整される水平目皿式や、横溝を有し回転可能に設けられるロール部材が繰出量調整部材として用いられ、このロール部材の回転数等によって薬剤の繰出量が調整される横溝ロール式や、シャッターの開閉により薬剤の繰出量が調整されるシャッター式等が採用され得る。
【0040】
また、小型散布装置3においては、バッテリ36が設けられている。バッテリ36は、散布部20を構成する散布モータ23と、繰出部30を構成する繰出モータ33とに電力を供給する。バッテリ36は、バッテリケース36a内に収容された状態で設けられる。バッテリケース36aは、散布部ハウジング24の下側にて、散布部ハウジング24と一体的に構成される。
【0041】
また、小型散布装置3においては、薬剤の散布量および散布距離を調整するための調整ダイヤル37が設けられている。小型散布装置3は、調整ダイヤル37の操作により、散布モータ23および繰出モータ33の回転数(回転速度)が調整されるように構成される。すなわち、散布モータ23および繰出モータ33の回転数は、調整ダイヤル37の操作によって段階的にあるいは連続的に調整可能となっており、調整ダイヤル37によって所望される薬剤の散布量および散布距離に応じた回転数に調整される。調整ダイヤル37は、前記のとおり繰出部ハウジング34が有する略十字形状における右側の部分において、右方に突出した状態で設けられる。
【0042】
また、小型散布装置3においては、支持フレーム38が設けられている。支持フレーム38は、一体の棒状の部材が折曲げ形成されることにより構成される。支持フレーム38は、図1〜図5に示すように、その両端部が繰出ケース部35の左右両外側の位置にて支持された状態で、この支持部分から散布部20の下側(小型散布装置3の下側)にかけて、背面視略V字状かつ側面視略コ字状となるように配される。支持フレーム38は、その支持される両端部が、繰出ケース部35の外側において左右両側に突出する支持ステー38aに対して支持ステー38aを前後方向に貫通した状態で支持固定される。
【0043】
また、小型散布装置3においては、ガード板39が設けられている。ガード板39は、略矩形状の板状部分を有する部材であり、薬剤タンク31の左右両側において水平方向に配され、インペラケース25の上方に位置するように設けられる。ガード板39は、散布口21から吐出される薬剤の不要な方向に対する散布を規制するとともに、その散布を規制した薬剤(ガード板39に対して下方から当たった薬剤)を下側(作業者の手前)に落とす機能を有する。
【0044】
ガード板39は、薬剤タンク31の外側の下部において左右両側に突出する支持板部31cに対して固定されることで支持される。すなわち、ガード板39は、略矩形状の板状部分の一端部に、薬剤タンク31に対して支持されるための支持ステー39aを有し、この支持ステー39aが薬剤タンク31の支持板部31cに対して固定されることにより、薬剤タンク31に対して支持される。
【0045】
また、本実施形態の小型散布装置3においては、ガード板39の一端に、小型散布装置3が前掛け方式として用いられるためのフック部39bが設けられている。フック部39bは、ガード板39の後端部から後方に向けて突出する板状の部分であり、小型散布装置3が作業者の前側に吊り下げられるためのバンド等が引掛けられる孔部39cを有する。つまり、薬剤タンク31の左右両側に設けられるガード板39に形成されるフック部39bが用いられ、前掛け用の小型散布装置3がバンド等により作業者の前側で吊り下げられた状態で支持される。
【0046】
以上の構成を備える本実施形態の小型散布装置3は、散布部20において、散布口21から吐出される薬剤の散布方向が複数の方向に切り替えられるように構成されている。以下、小型散布装置3において散布口21から吐出される薬剤の散布方向が切り替えられるための構成(以下「散布方向切替構成」という。)について、散布部20が備える構成とともに説明する。
【0047】
散布方向切替構成においては、インペラ22を収容するインペラケース25の回動により、散布口21から吐出される薬剤の散布方向が複数の方向に切り替えられる。
【0048】
すなわち、インペラケース25は、インペラ22の回転軸方向と略同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられる。具体的には、インペラケース25は、散布部ハウジング24の前端側において、散布部ハウジング24に対して回動可能に嵌合された状態で支持されることにより、前後水平方向を回動軸方向として左右方向に回動可能に設けられる。また、インペラケース25は、インペラ22を収容する空間部分と連通するとともにインペラ22の回転によって付勢される薬剤が吐出される開口部である散布口21を形成する。つまり、インペラケース25の一端に、散布口21が形成される。
【0049】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、インペラ22を収容するインペラケース25が、散布口21を形成する散布口形成部材として機能する。そして、インペラケース25が回動させられることにより、散布口21の向きが変化する。インペラケース25の回動には、切替ハンドル41が用いられる。切替ハンドル41は、インペラケース25の前面に前方に向けて突出する略円柱状の把持部分として構成される。切替ハンドル41は、インペラケース25に対して一体的に設けられる。つまり、インペラケース25は、切替ハンドル41の回動操作により、切替ハンドル41と一体的に回動する。このように、切替ハンドル41の操作により、インペラケース25が回動させられ、散布口21の方向、つまり散布方向が切り替えられる。
【0050】
本実施形態のインペラケース25は、次のような形状を有する。インペラケース25は、インペラ22を収容できる程度の厚さ(回動軸方向の長さ)を有する略板状のケース体として構成される。インペラケース25は、インペラケース25の回動軸方向視(正面視および背面視、以下単に「回動軸方向視」という。)で、略U字状の外形を有する。すなわち、図7に示すように、インペラケース25は、回動軸方向視で、インペラ22の回転形状(円形状)に沿う円弧状の部分25aと、この円弧状の部分25aに対してその中心位置(符号C1参照)を介して対向する位置から略接線方向に延出する互いに略平行な直線状の部分25bとからなる略U字状の外形を有する。なお、図7は、小型散布装置3の背面視(図2参照)に対応する方向視の図である。
【0051】
具体的には、回動軸方向視において、略U字状を形成する円弧状の部分25aは、符号C1で表される位置を中心位置とする円形状についての半円状の部分となる。また、同じく略U字形状を形成する直線状の部分25bは、半円状の部分である円弧状の部分25aの両端に対応する位置から、前記円形状における接線方向に延出される部分となる。つまり、回動軸方向視で略U字形状を形成する直線状の部分25bは、インペラケース25において互いに平行な状態で対向する面部を形成する部分となる。ここで、回動軸方向視において、略U字状を形成する円弧状の部分25aの中心位置C1が、互いに一致するインペラ22の回転軸心位置およびインペラケース25の回動軸心位置に対応する。
【0052】
そして、インペラケース25は、回動軸方向視での外形形状である略U字状において、散布口21を、直線状の部分25bの延出方向先端同士を結ぶ直線状の部分25cとして表される面部に対して開口するように形成する。すなわち、インペラケース25において、直線状の部分25bは、前記のとおり互いに平行な状態で対向する面部を形成する。この互いに対向する面部に対して、その円弧状の部分25aからの延出方向の先端部同士の間に形成される面部は、回動軸方向視において両方の直線状の部分25bに略直交する直線状の部分25cとして表される。この回動軸方向視において直線状の部分25cで表される面部に、インペラケース25の内部空間から外部へと臨む開口部としての散布口21が開口した状態となる。
【0053】
このように、回動軸方向視で略U字状の外形を有するインペラケース25は、その回動による姿勢の変化について、略左右対称となる。すなわち、前記のとおり回動軸方向視で半円状の円弧状の部分25aと互いに平行となる直線状の部分25bとによる略U字状の外形を有し、円弧状の部分25aの中心位置C1を回動中心として回動可能に設けられるインペラケース25は、散布口21が上方を向いた状態(直線状の部分25cが左右水平方向となった状態)で、鉛直線(符号C2参照)を中心として略左右対称(略線対称)となる。そして、散布口21が上方を向いた状態を中心位置として、反対方向に(左右方向に)それぞれ同じ角度ずつ回動した各状態のインペラケース25は、略左右対称となる。
【0054】
以上のような本実施形態の散布方向切替構成においては、インペラケース25の回動により、散布口21から吐出される薬剤の散布方向が、左右両側の各方向に切り替えられる。すなわち、本実施形態では、インペラケース25がその回動範囲における左右両端側に位置する各状態に対応する散布口21の位置が、左右両側の各散布方向に対応する。言い換えると、本実施形態では、薬剤の散布方向は、インペラケース25がその回動範囲における右端側に位置する状態(図7に示す状態、以下「右散布状態」という。)での散布口21からの散布方向と、インペラケース25がその回動範囲における左端側に位置する状態(図7、二点鎖線25x参照、以下「左散布状態」という。)での散布口21からの散布方向との二つの方向で切り替えられる(矢印B参照)。
【0055】
つまり、本実施形態では、薬剤の散布方向として、インペラケース25の回動による左方向および右方向のいずれかが用いられる。ここで、インペラケース25の回動範囲は、右散布状態および左散布状態の各状態のインペラケース25が、前述のように略左右対称となるように設定される。言い換えると、インペラケース25の回動範囲は、インペラケース25が、散布口21が上方を向いた状態を中心位置として、反対方向に(左右方向に)それぞれ同じ角度ずつ回動するような回動範囲として設定される。
【0056】
そして、インペラケース25の右散布状態および左散布状態の各状態においては、インペラケース25は、散布口21が斜め上方を向くような姿勢となる。なお、インペラケース25の右散布状態および左散布状態の各状態は、インペラケース25が図示せぬストッパ等によって所定の位置で係止されること等によって保持される。このような薬剤の散布方向の切替え、つまりインペラケース25の回動による右散布状態および左散布状態の各状態の切替えは、前述した切替ハンドル41が用いられることにより手動操作によって行われる。
【0057】
このような散布方向の切替えにともない、インペラ22の回転方向(散布モータ23の回転方向)も切り替えられる。つまり、インペラケース25の右散布状態での機体右側に向けての薬剤の散布(以下「右側散布」という。)と、インペラケース25の左散布状態での機体左側に向けての薬剤の散布(以下「左側散布」という。)とで、インペラ22の回転について互いに異なる回転方向が用いられる。具体的には、右側散布の場合、インペラ22は、図7に示す背面視で時計方向(右回転方向)に回転する(矢印D1参照)。逆に、左側散布(二点鎖線25x参照)の場合、インペラ22は、図7に示す背面視で反時計方向(左回転方向)に回転する(矢印D2参照)。
【0058】
なお、本実施形態の散布方向切替構成においては、薬剤の散布方向は、右側散布の方向と左側散布の方向との二方向であるが、複数の方向に切り替えられる構成であれば、これに限定されるものではない。すなわち、散布方向が複数の方向に切り替えられる構成としては、例えば、インペラケース25が、その回動範囲において左右両側で複数箇所にて段階的に係止されるような構成が採用されてもよい。また、同じく散布方向が複数の方向に切り替えられる構成としては、インペラケース25がその連続的な回動における任意の位置で係止される構成であって、散布方向がインペラケース25の回動範囲における任意の位置に対応する方向に切り替えられる構成が採用されてもよい。つまり、散布方向が複数の方向に切り替えられることには、インペラケース25の連続的な回動位置の変化による散布方向の連続的な変化も含まれる。
【0059】
上述したように、本実施形態の散布方向切替構成においては、インペラケース25の回動によって切り替えられる薬剤の散布方向として、インペラケース25が右側散布状態となる右側散布による散布方向と、インペラケース25が左散布状態となる左側散布による散布方向とが用いられる。すなわち、本実施形態の散布方向切替構成では、インペラケース25の回動位置について、散布口21が所定の方向としての鉛直上方を向く回動位置を中心位置として互いに反対となる両回動方向側(左右両回動方向側)の所定の回動位置が、散布口21からの薬剤の散布が行われる散布位置とされる。
【0060】
このように、本実施形態では、インペラケース25の回動位置について、薬剤の散布位置として、インペラケース25が右散布状態となる位置(以下「右散布位置」という。)と、インペラケース25が左散布状態となる位置(以下「左散布位置」という。)とが散布位置とされる構成において、インペラケース25の回動位置が前記各散布位置であることを検知する検知手段が備えられる。本実施形態の散布方向切替構成では、前記検知手段として、リミットスイッチ42が備えられる。
【0061】
本実施形態では、薬剤の散布位置を検知するリミットスイッチ42として、インペラケース25についての右散布位置を検知するためのリミットスイッチ42(以下「右リミットスイッチ42R」とする。)と、インペラケース25についての左散布位置を検知するためのリミットスイッチ42(以下「左リミットスイッチ42L」とする。)とが備えられる。
【0062】
図7に示すように、リミットスイッチ42は、いわゆるヒンジ型のリミットスイッチであり、他の部材等からの作用を受けて移動するレバー42aと、このレバー42aの移動によって押される押ボタン42bとを有する。リミットスイッチ42においては、レバー42aによって押ボタン42bが押されている状態がオンの状態、つまり通電状態となり、レバー42aによって押ボタン42bが押されていない状態がオフの状態、つまり非通電状態となる。
【0063】
このようなリミットスイッチ42が用いられ、小型散布装置3において、散布口21からの薬剤の散布が行われる散布状態と、散布口21からの薬剤の散布が停止される非散布状態とが切り替えられる。そして、インペラケース25が左右の散布位置のいずれにもない状態では、小型散布装置3が非散布状態とされ、インペラケース25が左右の散布位置のいずれかにある状態でのみ、小型散布装置3が散布状態とされる。
【0064】
すなわち、本実施形態の小型散布装置3は、リミットスイッチ42によってインペラケース25の回動位置が散布位置(右散布位置または左散布位置)であることが検知されていない状態では、インペラ22およびメザラシャッター32の少なくともいずれかの回転が停止するように構成されている。
【0065】
具体的には、リミットスイッチ42は、インペラケース25の後側(背面側)であって、散布部ハウジング24の内部に設けられる。リミットスイッチ42は、インペラケース25の後側に設けられる支持板43に対して固定された状態で設けられる。図6および図7に示すように、支持板43は、円板状の部材であり、繰出通路34bが前側に開口する散布部ハウジング24の前端面部に対して固定される。つまり、支持板43は、散布部ハウジング24とインペラケース25との間に介装されるとともに、散布部ハウジング24側に固定された状態で設けられる。そして、インペラケース25は、支持板43を介して散布部ハウジング24に対して嵌合した状態で、回動可能に支持される。したがって、円板状の部材である支持板43は、その中心位置が、回動軸方向視でインペラ22等の回転軸心の位置(図7、中心位置C1参照)と一致する状態で設けられる。
【0066】
このようにして設けられる支持板43の後側の板面である背面43aに、リミットスイッチ42が取り付けられる。リミットスイッチ42は、支持板43の背面43aに対してネジ止め等の適宜の方法が用いられて固定される。本実施形態では、図7に示すように、左右のリミットスイッチ42L・42Rは、中心位置C1よりも下側において、レバー42a側が支持板43の円形状における外周側を向くとともにインペラケース25の周縁部(円弧状の部分25a近傍部分)に位置するような姿勢で、略左右対称に設けられる。
【0067】
このように、リミットスイッチ42は、インペラケース25を回動可能に支持する散布部ハウジング24に固定された状態で設けられる支持板43に対して固定されることにより、インペラケース25の回動にともないインペラケース25に対して相対的に移動することとなる。なお、リミットスイッチ42が固定される支持板43には、インペラケース25の内部空間に対する繰出通路34bの連通を許容するための貫通孔43bが設けられる。
【0068】
リミットスイッチ42は、インペラケース25に設けられる被検知部の位置から、インペラケース25の回動位置についての散布位置を検知する。すなわち、リミットスイッチ42に対する被検知部は、インペラケース25の回動にともなって移動するように設けられる。そして、リミットスイッチ42は、インペラケース25の回動によって被検知部が所定の位置に達したことを検知することにより、インペラケース25が散布位置にあることを検知する。
【0069】
具体的には、図7に示すように、本実施形態の散布方向切替構成では、リミットスイッチ42に対する被検知部として、作用突起44が設けられる。作用突起44は、インペラケース25の後側の面である背面25dにてインペラケース25と一体的に突出形成される突部である。つまり、作用突起44は、インペラケース25と一体的にインペラケース25の回動にともなって移動する。そして、作用突起44は、インペラケース25の回動にともなって移動することで、リミットスイッチ42に作用する。本実施形態では、作用突起44として、右リミットスイッチ42Rに作用する作用突起44(以下「右作用突起44R」とする。)と、左リミットスイッチ42Lに作用する作用突起44(以下「左作用突起44L」とする。)とが設けられる。
【0070】
作用突起44は、リミットスイッチ42に対して作用する際にレバー42aに接触する面となる作用面44aを有する。つまり、作用突起44は、インペラケース25において、リミットスイッチ42に対して作用する作用面44aを形成する部分となる。本実施形態では、図7に示すように、作用突起44は、リミットスイッチ42よりも中心位置C1を中心とする円形状における径方向で外側(外周側)に設けられるとともに、レバー42aが外周側を向くように設けられるリミットスイッチ42に対して、作用面44aが前記径方向で内側を向くように設けられる。これにより、作用突起44が、リミットスイッチ42に対して前記径方向で外側から作用することとなる。また、左右の作用突起44L・44Rは、前述したようにインペラケース25がその回動による姿勢の変化について略左右対称となること、および左右のリミットスイッチ42L・42Rが略左右対称に設けられることに対応して、略左右対称に設けられる。
【0071】
このような構成において、作用突起44は、リミットスイッチ42に対して次のように作用する。すなわち、インペラケース25が散布位置(右散布位置または左散布位置)にある状態となるまで回動させられることにより、作用突起44の作用面44aによってレバー42aが押え付けられ、リミットスイッチ42がオンの状態となる。具体的には、インペラケース25が散布位置に向けて回動させられることにより、作用面44aがレバー42aに接触する。作用面44aがレバー42aに接触した状態から、インペラケース25がさらに散布位置側に回動させられることで、作用突起44の移動によって作用面44aを介してレバー42aが押ボタン42bを押え付ける方向に移動させられる。そして、最終的には、インペラケース25が散布位置に達することにより、作用突起44によって作用面44aを介して押え付けられているレバー42aによって押ボタン42bが押え付けられ、リミットスイッチ42がオンの状態となる。
【0072】
このように、作用突起44は、インペラケース25の回動にともなう移動により、作用面44aを介してレバー42aによって押ボタン42bが押え付けられた状態、つまりリミットスイッチ42がオンの状態となるように、レバー42aを移動させる。そして、リミットスイッチ42がオンの状態となるインペラケース25の回動位置が、散布位置(右散布位置または左散布位置)に対応することとなる。すなわち、インペラケース25が右散布位置にある状態では、右作用突起44Rの作用によって右リミットスイッチ42Rがオンの状態とされ、インペラケース25が左散布位置にある状態では、左作用突起44Lの作用によって左リミットスイッチ42Lがオンの状態とされる。なお、図7は、インペラケース25が右散布位置にある状態を示しており、右リミットスイッチ42Rはオンの状態、左リミットスイッチ42Lはオフの状態となっている。
【0073】
したがって、左右のリミットスイッチ42L・42Rについての設けられる位置および姿勢、ならびに左右の作用突起44L・44Rについての設けられる位置および形状(作用面44aの形状)は、インペラケース25の回動範囲等との関係から、リミットスイッチ42がオンの状態となるインペラケース25の回動位置が散布位置(右散布位置または左散布位置)に対応するように適宜設定される。つまり、インペラケース25の回動位置が散布位置にある状態でのみ、リミットスイッチ42がオンの状態となるような構成であれば、リミットスイッチ42の設けられる位置や作用突起44の形状等は特に限定されるものではない。
【0074】
そして、このような構成により、リミットスイッチ42によってインペラケース25の回動位置が散布位置であることが検知されていない状態、つまりリミットスイッチ42のオフの状態では、小型散布装置3が非散布状態とされる。小型散布装置3の非散布状態は、インペラ22およびメザラシャッター32の少なくともいずれかの回転が停止させられることにより実現される。
【0075】
すなわち、インペラ22の回転が停止された状態においては、インペラ22の回転による送風や遠心力が得られないことから、散布口21から薬剤が吐出されず、小型散布装置3が非散布状態となる。また、メザラシャッター32の回転が停止された状態においては、メザラシャッター32の回転によって薬剤が繰出通路34bに送り出されないことから、インペラ22に対する薬剤の繰出しが停止され、小型散布装置3が非散布状態となる。また、インペラ22およびメザラシャッター32の両者の回転が停止されることによっても、前記両作用により、小型散布装置3が非散布状態となる。
【0076】
インペラ22の回転の停止は、散布モータ23の回転駆動の停止に対応し、メザラシャッター32の回転の停止は、繰出モータ33の回転駆動の停止に対応する。したがって、インペラケース25の回動位置が散布位置になくリミットスイッチ42がオフの状態においては、散布モータ23および繰出モータ33の少なくともいずれかの回転駆動が停止するように、左右のリミットスイッチ42L・42Rと散布モータ23との間、および左右のリミットスイッチ42L・42Rと繰出モータ33との間の電気回路が構成される。
【0077】
また、本実施形態の散布方向切替構成においては、前述したような散布方向の切替えにともなうインペラ22の回転方向(散布モータ23の回転方向)の切替えが、左右のリミットスイッチ42L・42Rのオン/オフに連動して行われる。すなわち、インペラケース25が右散布位置にあって右リミットスイッチ42Rがオンの状態である場合は、インペラ22の回転方向が右回転となり、インペラケース25が左散布位置にあって左リミットスイッチ42Lがオンの状態である場合は、インペラ22の回転方向が左回転となるように、左右のリミットスイッチ42L・42Rと散布モータ23との間の電気回路が構成される。言い換えると、右リミットスイッチ42Rは、オンの状態となることで、インペラ22を右回転方向に回転させ、左リミットスイッチ42Lは、オンの状態となることで、インペラ22を左回転に回転させる。
【0078】
以上のような本実施形態の散布方向切替構成における作用について、図8を用いて説明する。図8(a)は、インペラケース25の回動位置が右散布位置にある右側散布の状態を示している。かかる状態においては、右作用突起44Rによって右リミットスイッチ42Rのみがオンの状態となり、インペラ22は右回転する(矢印E1参照)。そして、インペラ22に対して供給された薬剤は、右回転するインペラ22による送風と遠心力によって右斜め上方を向く散布口21から吐出される(矢印F1参照)。
【0079】
図8(b)は、インペラケース25の回動位置が右散布位置および左散布位置のいずれにもない状態の一例を示している。かかる状態においては、右リミットスイッチ42Rおよび左リミットスイッチ42Lのいずれもがオフの状態となり、インペラ22およびメザラシャッター32の少なくともいずれかの回転が停止した状態となる。つまり、小型散布装置3が非散布状態となる。
【0080】
図8(c)は、インペラケース25の回動位置が左散布位置にある左側散布の状態を示している。かかる状態においては、左作用突起44Lによって左リミットスイッチ42Lのみがオンの状態となり、インペラ22は左回転する(矢印E2参照)。そして、インペラ22に対して供給された薬剤は、左回転するインペラ22による送風と遠心力によって左斜め上方を向く散布口21から吐出される(矢印F2参照)。
【0081】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、左右のリミットスイッチ42L・42Rは、インペラケース25の回動位置が散布位置であることを検知するとともに、インペラケース25の回動位置が散布位置であることを検知した状態でのみ、インペラ22およびメザラシャッター32の回転を許容する許容手段として機能する。
【0082】
すなわち、左右のリミットスイッチ42L・42Rによってインペラケース25の回動位置が左散布位置または右散布位置にあることが検知されない状態、つまり左右のリミットスイッチ42L・42Rのいずれもがオフの状態では、インペラ22およびメザラシャッター32の少なくともいずれかの回転が停止する。そして、右リミットスイッチ42Rによって、インペラケース25の回動位置が左散布位置または右散布位置にあることが検知されること、つまり左リミットスイッチ42Lまたは右リミットスイッチ42Rがオンの状態となることにより、インペラ22およびメザラシャッター32の回転が許容される。
【0083】
以上のような散布方向切替構成によれば、不要な方向に対する薬剤の散布を防止することができるとともに、作業者に対する安全性を十分に確保することができる。すなわち、インペラケース25が、その回動範囲において右散布位置および左散布位置以外の回動位置にある状態では、小型散布装置3は非散布状態となることから、例えば上方向等の不要な方向に対する薬剤の散布が防止される。また、同じくインペラケース25が右散布位置および左散布位置以外の回動位置にある状態では小型散布装置3は非散布状態となることから、上方等を向く散布口21から吐出される薬剤が直接的にあるいは他の部分に当たって跳ね返る等して間接的に作業者に当たるような現象を回避することができ、十分な安全性を確保することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、インペラケース25が散布位置にある状態を検知するとともに、インペラ22およびメザラシャッター32の回転を許容するための手段として、リミットスイッチ42が用いられているが、これに限定されるものではない。すなわち、リミットスイッチ42の代わりに、リミットスイッチ42以外のマイクロスイッチや光電スイッチや近接スイッチ等の各種スイッチ、あるいは位置センサや近接センサ等の各種センサ等が用いられてもよい。また、リミットスイッチ42または作用突起44の取付け位置が中心位置C1を中心に周方向に変更可能とされ、薬剤の散布角度が変更可能となるように構成されることもできる。ただしこの場合、インペラケース25の回動停止位置を設定するためのストッパ等の位置も変更可能とされ、圃場に合わせた最適な散布作業ができるような構成とされる。
【0085】
以上のような散布方向切替構成を備える本実施形態の小型散布装置3によれば、構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。すなわち、本実施形態の小型散布装置3は、一つの散布口21を有し、この散布口21からの薬剤の散布方向がインペラ22を収容するインペラケース25の回動によって左右両方向に切り替わる構成となっている。これにより、機体の左右両側に散布口を有し、それら左右の散布口に対する散布物の吐出経路を切り替えるための機構を有する構成等との比較において、構造が単純となり、容易にコストダウンを図ることができる。
【0086】
続いて、本実施形態の小型散布装置3における制御構成について、図9を用いて説明する。小型散布装置3は、制御部50を備える。制御部50は、小型散布装置3における各部の動作を制御する。制御部50は、プログラム等を格納する格納部、プログラム等を展開する展開部、プログラム等に従って所定の演算を行う演算部、演算部による演算結果等を保管する保管部等を有する。制御部50としては、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成や、ワンチップのLSI等からなる構成が用いられる。制御部50は、小型散布装置3において、例えば繰出部ハウジング34内等の所定の場所に搭載される。
【0087】
制御部50には、散布モータ23と、繰出モータ33とが接続される。制御部50は、これらのモータの回転数や回転方向等を制御する。また、制御部50には、散布される薬剤の種類を入力するための薬剤種類設定器51と、薬剤の散布距離(飛距離)を設定するための散布距離設定器52と、繰出部30における繰出量を設定するための繰出量設定器53とが接続されている。これら各種設定器は、小型散布装置3において、例えば繰出部ハウジング34の外側における適宜の場所に設けられる。
【0088】
制御部50は、薬剤種類設定器51において設定された薬剤の種類に応じた出力信号や、繰出量設定器53において設定された薬剤の繰出量に応じた出力信号に基づいて、薬剤の散布量、つまり繰出部30からの薬剤の繰出量を調整するためのメザラシャッター32を回転させる繰出モータ33の回転数を演算する。また、制御部50は、散布距離設定器52において設定された薬剤の散布距離に応じた出力信号に基づいて、インペラ22の回転数、つまり散布モータ23の回転数を演算する。
【0089】
また、制御部50には、バッテリ36が接続されている。制御部50は、電流電圧測定部50aを有する。電流電圧測定部50aは、散布モータ23および繰出モータ33の各モータに供給される電流および電圧の少なくともいずれかを測定する。また、制御部50に対しては、小型散布装置3において備えられる各種スイッチ等が接続される。
【0090】
以上のような制御構成を備える小型散布装置3においては、制御部50により、繰出部30における薬剤の繰出量について、散布部20におけるインペラ22の回転数との関係に基づく制御(以下「回転数制御」という。)が行われる。
【0091】
回転数制御においては、インペラ22を回転させるための散布モータ23の回転始動時に、インペラ22の回転数が、予め設定される所定の回転数(以下「設定回転数」という。)に達するまで、メザラシャッター32の回転が停止させられる。そして、インペラ22の回転数が、設定回転数に達すると、繰出部30における薬剤の繰出量が、所定の量になるように、メザラシャッター32を回転させるための繰出モータ33が制御される。ここで、薬剤の繰出量についての所定の量は、例えば小型散布装置3における通常の運転状態において用いられる散布量として設定される。
【0092】
回転数制御において、インペラ22の回転数は、散布モータ23に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される。すなわち、散布モータ23は、バッテリ36から供給される電力によって駆動する電動モータとして構成される。このため、バッテリ36から散布モータ23に供給される電流や電圧から、散布モータ23の回転数、つまりインペラ22の回転数が演算され把握され得る。
【0093】
また、繰出部30における薬剤の繰出量は、インペラ22の回転数と同様、繰出モータ33に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される。すなわち、繰出モータ33は、散布モータ23と同様にバッテリ36から供給される電力によって駆動する電動モータとして構成される。このため、バッテリ36から繰出モータ33に供給される電流や電圧から、繰出モータ33の回転数、つまりメザラシャッター32の回転による繰出部30における薬剤の繰出量が演算され把握され得る。
【0094】
このようにバッテリ36から散布モータ23および繰出モータ33それぞれに供給される電流および電圧の値は、前記のとおり制御部50が有する電流電圧測定部50aにより測定される。
【0095】
このように、制御部50は、電流電圧測定部50aにより測定される、散布モータ23に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値から、インペラ22の回転数を検知し、このインペラ22の回転数に基づいて、繰出モータ33を制御することにより、薬剤の繰出量を制御する。そして、薬剤の繰出量の制御は、電流電圧測定部50aにより測定される、繰出モータ33に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づき、繰出モータ33が制御されることにより行われる。
【0096】
そこで、制御部50においては、次に示すような対応関係が、格納部等にてマップやテーブル等として予め設定され記憶される。すなわち、かかる対応関係としては、散布モータ23に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値と、インペラ22の回転数(散布モータ23の回転数)との対応関係や、繰出モータ33に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値と、繰出部30における薬剤の繰出量(繰出モータ33の回転数)との対応関係等が挙げられる。
【0097】
また、回転数制御に用いられるインペラ22の回転数についての所定回転数や、回転数制御においてインペラ22の回転数が設定回転数に達することで所定の量とされる繰出部30における薬剤の繰出量の変化量(変化率)等についても、制御部50における格納部等に予め設定され記憶される。ここで、インペラ22についての設定回転数は、インペラ22の回転によって散布される薬剤について十分な散布距離が得られるような回転数として設定される。
【0098】
回転数制御の具体的な制御内容は、次のとおりである。すなわち、小型散布装置3による散布作業開始時において、散布モータ23の回転始動時に、散布モータ23に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値から、インペラ22の回転数が検知される。そして、ここで検知されるインペラ22の回転数が、設定回転数に達するまで、繰出部30からは薬剤が繰り出されないように、繰出モータ33が制御される。
【0099】
つまり、検知されるインペラ22の回転数が、設定回転数よりも少ない状態では、繰出量を調整するためのメザラシャッター32が回転しないように、繰出モータ33が停止した状態に制御される。これにより、散布作業開始時における散布モータ23の低速回転状態において、薬剤の繰出しの停止状態が確保され、薬剤が所定距離以上に飛ばされないことで発生する散布ムラが防止されることとなる。そして、インペラ22の回転数が、設定回転数に達すると、散布(繰出し)が開始され、メザラシャッター32の回転数が徐々に上昇し、設定量の薬剤が所定の範囲に散布されるように、繰出モータ33の回転数が調整される。
【0100】
このような回転数制御が行われることで、小型散布装置3による散布作業開始時において、薬剤が散布される圃場等において散布ムラが発生することがなく、均一な薬剤の散布が可能となる。言い換えると、薬剤が散布される圃場等において単位面積当たりの散布量の均一化を図ることができる。
【0101】
すなわち、小型散布装置3による散布作業開始時において、散布部20における散布モータ23の駆動と繰出部30における繰出モータ33の駆動とが同時に開始されるとすると、同時に起動される散布モータ23および繰出モータ33に対して、バッテリ36から供給される電力が一時的に不足する場合がある。かかる場合、散布モータ23あるいは繰出モータ33の回転数が不足し、インペラ22あるいはメザラシャッター32について十分な回転数が得られず、薬剤の散布量が不足し、圃場等において散布ムラが発生するときがある。
【0102】
そこで、前述のようなインペラ22の回転数に基づく繰出モータ33の制御(回転数制御)が行われることで、散布作業開始時における散布モータ23の起動時であってその駆動状態が不安定な状況では、繰出部30における薬剤の繰出しが停止されるとともに、散布モータ23が設定回転数に達すると、そこから徐々に薬剤の繰出量が上昇し、所定の量となるように調整されることから、散布ムラが生じる面積を小さくすることができる。
【0103】
以上のような小型散布装置3が備える制御構成によれば、小型散布装置3の構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることや、メンテナンス性および機能信頼性を向上することができる。かかる効果が得られることについて具体的に説明する。
【0104】
例えば散布作業始動時等のような散布の出力が安定しない状態であっても、単位面積当たりの散布量が均一となることを目的として、次のような構成が考えられる。すなわち、動力散布装置において、繰出部を構成するタンクからの散布物の繰出量を検知する手段と、散布部を構成する回転体(インペラ等)の回転数を検知する手段とが備えられる構成である。そして、かかる構成において、前記各手段が制御部と接続され、散布作業開始時に、回転体の回転数が所定の回転数に上昇するまでは、繰出部における散布物の繰出しが停止あるいは繰出量が最少とされる。
【0105】
確かに、上記構成によれば、散布の出力が安定しない散布作業始動時等においても、単位面積当たりの散布量を均一にすることができると考えられる。しかし、繰出部においては、散布物の繰出量を検知するための手段が必要となり、散布部においては、回転体の回転数を検知するための手段が必要となる。このため、動力散布装置の構造が複雑となり、コストダウンを図ることや、メンテナンス性および機能信頼性を十分に確保することが困難となる。
【0106】
この点、小型散布装置3が備える制御構成においては、インペラ22の回転数や繰出部30における薬剤の繰出量等が、散布モータ23や繰出モータ33に供給される電流等が測定されることにより検知される。このため、例えばセンサ等が用いられて構成される、インペラ22の回転数を検知するための手段や繰出部30における薬剤の繰出量を検知するための手段等が不要となる。結果として、小型散布装置3の構造の単純化・簡略化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。また、センサ等が用いられて構成される検知手段が省略されることから、センサ等の調整作業が不要となり、メンテナンス性および機能信頼性の向上を図ることができる。
【0107】
以上説明した本実施形態に係る小型散布装置3は、散布する散布物を粒状の薬剤とするものであるが、これに限定されるものではない。つまり、小型散布装置3が散布する散布物としては、薬剤のほか肥料等であってもよい。また、本実施形態に係る小型散布装置3は、作業者に持たれた状態となる前掛け方式として用いられるものであるが、走行車輪等を有する移動台車に搭載された状態で用いられてもよい。
【符号の説明】
【0108】
3 小型散布装置
20 散布部
21 散布口
22 インペラ(散布回転体)
23 散布モータ(回転駆動源)
25 インペラケース(ケース部材)
30 繰出部
31 薬剤タンク(貯溜部)
32 メザラシャッター(繰出回転体)
33 繰出モータ(繰出駆動源)
36 バッテリ
42 リミットスイッチ(検知手段、許容手段)
50 制御部
50a 電流電圧測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体と、該散布回転体を収容するケース部材とを備え、前記散布回転体の回転を用いて散布物を散布する小型散布装置であって、
前記ケース部材は、前記散布回転体の回転軸方向と略同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられ、前記散布回転体を収容する空間部分と連通するとともに前記散布回転体の回転によって付勢される散布物が吐出される開口部である散布口を形成するものであり、
前記ケース部材の回動により、前記散布口から吐出される散布物の散布方向が複数の方向に切り替えられることを特徴とする小型散布装置。
【請求項2】
前記小型散布装置は、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体を備えるものであり、
前記ケース部材の回動位置について、前記散布口が所定の方向を向く回動位置を中心位置として互いに反対となる両回動方向側の所定の回動位置を、前記散布口からの散布物の散布が行われる散布位置とし、
前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知する検知手段を備え、
該検知手段によって前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることが検知されていない状態では、前記散布回転体および前記繰出回転体の少なくともいずれかの回転が停止するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の小型散布装置。
【請求項3】
前記小型散布装置は、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体を備えるものであり、
前記ケース部材の回動位置について、前記散布口が所定の方向を向く回動位置を中心位置として互いに反対となる両回動方向側の所定の回動位置を、前記散布口からの散布物の散布が行われる散布位置とし、
前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知するとともに、前記ケース部材の回動位置が前記散布位置であることを検知した状態でのみ、前記散布回転体および前記繰出回転体の回転を許容する許容手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の小型散布装置。
【請求項4】
前記ケース部材は、該ケース部材の回動軸方向視で、前記散布回転体の回転形状に沿う円弧状の部分と、該円弧状の部分に対してその中心位置を介して対向する位置から略接線方向に延出する互いに略平行な直線状の部分とからなる略U字状の外形を有し、前記散布口を、前記直線状の部分の延出方向先端同士を結ぶ直線状の部分として表される面部に対して開口するように形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の小型散布装置。
【請求項5】
前記小型散布装置は、前記散布回転体に向けて散布物を繰り出す繰出部を有し、
該繰出部は、回転可能に設けられその回転数によって前記散布回転体に対する散布物の繰出量を調整するための繰出回転体と、該繰出回転体を回転させるための繰出駆動源とを含み、
前記回転駆動源および前記繰出駆動源は、それぞれ電動モータにより構成され、
前記回転駆動源の回転始動時に、前記回転駆動源に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される前記散布回転体の回転数が、予め設定される所定の回転数に達するまで、前記繰出回転体の回転が停止させられ、前記測定値に基づいて検知される前記散布回転体の回転数が、前記所定の回転数に達すると、前記繰出駆動源に供給される電流および電圧の少なくともいずれかの測定値に基づいて検知される前記繰出部における散布物の繰出量が、所定の量になるように、前記繰出駆動源が制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の小型散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−240600(P2010−240600A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93276(P2009−93276)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】